魔族転生した

取り敢えず魔王軍に加入した

頑張ってのし上がった

終末案件起こす魔王の寝首を掻こうとした

何故か魔王がいねぇ! ←今ココ

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見切り発車なので駄文注意です


第一話

死んだと思ったら魔族に転生していた。

 

何が何だかさっぱりだが、転生したってことは心じゃなく魂で理解したぜ。まともに見えない視界の中で角の生えた男女が見えた時は何のコスプレイヤーだよって突っ込んだ。

 

俺を包んでたおくるみごと魔法で持ち上げた時は度肝が抜けたし、その後は大層興奮したもんだ。

 

その後はひたすら魔力を回したりとかお決まりの流れを踏んだな。赤子の身でできることなんて限られるし。羞恥プレイに耐えながら成長してく中で聞いたのは魔王の名前。バルガラッハという名前だった。

 

前世の記憶では、魔王バルガラッハというと「蒼昏のラディウス」という作品が思い当たる。どこぞのクエストやファイナルトと違って神作と呼ばれる類いではなかったが、知る人ぞ知る名作という評判でひそかな知名度を得ていた。

 

ストーリーはオーソドックスなRPG。中盤で魔王と戦うことになるんだが、追い詰められた魔王が邪神と契約してパワーアップしようとする。壊れゆく魔王城を脱出する一行を尻目に世界を邪神の契約との対価として差し出してしまう。その結果、世界は蒼く染まってゆき、各地には邪神の配下が各地を襲い始める。一時停戦で共闘を結んだ魔王軍の一派と協力しながら邪神を倒すというのがおおよそのストーリーラインだ。

 

んで、魔族に転生したということは基本的に魔王軍に入ることになる。

 

人を殺すのは原作の展開的にも前世の倫理観的にもアウトなので、実力を隠しながら魔王軍の中で文官的なことをしてる四天王の一人の下で働くことを志望した。ナメクジ系の魔族の彼女からは当初懐疑的な目を向けられたが、前世の義務教育を総動員して教えられた書類仕事を処理しまくってからは逆に重宝され、副幹部にまで上り詰めた。

 

そんなこんなで仕事の合間に特訓しながら魔王の後ろ首を掻き切るチャンスを伺ってたんだがーーー

 

「申し上げます。魔王様が行方不明になりました」

「…はぁ?」

 

目の前で上司がそう漏らす。紫色の肌に額からナメクジの触覚が垂れ下がり、「書類が濡れるから」と粘液の分泌をコントロールしている彼女があまりのことに粘液を出し始めている。それに気づき慌てて書類から身を逸らしながら拭き取った上司、四天王の一人であるマリマ様が姿勢を正す。

 

「どういうことですかギルガ君」

「俺も信じたくないのですが、言った通りだとしか。報告するために玉座へ行ったところ、普段はふんぞり返られてる魔王様ですが、もぬけの殻でした」

 

マリマ様の姿勢が崩れかかる。

 

「どこかに行った痕跡とかは?」

「玉座を調べたところ、残存する魔力が確認されました。ただ、その魔力は悍ましく、覚えがないものでした」

「えぇと、つまり?」

「ぶっちゃけますと厄ネタですね!」

 

そこまで聞くと、マリマ様は溶けた。

 

魔王が行方不明になった今、魔王軍の今後とかを考えてキャパを超えたのだろう。元々魔王軍って魔王の腕っぷしでまとまってるだけだし、もしかしなくても瓦解してしまうだろうな。四天王の悪魔族の人とか吸血族の人とか、これを知ったら即離反だろうな。原作ならこのタイミングで魔王が邪神と手を組むとかないんだが、なんで今なんだ!?

 

「空中分解、前線暴走、離反、戦争の終結…うっ!」

「マリマ様しっかり!ここで溶けたら試合終了ですよ!」

「試合もクソもないですこんなの!どうすりゃ良いってんですかこの状況!」

 

力が抜けてふにゃふにゃになったマリマ様を揺さぶりながら考える。ここまで来たら魔王軍は崩壊必須。人類軍にどう交渉すればいいかを考えなければならない。戦争犯罪者の引き渡しであったりとか魔王が邪神と契約した証拠を突き止めて可能だったら人類軍と共同戦線を結ぶとか占領地域の返還と自治権の確保、色々やらなければならなくて頭が回りそうだ。

 

そうこうしてるうちに何やら騒ぎ声が聞こえてくる。魔王不在が他にバレたかと思ったのも束の間、執務室にある窓から差し込む光がだんだん蒼くなっているのに気づいた。冷たく昏い深淵を思わせるような蒼。慌てて窓を開けて外を見ると、青空が不気味に塗りつぶさていく様がありありと網膜に入ってきた。

 

ふと空に、影が浮かぶ。

 

それは明確な形を結び、やがて姿を顕わにする。

 

黒い泥の塊、無数の目と触手を生やした何かが世界に宣告する。

 

それは邪神、原作において後半に姿を現すタイファスであった。

 

『告げる』

 

何かから声なき言葉が発せられる。

 

『魔王バルガラッハとの契約の対価により一切を我が(たなごころ)に統べん』

 

何かが触手を広げる。蠢きながら左右非対称に伸ばされる触手は、城より全てを見下ろす王のように傲慢に、超然と僭称する。

 

『矮小なる者よ、抵抗するがいい』

 

どこまでも勝手にそう告げると、邪神は姿を消した。

 

 

 

後に残るのは痛いほどの沈黙だった。今この瞬間だけは魔王城からすべての音が消え去っていた。

 

「あ…」

 

声が聞こえた。思わず振り返ると。

 

「あうあう…」

 

完全にダメになったマリマ様がいた。魔王不在でただでさえ気を揉んでたのが、間髪入れずに邪神降臨と来た。垂れた黒髪から覗く目はもはや私財を溶かしたようになってるし、限界が来てる。スーツが粘液で濡れて書類まで…っと!

 

「あっぶない…」

「もうだめです…おうち帰る…」

「とりあえず一旦風呂入ってきてください。書類はやっときますから」

 

マリマ様を起こし、風呂に入るよう促す。色々と退行してる上司の背中を見ながら、今後の予定を立てる。

 

まずは魔王軍内の立て直しと、人類軍の交渉、それと可能なら戦争犯罪者の選定と捕縛か。

 

「ギルガ君お風呂に入らせて…」

「馬鹿言ってないで自分で入ってください」


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