青い春に馴染めない黝の星 作:うへうへ学生
小鳥遊ホシノにとって夏雪ライナとは親友である。
出会いは意味不明、過ごした日々は濃密で、同じ傷を持った時に悲しみに暮れて足を止めたのがホシノであり、憎しみに支配されて狂ったのがライナである。
そしてホシノは喋ってはいけないと感じることを山のように抱えている。ユメのことも、ライナのことも。しかし知らないことも多くある。
最近は先生という寄りかかる先が現れたことで、不眠気味だった生活も落ち着いてきて、そのことはライナも素直に喜んでいたのだが。
「なぁホシノよ」
「なーにー」
「……腕痛い」
たまには昔みたいにのんびりとしたい日もある。そう言われて、休憩中に連れ出された先は砂浜に用意されたシートの上で。しかも横になろうと言われて従ってみれば。
いきなり腕を枕代わりにされるなど……
「お前、オキニに枕はどうした? あれで寝なくていいのか? あっちの方が……」
「んにゃ? 今日はこっちがいいの。この寝心地最悪で正直無い方がマシな腕枕が」
「……ポスター、か」
「まぁ、ね」
大体の予想はついていた。
アビドス砂祭りのポスターを見て、ノスタルジーな気分になったのだろうと。
「そういえばさ」
「どったよ」
「昔シロコちゃん、家に上げてたよね。写真──」
「あれなら寝室に隠した。……見られて困るものじゃないけど、お前が言わないなら俺も言わない。なら、見せない方がいいだろ」
ライナとしては言う言わないはホシノに委ねている。言わないならば言わないし欠片も見せない。それだけだ。
「覚えてる? 昔ユメ先輩と私と君の三人で、こんな風に屋上に転がったこと」
「覚えてるよ。あの時はお前が一番早く寝て、しかも俺の腕を枕にしやがったから起こすに起こせなかった。で、挙げ句の果てに先輩まで俺の腕を枕にした。あの日は両手がイカれるかと思ったぜ」
「何で起こさなかったの」
「二人とも幸せそうに寝てたからだよ。寝言でアホみてーなことまで、揃って言ってさ。重てえし暑いしで中々寝られなかったんだけど」
ライナ枕になってー、なんて雑に容赦無く告げてきて。
ライナくん枕貸してー、なんて雑に容赦無く乗ってきて。
思い出してみるとロクなもんじゃない。熱いし暑いし重いし痛いし。でも楽しかったし、忘れられない思い出。まるで福音のように与えられた時間。
「先輩もこんな気持ちだったのかな」
「きっとそうさ。あの人はこんな風に俺たちを見てたんだろうよ」
「声、思い出せる?」
「鮮明に」
「私も」
忘れるなんてできない。
消えない、消えてくれない、消させもしない。そんな太陽の様に眩しく、夜のように絶対に存在するたった一人。
「……ねぇ、ライナ。いつか先輩の事も、みんなにはっきり言いたいよ。こんなに頑張ってくれた人がいるんだって」
「でも整理がついてないんだろ。大丈夫。先生もいるんだ。ゆっくりその時を待とう」
「……けど、私は、先輩の気持ちを──」
それは弱音なのだろう。迷いと共に未だ飲み込めていない部分が顔を出すならば、友としてやることはただ一つ。
「そんなことはない、気の迷いだ。人間誰しも追い詰められたらあり得ない行動なんて無限にする。先輩はそれをわかってる人だ。だからきっと、結末に悔みこそすれど行動に後悔はしていない。俺はそう信じてる」
死者を語るなどと、なんて思いながら。それでも納得ができないだろうことは簡単に想像がついているので、敢えて余計な事を付け足す。
「仮に、誰か明確に責めることができるとすれば、ホシノとユメ先輩が悲鳴を上げていたことに気付きもしなかった俺くらいだろうよ。まぁ、こじつけレベルだけどな」
「それで暴れ回ったじゃん……」
「だからだよ。先輩は俺たちが自罰を求めて自傷を繰り返すことなんか、絶対望んでない。わかってるだろ。俺に言わせんな」
話はそこで終わってしまう。いや、続けられなかったというべきか。この話を長く続けると、ユメは決して望んでいないであろう自罰の話が延々続く。だから二人ともすぐに話題を変えてしまう。
「……ったく、何がおじさんだ。何がうへーだバカタレ。お前も素を見せろ素を。へばり付いたか? 見せたくないのか?」
「どっちもかなぁ。ライナが今どっちつかずになってるみたいに。擬態剥がれてきてるよ」
「知ってるよ。正直な、お前らの前で上手く猫が被れなくなってきてる。他の連中の前ではまだまだ上手く被れるけどさ」
「そうだ、最近どう? 仲良い子とか増えた?」
「ミレニアムはなんか色々あったらしくてな。シャーレによく来てたからか、色々知り合いが増えた。とはいえそれ以上でも以下でもないけど」
「どうして?」
「だってたまにしか会わないし」
本当にそれだけである。 だから顔と名前は覚えるが、それ以上に知ろうともしない。
とはいえ相手の側はまた別だが。
ライナの異質さに気付き、だが見て見ぬフリをする生徒はそこそこいた。まぁそもそも気付く生徒がかなり少なかったという話もあるが。
案外どうでもよかったのかもしれないし、気にしても仕方ない相手と本能的にしろ合理的にしろ判断したのかもしれない。何せ普通な人なのだ。何か事情があったとしても、わざわざそこに首を突っ込む程の仲でもないし、気になって見ても何も無いなら聞くか聞くまいかとなり、聞いたところで答えないだろうし先生がそれを知らない訳ではないという反応を示せば、別にどうでもよくなるだろう。
あるいは、そんなこと気にできないほど余裕が無いのかもしれないが。
ミレニアム関係者で一悶着あった車椅子の天才──ヒマリもそういう理解できる側だったようで。
『申し訳ありません。先日は無礼な行いをしてしまいました』
『あら。しかしあなたの態度は何か事情があってのことですよね。ある程度は見て、聞き、把握しました。そこまで気になさらなくても──』
『いや単純に面倒な人に絡まれたと思ったからつい無視しただけです。このように賢い方が、まさか自分の能力をひけらかすような肩書きをズラズラと並べるとは思ってもいませんでしたので。……どう、なさったんです?』
……正直、その日の事はあまり思い出したくない。先生が慌てて彼女をフォローしなければ、どうなっていたことやら。
ライナとしては割と本音であったのだが、ヒマリには痛烈な皮肉と思われたらしくて結構なショックを受けていた。
まぁ当然だろう。
知らなくて当然とはいえ、名に恥じぬ振る舞いを見せたのであれば、そのまま会話を切り上げるなり普通に続けるなりで終わりだ。しかし余計な事を付け足す愚かな男であるライナは、容赦無くこう理解できることを言ったのである。
『お前そんな賢いならなんで自分はバカですって自己紹介してんの?』──と。
"ライナ……"
"そういうの、良くないよ"
そういう打たれ弱さを知っている先生がすかさずフォローに入らなければいけないほどの致命傷になってしまっていたのは、それが呆れも何もないプレーンな感想であったからだろう。単純な印象として、しかも初対面の相手に、美少女でも天才でもユーモア溢れる人でもなく、ただのめんどくさいバカと思われていたなど。
その上、ミレニアムですごい人なんて知らなくても僅かながらでも興味の対象にはなるだろう。珍しい相手でもあるし。ところが、まるで目の前を過った野良猫を驚かせてしまったなくらいにしか思ってない視線をぶん投げてたのだ。
明星ヒマリが如何に優秀で、如何にユーモアの溢れる愉快な、透明感溢れる薄幸の天才美少女であるかなど今更語るまでもないが、それらを知らずただやかましいミレニアムの生徒としか思っていなかったし、いざそういう知性溢れる相手だと知っても、ライナにとってそれは興味を向ける対象にならない。どうせ関わりが生まれる事さえないのだからと。
仮にこれがゲヘナ風紀委員会のメンバー辺りなら、面識はなくともある程度は興味を持っただろう。もしくはトリニティ補習授業部辺りでもいい。とにかく何らかの関係が薄らとあるなら、多少なりと興味を持つ。
だがミレニアムという時点で縁の無い相手。だからどうでもよかった。顔を合わせれば会話くらいするが、それだけであるとしか思わなかった。結局ライナは、シャーレ所属となってから接触した大多数の生徒にさほど興味など無く、誰であろうと基本的に同じように扱った。何処にでもいる、たまに職場で会うだけの関係の無い相手として。
つまりヒマリという特殊な存在ですら有象無象として取り扱ったという、彼女からすれば凄まじい屈辱を与えたのだ。自己顕示欲の一つや二つあって当然な年頃の、それも特別な能力を持つ相手をそのように見るなど。
まぁ、有り体に言ってしまえば。
面倒な相手っぽさそうと無視され、一応の謝罪はするか程度の認識。興味という興味さえ向けられず、君ってバカって自己紹介するすごい頭の良い人なんだねふーんと取れるような言葉をぶん投げられて、その上でその辺の石ころのように見られたら、誰だって泣きたくなるだろう。つまりそれは無関心の証明、そこに誰が立っているかをまともに認識する気が無いのだから。
ちなみにこれはヒマリの絶妙な打たれ弱さとライナのノンデリさがほぼ初対面という状況で悪魔合体して起きてしまった悲劇であり、普通ならたまに会うバイト先のちょっと壁のある同僚的な感じの話で済んでいる。
なんなら出会い方も少し違ったらこうもなってない。ヒマリは元来の図太さと共にライナに歩み寄ろうとし、ライナはまた違った反応をしただろう。
理解する気も特別仲良くなろうともする気も無い、ただ機械じみた反応ばかりをするライナの落ち度で生じた悲しい事故である。
これには流石に先生に本気の説教をされた。
"いいかいライナ"
"興味無いのはいいよ。でも人は見ようよ"
"柄の違う野良猫野良犬、あるいは鳩とか烏とか、そういう視線を人間に投げちゃいけないでしょ"
"……苦手なのはわかってるけど、これはあんまりだよ"
──アビドスではこういう事故が起きなかったのは、ライナがアビドスの住民皆に対してキチンと関心を持っているからであることは言うまでも無い。
「……まぁ、一人ちょっとやらかしてな。先生に本気の説教されちった」
「うっわぁ……何言ったの?」
「忌憚の無い感想。もちろん謝罪した」
ホシノは同情し、憐憫した。
こいつの態度の割り切りは尋常では無い。あまりに超然としている。空っぽの謝罪など火に油を注ぐだけに過ぎないだろう。どうでもいいと感じてる相手にする謝罪なんぞ、薄っぺらい物にしかならない。
こいつに絡んだのか、絡まれたのかは知らないが、あまりにも可哀想な人だなと思って──だがその程度にすぎない。当たり前だが、アビドスに関わらないならそこまで気を回す理由も無いのだ。現にホシノだって明確に色々関わった便利屋とヒフミを除けば、他の学園の生徒など、割と関わっているヒナさえも名前だって覚えていない。名乗られてない相手も結構いるが。
……一体誰に似たのか。それとも半端に二人を模しただけなのか。あるいは元よりそんな性格なのか。
「しかしミレニアムねぇ。ライナ機械弄りとか好きで得意だし、行ってみるとか考えなかった?」
「お前たちの側にしか、俺の居場所は存在しない。居場所の無い世界に行っても面白くない。先生の横は、俺の居場所じゃない。お前たちだけなんだ、俺が俺でいられる唯一の場所は──」
閉じ籠った考えだが、それを否定することはできない。元々異質、異端を自覚できる程の知識を備えて完全な状態で現れた存在。更に現在は伝播欲を大きく欠いている。どうしたものかとホシノが少し頭を悩ませていると、電子音が響いた。
「……ああ、すまん。電話だ。……リンさんから? どうしたんだ急に」
『ライナさん、この前確認を頼まれた事ですが』
「ああ、それがどうしたの?」
『他にも確認してもらえませんか。該当データが連邦生徒会管轄下の土地にいくつかありました。今話題になっている群島を調べてみないことにはわかりませんが』
「……出向けと?」
『はい』
「足が無い。悪いがすぐには動けない。早いところ先生を本土に帰せるようにする」
『あなたは今何をしてるんです?』
「休憩中だよ。片方が動いてるならもう片方は休んでるのも筋ってもんだろ。想定外の事態だからサ」
実際、交代交代でやった方が不測の事態に対応しやすい。特にリゾートハンター、このロスト・パラダイス・リゾートを奪い合うような状況に放り込まれてしまった以上は。
だからライナはリンを経由してモモカを頼り、連邦生徒会と直接的にやり取りをしていた。こんな場所が放置されているのはおかしいのに、つい最近に不法占拠でもされたような発着場もある、ロゴの無い場所といえば持ってるのは連邦生徒会ではないのか? という単なる疑問で連絡してただけ。しかし引っかかるところがあり、こうしてリンから直接返すことになってしまったのだが。
『ふむ。とりあえず足を直してから、ですね。また連絡してください』
「わかった。他には」
『……リフレッシュできていますか?』
「先生は立派にリフレッシュしてるぞ」
『あなたはどうなんです』
「まぁ。そりゃあ」
間近で聞こえてくる会話と、それに応える親友の声が自分たちを相手取るのと全く同じことに気づいたホシノは、神妙な表情で割り込む。
「ちょっとちょっとライナライナ」
「なんだなんだホシノホシノ」
「どういう関係?」
「気の合う同僚?」
『同僚……まぁそんなところでしょうね。というか横にいるんですか人』
「いるけどいいだろ。気になって連絡したのは俺だ。取れるタイミングで取らないと礼を欠いている」
本人はそう気付いていないようだが、リンはかなり信頼できる相手として区分されている。それに気付いたホシノは、この状況に居合わせたのが自分であったことに安堵した。ワカモに先生を取られまいとして、手早く銃を抜くほどには彼女は大胆だ。あれは父兄を取られまいとする動きと言えるだろうが、ライナの場合はどうなのかとか想像したくない。最終的に自分の手の中にいる存在だから、など語っているが何処まで信じたものやら。
「シロコちゃんいなくてよかったね。聞かれてたら何をしでかしてたかおじさんわかんないよ」
「なんでよ?」
「知らない女と楽しそうに会話してるライナなんか見たらねぇ。一体どうなることやら」
『あ、やっぱり別に連絡しなくていいですよ。もう電話切りますね』
「リンさん? おいリン! おい! ……き、切りやがった」
リンからしても馬に蹴られる趣味は無い。
自分たちの手でやってしまおうと、モモカの元へ歩を進める。
「モモカ」
「どうしたのさ、リン先輩」
「仕事の時間です」
「え゛」
──こうして。
ヘリが直って戻ってみれば蜻蛉返りして、先生は百鬼夜行のお祭り運営委員会と共に偽情報に踊らされてやってきた対策委員会やら、ゲヘナ温泉開発部などと協力して、裏で手を引いていた元カイザーPMC理事長現オクトパスバンク営業職員を成敗し事態を鎮圧した頃に、リンとモモカも現地に到着してその群島の真の所有者が連邦生徒会であると説明をすることとなったのだった。
あえて、その道中を説明する必要もあるまい。
……まだ世界は、先生がいれば丸く収まるように進むのだから。
しかし一つ、気掛かりなことが起きた。
『私は、知っているぞ。お前の正体を。夏雪ライナ! 玉座の簒奪者にして完全者、それがお前だ!』
『……? あんた、何言ってんだ? アロハシャツでリゾート満喫してたら頭までハッピーになったのか?』
『……は? い、いやお前は黒服が──』
『????』
逃走する前、元理事長が言っていた謎めいた言葉。ライナの正体──玉座の簒奪者にして完全者。
先生はその言葉が出た時、覚悟した。危険な状況になるのではないかと。周りには多くの生徒がいるのに──だが現実には何も起こらなかった。それどころかライナさえも完全に困惑していた。
それが一体何故なのか。アイが現れる様子さえもなかった。つまり問題が無いということだ。ならばこれが、ライナを見ているから問題無いということになる。
"……考えるだけ無駄だろうけど"
"よくわかんないな"
本当に考えるだけ無駄であるから仕方ない。
だから思考を打ち切って、一人所在無さげに外れたところで沈み始めた太陽を眺めるライナを、祝勝会の場にしっかりと呼び出すことにした。
思い出は、多い方がいいだろう。
"ライナ、一緒に食べようよ"
「え、俺もですか。正直場違いだから行く気ないんですけど」
「……あなたも来てください。場違いなのは私もなんですよ」
"あ、リン"
"ライナの説得手伝ってよ"
「行政官殿の命令でも俺は別に」
「せっかくの宴会なんだから命令とか硬いこと言うのどうかと思うよライナさん」
「モモカさんは気楽でいいな……」
「あなたもシャーレの人なんでしょう? ほら来てください!」
「えーっと誰だっけ。ツインテさん、俺は……」
"シズコだよライナ"
"自己紹介してたよね、覚えてなかったの? "
「いや、単純に急にたくさんの人と会ったもんだから、まだ顔と名前が一致し切ってなくて。すみません」
設営は手伝ったもののそれ以降は何を食べる訳でも飲む訳でもなく、ただ外れたところで一人黄昏ていて、宴会を楽しもうとすらしていないどころか、参加する気配が無いともなればシズコも来るに決まっているだろう。
気合を入れてみんなで楽しめるようにとやっているのに、そもそも参加検討もされないともなれば流石に一目見に来いとも言いたくなるし、それに……その人にも楽しんで欲しいと思っている人たちがいるのに、それを無碍にしている様子など見せられたら、動き出さない訳がない。
「アビドスの人たちも呼んでますよ!」
「ライナー、おいでよ〜」
「ライナさんも来てください⭐︎」
「ん、ライナも一緒に楽しむべき」
「せんぱ──あ、あんただって仲間なんだからほら!」
「いつまでも逃げ回るのはやめませんか。ね?」
なんとも言えない誤魔化し方に苦笑しながらも、だからと言ってそもそも根本的に部外者だし、先生と生徒という縁で繋がっている輪の中に、自分という生徒かどうかさえも定かではない相手が入るのは如何なものかと気遣い、身を引こうとするが──
「いや……姦しい中に入って嫐られるのもごめんだから。シズコさん、でしたっけ。お気遣いありがとうございます。けど俺は──」
「──モモカ、掴みなさい」
「はーい」
「え? あ、ちょ」
"行こうかライナ"
"君も立派に参加者なんだから"
「待ってる人たちを待ち惚けさせるのは失礼ですよ」
事情を知っていようが知っていまいが。
輪の中に入って良いとされている者が、自分の中にしか存在しない考えで逃げようとするならば捕まえるだろう。
楽しむことは、誰にだって平等に与えられた権利であり義務だ。
──夏雪ライナは異物かどうか。
そんなもの、大多数にはどうだっていい。結局考え過ぎという奴なのかもしれない。あるいは──異物として認識しているのはライナ自身でしかなく、他の者たちにとっては、ライナは既にキヴォトスに存在する、関わりは薄いが確かに繋がりのある存在となっているのかもしれない。
「……わかった。行く、行くから。離してくれよ頼むって!」
しかし。
伝播欲の欠如とか色々あるようだが。
根本的にライナという人物は、良くも悪くも真面目過ぎて堅物であり、だからこそ人付き合いが苦手なのかもしれないと、先生は感じた。