ANGEL WALTZ   作:とくめい

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case13【ひび割れる決意】

BLITZの本部からイギリス支部に舞い戻った西島京介

少しの打ち合わせを終わらせ、そのままアメリカ支部に向かった

 

 

アメリカ支部

総隊長室

 

ノックの音が聞こえ、扉に向かって入室を促すジェシカ。

彼女の視線は書類の山から離れない。

京介が足音を立てずに部屋へ滑り込むと、重苦しい静寂がふっと和らいだ。

 

京介

「ただいまw、機嫌治ったか?w」

 

その軽口に呆れながら答えるジェシカ、BLITZ狩りの犯人は疎か、拠点の手がかりが少ない事に少し苛立ちながら話す

 

ジェシカ

「……アンタは本当に緊張感がないねぇ、そんなのがBLITZ最強とは、世も末だよ……」

 

そんな皮肉を込めた言葉に対しても、いつもの飄々とした態度で返す

 

京介

「別に本部付けの総隊長になりたいなら、喜んで変わるぜw別にやりたくてやってないしなw、それにそんなに怒るとせっかくの美人がハロウィンのブギーマンみたいになるぞw」

 

褒めているのか貶しているのか分からない絶妙なラインの言葉に、怒る事を諦め、書類に目を落としながらため息を付く

 

ジェシカ

「……ハァ、それを本気で言ってるから始末が悪いんだよ……」

 

その皮肉を笑顔で聞き流し、コーヒーメーカーからコーヒーを注いでソファに座る

 

ソファの前のテーブルに散らばる書類を、コーヒーを啜りながら無造作に掴み、読み進める

 

京介

「なんでアメリカ支部だけ被害が多いんだ?w、支部の除隊者で間違い無さそうか?w」

 

その質問にジェシカが苦い顔で答える

 

ジェシカ

「クラッカーの持ってきた情報だと、ほぼ間違い無くうちの除隊者だけど、流石に誰かまでは分からない、そもそもアタシが総隊長になる前の除隊者みたいだから、余計に分からないよ」

「データ照合してるけど、数が多過ぎて少し時間がかかるよ」

 

ふんふんとジェシカの話を聞きながら、変わらず書類を見つめる京介

 

その中でチェックを入れられてる除隊者の項目を見ながら、疑問をジェシカにぶつける

 

京介

「なぁ、この死体が見つかって無いのに死亡扱いの隊員は?w」

 

その言葉に京介の方をチラリと見たあと、聞き流しながらジェシカが口を開く

 

ジェシカ

「クリムゾンインパクトの後の任務で、スカーレットスコルピオと当たった時の殉職者だよ、そのテーブルの除隊者は一応容疑者から外れてる」

「交戦後に、衣類やドックタグで死亡判定した隊員だよ」

 

ほうほうと大人しく聞いている京介に向かい続ける

 

ジェシカ

「……あんたには耳が痛い話だろうけど、本部の前総隊長が消えてから、スカーレットスコルピオの動きは異常なほど活発化した時があったんだ。あんたが入院していた時期だね、支部は対応に追われ、その渦中でうちの先代の総隊長も殉職したんだ」

「地球で第二波が起きたくらいでも言い過ぎじゃなかったよ、少しだけ、アンタの苦労も味わえた……」

 

その言葉を聞き、京介は手に持っていたマグカップを置く。

大きなマグカップを置く、ゴトンという音が、やけに大きく響いた。

 

京介

「……そりゃ悪かったwあの時期、俺のせいでみんなに迷惑をかけたことは、本当にすまないw……」

 

その言葉に、ジェシカの顔から鋭さが消えた。

 

京介はほんの一瞬だけ黙り込み、それからわざとらしく肩をすくめて、いつもの軽薄な笑みを貼り付けた。

 

軽さの中にいつもと違う重みを感じたジェシカが、少し焦りながら口を開く

 

ジェシカ

「……ごめんよ、責めるつもりは無いんだ、アンタも大変だったし、お互いの総隊長達が殉職した、ニュースや報告書を見て、アンタが人生何回分苦しんだのかは、アタシには想像できないけど、良く戻ってくれたと思うよ……」

 

京介

「気ぃ使う仲じゃねぇだろう?w、礼は言ううがw、ちょっとこの[死体無し]の殉職者の詳細知りたいんだけどw、医療班呼んでもらえるか?w」

 

京介の気遣いに、それ以上言及しないようにするジェシカが、当時の状況を知る医療班と、その報告書を用意出来るか内線で呼びかける

 

ジェシカ

「…あぁ、構わないよ」

「すまないけど、クリムゾンインパクト直後からの殉職者のデータと、詳しい詳細を知ってる医療班をこっちによこして貰えないかい?、本部の総隊長が話を聞きたいらしいんだ」

 

それを聞き終わり、京介がジェシカに向かい礼を言う

それから間もなく、医療班が総隊長室に現れた

 

総隊長室の扉が開き、医療班が入室したが、昔京介が対面した総班長とは違う雰囲気の女性が入ってくる

 

???

「失礼しま〜す、初めまして、医療班総班長の、キャンディ・Dでぇっすw」

 

本部の医療班とは似ても似つかない風体に驚いたが、すぐさま消化し、大笑いした京介

それに驚くジェシカと、わけもわからず笑うキャンディ

 

京介

「w随分アグレッシブ過ぎる医療班じゃねぇかw、前のダンナはどこいったんだよw」

 

その質問に答えるジェシカ

少し口元を抑えてるようにみえる

 

ジェシカ

「…あんたが昔怪我人連れ込んだ後に、科学班に移動願い出したんだよ、治す事より、生かす方法を探したかったんだとさ」

 

京介

「怪我人?、あぁ、強化骨格にした子か?wあの子の名前が決まったんだwフリージアだwよろしくなw」

「にしてもなかなかの逸材過ぎるだろw、いや俺は好きだけどよw」

 

京介がつい言いたくなるほどに、派手な風貌の医療班総班長、アシンメトリーな髪色を、根元で分かれるように結び、派手なメタルバンドのようなメイクを施している

BLITZの隊服も、オシャレになるよう着崩し、アレンジしていた

 

ジェシカもそれは分かってるのか、庇うのも含めて言い訳をする

 

ジェシカ

「そんな風体だけど、医療技術や能力はなかなか目を見張るもんがあるよ、まぁ何度言っても直さないから、服やメイクは放っといてるけど、真面目な場所だと言う事聞いてくれてさ、結構可愛い所もあるんだよ」

 

笑いを堪えられない京介は、終始笑い続けているが、先程の質問を投げかける

 

京介

「当時の詳細はわかるか?wそれとこの死体無しの殉職者の事聞きたいんだけどw」

 

キャンディ

「ok、ジェシカに伝えようとして纏めてたんだけど、間違いなく死亡確認が取れたのにはチェックしてるけど、それ以外の怪しい?のにはまる付けてるのw」

 

思いの外仕事が出来ている医療班総隊長、驚きながらもありがとうと伝える、何故か京介の隣に座り、腕を絡めて書類を眺める

 

京介

「なんで腕絡めんだよw」

 

シンプルな疑問をキャンディにぶつける

 

キャンディ

「えぇ!wだって初めて会ったんだもの、お近付きになりたいし、それにクリムゾンインパクトの生き残りでしょ?、お話聞きたいからw」

 

理由はシンプル、ジェシカに気に入られる事から、多分本当に裏が無くそうしてるのだろう、しかし本部の総隊長、クリムゾンインパクトの生き残りだと言う理由だけで、何故そうなるのか少し疑問だった

 

それに対してジェシカが口を開く

 

ジェシカ

「キャンディ、辞めときなよ?、京介の横にはおっかないバルキリーがいるんだから」

「でも珍しいねぇ、キャンディが初対面にそこまで懐くなんてw」

「京介アンタ、犬とかに好かれるでしょ?w」

 

ジェシカの言葉にキャンディが反応する

 

キャンディ

「私犬じゃ無いよ!、それにこの総隊長さん、なんだか構いたくなっちゃうw」

 

そのやり取りに、素直に笑う京介

図らずも自身もこのキャラクターの強さを気に入ってしまったことを素直に話し、引き続き殉職者名簿の話をする

 

京介

「なんでそんなに仕事早ぇんだよwいや助かるけどもw」

 

キャンディ

「んふふ〜wでしょでしょ!、もっと褒めてぇ」

 

キャンディの頭を素直に撫で、褒めながら書類の確認をする

 

京介

「このバツとまるの差は?」

 

京介に絡まりながらキャンディが答える

 

キャンディ

「これはねぇ、身体の一部、つまりこれが無かったら明らかに死亡する部位が見つかった隊員にバツしてるの、例えば頭部とか、それからまるの隊員は、手足や身体の一部だけとか、もしかしたら…って言う部位だけしか見つからなかった隊員」

 

流石にジェシカに褒められるだけの事はある、派手な風体とは裏腹に丁寧過ぎる仕事をしている

流石の京介もこれには感心した

 

京介

「ちょっと良く見てから、また話するけど、少し待てるか?w」

 

京介のその問いにキャンディは素直に頷く、ジェシカは書類を見つめながら、横目で二人を堪えきれない笑顔で見ていた

 

ジェシカ

(珍しく京介が困ってる顔が見れたね…)

 

不意に口を開く京介

 

京介

「ジェシカ、確認だけど、生きてる除隊者の確認何割終わってる?w」

 

その言葉に書類を見直し、急いで確認する

 

ジェシカ

「…ん〜、6?5…割くらいだね」

 

京介

「その中で疑わしいのは?w」

 

ジェシカ

「今のところは全員真っ白だねぇ」

 

それを聞いて京介が考え込む

飄々としながら、顔は笑っているが、真剣な眼差しで書類を見つめている

 

ジェシカが京介に言葉をかけようとした時、京介の方から口を開く

 

京介

「…なぁ?w前総隊長の名前って知ってる?w」

 

意外な言葉に一瞬止まる、何を聞きたいのだろう?

アメリカ支部の前総隊長の名前、忘れる訳は無い、知らないはずも無い、いつも呼んだ名前、いつもみた名前

 

ジェシカ

「ルーインだけど、それがどうかした?」

 

京介

「ところでよう?wいつもいる総副隊長はどうしたんだっけ?w」

 

京介の質問の意図が分からず、少し混乱する、しかしそれもなにかの確認だろうと、当たり前に答える

 

ジェシカ

「…ゲイン?アイツもBLITZ狩りでやられたんだよ、手酷くやられたんでね、今は療養中だよ」

 

それを聞き、変わらず唸りながら書類を見ている京介

気になったジェシカは、京介に聞く

 

ジェシカ

「何が気になったんだい?もし何かあれば、言って貰えると嬉しいけど?」

 

悩みながら京介がジェシカの方を向き、躊躇するがゆっくり口を開いた

 

京介

「可能性だし、まぁありえないパターンだから、あんまり当てにならねぇかも知れんけどな?w」

 

そう言い、書類をジェシカに突き出しながら続ける

 

京介

「前総隊長と、やられた副隊長は、身内かなんかか?」

 

ジェシカ

「ん?あぁ、親子だよ、ルーインにゲインの事頼まれたんだ、だから他より厳しくしたけど、お陰で総副隊長に抜擢されたんだ」

 

そうかと短く言い、キャンディの方に向き直り確認する

 

京介

「この殉職者の状態って、間違いない?w漏れとかミスは無さそうかい?w」

 

キャンディ

「勿論!昔の報告書の確認とか、当時の対応した隊員に嫌がられるくらい確認したんだよ!それはもうくどいくらいにw」

 

それに対して京介が結論を口にする

ジェシカとキャンディに確認しながら、二人にわかりやすいように

 

京介

「この殉職者のリストは、非常に正確で密度の濃いもんだろうし、キャンディの仕事が正確なのを物語ってるw」

 

「俺が何が気になったかって言うと、このバツ印w他の隊員は明らかに身元の怪しい死に方をしてるけど、そのルーインだけ、綺麗に前総隊長だとわかる死に方をしてるw」

 

「他はまぁw口にしたらイカん死に様だけどなw俺はそれがどうしても不自然に見えてなぁw」

 

それを聞いてジェシカも書類を食い入るように見つめる

確かに、殉職者のバツ印の隊員は、ドックタグや衣類、手足や身体の部品のみの遺体で発見されてはいるが、ルーインだけ、上半身、頭部も含めた半身で発見、死亡確認をされている

 

いくら支部とは言え、総隊長が身体の欠損をする程のやられ方をするだろうか?

 

流石に頭部と半身が見つかっていれば、本人確認でDNAや生体組織の確認まではしない

 

考えたくない、いや、考える事すら出来なかった明らかな死亡理由

それを見たジェシカが、ハッとしながら京介を見る

 

京介

「いや確定じゃ無くてwあくまで可能性だからな?wBLITZの医療班が確認した訳だしw」

 

そう言われ、当時の事を何とか思い出すジェシカ

確かに、自身も確認し、泣き崩れ、アメリカ支部での隊葬を行った

大人気無く泣きじゃくるゲインを慰めた記憶もある

 

しかしそれすらもフェイクだとしたら?……

 

息が荒く、冷や汗をかきながら、みるみる顔色が悪くなっていく

暗い顔でジェシカが口を開く

 

ジェシカ

「……今からゲインの家に行ってみる……」

 

思い詰めた様子で、そう口を開いたジェシカ

それを聞いて京介が止める

 

京介

「まてよwそう結論に飛びつくなってwだから気の所為か俺の考えすぎかも知れないって言ったろ?w」

 

京介の腕を振りほどき、何かを言いかけたジェシカに、更に言葉を続ける

 

京介

「それとなw仮にそうだとしても、動機が読めねぇだろ?wBLITZ狩りをする理由は?自分の死亡を偽装する意味は?wそれが言えるなら行っても良いぞw」

 

そう言われ、興奮気味だったジェシカだが、ゆっくりと落ち着いてくる

 

京介の笑い顔で見つめられ、尚且つ動機が全く分からない

それがジェシカに冷静さを取り戻している

 

ジェシカ

「……すまない……」

 

冷静になったのか、謝罪を口にするジェシカ、それに対して京介がいつもの軽口で話す

 

京介

「謝る事じゃねぇよw身内の事だw多分俺も同じ事になるわw」

「とりあえずw、キャンディ?w向かいのコーヒーショップから、三人分のカフェラテ買ってきて貰えねぇかな?w」

「好きならドーナツ買ってきても良いからw」

 

そう言ってキャンディに紙幣を渡すと、キャンディはまるで犬のように頷き、軽快に総隊長室を出た

 

菓子で喜ぶ姿に、八神香奈惠や、妹の忍の姿が少し被った

 

微笑みながら向き直り、ジェシカの背中をさすり、椅子に座るように促す

 

そんな京介にジェシカが問い掛ける

 

ジェシカ

「……京介…ルーインが生きてる可能性、あると思ってるんだね?……」

 

ジェシカの言葉に、ヘラヘラとしてはいるが、困ったような雰囲気で視線をズラす京介

少しの沈黙

部屋には、コーヒーメーカーが立てる小さな駆動音だけが響いた、そして意を決したように口を開く

 

京介

「生きてる可能性ねぇ……正直俺の気の所為であって欲しいと願ってるw浅はかだと思ったけどよw、俺の疑問を口にしたから、お前達の心に土足で踏み込んじまったw……すまねぇ…」

 

ジェシカは京介の謝罪を聞き、少しだけ視線を伏せた。

そして、ふっと肩の力を抜いて、力なく笑う。

 

ジェシカ

「……本部付けの総隊長が、そんな弱気でどうするんだい……目を背けてたのはアタシ達だよ……」

「……背けてた事実を、アンタが突っ込んでくれた、それだけさ……アンタの方こそ、謝る事なんかないよ……」

 

そう言うジェシカに、跪いて背中を撫でる京介

本部の総隊長に気を使われ、慰められるこの状況、支部の総隊長とは言え、情けないような贅沢なような

ジェシカは自分自身を笑った

 

ジェシカ

「……なら総隊長殿、アンタはどうする気だい?何か考えがあるのかい?」

 

その答えに自信満々に答える京介

 

京介

「見敵必殺!サーチ&デストロイ!ぶん殴って話をすれば、万事解決よ!w」

 

西島京介という男をよく知るジェシカ、しかし今までの流れから、だいぶ素っ頓狂な答えに、ジェシカの頭がキャパシティを超え、珍しく大笑いした

 

ジェシカ

「ッッツ……、アーッハッハッハw」

 

通路をスキップしながらキャンディが戻ってきた、手にはドーナツと、ラージのアイスカフェラテを三つ持って

 

キャンディ

「ふんふんふ〜ん♪」

 

総隊長室の前に来た時に、ジェシカの今まで聞いた事のない笑い声が聞こえた

 

キャンディ

「うん?……」

 

総隊長室の扉が開く、中の光景に、キャンディが困惑した表情を見せる

 

キャンディ

「……え?、ジェシカどうしたの?二人でなんか面白い話しでもしてたの?w」

 

そう聞かれたジェシカは、未だ笑いながらキャンディに言う

 

ジェシカ

「……アッハッハ!……いや、京介がアンタが美人だって言うからw」

 

キャンディ

「酷くない?!、可愛いとは思ってないけど、可愛くしてるんだから!」

「ジェシカと比べて、総隊長さんは見る目があるよねwますます気に入っちゃったw」

 

そう言いながら、荷物をテーブルに置き、何故か京介にしがみつく

首に巻いていたチョーカーのトゲが、こめかみに突き刺さる

 

京介

「痛ぇw、なんだよwチョーカーかw出来れば次から人に飛びかかるなら、その鋭利なチョーカーのトゲは止めてくれると嬉しいかなw」

 

キャンディ

「あっ、ごめんごめん、次から刺さらないのにするからw、でも褒めてくれてありがとうw」

 

キャンディは京介の頭を抱きしめ、ケラケラと笑いながらも、ふと手元のタブレットとカフェラテを交互に見る。

 

キャンディ

「……で、話の続きは? 内緒話するなら、アタシ戻るけど?w」

 

派手なメイクの裏で、彼女の瞳が射抜くように二人を見つめる。

 

その言葉に、ジェシカが笑い過ぎて涙目になっていたのを拭きながら答える

 

ジェシカ

「……ッッ…いや、良いよ、ドーナツ食べていきなw」

 

京介も、キャンディの風体とは裏腹な総班長と言う立場上、知ってて貰いたいと言い、とりあえず一休みしようと誘う

 

ドーナツの甘い香りが部屋に漂う。

誰もが知っているはずの日常的な光景だが、今この部屋にいる三人の間には、先代総隊長の死という「嘘」が重くのしかかっていた。

 

京介は、一口飲み込んだカフェラテのカップをテーブルに置き、キャンディの方へ少しだけ身を乗り出した。

 

京介

「ちょっとまぁ有り得なくも、今現状濃い線の可能性の話をするけどw、ゲインの診察と診断をした医療班ってキャンディ?w違うなら誰かわかる?w」

 

キャンディは京介のその問いかけに、あたまを捻って思い出す

 

キャンディ

「ん〜…ゲイン副隊長がやられた時は、他の班員が現場に出払って…支部に居たのは確か……十二班?」

 

タブレットを操作しながら確認する、該当のデータがあったのか、声を張って答える

 

「そうそう、十二班の班員が対応してた!」

 

それを聞いた京介は、更にキャンディに確認する

 

京介

「誰が何したとか迄わかる?w」

 

それを聞くや否や、タブレットを見せ、処置の内容を京介に確認させる

 

キャンディ

「怪我は本物だし、医療班が何か隠してるって様子もない、それにその最終確認は副班長がしてるから、ゲイン副隊長は単純に重症ですねぇw」

 

それならばと、ならばルーインのデータはわかるかと続ける

しかしキャンディがタブレットを操作する手を止め、怪訝な表情をする

 

キャンディ

「アレ?…ルーイン総隊長の記録が見つからない?……」

 

それを聞いた京介が、顔を覆い天を仰いだ

当たって欲しくない予想が、また一歩正解に近付いてしまった

 

指の隙間からジェシカを横目で見る

顎に手を当て、深刻そうな表情でキャンディの方を向いてる

 

キャンディ

「クリムゾンインパクトの後だから、もしかしたらデータのデジタル化をし損ねてるかも知れないから、ちょっと医療センターに戻ったら確認してみるけど…」

 

そう言うキャンディの提案に、ジェシカが口を開く

 

ジェシカ

「一応、確認出来るならして貰っても良いかい?」

 

物事が柔らかい話し方だが、明らかに目が笑ってない

ジェシカの様子を察したキャンディは、わかったと言い、そそくさと出て行こうとする

 

そんなキャンディに京介が声をかける

 

京介

「協力してくれてありがとうw今度本部に遊びに来なよwみんなにも紹介するからw」

 

何時ものように飄々と軽口を言い、キャンディに協力の感謝を述べ、何時でも迎えると伝えた

普通なら社交辞令だと取られるが、ジェシカから京介の話を聞いていたキャンディは、京介の頭を抱きしめ、また会おうねと伝えて出て行く

 

お互いの当たって欲しくない可能性に、更に一歩近付いた事により、総隊長室には重い空気が流れる

 

しかし、何故か急に京介の奇声が室内に響き渡った

 

京介

「いゃあああぁぁあー⤴なんで当たっちゃうかぬぁ〜!w外れてろよぉ〜!w」

 

その日本語で奏でられた奇声に、あまりにも唐突過ぎた為、ジェシカがビクッと肩を震わせた

 

彼はソファの上でジタバタと身をよじり、クッションを抱えて数秒だけ子供のように喚き、駄々を捏ね、そして、ふっと動きを止めると、まるで何事もなかったかのように話し出す

 

ジェシカ

「…なんだよ、びっくりするじゃないか……」

 

京介

「いやぁwまぁまだクロと決まった訳じゃないしw、もう少し詰めようぜw」

 

そんな京介の言葉に、ふふっと笑うと、肩を叩きありがとうと伝えた

 

ジェシカ

「…気、使ってくれてありがとうな…けど、ほとんど正解じゃないか、大丈夫さ、覚悟は出来た…」

「残念だけど、ここまで来たら無実の線は無くなったんだ、そんなに頑張って無実にさせようとしなくていいよ……ここからは、動機を探そう」

 

ジェシカの諦めたような答えに、何時もの軽口で返せない京介

何とか前総隊長が関わってない証拠を提示しようと考えたが、どう見てもBLITZ狩りの犯人だと示していた

 

改ざんされたデータだけでも、それは十分な証拠になり得る

 

京介

「お、おうw」

 

笑ってはいるが、困ったような悲しそうな表情をしながら返事をする

 

ジェシカ

「それじゃあ総隊長さん?、何か思い当たる事はあるかい?」

 

ジェシカにそう問われ、頭を切り替え考える京介

シンプルな動機になり得るのは、BLITZの過酷さ

待遇やいじめ、上下関係の理不尽等ではまずないはずと考えた

 

BLITZは一般の隊員でも、民間企業の重役程度は待遇が良い、虐めに関しては、隊長格がそうならないよう目を光らせている、それこそ何一つ見逃しては行けない、能力と言う性質は、感情で幾らでも暴走する危険性を孕んでいるからだ

 

上下関係に関しても、総隊長と言う立場になれば、支部長は疎か、上位の役職にも対等に意見出来る

 

そうなれば、消去法で考えられるのは多くない

 

そしてジェシカやゲイン、少なくとも隊員には慕われている事を考えると、何となく原因(動機)が絞られる

だが、まだ材料が少ない

確認するようにジェシカに話しかける

 

京介

「なぁw、前総隊長のルーインって、作戦終わりとか、作戦自体に関して、何か話してた事無い?w」

 

ジェシカが京介の問に頭を捻る、考えながら言葉を続ける

 

ジェシカ

「ん〜、まぁいつも一緒って言う訳じゃないから、あんまり思い当たる節は……ん?そう言えば」

 

思い当たる節があったのか、ジェシカの反応に京介が続けてくれと促す

 

ジェシカ

「よく言ってたけど、子供が助けて欲しいって言ってるなら、死んでも助けるのが大人の仕事だ、って」

「関係あるかい?そんなに役に立たないさねぇ…」

 

[子供が救いを求めたら][死んでも救うのが大人]……

 

その言葉に、京介が動悸を覚える

 

クリムゾンインパクト以前のBLITZの怠慢な体制を、京介も味わっている

その顕著な被害者……

 

他のBLITZの支部がそうだと思いたくは無いが、本部だけでは無く、世界的に支部でもそれが起きていたら?

 

幼少期のトラウマが、京介の中でフラッシュバックする

心臓がドクンと脈打ち、激しく息を乱す

冷や汗が浮き出、いつもの余裕そうな表情が消える

耳が遠くなり、昔の記憶が蘇る

 

五条夫妻、忍、響華、未熟な自分のせいで、起こらなくてもいい悲劇を引き起こした

 

唐突に頭を抱え、唸りながら蹲る京介

先程の飄々とした様子とはうって変わって苦しんでいる

 

自身の未熟さが故に引き起こした災害

自身の弱さ故に救えなかった命

自身の甘さが引き起こした惨劇

 

目まぐるしくあたまの中でそれらが駆け巡る

妹を救いたくて、母親を助けたくてBLITZに入り、指針になりえる人物を目の前で救えなかった

 

こんな自分を救おうとして……

 

子供だった自分の声を聞き届け、それを正面から受け取ってくれた人達……

 

涙を流し、えずきながら苦しむ姿に、ジェシカが慌てる

 

ジェシカ

「お、オイ!大丈夫か?、どうしたんだ、京介!オイ!」

 

慌てるジェシカ、医療班を呼ぶか?しかし本部の総隊長の醜態を他の隊員に見せる訳には行かない

部屋の中が急に暑くなり始めた、間違い無く暴走しかけている

 

考え抜いた末の行動、外れていたり、間違えていたら、いよいよ医療班を呼び、キャンディに任せよう、そう考え、京介を抱きしめ、背中をトントンと撫で付ける

 

ジェシカ

「大丈夫だ、大丈夫、怖くない、アタシがいるから、怖くないぞ、心配するな……」

 

しばらく抱きながら声をかけた

 

部屋の温度が下がってきた事で、あながち外れて無かったと安心し、そのまま続ける

背中を撫で、安心しろと声をかけ続ける

 

その姿はまるで、子供をあやす母親の様にも映る

泣きじゃくる京介を、根気よくなだめ続けるジェシカ

 

慌てながらではあるが、その姿は慈愛に満ちている

 

かつて、沙耶麻 菜流がそうしたように……

ジェシカもまた、己の痛みを分かつことが出来る京介を、案じている一人

 

菜流のように手慣れたケアはできない

だが、戦場で背中を預け合う戦友として、精一杯の不器用な抱擁で彼を繋ぎ止めようとする

 

ジェシカは忘れかけていたが、クリムゾンインパクトのあと、報告書と本部の医療班の通知で、生き残った隊員にPTSDの診断がされたのは読んでいた

 

危なかった、クリムゾンインパクトの、唯一の生き残りが、目の前の本部付けの総隊長だと言うのを、今更思い出した

 

ジェシカ

「ごめんよ……、そんな風にするつもりは無かったんだ…」

 

決して短くない時間、ジェシカは京介を抱きしめ、慰めていた。

ジェシカの隊服は、京介の涙で重く濡れていたが、彼女はそれを気にする素振りも見せず、ただ彼の背中を優しく撫で続けた。

 

しばらくして、ようやく京介の荒い呼吸が整う。

彼はゆっくりと顔を上げ、ジェシカと視線が合うのを避けるように視線を逸らした。

 

京介

「……すまねぇw迷惑かけたなw」

 

鼻を啜りながら、息も絶え絶えに絞り出したのは、いつもの軽口だった。

精一杯の見栄を張り、強がって笑うその横顔に、ジェシカは胸が締め付けられるような痛みを感じる。

 

気まずかったのか、そそくさとタオルを探してジェシカの服を拭こうとしたが、彼女はヤレヤレと呆れたように息を吐くと、そっと京介の手を引き、汚れを拭おうとしていた彼の動作を優しく遮った

 

ジェシカ

「……大丈夫だから、とりあえず座りな、アタシは気にしてないし、アンタのその顔をまず綺麗にしないとね」

「本部付けの総隊長だって人間なんだ……そんな時もあるさ、大丈夫だ、アタシは誰にも言わないよ、ここだけの話さね」

 

濡れたタオルを京介に渡し、自分の隊服を軽く拭きながら、京介が負い目を感じないように言葉を選んだが、上手く言えただろうかと、少し不安気に言葉を繋いだ

 

京介

「……いやぁwすまんw情けない所見せたなwクリーニング代出すから勘弁してくれw」

 

いつもの調子に話しているが、やはり少し違和感を感じてしまう

 

それがわかるジェシカが、京介の頭に手を置きながら伝える

 

ジェシカ

「別に無理しなくていい、アンタがそんなになるまで何かを考えてくれたのはありがたいよ、だからせめて、しなくていい無理なら、しないでくれないか?、そんなんでアンタの見方が変わる程、アタシは軽く無いよ」

 

少し気まずそうに京介が返事をする

何か直接的に言わなくてもいい、少しでも、本部の他の隊員の代わりが出来れば、コイツの負担が軽くなる、そう考えながら続ける

 

京介

「お、おぅ……w」

 

ジェシカ

「アンタ本部の隊員に似たようなこと言われて無いかい?、アタシが初めて言った訳じゃないと思うけど?本部付けの隊員なら、アンタと付き合いも長いだろうしね」

 

京介

「まぁ、近い事ならw」

 

その返事にくすりと笑い、やっぱりかと言う顔で言葉をかける

 

ジェシカ

「ハハっ、別に言わなくてもいい、けどこっち来たら、そいつらの代わりになるくらいは出来るから、そこは安心しなw」

「アンタ、アタシよりいらない経験多そうだもんねぇ」

 

そう言いながら冷蔵庫から、炭酸水を京介に手渡し、目の前のドーナツを京介に咥えさせる

ジェシカ自身も好きなドーナツを頬張り、どさくさに京介の頭を撫でる

 

ジェシカ

「お陰でアタシの頭が落ち着いた、ありがとう、感謝するよ」

 

ドーナツを続けて頬張りながら、ジェシカの方を見る京介

 

そのままジェシカの話を聞く

 

ジェシカ

「多分アタシ達が関与してない作戦で、ルーインに何かあったんたんだろうね」

「アンタは多分、ルーインの事を考えてる途中に…トラウマを思い出した、多分BLITZの何か悪い部分……だろ?」

 

ドーナツを咥えたまま、京介が頷く

 

ジェシカ

「だからBLITZをどうにかしようとして、BLITZ狩りをしている、そこまではルーインの話だけど、ゲインがそれに対して関与してるかどうか、次はそれを確認しよう」

 

ドーナツをかじり、炭酸水を一気に飲み干し、ジェシカの問に答える

 

京介

「ゲップ…悪いwそうそう、ゲインが関与してたら、話くらいはできると……いいなぁ…w」

 

京介と、ほんの少しでも心を通わせる事が出来た気がしたジェシカ

犬っぽいやつに好かれるけど、本人も犬みたいに懐っこいと感じた

 

そんな事を考えながら、京介を見た口元が緩む

 

 

 

西暦3856

 

水星

 

 

植民地として、太陽に最も近い惑星、その名前とは裏腹に水等は無く、重力も地球の約三分の一程度

1日が地球で言えば176日あり、昼の時間が長い為、夜になる事が少ない

昼は450度、夜はマイナス180度

 

そんな惑星も、当時の地球人は人が居住出来るよう開拓した

 

場所によっては吹きすさぶ暴風に視界も遮られるが、だいたいは生身で歩ける程度の気候にされている

 

能力が発現した人間の探究心に、感心させられる

 

クリムゾンインパクト後、スカーレットスコルピオの動きが活発になり、泥沼の争いが起きていた

本部の総隊長の不在により、戦力的な抑止が弱まっていた

 

だがそんな事より今、目の前の任務を遂行するのが優先される

 

水星の工業地帯に、当時のアメリカ支部の調査により、スカーレットスコルピオの拠点がある事が判明した

その拠点を壊滅させる為に、アメリカ支部の攻撃隊が派遣される

 

派遣された部隊の中に、前総隊長である、ルーイン・J・トンプスンもいた

 

任務は至極簡単なもので、すぐ終わるものだと思っていた

報告通り、工場に偽装したアジトにスカーレットスコルピオが占拠していた

 

交戦するが、ルーイン・J・トンプスンを始めとするアメリカ支部の攻撃隊の敵では無かった

 

皆が思った、簡単な任務

 

しかし、作戦が終わり撤退準備をしていると、工業地帯の外れに街と言うには小さな集落がある事に気がついた

 

何故こんな所に街が?

 

疑問に思い、任務後に少々自由にする時間が出来た事で、その集落を散策する

 

集落に入り、ルーインが辺りを散策していると、一般の民間人が所々に倒れていた

 

能力者でも無い、ましてスカーレットスコルピオのメンバーでも無い、能力も無い非能力者

 

何故?

 

倒れているのは、子供がほとんどで大人が居ない

 

痩せ細り、栄養もあまり取れていない様子、怪我も酷く、息も絶え絶えの状態で

 

辛うじて息のある子供に駆け寄り、声をかけた

何故こうなった?何があった?

抱き抱えた子供に、そう問いかける

 

返ってきた言葉

 

スカーレットスコルピオに誘拐され、命からがら逃げて来た、たまたま目に入ったこの集落に身を隠し、今まで隠れ住んでいた

 

運良く通信機を見つけ、助けを求めた

誰でも良い、助けて欲しいと

 

何度も何度も助けて欲しいと呼び掛けた、だが返事が帰ってくる事は無かったと

 

スカーレットスコルピオの拠点を壊滅させに来なければ、この街の子供は見殺しにされていた

 

生きてる子供達を収容し、支部に戻り確認をした

通信記録がある

BLITZに救護要請は届いていた

 

それを確認すると、ルーインは憤りながら特殊部隊に抗議をする

 

しかし、特殊部隊から返ってきた返答は、重要性が低かった為、特殊部隊の出撃をさせなかった

 

助けを求める通信はあったが、支部がそれを重要と見なかった

水星の辺鄙な場所で、そんなに切迫した状態など無いと判断した

 

BLITZの支部の返答に、ルーインは落胆した

落胆し、BLITZと言う組織に意味を見いだせなくなった

 

(……子供すら助けられない者に、地球を救えるのか?……)

 

ルーインは抜け殻の様になった、何をするにも気力が無く、以前程のやる気も無かった

 

それから間もなくして、スカーレットスコルピオとの戦闘で、死亡が確認された

 

 

 

西暦3862

 

アメリカ支部

医療班 医療センター

 

ジェシカと京介に、ルーインの死亡時の記録を調べるように言われ、データ端末を操作しているキャンディ

 

難しい顔をしながら、様々な情報が大画面に目まぐるしく表示される

そのひとつひとつを丁寧に確認しながら、ブツブツと言っていた

 

そして、画面のタスクを見ながら、大きなため息をつく

 

キャンディ

「ハァ〜……やっぱり無い……前後の記録も、消されてる……」

 

 

 

 

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