青い春に馴染めない黝の星 作:うへうへ学生
運命
「ホシノちゃん! これ見て!」
「セクター64-62……27-39-42の30-54-20? これ、砂漠閉鎖地区の座標ですよね。どうしたんですか?」
「ふっふっふっ。なんでもここにお宝があるんだって!」
「ガセネタですって。流石に無いですよ。だって以前のとは違って明確な証拠は──待ってください、それ何処で見つけたんですか?」
「もちろん、生徒会室にあったあの書類の山からだよ。ほら、整理されてない奴あったでしょ」
「じゃ、じゃあ──本物ってことじゃないですか!」
「そうだよ! これなら絶対手ぶらで帰るなんてことがないんだよ!」
「今すぐ準備してきます!」
期待を背負って二人でその場所へ行ってみればただのガラクタ置き場で。
「結局手ぶらかぁ……とほほ……」
「先輩、そんな気にしないでくださいよ。ある事にはあったんですから。もっと早く見つけられていても、これじゃあ売れそうな物は最初から無さそうでしたし」
「ありがとね、ホシノちゃん。慰めてくれて」
「気にしないで下さい。それより、少し砂嵐が強くなってきましたね。やり過ごしましょう」
やり過ごした後の砂漠の陽炎、その向こうから人影が映る。
まるでマントをたな引かせて、剣を引き摺り歩くような影が。
「──先輩」
アビドス砂漠を単身で歩いてくるのは正気じゃない。自分たちのようにある種の執念で動いている馬鹿か、もしくは何かしらの目的を持って行動するような奴か。
自然、ホシノは警戒していた。まあ当然の摂理である。
「えっ、そんな気にするの?」
「普通あり得ないでしょう?」
「だからってそんな、悪い人って決め付けなくても」
「人じゃないかもしれませんね。暴走したメカとか」
「この砂漠で機械がまともに動くかなぁ?」
「それは……そうですね」
が、しかし。
近づく人影はフラフラと幽霊のように揺らめいている。そしていざ見えたものは──
「……本当に、人でしたね」
黒いロングコートを始めとした黒づくめの衣服。
たな引く黒の長髪、浮かぶ歪な黝の光輪。
光の無い青い右目、銀の左目。
長身でありながら男とも女ともつかない中性的な顔立ちと体躯。
右手にマガジン装備型のボルトアクションライフルを持ちながら歩き続けるその姿。
明らかに、異常だった。
「君、大丈夫!?」
「ユメ先輩、ちょっと!」
持ち前の善性に突き動かされ、その人物に近づくユメ、それを追いかけるホシノ。だが歩き続ける人物は、まるで二人など目に入っていないとばかりに、前へ進み続ける。
「ね、ねぇ君!」
ユメが肩を掴んで視線を合わせ──
「……オシリス」
「へ?」
「何故……」
そのまま力が抜けるように倒れ込み、慌てて彼女はそれを抱き止めた。
「ホシノちゃん、どうしよう……」
「とりあえず、先輩はその人助けたいんですよね?」
「うん!」
「じゃ、まず校舎にでも連れて帰りましょう。……色々気になることもありますし」
「だよね。──なんでこんなとこを歩いていたの……? そんな格好で」
「あ、目が覚めた?」
「ここ、は──?」
「アビドス高校。ユメ先輩に感謝してね、砂漠を歩いてた君を拾って来たのは先輩だから」
「アビ、ドス……ああ、アビドス」
むくりと身体を起こした少年は、何処かわかっている様子を見せながらぼんやりと周囲を見渡している。それは初めて見た時とは──そこでユメは大きな違いに気付いた。
「……あれ? ねぇ君、ヘイロー無くない?」
浮かんでいない。
砂漠で見つけた時に浮かんでいたヘイローが、綺麗さっぱり消えている。よくよく見れば右目も青ではなく銀色になっていて、全くの別人のようだ。虚だった目にも光が戻っていて──
「無い……俺には、無い。ヘイローなんて」
「え? ていうか、俺……?」
「変か。変だな、そりゃそうだ。だって男なんぞここには滅多にいないんだ。──じゃあ俺はなんでいるんだ?」
「えっ、ええぇぇぇ!? 男の子なの!? 君、そんな綺麗な顔で、髪が長くて、男の子なの!?」
「……うるせぇな。そんなナリでも俺は男だ、文句あっか。このデカ女」
見た目は綺麗だが声が低い、普通に男性の声。口が悪いし、他者と関わることをあまり好んでいないような、そんな視線。思わずホシノが苦言を申すのも必然だろう。
「命の恩人に対して言うことがそれ?」
「誰が助けろって言ったよチビ女」
「この野郎……!」
見捨ててくればよかったか? などと一瞬でも過ったが、大慌てなユメを見て冷静さを取り戻す。
「男の子だよホシノちゃん!? どうしよう! 本当にどうしよう!? 連邦生徒会へ連絡する!?」
「あいつらなんか何の役にも立ちませんよ。考えてみてください、今までだってアビドスに対して何かしましたか」
「うっ、でも事情があったりするかもしれないし……」
「──それに先輩、この人……あからさまにおかしいでしょう」
「──そう、だね」
消えたヘイローに、目の色も変わった。
これは異常だ。更に言えば何故そんな人物がアビドス砂漠を彷徨っていたのか。
外の存在なのか? 内の存在なのか? それさえもはっきりしないともなれば、流石にもう少し情報を集めざるを得ないというものだろう。
そんな相手を少なからず不信感のある相手に預けられる程ホシノは子供ではないし、ユメもまた訳のわからないことを放っておけるほど子供ではなかった。
「……内緒話は終わったか」
「うっ」
「見え見えなんだよ。せめてアイコンタクトにでもしろ」
「よしっ、じゃあ一旦自己紹介しよう! 私は梔子ユメ、アビドス高校の三年生で生徒会の会長なんだ」
「……小鳥遊ホシノ、一年」
二人の名前を聞いた少年は、普通に名乗ろうとして──止まる。
それは当たり前のことを知っているのに、何故か欠落している部分があるから。そして何よりもそこが欠落しているなら、もっと欠落していなければならないところがあるから。
「名前……俺の、名前……──無い。名前が、無い。アビドスもキヴォトスも、連邦生徒会も全部知ってるのに。なんで俺の、俺の事だけ何も無い……? 俺は何処でそれを……!?」
「記憶喪失かな?」
「違う。だとすれば多少なりと知識も歯抜けになっていなければ辻褄が合わない。何故知識だけが俺にはある。何処でそれを知った? 砂漠を歩いているだけの奴がそれを知る機会なんてないのに」
「アビドスに何故砂漠があるか、知ってますか」
「原因不明。ある時を境に砂漠化が進行」
「では、ここは」
「アビドス高校別館。本館は砂漠地帯に埋もれている」
──あからさまに異常な相手。
「──お前は、誰だ」
「……知らねえよ。自分でも訳がわからねぇ。なんで俺の事に関する記憶だけがゴッソリ抜け落ちてやがる……普通本当に何も知らないか、名前だけは覚えてるとかそういうもんだろう。だってのに何故か知識を知ってて? 人格に不安定さも無くて? そして何処でそれを知ったのかの答えなんか何処にも無い……ふざけんなっ」
少年が吐き捨てるように呟くが、その声色は恐怖に彩られていた。理解できてしまう、自分が意味不明な存在である根拠が。そして突きつけられてしまう、自分が何処にも属していないという現実が。
演技ではない、本心からの恐怖。言葉にして自覚していけばいくほど、お前は全てに属せないのだと理解する。未知ならざる筈なのに未知となる恐怖、それを演技で済ませられるものか。
「ねぇ君。よかったら、私たちと一緒に過ごしてみない?」
「はぁ? どういうことだよ」
「だから、学生生活しようってこと! ねっ、ホシノちゃん。私、いいアイデアを思いついたんだ!」
「まさか、こいつをうちの生徒にしようってんじゃないでしょうね先輩」
「正解!」
「だと思いました」
まぁ、だがそれくらいしか手が無いというのは二人ともよく理解している。それに──奇妙な話だが、どうしてか放っておけない気がしてならない。なんだろうか、生き別れた兄弟家族と会ったような、珍妙な感覚。
「あんた、バカか。俺ぁ男だぞ」
「だから何? 男の子がここにいちゃダメって誰か決めた? 別にいたっていいじゃん」
「学生やるなら制服がねぇだろ」
「確か教員用のスーツとか余ってたし、大きめのサイズの制服もあるから多分それっぽくなると思うよ」
「……ほっといてくれ」
「行く当ても無いのにどうするの。次の日に野垂れ死んだ死体見つけたら責任取れる?」
「んだ、チビ。てめぇ俺の事警戒してたんじゃねえのか」
「するまでもないってわかったからもうしない。あとチビチビうるさい」
自分が異常であることに恐怖できる人物を、何故警戒する必要があるのか。自分以外の事を知っているのに自分だけわからない意味不明な状態であることを自覚した途端これだ。
ならばそれは──警戒するに値せず、そしてユメの行動も間違っていないことの証明だろう。
「……負けだ負けだ。わかったよ、生徒になるかは知らねえけどいるよ、ここに」
少年は渋々とため息を吐き、それを飲んだ。
その日からアビドスに、口が悪い少年が住むことになった。
それが全ての始まりだった。やがて時が流れ、離別し、狂い──再び居場所を得て。
気付けば世界が広がり、友達も増えて。みんなでわいのわいのと夏を楽しんで、わいのわいのと晄輪大祭に向けて練習したりして、本番を迎えたりして。
気付けばあの日の埋め合わせだのどうのこうのとか、あんまり気にしてられないくらいには忙しくなって。
それでもどうにかして外堀を埋めてみようと会議をしたりして。
そんな風に、毎日が続けばいいと思っていたのに。
……自分の中に恋心があると自覚したのはいつだったろうか。先生と接する中で、何かが違うとぼんやり知った時だったろうか。
──ライナは隣にいて欲しいと。
先生には前にいて欲しいと──
そんな違いを感じ取って、しかしどうしたらいいのかと悩んでいた。様々な困難を奇跡と共に乗り越えて、きっとそんな未来がずっと続くと思っていたあの頃。
普段使われていないアビドス高校の一室から、二人の会話が聞こえてきた、その時──
『シロコちゃんのこと、このままにしておくの?』
『先生とあいつが仲良くしているところを見て、安心してるよ。あの分なら、シロコのことを支えてくれるはずだ』
『ねぇ、それって』
『俺の居場所はここしかない。お前と──』
シロコの心は、粉々に砕け散った。
なんだ、それは。自分は初めから眼中になくて? 彼にとってはホシノが全てだったと? 自分が無自覚だったのは察せられてて、その上で隣にいるのはずっとホシノだと。
……会話の流れはわからない。ただ重要なのは、シロコは初めから眼中になく、ライナの居場所はホシノのいるところであるのだということが、他ならぬ本人の口から放たれたことである。自分では絶対に勝てない時間を持つ相手だけが想いを向ける相手にとっての居場所だと告げる、年頃の少女にとって心を引き裂くには十分な一言であろう。
会話を全て聞くことなく無言のまま立ち去り、自覚した途端に消えた初恋に苦しみながら、その日は泣いた。
──実際には、ライナの方が先に恋心を自覚していた。
一体いつで、何がきっかけだったかはわからないが、とにかくライナはシロコに恋していた。それとなくアプローチをかけてはみたものの伝わることもなく、後から来た大人である先生に惹かれている……ように見えたシロコの姿を見て、ライナは潔く諦めがついたのだ。安心して任せられる相手がいるのだし、自分の問題も多い。ならば蓋をして祈るべきだろうと。
ではこの会話は何かと言えば、それを知ったホシノがそれでいいのかと尋ねて、対してライナはそれでいいのだし、元よりキヴォトスにもアビドスにも属しておらず、初めからユメとホシノがいるところだけが自分の居場所だったのだからと返しただけの話だ。
続く言葉は、『お前とユメ先輩がいた時だけが、俺の居場所だった』と。たったそれだけだった。
心の擦れ違うシロコとライナ。二人は自分の気持ちに蓋をして──これが何気ない日常の中の、ほんの少しの青春を見つける物語だとすれば、そう遠くない内に逃げ出した想いと向き合い、二人は結ばれただろう。
だが全てが滅び行くことを運命とする以上、そんな甘酸っぱい未来などなく、二人を向き合わせようと行動に移す前に、淡々と現実に悲劇が起こった。
先生は意識不明、セリカは行方不明、セトの降臨により多くの犠牲を払い、ホシノのヘイローは砕け、ノノミは「そうなる」ことを、アヤネは死を選んだ。
全ての歯車が狂った果ての結果、そこに辿り着く前に──ライナは死んでいた。
具体的にはある存在の降臨と共に、何かに突き動かされるように消えて……そしてある時、廃墟で倒れているのをシロコは発見した。戦闘の痕跡と共に発見された無傷の亡骸は、どういうわけ物理的にも生物的にもあり得ない死で……その死体も、安置所から消えてしまった。
伽藍堂になったアビドス高校。
多くの犠牲を払って得た結末がこんなものなのかと、仲間たちの遺品を整理していく中で、シロコはライナの日記を発見した。
そこには隠されていた本音が記されていて──故にシロコは知ってしまった。自分たちの心は擦れ違ってしまったのだと。何か一つでも行動を起こせたら、あの日全てを聞いていたら、あの時扉を開けられたら……愛の後悔だけが心の中に残る。
生きる気力も無く、借金も減らない。仲間も消えて、頼れる相手も眠ったまま。恋した相手とは永遠に擦れ違い、永遠に本心を伝えることができない。
絶望的な現実に押し潰されたシロコは、ある時フラフラと砂漠へと足を運んで……
そこで、出会った。
宇宙の如き青い双眼を持ち、ヘイローを浮かべたライナならざるライナに。
禁忌と忘却の中に潜む者に。
燎原の主──終末の黎明に。
それが絶望の、最後の引き金になった。
「──どいつも、こいつも。滅びを望んで愚行を犯す」
安い仕事だ。
訳の分からないガキを拉致するだけ。
しかも先生とは引き剥がしている以上、簡単に人質になるし、こっちを信用し切っている。
「あるいは……生きることの尊さを理解しようともしない」
その上、玉座の簒奪者なる存在だからカイザーコーポレーションがキヴォトスを支配するのに使える。実に美味い話だ。
「またか。またなのか。オレを退けたあの勇気ある者の行いを無碍にするのか」
その者が、目覚めさえしなければ。
「無知蒙昧な者よ。そんなに死にたいなら首でも括っているがいい」
玉座の簒奪者と呼んだからだろうか。
「──それとも、殺してほしいなら雁首揃えてアーマーンの前に立つが良い。その腐った心臓、オシリスの審判にかけるまでも無い」
一瞬何か鈍い音が響いたと思ったら銃声が響いた。一回の銃声に対して穿たれた弾丸は無数。たった一回の攻撃で全員が鎮圧されてしまった。
心底から絶望したように少年は悲しげに笑う。
「これが、これがキサマが心血を注ぎ、心身を捧げて与えられる結末だというのか。何度も何度もオレを起こして、このように消えぬ憤怒と憎悪を抱かされるのか。何の為に、ライナという存在を根付かせようとアビドスの者たちが苦心していたのか……オシリスよ、見ているか。こんなモノが、世界の選ぶ結末らしい。キサマの尽力さえも世界に裏切られるとは。オレと変わらんらしいな……超人よ」
誰に話しかけているのかさえ定かではない。ただブツブツと独り言を続けながら少年は拘束・監禁されていた場を脱する。
「……これが世界の答えならば、もはや一つか。許せ友よ。だがそれしか答えが無いならば……む、これは虹の眼……ということは終わりが来たか。もはや何も言うまい。此度でこの聖地も……」
空が一瞬赤くなる。
しかし少年は動じもしない。静かに世界を俯瞰し、全てから外れた力で状況を把握する。現れた存在の不自然さを感じて、事態を把握した。
「この感覚は……なるほど。よくもまあアレにより反転してなお己を保てる。やはり因果の子、オレとは違う。どのような道を辿ったにせよ、在るが儘の己で生き抜いて来たことは賞賛されなければならんなアヌビス──いや、砂狼シロコよ。しかしそうなると、誰が嚮導者を……?」
しかしだとすれば、として視線を外した時。
彼の前に一つの骸が現れる。
死にかけた身体を、砕け散りかけた鎧に押し込めて、魂だけで動き続ける者が。
「──バカな、キサマは……!?」
少年は初めて驚愕する。
その正体を知ったが故に。だからこそ──
「ならばオレではなく……俺に、任せるとしよう」
ゲマトリアを壊滅させ、アトラ・ハシースの箱舟に帰還したシロコは、ナラム・シンの玉座に佇むプレナパテスを訪れる。
もはや物言わぬ機械の如き存在だが、それでも先生であり、それ故にシロコにとって僅かながらの安らぎでもあった。
が。
「ぁ──」
その奥、小さな段差に座る人影を見て、シロコの心は揺らいだ。
「、ライ……ナ……?」
渡り歩いた数多の世界の中に、ライナは存在しなかった。しかしこの場にライナがいるということはつまり、ここはライナがいる世界ということであり──
「ライナ、ライナ……っ」
駆け寄って抱きしめる。
全て繋がってしまえばいいのだと抱き寄せる。眠りについているライナが何故そこに座っているのかなど思考が回らない。ただようやく会えた、すれ違った人を確かに感じたかった。例えそれが、自分が求めたライナでないとしても。
プレナパテスはただ見つめる。
その光景をただ見つめる。泣きじゃくるシロコが縋るようにライナを抱き寄せるその姿を。
(──待って?)
ひとしきり落ち着いたシロコが、ライナの頬を愛おしげに撫でた時、ようやく気が付いた。何故ライナがこの玉座に座っているのか。自分はライナを探すなどせず、ゲマトリアを襲撃した。プレナパテスはこちらのシロコをアトラハシースの箱舟に連れ去り、反転したシロコが活動できるようにした。
であれば、このナラム・シンの玉座にいて、この椅子に座るライナは──
「先生が、連れて? でも何のために……」
ライナの中に何かがいる。
それはライナの欠けている部分そのものであり、本質的な部分であると知っている。だが何を意味して何の神秘かまでは知らない。ただプレナパテスの行動には一切の無駄が無い。相手が針の穴に糸を通すような奇跡でも起こさなければどうしようもない手を無数に打つ。
だとすれば。
ライナの存在は、つまり。
「……ああ、そうなんだ。──ライナもそうだったんだね」
ライナもまた滅ぼすもの。自分と同じで、破壊するもの。例え兵器のように扱われるとしても、それでも死神となってしまった自分の隣に唯一存在できる相手。
ずっとずっと一緒にいよう。
もう離さない、離れない。
全てを終わらせて、全てが終わるまで。
昔はブツブツと文句を言うような口調だったけれど、アビドスで一番背中を押してくれた人。いつであれこうやって向き合うことになるんだ、今度は自分の膝元へ置こう。
もう心は擦れ違うことも無い。
「ねえ"ライナ"、お願いだから私を受け入れて──」
渇き、崩れ、傷だらけの心が求める。
愛しい半身を。苦痛の先の運命を。
悲嘆し、哀嘆し、破綻した恋の先を。