デロテトの解釈は「恋愛デロテト」と「敬愛デロテト」の二種類あると思っていてね。
そんで私は敬愛派なんですよね。
でも敬愛もクソデカ感情になりうるってとこ、見せてやりますよ。
解釈違いは許してください、何でもしますから(何でもするとは言ってない)

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ドミニカ共和国のスペイン語はかなり訛りがあって、かつ独特なスラングも多いらしい。
でも私は普通のスペイン語すらできないので全部グーグル翻訳です。


ドミニカの大砲デロスサントスはテトのことをこんなにも敬愛しているというのに ドミニカの大砲デロスサントスのクソデカ感情にテトは全く気づかない——。

 デロスサントスは、重音テトに対して特別な想いを抱いている。

 特別と言っても別に恋愛とかそういう方面ではない。

 ただ、チームに、そして日本に馴染むための最初の一歩を踏み出せたのは、間違いなくテトのおかげだった。

 だから、デロスサントスはテトのことを恩人として、深く敬愛していた。

 

 

 

 デロスサントスが初めて日本の地を踏んだのは、2月、春期キャンプが始まった後のことであった。

 「ドミニカの大砲」という二つ名の通り規格外のパワーと精密なバットコントロールを併せ持つ彼を少しでも安くで雇いたい球団と、少しでも高くしたい代理人の駆け引きが長引いたからである。

 

 ここしばらく球団にはドミニカ共和国出身はおろか外国人選手もいなかったため、選手も監督もスタッフも、突然仲間に加わった助っ人との距離感をつかみ損ねていた。

 当然誰もスペイン語などしゃべれない。

 通訳は一応用意されていたが、仕事として監督の指示を伝えるだけ。

 デロスサントス自身も、日本語がしゃべれるわけもなく。

 意外とノリは良いタイプなのだが、さすがに言語も通じない中、自分からコミュニケーションをとれるほど陽キャではなかった。

 だからデロスサントスは一人黙々と練習を行うことになる、はずだった。

 

“Hola, encantado de conocerte. Eres Delos Santos, ¿verdad? Soy Kasane Teto, ¡encantado de conocerte!”

(やあ、デロスサントス君だよね。ボクは重音テト、よろしくね!)

 

 デロスサントスは耳を疑った。

 聞こえるはずのないスペイン語。

 それもそれなりに流暢なメキシコ訛り。

 まさか自分と母語で話せる選手がいたなんて!

 デロスサントスは喜びに震えながら矢継ぎ早に尋ねた。

 

“¿Cómo hablas español? ¿Has estado alguna vez en la República Dominicana?”

(どうしてスペイン語がしゃべれるんですか? ドミニカに来たことがありますか?)

“Eh, es demasiado rápido para que lo entienda, lo siento.”

(えーっと、さすがに早すぎて聞き取れないよ、ごめん)

 

 ドミニカ共和国訛りのスペイン語は、中南米の中でも最も聞き取りが難しいと言われている。

 いくら複数回のメキシコリーグ派遣でスペイン語を鍛えられたテトといえど、正確に聞き取るのは至難の業であった。

 

“Lo siento. Estaba tan feliz...”

(申し訳ない。つい嬉しくて……)

“Lamento no haberte oído. Si hablas más despacio, creo que podré entenderte.”

(こちらこそ聞き取れなくてごめん。ゆっくりだったらたぶんいけるから)

 

 デロスサントスは不思議な気持ちだった。

 話しかけてもらっただけでこんなに嬉しかったのは初めてだった。

 ホームランを打ったとき、試合に勝ったときとは少し違う暖かな気持ちが胸を満たしていた。

 

“Gracias. Soy de Delos Santos, encantado de conocerte, Teto.”

(ありがとう、改めて私はデロスサントス、よろしくテトさん)

 

 デロスサントスの差し出した手をしっかりと握り返すテト。

 デロスサントスはこの瞬間から、この人に一生ついて行くと決めたのだ。

 

 

 

 その後も、テトはデロスサントスと他の選手たちのつなぎ役として精力的に動いた。

 

 デロスサントスがノックを受けているときに声をかけてくれたり。

 

“¡Genial, tus piernas se están moviendo!”

(いいね、足動いてるよ!)

“¿Acaso Teto no practica el fildeo?”

(テトさんは守備練習しないんですか?)

“Bueno, básicamente soy el bateador designado, así que no hay problema.”

(まあボクは基本DHだからいいのさ)

 

 

 

 夜にわざわざデロスサントスの部屋を尋ねてきて、それぞれの言語の勉強会をしたり。

 

“Teto, ¿qué significa “sotosura”, que a veces se usa cuando la gente te está tomando el pelo?”

(テトさん、たまにテトさんが弄られてるときに言われてる「外スラ」ってなんですか?)

“Sí, no necesitas saber eso.”

(うん、それは知らなくていいかな)

 

 

 

 またオフの日にはデロスサントスと年の近い選手を集めて昼食会を開いたり。

 

“¿Y qué tal está?”(どうかな、お口にあうかい?)

「Bien…オイシイ、アリガト」

「「「「おお……!」」」」

 

 

 

 一度不思議に思ったデロスサントスは、テトにこう尋ねた。

 

“¿Por qué te importo tanto?”

(どうしてここまで私のことを気にかけてくれるんですか?)

“Es difícil cuando no logras integrarte al equipo, así que no quiero que eso te pase a ti.”

(チームに馴染めないのは辛いからね、そうなって欲しくないんだ)

 

 なんてことはない風に答えるテトを見て、デロスサントスの敬愛の念はますます深まった。

 

 

 

 夜の勉強会のおかげか、デロスサントスは脅威的なスピードで日本語を習得した。

 これもひとえに「テトさんと日本語で話せるようになりたい」というデロスサントスの想いのなせることであった。

 

「テト、サン、コレカラ、ニホンゴ、ダイジョブ」

「おおおすごいね! これでもっとキミと話しやすくなるよ!」

 

 初めてテトと日本語で会話したときの達成感と喜びを、デロスサントスは一生忘れないだろう。

 

 

 

 テトの手助けとデロスサントスの努力のおかげで、シーズンが始まる頃にはすっかり打ち解けていた。

 ひたむきに練習に打ち込む姿はチームにも少し良い影響を与えたのか、他の選手も例年より練習量が増えた。

 心の好調が身体にも影響したのか、デロスサントス自身もオープン戦から絶好調であった。

 テトもまたオープン戦ではそこそこの打率を維持しており、さらにホームランを複数放ち開幕スタメンの座をものにした。

 自分を受け入れてくれたこのチームで、そして何よりテトさんと優勝したい、いやしてみせる——デロスサントスは燃えた。

 

 

 

 そして迎えた開幕戦。

 デロスサントス、5打数3安打1本塁打1打点。

 

 しかし。

 重音テト、5打数0安打5三振。

 投手陣、合計13失点。

 1-13。無残な大敗であった。

 

 デロスサントスは正直ショックであった。

 打ち込まれ早々に降板した自軍のエース。

 相手エースを前に、自分以外ほとんど出塁すらできない打撃陣。

 そしてなにより、敬愛するテトが三振マシーンと化していたことへの衝撃は、言葉では言い表せなかった。

 

「テトサン、ドウシタンデスカ?」

「いやー、外スラにどうしてもバットが出ちゃうねえ……」

 

 テトは外に逃げるスライダーが苦手であった。

 いや、苦手という表現では生ぬるいか。

 天敵であった。

 

 オープン戦では相手投手もいろいろ試している段階のため厳しく攻められることはなかったが、シーズンが始まれば当然容赦なく苦手なコースに投げ込まれる。

 テトが期待の若手であった頃から今に至るまで治らないので、心ない野球ファンからは「扇風機」と揶揄される始末であった。

 それでも、外スラを投げない相手なら打てるし、ハマった時のパワーは外国人選手にも引けを取らないし、顔が良くグッズの売れ行きも良いので、クビにはならないのだが。

 

 

 

 それからの試合も、状況は大して変わらなかった。

 デロスサントスが出塁しても、テト含む後続が続けない。

 先発陣は高確率で炎上を繰り返す。

 

 それでもデロスサントスはこのチームが変わらず好きだった。

 チームの仲間達は明るく声をかけあい盛り上げようとしてくれているし。

 ファンもこんな惨状のチームを変わらぬ熱量で応援してくれているし。

 なによりも、どれだけ外スラを空振っても変わらぬ態度で自分と接してくれるテトがいるし。

 

 実はテトもチームメイトもファンも負けるのに慣れすぎて大して気にしていないだけなのだが。

 そんなことは知らないデロスサントスは、このチームとファンに報いたいと強く思った。

 

 

 

 開幕5連敗で迎えたホーム開幕カード3戦目。

 ▽はデロスサントスのホームランで一点を先制するも、ソロホームランとショート山本の2点タイムリーエラーで逆転されてしまう。

 しかしそこからがいつもとは違った。

 打線に元気はないものの珍しく先発が踏ん張り、僅差のビハインドで終盤を迎えていた。

 

 9回裏、1-3。▽の攻撃。

 1アウトから、2番山本が汚名返上のツーベースを放つ。

 しかし次のバッターは強い速球に差し込まれ内野フライに倒れてしまった。

 デロスサントスは自分が決めてやると意気込んで打席に向かう……が。

 相手監督はためらわず審判に向かって4本指を立てた。

 申告敬遠である。

 

 当然であった。

 今日もホームランを放っていて開幕から好調のデロスサントス。

 それに対し次のテトは今日も元気に3三振。

 同点のランナーだとしても、デロスサントスにホームランを打たれるよりテトに打たれる可能性の方が低いと判断された。

 

 デロスサントスは一塁に向かいながらテトの方を窺った。

 そして目を疑った。

 テトは、これまでデロスサントスが見たことのない目つきをしていた。

 そこにいたのは、外スラを空振りしてもヘラヘラしているテトではなく、屈辱に燃える一人のプロ野球選手であった。

 

 デロスサントスは、声をかけようと喉元まで出てきた言葉を飲み込んだ。

 声をかけられる雰囲気ではなかったから。

 

 ピッチャーは最速160km/hに迫る直球と鋭く落ちるフォークを武器にするクローザー。

 対するはこれまでの打席の半分が三振、重音テト。

 ピッチャーは、スライダーを持っていなかった。

 

 1球目、鋭く落ちるフォークで誘われるも、テトはピクリともしない。

 2球目、ストレート一本待ちと踏んだバッテリーは高めのストレートで釣ろうとするも、テトはこれも悠々と見送った。

 「テトじゃ無理だろ」と諦めムードだった球場が、だんだんと「もしかして」の期待感に染まっていく。

 

 カウント2ボールナッシングとなりストライクが欲しいバッテリーは、力でねじ伏せることを選択。

 ピッチャーはアバウトにストライクゾーンめがけて全力の直球を投げ込んだ。

 そして次の瞬間。

 

 流れる水のようにスパッと振られたバットが、甘く入った158km/hのストレートを完璧に捉える。

 芸術的な、あまりにも美しい放物線を描いて飛んでいったボールは、完璧にスタンドに吸い込まれていった。

 その美しさは、外野手が一歩も追うことなくベンチへ足を向けるほどであった。

 

 一瞬静まりかえる球場。

 次の瞬間、スタンドからは地鳴りのような歓声が響き渡り、ベンチから選手達が飛び出してくる。

 

 デロスサントスは、春の夜空に消えていったボールから目が離せなかった。

 デロスサントスのホームランはスタンドに突き刺さるような弾丸ライナーが多く、テトのような滞空時間の長いアーチはなかなか打てなかった。

 

“hermoso…”(きれいだ……)

 

 あのようなホームランを自分も打ちたい。

 やっぱりテトさんはすごい選手だ。

 人間として既に好きだったテトのことを、野球選手としても好きになった瞬間であった。

 

 ダイヤモンドを一周し盛大に迎え入れられるテト。

 一足先にホームインしたデロスサントスも、チームメイトと共にテトをもみくちゃにした。

 

「サスガ! テトサン、ヤッパスゴイ!」

「デロ君もありがとう!」

「イッショウ、ツイテク!」

「一生……?」

 

 まあデロ君はまだ日本語覚えたてだし、なんか間違えたんだろう。

 哀れデロスサントスのクソデカ感情は、テトには届かない。

 

 

 

 なお次の試合、相手先発の切れのあるスライダーを前にテトは扇風機と化した模様。

 

 

 

 

 

 ドミニカの大砲デロスサントスはテトのことをこんなにも敬愛しているというのに

 ドミニカの大砲デロスサントスのクソデカ感情にテトは全く気づかない——。




デロスサントスが打ち上げの幹事を進んで務めるのは、テトの計画した昼食会で話せる人が増えたという実体験から、こういう会を大事に思っているから。
デロスサントスの練習態度に触発されたのは野手だけなので、投手陣の悲惨さは改善されていない。
敬遠されたデロスサントスに代走が出ないのは、そういうとこも含めてチームが弱い原因。

正直これでいいのかわからないけど、書いてて楽しかったです。
はい。

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