ANGEL WALTZ   作:とくめい

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case 夜千与紗夜 ACT1【絶望のカナリア】

能力者特別攻撃隊総隊長秘書

夜千与 紗夜(22)

金属性

 

 

BLITZに入隊する前、彼女はごく一般的な家庭だった

しかし、幼少期に父親が能力を発現

それによって生活は熾烈なものとなった

 

父親との血縁関係は無く、母親の再婚相手で紗夜の事を疎ましく思っていた

 

本来の父親は、能力者では無かったが、紗夜を愛していた

とめどなく愛情を注ぎ、溢れんばかりの慈愛で包み込んでいた

 

……しかし、その幸せも紗夜が小学校を卒業するまでに終わる

 

能力者の起こす事件に巻き込まれた

たまたま仕事で外にいた父親は、能力者に無惨な姿にされる

 

それからしばらくして、母親が再婚

再婚相手に良くない雰囲気を感じた紗夜は、あまり懐かなかった

 

それが目に付く再婚相手は、紗夜に暴力を振るう様になった

 

母親はそれを止めはするが、紗夜を心配してはいなかった

 

紗夜の淡麗な容姿も気に食わなかったのだろう、女の嫉妬、再婚相手が紗夜の容姿を褒め始めた事も気に食わなかった

 

中学になってから、紗夜は家に寄り付かなくなった

街をブラブラ歩き、夜を明かす

 

補導されたり、家に帰れば父親に暴力を振るわれ、母親には容姿の事で当たられる

 

嫌気がさしていた

 

そんな中、父親が能力を発現し、紗夜に向かって試し始めたり、さらに暴君の様な振る舞いが目立つ様になっていた

母親も怯え始め、その頃には紗夜を庇いもしなかった……

 

痛いと言っても勿論辞めず、全ては俺のものだと言わんばかりに振る舞う

 

そんな生活のせいで、紗夜の心は荒んだ……

本来与えられる愛情を与えられず、好き勝手に振る舞う両親

元来紗夜は心根が優しく、本当の父親の事をとても慕っていた

 

夜出歩くと言っても、本当に家に帰らないだけで、寂しさを埋めようとしたり、悪い友達を作って遊んだりはしなかった

 

それが余計に紗夜の心を蝕む……

 

他の不良少女のように、仲間を作ったり悪い事をすれば少しは気も紛れるだろう

紗夜はそれをしなかった

本当の父親に言われた事

 

能力者だろうが、そうで無かろうが、自分に誠実に生きてさえすれば、必ず良い事が起きる

何年かかるか分からない、けど絶対に紗夜にとって良い事が起きるよ

 

その言葉がずっと引っかかっていた

 

故に悪い事もしなかった

悪い友達も作らなかった

それは自分にとって、誠実では無いと思っていたからだ

 

「……お父さん……」

 

そんな紗夜を、街の不良達も疎ましく思い始める

気取ってる、カマトトぶってる、紗夜の美麗な容姿も相まって、標的にもされた

 

望まない環境、逃げ出す事も叶わない、逃げ出せる所も分からない……

 

そんな折にふと、荒んだ紗夜にとっての綻びが生まれた

 

総隊長になった京介が、夜の街をブラついていた

BLITZの存在自体街の治安の抑止になる

しかし、それは本来警察から要請があった特殊部隊の仕事ではあるが、京介は知った事かと独断で歩いて居た

 

深夜、まだ繁華街は騒がしい時間

しかし、BLITZが一人歩いているだけで、ガラの悪い輩はなりを潜める

 

まだ仕組みをわかって無い紗夜は、その光景を不思議そうに見ていた

 

夜中に歩いている未成年や、若そうな少年少女に、わざと声をかけて歩く

 

普段目にするBLITZより、積極的にグイグイ来る

そんな京介を珍しがる者、煙たがる者、様々な反応だった

たまに目にしていた紗夜は、それを不思議に見ていた

 

それが、西島京介との初めての出会いだった

 

 

繁華街から少年少女や、夜遊びをする未成年が少なくなっていた

気の所為かもしれない、だが昨日いた者が今日いなくなっている

 

紗夜は不思議に思ったが、気にも止めなかった

 

ある時また家から逃げ出そうとした紗夜が、間の悪い事に父親に捕まる

 

振りほどいて逃げようとするが、父親の能力のせいで逃げ道を塞がれた

 

酷く殴られる、何もして無いのに、たまたまそこに居たと言う理由で……

顔が気に食わない、態度が気に入らない、そんな理由で、年端もいかない少女に暴行する

 

ウンザリだった……死にたかった

 

もう何も信用出来なかった

 

学校だけが平和な場所、家に帰れば怯えながら夜を明かさなければならない

 

そんな青春時代を過ごしたら、どんな幼気な子供も、荒んでしまう

当たり前の現象

 

それからしばらくして、父親の様子がおかしくなり始める

何も無いのに怯えたり、何かから隠れるよう息を潜める

 

父親の様子がおかしかったとしても、紗夜は気にも止めなかった

殴られない事が重要だった

 

母親はそんな父親の世話をするが、紗夜を邪険に扱うのは変わりなかった

 

そして……運命のイタズラが、紗夜の心をゆっくりと蝕み始める

 

そんな荒んだ生活環境でも、キチンと学校は卒業できた

元来賢い紗夜は、どこの大学にも行ける学力があったが、勉強よりも働く事を選んだ

 

父親の存在が不安要素であるが故、紗夜は定職にはつかず、アルバイトを掛け持ちして、家を出る為の資金を貯めようとしていた

 

学生の頃からアルバイトをしていたので、1年程頑張れば何とかなりそうだった

 

そんなある日、もうすぐ一年になりそうな時、アルバイトが早く終わったので、少しだけ気晴らしをした、本の少し贅沢をした

美味しいコーヒーを出してくれるお店に行き、小さなケーキとコーヒーで自分を労った

 

少し遅くなったが、どうせ家に帰っても気にされない

むしろ誰もいない方が助かる

 

憂鬱な気分で家に帰ると、部屋の中の違和感を感じる

疑問に思いながら、歩みを進める

 

玄関からリビング、果ては寝室

 

――静かすぎる。 拭いきれない違和感を覚えながら、紗夜は喉の渇きを潤そうとキッチンの扉に手をかけた。 開けた瞬間、粘りつくような鉄錆の臭いが肺を突き刺し、胃の底から熱いものがせり上がる。 視界が、赤に染まった。

 

一面紅く染まり、鉄錆のような血の匂いが鼻を突き、喉の奥がせり上がるような感覚

母親だった者の頭だけがテーブルの上に乗っている

その傍らで、父親だった者が母親の身体を貪っていた……

 

「ひっ……」

 

その声に反応する父親、血走った目で、紗夜を見る

口からは大量の血を滴らせ、表情は分からないが、笑っているように見えた

 

紗夜はそれを見た瞬間、踵を返し逃げようとしたが、不審な人物に行く手を阻まれた

 

ゆっくりと顔を上げ、恐る恐るその人物を見上げる

 

笑った顔、笑ってはいるが、目が死んでいる

翁の能面の様な異質な笑顔……

それを確認した紗夜は、さらに怯える

 

「ご機嫌よう」

 

不審な人物が声を出した、紗夜はそれに反応出来ずにいる

 

不審人物は構わず続ける

 

「ワタシの名前はスロース、ベルフェゴールと呼んでも良いよ」

 

紗夜は反応できない

 

スロース

「七つの大罪ってわかるかな?それになぞらえてつけた名前なんダ、怠惰ノ悪魔だよ」

 

そこで紗夜の意識が途切れた

 

 

 

 

BLITZ本部 総隊長室

 

京介と秋浩が珍しく難しい顔で相談していた

 

秋浩

「……やっぱりこっちが無難じゃねーか?」

 

いやいや違うと言わんばかりに京介がそれを咎める

 

京介

「お前はいつも冒険心がね〜からダメなんだよwこっち行こうぜw」

 

二人がヤイヤイ相談してたが、何かなかなか決まらない様子でいた

そこに菜流が入ってくる

二人のやり取りを見て笑いながら話しかける

 

菜流

「まだお昼の相談してたの?wもう1時間だよw」

 

京介

「だって秋浩が俺と同じもん食うって言うからw」

 

秋浩

「だから俺は美味い飯が食いたいんだよ!珍しいものが食いたい訳じゃねぇよw」

 

 

どうやら昼食のメニューで二人の意見が噛み合わないで、1時間も相談していたようだ

 

そんなちょっとした平和な日常

それを菜流は微笑ましく見ていた

 

不意に京介が口を開く

 

京介

「どうしたん?総班長殿w」

 

少しふざけた口調で、菜流に話しかける

菜流は持ってるタブレットと書類を見ながら京介に話しかける

 

菜流

「香奈恵ちゃんの検査の結果、持ってきたの」

 

京介

「おお!w」

 

菜流

「一応問題は無いんだけど、能力の数値がねぇ、何度検査しても小隊長より強いのよ」

「分かりやすく言うと、小隊長クラスが10だとすると、香奈恵ちゃんは25くらいかな?」

 

京介

「良い事じゃね〜か?w」

 

菜流

「まぁそれ自体は全然良いんだけど、さっき会った4番隊の小隊長が、自信無くしてたわよw」

 

秋浩も京介も、それには苦笑いするしかない

顔を見合わせながら二人がくすくすと笑う

 

京介

「仕方ないですねぇw限りなく希望は聞いてやるから、少し頑張って貰うしかねぇなぁw」

 

香奈恵の能力は目を見張るものがある

BLITZに入隊したいと言われた時は、京介も止めたが、本人が頑として聞かず、仕方無しに入隊させた

 

それが予想の遥か上を行く戦力になるとは、始めは信じられなかったが、総隊長、総副隊長、二人が感心してしまった

 

始めは秋浩も香奈恵の奔放さに手を焼いていたが、よく見ると京介の言っている事を大人しく聞いている

 

京介も香奈恵に危ない事はさせたくないだろうと、何かあれば京介経由で香奈恵に言えばいいと考えた

 

京介が4番隊の小隊長に何をしてやろうかと考えていると、菜流が続けて話しかける

 

菜流

「それと、この間保護した子供なんだけど」

そう続ける

 

この数ヶ月、夜遊びや夜に出歩いてる少年少女が行方不明になっている

 

勿論BLITZの管轄では無い、始めは警察が対応していたが、ある時行方不明の子供が、能力者として発見された

 

それにより、BLITZが即時介入、行方不明から発見された子供は、BLITZが優先的に保護を行い、検査と治療を施していた

 

京介はその報告を聞いて、ここ数ヶ月、繁華街や夜の街を、独断でブラブラしていた

 

京介

「どうした?w」

 

菜流

「検査してたら気になる事が何個かあったの」

 

それに対して興味ありげに二人が聞く

 

菜流

「投薬の痕跡があって、その薬品のせいで能力が発現したらしいの、勿論もう少し検査はしないと行けないんだけど、それだけじゃなくて、人体にも変化が起きる因子が見つかったのよ」

 

京介

「人体の変化って?」

 

菜流

「能力の発現を誘発するのが1つ、それとそれに対して身体を耐えられる構造に作り替えるって言った方が良いのかな?」

 

秋浩

「おうおう、そんな面倒な薬があるのか?」

 

秋浩が信じられない、いや、信じたくない様子で問いかける

 

菜流

「科学班のデータも踏まえて言えば、不可能よ」

「能力者を誘発されるなんて、身体にどんな事が起きるか想像出来ないもの」

 

秋浩

「それじゃこの前の子供は?」

 

菜流

「外科手術で変異している所を取り除いて、治療用培養液で体組織を作って移植、能力者にはなりきれてないから、多分療養で元の生活に戻れると思うわ、勿論時間はかかるけど」

 

秋浩が少しホッとしたように胸を撫で下ろす

 

そして不意に京介が口を開く

 

京介

「……むか〜し、大戦後だかにそんな人体実験やってた記録があったな、ただ人為的に能力者なんか作れないって話で終わったみたいなのは読んだけど」

 

菜流

「そうなの、不可能なの、身体だけの問題じゃ無いから、何故無理か、とかどうして出来ない、とかは今でも解明出来ないけど」

 

秋浩

「それは俺も読んだけどよ、なんでまたそんなもんが」

 

京介

「……おおかたスカーレットスコルピオやらのアホが、BLITZに対抗したくてやったんじゃね〜の?理由としたらそんな所だろ」

 

京介が少し落ち着いたようで、話す

 

京介

「ちなみにその中途半端な薬打つとどうなる?」

 

菜流

「個人差はあるけど、適応しても人の形ではいられ無いし、能力が発現しても死亡率が高いでしょうね、完全適応したとしても、知性も無い獣になると思うわ」

 

秋浩

「それは確定?」

 

菜流

「……残念だけど、今の所その確率が濃厚よ」

 

京介

「早い話、人を物理的な化け物に変える薬か……」

 

スカーレットスコルピオが暗躍している事を示唆する

3人の顔が険しくなる

 

菜流、秋浩が京介の顔を覗くと、笑顔ではいたが、目が座っていた

 

何かを考えているのはわかったが、二人は何も言えなかった

 

 

 

……歌が聞こえる……

知っているが、思い出せない……

なんだろう、良く聞いた事があるのに……

……好きな曲

なんだっけ……

 

 

 

ザワザワと聞こえる

なんだろうと考えていると、話し声に聞こえてきた

 

しばらく考える、何が起きたのか、何があったのか

ゆっくりと目を開く

暗い部屋?の様な所に、自分と同じくらいの男女が座り込んで暗い顔をしている

 

ここはどこだろう

どうしてこんな所に連れてこられたんだろうと考えながら周りを見渡す

 

見た事がある顔の子もいる

繁華街でたまに見る顔ぶれの子達が、怯えた顔でうずくまって居た

 

皆一様に黙っている

何とか外に出られないかと扉の様な物を探す

 

扉のような物を見つけ、少し揺さぶって見る

やはり開かない

 

「無駄だよ」

 

不意に話しかけられた

振り返って見ると、自分と同じくらいの女の子が紗夜の方を見ながら言う

 

「表から鍵がかかってるから」

 

それを聞いてその子に疑問を聞いてみる

 

紗夜

「ここは?みんなは?」

 

女の子が答える

「分からない、みんな気がついたらここにいたの、それにたまに外から叫び声が聞こえるの」

 

みんな状況が分からないみたいだ

一抹の不安がよぎる、多分皆同じだろう

 

これから何をされるのだろうか?

 

その時外の鍵が開く音がした

 

不穏な音を立てて開く扉

逆光で外が良く見えない

目を凝らしながら何とか見ようと試みていると、不気味な声が聞こえた

 

唸るような叫ぶような、悲痛な声

おそらく連れてこられた少年少女達であろう声に、えも言われぬ不気味さを感じる

 

明かりに慣れて外が見え始めた

そこに映し出されたものは

 

壁に鎖で繋がれた男女、吐瀉物や血液が流れ出して汚れた壁や床

 

そして、人の形を留めていない人間……

 

辛うじて人と認識は出来るが、腕や足が変異していたり、身体や頭が人では無かったり

 

……母親の身体を貪っていた父親が思い出される

目つきや人を食べてる以外の部分、思い返すと変異していた

 

考えれば考える程、何が起きているか分からない

得体の知れない恐怖、目まぐるしく起きる異常な出来事

 

紗夜は恐怖で座り込んでしまう

必死に涙を我慢した

本当の父親の事を思い出し、震える身体を必死に押さえつけた

 

「……怖い、怖いよ、お父さん……」

 

そんな紗夜達を何とも思わない様子で、話しかけてくる声がした

 

スロース

「せっかく開けたのに、どうして出ないんだい?」

 

その問いかけに、紗夜の後ろから叫び声にも似た声がする

 

「嫌だ!、出たら他の奴らと同じにされるんだろ!」

 

誰かが言った

 

スロース

「同じにはならないよ、薬に耐え切ればネ」

 

不気味な言葉で不気味な答えを言うスロース

 

薬?耐え切れば?紗夜は考えた、その結果が母親を貪る父親なのか?

 

なぜこんな事になったのか、どうして自分達がこんな目に合うのか

 

恐怖が紗夜の心を支配する

目の前で起きている恐ろしい光景が、自分にも起きると思うと、気が狂いそうになる

 

そんな紗夜を気にもせず、スロースが話す

 

スロース

「めんどくさいよね、それならこうしよう、今から君たちを逃がしてあげるよ、扉は開けておくから、逃げたかったら逃げて良いよ」

 

まさかの言葉に皆は疑う

ザワザワとどよめき始める

 

続けるスロース

 

スロース

「その代わり、捕まったらまたここに戻ってくる事になるけどね」

 

捕まったら?何が捕まえにくる?

 

スロースはその疑問をすぐに解消してくれた

 

部屋の中に明らかに人から外れた異形の生物、いや、おそらく人だったもの……

 

スロース

「コレはね、薬の作用に適合しちゃったんだ、困った事に単一の命令しか分からないんだけどね、君たちの鬼ごっこには使えると思うよ」

 

不気味な程淡々と説明する

あの異形に追いかけられる……

捕まったら、本当にどうなる事だろう、父親の姿がチラつく

 

スロース

「あぁ、食べるまではしないよ、単調な命令しか聞けないし、連れてくるのが優先だから」

「でも気をつけてね、強いから、上手く逃げないと死んじゃうよ」

 

想像したくない言葉をならべ、捕らえられている少年少女達の鍵を外す

 

皆パニックになって一斉に逃げ出す

そんなみんなに静かに言う

 

スロース

「1日あげるから、頑張ってね」

 

それが聞こえていたのか聞こえていないのか、蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑う

 

紗夜は迷っていた

逃げ出しても捕まったら?

目の前の異形の者と同じにされてしまう?

 

紗夜は頭を振った

そんな事を考えるより、一刻も早くここを抜け出さなければ

 

紗夜は駆け出す

どこに向かってるかもわからず走り出す

 

他のみんなは?

一斉に逃げ出した少年少女の影も見えない

 

ふと立ち止まり周りを見て気付く

地下?迷路の様な入り組んだ通路

 

確かにスロースは言った

[1日あげる]

 

意味がわかった

ここがどこかは分からないが、1日あっても逃げ切れない程の広さと、迷路の様な入り組んだ通路

 

一体ここはどこで、なんなのだろうか

紗夜はただ走った

疲れきって倒れるまで走った

 

どこまで行っても出口らしき物が見えない

 

紗夜は立ち止まり、少し考える

スロースはこれが初めからわかっていた

だから1日なんて時間を与えたんだ

 

……なんて趣味の悪い

 

それと同時に絶望した

私達は、逃げられない……

 

紗夜

「……もう、疲れちゃった……」

 

紗夜はしゃがみこんで呟き、震える肩を掴み絶望した……

 

 

 

少し前のBLITZ本部

総隊長室

 

 

先程の菜流の訪問から少したって、京介が1人で難しい顔をしていた

 

京介

「……どうするかな……」

 

何をどうするのか、珍しく真剣な表情で悩んでいた

 

少年少女に家に居るよう呼びかけはしていたが、行方不明者が多すぎる

 

確実に何かが起きている

それを解明できない歯がゆさを感じていた

 

その言葉に合わせた様に、総隊長室に気配がした

 

気配の先に視線を向けると、フードを被った少女が居た

隠密部隊の少女、右の額から左の顎まで大きな傷があり、左目を包帯で覆った少女

 

まっすぐ京介を見つめ、ゆっくりと近づいてくる

 

「……隊長……」

 

少女は京介に呼びかけ、持っていたファイルを差し出す

 

京介はその姿を見るやいなや、満面の笑みで頭を撫でた

 

京介

「おぉw元気だったか?w大丈夫か?w」

 

ファイルを受け取り、大袈裟なリアクションで少女を抱きしめる

 

まるで最愛の人を迎えた恋人の様な仕草で、慈しむ様に

 

「……地下……」

 

少女が京介に言う

それを聞いた京介は、さらに少女に話しかける

 

京介

「どこの地下かわかるか?w」

 

少女は頷く

そしてゆっくりファイルを指さす

 

京介

「……ありがとうな、ごめんな、危ない事させて」

 

その言葉に少女が横に首を振る

それを見て、京介がまた頭を撫でる

撫でながら京介は少女に言う

 

京介

「ゆっくりしていてくれよwさすがに帰ってからいなかったら寂しいからなw」

 

少女は一瞬の沈黙のあと、静かに頷く

 

京介

「ちょっと行ってくるわ……」

 

そう言って総隊長室を後にする

 

その後ろ姿に異変を感じた少女は、通信機を取り出し、誰かに連絡をする

 

2、3言話すと、ソファに座りながら不安そうにうずくまる

 

「……隊長……」

 

 

 

 

京介は少女の持ってきたファイルを読みながら、一人街を歩いていた

 

京介

「ここから100キロちょいかw、まぁゆっくり行って10分くらいかなw」

 

耳を疑う言葉、10分少々で100キロを移動できると言う京介、しかもゆっくりと移動して10分

 

規格外の身体能力、能力のせいもあるだろうが、BLITZの隊員の中にもそんな事をできる人間は居ない

 

軽く屈伸をした後、勢いをつけて空に向かい飛び出す

 

空に飛び出した京介は、さらに加速する

音速を超え、戦闘機よりも早く加速する

自身の能力のせいなのだろうか

火属性の底知れぬ能力

 

地球最大戦力の能力者

 

……化け物……

 

その言葉を思い出し、自虐的に笑う

 

京介

「……うるせぇな……知ってるよw」

 

誰に言う訳でも無く、京介が呟く

 

 

 

地下通路

 

 

紗夜がハッと気が付く

少し眠ってしまっていた

どれくらい眠ったのだろう

約束の1日にはどのくらいたっただろうか?

 

早く逃げないと……

逃げられるだろうか?

だいぶ歩いた、歩き疲れる程歩いても、出口は疎かこの地下通路から出られる様な所も無い

 

それでも通路を進まなければ、あの化け物から少しでも遠くに逃げなければ……

 

その時だった、薄気味悪い不気味な咆哮が聞こえる

 

紗夜は焦る

もう1日と言うリミットが来てしまったのか

 

急いで走る

どこに向かうか分からないが、あの声から遠ざからないと

 

奇妙な事に気が付いた

そう言えば、逃げた皆と1度も遭遇していない

幾ら広すぎるとは言え、誰か一人くらいとは遭遇しても良いと思うが、なぜか誰とも会わない

 

不思議に思い、周りの様子を注意深く探る

物音1つ、気配1つしない

 

不気味な静けさが広がる

意識してしまうと、さらに恐ろしく感じる

妙な耳鳴りがして頭が痛い

 

怖い……今まで必死に逃げて来たからか、それとも本当の父親の言葉を思い出したからなのか、あまり感じなかったが、それが今はとても恐ろしい……

 

急に動けなくなる

怖くて1歩も踏み出せない、小刻みに震える身体を抑え付ける様に腕を掴む

 

怖くて怖くて堪らない

 

目には涙が浮かぶ

 

「……お父さん……」

 

そう呟く

 

紗夜の恐怖心を察したかの如く、スロースに放たれた人の成れの果て、元人間が突然目の前に現れた

 

口からは血がしたたり落ちる……

 

目を見開き、口が笑っている様に見える

片腕の爪が武装の様に変異し、足も太く禍々しい、爬虫類や獣のようだ

 

改めて見ると、更に恐ろしい

 

紗夜は能力も発現してない普通の少女、ただの一般人、目の前の怪物と対峙する術など分かりはしない

 

涙目で俯き、悔やんだ

今まで本当の父親の教えを護って、自分に誠実であろうとした、どんな目にあっても、どんなに苦しく辛い時も

誠実でなければ父親を裏切ってしまう気がしていたから

 

紗夜

「……お父さん……ごめんね……良い事、無かったよ……」

 

紗夜が諦め、最後の時かと覚悟を決めた

 

 

[ドンッ!!]

 

 

その時、急に地下通路の天井が重いものでも落としたかの様な音を立てて穴が空いた

 

紗夜はまだ気付かない

怪物の仕業と思って目を瞑って居る

 

音と共に怪物が消え去っている

砂煙で周りが見えない

 

何故か先程より暖かく感じる

何も起きないのを疑問に思い、紗夜が恐る恐る目を開き始める

 

砂煙が段々晴れてくる

そこにいたのは、繁華街でたまに見ていたBLITZの制服

 

少しガラの悪い隊員

タバコを咥え、紗夜を見下ろす

 

紗夜は辺りを良く確認する

先程の化け物は居ない、ガラの悪いBLITZの隊員だけ

 

どうして良いか分からない紗夜に向かって、隊員が声をかける

 

「……嬢ちゃんw大丈夫か?w」

 

紗夜は上手く声が出せない代わりに、力強く頷く

 

隊員は続ける

 

「他には誰かいるのか?w」

 

またもや頷く

 

「オッケェ!w、んじゃ上に上がって待てるか?w」

 

言い終わらないうちに、隊員が紗夜を抱え天井の穴から飛び出す

 

長い……穴の長さが想像を絶する深さ

 

紗夜

「こんな所に……」

 

その言葉を聞いて、隊員が軽く説明をする

 

「大戦時の地下シェルター兼逃走経路だったみたいよw、まぁ本来埋めるか何かしないといかんのを、そのまま廃棄されてたみたいだけどなw」

 

大戦時の遺物、通りで広く頑丈なはずだと、妙に納得してしまった

 

地表に着いて隊員に通信機を渡される

これで連絡すれば他の隊員がすぐ来ると

 

紗夜はあの恐ろしさから隊員の裾を掴む

俯いたまま、今更恐ろしさを噛み締めてしまう

 

隊員は裾を振りほどきもせず、紗夜と同じ目線に跪く

紗夜はそれに気が付く

 

紗夜

「ご、ごめんなさい……こわ」

 

言い終わらないうちに、隊員が頭を撫でた

 

「……良く、頑張ったなwもう心配無い、生きてて良かったよw」

 

その優しい言葉に紗夜は安堵する

ホッとする……

 

「もう少し不安かもしれないけどw、我慢してくれよなw」

 

そう言う隊員の眼差しは、とても優しく見えた

ガラの悪い隊員だと思っていた自分が情けない

 

今こうして自分は救われた

隊員が紗夜にポケットからチョコレートを出し、紗夜の口に放り込み、途中で買った水を渡す

 

「たまに見てたぜw誠実そうないい子だと思ったよw、悪ガキとつるまないで真面目な子だと思ってたんだw」

「声掛けれなくてごめんな、一人に声掛けちゃうと皆面倒見ないと行けなくなるからさw」

「困ってるんだろ?ついでに来た隊員に俺から言われたって言って匿って貰いなw」

 

紗夜はその言葉に驚愕する

この隊員は自分を見ていた、自分を心配して居たと

口元を抑え、どんな感情かは分からないが、涙が止まらない

 

紗夜

「……あ、の、お名前は?」

 

隊員が、あぁ、と思い出した様に答える

 

「対能力者特別攻撃部隊、総隊長、西島京介w」

 

京介

「んじゃ連絡しろよw、ちょっと行ってくるわw」

 

そういうや否や、京介は穴の中に飛び降りてしまった

 

紗夜

「……西島……京介……さん」

 

数百メートルの直下を降りると、京介は他の生存者を探す

匂い、気配、五感全てを研ぎ澄まし、何とか見つけようとする

 

京介

「……何人かは見つかったけどなぁ、残りはどこだ?」

「まぁとりあえず見つけたヤツを引っ掴んでくるかw」

 

そう言うと、穴の近くに少年少女をいつの間にか連れて来ていた

 

連れてこられた皆は、何が起こったか理解する事も出来ず

ただBLITZの隊員の言う言葉を鵜呑みに聞いて居た

 

京介

「HEY!HEY!wとりあえず質問は無しなwここから出してやるw、他に誰かいるか?何か見たか?w」

 

その言葉に呆けてる少女が答える

「あの、まだ何人かが……」

 

京介

「どこにいるか分かる?w」

 

「何か……凄く怖い人の所に……」

 

京介

「何か聞いた?w名前とか何かwなんでもいいよw」

 

「……なま、えは、スロースって……」

 

京介

「……オッケェw、んじゃ上まで送るから、他のBLITZの隊員の指示にしたがってくれよなw」

 

いつもの軽口をいいながら、複数人を一気に抱え、穴をまた飛び出す

 

皆ありえないと言う顔で京介を見ている

一般人からすると、何をしたとしても、BLITZの隊員は異様に見える

 

地表に到着すると、京介が周りを見渡し紗夜を探す

紗夜に近付き話しかける

 

京介

「連絡した?w」

 

紗夜は頷く

 

京介

「そっかwありがとうなw来るまで待っててくれよw」

 

そう言うと紗夜を優しく撫でる

 

踵を返し、また穴に戻る京介の背中を見送る紗夜

 

妙な胸騒ぎを感じた

 

あんなに強いのに、何が不安なんだろう

分からない、分からないが、京介を不安気に見送る

 

 

 

地下

 

京介は辺りを確認し、残りの子を探す為に歩き出す

 

いつも一人で何かをしていると、軽口を言う京介が、珍しく何も言わない

ただ何かを考える様に静かに歩く

 

鼻を鳴らし、匂いを嗅ぐ

 

そのまま、何かを確認しながらまっすぐ進む

 

少し開けた場所に、ソレは居た

スロース、繋がれた少年少女、人の成れの果ての化け物……

 

スロース

「おや、来たのかい?」

 

京介の姿に驚きもせず、事も無げに言う

 

京介

「……おぅ、お前を殺しに来た……」

 

いつもの京介の様子と違う

軽口を言わず、言葉の端々に怒りを感じる

 

京介は警戒もせず、繋がれた少年少女を解放する

それをスロースは気にも止めず、ただ座っている

 

スロースがその様子を見ながら京介に問いかける

 

スロース

「君はどうしてそんな人間を助けるんだい?」

 

不思議そうに聞く

 

京介

「ガキは関係ねぇだろ、わざわざ狙ってガキさらって、こんな趣味の悪い事してるお前の方が疑問だけどな」

 

スロース

「大人は成長仕切ってルからね、子供の方がまだ伸び代があるんだ」

 

京介は黙って少年少女の枷を解く

その時、どこからともなくフードを被った人影が数人寄ってくる

 

京介

「……来たのか、ごめんな、ちょっと顔見せられないから、こいつら外に連れて行ってもらえるか?」

 

フードの人物たちは、頷くと少年少女を担ぎ、京介の来た道を戻った

ただ一人だけ、無言で京介を見つめている

 

その視線に気が付いたのか、京介が言う

 

京介

「……ごめんな、大丈夫だから、そいつら頼むよ……」

 

最後に残ったフードの人物は、その言葉を聞いて少女を担ぎ、京介に近寄り声をかけてから他の者と一緒に来た道を戻る

 

言葉をかけられた京介は、考え混んで黙る

 

スロースはフードの人物の事を聞く

 

スロース

「アレは君の子飼いかな?」

 

京介

「舐めた口を叩くんじゃねぇよ……」

 

スロース

「?……なぜ怒ってるのかな?」

 

京介

「ここにいる変異した人間には子供も大人も分け隔てなくいたはずだ、それには家族や子供、親兄弟、お前らはそれを俺達に対する兵器にしたくてこんな風にした」

「怒らない方がおかしくないか?」

 

スロース

「意外にセンチな事を言うんだね」

 

京介

「文句があるなら直接来れば良い、わざわざ回りくどい真似をして、そんなに俺達が恐ろしいか?」

 

その言葉にスロースが語気を強めた

 

スロース

「心外だな、君達に怯えてると聞こえたが?」

 

京介

「違うのか?」

 

なぜ京介はこんなに怒っているのか

 

人を変える薬、人を軽んじる実験、京介の脳裏に浮かんだのは、クリムゾンインパクトの出来事……

 

強欲のグリード、マモン

 

あの時、前総隊長、前総副班長、五条夫妻を弄んだ人物と被る

 

気に食わない

 

ただただ気に食わない

 

京介

「……お前、マモンって知ってる?」

 

スロースは意外な名前に驚く

 

スロース

「驚いたね、彼を知っているのか、そうか、君がクリムゾンインパクトの生き残りか」

 

京介

「応えろよ」

 

スロースは満面の笑みを浮かべ、楽しそうに話す

 

スロース

「そうだね、彼は私の友達?かな、あの時に死んじゃったけど」

「彼が中途半端な研究なんかするから、こんな出来損ないの薬になったんだよ」

「もう少し詰めてくれたら良かったんだけどね」

「強欲過ぎて身を滅ぼしたんだよ」

 

京介はそれを黙って聞いていた

スロースはそれに対してさらに続ける

 

スロース

「一緒にいたのは私の側近でね、彼も少し強かったけど、一緒にやられちゃったからね」

 

そこまで聞いた京介が、口を開く

 

京介

「……もうそこまでで良い、二度と話せなくしてやる……」

 

京介の表情は、笑って居た、狂気に侵された笑顔

敵が打てるからか、それとも別の何かか、ただ一つ分かる事は、壊れた京介の心が、再び軋んでいる事

 

スロースがその姿を見て、愉快そうに話す

 

スロース

「ここじゃあ狭いから、広い所にイコうか、この先に空洞、と言うか、シェルター代わりの敷地があるんだ、大戦時はどれだけ収容する予定だったんだろうね?」

 

他愛もない事を並べるスロースの後を着いて行く京介

 

歩きながらスロースは続ける

 

スロース

「クリムゾンインパクトの時にね、私も船にいたんだ、マモンが総班長を船に連れてきた時は驚いたけどね、彼は少し詰めが甘かったから、暴れられちゃってね」

 

京介が耳を反応させる

 

スロース

「仕方なく私も手伝ったんだけど、彼女はアンプルを飲んでから強くなったんだ、骨が折れたよ、手加減出来なかったんだけど、惜しい事をした」

 

アンプル、五条 司も使用した、命を削るブースター

京介は2人がそんなに物を使っている事すら知らない、知る由もない

 

ただ、空から落ちて来た亜紀の事しか覚えて居ない

 

京介が胸を抑える、珍しく汗をかいて息が荒い

 

そんな様子を知ってか知らずか、スロースが続ける

 

スロース

「あの総班長を実験に使えたら、薬も上手く作れたんだろうね」

 

その言葉に京介が飛びつく

スロースに向けて、拳を振り下ろす

 

しかしスロースは京介が殴りつけた場所には居ない

ただ地面を砕いただけだった

 

スロース

「怒ったかな?ごめんよ、ほらココだよ、広いだろう、存分に闘おう」

 

いつも余裕綽々な京介が有無も言わさず殴り掛かる

スロースは大雑把なテレフォンパンチを軽々躱し、京介に向かって話す

 

スロース

「おやおや、随分お怒りの様だね、何故そんなに怒ってイルんだい?」

「君は強いんだろう?それに、まだ能力を使って居ないね、見てみたいんだよ、[星崩し]の実力を」

 

京介は何も話さない

反応をせず、スロースを睨み付ける

果たしてスロースを見ているのだろうか

西島京介の瞳の奥に写っている物は、スロースではなく

 

あの日無惨に隊長達を死なせてしまった

無力な自分……

 

未だに自分を許せない、いや、生涯許す事など出来ないだろう自分を、京介は瞳の奥に見据えて居た

 

スロース

「やれやれ、あまり一人で喋らせないで、何か言っておくれないか?私はあまり独り言が趣味では無いんだ」

 

そう続けるスロースに、未だ無反応な京介、しかし、身体から煙が上がっていた

 

広いシェルターの中、さっきまでは寒々しかったのが、快適な温度まで上昇していた

 

その異変に気付いたスロースがさらに続ける

 

スロース

「君はマモンが言っていた火属性のBLITZかい?、なるほど……合点が行ったよ、クリムゾンインパクトの唯一の生き残りの理由が」

 

それを聞いて再び京介が殴りつける

またしても当たらない、が、シェルターの外壁はどれほどの厚みだろうか

ヒビが壁面全体までに広がる程の威力

 

京介の怒りが推し量れる程の威力に、追い討ちをかける様にスロースが話す

 

スロース

「君は能力を使わない様にしてるけど、感情の起伏で能力が上下するのは理解してるだろ?今君は無制限に上がる温度計みたいだよ、それの終点が何処にあるか、だけど」

「君はもう少しかな?」

 

「そうそう、あの総班長、アレは多分君の事かな?ずっと誰かの名前を呼びながら戦っていたよ、助けるとか、逃がさないと、とかね?」

 

その瞬間、京介の身体を炎がおそった

あの日以来、能力を使わなくても戦える程になった西島京介、錯乱し、気が狂う程に自分を痛めつけ、それでも周りからの助けでようやく日常の生活を送れる様になった京介が、明確に自身の能力を体現させた

 

スロース

「ほう、なかなか圧巻だね、並の能力者なら今ので焼けているよ」

「なら私もやる気になった方が良いだろうね」

「私はね、土属性なんだ、君はどうかな?土に包まれ眠りに付くかい?」

 

スロースがそう言うと、シェルター全体がうねるよう京介に襲いかかる

 

京介の瞳にはもう光が無い

うねる様京介に襲いかかるシェルター、京介の身体から放たれた炎は、無作為にそれを飲み込み、全てを灰にする

 

コンクリートや、土塊を、溶かしたり流動的にするだけの熱量は自然にも存在する、が、それを灰に変えるだけの炎など存在しない

 

それが今目の前で起こっている、スロースはそれに歓喜の声で答える

 

スロース

「素晴らしい、さすが[星崩し]!欲しい、君の能力、いや、君が欲しい!」

 

もはや聞こえていようがいまいが関係無く、スロースが京介に話しかける

 

スロース

「このアンプルはなんだと思う?、さっきまで見ていた人間の成れの果てに使った物何か比べ物にならない完成度の薬だよ」

「効果は少しなんだけど、今よりはるかに強くなれるんだ、私も本気にならないとね」

 

ポケットから出したアンプルを、京介に見せびらかして説明するが、もはや京介の耳には届いて居ない

 

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