鬼滅の刃 ― 礎 ―   作:【規制済み】

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第百十九話 ― 夜明けの足音

 

夜が、

削れていく。

 

空はまだ暗い。

 

だが。

 

黒ではない。

 

地平の端。

 

僅かに。

 

ほんの僅かに。

 

色が変わり始めている。

 

鬼舞辻無惨の触手が、

荒れる。

 

――ブォンッ!!

 

空間ごと、

薙ぎ払う。

 

広い。

 

深い。

 

速い。

 

だが。

 

“乱れている”。

 

悲鳴嶼が、

踏み込む。

 

鉄球。

 

鎖。

 

片腕だけで、

振り抜く。

 

――ドォンッ!!

 

衝突。

 

押される。

 

骨が軋む。

 

それでも。

 

止める。

 

「南無阿弥陀仏」

 

実弥が、

その隙へ入る。

 

「焦ってんじゃねぇかァ!!」

 

風が裂ける。

 

――ザァンッ!!

 

無惨の触手が、

まとめて吹き飛ぶ。

 

再生。

 

増殖。

 

それでも。

 

“僅かに遅い”。

 

無惨の目が、

細くなる。

 

(老いている)

 

理解している。

 

珠代の薬。

 

老化。

 

分裂阻害。

 

細胞破壊。

 

全てが、

今も内側で動いている。

 

それでも。

 

押し切れるはずだった。

 

鬼の群れ。

 

増援。

 

数。

 

それが、

来ない。

 

(何が止めている)

 

答えがない。

 

だが。

 

確実に。

 

“時間”だけが失われていく。

 

炭治郎が、

踏む。

 

呼吸が、

静かに落ちる。

 

余分を削ぐ。

 

恐怖も。

 

怒りも。

 

焦りも。

 

“通す”だけが残る。

 

ヒノカミ神楽。

 

――ザンッ!!

 

無惨の肩口が、

深く裂ける。

 

焼ける。

 

再生が、

遅れる。

 

無惨が、

初めて炭治郎を正面から見る。

 

「……忌々しい」

 

低い声。

 

憎悪。

 

記憶。

 

縁壱。

 

焼き付いた恐怖。

 

耳飾り。

 

赫刀。

 

日の呼吸。

 

その残滓が。

 

まだ、

目の前にいる。

 

次の瞬間。

 

無惨の圧が、

変わる。

 

「消えろ」

 

触手が、

一点へ収束する。

 

炭治郎へ。

 

空間ごと、

潰す軌道。

 

「竈門!!」

 

伊黒が叫ぶ。

 

義勇が飛ぶ。

 

間に合わない。

 

その瞬間。

 

――ギィンッ!!

 

鎖。

 

鉄球。

 

悲鳴嶼が、

真正面から割り込む。

 

止める。

 

押し潰されながら。

 

地面が砕ける。

 

腕が裂ける。

 

それでも。

 

退かない。

 

「……夜明けまで」

 

低く。

 

深く。

 

「繋ぐ」

 

その一拍。

 

炭治郎が、

再び入る。

 

――ザァンッ!!

 

深い。

 

無惨の肉が、

大きく裂ける。

 

今度は。

 

閉じるのが、

さらに遅い。

 

実弥が笑う。

 

血まみれのまま。

 

「効いてんだよ」

 

伊黒が繋ぐ。

 

甘露寺が裂く。

 

義勇が流す。

 

全員が。

 

“夜明けまで削り切る”

 

その一点で、

噛み合っている。

 

 

別の場所。

 

鬼が、

砕ける。

 

終わらない。

 

押し寄せる。

 

重なる。

 

積み上がる。

 

それでも。

 

進めない。

 

真壁の呼吸が、

さらに深くなる。

 

礎国。

 

空間そのものが、

崩れない。

 

鬼が飛び込む。

 

――ザンッ

 

裂ける。

 

次。

 

――ドォンッ!!

 

砕ける。

 

次。

 

――ギィンッ!!

 

逸れる。

 

止まらない。

 

だが。

 

一歩も、

通らない。

 

鬼達の顔が、

歪む。

 

恐怖。

 

理解できない。

 

数で押している。

 

囲んでいる。

 

それでも。

 

“届かない”。

 

真壁の身体から、

血が流れる。

 

脚が軋む。

 

腕も、

限界に近い。

 

それでも。

 

沈まない。

 

(……まだ)

 

夜明けは、

来ていない。

 

なら。

 

崩れるわけにはいかない。

 

鬼が、

再び津波のように押し寄せる。

 

その瞬間。

 

真壁が、

静かに目を開く。

 

「遅い」

 

半歩。

 

踏む。

 

――ドォンッッッ!!!

 

衝撃。

 

鬼の群れそのものが、

後方まで吹き飛ぶ。

 

壁へ叩きつけられ。

 

折れ。

 

潰れ。

 

砕ける。

 

それでも。

 

次が来る。

 

終わらない。

 

だが。

 

真壁も、

退かない。

 

礎は。

 

最後まで、

崩れない。

 

 

第百十九話 終

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