続きました。
雄英高校と言っても、一般教科の授業はあるし、休み時間もしっかりある。学食が安くて、学生がみんな利用するから、お昼休みに手作り弁当を出久に渡せない点は解せないがな。
しかし、午後からのヒーロー基礎学は、雄英らしいカリキュラムだろう。座学も入るには入るが、戦闘訓練を習うヒーロー基礎学はなかなかに、心踊る。
「私が___普通にドアから来た!」
クラスのみんなが、オールマイトに興味津々のようだ。私からすれば戦うとして、明確に相性不利なエンデヴァーの方に興味があるのだが…もし、彼と戦うとしたら、今の私ならどうするだろうか…。
…しかし、No.1ヒーローはやはり伊達ではないらしい、立ち昇るオーラからして、別格に___昔に見たオールマイトよりも、筋肉量が落ちているように見える。トップヒーローも老化には勝てないのだろう。
「早速だが、今日はコレ、戦闘訓練!そして、そいつに伴って、コチラ!」
稼働音を出しながら、教室の一部の壁が浮き上がり、コスチュームを収納する棚になった。なんというか、無駄にハイテクだな。
「入学前に送ってもらった個性届けと、要望に沿ってあつらえたコスチューム。着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ」
◆◆◆
「格好から入るってのも大切なことだぜ、少年少女」
オールマイト先生の言葉はもっともだ。それに戦闘訓練であれば、この服装でも違和感がなくて助かる。
私が身につけている服装は、白を基調とした軍服を胸の谷間が見えるように強調させ、ミニスカートとロングブーツで整える原作の仕事着だ…ふっ、この服装が似合うように、体型維持を頑張った甲斐があったというものだ。…早く出久に見せたいな。
「てか、やっぱりエスデス、モデルさんみたいに脚長い!羨ましい!王子様みたーい!」
芦戸三奈とは、出久の恋バナで一気に距離が縮まったクラスメイトだ。褒めちぎってくる。
「当然だ、この手の衣装を着られるように、睡眠時間と栄養を子供の頃からしっかり取っていたからな。だが芦戸…お前もよく似合っているぞ」
王子様みたいと言われたから、私も乗って芦戸に近づき、顎をクイとあげる。
「え…お姉様?」
「同い歳だ」
「あう!」
顎から手を退けてデコピンで芦戸を遠ざける。
周りを見るとクラスのみんなも、個性に沿った特徴のあるコスチュームを着ているな。しかし八百万は、その露出で大丈夫なのか?背中が丸見えではないか…いや、考えてみれば、社交界のドレスもあれくらい露出していた気がするから趣味か。それに同じ氷雪系個性の轟焦凍も、一目で氷雪系だと分かる。あとは___…うん?何故か今、すごく既視感のあるコスチュームがあったような…見間違いではないな、飯田のコスチュームにすごく既視感がある*1。
「露出のヤオモモ…着エロのエスデス…か」
足元で私には救えない、どうしようもない峰田実の声が聞こえた気がするが、気のせいか…気のせいのついでに、どさくさに紛れて踏んでしまおうか…。
さて、出久はまだ出てきていないようだな。出久のコスチュームはどんなものか………。
「デクくんのコスチュームいいね!なんだか地に足がついた感じで!」
「ありがとう、麗日さん」
出久のコスチューム…良い………。
あの可愛らしい無垢な笑顔が見えないのはいただけないが、好きなものが反映されていて悪くないデザインだ。
「麗日さんのコスチュームも…___」
「出久!そのコスチュームはすごく出久らしさが出ていていいぞ!」
「あ、ありがとうエスデスさん…エスデスさんのコスチュームも、カッコいいよ!」
「ふふん!そうだろうそうだろう」
出久に褒められて格好をつけるために、グラビア雑誌によく用いられるポーズを取ると、顔を赤くした。可愛いやつだ。
「ヒーロー科最高…」
足元の変態はやはり踏んでしまった方が適切か?…いや、喜ばれるのが関の山か…。
◆◆◆
入試の戦闘訓練の二歩先である屋内戦闘。賢しい敵は外で暴れる事なく、屋内や地下に身を隠す。オールマイト先生の話はもっともだな。
基礎を学ぶための対人戦闘訓練は、敵役とヒーロー役に分かれての二対二で行われ、敵は制限時間十五分核兵器を守りるか、ヒーローを捕まえるか、ヒーローはその核兵器の確保か、敵の捕獲が目的。そしてその訓練の組み合わせは、くじ引きによって決まった。
「僕は麗日さんと同じチームか、よろしくね」
「うん、頑張ろう!デクくん!」
どうして私は…出久と同じチームじゃないんだ…。
「エスデスちゃん!今回はよろしくね!」
「…葉隠がチームメンバーか、どうやら私は楽ができそうだな」
一見すると手袋と靴だけしか見えないが、そこにいる人物としてピョンピョンと跳ねて自己主張する。表情は見えないが、感情豊かに見えるな。
透明な味方と、それを知っている相手というのはそれだけでアドバンテージとなる。情報戦でも有利に戦わせてもらうとする。
しかし、私たちの番が回る前に出久のチームが最初に戦闘をするようだ。
出久の戦闘センスはどういったものか…お手並み拝見だな。
待機組はモニタールームで戦闘を観覧できる。出久がヒーロー役か…出久に突っかかる爆豪が敵役とは、一波乱起きそうだな。
「エスデスちゃんは緑谷くんと仲良く見えるけど、今回の戦闘どっちが勝つと思う?」
「そうだな…十中八九敵チームが勝つだろう」
「あれ?意外、いつもの調子なら緑谷くん達が勝つって言いそうなのに」
確かに感情面では出久を応援するが、勝ち負けはまた別の話だ。
「葉隠は私の事をなんだと思っているんだ…。私は盲目的に出久を好いているわけじゃないぞ、出久の将来性を見越したんだ。今はまだ勝てなくても、勝つように努力して、最終的に勝つ…それが出久の魅力だ。それに、付き合う男を"私に勝てるくらい"なんて言った日には、私は一生独身だろうな」
「わーお、すごい自信。てか、エスデスちゃんは真っ当に緑谷くんが好きなんだね」
「当然だ、アレは私のモノにする。どれだけ汚れようとも、最終的に私の元にくればそれでいい」
「エスデスちゃんは北斗の長男みたいな事言うなぁ」
葉隠はこの世界ではかなり昔のタイトルをよく知っていたな…。
「はぁ…会話は終わりだ、始まるぞ」
出久は麗日お茶子と一緒の行動か、羨まs…動きが辿々しいな。
ん?メインカメラの上の監視カメラに動きがあった…これは。
「奇襲か」
案の定、爆豪は先行して出久に強襲をかけた。出久は初撃を避け爆豪の動きを読んで背負い投げ一本。
「個性把握テストよりも動ける印象だな…いや、これは___」
どちらかと言うと身内読みか。
そして流れるように分断、麗日お茶子が単独核兵器のある部屋に到着したか。
しかし、爆豪は出久を探していてこのままではこう着状態で時間切れになってしまう…どうする出久。
「爆豪が緑谷を見つけた!」
クラスの誰かが、叫んだ。それと同時にモニターの奥では大規模な爆発。貯めたニトロを一気に放出した爆発はなかなかの威力に見える。
ただ、建物の損壊を考慮していない点から、オールマイト先生から減点が入る。
「やはり近接戦は、出久にはまだ早いようだ」
爆豪は曲芸のような三次元的攻撃で出久を追い詰める。ボロボロだな、後で『頑張ったで賞』で膝枕でもやってやるか………。あれは!爆豪と向かい合っての一騎打ち、それに普段見せない男らしい表情…出久は色々な
「…ヒーロー…ヒーローチームWIN!!!」
出久は核兵器のあるフロアを超えて天井をぶち抜き、麗日お茶子のサポートをして、訓練に勝利した。勝負自体はヒーロー側がボロボロだがな。
しかし私の予想をいい意味で裏切るヒーローチームの勝利とはな…流石だ、出久!
ちなみにオールマイト先生の総評に移ったが、八百万がオールマイト先生の言いたい事を全部言ってしまった。高校で初めて一緒のクラスになったけど、普段からあんな感じなのか…。
◆◆◆
「よーし!私たちも前の組に負けないように頑張るよ!」
「ふっ、その点は問題ない。私と同じチームになったのだ、勝利は確実だ」
「すっごい自信!期待するよ!」
出久の次のチームが私でなければ顔の一つでも見に行っていたが、仕方がない。
「相手チームは同じ氷系個性の轟と、筋力の高い障子、障子の個性はたしか索敵にも長けていたはずだ」
「流石に自信に裏付けできる要素はあるね」
葉隠は私の事をなんだと思っているんだ…。まぁいい、私達が敵チーム、向こうがヒーローチーム。
もし私がヒーロー側なら、やることは一つ。索敵をする時間すら与えない、こちらが対抗する前の建物そのものを凍らす大規模凍結。
「やはり来たか…」
核兵器の位置は最上階、その一つ下のフロアから私も建物を凍結させ、轟の凍結を相殺させる。
「では葉隠、手筈通りに」
『おっけー!』
◆◆◆
建物の外から、建物そのものを凍結させようと速攻を決めようとしたが、エスデス*2はそれを読んで同じように建物を凍結させていき、途中で凍結が止まった。
ちっ、やっぱり同じような個性だとやりづらいか。
「障子、中の状況は?」
「室内のほとんどは氷漬けだな。最上階までは確認できなかったが、おそらく凍結していないだろう。音は最上階からしか聞こえないな」
「十分だ」
最上階ではエスデスと葉隠が待ち構えているだろう。凍結したフィールドでは葉隠が満足に動けないだろうからな。
「障子はここにいろ、地面が凍ってたら満足に戦えないだろうからな」
「あ、ああ…しかし大丈夫か?相手はあの個性把握テストで、ほとんどの科目*3を一位ばかりだったエスデスだぞ」
「問題ない。戦闘訓練なら俺の方が上だ」
障子を一階の入り口に残して俺は凍らせた氷の上を歩いていく。氷の翼を出して飛べるエスデスの方が、機動力はあるがここは屋内。その機動力は現時点では優位性にならない。
一階はクリア、二階に上がるか…やはり核は凍結を免れた最上階か___ッ!
「ほう、受け止めたか」
「奇襲…爆豪の焼き直しか?」
エスデスは氷の翼を出しながら飛翔し、氷のレイピアで近接戦を仕掛けてきだところを氷の壁を生成して受け止める。
「面白い冗談だな。私のコレはちゃんとした作戦だ」
「そーかよ!」
薙ぎ払うように氷柱を出してその断面をエスデスに向けて伸ばす。
「ふむ、お前の氷の生成速度は悪くないな。少しは歯応えがありそうだ」
エスデスが氷柱を切り裂いたのか?氷で出来た模造刀のようなものかと思ったが、真剣のような切れ味かよ。
瞬間背後から"パキリ"という氷が生成されたような音を聞き、勘に任せて咄嗟に避けると、背後からエスデスの持っていたレイピアと同じものが急所を避けるように飛んできて地面に刺さる。しかし、少し当たっちまったか、足を掠めた。
「空中を飛ばせんのは反則だろ」
「抵抗できないならば…そのまま、最強の力に震えながら凍ってゆけ」
最強…最強か、確かに俺よりも上位の氷系個性、
「その目を落とした左側の個性、熱、あるいは炎の個性を使え、轟___それでようやく私と同じ土俵で戦えるぞ」
「誰があのクソ親父の個性を使うかよ」
「…はぁ残念だ…。半分の力では、到底私には勝てないと言うのに、プライドだけは無駄に高いとは」
俺を見下すような冷め切った表情をしたかと思えば、俺の両手両足を拘束するように氷塊を顕現させ、瞬時に凍結させた…俺が反応すら出来なかった氷の生成スピード…まだまだ全力じゃないのかよ…。
「轟は捕らえた!次は障子、貴様だ!」
エスデスは建物の窓を開けて、外に向けて大声で叫ぶ…。しかし葉隠の姿は…まさかッ!
「障子!来るんじゃねぇ!」
『はーい、障子くん確保』
だが俺の叫びも虚しく、エスデスはインカムを俺の耳の近くに運ぶと、障子捕縛の報告が聞こえてくる。
『敵チームWIN!!!』
オールマイトの声が放送で聞こえてくる…完敗だ。
「葉隠は、外からハシゴのようなものを生成して一階から奇襲させたのか」
「あぁ、私はあくまで陽動するだけでよかった。葉隠が動きやすいように場を掻き回すだけで、葉隠の行動を頭から忘れさせることができるからな」
作戦でも俺たちは負けていたのか…。
「完敗だ…」
エスデスはふんと鼻を鳴らすと、腕を組んで呆れていた。
「当然だ、半分の力で私に勝てると思った、その思い上がりがある限り、一生私には勝てないぞ」
「…耳の痛い話だ」
仮に、俺が右の氷だけの個性を伸ばしても、おそらくエスデスには届かないだろう…。
エスデスの言葉と個性の使い方、立ち振る舞いが、俺の心に深く突き刺さった。
お疲れ様でした!
エスデスは戦闘シーンはカッコいいのに、デクくんが絡む日常回だと、ちょっと負けヒロインっぽく可愛く見えちゃうんだよね…。