インフィニット・ストラトス Re:RISING 作:最後のVESPERの挑戦状
第13話:テイク・アス・ウィズ・ユー
学年別個人トーナメントが終了し、1年生のトーナメントは承壱が優勝を飾り、エキシビションマッチでその専用機であるロックスミスが第二形態移行と単一仕様能力に覚醒する大波乱の結果となり、無事に一般生徒達にシャルルの正体がばれる事は防がれた。その結果、翌週からシャルルはシャルロット・デュノアとして改めて女子として登校する事になった。
一方で、承壱と千冬の影響を受けてしまった一夏は、箒、セシリア、簪、鈴音、シャルロット、ラウラとハーレム関係となる。
イベントの1つが終わり、新たな心境と状況になった承壱達は、次のイベントに備え始める…。
月曜日の昼休み。
学年別個人トーナメントの興奮はまだ冷める事は無く、学園中でその話題が盛り上がっていた。一方で、1年生を中心にシャルルの正体がシャルロットと判明したのも話題となっていた。
そんな中、学食の一角で承壱は一夏達と昼食を取っていた。だが、いつも多く食べる承壱だが、今日は少量で済ませてしまった。その手は自前のノートパソコンのキーボードに置かれており、その画面を険しい表情で見詰めていた。
「…」
「…アニキ、どうしたんだ?」
「…」
食事をしながら対面の席にいる承壱が気になってしまった一夏は質問するが、承壱は黙り唸り声みたいな声を小さく出している。反応があるが明確に声に出さない承壱に周りにいた箒達も注目してしまう。
「…アニキ?」
「…面倒な事になったな」
そう言って承壱は一夏達へノートパソコンの画面を見せてきた。その画面には『IS学園の蒼き狼の異端児とブリュンヒルデの弟!』という見出しが書かれたニュース記事が映し出されていた。
「先週の個人別トーナメントがどうやらクロームやムラクモを始めとした多くの企業を通じて広報された様だ。どこのニュースサイトでもピックアップされているよ…。ついでに準優勝したイチの事もな…」
「ええ~、マジで?」
「マジだ。しかし、変な通り名出来たな…なんだよ、『蒼き狼の異端児』と『ブリュンヒルデの弟』って…」
絶妙なネーミングにどこの誰か分からない名付けた第一人者と便乗したニュース編集者を恨む様に承壱は、額に手を当てて眉間にしわ寄せてしまう。それを見たセシリアと鈴音が宥める。
「まあまあ良いではないですか、お兄様」
「そうよ、にいに」
「そうか…って、今何つった?」
何時だかのやり取りを思い出しながら2人にツッコんだ承壱。言い出したセシリアと鈴音、ついでにシャルロットもニカッと笑って答える。
「いえ、先日、私達を『妹』として認めてくださったので、私は『お兄様』と呼ぼうと思いまして…」
「アタシはずっと前から『にいに』って呼びたかったから『にいに』って呼ぶ事にしたの」
「僕は『兄さん』って呼ぶ事にしたよ?」
「ちょっと待って3人共…。いきなりそんな言われたら、承壱さんだって困惑するぞ?」
3人の宣言に箒は諫めるが、承壱は思わずニヒルに笑った。
「いいよいいよ、箒ちゃん。好きに呼んでいい。もう、妹だろうが弟だろうが増えるのは慣れたもんだ…」
しかし、珍しく悲壮な表情になってしまう承壱。どこか諦めの思いがあった様だ。
そして、気持ちを切り替えて承壱は懸念している事を話し始めた。
「…話を戻すが、俺が面倒な事っていうのは、こっちの事だ」
そう言って承壱が見せたのは別のニュースサイトの記事。表向きは他のニュースサイトと同じ様な高評価な内容で書かれているが、進めると後半の見出しは『インチキ男』『下品で野蛮で愚かな狼』等と批判的な見出しとなっていた。しかもその見出しはどれも承壱を指して批判している。
「…けちょんけちょんに書かれている…」
「これは…酷い記事だな…」
簪が静かに怒る横で、軍人らしく冷静な目で判断するラウラ。その一言に承壱は黙って頷く。
これは間違いなく承壱に敵対心を抱いている者が書いた事は一目瞭然で、その証拠に一夏は高評価に書かれているのだ。
「もうここまで来るとただのバッシング記事だ。相当、俺は嫌われている様だ…」
「だからってこんなに書くのかよ?しかもなんで、俺の事は書かれてないんだ?」
「多分…イチは千冬の弟だからだな…。下手に書いたら千冬を神格化している組織に目を付けられるからだろう。完全に油断していた…」
殆ど想定していなかった事態に珍しく天を仰いでしまう承壱。そんな承壱に優しい声を掛ける者が出てきた。
「そんなに気に病むなよ、承壱。オレ達がいるぜ?」
「そうっスよ。私達が最後まで味方になるっス」
「ああ、ありがと…って、ダリル?フォルテ?」
「わっ、ビックリした!」
声を掛けてきたのは、学年別個人トーナメントのエキシビションマッチで承壱と激戦を展開したダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアの2人だった。
2人の登場にシャルロットが驚いてしまうが、ダリルとフォルテは続ける。
「よう、後輩共!」
「ここいいスか?勝手に座るっスけど」
「じょ、承壱さん…この2人って…」
「ご存じ、エキシビションマッチで戦ったダリルとフォルテだ。皆、仲良くしてくれよ?」
「「「「「「「は、はーい…」」」」」」」
いきなりの乱入に承壱が動じる事は無いが、その指示を聞いた一夏達は返事するが、あまり知らない相手に警戒してしまい空返事の様に反応してしまう。
その態度を見て、ダリルとフォルテは少し不満げな表情となってしまう。
「おいおい、そんな警戒するなよ。むしろ、オレ達は承壱の仲間になりたくて、ここに来たんだぜ?少しは信頼してくれよ?」
「そうっスよ。最近の後輩は警戒心が強いっスね」
「ダリル、フォルテ、あんまり俺の仲間達を困らせるなよ。というか…仲間になりに来たって本当か?」
承壱の質問にダリルとフォルテは顔を見合わせて後、笑顔で頷いた。
「勿論だ。それにオレ達…お前に惚れちまったんだよ…」
「だから…私達を恋人にして欲しいっス、承壱さん…」
「…ん?今、何て言った?」
「惚れた…?」
「恋人…?」
「え?」
「え?」
「「「「「「「ええええええーっ!」」」」」」」
ダリルとフォルテが揃って電撃告白して、それを聞いていた者達は間の抜けた声を出してしまい、脳がようやく事実に気付いた一夏達は驚きの声を出してしまう。
それは学食の一角ではあったが、周りにいた一部の他の生徒達は声の大きさに驚いてひっくり返ってしまう者がいるほどであった。
そして、ダリルとフォルテの告白に承壱は瞼を閉じて考えしまう。
(…凄く嬉しい告白だが…うーん、困った。一度、千冬と顔合わせして、あいつが認めてくれればいいか…?とは言っても俺がダブスタしてはイチのお手本にならないか…?)
腕も組んで悩んでしまう承壱だが、この場にいない千冬の認可が必要だと理解し、ダリルとフォルテに向き合って答えを出した。
「…2人共、よく告白してくれた。ありがとう。だが、今すぐに答えは出せない。今日の放課後に…そうだなぁ…、職員室前に集まってくれないか?」
「…な、なんで?」
「どうして、職員室なんっスか…?」
「それはなぁ…2人に是非とも会ってほしい人がいるからだ」
保留される形で告白の返答が出された事でダリルとフォルテは怪訝な表情になってしまうが、承壱の発言の意図がよく分からず首を傾げてしまう。
その一方で、承壱の『会ってほしい人』が誰を指しているのかを分かった一夏達は、これから起こる騒動に冷や汗を掻きながらハラハラしてしまうのであった。
放課後。
それぞれ授業を終えたダリルとフォルテは、承壱に指定された職員室前の廊下にて、承壱本人を待っていた。
「…承壱さん、遅いっスね」
「会ってほしい人を連れて来てんじゃねぇか…?」
そう2人で話しているとようやく承壱がやって来た。その後ろに千冬を連れてだ。
「お待たせ2人共、連れてきたぞ」
「おい、承壱…オレ達に会ってほしい人って、まさか…」
「そう、我らが1年1組の担任である千冬先生だ!」
「なんでそう言うんだ、時城?」
「いや、こう言った方が面白いと思ってな」
「全く…」
「ええ~、なんで~?」
「サファイアの疑問は分かるが、ここで話すと大変な事になるから生徒指導室に行くぞ」
そう千冬に言われ、承壱達は生徒指導室に場所を移した。
そして、全員が椅子に座ったとこで千冬が切り出した。
「さて、話は承壱から聞いている…が、お前達何が目的だ?」
「えっ?どうゆう事スか、織斑先生?」
「やましい目的は無いぜ?と言うか何で織斑先生がこの話に出てくるんだよ?」
「それはな…私が承壱の恋人、もとい正妻だからだ」
「「へぇ~…ええええええーっ!」」
いきなりの千冬の衝撃発言にダリルとフォルテは、目玉が飛び出る程に驚いてしまう。
どうやらダリルとフォルテが千冬に抱いている印象は、公私をしっかり分けている厳格な教師らしく、この発言は全く予想が出来なかった様だ。
それを見ていた承壱は思わずケタケタと笑い始めてしまった。
「ははは、やっぱり驚いている」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!今、正妻って言ったよな…?まだ他にいるのかよ、承壱!」
「ああ。だが、2人も知っている奴だ」
「だ…誰っスか…?」
フォルテの質問に千冬は笑顔でヒントだけ教えた。どうやら、承壱と同じ2人の反応を楽しんでいる様だ。
「私の友人でもあって、ISを開発した天才科学者さ」
「…それって、篠ノ之博士の事かぁ?」
「正解っ!」
パンッと手を叩いて答えたダリルに指差す承壱。だが、承壱の行動にフォルテはびくついてしまうが、その交流関係に思わずツッコんでしまう。
「滅茶苦茶有名人じゃないっスか!どんな人脈と関係になっているっスか!」
「強いて言うなら…幼なじみで自然の成り行きかな?」
「いや、あいつの場合はお前に一目惚れだろ。まあ、私もそうだったが…」
「…承壱、お前…本当に凄い奴だな」
ダリルは自分が初めて惚れてしまった男が凄い人物だと再度理解しつつ、その人脈から敵に回さなかった事に安心してしまう。それはいつか話す事にしたダリルは、改めて千冬に向き合った。
「織斑先生…いや、千冬さん…オレは初めて男に惚れたんだ。堕とされちゃったと言ってもいい。オレは承壱の傍にいたい。それは、絶対にオレの人生に必要なんだ。ただ…フォルテも一緒じゃないとオレはダメなんだ…。やましい目的や悪い事は考えていない。信用出来ないなら、迷惑なら都合のいい相手でもいい。だけど、オレを、オレ達を承壱の傍にいさせてほしいんだ…」
ダリルは言い切り頭を下げた後、フォルテも続けて自分の思いを語り始めた。
「私も…ダリルと同じっス。承壱さんと戦って…その、かっこよくて、一目惚れしたっス…。それをダリルに相談したら、ダリルも同じ人を好きになっていて…それがまた嬉しくて…。だから、恋のライバルじゃなくて一緒に恋人になろうって、私が言ったんっス!千冬さん、お願いっス、私達も承壱さんの恋人にして下さいっス!」
フォルテも言い切った後、頭を下げて懇願する。
それを見て聞いた千冬は、溜め息をついてしまうが、ニヤリと笑ってしまった。
「…一夏がああなったから、承壱もこうなるとは思っていたが…こうも早く増えるとはな。まぁ、良いんじゃないか?今更2人増えた所で私は、文句は言わないさ」
「えぇっ?」
「ほ…本当に良いんっスか?」
千冬の許可を得た発言を聞いたダリルとフォルテは、思わず顔を上げてしまう。
そして、千冬は笑顔のままで更に続けた。
「ああ、良いさ。それに…承壱も男だからな。本当のハーレムを夢見る事もあるだろう。だがな、私はこいつに惚れた女として、同じ男を好きになった女が悲しむのは見ていられないからな…。まあ、どれだけこいつが他の女を抱こうとも、私とは相思相愛だから最終的に選ぶのは私という事は変わらん。だから…正妻の座は譲らんぞ?」
「…つ、強ぇ~」
「流石、世界最強っス…」
「…お前、以外と腹黒いな」
ダリルとフォルテは千冬の余裕のある発言に敬意を抱くが、千冬の意外な面を見れた承壱は、口を開けて呆れてしまう。だが、同時にこの瞬間から承壱の千冬への愛は揺るぎ無い物へ強固にさせた。
すると今度は千冬が承壱に話を振った。
「承壱、お前はどう思っているんだ?」
「…正直言えば嬉しいよ。この傷のせいでモテないと思っていたら、いつの間にかモテて、美女2人に告白されたんだから、なお嬉しいよ…」
(…それは違うと思うぞ、承壱)
承壱は左頬の傷跡を指で撫でながら笑顔で答えたが、何処かに煮え切らない表情になっている。千冬は、原因は他にあると思っているが、あえて口に出さないでおく事にした。
そして、承壱はすぐに真剣な表情になってダリルとフォルテに見て言い出した。
「…2人の想いはよく分かったよ。ただ…俺がやろうとしている夢は、かなり酷な過程を歩む夢だ。それに付いてきてくれる覚悟もあるか?」
「…ヤバすぎる夢じゃないんだろう?だったら、一緒に行くぜ、オレは!」
「私も最後の最後まで付いていくっス!ダリルと一緒に!」
「…分かった、ありがとう。これからは、仲間として、そして、恋人としてよろしく頼む」
承壱がそう言った瞬間、ダリルとフォルテは喜びのあまり承壱へ抱きついてしまう。それを隣で見ていた千冬もふくれっ面になりながら承壱へ抱きついてしまい、承壱は嫌な顔をする事なく受け入れた。
こうして、ダリルとフォルテが承壱の恋人となり、一夏達は専用機持ちの良き先輩と巡り会う事が出来た。
そして、この日以降からダリルとフォルテは、承壱達の放課後訓練に参加する様になった為、その腕と技術を高めていった。
数日後。
暦は初夏の7月となった。気温と湿度は猛暑日に迫りそうな勢いで上がっており、それに伴ってIS学園の生徒達の制服も本格的な夏服仕様となって登校する生徒ばかりとなった。
なお、暦が変わったからといって遅刻は誰もしていない。慌ててISを部分展開して飛んで、担任や教員に怒られるという事は一切無かった。
時間には余裕を持って行動するのが承壱のポリシーで、それは一夏達メンバーや他の1年生達にも浸透しているからだ。
「諸君、おはよう」
「「「「「おはようございます!」」」」」
夏服仕様になったのは教師達も例外では無く、千冬も半袖の白ワイシャツ姿で勤務している。
教壇に立ち朝の挨拶をした千冬にクラスメイト達は元気よく挨拶をする。初夏になってもIS学園の1日の始まりは変わらない。
「今日は通常授業の日だ。IS学園生とはいえお前達も扱いは高校生だ。赤点は取ってくれるなよ」
授業数自体は少ないが、一般教科も当然IS学園では履修する為、期末テストがある。ここで赤点を取れば夏休み等の長期休みは、連日補習になってしまうので、皆何が何でも避けたいのである。
「それと来週から始まる校外特別実習期間だが、全員忘れ物等するなよ。3日間だが、学園を離れる事になる。自由時間は羽目を外しすぎない様に」
7月の第1月曜日から3日間に渡って校外実習すなわち、臨海学校があるのだ。3日間の日程の内、初日は移動と丸々自由時間となっており、場所は臨海学校であるから当然、海である為、何とも十代女子には嬉しいスケジュールとなっている。その為、学年別個人トーナメントが終わってからも1年生達のテンションは上がりっぱなしとなっている。
それは一夏達も例外では無く、今週末には一夏は箒達ハーレムメンバーを連れて水着を買いに行く事にしているそうだ。
そして、承壱も同じであった。
(海か…。水着姿の千冬…エロいだろうなぁ~)
青空に青い海、白い砂浜、そこにセクシーな水着を着こなした千冬が振り返る…。
その光景を脳内に思い浮かべながら、いつだかの時と同じく妄想する承壱だが、ここである事を思い出してしまった。
(…あっ、ヤベぇ!俺の水着が無い!)
一番大事な事を忘れていた承壱は、慌てて脳内で週末の予定を追加する。大事な事だから妙にソワソワしてしまうが、上手く出さない様にした。
「ではショートホームルームを終わる。各人、今日もしっかりと勉学に励めよ」
「あの、織斑先生。今日は山田先生はお休みですか?」
「山田先生は校外実習の現地視察に行っているので今日は不在だ。なので山田先生の仕事は、私が今日一日代わりに担当する」
「ええっ、山ちゃん一足先に海に行っているんですか?いいな~!」
「ずるい!私にも一声掛けてくれればいいのに!」
「あー、泳いでいるのかなー。泳いでいるんだろうなー」
「あー、一々騒ぐな。鬱陶しい。山田先生は仕事で行っているんだ。遊びでは無い」
(だから…皆、山田先生に敬意を持ってくれよ…)
本日は不在の真耶に対して、理由を知ったクラスメイト達は賑わい、千冬は鬱陶しそうにしながら咎め、まだ敬意を思っていないクラスメイト達へ敬意を持つ様に心の中で頼む承壱であった。
その日の放課後。
承壱は第3アリーナ整備室で、一夏、ラウラ、ダリル、フォルテと共にISの調整を行っていた。他のメンバーは個々の用事の為に不在で、今日集まったのはこの4名だ。
それぞれのISをハンガーにおいて、承壱は自前のノートパソコンに数分前に行った一夏とラウラの模擬戦の映像で確認し始めた。
因みにこのISバトルの勝者は、シールドエネルギーは僅差であったが一夏の勝利であった。
「…ふむ。イチ、動きはいいが…手数がそろそろ寂しくなってきたんじゃないか?」
「ああ、そうなんだよ。新らしい装備が有るといいんだけど…」
「そうしたいけど、お前の白式がじゃじゃ馬だからな…」
「何とかならないか?」
「そうは言っても…開発元と思われる最低企業の倉持技研は全く当てにならないからな…。俺が自作するにしても今回は臨海学校があるから時間はあまり無いし…」
「そうなるとまた面倒だもんな…」
「…仕方ない。今回はチューンアップで何とかするか」
「そうだね…」
一夏と揃って頭を悩ましてしまう承壱だが、臨海学校も近いので今回は簡単なチューンアップで済ませる事にした。時間があれば恐らく承壱は、セシリアのブルー・ティアーズと簪の打鉄弐式と同じ様にぴったりな新装備を制作するのだが、今回は時間が全く無いのだ。
次に注目したのはラウラのシュヴァルツェア・レーゲンの稼働。暴走事件から始めて動かしたので、挙動に問題があるかどうか不安だったのだが、それは全く問題無く良好な状態で稼働いていた。
「ラウラちゃんのレーゲン、良い感じだな。だが…AICは使わなかったのか?」
「一夏の前にAICは無用の長物になると思ったからな…今回は使わなかったんだ」
「ふーん。でも、それ抜きにしてもいい動きだな」
「アニキ、AICってなんだ?」
「それオレも気になった。何だよ?」
「私に教えてほしいっス」
一夏とダリルとフォルテから好奇心の質問が出た為、承壱は意地悪な笑顔になって逆に問を出した。
「…じゃ、イチにクイズだ。PICの正式名称とその効果を説明してみな」
「えーと、正式名称は、パッシブ・イナーシャル・キャンセラーで…その効果は、ISの浮遊、加速、停止の基本動作の要…で合ってるか、アニキ?」
「正解だ。じゃ、AICの説明は、ラウラちゃんお願いする」
「分かった、兄上。AICはシュヴァルツェア・レーゲンに搭載された第3世代型兵器だ。正式名称は、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーで、慣性停止能力を持っている。原理としてPICのエネルギーで空間に作用を与えるのを応用しているんだ」
「それでさっきのクイズか…。ん?それって、鈴の甲龍の衝撃砲と同じ様な物なのか?」
「厳密に違うが…空間圧作用兵器と似た様なエネルギーで制御している。つまり、お前の零落白夜なら攻略出来ると思うが…」
ここまで説明してラウラは思わず苦い表情になってしまう。何か思うところがあって言いにくい様だ。それに気付いた承壱が代わりに続けた
「タイマン勝負じゃほぼ無敵に近い能力だろう。飛んできた弾丸を止めたり、近接戦なら腕や足を止めたりすればいい。だけど、その有効範囲はそこまで広くは無い。ラウラちゃんの翳した手から有効射程距離が約5~6メートルが限界だろう。その上、動きが速い奴やトリッキーな動きをする奴とは相性がよくないんだ。特に白式みたいに加速力と瞬発力があって、イチみたいにフェイントが混ざったブレオンスタイルなら尚更、その相性は悪く、かえってレーゲンの方が不利になっちまうというわけだ…」
「兄上の言う通りだ…。それにAICを使用する際は、私の集中力を必要としている。故に、使用後はともかく、発動直前までは他の武装を使うことが出来ないのだ…」
「だから、さっきの模擬戦で一夏くんに対して使わなかったんっスね…」
ここまでの説明で合点がいったフォルテはそう感想を述べた。
そして、承壱は今回の模擬戦を経て今後の課題を纏めた。
「…よ~し、これからの2人の課題は決まったな。まずイチは白式に合う装備は臨海学校後に作ってテストする事。ラウラちゃんはAICを切り札にした新しい戦術とそれに合った装備を用意する事。2人共、それでいいか?」
「問題無いぜ、アニキ。よろしく頼む!」
「私もだ兄上。なんとかやってみよう」
承壱からのアドバイスを受けた一夏とラウラは了承する。そのやり取りを見ていたダリルとフォルテは、承壱出来る行動力に感心してしまう。
「ISの新装備開発と戦術対策構築って…承壱は何でも出来るんだな…」
「…私達、本当に凄い人に惚れちゃったスね…」
「フォルテ、一緒に支えていこうな?」
「勿論っスよ、ダリル」
世界最強の称号を持っている千冬が惚れている男が改めて凄い男と再認識したダリルとフォルテは、今一度、承壱を支える覚悟と決意を持つのであった。
誰もが平和で楽しく過ごせると思われた臨海学校。
だが、それは予想もしなかった出来事が起こってしまい、承壱達は否応なしに巻き込まれてしまうのであった…。
つづく
現在公開可能な情報
セシリア・オルコット
承壱の妹分となった為、承壱を『お兄様』と呼ぶ。変なブームが起こっています。
凰鈴音
セシリアと同じく承壱の妹分になった為、『にいに』と呼ぶ。前から呼びたかったらしい。
シャルロット・デュノア
上記2名と同じく承壱の妹分になった為、『兄さん』と呼ぶ。どうしてこうなった?
ダリル・ケイシー
千冬から認可されて承壱の恋人の1人になる。何か訳ありの様だが…?
フォルテ・サファイア
ダリルと同じく承壱の恋人の1人になる。こっちは一目惚れという純粋な理由。
感想、意見、よろしくお願いします!