青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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番外:小話ズ その8

 ◇◆◇ リニスとフェイト ◇◆◇

 

 

「ほらほら、こっちこっち!」

 

 ハラオウン宅を元気に走る、アリシア。

 アリシアに手を引かれるのは、未だ全ての状況を把握してはいないけど、アリシアの使い魔として色々説明を受けた直後のリニス。

 一気に説明を受け過ぎて、混乱気味なのは仕方ない。

 そんな精神状態だと、連れていかれる先がどこかを考える余裕も無いらしく。

 

「そんなに走ると危ないですよ」

 

 とりあえず、現状に対しての注意だけで精一杯らしい。

 

「だいじょーぶ!

 もうついたし! どーん!!」

 

 アリシアはその勢いのまま、叫びながら体当たり同然にドアを開けて。

 

「フェイトー! つれてきたよー!!」

 

 問答無用で、ベッドに座って本を読んでたフェイトの目の前にリニスを突き出した。

 

「え……リ……ニス…………?」

 

「な、何でリニスがいるんだい!?」

 

「フェイトと、アルフ……なの、ですね」

 

 突然の事に混乱するフェイトとアルフに対し、リニスは何となくでも現状を理解したらしい。

 ドヤ顔で胸を張るアリシアをちらりと見ると、そっとフェイトを抱きしめた。

 

「フェイト、元気でしたか?

 あれから2年と少々経っているそうですが、ちゃんとご飯は食べていますか?

 フェイトは集中するとご飯も忘れてしまう事があるので、ちょっと心配です」

 

 全然成長してないしと続きそうだけど、それは自重したリニス。

 

「で、でも、どうして……」

 

 相変わらずフェイトは混乱中。

 助け、又は説明を求める様に、アリシアの方を見た。

 アルフは口をパクパクさせてるけど、声が出てない。

 

「ママとエヴァおねえちゃんがやってくれたんだよっ!

 へーこーせかい? とか言ってたけど」

 

「ああ、エヴァンジュがまたとんでもない事をしたって事だね」

 

「お姉ちゃん、が?

 ……そっか。じゃあ、本当に……リニス、なんだ」

 

「何だか、不思議な納得のされ方ですね……

 はい、リニスですよ」

 

 リニスは苦笑気味だけど、2人ともしっかりと抱き合ってる。

 その間から、すすり泣くような声が聞こえるのは、無かった事にしよう。

 

 それからしばらくして。

 

「そろそろ落ち着いたか?」

 

 そんな事を言いながらお姉様がフェイトの部屋に入ってきたのは、アリシアの突撃から10分後くらい。泣いてしまってちょっとばつが悪いフェイトと、感情に引っ張られたせいかもらい泣きしてたアルフと、何を話していいか迷ってるリニスがお見合い状態になった直後。

 もちろん、様子を見計らっての乱入。

 

「あ、お姉ちゃん。えっと……」

 

「リニスの事か? 説明が難しいが……本人と言っていいはずだ。

 それと、私は実行犯で、主犯はプレシアだ。何か言いたい事があるなら、プレシアにもな」

 

「う、うん。じゃなくて、リニスは無理って言ってたよね。

 どうやったの?」

 

「並行世界から攫ってきた。並行世界に関しては……まあ、そのうち説明するが、今回に限って言えば過去だと理解しておいてくれ。

 攫ったタイミングとしては、ジュエルシード事件の前、フェイトが最後に会った直後くらいだ。今はアリシアがマスターになっている程度の違いはあるが、間違いなく本人だな。

 とりあえずはこんな所だが……他に、早く聞いておきたい事はあるか?」

 

「ううん、大丈夫」

 

「そうか。このまま他の連中に知らせると歓迎会になだれ込むのだろうが……何の準備もしていないし、すずかはまだ塾の時間だな。

 紹介する順を考えるのも面倒だし、この際だ。寿司屋でも貸し切って全員呼ぶか」

 

「え、お寿司!?」

 

 アリシアの目が輝いてる。

 

「寿司……ですか?」

 

「うん、お寿司。この国の料理なんだ。

 お魚だから、リニスも気に入ると思うよ」

 

「おいしーよ!」

 

 猫だし、きっと大丈夫。

 とりあえず、関係者に通達しないと。

 店の確保、いそげー。

 

 

 ◇◆◇ とある男達の冒険? ◇◆◇

 

 

 日本は今、2006年の夏。つまり、StrikerSの介入から戻って色々やった後。

 ここは、とある深い森の中。

 そこを必死に歩く、男が2人。

 

「なあ、道はこっちで合ってんだよな?」

 

 鬱陶しそうに木を掃いながら進む大男、馬場鹿乃と。

 

「うん、指示されたルートは外れてないよ。

 もうすぐ見えてくるはずだけど……」

 

 後ろでちょっと歩きやすくなった場所を歩く、けど根本的に体力が不足してる上羽天牙。

 2人はとある変態(ロリコン)に依頼されて、つまり、実質的にお仕事で、こんな所にいる。

 もちろん、2人とも興味があったのは事実で、報酬にも納得して請け負った事。

 その目的は。

 

「ん? お、あれだな。やっと着いたぞ」

 

「でも、ここからが本番だし……」

 

「訪問した理由の半分は嘘じゃねぇんだ。

 それに、何だ。俺達の度胸を付けるとか、そんな意味もあるとか何とか……はぁ」

 

「僕達って、そんなに頼りない……よね……」

 

「そんなんだから俺もすずかちゃんに愛想を……ま、まあ、あれだ。今回のは最低限の目標はほぼ失敗しないだろうって内容だし、気楽に行こうぜ」

 

「う、うん」

 

 いや、逆ナデポの破壊は、任務中に誰かに惚れたりしないための対策でしかないけど。

 まあいいか。

 そして、2人は前を向いて。

 

「「いざ、ルシエの里へ!」」

 

 足を進めた。

 村に入り、里長と話がしたいという事で、面会を求めて。

 

「ふむ、飛竜を見たい、と……」

 

 現在、お話中。オハナシではないけど、この場を作れた時点で、最低目標のクリアは確実。

 

「はい。ある事件で、飛竜を使役する人物が活躍したらしく、その映像を見て広い世界にはこんな生き物がいる事を知りました。

 可能であれば、間近で見てみたいと……もちろん、仲良くなれたら嬉しいですが、使役する力も環境もありませんし、召喚したいわけではありません」

 

「ふむ。その人物に見せてもらう事は不可能なのかね?」

 

「今では時空管理局のとても偉い人になってしまったので、一般人の俺達では、普通の方法で会うのはちょっと……

 そうそう、これがその時の写真です」

 

 そう言いながら馬場鹿乃が出したのは、聖王のゆりかごを先導するドラコの姿。

 報道ヘリが撮影した、ヘリなどと一緒に映ってる、つまり大きさが比較的想像しやすいものも含む。この里の人がどの程度ヘリに慣れてるか知らないけど。

 

「それで、何処に行けば会えるかを調べた結果、ここに竜を召喚する一族がいるという情報を見付け、伺った次第です」

 

 この部分はだいぶ嘘に聞こえるけど、それでも嘘は言ってない。ルシエの里の“場所”を調べたのはこの2人自身で、ルート情報も地元のガイド等から得てるから。

 さて、この時点で最低限の目標、ルシエの長老達に“強力な飛竜を使役する人物”の存在を教える事に成功。

 ここからは個人的に親睦を深め、何かあったら然るべきところに連絡するよう促すだけ。

 さて、うまくいくかな?

 

 

 ◇◆◇ ザフィーラとアルフ ◇◆◇

 

 

「……これは、どういう事だ?」

 

 新テスタロッサ家への引っ越しの日。

 4階南東の角部屋が割り当てられていると初めて聞いたザフィーラが、その部屋を訪れてみると。

 

「教導の為に夏の旅行に行かないのだし、座敷らしい座敷もないのだから、部屋を持っておけとは言われていたが。

 しかし、これは……」

 

 明らかに2人分の広さがあり、しかも、明らかに女性が使う事を前提とするものを含む家具類も置いてあった。

 鏡台とか。

 どうしてこんなものがと困惑してると、入口の戸が開く。

 

「あれ? なんでザフィーラがいるんだい?」

 

「アルフか。この部屋を使えと言われたのだが……」

 

「アタシもなんだよねぇ。

 普段はフェイトと一緒だけど、夏の旅行で別行動の時なんかはこっちとか言われたんだよ。

 ……どういう事だい?」

 

 どういう事も何も、周囲の人にはペアとして認識されているわけで。

 ここでカップルと言えないあたり、微妙だけど。

 

「男をこの辺りに集めたのだと思っていたのだが」

 

「カイゼとチクァーブもこっちだっけ。

 けど、チャチャもこっちだし、変態はプレシアの部屋だぞ?」

 

「しかも、お前もこっちを使う事があるとなると……ダイニングの玄関側に、旅行中にもいる者を集めるという事か?」

 

「かもねぇ。小さい風呂もあるし、洗濯や掃除以外ではダイニングより奥に行かなくてもいいって事かね」

 

 なんか納得されたけど、同じ部屋を割り当てられてる点が華麗にスルーされてるのはどうなんだろう。

 明らかに同衾を推奨されてるんだけどなー。

 

 

 ◇◆◇ こたつむり ◇◆◇

 

 

 新テスタロッサ家、4階南西の角部屋。

 第2のリビング的な、みんなで使う広めの部屋では。

 

「……あったけー……」

 

 垂れてかけてる、ヴィータと。

 

「…………」

 

 既に睡魔さんの誘惑に完敗してる、シャマルと。

 

「……動けん」

 

 主とリインフォースに挟まれて、むしろがっちりと抱き付かれ抱きしめられていて身動きの取れない、幼女形態のお姉様がいる。

 全員こたつに入り、毛布まで掛けた状態。確実に、このまま寝る態勢と言える。

 お風呂に入ってる他の人用の毛布も、準備済みだし。

 

「お待たせや。もう寝てるん?」

 

「ミカンの箱を持ってきたのだが、不要だったか」

 

 はやてとシグナム達が来ても、誰も見向きもしないレベル。

 お姉様は、物理的に見れないだけだけど。

 

「来たか。済まない、助けてくれ」

 

「んー、その様子やと無理や。

 リインフォースも、姉らしい事が出来てへんって気にしとったし。

 それに、リインフォースを引き離しても、後でフェイトちゃんかすずかちゃんが行くだけや」

 

「……神は死んだ」

 

「そんなんでエヴァさん、すぐ死んでしまうん?」

 

「淋しすぎて、死んでしまうわ」

 

「碧いバニースーツのエヴァさんが爆誕。

 成長するんや、ぼんきゅっぼんが似合う年齢まで」

 

「自分でも苦しいと思ったんだが、よく拾ったな」

 

「ふふん、元は暇人やったからな」

 

 そんなネタまみれの話をしながら、はやて達は隣のこたつに。

 

「他の連中は、まだ風呂にいるのか?」

 

「もうすぐ出るって言っとったから、そのうち来るよ。

 でも、みんなでこたつむりになるのも、何か楽しいなぁ」

 

「本来は、みんなでパジャマパーティーとか言っていたんだがな」

 

「こたつの魔力、恐るべしや。

 おおっと、こたつに召喚の構え!」

 

「現れた途端、気力やらが吸い取られて行動不能になりそうだな。

 おおっと、こたつの中にいる!」

 

「こたつの中、あったかいナリ……」

 

「何をやってるんですか?」

 

 到着したセツナが、呆れてる。

 お姉様とはやての会話が、少し聞こえてたらしい。

 

「身動きが取れんし、パジャマパーティーの真似事をしようとしたんだが。

 何かを間違えたらしい」

 

「間違え過ぎですよ……」

 

 

 ◇◆◇ アコノ ◇◆◇

 

 

「そういえば、口調はそのまま変えないのか?」

 

「どうして?」

 

 とある夜。

 お姉様と主が、ベッドの中で喋ってる。

 

「いや、感情はそれなりに戻っているようだし、そもそも一般的な話し方をしないのは何故だろうと思っただけなんだが」

 

「前世は口下手であまりはっきり喋る方じゃなかった。その口調に戻すのは嫌。

 今世はずっと、この口調。今更変えるのも何だか……ちょっと、恥ずかしい。

 エヴァが変えてほしいと思ってるなら、変える」

 

「理由が気になっただけで、別に嫌という訳じゃない。

 そうか、むしろ感情が戻ったから変えない面もあるのか」

 

「そう。

 突然口調を変えると、絶対に何かあったと思われる。

 でも、私にとって、エヴァと一緒にいられる事以上に大事な事は思い付かない」

 

「そ、そうか」

 

 

 ◇◆◇ ぎんのあね ◇◆◇

 

 

「……姉らしさとは、どの様なものなのだろうな」

 

「年長である事は、らしさとは言えない。やはり、経験や包容力といったものではないか?

 その意味では、あの方の姉であるのは難しいと思うが」

 

 とある日のパーティー会場にて。

 リインフォースとチンクが、並んで難しい顔をしてる。

 

「頭では理解しているのだ。

 様々な意味で助けられ、既に頭が上がらないのは承知しているが、それでも……いや、だからこそ、私は少しでもエヴァンジュを支えたいのだ」

 

「気持ちは解るが、支えるのは下の者の役目ではないのか?」

 

「そ、それは……確かに、そうかもしれないが。

 だが、私の経験は役に立たず、包容力はアコノに圧倒的大差をつけられているのだ。

 その上、普段はエヴァンジュの方が年上の姿をしているから、どうしてもな……」

 

 えーと、主は親愛より恋愛方向だから。

 競うべきは、プレシア?

 親馬鹿を拗らせた包容力はたまに洒落にならないから、侮れない。

 

「外見の年齢に関しては……事情がある以上は仕方がない。

 それに管理世界でのあの方は、私と変わらない外見であっても威厳が衰えない。

 ……羨ましい限りだ」

 

 いやぁ、そうでもない気が。

 普段は偉そうな幼女だし。

 

(聞こえているぞ)

 

 きゃー、ばれたー(笑)

 

(……どうして嬉しそうなんだ……?)

 

 

 ◇◆◇ ある日の光景 ◇◆◇

 

 

 とある時代。とある地。

 そこにある、魔法の練習場にて。

 

「とまあ、こんな感じだ。

 ある程度効果が見え始めるのは恐らく半年以上先だが、どこかに間違いや勘違い等があれば効果が無い事も考えられる。

 その判断材料にしたいから、何をどれくらい練習したか、記録は正確に取っておいてくれ。全員何もしないのは困るが、練習できない日がある事を問題視する気は無いからな」

 

「「「「「「はーい!」」」」」」

 

 お姉様は、魔法教室に通ってる6歳から18歳くらいの子供達を相手に、新しい魔法の練習方法を指導(じっけん)中。

 講師、生徒、生徒の親の同意を得て……というか、合意を得た相手だけに指導する予定で話を進めたところ、あっさりと全員が賛同したという経緯が。

 宗教が活発でない次元世界とはいえ、福音教の魔法教室に(おねえさま)が来れば、そうなるよねぇ。

 次元世界では本来の幼女バージョンなせいか、子供達のウケも悪くないし。

 

「それでは、今日はここまで。

 もうすぐ暗くなる時間だから、早めに帰るんだぞ?」

 

「「「はーい!」」」「「「えーー」」」

 

 年少組は素直に返事してるけど、年長組はぶーたてれる。

 もっと話をしたいのにー、とかの声も聞こえる。

 

「今回は説明が長引いたせいで、本来の終了時間をだいぶ過ぎている。それに、事前に説明した通り情報収集の意味もあるから、たまに顔を出す予定でもいる。

 質問や話は、その時にでも出来るんだ。今日は早く帰るといい」

 

「「「はーい」」」

 

 そんな感じで、子供達が退散した直後。

 主が転移で登場。

 

「お疲れ、エヴァ。

 終わった?」

 

「様子を見ながら出待ちしていたんだろう?

 見ての通り、終わった直後だな」

 

「じゃあ、今からは自由時間。夕食デートを希望」

 

 言いながら主はお姉様の後ろに回り込むと、おんぶをせがむように抱き付いた。

 

(入り口の方で様子を見ている連中はいいのか?)

 

 正確には入り口の陰に、帰ろうとしてたはずの生徒達が隠れてる。

 日本で言えば高校生くらいの女の子が3人。

 

(じゃあ、お題は……で)

 

「食べたいのか?」

 

「食べたい。柔らかいものの割れ目に肉の棒を挟んで」

 

「かけるのか?」

 

「どろっとしたもの? 当然。

 でも、口から零れるから、かけすぎ注意」

 

「全部口に入れようとするからだろう。無理して咥えなくてもいいんだぞ」

 

「好きだから仕方ない」

 

「仕方ないか。

 どこで食べるんだ? 一応ここはベンチで水分補給以外は飲食禁止になっていたはずだが」

 

「そういえば。エヴァがスカートなら、中に潜り込んで……」

 

 その時、がたっ! と、入り口の方から物音が(棒読み)

 思春期の女子には刺激が強すぎたかもしれない。

 

「もういいか。さて、お前達が何を考えていたかは……その様子では簡単に想像が付くな」

 

 お姉様が入り口から顔を出すと、そこには!

 顔を真っ赤にしてる、3人の女の子が。

 

「エヴァ、ネタバレしておく?」

 

「しておかんと、余計な妄想を掻き立てられるだろうな。

 お前達も食べるか?」

 

「「「……え?」」」

 

 目が点の3人の前に、お姉様は紙で包んだホットドックを5個、それにマスタードとケチャップの容器を出した。

 

「これは、とある地域で食べられている食べ物だ。簡単に言えばパンに切れ目を入れてソーセージやらを挟んだものだ。野菜を使う事も多いが、これは一番シンプルなものだな。似たようなのはこの世界にもあるが、味や食感に違いがある。

 味付けは好みだが、こっちの黄色いのは少し辛いから注意しろよ?」

 

「は、はあ……」

 

 お姉様にホットドックを渡された女の子達は、固まってる。

 どうしたらいいんだろうこれ、みたいな声が聞こえる。

 

「アコノは、マスタード少なめだったな?」

 

「体に引っ張られているせいか、やっぱり辛いのは苦手。

 でも、マスタード無しのエヴァよりは食べられる」

 

「私は元々、辛いのはあまり好きではなかったからな。

 この外見なんだから、お子様の味覚でもいいじゃないか」

 

「駄目とは言っていない。むしろ、好みが近いから食事で揉めなくて済むから問題無い」

 

 お姉様と主はぱくぱくと食べると、持ったままだったマスタードとケチャップを一番近くにいた女の子に渡した。

 かぶりつく様子を見て赤くなってるのは、なんでだろー。

 

「さてと、私達は行くからな。それを食べたら早く帰るんだぞ」

 

 そして逃亡……じゃない、練習場から立ち去るお姉様と主。

 ぽかーんとしたまま取り残される女の子達は、そっとしとこう。

 

 

 ◇◆◇ むかしばなし ◇◆◇

 

 

昔々、あるところに1つの魔導具がありました。

その魔導具は多くの意思を持ち、その中の1つが主人格として他の意思を統率していました。

 

その魔導具は、正しく兵器として存在しました。

作り出した国に命じられ、多くの人の命を奪い、多くの街を滅ぼしました。

 

そして、その意思は思います。

こんな事をしたいのではない、と。

静かに暮らしたいのだ、と。

恨みや妬みを向けられない世界が欲しい、と。

 

しかし、国はとても巨大で、強欲でした。

反抗的な世界は、邪魔なので攻撃します。

従う世界は、滅びない程度に搾取します。

豊かな世界は、搾取するために攻撃します。

貧しい世界は、生きるために争い続けます。

どこにも、平和なんてありません。

 

魔導具には、魔法に関する情報を集める役目もありました。

魔法を開発する能力もありました。

自分が望む世界、干渉されない世界を求め、動き始めます。

 

苦労を重ね、やっとでできたのは、小さな入れ物でした。

人どころか食べ物すら入れられない、危険な空間でした。

ですが、他人から干渉されにくい、自分だけの空間でした。

 

長い時間をかけ、更に技術を磨き続けます。

より、広く。

より、安定を。

多くの失敗を重ねながら、ひそかに動き続けます。

 

そんなある日、魔導具は国に命令されます。

兵器として、世界に終焉を。

魔導具の意思たちは考えます。

これは好機なのではないか、と。

その日、ある世界から星がなくなりました。

 

意思たちは望みを完成させます。

広大な空間を作る技術と設備を作りました。

星を持ち込み、人が住めるようにしました。

奪っていた命を、もう一度生きられるようにしました。

 

海も。

山も。

植物も。

動物も。

人も。

 

作られた空間、外部から隔離された場所で、存在できるようになりました。

もちろん、魔道具は国が保有する兵器です。

少ないながら、仲間も理解者もいます。

作った世界でずっと過ごす事はできませんでした。

 

意思たちはこの世界を別荘と名付け、穏やかな休暇を過ごす場所としました。

そして、その管理を、住まわせた人に任せました。

 

その約束はとても穏やかで、優しいものでした。

必要な維持を行えば、余暇は自由に過ごしてよいとされました。

自然に負荷をかけない範囲であれば、資源も自由に使ってよいとされました。

命令する権利は保持しても、それはほとんど行使されない権力でした。

この世界、この約束を守ることに、異論が出るはずもありません。

 

住人たちは、魔道具の主人格を主と仰ぎました。

住人たちは、自分たちを従者と呼びました。

主と従者は協力して、別荘をもっと豊かで安心できる世界へと変えていきました。

 

別荘は平和でも、外の国は違いました。

魔法で支配し、魔法で搾取していた国は、魔法を使えない空間に落ちてしまいます。

主も巻き込まれ、仲間だけでなく、親のように慕っていた製作者も喪いました。

 

それから主は、普通の空間に戻るために試行錯誤を繰り返します。

しかし、うまくいきません。

別荘に入ってしまうと外との繋がりが完全に失われるので、休むことすらできません。

精神と魔力を消耗する日々が続きます。

 

残りの魔力が僅かになり、主は決断します。

意識を閉じ、現象としての死をきっかけに発動する魔法に賭けると。

 

主は従者たちに、別荘の全てを任せました。

従者たちは、主の復活を信じて待つことしました。

それが、とても遠い未来になるとは、誰も思っていませんでした。

 

   古参の従者たちによる昔語り 別荘の始まり




「ある日の光景」ですが、リクエストではエヴァが赤くなるはずだったのに、赤くする側に回ってしまいました。
大っぴらに付き合って???年(福音教が成立し普及する程度の年月)。いちゃつくのを見られた程度で動じるわけがないなぁと思ったらこうなっていました。


この話で「青の悪意と曙の意思」を終了とします。今後の追加が全くないと断言はしませんが、可能性はとても低いです。
これに伴い「金色の娘は影の中で」の凍結を解除(但し当初プロットよりは若干簡略化)し、そちらの更新に移ります。

また、本日(無理だったら近日中)に質問受付用を兼ねた活動報告を投稿するので、そこで設定やらの質問に可能な範囲で回答します。
裏設定などもアリで。アリシアのデバイスの名前(バルエシュカ)の由来がпалочка(ロシア語でwandに相当)で、プレシアのカッカラはKhakkhara(梵語で錫杖)、ふたつともバルディッシュ(Wikipediaを見てみよう)からの連想だとか、無駄設定が色々あったりしますし。
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