ラヴズはネットリテラシーあるから娘の判断で配信に出たがるまでは顔を隠したりのプライバシー保護を徹底してそう

1 / 1
愛子が映す世界

「ラヴミー♡ラヴユー♡ラブズオンリーユーよ♡しばらくぶりの配信になっちゃったけど、みんな来てくれてありがと~」

 

 ホワイトパステルと甘く優しい声が空間を溶かす。都内某所、マンションの一室でカメラに向かってラヴズオンリーユーは手を振る。カメラの奥、大きなモニターには自身が映った配信画面。そこには急流のごとく大量のコメントが流れていた。

 彼女の現役時代のみを知る物であれば、その姿に違和感を抱くだろうか。ふくよかさが少し増し、来ている服もきゃぴきゃぴとした可愛らしい服装から少し落ち着いた大人らしい服装に身を包んでいる。華々しい成績を残しターフを去ってから数年後。現在の彼女もこうして変わらず配信を続けている。

 

「『久しぶり~!』ありがと~!うんうん。みんな元気そうで良かったわ~。どうしても忙しくて…ね」

 

 謝罪の言葉を述べるもののその言葉尻はどうも嬉しそうで。それもそのはず。

 

「『ラヴちゃんもついにママかぁ~』うふふ、そうねぇ。とっても感慨深いわぁ。子どもの頃からみんなに応援されて…こうして私がママになって…。ふふっ、とってもラヴ、だね!」

 

 しばしの配信休止。その理由は非常に喜ばしく、幸福に満ちた言葉だった。『出産』。小学生の、まだ小さい幼子の頃から見守っていたコミュメンにとってその2文字は驚き以上に安堵をもたらした。少女が女性に育ち、そして母へと歩みを進める。

 歴史の中で幾多と繰り返されたはずのその流れの一端を見守り、背中を押してこれた。その時間の重さがどっしりと胸に沈み込む。

 

「娘のことはパパに任せてあるわ。ふふっ、架け橋さんもキチンとお父さんしてるのよ?」

 

 数カ月ぶりの配信。まだまだ夜泣きも忙しい時期のはずなのに今日こうして配信ができたのは彼女の夫…我らが架け橋の尽力あってこそだが…彼の頑張りについてはまた、別の機会に見ていこう。今だってリビングでやっと一息付けている頃なのだから。

 

「それじゃあ!今日のゲストを呼んじゃうわね!マルちゃ~ん!」

『はーい!ラヴミー!ラヴユー!マルシュロレーヌだよ!!ラヴちゃんラヴちゃん!今日は呼んでくれてありがとうね!』

 

 画面下からにゅっとパペットが生えてくる。淡いピンクの帽子を被ったパペット人形。巧みに操られ口を開いては閉じて。持ち主の声を借り彼女の思いを代弁する。もう一人の本人とも言っても過言ではないそんな存在。

 マルシュロレーヌ。ラヴズオンリーユーの幼馴染であり一番の親友である。そんな親友が配信復活と聞きつけ、やってきてくれたのだ。

 

「マルちゃんも、そろそろだっていうのに来てくれてありがとうね」

 

 『そろそろ』。その真意を分かりやすく他者へ公開する事はない。

 今日のマルシュロレーヌはパペットのみの出演だ。その理由は…彼女の本体にあった。現役時代よりすこしふっくらした身体。その全身をゆったりと包むかのような大きな服、そしてそれでも主張する膨らんだ。腹部。彼女もラヴズと同じように、懐妊。もうすぐ出産を迎える時期だった。

 幼馴染として、そして共にBCを制覇した唯一無二の親友として、この人生を夫以上に長く支え合ってきた2人は…ママ友として、またその友情の形を変えていこうとしていた。

 

『ぜ~んぜん!マルちゃんも今日楽しみにしてたもん!!』

 

 ふりふりとパペットを振り手をフルに使って、そして口を固く閉ざし喜びを表現する。

 

「それじゃあ!今日はマルちゃんと一緒に雑談配信にしましょう!配信お休みの間にも皆にお話ししたい事がた~くさんあったのよ!!」

 

 手をパンと叩き配信の本題へと移るラヴズ。

 人生がどれだけ移ろうと、どれだけ人が進もうとその過去は変わりない。変化は巣立ちか、否。共に分かち合った思い出が魂の家。成長しようと、帰ればここに笑って話せる家族がいる。

 思い出話は尽きることなく、思い出は延々と語られていく。ラヴズの笑い声が、マルシュの、配信を聞く皆の笑顔も誘い全員が楽しい。そんな感情を共有していく。

 

「それで、うちの子がそっと指を握ってくれた時なんてね~。もうお料理も忘れちゃうくらい愛おしくって…って、もうこんな時間!?いけないいけない。それじゃあそろそろ配信をお開きに…」

『待って待って!最後に!』

 

 時刻を見ればもうすぐ22時を回ろうとしていた。いくら彼が頑張ってくれているとて、そう長く任せすぎるのも忍びない。何より、連日の夜泣きで出来る限りは早く床についておきたいくらい体力が消耗しているのも確かだった。

 なのでもう配信は終わり、そうやって締めの言葉を述べようとしたその時だ。マルシュがラヴズの言葉を遮った。

 

『ラヴちゃん!少し早いけどお誕生日おめでとう!!』

 

 どこから取り出したのか、パペットから小さなプレゼントボックスが差し出された。

 

「えっ…えっ?」

 

 戸惑うラヴズ。満面の笑みでプレゼントを差し出す幼馴染。自室のドアには、笑顔で手を振る夫。配信画面には誕生日を祝ってくれるコミュメンたち。合点がいった。そうだ、以前も架け橋さんからこんな事があったじゃないか。

 

「なぁにもう皆サプライズ?ありがどう~」

 

 驚きの顔は見る見るうちに笑顔へと弾けていき、勢いのままマルシュへと抱き着く。

 ギュッと抱かれた腕の中で顔を赤くしあたふたするマルシュ、目尻に涙を浮かべすりすりと頬を寄せるラヴズ。それに沸き立つコメント欄。

 まだまだ配信は落とせそうになかった。




ラヴズ誕生日おめでとう!!!せっかくなのでマルシュと絡めてみました!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。