ようこそ維盛さんのいる教室へ   作:維盛さん

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原作一巻編からの具体的な日付の調整、本文の修正や時系列の再整理を行うので一旦更新が止まります。



四話

 

 

 

白石さんに夕ご飯をご馳走した翌日、全く眠れなかった俺は再び開門前の正門に来ていた。時刻は午前六時五〇分で、あと二五分は待たないといけない。携帯を弄りながら時間を潰すが、どうしても欠伸が出てしまう。せっかくの一之瀬さんからの他クラスについての共有メッセージも、度重なる欠伸のせいで都度中断となる。

 

早速本日八度目の欠伸が出る。

 

しかし油断していた俺は、欠伸を終えた直後に自分の頭の足りなさに驚愕する事になる。前方から何食わぬ顔で白石さんが歩いてきたのだ。時刻は七時〇〇分。あと一五分は彼女と一緒にここにいないといけない。

 

「おはよう、白石さん」

 

「おはようございます、伊吹くん。昨日はご馳走してくださり、ありがとうございます。本当に美味しかったです」

 

昨日何度も聞いたお礼の言葉。それ以外は特に何も感じていなさそうな様子に、なぜか維盛は少しダメージを受けていた。無自覚にだが。

 

「こちらこそありがとう、昨日はすごく楽しかったよ。それに料理を気に入ってくれてなら良かったよ」

 

「次は私の部屋に来てくださいね。今度は私がご馳走しますから」

 

昨日、別れ際に言われたことと同じニュアンスの言葉が、維盛の後頭部を勢いよく殴打する。次、次があるのか?しかも私の部屋って、つまり八階にある白石さんの部屋?え?まさしく大混乱である。

 

ホワイトルームや伊吹家の教育課程で美人局関連の教育や、女性経験を詰んだはずの維盛がタジタジである。そんな青年の心をもてあそぶ白石飛鳥はどこ吹く風といった具合で、自身の行動の効果を自覚しながら維盛を弄んでいた。結局普段通りの態度な白石さんに打ち負かされ、ボロボロな状態で維盛は登校することになる。

 

 

 

 

 

 

Aクラスには大小様々なグループができ始めていた。特に変化が著しいのが女子であり、三日目にして既に小グループがいくつか形成されている。

 

維盛は慣れ親しんだ三人と関わる機会が多かったが、それでも積極的にクラスメイトとの交流をはかっている。特に前の席に座る吉田健太は社交的な性格なため、授業の前後にはよく会話する関係になっていた。昨日も二日目の部活動紹介の内容について教えてくれた。

 

以前に心配してくれた真田なんかもよく話す関係になったし、幸先の悪い中では結構うまくいっているのではないかと思う。白石さん個人との関係を思えば、幸先は最高潮だとも言えるが。

 

そういえば今日、俺は生徒会に用事がある。別に生徒会役員になりたいわけではなく、学校の仕組みについての確認がある。放課後に六時から男子の親睦を深める会が開催されるので、出来ればそれに間に合うように用事を済ませたい。

 

仮に俺の考える方法が有効なのであれば、金策の難度はガクッと下がると思う。それこそ一年で二〇〇〇万に迫る金額を手に入れる可能性だって見えてくる。

 

ん?白石さんの隣でこんなに冷静だなんて、何かがおかしいと思ったか?彼女の隣にいれば何も出来なくなる危険性があったので、既に対策は万全である。そんなわけで通常時なら致命的なほどに落ち着かない俺は、自己催眠のようなもので白石さんの名前を脳内で飛鳥から別の名前に変えている。これで一時的に脳内同化を解除し、この後無人島の記憶を封印することで、完全に白石さんに向ける感情の源泉をいったん閉じた。

 

ふぅ。久しぶりに心が穏やかで平穏な日常が戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

放課後の生徒会室を訪ねるも、よく考えるとアポイントメントを取っていない事を思い出す。やらかした…。白石さんに対する方策に夢中で、肝心の生徒会に対する働きかけをすっぽかすとは。我ながら大失態である。

 

しかし天は俺を見捨てなかった。前方から三年Aクラスに属する生徒会役員、橘茜先輩が鼻歌を歌いながら歩いてくる。生徒会室の前で立ち止まっていた俺は、幸いにも先輩の関心を引けたらしい。

 

「一年生ですか?生徒会に何かご用でしょうか」

 

俺を視界におさめ、いきなり繕い始めた橘先輩。残念ながらさっきの可愛らしい姿はバッチリ見ているので威厳は半減である。

 

「一年Aクラスの伊吹維盛です。実は生徒会に用事があったのですが、アポイントメントの取り方が分からなくて。なのでダメ元で来てみたんです」

 

俺の話を聞いた橘先輩は、意外にも生徒会室に俺を通してくれた。中には一人の男子生徒が机で書類の整理をしているが、彼こそが生徒会長の堀北学先輩だ。入学前に生徒会の面々の情報を調べていたため、先程の橘先輩も含めてうまく動く事ができた。伊吹家の情報網に大感謝である。

 

「橘、彼は生徒会への志望者か?」

 

俺を一目見ると、そのまま隣に移動してきた橘先輩に確認を取る堀北会長。人によっては睨まれていると勘違いしそうな視線である。

 

「いいえ。生徒会に用事があるらしいのですが、アポイントメントの取り方が分からないとのことだったのでお連れしました」

 

手短に説明を受けると、そのまま俺の所属と名前も確認する堀北会長。

 

「確か入試で満点を獲得した生徒の片割れか」

 

生徒会って各生徒の成績や入試の結果なんかを閲覧できたりするんだろうか?いきなり自分の試験結果を明言されたので、ほんの少しだけ面食らう。

 

「一年Aクラスの伊吹維盛です。急な訪問で申し訳ないのですが、今日は生徒会の方々に確認したい事があって来ました」

 

「いいだろう、用件を聞こう」

 

「確認したい事は三点。一点目は部活の掛け持ちは可能か、運動部の個人賞の報酬額、そして美術部などで制作した作品の売買は可能か。以上の三点を確認したくて今日は訪問させて頂きました」

 

俺の話を聞いた橘先輩がド派手に驚いている。無反応な堀北会長との対比が目立つな。堀北会長のリアクションの乏しさを補ってあまりあるほどの反応である。少し考えたあと、堀北会長は全ての疑問に答えてくれた。

 

「まず掛け持ちは原則認められていない。しかし三〇万prを支払えば可能になる。また部活での個人賞は大会と記録によって大きく変動するため、この場で具体的な数字を明示できない。三点目の作品の関してだが、売買は可能だが売却益の一〇%が部に振り込まれる。また、顧問とクラスの担任による出品の承認も必要になる。他に何か質問は?」

 

「運動部の個人賞について質問があります。仮に自分が水泳部と陸上部でインターハイに出場し、両大会で高校記録を合計四部門で塗り替えて優勝した場合、概算でいいのでいくらポイントはもらえますかね」

 

俺の自信過剰とも取れる質問だったが、堀北会長は特に反応する事はなかった。手元の端末で何かを確認したあと、橘先輩の耳打ちを受けてから答えてくれた。

 

「まず各種目での優勝には一〇〇万prが送られる。高校記録や大会記録を更新した場合は、各種目で一〇〇万prの追加となり、四種目なら八〇〇万prの獲得が可能になる。だが各部活で出場した種目の全てで優勝した場合、ボーナスとして一〇〇万prが付与されるため、理論上は一〇〇〇万prの獲得が可能だ。究極の机上の空論だがな」

 

普通なら非現実の極みとも言える一〇〇〇万pr獲得の条件。しかし俺をはじめとするホワイトルーム生を含め、この記録を更新できるポテンシャルを秘めた生徒は多くいると思う。であれば、誰かに基準を引き上げられる前に俺が賞金を総ナメするのがいい。なんなら女子の部門で飛鳥馬を出せば、二人で一瞬で二〇〇〇万prを貯める事だって出来る可能性もある。

 

通常の生徒では実現が不可能ではあるが、それでも可能性を感じさせる報酬制度。勉強が最低限でも、身体能力や武術に特化した生徒への救済措置とも言える。俺にとっては好都合な制度なので、喜んで利用させてもらうとしよう。

 

「自分の実力によっぽど自信があるらしいな」

 

金額の大きさに考え込んでいたが、意外にも場の沈黙を破ったのは堀北会長だった。露骨に値踏みするような視線を受けるが、特に動じる理由もないのでそのままやりとりを続ける。隣の橘先輩は半信半疑といった様子で俺をみている。

 

「生活費はかかりますからね。貯金の心配をせずに生活したいので、一応確認させて頂きました」

 

「…なるほど。では掛け持ちの三〇万prは俺が立て替えよう。今年開催される大会のどれかで優勝すれば返済は不要だ」

 

思わぬ提案を受け、思わず笑みが溢れてしまう。どうやら堀北会長のお眼鏡にかなったらしい。そのまま俺の端末に三〇万prが振り込まれ、無事に掛け持ちのための出費が賄えた。嬉しい誤算に俺もホクホク顔である。だが優勝できなかった場合は返済が必要なので、これで俺がどこの部活にも入部しないという選択肢は消えた。

 

「五月になったらまた生徒会室に来い」

 

そう言って自身の連絡先を教えてくれる堀北会長。ついでに橘先輩の連絡先もゲットだぜ。正直こっちの方が嬉しい。でも五月に呼び出しってことは、学校の仕組みを知ってから何か俺に話すことでもあるのか。だがその真意を確かめる間もなく、堀北会長はこのあと用事があるらしいので、俺はそのまま橘先輩と一緒に生徒会室を出た。

 

「橘先輩、ありがとうございます。おかげでいろいろ勉強になりました」

 

「いえいえ、こちらこそありがとうございます。まさか入学して早々にこんな事を言い出す新入生がいると思わなくて、少し驚いてしまいましたが」

 

「先輩は正直どう思います?」

 

「伊吹くんの記録更新と報酬の獲得についてでしょうか?」

 

「はい。荒唐無稽だと誹られると思っていたのですが、お二人とも何も仰りませんでしたよね。その理由が気になりまして」

 

「勝手ながら私も中学時代の伊吹くんの成績に目を通しています。その上で適切な努力を積めば、今年ではなくとも大会での優勝も可能だと判断しただけですよ。憶測になりますが、堀北会長も同様の考えだと思います」

 

どうやら生徒会も二人から、存外に高評価を受けたらしい。以降も橘先輩に学校や生徒会について質問し、結果的に長時間話し込んでしまった。先輩とわかれた頃、気付けば時刻は午後一八時を軽く過ぎている。もう男子の懇親会が始まっている時間だ。とりあえず主催者の橋本に遅れる事を連絡し、急いでケヤキモールに向かう。

 

会場はケヤキモール内のカラオケだ。何かと人生で初のカラオケ体験になるので、実際にどんな場所なのか少し気になっている。受付で待ち合わせをしている旨を伝え、迎えに来てくれた真田と一緒に一年Aクラスの面々がいる部屋に向かう。

 

かなりの大部屋で、今は俺を含めて18人の男子生徒が来ているようだ。唯一不参加なのは、確か鬼頭といった生徒か。やたらと眼力が強かったので記憶に残っている。もしかしたら彼はこういう場は好まないのかもしれない。

 

そのまま代わる代わる歌う生徒が代わっていき、その間も周囲ではクラスメイト同士が交流を深める。顔と名前が一致しない生徒も少なからずいたが、少なくとも今日で男子のクラスメイトはコンプリート出来そうだ。

 

どんどん増えていく連絡先に少し心が躍る。既に二十六人の連絡先が登録されたアドレスは、笑ってしまうほど男女比が偏っている。クラスの男子生徒一七人、堀北先輩、神崎、葛城。連絡先の二〇人が男で埋め尽くされている。それ以外の六人は同じ中学出身の三人、白石さん、坂柳さん、橘先輩の六人のみ。坂柳さんに連絡先を交換して欲しいと伝えていなかったら今頃五分の一。

 

そんなこんなで気付けば俺が歌う番が回って来た。持ち歌なんてものもあるわけなく、とりあえず適当に自分でもわかる曲を選んで無難に歌い切った。初カラオケにしては上出来だったんじゃないかと思う。少なくとも場の空気を盛り下げる事はなかったので、個人的には大金星だと言いたい。

 

「にしても伊吹は来ないと思ってたからな、ちょっと意外だったぜ」

 

そう言いながら俺の隣に座るのは、今回の集まりの主催者である橋本だ。軽薄そうな見た目や言動をしている、というのが今のところの彼の印象だ。だがその社交性の高さは確かで、今日も鬼頭以外の全男子を揃えて見せたことからその手腕は明白だ。

 

「話をもらった時点で行くと決めてたよ。俺が来たのそんなに意外だった?」

 

「いやほら、お前って既に仲の良い女子いるじゃん。だからそっちと遊ぶのかと思って」

 

なぁ?なんて言って周囲のクラスメイトに同意を求める橋本。それに同調する面々が結構いた。特に吉田は頭をブンブンと振っている。もう少し激しくなればヘッドバンギングになりそうだが、あんなにやって首が痛くならないんだろうか?

 

「にしてもいいよなぁ、伊吹は。一之瀬や飛鳥馬はもちろん、可愛い妹までいるもんだ。おまけに隣の席も可愛い女の子ときた!」

 

なんで俺の隣は鬼頭なんだ!なんて大騒ぎする橋本を見ながら、周囲の空気は徐々に気になる異性の話題に移っていった。容姿端麗な少女が数多く在籍する高育。そんな環境に思春期真っ盛りの男子高校生を投入すれば、下世話な話に流れ着くのは自然な流れであった。

 

中には気になる異性について話さない者もいたが、可愛いと感じる同級生の話題では、やはり一之瀬さんや雪などの名前が頻繁に出て来た。また他クラスの櫛田桔梗や軽井沢恵、網倉麻子などといった、俺が見かけたことがない生徒の名前もちらほら散見された。特に櫛田さんとやらは俺の知らぬ間にちょっとした人気を獲得しているようだった。

 

そんなに可愛いなら今度Dクラスを覗きに行ってもいいかもな。同じDクラスなら綾小路の様子も見れるし一石二鳥だろう。その他にはクラスから飛鳥馬、坂柳さん、白石さん、西川さん、神室さん、森下さんの名前が出た。

 

なぜか森下の名前が出た途端、彼女の前の席に座る柳橋が辟易としているような反応をしている。名前も聞きたくない、そんな感じの反応。彼は即座に話題を転換し、特に候補が出ていないCクラスに可愛い子はいないのかと言い出した。

 

残念ながら他クラスとまだ一切の関わりがない俺ではわかりかねるが、どうたらクラスメイト達もCクラスについて何も知らないようだった。見かけた印象ではヤンチャそうな男子生徒が多めだった印象だろうか。言われてみれば確かに女子生徒の印象はそこまでないな。

 

「橋本は何か知らないか?Cクラスの女子の話」

 

「んー、正直荒っぽいやつが多くてさ。まだ関わりに行ってないからわっかんねえ」

 

「橋本でも分かんないなら、流石にお手上げかぁ」

 

特に残念そうでもない、棒読みな柳橋の嘆きがカラオケに響く。森下の話題が流れて満足したのか、それ以降柳橋が積極的に会話に入ってくることはなかった。

 

そこから部活や生徒会、上級生などに話題は移っていく。俺は今日会ってきた二人しか知らないが、司城は入部したばかりの部活で可愛い先輩を見つけたらしい。まじで可愛いんだよ!なんて自慢げにしているが、遠回しに「俺が狙う」と宣言しているようにも聞こえる。部活に入ってまだ二日なのにすごいな。もちろん狙ってるって話は俺の邪推だが。

 

でも司城がそこまで褒める先輩、ちょっと気になるな。今度司城の入った部活を聞いてみようか。もしかしたら俺の入りたい部活にいるかもしれないし。

 

 

 

 

 

 

懇親会は最終的に二一時まで続き、寮の門限の一時間前に切り上げとなった。多くは寮まで一緒に帰ったが、俺はそのまま夜の学校の敷地をのんびりと散歩することに。同行者はいない。

 

初めてのカラオケは思っていたより楽しかった。今回は男子のみだったので遠慮なく下世話な話も広がり、多種多様な話題が持ち上がって新鮮だった。なんせ普段は飛鳥馬が常に一緒にいるため、男子生徒とあんな風に話した事なんてなかった。

 

色々振り返りながら海辺で潮風にあたっていると、二〇mほど先から誰かの噦く音が聞こえる。最初は聞き間違いかと思ったが、繰り返される苦しそうな声で人がいると確信する。

 

一応音のする方へ向かってみると、そこにいたのは意外にも保険医の星之宮先生であった。街灯で照らされた顔色は酷く、よっぽど飲んでいた事が窺える。

 

「うぇー、せっかくいい人だと思ってたんだけどなぁ?」

 

吐き気がおさまったのか、一人で愚痴り始める星之宮先生。俺の存在に気付いていないらしく、誰かと話しているかのように男の愚痴を吐き続けている。

 

「ねえちゃんと聞いてるのぉ?さっきからお返事がなくてムカつくんですけどぉ〜?私を無視なんて生意気になっちゃってぇ〜!」

 

愚痴の途中から側に立った俺を誰かと勘違いしたのか、何故か肩に寄りかかってくる先生。めちゃくちゃお酒臭い。そして服が結構はだけているので、さすがに寒そうだ。

 

とりあえず着ていた上着を星之宮先生に着せ、そのまま近くのコンビニまで移動させようとする。だが酔っ払いは波の音が聞きたいらしく、一切動こうとしてくれない。何なら腕を絡めて密着してくる始末。

 

「ねぇねぇ、私もう少し飲みたいなぁ?」

 

なんて言いながら腕に胸を押し付けてくる星之宮先生。結構肉食系っぽいなこの人。もう途中から面倒になった俺は、携帯を取り出しそのまま担任の真嶋先生に連絡することに。

 

『こんな時間にどうした、伊吹』

 

教員の端末の番号にかけたため、この時間に電話に出るかは分からなかったが、どうやら運は俺に味方したようだ。

 

「ちょっとぉ、私がいるのに誰に電話してるのぉ?」

 

騒ぎ出す酔っ払いを無視し、手短に用件を伝えていく。これを早急に引き取ってくれ、頼むよ真嶋先生。

 

「こんばんは。今外にいるんですけど、酔っ払った星之宮先生に絡まれて困ってます」

 

『…そうか。では場所を聞こうか』

 

全てを察したのか、深く追求されることもなく話は進む。そのまま細かな場所を指定し、無事真嶋先生に迎えに来てもらうことに。流石にこんな状態で放り出すのは気が引けたので、先生と連絡が取れてよかった。これで安心してこれを押し付けられる。

 

電話から一五分ほどで真嶋先生が到着し、そのまま星之宮先生を回収して帰って行った。後日知ることになるが、どうやら教員寮が学校の敷地内にあるらしい。そのため同じ寮に住んでいる二人は、帰る方向が一緒というわけだった。

 

とりあえず今後は星之宮先生には近付かないようにしようかな。酔っ払いの介抱ほど面倒なものはない。

 

…あ、でも俺の上着を星之宮先生に着せたまま帰しちゃった。後日取りに行かないと行けないよなぁ。めんどくさっ。もうさっさと帰って寝よう。考えるだけ時間の無駄だ。

 

酒飲みに辟易としながら帰路につく維盛であった。

 

ちなみに記憶が飛んだ星之宮は、翌朝に身に覚えのない男の上着を着て目を覚ますことになる。

 

 

 

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