ここまで拙作
鬼滅の刃 礎 を読了頂き誠にありがとうございます!
一話ずつが短いですが百話まで投稿する事が出来ました。
読者の皆様ありがとうございます。
引き続き読んでいただき楽しんでもらえると非常に嬉しいです。
百話は短いですが、童磨戦の区切りである為一話使って結びたいと思います。
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静かだった。
ついさっきまで、
あれほど激しくぶつかっていた空間が、
嘘みたいに音を失っている。
残っているのは、
微かに軋む建物の音と――
血の匂い。
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伊之助が、
荒く息を吐く。
「……終わった、のか……?」
誰に言うでもない。
返事もない。
ただ、
その場に立っていることだけが、
現実だった。
刀を握る手が、
わずかに震えている。
戦いの余韻か。
それとも――
分からない。
伊之助は、
視線を落とす。
そこにあるのは、
しのぶがつけていた髪飾りだった。
「……」
言葉が、
出てこない。
いつもなら、
何か言っているはずなのに。
何も浮かばない。
ただ――
胸の奥に、
何かが残っている。
ざらつくような。
熱いような。
それでいて、
形にならない何か。
「……チッ」
舌打ちが、
小さく落ちる。
それ以上、
何も言わなかった。
カナヲは、
静かに立っていた。
少し離れた場所から、見ている。
近づくでもなく。
目を逸らすでもなく。
ただ、
そこに立っている。
呼吸は、
乱れていない。
姿勢も、
崩れていない。
だが――
その足は、
動かない。
一歩。
その一歩だけが、
出ない。
(……)
言葉はない。
けれど、
選んでいる。
今、
何をするべきか。
何をしないべきか。
選び続けている。
やがて。
ゆっくりと。
一歩だけ、
前へ出た。
膝をつく。
そっと、
髪飾りの傍へ。
両手で優しく掬い上げる。
(姉さん…あの時は…)
声にはならない。
けれど。
その沈黙は、
何よりも強く。
カナヲの目から涙が溢れる。
故に、
ここにある全てを、
受け止めていた。
その時。
遠くで、
何かが崩れる音がした。
無限城は、
まだ動いている。
終わっていない。
戦いは、
続いている。
伊之助が、
顔を上げる。
「……まだだな」
短く言う。
それだけで、
十分だった。
カナヲもまた、
静かに立ち上がる。
振り返らない。
もう、
分かっているからだ。
ここに留まることは、
できない。
しのぶが、
繋いだものは――
ここで止めるものじゃない。
足を動かす。
迷いはない。
次へ。
その先へ。
無限城の奥。
まだ、
いくつもの戦いが続いている。
叫び。
衝突。
血の匂い。
すべてが、
途切れずに流れている。
伊之助が、
先に踏み出す。
カナヲが、
それに続く。
言葉は交わさない。
だが――
同じ方向を見ている。
その場に残されたのは、
静かな空気と。
一つの“繋がれた意思”。
胡蝶しのぶは、もういない。
だが。
その戦いは、
確かにここに残っている。
そして――
その先へ。
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第百話 終