神社で肝試しをしているA、B、Cは、なにも起こらないことにしびれを切らして神社の中に忍び込み、衝撃の光景を目の当たりにする。

果たして、神社の中で彼らが見たものとは---

最強の筋肉神と人類の物語が、今、始まる!!!!

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封印されしムキムキマッチョマン

 真夜中、片面を山に、もう片面を崖に囲まれた、車一台しか通れないほどの狭い道路の脇にある、古ぼけた石造りの階段の前に、三つの懐中電灯が光の円を映し出している。

 

「おい、B、C、心の準備はできたか?」

 

 Aの声が、異様に静かなこの場所に響く。

 

「そりゃあもちろん。俺が夜の神社なんかでビビるとでも思ってんのか? しかしどうだねC君、ビビリな君は、もうチビっているんじゃないかい?」

 

「なっ、こんなの何も怖くないし! それにまだチビってなんかいないから、そもそもチビんないから」

 

「それはどうだろうねぇ、神社に着いたら、怖くて怖くて、君のズボンが水浸しになるんじゃないかい?」

 

「おいお前ら、こんなくだらない話してないでさっさといくぞ」

 

 BとCの口論はAに止められ、彼らは神社へと続く階段を登り始めた。

 

 彼らが、不気味に伸びた蔓を掻き分け、鬱陶しい蜘蛛の巣を払い除けながら石段を登っていくと、十分程で、小さな神社に辿り着いた。境内には草が好き勝手に生え、肝心の社も表面の多くを苔に覆われ、木が腐っている部分も散見されるような酷い有様であった。

 

 がさがさと草の揺れ動く音、蛙の鳴く音、鈴虫の声、そんな日常では気にも留めないような雑音がどれも異様に不安さを煽ってくる。

 

「これ以上近づくのはやめようよ、もう十分じゃない?」

 

「何だよC、折角ここまで来たってのに怖気付いて帰るってのか? そうだ、もし来ないんなら置いていくぞ」

 

「うぅ、わかったよぉ、着いていくよぉ」

 

 Bの煽りの影響もあってか、神社へと進んでいくA、Bの後をCは渋々と着いていった。

 

 

 

 Cはあれほど怖がっているが、神社に近づいた所で、怪奇現象の類は全く起こる気配を見せなかった。それは『絶対幽霊とか出る場所見つけた』と意気込んでいたBにとっても、その話を聞いてやって来たAにとっても気抜けする結果であった。

 

 スリルが足りない。そう感じたAとBはCを連れて、社の中へと入ることにした。

 

 ギシギシと不快な音を鳴らす階段を登り、勝手に開けていいのか少々戸惑ったが、「ここまで来て収穫なしでは帰りたくない」と、ここ数年触られたこともないような木戸を、力任せに開いた。

 

 何年、何十年も閉ざされて来た空間には、期待はずれにも何もなかった。カビ臭さと木や苔のの腐った仄かな甘い香りが混じった匂いの通り、腐った木から生える小さなキノコや、もこもこの苔が懐中電灯の光で照らし出されるのみだった。

 

 もう面白そうなことは起きなさそうだから帰ろう。Aがそう思った矢先、

 

「何、これ……」

 

 か細いCの声と、腰を抜かして、床に尻餅をつく音が聞こえ、AとBは、小刻みに震えるCの懐中電灯が照らし出す先を見た。

 

 それは、入口から真正面の壁の天井付近を照らし出していた。そこには、丁度神棚のようなものが突出していて、その上に、黒ずんだ紅白のお札が表面を隠すようにびっしりと張られた立方体があった。

 

 異質であった。立方体から薄暗い靄が出ているように錯覚するほどであった。

 

「まじか、こんなものが現実にもあるなんて。中に宿儺の指でも入ってるんじゃねえか」

 

 Aが怯えを誤魔化すかのように軽口をたたく。

 

「そうかもな。じゃあ、開けてみるか?」

 

「おい、やめろ。それで呪われたりしたらどうする」

 

 AとBが言い争っている様をCは呆然と見つめていた。そして、Aの「今日はこれぐらいにして帰るぞ」という言葉の後、Aに引きずられCは外に連れられて行った。

 

 しかしBは中に残った。中身を開けてAとCを脅かしてやろうと思ったのだ。箱を手に取り、周りを覆っているお札をびりびりと剥がした。かなり昔のものだったからか、それはいとも簡単にはがれた。しかし、半分ほど剝がしたあたりでBは異変を感じた。箱が動いたのだ。一度だけなら気のせいだと思うかもしれない。だが、それはガタ、ガタ、ガタ……と何度も揺れ動いた。

 

「やばい!やばいやばいやばいやばいやばい。ホントになんか入ってる! おい、逃げろ!」

 

 Bの叫ぶ声が林の中に響いた。それは、AがCを社の外まで何とか引っ張り出した頃だった。

 

 飛び出したBは、A達を一瞥したのち、待つそぶりを一切見せず一目散に下って行ったが、AはCを置いていくことができずに、その場からいそいで離れることができなかった。

 

 そして、AとCは見てしまった。

 

 Bが投げ捨てたために、社の出口付近にある箱。残された数枚のお札と、剥がされた跡がこの木箱が先ほどの物であることを明確にしていた。それが、カタカタと震えたかと思えば、ギィィィと音を鳴らす。

 

 ガタガタガタ、ギィギギギギィ、メリメリ。そんな音が何度か続いたかと思えば、バキバキという音とともに木箱にひびが入り、内側から何かが出てくる。

 

木箱のひびから漏れ出す、太陽かと見紛う程の眩い光が深夜の森林を包んだ。

 

 その眩さにA達は目を覆うしかなかった。

 

「はっはっはっはっ。汝ら、よくぞ我を開放した!! はっはっはっはっは!!」

 

 光が収まり、何とか目をひらけるようになったタイミングで、やけに大きく野太い声が木々を揺らした。

 

 AとCが何とか目を開けると、そこには、三メートルはあろう体躯の、金色に輝くボディービルダーのような美しい筋肉をもった、上裸でTバックのスキンヘッドの男が家の照明程の明るさの後光とともに立っていた。

 

 突拍子もない展開に呆然として声も出せないでいるAとCを尻目に、木箱から現れたムキムキマッチョマンは聞かれてもいない自身の境遇を語りだした。

 

「我は健康と運動と筋肉の精霊、もりもり元気マンである! しかし、まず謝罪をさせてくれ。汝らの暦で1917年から1919年にかけて行った、ガリガリ病気マンとの激しい戦いの末に破れ、奴にこんな辺境の神社の奥に封印されてしまったのだ。その時は、我の敗北のせいで、汝らに多大な迷惑をかけたことを深く詫びよう。すまなかった。」

 

「それで、我が眠っている間にどれほどの時が過ぎたのだ? 今は西暦何年なのか教えてくれないか」

 

「……えっと、20…19年です。」

 

 何とかAが答える。

 

「なっ!? 我が封印されている間に100年が過ぎていたというのか? ということはもしや……ああ、やはりか。この雰囲気は、ガリガリ病気マンが復活している! しかし我との戦い以降、奴も100年の眠りについていたから、復活したばかりで万全の状態ではないようだな。奴を封印するには今しかない。」

 

「汝ら、開放してくれたこと、誠に感謝する。しかし我は行かなくてはならぬ。恩はガリガリ病気マンを封印する事で返そう。では、さらばだ」

 

 ジュバッ

 

 空気が焼けるような音を鳴らし、もりもり元気マンは高速で飛び立っていった。唐突に表れたもりもり元気マンは一人で好き勝手話して唐突に居なくなった。後には最初から最後まで呆然としていたAとCと、木箱の破片だけが残っていた。

 

 結局もりもり元気マンはほとんど何も説明せずに行ってしまった。もりもり元気マンとは、そして、ガリガリ病気マンとは一体何だったのだろうか。

 

 「まあ、開放されたもりもり元気マンは悪い化け物とかじゃなさそうだしいいか。」それが彼らの中で一致した結論であった。

 

「とりあえず、神社の扉だけ閉めて帰ろうか。」

 

「そうだね、それで、この木箱の破片はどうする?」

 

「Bの野郎が剥がしたお札と一緒にそこら辺の茂みにでも捨てとけばいいんじゃないか?」

 

「そうだね。そうしよう。」

 

 もりもり元気マンの登場により、今まで感じていた不安や恐怖はAだけでなくCからも消え去り、彼らは放心状態のまま後処理をして帰路に就いた。

 

 帰る道は、見た目こそ変わらなかったが、行きとは打って変わって彼らに何も感じさせなかった。

 

  ◆

 

 その数か月後から数年にわたって新型コロナウイルスが流行したが、全世界での迅速な対応と、市民の協力により過去のスペイン風邪のような惨事にはならなかったそうな。

 

 コロナ禍が過ぎたあと、AとCは再度神社を訪れ、新しいお札に包まれたプロテインシェイカーに『あけるな』と豪快な文字で書かれたものが、元々木箱が置いてあった場所にあるのをみつけた。

 

 

 

 

 

 

 




一発ネタです。最強の筋肉神と人類の物語始まって終わります。ここから物語が続いたりはしません。

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