我は神、偉大な力を持って死滅回游に参加せん 作:ムッシュ帽子
唐突にイメージが湧いてきた、正体不明の無茶苦茶なキャラです。よろしくお願いします。
死滅回游を始めるに辺り、羂索は長い時間を掛け手筈を整えてきた。
獄門彊による五条悟の封印、呪霊操術及び無為転変の術式入手、自身に絶大な縛りを掛けることでの儀式の成立等。時間は掛かったが、確かに仕掛けは整っていた。
そして来たる10月31日、死滅回游開始。果てのない殺し合いが始まった。
計画にズレや想定外は無かった。多少の遅延はあれど、計画は達成する。その読みは間違いではなかった。
少なくとも、今までは。
11月1日、午前6時10分。仙台コロニー内にて、事は起きた。
どこにでもいそうな、気迫の無い男がいた。その男は自らの心臓に刃を突き立てて、絶命した。
直後、非術師を結界の外へと送り出していた羂索が男の元に現れた。男が死亡したのかを確認するためだ。
最も仮に男が生きていたとしても、羂索は男が死ぬまで観察していたかもしれないだろうが。
どちらにせよ、男は死んだ。先程までの僅かな息遣いも、心臓の鼓動も聞こえない。
目に光が灯ることはなく、人間だった肉の塊が残った。
しかし、まだ結界内に一般人がいることを踏まえ、死体を見つけて逃げ隠れされない様先に処理しよう。そう思ったのか手で死体に触れた。
だがその瞬間、羂索は気付いた。
男の身体から、微かに呪物の気配が漂ってきたこと。そして自身の呪力が、根こそぎ男の死体へと吸われ始めていることに。
「これは、不味い……!」
危険を察知し、すぐさま男から手を離し距離を取る。触れていた時間は僅か数秒だというのに、既に羂索の呪力量は枯渇寸前までつきかけていた。
未知の出来事に内心焦りを浮かべる羂索だが、彼の想定外はこれで終わらなかった。
羂索の呪力を吸った男の身体は、みるみると活気づいていた。まるで呪物が受肉する様に、肉体も作り替えられていく。
しかし残すは頭部のみとなったところで、肉体の構築は止まった。どうやらこれで完成の様だ。
そして、男はゆっくりと目を開き、視界に入った羂索に告げる。
「────人間擬きの寄生虫よ、失せよ」
その一言で、羂索は仙台コロニーから弾き飛ばされた。これには羂索もいよいよ持って理解不能だった。
「(一体あれは何だ?私はあの術師を今まで見た覚えも契約した記憶も無い。呪物を埋め込んだつもりもない。ならば覚醒した術師?いや、あり得ない。そもそも肉体が既に死んでいただろう。死ぬ間際に呪力の核心を掴んだとて、あそこまでの反転術式を非術師が使えるものか……)」
とここで、ようやく吸われた呪力が回復し、羂索は一気に地面へダイブ、着地した。
「(となると、考えたくもないが、たまたま受肉する呪物を所持していた非術師ということか?男の身体に触れたあの感覚、あれは紛れもない特級呪物だ。しかしそれなら、何故今まで私が気付かなかった?あれだけの術師の呪物なら、呪力でとっくに気付いている筈が…………)」
自身の思惑にない、正体不明の受肉型術師。その存在が顕現する要因の特級相当の呪物。それが何故今この瞬間まで見つからなかったのか。
男が死んだ直後は一切呪力を感じなかった。触れたと同時に気配が出現した。男が生きている間を想定しても、それほどの強い呪力は感じなかった。
呪力が奪われると共に出現……。
「………成程、ようやく分かったよ。まさか呪物そのものに縛りが掛かっていたなんて、確かにこれでは私も気付けない」
呪物への縛り。それが見つからなかった理由だと羂索は考察した。
おそらく一定以上の呪力量を持つ存在が接触することで、その存在から呪力を奪うと同時に受肉。それまでは呪力を発生させない無機物で待機する、そういう縛りだろう。
だがこの仮定が事実なら、そんな縛りを掛けたまま呪物となれる術師が、フリーの状態で仙台コロニーに居座っていることになる。
あの対応を見るに、こちらに敵対心がある以上協力や懐柔は難しい。
だが処理しようにも、再び返り討ちにあってもおかしくない。
それらの要素から、羂索が出した結論は一つ。
「申し訳ないが、彼らに任せるとしよう。彼らと戦いになれば未知数だがあれも少なからず消耗する。そうなれば、後は私が狩ればいい」
仙台コロニーにいる4人の強者達に、あの術師の対応を丸投げした。そんな自身の対応に苦笑しつつ、謎の術師へ思いを馳せる。
「君が私と仲良くする気があるのなら、その時は君にも舞台を用意しようじゃないか」
羂索は正体不明の術師に興味と期待を持ちつつも、叩き潰す殺意を向けた。
そして羂索の思惑通り、仙台コロニーは本来の
運命が書き換わるまで、後■■……。
◆◆◆
我は神。至高にして偉大なる神である。神であるが故名は不要なり。
我は神としてこれまで活動していたが、人間達が変わらないのでそれも飽きてしまった。
やれ「お前は神なんかじゃない」だの、「神に人間が支配されてたまるか」だの、大方似たり寄ったりである。
幸い人間達は黒蟻と同じである。それらに対し天罰を下す程我の心は狭くないが、神に対して余りに不敬な物言いであるのもまた同じこと。
故に、人間達の国を一度だけ綺麗にした。
これで人間も我を崇める様になったかと思えば、全くもって変わらぬ。嘆かわしいばかりだ。
故に、私は小さくなり眠ることにした。人間が変わるその日まで、ゆっくりと眠り続けるつもりだった。
「しかし、我は見知らぬ寄生虫によって起こされた。誠に遺憾なり。加えて、ここにいるのは寄生虫に似た羽虫や、力を持たぬ人間。それと多少力がある人間だけだ」
ここはつまらん。が、煩わしいものが多いのもまた事実。そして、無垢な人間が羽虫に殺されるのは好かん。
そも、神の御前である。
「故に逃げるといい、そして伝えよ。
───偉大なる我こそが、神であると」
羽虫に喰われる寸前の人間を助けながら、人間達に言った。今回は奴らも道理を分かっていた様で、すぐに結界の外へ走り出した。
視界から消えたのを確認し、我はその場に腰を下ろした。
「さて、我はここを一時的な
しかし、羽虫を除いた空間、大砲、軌跡の人間達よ。そなたらは違うぞ?そなたらは自らを守り、他者に手を差し伸べるだけの力を持っている。
であるなら、弱者を狩る以上に、強者に挑む義務があると我は考える。或いは弱者を守るため、同等の者と相対するのも悪くないが……この儀式のあり方がそれを拒んでいる。
「しめつかいゆう……死滅回游か。成る程、我には関係ないが、弱き人間にとっては影響がある。そして、それにより起こる世の変わりようが」
だが、やはり我はそれを良しとは思わぬ。人間は無理に変わる必要はない。人間は弱くて、醜くて、しかしそれでも構わない。
何故なら、
「さて、我もこの儀式に参加するのであれば、
故に、今の我は儀式の総則は効かないが、力は思う様に使える。しかしこの結界を出れば、
「故に、弱き人間達が外へ行けるよう守護する。そして、善と力を持つ人間が来るまで、我は居座ろう。
─────我に挑むといい、力ある人間よ」
仙台コロニーにて、神を名乗る独立した強者が生まれた瞬間であった。