ANGEL WALTZ   作:とくめい

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case11【花開く蕾】

西暦 3862

 

のどかな田舎の郊外のアパート

人の数も少なく、のんびりするには持ってこいの環境

 

夜千与紗夜の自宅で、隠密部隊の少女と、総隊長秘書の紗夜が微笑ましく過ごしていた

 

実質の無期限休暇を言い渡された紗夜は、少女と共に過ごして数日、BLITZの本部に様子を見に行きたいと考えていた

 

少女は変わらずフリージアの花を顔に当てて、香りを楽しんでいるのだろうか

無表情の顔からは、それが読み取れない

 

洗濯物を畳みながら、紗夜が少女に問い掛けてみる

 

紗夜

「ねえ?ちょっと本部に行ってみたいと思ってるんだけど、久しぶりに隊長の顔、見に行こう?」

 

紗夜の言葉に少女が少し考え、ちょこんと頷く

それを見た紗夜は、笑顔のまま、ちょっとまっててね、と言い、急いで家事を終わらせようとした

 

本部に顔を出そうと考えたのも、思うところがあった

少女は大人しく過ごしているが、今一つ自発的な行動が出来ていない

 

買い物に行っても、食事をしても、どこかに連れて行っても、無言のまま、素直過ぎる

楽しんでくれているとは思いたいが、少し我儘を言って欲しいと考えていた

 

総隊長に何か教えて貰えればと、久しぶりに本部に行こうと考えた

 

経緯を考えれば無理もないが、任されたからには、何かこの少女に変化を与えたいと思っていた

 

出掛けようとする紗夜に、少女が駆け寄り、そっと服の裾を掴む

一緒に暮らして、これが今の精一杯の成果

少女の頭を撫で、行こうか、と手を繋ぐ

 

はたから見たら、まるで仲の良い姉妹に見える

淡麗な容姿の紗夜と、恥ずかしがり屋に見える少女、仲睦まじい姉妹そのものだ

 

本部に向かう車中で、紗夜が少女に声をかける

 

紗夜

「ちょっと差し入れを買いたいから、寄り道するよ?」

 

そう言う紗夜に、少女が頷く

ありがとう、と言うと、たまに寄るケーキ屋に立ち寄る

 

少女に何か欲しいものはあるか尋ねるが、変わらず首を横に振る

わかってはいるが、少し寂しい気持ちになる

 

我儘を言って、好きなだけお菓子を食べて、太った、痩せたと騒いで欲しいと思うのは、自分の我儘だろうかと、少しため息をつく

 

 

ショーケースに並んだ色とりどりのケーキ。 宝石のように艶やかな苺の赤や、重厚なチョコレートの色を、少女はただ、硝子越しにじっと見つめている。

 

その瞳には、かつて「選ぶ自由」を奪われていた者の、どこか遠い記憶が映っているようだった。

 

紗夜は、京介が好みそうな甘さ控えめのケーキと、隊員たちが喜びそうな焼き菓子をいくつか選ぶ。

そして、ふと思いついて、一番端にある、フリージアの花びらのような色をした黄色いマカロンを、少女の分としてふたつ、別に包んでもらった

 

店を出て、車の助手席に座った少女に、小さな包みからマカロンを取り出し、少女の口に放り込む

 

「セイっ!」

 

唐突に口に詰め込まれた少女、相も変わらず無表情で咀嚼する

ゴクンと飲み込むのを確認した紗夜が、イタズラッぽく微笑む

 

「本部に行く前に、二人だけの内緒。お腹が空いちゃうものね」

 

残りの1つを少女に持たせ、食べたくなったら食べて良いと伝える

少女は、包みの中を見つめたあと、手の中のフリージアと包みを抱きしめ、紗夜の服の裾を掴む。

その指先が、さっきよりも少しだけ強く、服の端を握りしめた。

 

今はまだ少ししかない少女の信頼を、もっと膨らませたいと思いながら、再びBLITZの本部に向かい車を走らせる

 

 

 

BLITZ本部

エントランス

 

BLITZの隊員や一般人が行き交うエントランスホール

紗夜が少女と共に受付を済ませる

 

オペレーターは久しぶりに紗夜の顔を見かけ、元気にしていたか、と声をかける

 

オペレーター

「お久しぶりです夜千与さん、お元気でしたか?」

 

そんな当たり障りのない挨拶をされ、紗夜も笑顔で答える

 

紗夜

「ええ、一応元気で過ごさせて頂いてますよ、久しぶりに隊長の様子を見に参りました」

 

そんな言葉を聞いて、オペレーターが怪訝な顔をする

 

オペレーター

「…お聞きになって無かったですか?」

 

オペレーターのその物言いに、紗夜が首を傾げ、さらに聞く

 

オペレーター

「攻撃隊で、何かの作戦らしいんですが、また総隊長が単独行動なさってらっしゃるみたいで、今日お戻りになるみたいですが……」

 

それを聞いた瞬間頭を抱えた

しまった……と、紗夜は心の中で小さく毒づいた。

秘書という職責についてから今日まで、西島京介という男の奔放さは嫌というほど理解していたはずだった。

しかし、あののどかなアパートで少女と過ごした一時はあまりにも心地良く――皮肉にもその安らぎが、あの「歩く厄災」の存在を私の意識から追いやってしまっていた。

 

総隊長が、また単独行動。

今この瞬間、副隊長である三条秋浩がどれほどの泥を被り、どれほどの心労を抱えているか。

容易に想像できてしまうだけに、紗夜は心底、戦友とも呼べる彼に同情した。

紗夜

「あ、ありがとうございます……。ちょっと隊舎の方に伺ってみますね」

 

苦々しい表情を浮かべたまま、紗夜は少女の手を引き、重い足取りで歩き出した。

その背中を見送るオペレーターは、台風の目へと自ら飛び込んでいく秘書に対し、禁じ得ない同情の念を抱いていた。

 

オペレーター

「お……お気を……つけて……」

 

背後からかけられたその声は、もはや挨拶というより、普段から気苦労をかけられているものへの、切実な祈りのように響いた。

 

 

特別攻撃隊

隊舎 総副隊長室

 

コンコン

 

ノックの音に反応し、中からどうぞと声が聞こえた

その声に対して、労う様子で挨拶をする

 

紗夜

「お、お疲れ様です…」

 

久しぶりに目にした紗夜の姿に、秋浩は大袈裟に喜ぶ

 

秋浩

「おぉ、元気してた?どう?調子は、無理してない?」

 

エントランスで聞いた様子とは、少し違う総副隊長の姿に、不安と安堵が入り混じる紗夜

恐る恐る様子を聞こうとしたが、先に秋浩が口を開く

 

秋浩

「フードちゃん?で良いのかな?、少し表情が丸くなったなw」

「紗夜ちゃんと一緒に暮らして、前みたいな鋭さが少し取れたかな?w」

 

そう言いながらカップに紅茶を注ぎ、副隊長室のテーブルに並べ、ソファにかけるよう促す

総隊長である西島京介より、少しばかり丁寧な生活を送っているのだろうか

 

紅茶を入れる手際が、店で見るそれに近い

香りを引き立たせる入れ方を熟知し、淡いダージリンの香りが、部屋中に広がる

その間も、少女に向けて笑顔を崩さずに対応する

 

秋浩

「今日はどうしたの?、久しぶりに様子見に来た?w」

 

それを聞いてようやく話を思い出す紗夜

エントランスで聞いた事を秋浩に投げかける

 

紗夜

「あの、エントランスで聞いたんですが、また単独行動をなさっておられると……」

 

それを聞いた秋浩は、呆れながらも紗夜に説明する

 

秋浩

「…あぁ、まぁ単独行動は毎度の事だからなぁ……、良いんだけど、今回はちょ〜っと毛色が違うみたいでねぇ…w」

 

含みのある言い方に、紗夜がさらに言葉を続ける

 

紗夜

「…失礼ですが、私には言えない事でしょうか?」

 

察しの良い紗夜なら、おそらくそう言うだろうと思った秋浩は、真っ向から否定し、詳細を話す

 

秋浩

「あぁ、勘違いさせてごめん、紗夜ちゃんじゃ無くてフードちゃんの方よw」

「京介に、『居ない間に来ても、紗夜ちゃんと一緒にこっちに関わらせるな』って言われててね」

 

隠密部隊がそもそも、総隊長の子飼いのような独立部隊

戦場から遠ざけたい京介からしたら、それを追って来そうな不安があったのだろう

秋浩に、自身の不在時の釘を頼んでいた

 

紗夜は聞き分けがあるとしても、少女の方はしばらく任務から外されていた為、何かリアクションを起こす危険性があった

 

そのまま秋浩が少女に向けて続けた

 

秋浩

「…絶対紗夜ちゃんと一緒にいろよ、ってさw」

「仕事も何もしないで、紗夜ちゃんといる事が仕事だからな、って言ってたぜw」

 

それを聞いた少女は、無表情で頷く

「…命令…」

 

ボソッとつぶやき、納得した様子を見せた

 

少女の中で、京介からの命令は、傍にいる為に絶対と考えたのだろう

おそらく今までそうして来たのだろうが、今回はなんだか悔しそうに見える

 

 

秋浩もそれに気付いた様子で、少し苦笑いを浮かべながら話しを続けた

 

 

秋浩

「んまぁ、毛色が違うって言うのがねぇ…、BLITZ狩りの事なんだけど、紗夜ちゃんにはその話してなかったよね?」

 

BLITZ狩り……

 

三大組織の者なのか、それとも?

紗夜の頭の中で目まぐるしく疑問が駆け巡る

 

三大組織であれば、総隊長1人ではさすがに問題では無いか?

この少女をここに留めるのは、それに巻き込みたくないのはわかる

しかし副隊長である三条秋浩が、悠々とデスクに座って実務を行っているこの状況、紗夜は整理しきれないまま、秋浩に尋ねる

 

紗夜

「…あの、BLITZ狩りとは?……それに総隊長お1人ではさすがに……」

 

紗夜の言わんとする事がわかった秋浩が、言葉を遮り答える

 

「あ〜…、京介の指示なのよ、そもそも海外の支部の隊員だけが狙われてて、日本にはまだ被害が無いのと、向こうの支部の隊長格がやられてるのがあるから、半端な戦力じゃ怪我人増やすだけだ、って」

 

本部に来なかった数日だけで、自分が分からない情報が多すぎる

戸惑う紗夜に、秋浩が伝える

 

秋浩

「まぁ、だから紗夜ちゃんとかには言っても関わらせるなって言われてるのよw」

「あいつなりの優しさでしょ?、泥被んのは俺も慣れてるしw」

 

泥を被るのは慣れている……

自分がBLITZに入ったのは、少なくとも泥を一緒に被る覚悟があったからで、護られる為では無い

 

総隊長の傍にいたにも関わらず、副隊長にも過保護にされている

傍らの少女と比べてしまう

どれだけ自分は安全な場所に居るのだろうか

歯がゆさで唇を噛む

 

紗夜の様子に気が付いた秋浩、困った様な優しい眼差しで言葉を続ける

 

秋浩

「……フードちゃんと一緒に居るのが今の仕事だし、あんまり物騒なことしなくてもいいなら、それに超したことは無いと思うよ、それが京介の望みだろうしw」

 

そう言いながら、コーヒーカップを口元に運び、書類に目を落とす

 

隠密部隊の少女、秘書である夜千与紗夜、総隊長である西島京介は、昔のトラウマもあるのだろう、この二人に実戦には出て欲しくないと思っているのがわかる

特に隠密部隊は無理矢理発足させたからか余計に危険に晒したくないのだろう

 

京介の気持ちもわかるが、この二人は任務を通して、京介の負担を軽くしたいのがよくわかる程に慕っている

 

可愛い所もあるが、やはり自身も戦場でボロボロになる姿は想像したくない

 

秋浩が二人に不安な気持ちにさせないよう、言葉を選んではいるが、秋浩自身もあまり語彙の堪能な方では無い、頭を掻きながら、この時ばかりは京介の軽口を羨ましく思う

 

コーヒーを飲み干し、間を繋ぐようにゆっくりとコーヒーメーカーに立ち上がった時、副隊長室の扉が開く

 

京介

「お疲れw、疲れたわw、あっ、俺にもコーヒーちょうだいw」

「お〜w来てたのか、元気だった?可愛い顔が久しぶりに見れたわw」

 

唐突に現れ、騒がしくフードの少女の頭を撫でながら入室してきた京介に、秋浩は呆れながら答える

 

秋浩

「…戻るなら連絡しろよ…、だいたいなんでこっちに来るんだよ…」

 

秋浩の質問に、ソファになだれ込みながら答える京介

 

京介

「えっ?wいやぁ、エントランスで紗夜ちゃん来てるって聞いたからw、ついでだしコーヒー貰おうと思ってw」

 

秋浩

「…自販機か」

 

京介の急な乱入に驚いた紗夜だが、総隊長の帰還に、改めて挨拶を済ませる

 

紗夜

「ご無事で何よりです、おかえりなさい、総隊長」

 

立ち上がり頭を下げる紗夜を静止し、京介が座るように促す

今は任務じゃ無いから、固くなるなと言葉をかけ、少女のあたまを撫でながら紗夜に様子を聞く

 

京介

「どう?しばらくBLITZから離れた生活はw、騒がしく無くて平和なもんじゃ無い?w」

 

秋浩からマグカップを受け取りながら、紗夜に向かって話をする

 

紗夜

「おかげさまで、平和な暮らしそのものです、この子もほんの少しだけですが、興味がある物が出来たようで、少し安心してます」

 

その言葉で、少女を改めて良く見ると、フリージアの一輪挿しを大事そうに抱え、光の無い眼差しで京介を見ている

 

それに気が付いた京介が、頭を撫でながら少女に言葉をかける

 

京介

「フリージアの花好きになったか?w、いい香りする?w」

 

その言葉に、少し考えたあとで小さく頷く少女、紗夜もそれを見て少し微笑む

京介は変わらずニコニコと少女を見つめ、安心出来るようにずっと頭や背中を撫でている

 

京介を見つめながら、少女はフリージアの一輪挿しを差し出した

その様子に少し驚いた京介だが、何かを思い付いたようで、少女に言葉をかける

 

京介

「……名前、フリージアにしても良いか?」

いつもの調子で、軽口のようなふざけた様子で言う

 

京介が救ってから、今まで名前をつけあぐねていた

総隊長になり、救ったまでは良いが、紛争地域の中で名前すらままならない少女の人生

 

明日より今日、今日より今を生きる事に精一杯だった少女

その少女が、自発的に差し出したひとさしの花

白い【フリージア】

 

何度も名前を付けようとしたが、少女の気にいるものが分からなかった

その少女が初めて自分に差し出した【花】

 

少女は少し驚いたが、一輪挿しを差し出したまま、小さく頷く

 

その様子を確認した京介が、少女のあたまを抱き抱えるように撫でる

大型犬でも撫でるように、激しくはあったが優しさが伝わるように

 

京介

「いやぁw、良かった、やっと名前付けられたわw苦節数年、ようやく名前が決まったw」

「……フリージアw」

 

何気なく放つその名前に、少女は何かを感じたようで、瞳を潤ませたように見えた

そして京介の呼びかけに応えるように、小さく頷いた

 

紗夜

「……そんなに急に決めてしまっても良かったんでしょうか?」

 

少し不安気に紗夜が聞いた、それに続いて秋浩も言葉を合わせる

 

秋浩

「フードちゃんは良いのか?、結構急に決まったけど……」

 

二人の意見ももっとも、いくら名前をつけあぐねていたとは言え、九割方思いつきの様なもの、少女の様子を三人が食い入るように伺う

 

少女

「……フリージア……」

 

ボソリと呟き、周りを見渡す

 

「……う、れしい?……」

 

表情はあまり変わらないが、確かに自分の感情を口に出した

それを見た京介が優しく背中を撫でながら、少女を見つめる

 

京介

「初めて[嬉しい]なんて口にしたなw、これも紗夜ちゃんのおかげかな?w」

 

少しホッとしたような顔で、紗夜も秋浩も胸を撫でる

それは今までずっと名前が無かった少女に名前が与えられ、そこに至るまでの過程に、少女の中に変化があった事への安堵

 

京介が望む、年相応の平和を、ほんの少しずつ与える事ができたからだ

 

 

秋浩

「フードちゃん改め、フリージアか、よろしくな」

紗夜とフリージアに差し出した紅茶が冷めたのを注ぎ直しながら言う

 

紗夜

「……ふ、フリージア、ちゃん?」

恐る恐る名前を呼ぶ紗夜に対して、ゆっくりとフリージアが頷く

それを確認した紗夜が、ゆっくり微笑む

「よろしくね」

 

その暖かい言葉に、フリージアは再び頷く

 

 

微笑ましい光景を後目に、京介が口を開いた、一段落した様子で秋浩に言う

 

京介

「ところでよ、情報にあった拠点がほとんどスカだったんで一旦帰って来たんだけどw」

 

秋浩が怪訝な表情でその話に聞き耳を立てる

 

秋浩

「スカ?もぬけの殻って事か?」

 

京介

「正確には、[居た形跡]はあったんだけどな、逃げられたって言う方が正しいかな?w」

「ほら、行くまで少しラグあったじゃん?、もしかしたらどっかで調べてるの嗅ぎつけて逃げたのかもw」

 

その言葉にさらに眉間を寄せる秋浩、BLITZ狩りの犯人の正体も未だわからず、敵対組織の拠点も逃げられた後、険しい表情にもなる

 

秋浩

「……参ったな、ちょっと部隊単位の話になるな」

 

そんな事を言う秋浩に向い、京介がそれを静止しながら話す

 

京介

「必要ねぇよw、スカなのはアレだけど、ジェシカが激おこプンプン丸で追跡してたよw」

 

秋浩

「……激おこプンプン丸……」

 

京介のいつもの軽口に少し呆れながらも、秋浩が追加の部隊を編成しないのかと問う

それに対して必要なしとハッキリ答える京介

 

二人の会話にハタと気付いた紗夜が、割って入った

 

紗夜

「あの……失礼ですが、BLITZ狩りの詳細をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

秘書にもこの情報は伝えておかないと、と慌てた京介が、掻い摘んで説明をした

 

BLITZの除隊者が、何故か海外の支部の隊員を狙っている事

その隊員の中には、隊長格も数名いること

それを支部の総隊長達が血眼になって追っている事

 

自身が休んでいる間に、とんでもない状況が起きている事を知った紗夜は、京介に進言する

 

紗夜

「あの、それには自分も参加してもよろしいでしょうか?」

 

毅然とした態度で言う紗夜に、珍しく京介が断わる

 

京介

「それはダメよねw紗夜ちゃんは今フリージアと一緒に居る事が仕事だからねw」

 

まさか断られるとは思わなかった紗夜が、なおも食い下がる

 

紗夜

「…し、しかし、私もBLITZの隊員、まして総隊長秘書です、総隊長が単独で動くのに、幾許かでもお役には立ちます!」

 

紗夜の必死の訴えにも、京介は首を縦に振らない

それが分かってるかのような秋浩は、ヤレヤレと言う表情で書類の確認をしていた

 

京介は、紗夜とフリージア、二人に向けてなおも話す

 

京介

「紗夜ちゃんはフリージアと一緒に居るのが仕事、フリージアはついて来ちゃ行けない、紗夜ちゃんは俺がなんで任せたか、意味が分かってくれると思うんだけどw」

 

何かを言おうとして、言葉を飲み込む

 

確かにそう、フリージアを戦場から遠ざけ、暖かい暮らしを教えて欲しいと託された

あまつさえそれに自身も志願した

それを放り投げる訳には行かない

 

ふとフリージアを見ると、表情が変わらないのに、何故か悔しそうな横顔が見えた

この子も同じ気持ちなのだろうか

 

京介の言葉に、何も言えなくなった紗夜が、捻り出した呪言の言葉

精一杯の皮肉だが、それ以上の言葉が見つからなかった

 

「……ズルいです……」

 

それを聞いて一瞬動きが止まる京介、次の瞬間には大笑いしていた

 

京介

「ごめんねぇw、分かってくれて良かった、優先順位は、俺じゃないからw」

「フリージアも、紗夜ちゃんと一緒にいてくれよ?、帰って来て居なかったら、寂しいからなw」

 

そう言いながらフード越しに頭を撫でる

 

表情が分からないのに、何故かフリージアの表情は少し不満そうに見えた

 

感情が現れて来ている?

BLITZの作戦から離れ、ある程度一般的な日常を送っていた数日は、無駄では無かったのだろうか?

 

そんな事を考えていると、秋浩が京介に向い話しかける

 

秋浩

「しばらく休養か?それともトンボ帰り?」

 

京介はコーヒーを飲み干し、秋浩に向き直り答える

 

京介

「2、3時間したらイギリス支部に行くよw、その後またアメリカ支部に作戦会議に行かなきゃならないしw」

 

軽く話すには重そうに聞こえる内容に、秋浩が言う

 

秋浩

「本当に本部はお前単独で良いのか?、部隊を編成しなくても、支部の連中だってあんまり良い顔はしないだろう」

 

京介

「あいつらはまだ少し俺の実力を分かってねぇからなw、別にそれで良いんだけどw、本部の総隊長の行動に文句があるなら、直接本部に抗議して欲しいねw、喜んで隊長の任を辞退するよw」

 

苦笑いを浮かべる秋浩、京介は喜んで総隊長の座を明け渡すだろう

しかし、それを本部に抗議出来る隊長格は誰もいない

京介の代わりになったところで、隊員達をまとめられないのを分かってるからだ

 

役職だけでなく、実力が伴わない抗議は、ただの戯言に過ぎない

たった一人でBLITZ全体を相手にしようとしてる男とすげ代わったところで、実力の伴わない総隊長に、隊員達が従うとは思えない

 

そんな事を思いながら、秋浩は口元を緩ませ、コーヒーカップに口をつける

 

話が一段落し、京介が紗夜にどうして来たのか尋ねた

 

京介

「所で今日はどうしたの?久しぶりに隊の奴らの顔でも見に来た?w」

 

ケラケラと話す京介に、紗夜が総隊長に会いに来たと応えた

 

フリージアの行動が、多少砕けてきたとは言え、やはりまだ固い部分が多く、自分では少しほぐしきれないと思い、助言をもらいに来た、とあけすけに話す

 

それに対して京介は変わらず紗夜とフリージアに優しく話しかける

 

京介

「まだ何して良いか分からんかい?w、良いんだよ、平和を堪能しな?w」

 

フリージアの頭を撫でながら伝える

 

京介

「紗夜ちゃんはそんなに頑張らなくてもいいのよwもっと肩の力抜いて、普段通りの日常を過ごしてさえくれればw」

「この子にはそれすら初めて尽くしなんだからさw、買い物行って、映画見て、美味しいもの食べて、暖かいベッドで眠る」

「まずはそこからゆっくり初めてくれればいいのよw」

 

事も無げに言ってのける京介に、少し不安気に紗夜が言う

 

紗夜

「あの、なんだかそれではこの子に本当に大切なものが与えられない気がして……」

 

京介

「大切?今のこの怠けても良い状態が大切なんじゃない?w」

「フリージアの経緯は知ってるでしょ?w、だから何も気張らなくて良いのよw」

 

なぁ?とフリージアの頭を変わらず撫で続け、賛同を求めるように問いかける

フリージアが返事をしないのを承知で、そんなジェスチャーをする

 

紗夜が少女を横目に、少し考え事をすると、不意にフリージアが口を開いた

 

フリージア

「……う、れしい?……たの、しい……」

 

その言葉にフリージアを見る紗夜

今まで過ごして、初めてそんな事を口にした事にもだが、この子がそんな風に思っていた事が、紗夜の緊張を解いた

 

秋浩や京介は、自発的にそこまでの感情を顕にした事に、目を丸くして驚いた

 

今まで任務以外ではそこまで接する事が少ないとは言え、京介の不在や代わりに接していた秋浩も、奇妙な親心のようなものがあったのだろうか、口元が綻びた

 

京介は変わらず、そんな事を言うようになったかと、犬のように撫で付けていた

 

京介

「ほらねw紗夜ちゃんのいつもの暮らしが、かけがえの無い体験なのよw」

 

屈託の無い笑顔でいつものように笑い、傍らの少女に肩を組み、紗夜を肯定する

小難しく悩んでいた紗夜に、やる事なす事全てが大切だと、少女と共に伝える

 

悩んでいた事が少し馬鹿らしいと、口元を隠して笑う紗夜

呆れにも似た感情だが、そんなに構えなくても、この少女には全てが思い出になるのだと、改めて認識させられた

 

そんな暖かい雰囲気の中、京介が思い付いたように立ち上がり、自分のポケットや衣類の中を漁り始め、副隊長室の中を見回す

 

唐突にどうしたのかと、紗夜と秋浩は声をかける

その声に生返事をしながら、秋浩の座る机の上のものに目をやる

 

京介

「なぁ、その机の上にある欠片って使うの?w」

 

その声に反応する秋浩

机の上を見回し、なんの事を言っているのか確認する

確かに自身の机の上には、金属片の様な塊が置かれていた

 

秋浩はこれの事か?と聞き返し、塊を見せる

 

机の上にあった金属の塊は、秋浩が書類が飛ばないように使っていた文鎮代わりの銀の原石

どこかでの作戦中に拾って来たもので、特に思い入れも何も無いものだった

 

秋浩

「?……欲しいのか?」

 

京介

「ん〜、半分くらい貰えると助かるかな?w」

 

ほら、と投げ渡し、「サンキュw」と受け取る京介

そしてフリージアに向き直り、頭を撫でながら言葉をかける

 

京介

「ちょっとそのフリージア借りても良いか?w」

 

何を思ったのか分からなかったが、フリージアは京介の言葉に非と答える事はない

無言で一輪挿しを差し出す

 

それに対して感謝を述べると、5分だけ待っててくれと副隊長室を出る

 

秋浩と紗夜が、何事かと首を傾げると、通路の方で声が聞こえた

 

 

「あっつ!なんですか隊長?!」

「何してんですか!」

「ちょっと5分くらい我慢してくれよw」

「隊長!危ないっスよ!」

 

何故か通路が騒がしくなった

複数の隊員の騒ぎ声や、何故か危ない、と言う言葉を聞き、京介がろくでもないことをしている事だけはわかった

秋浩は止めようかどうか悩んでいたが、それを行動に移す前に京介が戻ってきた

 

副隊長室の扉が開いた途端、ありえない熱気が入り込んで来る

 

おおよその検討は付くが、なぜ今この場所でそんな状態になったのか、今一つ理解出来ない

 

笑顔で入室した京介の手には、フリージアの一輪挿しと、何故かバケツが握られていた

 

秋浩

「……なんだそのバケツは……」

 

その質問には答えず、満面の笑みを浮かべながらまたフリージアに話しかける

 

京介

「お花ありがとうなw」

 

そう言いながら一輪挿しを返す、それから、と言いながらバケツに手を突っ込みながら何かを取り出す

バケツの中には氷が浮かべられた水が入っていた

 

京介

「コレwせっかくだからなんかあげたかったんだけどw、ごめんな、そんな良いもんじゃなくてwとりあえず今日はコレで我慢してくれw」

 

そう言いながらフリージアに見せたのは、一輪挿しの花、自身の名と同じフリージアの銀細工のブローチ

 

造形はなかなか上手く、器用に作り込まれていた

紗夜も秋浩も、随分器用に作ったものだと感心した

 

秋浩

「……今のでそんなもん作ったのかよ、なかなか器用だな……」

 

少女はブローチと京介を交互に見ながら、どうして良いか分からない様子だったが、紗夜が受け取って良いんだよ、と声をかけると、両手でゆっくり受け取った

 

京介

「それから紗夜ちゃんにもコレw」

 

そう言いながらバケツから取り出したのは、また器用に作り込まれたフリージアのピアス

紗夜の耳にはピアスの穴が空いていたのを見ていた京介が、思い付きで作ったアクセサリー

 

京介

「せっかくだしwお揃いにしようかと思ってさw」

 

紗夜もフリージアも、こんな短時間の即興でこんなものを作れる京介に感心し、言葉も出せなかった

 

しかも造形のクオリティがジュエリーショップで見かける程度のものを、たったアレだけの時間で作れた事に驚きを隠せない

 

紗夜

「あ、あの……コレは?」

戸惑いながら声を出す紗夜に、京介は事も無げに話す

 

京介

「ん?wあぁ、気に入らなかったら捨てて良いよwフリージアの名前が決まった記念みたいなもんだしwたまたま材料があったから作れただけだからw」

 

秋浩

「……まぁ、銀だしな……」

 

聞きたいことと少しズレてるが、貰っても良いのかとさらに尋ねる紗夜

勿論そのつもりなんだけど、まぁ後できちんとしたものを、と言いかけた京介に、紗夜が食い気味に答える

 

紗夜

「い、いえ!、ありがたく頂戴します」

 

職人の様な造形のピアスを手に持ちながら、フリージアの様子を見ると、受け取ったフリージアのブローチを食い入るように見つめ続け、大切そうに両手で包み、ずっと離さないでいた

 

京介

「あ、材料余ったから、コレ返すわw」

 

そう言ってバケツから取り出した塊は、先程の原石より小さいが、不純物が焼き飛ばされ、小さいがしっかりとした文鎮に変わり果てていた

 

軽く水気を切り、秋浩の机の上に置き直す

 

秋浩

「まだビチャビチャやないかい!」

 

京介

「あw悪いw」

 

騒がしい隊長格二人を後目に、フリージアはブローチを大切に大切に抱え込んでいた

紗夜も、まさかこんなものを貰えるとは思っていなかったもので、少し口元が綻んでいた

 

京介の能力は火属性、通路に出たのは金属を溶かす為の熱量で、部屋が暑くならない為の気遣いだったのだろう

不純物がすっかり飛ばされ、純度の高い銀細工になっていた

 

こういう所がマメなのは、紗夜とフリージアを甘やかしたいと思う不器用さなのだろうか

 

紗夜がフリージアの背中を撫でながら問いかけた

「嬉しい?」

その問いかけに、紗夜を見つめながら、ゆっくりと頷く

 

良かったと笑みを浮かべ、まだ騒ぐ秋浩と京介に声をかける

 

紗夜

「あ、あの、ありがとうございます、コレ、ありがたく使わせて頂きます!」

 

京介

「良いよwそんな高いもんでもなしw気に入らなかったら言ってwちゃんとしたのまた渡すからw」

 

秋浩の机を拭きながら京介が答える

書類の水気を拭き取りながら秋浩が言う

 

秋浩

「もっと高いもんねだりな!そんな安モンじゃ無くてな?!」

 

隊長格同士だから言える冗談に、紗夜が口を隠して笑い、フリージアがまた大切なものを手に入れられたと感じた

 

 

秋浩の机を拭き終わった京介が、ヤレヤレとした表情で話しかける

 

京介

「んじゃそろそろ行くわw」

 

軽く短い言葉に、秋浩が答える

 

秋浩

「もう行くのか?」

 

京介

「言ったろ?まだ仕事あんだよwって言うか変わって?w」

 

秋浩

「嫌だよ、お前絶対サボるだろ!」

 

秋浩の的を得た返答に満足したのか、フリージアの頭を撫でながら、紗夜に声をかける

 

京介

「仕事終わったらまた会いに行くからw、それまでこの子頼むよw」

 

屈託のない笑顔で、再び紗夜に少女の世話を頼んだ

 

[また]会いに行くからと、無事に帰る口約束を結ぶ

 

その言葉を受け、紗夜が慌てて立ち上がり、京介にプレゼントのお礼と、任務の無事を言葉で返した

 

紗夜

「お気をつけて……無事に帰りをお待ちしております……」

 

深々と頭を下げ、総隊長不在の間の少女の事を任せて欲しいとの思いを込めて

 

副隊長室を出ようとした京介に、少女がしがみつき、無言で見つめた

それを笑顔で安心しろと言いながら、京介が話しかける

 

京介

「きちんと帰ってくるからなw心配しなくて大丈夫w俺は強いんだw、良い子にしてろよ?w」

 

無言で京介を見つめ、少しだけ強く握っていた裾を、名残惜しそうに、それでも聞き分けよくゆっくりと離した。

少女の頭を軽く撫で、「行ってくるよ」と声をかけると、その言葉に応えるように少女は小さく頷いた。

 

慌ただしく現れ、嵐のように去っていった京介の背中を見送り、静けさが戻った部屋で秋浩が少し寂しげに笑う。

再びコーヒーを淹れ直しながら、紗夜とフリージアにも紅茶を勧めてくれた。

 

紗夜はそれを丁重に断り、一礼する。

 

紗夜

「バタバタと騒がしくしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

秋浩

「いや、気にしてないよ。いつものことだし、むしろ久しぶりに賑やかで良かったよ」

 

普段通りの穏やかな口調で答えられ、紗夜も安心する。

これ以上は仕事の邪魔になると判断し、紗夜は改めて退室の挨拶をした。

 

「もう行くのかい?」と寂しそうに言われたが、紗夜は「また来ます」と笑顔で返し、フリージアの手を引いて部屋を後にした。

その背中を、秋浩は「いつでも待ってるよ」と静かに見送った。

 

 

BLITZ本部を後にし、そのまま帰路に着いても良かったが、京介の言う[日常]を満喫させたいと考えた紗夜は、フリージアに向かって提案する

 

 

紗夜

「ねぇ?帰る前にちょっと行きたい所があるんだけど、行ってもいいかな?」

 

フリージアはその問いかけに紗夜を見つめ、小さく頷いた。

その瞳には、心なしか期待の色が宿っているように見えた。

 

名前をもらったことや、京介に会えたことが良い影響を与えているのだろうか。

紗夜はそう信じ、優しく微笑み返した。

 

二人が向かった先は、自宅とは逆方向の郊外をさらに進んだ、何もない野原だった。

その中央に、ポツンと佇む小さな小屋がある。

 

車を停めて小高い丘へと歩いていくと、駐車場からは見えなかった小屋の向こう側に、地平線まで続く広大な花畑が広がっていた。

 

さらにその先には、大戦によって形作られた湖が静かに横たわっている。

かつての戦火がもたらした負の遺産と、この世のものとは思えない絶景が、地平線の彼方まで交錯していた。

 

市街地とは真逆の、静謐な自然の営み。そよ風が花びらを揺らし、舞い散らせる。

 

任務で訪れる場所といえば、気候変動や紛争で荒廃し、砂埃が舞う大地ばかりだった。

廃墟、鳴り止まない銃声、焦げた火薬の匂い。

そんな地獄のような日常とは真逆の世界が、ここにはあった。

 

目の前に広がる色鮮やかな「花の絨毯」に、少女はただ釘付けになっている。

紗夜は何も言わず、その揺れ動くフリージアの隣に、ただ静かに寄り添った。

 

日が傾きかけ、しばらく沈黙が流れたあと、フリージアがハッとして紗夜を振り返る。

紗夜は穏やかな笑みを浮かべた。

 

紗夜

「……初めて見た?」

 

フリージアは小さく頷く。

 

紗夜

「良かった。綺麗な場所、見せたかったの」

 

フリージアは紗夜の服をぎゅっと掴み、その言葉を受け止める。

 

紗夜

「前にね、総隊長に連れて来てもらったの。私がBLITZに入って少しした頃かな。サボろうとした総隊長を追いかけたら、『なら着いて来い』って」

「その時、総隊長は妹さんを連れてきていたの、忍ちゃんっていうんだけど。[妹にはなるべく綺麗なものを見せてやりたい]なんて言ってね」

 

紗夜の言葉に、フリージアは何を思っただろうか。

総隊長である西島京介と、目の前の紗夜。

この二人が、「綺麗だと思う場所」へ自分を連れてきてくれたという事実に。

 

少女は言葉を返せなかった。

けれど、自分を大切にしてくれているという事実は、胸の奥から広がる温かさが証明していた。

 

それは生まれて初めて触れる感覚であり、自分でもまだ正体のわからない感情

紗夜の腕に強くしがみつく、その仕草に、紗夜はただ優しく抱き締め返して応えた。

 

紗夜

「そうそう、その時にね、ここのお店でソフトクリームを食べたの。三人で並んで食べたんだけど、なんでかものすごく美味しかった。忍ちゃん、三つも食べてお腹を壊してたのよ」

「フリージアも、一緒に食べよう?」

 

他愛のない話。

しかしそれは、京介の知られざる一面を伝える、紗夜なりの贈り物だった。

少女が知らなかった日常を、体験してほしかったのだ。

 

フリージアは小さく頷き、花のフレーバーを売りにする露店に並んだ。

 

一面の「花の海」を眼前に据え、ベンチで肩を並べてソフトクリームを口にする。

 

紗夜

「……やっぱり美味しい。フリージアと一緒に食べれて、本当によかった……」

 

その言葉を噛みしめるように、少女はそっと紗夜の肩に頭を預けた。

それに気付いた紗夜も、少女の肩を抱き寄せる

 

表情は相変わらず読み取れないけれど、口に運ぶソフトクリームの甘さは、きっといつもよりずっと優しく、温かく感じられたはずだ。

 

傾きかけた陽光が、少女の胸に飾られた銀細工のブローチを眩しく反射させる。

そよ風が二人の頬を優しく撫で、丘の上にはただ静かな時間が流れていた。

紗夜とフリージアは、噛み締めるようにその[日常]という名の奇跡に浸っていた

 

 

 

 

 

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