ANGEL WALTZ 作:とくめい
人類は突然変異により、特殊能力が発現した
水や火、木火土金水の他に特異な能力を発現する者がいた
能力の発現は無限の可能性を示した
しかし、それがまた仇となった
宇宙への探求の壁を軽々と飛び越え、海底の解明も驚くべき速さで進んだ
宇宙に存在する、地球以外の知的生命体を発見した
しかし、地球人だけが能力を持ったのではない
人型や虫の様な者、獣の様な風体の者、様々な知的生命体の形があった
地球人にとって誤算だったのは、それらが全て友好的では無かったと言う事だ
ただでさえ、人間同士の欲望を我慢しなくてもいい状態の能力者が居るのに加え、宇宙からも襲撃される
各国首脳や軍や警察、それらの中に炎を扱う能力者が居た
能力者は、発現時点で一般人とは違い、忌み嫌われ、恐怖の対象、畏怖の対象として見られていた
そして、木火土金水の中でも、唯一自然界で他を侵食する炎の能力者は、その中でも異質だった
しかし、その能力者を中心に、対能力者特別対応管理局(仮)が発足された
地球からしたら、外からも中からも攻められてる状態、まさに内憂外患
犠牲者は想像を絶する数の犠牲者が出た
地球の人口の3分の1以下まで減少し、星々との紛争は、終わりなく続いた
後に、第1次星間大戦と呼ばれる戦争が起きた
それから500年、紛争はまだ、続いていた
能力者は、発現すると一般人の約10〜15倍の身体能力になる
故にアスリートが発現した場合、資格を剥奪され、その舞台からは退場させられる
先天性か後天性かはまだ解明されて居ない
5行の理の他に、プラス1の6種の属性が基本になる
プラス1の能力とは、人間がカテゴライズ出来ないものを全て特異系と位置づけて居る
その中でも特別異質なのが、火属性の能力者である
対能力者特別攻撃隊総隊長
西島京介(25)
幼少期に能力が発現し、そのせいで母親に辛い思いをさせている、と感じている
5つ下の妹、母親と暮らすが、両者とも直接的な血縁は繋がって居ない
母親の事は、響華さんと呼ぶ
うっすらとは血が繋がって無い事を理解している
BLITZを辞めたがる怠け者だが、総副隊長に舐めさせて貰えない
絵に描いた様な脳筋スタイル
たった一人、唯一地球最大戦力として認識されている
地球にあるBLITZ全員対京介一人でも、勝てる程度の実力がある
京介自体もシスコンとまでは言わないが、忍を心配している
しかしそれを一切表に出さない
対能力者特別攻撃隊総副隊長
三条秋浩(25)
京介の幼少期からの親友と言っても過言では無い
何をしてきたか、何をされたか、何が起きたか、全てを一緒に見てきた
やる気の無い京介に書類仕事をさせる為に、総隊長の秘書に頼んで、京介を逃亡させない様に奮闘している
辞めたいと言った京介に、部隊を纏められないと言った所、お前なら大丈夫だよ、と言わしめる程には強い
土属性の発現者
沙耶麻 菜流(25)
京介、秋浩と同級生、京介の恋人
医療班、総班長
卓越した医療技術と能力で、菜流が居れば死人も生き返るとまで言わしめる
幼少期より能力が発現した為、京介達と同じ思いや状況に陥って居るが、聖母かと思わせる程度の優しさから、医療班になった
対能力者特別攻撃隊総隊長秘書
夜千与 紗夜(22)
BLITZに入った後の京介に、何も意図せず救われる
京介はあとの事は何も考え無かったが、何故が京介に懐いてBLITZに入隊する
ハーフかと思う美麗な容姿だが、本人は露程もそれを理解してない
医療班
総副班長
八尺 伽耶(25)
菜流程では無いが、卓越した医療技術と能力を持つ
多少気の強い所もあるが、傍から見たら優しい女の子である
対能力者特別攻撃隊
4番隊 副隊長
八神 香奈恵(20)
例に漏れず凄惨な経験と、常軌を逸した体験をし、喜怒哀楽の喜、楽、しか表現出来ない
母方の祖母と暮らして居る
西島京介の妹、西島忍と仲が良く、一緒に出かけたり、西島家に遊びに行ったりする
八神初枝(9?)
香奈恵の祖母、両親が居ない香奈恵の支え
おばあちゃん子の香奈恵に無理をさせたくなくて、若干甘やかしてしまう
香奈恵の喜ぶ事はしてあげたいと思っている
西島忍(20)
学生で心優しい女の子
ブラコンまでは言わないが、京介をだいぶ慕って心配している
西島響華(?)
京介の母親
性格はやや豪胆な部分もあるが、おしとやかさの中に強さがある
京介の事はお兄ちゃん呼び、忍の事は忍ちゃん呼びをする
背面から左腕にかけて、大きなやけどの跡があるが、本人は欠片も意に介して居ない
西暦3862年
BLITZ本部
対能力者特別攻撃隊
総隊長室
男が一人、自室のコーヒーメーカーからコーヒーを注いでいる
泊まりの仕事をこなしていた
疲れて少し眠っていたらしい
やりたくないけどやらないといけない書類仕事
書類の束に目をやり、深いため息と一緒に一言言う
「……っはぁ〜……働きたくねぇでござるw……」
京介
「……あ〜、もうダメだ、寝る!もう俺は寝るぞ!……
起きたら仕事すれば良いやw」
ソファと言うには些か広いソファにゴロンと横になり、ブランケットを被り眠りにつく
余程疲れて居たのだろうか、寝息を立てるには随分早かった
……数時間後
世間では丁度出勤時間だろうか……
その時間に鼻歌を歌いながら、手にタブレットを抱え、総隊長室に入る
扉が開いた瞬間に室内を軽く流し見した後、ソファに目が止まり、ビクッ!っと体を強ばらせる……
総隊長秘書
夜千与紗夜である……
やれやれと思いながら、起こさない様に書類を整え、自分の分のコーヒーと、京介の分のコーヒーを入れ直した
紗夜はコーヒーを片手にタブレットを確認している
予定があったのか、何かを確認したかったのか、京介の頭に手を当て
紗夜
「……隊長?……起きませんか?……」
起こしたいのか寝かせたいのか分からない声量で話しかけた
疲れがあるのを理解している紗夜の気遣いだろう
幸いそれに京介が反応した
「んんんー……うん?……」
目の前の暖かいコーヒーを手に取り、ゆっくり飲んだ
京介
「……おはよう……紗夜ちゃん早いね……」
寝ぼけ眼で紗夜に挨拶をする
紗夜
「おはようございます隊長、今日が終われば明日は非番ですので、少し頑張りましょう」
京介
「……ありがとう、紗夜ちゃんは頑張んないで良いよw……休んでてくれれば……」
コーヒーを啜りながら話す
京介
「……今日の予定って何かあったっけ?」
紗夜
「今日の予定と言うか、一応新人隊員の実戦訓練をそろそろ行っても良いのでは無いのかと思いますが……、三条副隊長からも、実戦訓練に慣らしておきたいとの提案を頂いておりますし……」
京介
「……とは言ってもなぁ……今の所地球の中じゃ一般人の小競り合いしか無いから、俺たちが出る様な戦場は無いからなぁ……かといって他の星は過酷過ぎるし……」
紗夜
「……西島隊長、隊員に少々甘くはありません?、お優しいのは承知しておりますが……
あくまでBLITZは戦闘部隊ですので、多少厳しい環境でも良いのでは無いかと思いますが……」
京介
「そう?w……まぁ良いじゃないw、その分俺ら隊長格が頑張れば良いだけだものw」
やれやれと言った様子で、紗夜がため息をついた
紗夜自身も、京介の言い分は痛い程よくわかっている
過酷過ぎる状態に新人を放り投げるのを、西島京介は嫌う
本人が誰よりもそんな状態の辛さや悲しさを知っているからだ……
かくいう紗夜も、そんな京介に甘やかされる1人であり、紗夜の事を救い出してくれた京介の気持ちを、秘書と言う立場ではあるが、最大限に理解している
故に作戦や理念には口を出さない
もう少し細かく言えば、京介に害が出ない様に気をつけている……
思い出した様に紗夜が口を開く…
紗夜
「……あっ……そう言えば……」
京介がうん?と尋ねる
紗夜
「三条副隊長は、先週から出張しておりますので、明後日まではおりません
ご存知でした?」
京介は思い返して居た
何故自分が泊まりの日数が多かったか、書類仕事の量が多かったか……
合点がいった……
京介
「そっか〜……秋浩出張だったか〜、だから事務仕事多かったんだ〜……納得w」
紗夜はそれを聞いて呆れとも感心とも取れない表情で答える
「……お気付きで無かったんですか……」
まぁまぁいつもの事と思って、咳払いをして話を続ける
紗夜
「局長の同伴で、日本の支部に情報の連携と、本部の攻撃隊の副隊長と言う事で、若い隊員に向かって講習の様なものをすると伺っております」
京介
「……あ〜、俺は出来ないやつねw」
それを聞いて口元を綻ばせ、紗夜は隠す様にコーヒーを口に運んだ
京介が聞く
「ルーキーって全員今本部にいるの?」
紗夜が答える
「はい、とりあえず全員まだ配属前ですので、本部付けの所属になります、特殊な事情が有る場合を除いては
自宅に一時的に帰る事はあっても、衣食住はこちらで済ませているはずです」
京介はそれを聞いて、何かを考える様にコーヒーを啜る
丁度無くなったみたいで、コーヒーメーカーに立とうとした所、紗夜がポットを京介に向けた
京介
「……ありがとうw優しいねぇw」
何気ない会話、紗夜にもこれが暖かかった……
紗夜の通信機にオペレーターから連絡が入る
オペレーター
「失礼します!西島隊長はご一緒でしょうか?!」
切迫した言葉に紗夜が答える
「おりますよ……通信機切ってるんですか?」
オペレーター
「……はい、繋がらなくて……」
紗夜
「……はぁ……今代わります……」
紗夜が電源を切るなと言わんばかりに京介を睨む
京介はすまないと言わん態度で頭をペコペコしながら、通信を変わる
京介
「どうしたかね?朝からw」
オペレーター
「応援要請です!1時間程前、能力者がビルを占拠した立てこもり事件が起きたと通報がありましたが、それに特殊部隊が対応したんですが、……その
警察に死傷者多数、特別部隊員も二人重症との事で、応援要請が入りました」
それを聞いて京介が呆れる……
「……はぁ……舐めプして作戦に当たるからそうなるんだよなぁ……」
オペレーターに応える
「……了解、10分以内に本部から向かうよ……」
オペレーター
「……お気を付けて
特殊部隊の能力者が重体になるくらいですので……」
京介
「ありがとうw気をつけるよw」
通信を終え、紗夜に向き直り京介が言う
「……新人の実戦訓練をしようw……」
紗夜は予想通りの答えが聞こえたので
頭を抱えてため息をついた
隊員宿舎
手練の隊員も新人隊員も、本部付けで暮らす隊員達は、皆この宿舎に居る
時間的に食事も終え、目を覚まして訓練している時間故に、ここに京介は来た
フラメンコのダンサーかと言うキレッキレな動きで、手を叩きながら宿舎に入る
京介
「ハイハイハイハイ!wルーキーのみなさぁん!おはようごっざいまぁーすw」
殺伐とした宿舎の中に、陽気なラテン系のようなテンションの大佐が入ってきた事で、隊員達は困惑している
皆思っただろう……
(なんだあれは……笑う所か……無視すべき所か……)
丁度新人の担当になっていた、2番隊の隊員がいた
見知った顔の見知った光景
呆れた方が良いのか、叱った方がいいのか……
意を決して2番隊の隊員が声をかける
「隊長……朝からお茶目が過ぎやしませんか……」
京介
「いや、階級も階級だから緊張するだろうと思ってw
ちょっとフランクに登場したんだけどw」
2番隊隊員が頭を抱えながらため息を付き言う
「……っはぁ……だから副隊長にいつも怒られるんじゃ無いですか……
……それで?どんなご要件でしょうか?」
京介
「今から新人の実戦訓練をします!!」
小学校新入生の様なハキハキとした返事で答えた
2番隊隊員はふざけているのが理解出来て、尚それを押す姿に、顔を隠しながら笑う
しかし、多分新人の実戦訓練だと言うのは本当だろう
2番隊隊員
「今からでしょうか?」
京介は答える
「丁度良いのがさっき出来たからw
予定あるなら辞めるけど?w」
2番隊隊員
「イエ、そろそろ実戦訓練を実施したいと考えておりましたので!引率は?!……どなたが……」
サムズアップで自分を指しながら、満面の笑みで京介が、「俺やで!!w」と答える
2番隊隊員は頭を抱えた……
時を同じくして、格納庫
紗夜
「すみません、整備班長はどちらに?」
紗夜がその場には似つかわしく無い姿なのを気に停め、整備班の手が止まる
整備班
「班長なら八十二式装甲車のそばにおります」
紗夜
「ありがとうございます
あの、新人の実戦訓練の為の車両をお借りさせて頂きます」
整備班
「はっ?…あのぅ、もしや西島隊長でしょうか?……」
事前になんの連絡も無く、BLITZの兵装を持っていく隊員の心当たりが有る整備班は、恐る恐る聞く
紗夜
「……はい……」
整備班は頭を抱えながら答える
「……頼むから、自走可能な状態で返却して下さいよ……」
諦めた様なテンション
紗夜はある程度察した様に、わかったと返事をした
整備班班長のところまで来た紗夜が、班長に声を掛ける
「あの!失礼します!」
装甲車の下に潜っていた整備班長が、声に反応し、無骨な男が紗夜に顔を向けた
整備班長
「……なんだ?……」
紗夜
「あの、新人の実戦訓練用に、車両を1台お借りしたいんですが……」
整備班長
「……あんた京介のとこか?」
紗夜
「……はい」
唐突に車両を強奪していく隊長格に諦めているのか、それとも京介と言う男を信頼しているのか、やれやれと言う顔付きで答える
整備班長
「……エントランスに回しておくよ……後京介に動く状態で返せって言っといてくれ……」
紗夜
「……あ……はい……」
紗夜から京介に車両の借用が完了したと連絡が入る
紗夜
「西島隊長……私は良く分かりませんが
自走可能な状態で返却をしろとのお叱りを頂きました……何をなさったんですか……」
京介が歩きながら答える
「……いやぁははっ……イラついてボコボコに殴り壊したw」
紗夜
「……っは?」
京介
「いやさwいつだっけなぁw作戦中にね
執拗に俺の顔面狙う奴いてさw
引っ掴んで装甲車にボコボコに叩きつけたw」
紗夜
「……何をしてますか 」
京介
「いやチクチク中途半端に痛くて頭に来たんだよねw
……謝ったんだけどねぇw」
紗夜
「運用時では無く……能力者を叩きつけるのに破壊したと……なぜそれで怒られないとお思いでしょうか!……」
京介
「今日はやんないからw」
BLITZ本部 エントランス
京介
「ハイハイハイハイwルーキーの皆さんw
準備は良いですかぁ?w」
新人隊員
「……はっはい!」
京介
「おやおやぁ〜?みんな元気がないぞぉw
もう一度w……準備は出来てますかぁw」
幼児向け番組のキャストの様な話し方で、再度聞き直す
新人隊員
「サー!イェッサー!」
京介は大袈裟に拍手をしながら言う
「それじゃみんなこれに乗ってねぇw余計な装備は今ここに置いてって〜、逆に危ないからねぇw」
エントランスに置かれた輸送車両は、中型トラック程度の大きさで、いかにもな風貌で無骨な作りだが、飛行能力も有しており
今回の作戦の場所は、普通に車なら2時間程度だが、BLITZの車両なら5分程で到着出来る
1連の状態を見ていた2番隊隊員が京介に声を掛ける
2番隊隊員
「総隊長……おまかせ致しますが、あまりキツイのは控えて下さい……
自分は本部でその後の準備をしてますので……」
それに向かって京介が答える
「大丈夫よwきちんと無傷で家に返すからw」
その言葉を聞いて、口には出さないが
(それが一番心配なんだよ)と考える隊員
輸送車両に乗り込み、作戦の座標をオペレーターから受け取り、発進させる
操縦しながらルーキーに声を掛ける
京介
「ロックはかけろよーw揺れるからぶつけるぞ〜」
新人隊員
「イェッサー!」
隊員の返事が、先程より緊張がほぐれたのを確認しながら、モニターを確認しつつ計器を触っていると、話しかけてくる声が聞こえた
「ねぇねぇ隊長w、チョコチャンククッキー食べる?w」
声の方を見ず、その問に答える
京介
「お〜w食べる食べるwありがとうw
……って、おい!」
聞こえては行けない高い声に、クッキーを受け取りながら振り向いた
そこには4番隊副隊長、八神香奈恵の姿があった
驚いた京介は、珍しくびっくりした声を上げた
京介
「うぉい!君菜琉のとこに居たんじゃ無いのか!w」
香奈恵が答える
「なんか隊長が居たから来たのw」
呆れたように香奈恵の頭をガシガシ撫でながら
後ろの新人隊員達に声をかけた
京介
「ルーキーたちぃw、どうしてなんにも言わないのよ!w」
慌てて新人隊員が答える
「も、申し訳ありません!、大尉殿ですし、副隊長の腕章がありましたので、同行頂くものと!」
珍しく、やれやれといった表情の京介だが、着いてきたのは仕方ないと、座ってなさいと香奈恵に呼びかけ、現場に到着する
輸送車両の着陸場所を確認しながら降りている最中に、香奈恵が話しかける
香奈恵
「ねぇねぇ隊長w、サンジェルマンに行ってもいい?w」
新人隊員の心の声
(サンジェルマン?!あのサンドイッチの美味いパン屋か!……)
京介
「サンジェルマン?w、まぁ良いけど、作戦が終わったらね?w」
新人隊員の心の声
(良いんかい!!)
香奈恵
「ヤターwありがとうw隊長大好きw」
新人隊員の心の声
(あんたらフリーダム過ぎやせんか!!……)
京介が着陸させ、新人達に指示を出す
京介
「とりあえずルーキーズ!、俺と一緒にビル内に突入するよ〜w、その前に話聞いて来るから待機してて〜」
手をヒラヒラさせながら警察官の元に歩いて行く
香奈恵は輸送車両の階段に腰掛けて、顔程あるクッキーをかじっている
新人隊員の心の心
(……副隊長クッキー食ってる)
(そんな大した事ない現場なのか?……)
(ビルの入口に見えるのは人?……赤いけど……血?……)
京介の元に駆け寄る警察官
「ご苦労さまです!応援感謝します!」
京介が言葉を遮る様に話す
「現場の状況は?負傷者の数は把握してます?」
慌てて警察官が答える
「……はい、警察側は負傷者は確保してますが、入り口に倒れているのがまだ……
それに、ビル内の一般人の生死は不明です……
それと、BLITZの特殊部隊の方が、2名程重症です……」
だいたいの情報を聞いた京介は、警察官と歩きながら言う
「警察官とSWATは帰って良いですよw
後はこちらの特殊部隊と我々で事足りますw」
それを聞いた警察官が、食い下がろうと言葉を発したが、それを遮り京介が言う
京介
「たしかにちょっとやそっとの能力者であれば、一般の警察でも何とかできるかもしれません、しかし腐ってもBLITZの隊員に重症を負わせる程度の能力者に、何ができるとお思いですか?」
一転先程のふざけた口調とは真逆に、警察官を詰める
当然の事だろう、能力者と言う時点で警察や自衛隊には十分に脅威だ
しかし、BLITZの隊員に重症を負わせる程度の強さならば、一般の人間では蹂躙されるだけ、それは警察官も理解していた
京介の答えに、何も答えられず沈黙する
頭を掻きながら京介が言う
「嫌味に聞こえたらすみません、無駄に犠牲者を出したく無いだけです……すみません」
その声に警察官も言う
「いえ、仰る通りです……ご協力感謝致します……、お願いします……」
京介が犯人が立て篭もってるビルを見上げる
7階建ての一般的な雑居ビル
外壁は能力者のせいか、馬鹿でかい刃物の様な長い爪痕の様なものが着いている
特殊部隊を重症、警察を再起不能にした能力であろう……
そのまま特殊部隊の方へ歩いて行く
遠目からでも重症者に意識がないのはわかる……
嫌味のつもりはなかったが、ついキツイ言い方をしてしまう
京介
「舐めプした挙句重症か……お前ら医療班はどうした?」
京介の言いたい事は良くわかってる……
ぐうの音も出ない程の正論だ……
ここにいる特殊部隊は、階級が京介より下だ、良くて少佐、しかしBLITZは半実力組織だ、理不尽であれば上官に意見しても許される
これが軍や警察と違うシステムではあるが
今は京介が正論パンチで殴打している……
BLITZは基本作戦時に医療班を同行させなければ行けない
生存率を大幅にあげる為だ
しかしどこを見ても医療班の姿はない……
京介の質問に何も返せない特殊部隊の隊員
言い返せば不必要に立場を悪くする
「……ちっ……だからお前らはダメなんだよ……」
吐き捨てる様に踵を返す
輸送車両に歩きながら、香奈恵に声を掛ける
京介
「か〜な〜え〜w医療班に〜……」
香奈恵が手を振り返しながら食い気味に答えた
「言ったよ〜w」
京介はそれを聞いて素直にお礼を伝えた
ありがとうなw
香奈恵がクッキーをモソモソ食べてるのを見て、近くでひしゃげて倒れてる自販機を見つけ、これは良いやと素手で開き、中の飲み物を香奈恵に手渡した
自販機を素手で開く姿を見た新人隊員は、何故飲み物を、と全く別の恐怖を感じていた
京介
「ん〜w……とりあえず香奈恵はルーキーズの護衛ねw」
その軽い口調の京介の指示に
二つ返事で香奈恵が答える
香奈恵
「うんwわかったw」
京介
「とりあえず医療班が来るまで護ってねw」
香奈恵の頭を優しく撫でながら言う
香奈恵も満更でもない顔で了承する
医療班と入れ替わりでサンジェルマンに行って良いと認識した香奈恵は、無造作にビルに近づく
京介も後を追って散歩するかの様に近づいた
香奈恵が入り口付近に倒れている人間を観察していると、京介が聞く
京介
「生きてる?」
香奈恵
「ううんw死んでるw」
京介
「……そっかァ……」
そう言って空を仰いだ瞬間、何か光った様に見えた
京介が何かをする前に、下から氷の柱が昇る
その光る何かは氷柱で遮られた……
まるで美術品の様な透き通った氷柱……香奈恵の能力……
京介が観察する……ナイフだ
向き直り、香奈恵にありがとうと伝えると、頭を撫でながらビル内にルーキーを誘導する
屋内にはいった新人隊員達は、訓練通りにクリアリングを行い、二人を尻目に動いていた
新人隊員の一人が、扉の1つを開けた瞬間
京介が叫んだ
「開けるなぁ!!下がれ!!」
その命令は間に合わなかった
人間の好奇心と、初の実戦という緊張で、確認してしまう
開けた扉の中には、おそらく人だったものの残骸が、びっしり詰まっていた
それが人間の成れの果てと認識した隊員達は、その姿に恐怖や体調不良を起こす
嘔吐するもの、失禁するもの、腰が抜けて動けないもの、焦点の定まらない目で笑うもの
様々な反応ではあったが、京介はそれを予想していた
今いる新人隊員は、BLITZの隊員募集で集められた者が殆どで、言わば一般社会から入隊した者だ……
能力こそ発現したが、それを一般社会では活かせずBLITZに入隊した……
それが急にスプラッター映画でしか見た事が無い光景を、視覚以外の感覚で感じてしまえば、異常を来たすのも必然だ……
顔を覆い、京介はしまったと思った
辛うじて動ける者も居た
京介は香奈恵と新人隊員達に命令を伝える
京介
「香奈恵、動ける人と一緒に、動けなくなった人達運んでくれる?w」
香奈恵は無邪気に答える
「うんw良いよw」
手をパンパンと鳴らし、新人隊員にも命令をする
「動ける奴は動けない奴を外の輸送車両の所まで運んでね〜wもう少しで医療班来るから、一緒にいてね〜w」
あくまでも軽い口調ではあるが、目の前の光景を見た後では、常軌を逸している様にしか映らなかった
香奈恵に新人隊員を任せて、京介は階段をゆっくり登って行く
新人を運んでくれと頼まれた香奈恵は、京介の命令を忠実に守り、新人隊員を守りながら運ぶ
えずいてはいたが、動ける新人隊員が香奈恵と一緒に他の新人隊員を運び出していた
好奇心で香奈恵にきく
「……あの……八神副隊長……攻撃隊と言うのは……いつもこんな惨状なんでしょうか?……」
屈託なく香奈恵が答える
「ん〜?wまだ全然平気かなぁ?w」
新人隊員
「へ……平気……です……か?……」
香奈恵
「うんwだってまだ皆怪我して無いもんw」
新人隊員
「…………」
香奈恵の答え方と平気と言う返答に新人隊員は考える……
誰がどう考えても異常、異質、異様……
……軍隊よりキツイ程度だろう……そう考えていた者はどれほど居たか……浅はかな隊員たちの考えが、ものの数秒で打ち砕かれる……
目の前の惨状、それを笑顔で語る自分より年下の副隊長……
……ならば総隊長やこの副隊長は、一体どんな惨劇をくぐり抜けて来たのか……
考える事も出来ない……考えたく無い……
雑居ビル外周
連絡を受けた医療班が、丁度到着した所だった
医療輸送機から降りてきた数人の医療班は、先に負傷していた特殊部隊隊員、一般の警察達に医療処置を施していた
責任者が誰かと特殊部隊隊員が尋ねる
「私が責任者よ!」
八尺伽耶の怒号とも取れる自己紹介に
特殊部隊員は疲弊した顔がさらに疲れて見える
伽耶
「聞かれる前に言うけど、菜琉だと優しいから私が変わって来たのよ!
医療班の同伴が無いってどういうことよ!!
あんた達死にたいの?」
京介に続き、伽耶の正論パンチの追い討ちで、特殊部隊のライフはゼロになる
特殊部隊員は心の中で皆同じ気持ちを思った
勘弁してくれ、と
医療班の副隊長、能力の強さも然る事乍ら、医療技術も相まって逆らえない
特殊部隊のヒラ隊員なら尚の事である
そんな伽耶を見つけて、香奈恵が走り寄ってくる
香奈恵
「伽耶ちゃーんw」
伽耶
「香奈恵ちゃん!大丈夫?怪我は?」
香奈恵
「怪我はして無いよwみんな違う血なのw」
伽耶
「違う血?中に怪我した人がいたの?」
香奈恵
「ううんw違うよwみんなバラバラだったのw」
伽耶はその言葉で全てを察した
特殊部隊の漫然とした任務態度のお陰で、余計な犠牲者が出たと感じた
そんな思いとは裏腹に、香奈恵が明るい声で聞いてきた
香奈恵
「ねぇねぇwサンジェルマン行ってもいい?w」
伽耶
「え!サンジェルマン?……」
香奈恵
「うんw隊長がねw医療班が来たら行っていいってw」
伽耶は香奈恵の頭を撫でながら、早く帰ってきてね?と送り出す
行ってきますと無邪気に走り出す香奈恵の背中を見送る
身体中を血で染め上げて尚、笑顔でいられる精神
……何処でそんなに壊されてしまったのか……
伽耶は胸を締め付けられた……
新人隊員の心の声
(アレの後にサンジェルマン……)
(……特別攻撃隊……想像してるより……)
(……アレで軽い?……)
さてとと伽耶が向き直る
「京介が中にいるなら、多分しばらく待機になるかな……
大丈夫だと思うけど……気をつけて……」
京介がゆっくり階段を登って行く……
タバコを咥え、ゆっくりと足を進めて行く……
5階までは何も異常はない……
そう思った瞬間、何処からともなく声が聞こえた
「イャッハー!BLITZの隊長格かぁ!外の奴より強かったらいいなぁ!!」
その耳障りな声にイラついた京介が叫ぶ
京介
「うるせぇぞ三下ぁ!!…お前が下の残骸の犯人かぁ!」
耳障りな声
「だったらどうするよw
お前も同じにしてやろうかぁw!」
京介
「あぁ……うるせぇ…黙れ……」
京介がそう呟いた瞬間、どこに居たかも分からない相手の首を掴み、壁に叩きつけていた
耳障りな声の主は、自分に何が起きたか理解できず、間抜けな声をあげた
「……っか……はぁ…てめぇ……何を……」
言うか否か再び京介が壁に叩きつける
そのまま気を失って倒れ込む
絵に書いた様な三下具合に京介は呆れながら階段を昇る
京介は考える……腐っても特殊部隊はBLITZの隊員……
今のなら多分余裕で対応出来てたはず……
特殊部隊を動けなくしたのは他に居る……
……全部で二人か?……
無造作に階を進める……
7階の扉を開ける部屋は4つ、京介は迷わず1つの扉を開けた……
そこにはソファにふんぞり返ってタバコを吹かす男が一人……
京介が口を開く
京介
「勘違いだったら悪いけど……お前が主犯?」
男は答えない
京介
「1階の犯人はお前?」
ゆっくりと男が話す
「……お前がやった奴の仕業だ…辞めろと停めたんだがな……まぁ、悪い事をしたよ……」
京介
「わざわざこんな事をした理由は?」
男
「……お前達BLITZの隊長格をおびき寄せるエサよ……」
京介
「そうか……もういい……」
京介が何かをしようとした時、男が言う
「……爆弾を仕掛けた」
京介の動きが止まる
男
「威力は5kt、お前はそれを見つけている……」
京介は不味いと顔をしかめた……
男
「ちなみに後3分だ……俺からも聞いて良いか?」
京介はどうぞとジェスチャーをする
男
「お前が西島京介か?」
京介がそうだと答える
男は京介をまじまじと観察し、目を丸くして笑みを浮かべる
笑いながら男は言う
「そうか……お前がクリムゾンインパクトの……」
それを聞いた京介は目の色を変えた
京介
「……誰だ、てめぇ……」
男はゆっくり答える
「……スカーレットスコルピオ」
京介が聞くやいなや飛びかかった……、殴り抜いたのはソファだった
男は消え、階下の男も消えた
続けて声が聞こえる
「いずれまた会えるさ……それより後1分だ……」
その言葉に京介は1階まで階段を砕いて降りた
初めの赤い部屋、男は見ていると答えた、そして見ていても気付かない場所、肉塊の山の中……
肉塊を掘り分けると、辛うじて息のある人間を見つけた
よく見ると、コンクリートに足を固められている
絵に書いた様な時限装置、おそらくわざとだろう
カートゥーンアニメの様な時限装置には、残り30秒の表示……
京介はコンクリートを殴り砕き、外にいる伽耶に向かって、生存者を放り投げた
姿は見えないが、何故か位置がぼんやりわかる……
爆弾は移動するには時間が足りない……、ならば方法は1つ
雑居ビル外周
伽耶が待機して座っていると、ビルの壁を突き破り、人が飛んできた
…………熱い、京介の能力だろうか、この生存者はコンクリートの壁にもものともせず、守られている……
驚きながら、伽耶がその生存者を抱きとめると同時に、雑居ビルが地面に沈んだ
7階建てのビルが丸ごと地面に沈んだ……
状況を理解出来ないでいると、土煙の穴の中から声が聞こえた
「おーいw誰か居るー?w」
京介の声だ
伽耶は呆れながらも大穴に駆け寄り、声に答える
「何がどうしてこうなるのよ!大丈夫なの!?」
京介
「ごめんごめんw爆弾あってさw威力下に逃がしたら地盤沈下しちゃったw」
伽耶
「はぁ?!……これだけ大きなビルが丸ごと無くなる穴が空くって……どんな威力よ!!」
京介
「よくわからんけどw5ktって言ってたからなぁw」
伽耶
「言ってたって……誰がよ!」
京介
「犯人w」
伽耶
「はぁっ?!!」
伽耶が頭を抱えて頭を整理していると、ちょうど香奈恵が戻ってきた
パンを齧りながら、伽耶に向かって声を掛ける
香奈恵
「伽耶ちゃんwお疲れ様wこれ食べる?
いちごのサンドイッチw美味しいよw」
頭が整理し切れずに、香奈恵のサンドイッチを受け取った伽耶が思った事
「…………もうやだぁ……うちの隊長…………」