名探偵プリキュア! ~白銀の太陽は昇る~   作:nest1965

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友人にたんプリ勧めたら見事沼らせることに成功しました。

やったねみんな! 大友が増えたよ!

そんな訳で今回からアニメ五話になります。あんまり話を進められてないけど許してクレメンス。

それではどうぞ。


第8話

 

 

 

 

 

 朝の眩い光が窓から差し込み、温かい陽気に包まる。

 

 新しい一日が始まり、ここ数日で慣れて来た日常が再び繰り返される。

 

 みんな揃ってから朝食をありつけ、役割分担をしながら掃除をして、依頼人を待ちつつ探偵の知識を深める。それがキュアット探偵事務所の探偵、明智あんなと小林みくるの何気なくも穏やかな日常。

 

 しかし、今日からはその日常が少し変わろうとしていた。

 

「みくる、忘れ物は無いな?」

 

「はい! 昨日の内に準備したので大丈夫です!」

 

「なら良し」

 

 客室兼仕事場である拠点部屋にて、右手を前に出して元気良く答えるみくる。今日の彼女は普段着ではなくマゼンタを基調にしたワンピースと赤いネクタイを締めている。これはまことみらい学園指定の学校制服。

 

 そう、みくるは今日から新学期。始業式に出席し、新たな学校生活をスタートするために制服を着こなし、これから通学しようとしていた。

 

「あんなは……本当に平気?」

 

「大丈夫! ジェット先輩もソラリス先輩もいるし!」

 

 あんなはみくると同じ14歳ではあるが、未来からやってきたためこの時代の学校に通うことが出来ない。

 

 そのため学校が始まると一緒に居られる時間が短くなる。大丈夫かとみくるは心配していたが、事務所にはジェットもソラリスも常駐しているため、これと言って問題はないとあんなは答える。

 

「ジェット先輩は……研究室に籠ってるけど……」

 

『DOOR!?』

 

 何か研究室から物が崩れ落ちる音と共に汚ねぇ親父ィ(222歳)の声が聞こえた気がするが無視する。

 

 ジェットは朝食を食べ終えると直ぐに研究室に向かい、発明に取り掛かってしまった。

 

 彼は普段から発明や研究をしているため研究室に籠りがちであるが、ここ最近はかなり没頭しているのか、食事を終えると研究室に直行してしまう。

 

 彼の発明品によって自分達は助けられているため、邪魔するわけにもいかない。取り敢えず今はジェットの発明がひと段落するまでそっとしておくしかなかった。

 

 そうなると後はソラリスなのだが……。

 

「ソラリス先輩は……確かいつもこの部屋に居ますよね?」

 

「あぁ、大体の時間はこの部屋に居る」

 

 三人が今居る部屋は客室と同時にジェットの簡易的な作業台やソラリスの机など仕事場も兼ねている。そのため業務中のソラリスは依頼がなければ基本的にこの部屋にある自分の机に座り、仕事をしている。

 

「それじゃ、やっぱり大丈夫?」

 

「大丈夫だよ! それにポチタンもいるし!」

 

「ポチ~!」

 

 あんなとソラリスは振り向き、みくるもテラスに囲われたテーブルの上に視線を向ける。

 

 そこではポチタンが楽しそうにペンや消しゴム、ノートなどを自分の身体の中へと収納させて遊んでいた。

 

「昨日からああだけど……」

 

「色々入れるのが楽しいみたい。マコトジュエルで成長してるってことだよ!」

 

「前から思っていたのだが……ジェットと言いポチタンと言い、妖精とは本当に不思議だな……」

 

 あんなとみくるはソラリスの発言に同調するようにうんうんと首を縦に振る。

 

 妖精から人間へと変身し、一般人から見たら眉唾物であるプリキットを開発するジェット。マコトジュエルを吸収し、成長したことで物を収納することが出来るようになったポチタン。良く考えればどう言った原理なのか全く分からず不思議なものである。

 

「あっ、みくる時間がないよ! 急がないと学校遅刻しちゃうよ!」

 

「えっ……本当だ!?」

 

 時計の時間を見て慌てるみくる。流石に新学期初日から遅刻なんてしたらとんだ笑い者になってしまう。

 

「今日は始業式だけだから午後には帰ってこれるけど、何かあったらボイスメモで連絡して!」

 

「分かった!」

 

 みくるは部屋の扉を開け、振り返って手を振る。

 

「いってきまーす!」

 

「いってらっしゃーい!」

 

「ポチー!」

 

「車には気を付けて行きなさい」

 

 あんな、ポチタン、ソラリスも送り出すように手を振り、みくるは笑顔を絶やすことなく扉を閉め、部屋から出て行った。

 

 パタンと扉が閉まり、みくるを見届けたあんなとポチタンは顔を見合わせ、何となく微笑む。

 

「それじゃ、掃除を始めようか」

 

「はい! みくるも分まで頑張っちゃいますよ!」

 

「ポチポチ~!」

 

 例えみくるが学校に通い始めたとしても日常のルーティーンは変わらない。今日も困って助けを求めに来るかもしれない依頼人を気持ち良く迎えるため事務所を綺麗に掃除する。

 

 ソラリスと共に掃除用具を取りに行こうとした時、あんなはふと立ち止まり、部屋を見渡す。

 

「……静かだね」

 

 小さく呟いたのに自分の声がハッキリと耳に残る。

 

 静か。あまりにも静か。

 

 普段だって勉強している時や依頼人を待っている時は静かだったはずだ。だけど、自分の声が部屋を反響する程では無かった。

 

 事務所にはソラリスが居る。ポチタンが居る。ジェットが居る。居ないのはみくるだけ。

 

 いつも側にいるみくるだけが、今日からは居なくなる。

 

「……」

 

 ただそれだけなのに。

 

 いつもの静けさがより際立っている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――マコトジュエルを……何故取りに行かぬのだ?」

 

 重く、冷たい空気が劇場を支配する。苛立ちと怒気を含んだ声が響き渡り、仮面の奥底の瞳が鋭く輝いた。

 

 ウソノワールは数日振りに本拠地に顔を出した。そんな彼が最初に取った行動は……ニジーへの叱責だった。

 

 彼は本拠地を空ける際、事前に未來自由(ミラージュ)の書に予言されたマコトジュエルの奪取をニジーに命じていた。

 

 だと言うのに今だマコトジュエルを奪っていない。

 

 今まで何をしていたのだ。油を売っていたのかと、ニジーに苛立ちをぶつけていた。

 

「はい! 未來自由(ミラージュ)の書に出たマコトジュエル。手に入れるため念入りに調べ、策を練っております!」

 

 しかし、ニジーはそんなウソノワールから放たれる圧を正面から受けて尚、自信を崩さず強気な発言をした。

 

 そんなニジーにそれまで興味を示さなかったるるかが視線を向け、意外そうに目を少し見開いた。

 

 これまでの幹部達の行動と言えば、変装して相手を騙すか強奪するかのどちらか。つまるところ大した策は無く、更にプリキュアに正体がバレればハンニンダーを召喚する、と言った強引な手段を取ってきた。

 

 そんな中でニジーが数日もの時間を掛けて確実にマコトジュエルを手に入れるため動いている。

 

 彼の本気度合いが窺える。ただ、そうなるのも無理はない。

 

 ニジーは新たに生まれた名探偵プリキュアの手によってマコトジュエルの奪取を二度も失敗している。更にはアゲセーヌやゴウエモンの失敗。

 

 計画が確実にズレ始めている。怒りが幾度と積み重なり、ウソノワールの我慢も限界に近付いていた。

 

「……良かろう。そこまで言うならばニジーよ。貴様に新たな力を授けよう」

 

 ウソノワールはパチンッと指を鳴らす。するとニジーの眼前に紅黒色の球体が現れ、その中から薔薇が出現した。

 

「ウソノワール様、これは……?」

 

 ウソノワールから与えられた力を、ニジーは掬い上げるように両手で受け取る。それはハンニンダーを召喚する時に使う薔薇と酷似している。ただ唯一違う点は色。ニジーが使用するモノより深く、深淵を覗かせるように黒みがかっている。

 

 それはどこか恐怖心を煽る様な……暴力や死、戦争と言った、この世の負を混ぜ合わせたような、不気味な薔薇だった。

 

「それをハンニンダーに使え」

 

「ハンニンダーに、ですか? マコトジュエルにではなく……?」

 

「そうだ。さすればより強力なハンニンダーが生誕するだろう。そのハンニンダーは―――」

 

 ウソノワールは新たに創造した力の使い方、その性格と特性を教えていく。ニジーはウソノワールから零れ落ちる言葉を一言一句、聞き逃すまいと静かに耳を傾け、頭の中に叩き込んだ。

 

「―――以上だ。使い所を間違えるな」

 

「ハッ! ウソノワール様から授かったこの力で、必ずやマコトジュエルを華麗に奪って見せましょう!」

 

 ニジーはマコトジュエルを奪うための策をまだ練り切れていない。しかし、ウソノワールから新たに与えられた力があれば、マコトジュエルを奪うことが出来る。

 

 しかし、だからと言って油断するつもりも驕るつもりもない。より確実性を高めるために、再度策を講じるつもりでいた。

 

「ニジーよ、私はここまで手を貸した。それでも手に入れなければ……次はない

 

 下される最終通告。それを意味するのはニジーのみならずこの場の誰もが理解している。

 

 失敗すれば二度と舞台に上がることは許されず、日の光も浴びることはない、奈落へと落とされる。

 

 ニジーに後がない。しかし、その表情に怯えや恐怖心は一切なく、必ずマコトジュエルを奪って見せると言う覚悟を現すように、ウソノワールに視線を逸らすことなく―――。

 

「―――ライライサー!」

 

 いつもの軽さやハイテンションは鳴りを潜め、低く、されど力強く答えた。

 

「……」

 

 そんなニジーが決意を示す一方で、るるかは新たに生み出された力の存在に強く危機感を覚えていた。

 

(……明らかに彼を意識して造ってる)

 

 彼とは当然ソラリスのこと。

 

 ハンニンダーを一撃で沈めて見せた高い戦闘能力。あらゆる動作を繋げるように身体を動かし、美しいとさえ思える程無駄のない戦闘技術。

 

 ウソノワールもソラリスの闘いをモニター越しに見ていたため、彼の強さを理解し、計画を大幅に狂わせる存在として危険視している。

 

 だからこそ、マコトジュエルを手に入れるためと言うより彼に対抗するために創り上げた力なのだと推測した。

 

(……大丈夫、だよね?)

 

 るるかはスカートの右ポケットから”当たり”と書かれたアイススティックを大事そうに取り出し、静かに見つめる。

 

 これはソラリスとの繋がりであり、大切な思い出。

 

 右手にはまだ、あの時の感触が残っている。

 

 骨ばってゴツゴツしていて男らしい手。けど、それに反して割れ物を触れるように繊細で、右手を柔らかく包み込んでくれた。

 

 温かい。素朴で落ち着きのある、どこまでも純粋な人。

 

 だからこそ不安だった。ソラリスは強い。ウソノワールに匹敵する程に。彼ならば新たな力にも対抗出来るだろう。

 

 だが、それ以上に優しい。もしウソノワールの新しい力が二人のプリキュアに向けられた時、彼なら真っ先に助けに入るだろう。

 

 その時、果たして無傷でいられるだろうか。押し寄せる悪意に飲み込まれてしまうのではないだろうか。

 

(お願い……どうか……)

 

 頭では敵であるのは分かっている。それでも……ソラリスの人柄に触れ、温もりと優しさを受け取ったるるかは一人、願う。

 

―――無事でいて。

 

 まるで祈るように胸の前で”当たり”のアイススティックを静かに両手で握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぁ~」

 

「ポチ~……」

 

 事務所の掃除を終えてから数時間が経ち、太陽も真上に差し掛かって来た時間。テラスの椅子に座り、窓から差し込む陽光を浴びながらあんなとポチタンは小さく欠伸をした。

 

 相変わらず部屋は静かだ。時計の秒針が刻み、自分達の息遣いだけが静寂の中で木霊する。

 

 午前の業務はもうすぐ終わる。今日も依頼人は来なかった。いつものように穏やかで静かな時間を過ごした。

 

(みくる、大丈夫かなぁ……)

 

 テーブルの上に置いてある地球儀を指先で回す。中学二年生となるとクラス替えがある。そうなるとそれまでの友人関係や環境がガラリと変わるため、ちゃんと馴染めているか不安だった。

 

「ポチぃ~……ポチ?」

 

 みくるへ想いを馳せながら退屈そうに何度も地球儀を回していると、欠伸をしていたポチタンが急に浮遊し、応接用のテーブルへと向かっていく。

 

「ポチタン……?」 

 

 あんなは移動するポチタンに目を向け続けると、その先で不可思議な物を捉え、目を大きく見開いた。

 

 応接用テーブルの上に、黄色に輝く球体が浮かんでいる。 

 

「ポチ?」

 

 ポチタンはこてんと首を傾けた後、興味本位にその浮かぶ球体に触れようとした。しかし、その瞬間球体は意志を持っているかのようにポチタンから遠ざかる。

 

「ポチ!? ポチポチ~!」

 

 何度も触れようとすればその度に球体はポチタンから離れていき、いつの間にか鬼ごっこが空中で繰り広げられる。

 

 楽しそうに追いかけ回すポチタンと縦横無尽に動く球体を唖然と見ていたあんなは、その存在に心当たりがありソラリスへと顔を向ける。

 

 自分の机に座るソラリスは右肘を付け、人差し指を球体に向けていた。そして指を左右、上下へと動かすたびに、球体は呼応するように動いていた。

 

「ポチポチ~!」

 

「……むっ、捕まってしまった」

 

 ソラリスは指を動かし、あんなの前まで球体を移動させるとポチタンは全身を使って飛び掛かり、それを捕まえた。

 

 どうやらこの球体はソラリスが操っていたものであり、それを使って暇を持て余したポチタンの遊び相手をしてくれていたようだった。

 

「ソラリス先輩、これって……前に話してた”気”ですか!?」

 

 その問いにソラリスは肯定するように静かに首を縦に振る。

 

 あんなは思わず立ち上がり、ポチタンが捕まえた黄色の球体をキラキラと瞳を輝かせ、物珍しく見つめる。

 

 話には聞いていたが、こんな奇天烈なものだとは思いもしなかった。

 

 それは漫画の原稿をゴウエモンから取り返し、純一に返すため事務所へ帰路についていた際のこと。あんなとこの場に居ないみくるはソラリスから教えてもらっていた。

 

 ハンニンダーに向けて放った赤色の光弾の正体。ソラリスはそれを―――”気”と言っていた。

 

 生物であれば誰もが潜在的に持つ体内エネルギーであり生命エネルギー。これを理解し、鍛え、コントロールすることで人の領域を超えた力を発揮することが出来るという。

 

 ソラリスがこれまでハンニンダーを相手に出来たのも、プリキュアである自分達より力が強かったのも、全ては自身の身体に宿る”気”を操り、闘いに転じていたから。

 

 それを聞かされた時、あんなとみくるは漸くソラリスの力の根源を知ることが出来た。

 

 そして、自分達の身体にも”気”は宿っているため、鍛えれば今以上に強くなることができ、更に目の前の球体を創り出すことは勿論、他にも様々なことが出来るようになると言われた。

 

(でも流石に空を飛ぶのは無理があると思うなぁ……)

 

 あんなは落ち着きを取り戻したように椅子に座り直し、黄色の球体―――気弾をテーブルの上で転がして遊ぶポチタンを見守る。

 

 ソラリスが嘘を付いているとは微塵も思っていない。ただ、この”気”を操れば空を飛べると言うのはいくら何でも話が飛躍しすぎて流石に冗談だと思っている。

 

 ……あれ? よくよく考えてみるとポチタンもジェットも飛べるな? もしかして”気”を使ってたりしてるぅ?

 

「ポチ〜!」

 

 ポチタン、ジェット先輩、”気”を扱っている説を頭の中で唱えていると、ポチタンが転がして遊んでいた気弾を宙に浮かせ、自身の身体の中に収納させてしまう。

 

「身体の中に入れてしまったな?」

 

「ポ、ポチタン!? 大丈夫!?」

 

「ポチ? ポチ~!」

 

 慌ててポチタンを抱え、身体の具合を確かめるあんなと観察するため近付くソラリス。一瞬何のことか分からないと首を傾げるポチタンだったが、何てこと無いようにはしゃいで見せた。

 

「一応、私の”気”は身体に害はないと思うが……」

 

「身体に悪い”気”ってあるんですか……?」

 

「悪い訳ではないが……他人から過剰に”気”を送り込まれると身体が内側から爆発する」

 

「何それ物凄く怖いんですけど!?」

 

 あかんポチタンが死ぬぅ! 爆発したポチタンを想像したあんなは身震いし、そんなこと起きないよね!? とポチタンの身体をこねくり回しながら安否を確認する。

 

 ポチタンはそれを擽られていると勘違いしているのか、「ポチポチ~!」と身を捩りながら笑みを零した。

 

 特に異常はなく、何てことなさそうであんなは心から胸を撫で下ろした。余計なことを言って心労をかけてしまい、ソラリスはすまないと心の中で謝罪した。

 

「……なんか雨が降りそう」

 

 そんなやり取りをしていると、テラスから差し込んでいた陽光が静かに消え、電球が切れたように室内が暗くなる。外に目を向けると、先程まで照らしていた太陽が薄暗い雲に覆われ、徐々に厚くなってきていた。

 

 そう言えばと、ソラリスは日課で夜明けと共に祈りを捧げていた際、今日はいつもより雲が多かったことを思い出した。

 

 朝はまだそれほどでもなかったが今は空が灰色へと変わっていき、雨が降る予兆を感じさせた。

 

「みくるに傘、持って行ってあげようかな」

 

「なら私も一緒に行こう。丁度出掛けたいと思っていた」

 

「あの……ソラリス先輩? まさかとは思いますけど……”出掛けたい”って言うのは、お散歩のことじゃないですよね……?」

 

「……」

 

「ソラリス先輩!? 雨降りそうなのにダメですよぉ!?」

 

「……あぁ、分かった」

 

 流石は名探偵明智あんな。この数日で行動パターンを把握し、ソラリスの次の一手を封殺してきた。

 

 成長したあんなを嬉しく思う反面、今日の散歩は行けなくなってしまいソラリスは少し肩を落とした。

 

「遂に出来た! 古い本にあった、伝説のプリキット!」

 

 そうして出かける準備を終え、傘を届けに事務所を出ようとすると、研究室に篭っていたジェットが満面の笑みを浮かべて飛んで来た。

 

「伝説!?」

 

「あぁ、詳しいことは分からないけど、名探偵プリキュアの危機を救ってくれるらしい!」

 

 ジェットは数日掛けて完成させた、ハート型の虫眼鏡のようなプリキットを二つ、あんなとソラリスに見せる。

 

 名探偵プリキュアの危機を救うと言われるプリキット。その可愛らしいデザインに反して、どこか神々しさを感じられた。

 

「すご〜い!」

 

「本を見ただけで伝説の道具を作ったのか? ……本当に尊敬するよ」

 

「ふふん、もっと褒めても良いんだぞ!」

 

 得意げに胸を張り、鼻を広げるジェット。そんな折、ポチタンがポーチとして連れられ、あんなとソラリスが傘を持っている事に気付く。

 

「出掛けるのか?」

 

「あぁ、ちょっと雲行きが怪しくてな。みくるが帰ってくる頃には雨が降るかもしれない」

 

「だから傘持っていくの!」

 

「そっか。じゃあ、ついでにみくるにも渡してくれ」

 

 ジェットから手渡された伝説のプリキットを受け取るあんな。

 

 いつ、どのようにして使用するかはまだ分からない。だが他のプリキットと同様、全てみくるとお揃いのもの。

 

 ある意味プリキットとは、自分達をサポートするための探偵道具としてだけではなく、名探偵プリキュアとして活動する、みくるとの友情の証でもあった。

 

「それじゃあジェット先輩、いってきま~す!」

 

「ポチポチ~!」

 

「疲れただろうから、昼食までゆっくり休んでくれ」

 

 そうしてあんな、ポチタン、ソラリスは事務所を出ていき、みくるが居るまことみらい学園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 以前まことみらい市を観光した際、みくるの案内でまことみらい学園に足を運んだことがあった。その時の道順は覚えていたため、特に迷うことはなかったが、その道中であんなが「あっ!」と声を上げ、困ったように眉を下げて立ち止まる。

 

「みくるの分の傘しか持ってきてない……」

 

「ポチぃ……」

 

 ポチタンもあんなと同じように眉を下げている。

 

 あんなはみくるに傘を渡すという想いが先行しすぎて、自分の傘を持ってくるのを忘れてしまっていた。このままだとあんなだけでなくポチタンまで雨に降られてしまう。

 

「もし雨が降ったら、私の傘を使うと良い」

 

「えっ? そしたらソラリス先輩が濡れちゃいますよ!」

 

「私は濡れても大丈夫。それより君達が濡れて風邪を引いてしまうことの方が大変だ」

 

「で、でも……」

 

 あんなはその好意に戸惑った。ソラリスの気遣いや優しさは今に始まったことではない。とても暖かくて穏やかな気持ちになるため、あんなもみくるもそんな彼を素直に受け入れている。ただ、同時にそれが少々過剰だと感じる時もあった。

 

 今もそう。自分は濡れても良いからと傘を差し出そうとしたように。そして日常生活においてもソラリスは自分のことは二の次で、常にあんな達を優先していた。

 

 そんなソラリスに対してあんなはお願い、とまではいかないが、もう少し自分のことを優先して欲しいと思っていた。

 

「……だ、だったら! その時は相合傘なんてどうですか!?」

 

「ポチポチ~!」

 

 そうは言ってもソラリスの性格上、雨なんて降ったら必ず自分の傘を渡してくる。だからあんなはちょっとだけ顔を赤くして相合傘を提案し、ポチタンも同調するように頷いた。

 

「……まぁ、君達がそれで良いなら」

 

(よし!)

 

 異性との相合傘なんて父親以外だとしたことが無い。そんなファースト相合傘の相手がソラリスのような性格も顔も良い大人だと思うと少し……本当に少しだけ恥ずかしい。

 

 ただ、勇気の一歩を踏み出した提案はソラリスに受け入れられ、あんなは心の中でガッツポーズをした。

 

 しかし、最善なのは雨が降る前にみくるに傘を届けること。そのためあんなはまことみらい学園へ小走りで向かい、ソラリスもその後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、あんなとソラリスは雨が降る前にまことみらい学園に辿り着いた。今回で二度目の訪問になるが、やはり中高一貫と言うことで校門前からでも分かるほど校舎も敷地も広い。

 

 更に植栽や植木も見られ、ちゃんと剪定され校舎の壁も掃除されていて綺麗であることから環境の整備も行き届いていることが見て取れる。

 

 流石は私立、かなり金が掛かっている。こんなにも美しい学校に通えるなんて、他の学校の生徒からしたら羨ましいものだ。

 

「確か事務室は……あっちか?」

 

「……あっ! ソラリス先輩! みくる居たよ!」

 

 みくるに会うには入校許可証が必要。手続きを済ませるため、事務室を探していると二階の渡り廊下で一人、困ったように眉を下げ、空を眺めるみくるの姿を発見した。

 

 ここで傘を渡せれば、事務室へ向かう手間を省くことが出来る。そして今、傘が無くて困っているみくるを助けられるのは、自分だけ。

 

 あんなはそう思って疑わず、傘を持つ右腕を掲げ、いつもの調子で柵越しから声を掛けようとした。

 

「みく―――」

 

「み~くる!」

 

「わっ! ちょっと、りえ~!」

 

 みくるの友人だろうか。一人の女子生徒が勢い良く背後から抱き着き、もう一人の女子生徒も親しげに笑い掛けている。

 

「また同じクラスになれるなんて嬉しいよ〜」

 

「えぇ、よろしくね!」

 

 みくるは同級生の友人二人に笑顔で答え、笑い声を上げながら渡り廊下を歩いて校舎の中へと消えていく。

 

 何てことのない日常的な会話。何てことのない友人同士の戯れ。どこにでもある様な、ありふれた光景。

 

 しかし、それを目撃したあんなは、みくるとは対照的に笑顔が消え失せ、ストンと右腕を下す。

 

 キュアット探偵事務所で一緒に過ごしてきたはずなのに、見たことがない程楽しそうだった。嬉しそうだった。

 

(……あぁ……そっかぁ……)

 

 あんなはあんなの世界があるように、みくるにはみくるの世界がある。名探偵として、キュアット探偵事務所で共に過ごしてきたため、自分達は同じ世界を生きているものだと思っていた。

 

 しかし、みくるにはそれに加えて学校と言う探偵と同じくらい大切な世界がある。そしてそこには当然、友人がいる。

 

 学校生活を送るみくるの世界は、2027年からやってきたあんなにとって、決して介入することが許されない、不可侵の領域

 

 分かってはいた。頭では理解していた。だが、みくると友人達の楽しげな姿を見て、嫌と言う程現実を突き付けられる。

 

 あそこには、自分の居場所はないと。

 

「……っ」

 

 あんな自身、今抱いているこの感情が何なのかは分かっていない。

 

 だけど胸が痛い。心臓が鼓動を打つたびに、その痛みは強くなっていく。表情は憂いていき、身体も無気力に脱力していた。

 

「……あんな」

 

 ソラリスはあんなが抱いている感情の答えを持ち合わせていた。

 

 ソラリスは普段から無表情で、何を考えているか分からない時があるが決して感情がない訳ではない。ただ表に出ないだけで、人並みに悲しみ、苦しみ、痛みを感じる繊細さを持ち合わせている。

 

 あんなが今、感じているものは―――孤独。

 

 両親も知り合いもいないこの時代で心から信頼出来る友達のみくる。だけどみくるにも他の友達が居て。その隣に自分の居場所は無くて。

 

 様々な感情が渦巻いているあんな。そんな彼女に寄り添い、不安や孤独を少しでも取り除けるよう、大丈夫だと一声掛けようと口を開き―――。

 

「―――」

 

 どう言う訳か、言葉が出なかった。

 

「―――」

 

 たった一言だけなのに、何度も口を開いているのに、何故だか喉から言葉が出ない。

 

「……ソラリス先輩、帰ろ。みくるに傘、必要なかったみたいだから」

 

 困惑と焦燥に駆られる中、あんなは表情を暗く落としたままソラリスの横を通り過ぎ、早足に来た道を戻ろうとした。 

 

「待て、あんな……っ」

 

 漸く出たのが励ましではなく呼び止めだった。何故、その言葉を発せられたのか不明だった。しかし、このままあんなを帰らせてしまうと、孤独を抱え、哀しみに暮れたたまま日々を過ごすことになる。

 

 そんな思いをさせたくないソラリスは手を伸ばし、遠のいていくあんなの肩を掴もうとした時。

 

「あ、ごめんなさい!」

 

「い、いえ、こちらこそボーッとしてて……」

 

 あんなが赤髪の女性とぶつかった。

 

 




Q.わたし達も”気”を使えるようになるんですか!?(byあんな&みくる)
A.その内使えるようになる予定。
 ただ差別化を図るため、あんなは気の開放だけ、みくるは気弾だけ使えると言った方向に進めます。
 アニメの流れ的にるるかとエクレールが加入したら同じように”気”を使えるようになるかも?

Q.ノーレノォ!! ノーレノの馬鹿はどこ行ったァァ!?(byウソノワール) 
A.まことみらい市へ観光に行きましたぁ。(ウソ)
 まあ、コイツの動向はアニメ7話辺りで少し書きます。
 それまで忘れてもらって結構です。

 おーーーい! ハァッ☆(byノーレノ)
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名探偵プリキュア!探偵と正義の怪盗(作者:水甲)(原作:名探偵プリキュア!)

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総合評価:23/評価:-.--/連載:13話/更新日時:2026年05月31日(日) 19:51 小説情報


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