500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第42話 残り0日

 部屋王の翌日、ホームルームで相澤先生が今後の話をしてきた。

 

「昨日話した通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」

「「「「「はい!」」」」」

 

 相澤先生が話すと、A組は一斉に返事をする。

 

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然取得する為の試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」

「仮免でそんなきついのかよ!?」

 

 相澤先生が話をすると、峰田くんが弱音を吐く。

 するとその時、相澤先生が指先で手招きをし、教室のドアが開く。

 

「そこで君らには1人最低でも2つ……必殺技を作ってもらう!!」

「「「「「「学校ぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」」」」」」

 

 扉の外からミッドナイト先生、エクトプラズム先生、セメントス先生が現れ、クラスのボルテージは最高潮に達していた。

 

「必殺! コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

「その身に染みつかせた型・技は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

「技は己を象徴とする! 今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館・γに集合だ」

 

 エクトプラズム先生、セメントス先生、ミッドナイト先生が言い相澤先生が指示すると、皆は全員体育館・γに向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 体育館・γ通称……

 

トレーニングの(T)台所(D)ランド(L)略してTDL!!!」

 

 いや、TDLはまずいでしょ。

 著作権とか大丈夫なの?

 

 なんて思いつつ、体育館を見渡す。

 だだっ広い体育館の中には目立ったものは何もなく、セメントス先生が床に手をつくと床が盛り上がった。

 

「ここは俺考案の施設。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

「なーる」

 

 セメントス先生がセメントで“個性”訓練のフィールドを作っていくと、上鳴くんが納得する。

 すると、飯田くんが手を挙げて質問した。

 

「質問をお許しください! 何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか意図をお聞かせ願います!!」

 

 飯田くんが質問すると、相澤先生が飯田くんを上手い事宥めながら説明する。

 今更だけど飯田くん、夏なのにフルフェイスヘルメットで暑くないのかな?

 

「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災.あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。仮免試験では当然その適正を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力・他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適正を毎年違う試験内容で試される」

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし! 技の有無は合否に大きく影響する」

 

 相澤先生が言うと今度はミッドナイト先生が言い、セメントス先生もニィと笑みを深くしながら言った。

 

「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有していることになるんだよ」

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ…飯田クンノレシプロバースト。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」

「アレ必殺技でいいのか……!!」

 

 ミッドナイト先生やセメントス先生に続けてエクトプラズム先生も言うと、飯田くんがじぃんと感動する。

 すると飯田くんの隣にいた砂藤くんが口を開く。

 

「なる程…自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型を作ろうって話か」

「そ! 先日活躍したシンリンカムイの『ウルシ鎖牢』なんか模範的な必殺技よ。わかりやすいよね。相手が何かする前に縛っちゃう」

 

 砂藤くんの考察に対してミッドナイト先生が付け加えると、相澤先生が今後の方針を説明する。

 

「中断されてしまった合宿での『“個性”伸ばし』は…この必殺技を作り上げる為のプロセスだった。つまりこれから後期始業まで残り2週間の夏休みは、“個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」

 

 セメントス先生が地形を作り、エクトプラズム先生の“個性”で分身体を生成し準備が整う。

 すると相澤先生が説明を続ける。

 

「尚、“個性”の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

「「「「ワクワクしてきたあ!!」」」」

 

 相澤先生が言うと、A組はほとんど全員がノリノリで訓練に挑む。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 必殺技かぁ…

 私はもう既に何個か作ってあるけど、私の場合は剣を出す事自体が必殺技みたいなもんだからなぁ。

 どうしたもんか…

 とりあえず、エクトプラズム先生に相談してみるか。

 

「わたし、必殺技は結構作ってあるんですけど…どうしたらいいですかね?」

「ドンナ状況デモ安定シタ行動ガトレル剣ヲ軸ニシテミルノハドウダ?」

「そう考えると…この組み合わせでしょうか?」

 

 そう言って私は、『雷剣(サンダーソード)』、『炎剣(フレイムソード)』、『氷剣(アイスソード)』を出した。

 『炎剣(フレイムソード)』と『氷剣(アイスソード)』は、轟くんと同じ“個性”の剣だから結構気に入ってる。

 そして『雷剣(サンダーソード)』は、どんな状況でも万能な能力が使える剣だ。

 例えば雷の速度での移動や、雷を使った攻撃や防御、あとはハッキングとか、通信機器に干渉したりとか。

 この三つの剣を組み合わせる形で必殺技を作ってみようと思う。

 まずはこれ。

 

「『燃轟斧(バーニング・アックス)』!!」

 

 雷の速度で間合いを詰め、炎の蹴りで相手を貫く近接技。

 そして次はこれ。

 

「『雷雪城(サンダースノー・キャッスル)』!!」

 

 雷で相手の動きを止めてから、氷漬けにする遠距離技。

 騎馬戦での作戦を参考にした技だ。

 一度氷漬けにしてしまえば、凍死させるも私の自由。

 私はとりあえず、今編み出した二つの技をエクトプラズム先生の分身目掛けて放った。

 すると、先生の分身はあっさり崩れた。

 

 そうだ、志村を実験台にしてやろ。

 あいつ、調子乗っててムカつくし。

 訓練中の不慮の事故で重傷を負っちゃうなんて、ヒーロー科じゃよくある事だしね。

 そう考えつつ、完全に油断している志村を氷漬けにしようとした、その時だった。

 

「う゛……!?」

 

 突然、頭の中に電撃のような衝撃が走る。

 その次の瞬間、視界が暗転して意識が遠のいていく。

 ちょっと待って……何これ……

 どうなってるの……?

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「っ………!?」

 

 気がつくと、私は暗い部屋の中にいた。

 どこ、ここ……?

 あれ…?

 私の部屋…?

 なんで部屋にいるの、私…

 さっきまで体育館にいたはずじゃ……

 

「え……!?」

 

 嘘でしょ、何これ、どうなってるの…!?

 今、8月22日の21時半…!?

 デジタル時計の日付を見てギョッとした私は、慌ててスマホの日付とテレビの日付も確認した。

 本当に8月22日になってる……

 じゃあ何、私、4日間も気を失ってたって事!?

 

 

「神剱ちゃん!! ちょっと、神剱ちゃん!!」

「……!?」

 

 外から、ドンドンと扉を叩く音と志村の声が聴こえる。

 何よ、こんな時間に…!?

 最初は無視してやろうと思ったけど、あまりにもうるさくて、根負けして部屋のドアを開けた。

 

「……何?」

「ヤバイよ、大変なことになってるよ!!」

 

 そう言って志村が、スマホの画面を見せてくる。

 そこには、ネットニュースが並んでいる画面が映っていて、『魔導ヒーロー“マーリン”、活動休止を表明』、『雄英林間合宿襲撃事件の真相とは!?』『マーリンが語る、神剱家長女の裏の顔』というニュースが並んでいる。

 え……!?

 何これ、父さんがヒーローをやめたってどういう事…!?

 

「何よこれ、なんで父さんがヒーローを辞めてるの…!?」

「え、神剱ちゃん知ってたんじゃないの?」

「は!?」

「神剱ちゃん、3日前に『お父さんと話がしたいから実家に帰る』って言って相澤先生に外出許可貰ってたじゃん」

 

 は…!?

 何言ってんのこいつ、私外出許可なんて貰ってない!!

 3日前って、私が気を失ってる間じゃん!!

 

 え、何…!?

 どういう事!?

 皆からしたら、私はこの4日間普通に過ごしてた事になってるって事!?

 

「ってか、それよりヤバイのは下のニュース!」

 

 …ダメだ、この4日間何があったのか、全然思い出せない…!!

 確か、圧縮訓練のどさくさに紛れて新技で志村を再起不能にしようとして、その途中で気を失って……

 

「ここには合宿襲撃事件の犯人が神剱ちゃんだって書いてあるんだけど、これってどういうことなの…!?」

 

 っ……そうだ、志村のせいだ…!!

 私が急に気を失ったのは、絶対志村が何かしたせいだ…!!

 だって、志村を殺そうとしたタイミングで気を失うなんて、都合が良すぎるじゃん!!

 林間合宿の時もそうだった…暗殺が失敗したのは、志村のせいよ!!

 そもそもこの女さえいなきゃ、私は雄英で楽しく過ごせてたはずなのに…!!

 この女のせいで、この女のせいで!!

 

「……ねえ神剱ちゃん、話聞いてる?」

「うるさいっ!! どうせあんたが何かしたんでしょ!?」

「え……?」

「訓練の時、あんたがわたしを気絶させたんでしょ!? 林間合宿の時だって、急に“個性”が使えなくなったのもあんたのせいなんでしょ!?」

「ごめん、神剱ちゃんが何言ってんのかちょっとよくわかんないんだけど…」

 

 こいつ……!!

 まだとぼける気!?

 今まで散々私の事を邪魔してきたくせに!!

 

「そもそも、わたしがこんな目に遭ってるのは全部あんたのせいよ!! せっかくヒロアカ世界に転生して、好きに生きられると思ってたのに!! あんたと志村瑠奈が全部メチャクチャにした!! 轟家を先に救済されて、爆豪くんと緑谷くんの仲も改善されて、(ヴィラン)連合の救済までされちゃったら、わたしができることなんて何も無いじゃん!!」

「は…? 転生? 救済? 何の話?」

「とぼけるな!! 前世の知識を使ってズルしてるくせに!! わたしが転生者だってことを知ってたから、轟くんや爆豪くんを独り占めするために邪魔してたんでしょ!?」

「ねえ神剱ちゃん、一旦落ち着こう? 耳郎ちゃんとか葉隠ちゃんに聴こえちゃうからさ…」

「うるさいうるさいうるさい!! わたしの人生をメチャクチャにした責任は、取ってもらうんだから!!」

 

 そう言って私は、掌からカッターナイフを創造した。

 それを見た志村が、目を見開いてギョッとする。

 私は、志村が怯んだ隙に、カッターで自分の手首を切りつけた。

 

「え、ちょっ、何やってんの神剱ちゃん!?」

「キャアアアアアアアッ!!!! 誰かああああああああ!!!!」

 

 私は、驚いている志村の手に無理矢理カッターを握らせて、上の階にまで聴こえる声量で叫んだ。

 すると間もなくして、上の階の響香ちゃんと透ちゃんが2階に駆けつけてきた。

 

「神剱…!?」

「どうしたの!?」

 

 慌てた様子で駆けつけてくる響香ちゃんと透ちゃんに、私は泣きながら縋った。

 

「し、志村さんが…!! 志村さんがいきなり切りつけてきたの!! わたしのことが気に食わないからって!!」

 

 私は、志村を指差して犯人に仕立て上げようとした。

 響香ちゃんは、信じられないものを見るような目をしていた。

 志村の事を殺せないなら、私の事を傷つけた犯人に仕立て上げて、除籍に追い込んでやる。

 まずはこの二人に証人になってもらって、志村が私を傷つけたって事実をでっち上げるのよ。

 ここに居合わせたのが、志村なんかと仲良くしてるお茶子ちゃんと梅雨ちゃんだったら、この計画は破綻してたかもしれない。

 でも、幸いここには二人はいない。

 私のチーレム生活をぶち壊した罰は受けてもらうんだから…!!

 

「あのさ、神剱。あんた、何でこんなことするの?」

「へ……?」

 

 響香ちゃんは、私の味方をしてくれるどころか、呆れたような表情を浮かべていた。

 

「ごめん…ウチさ、あんたが志村に言ってたこと、全部聴いちゃったんだ」

「実は私も、耳郎ちゃんから聞いて…」

 

 全部聴いてた…?

 うそ、まさか、私が志村に言った事全部…!?

 何それ、そんなの盗聴じゃん!!

 信じらんない!!

 

「聴いてたって…まさか、盗聴してたの!?」

「いや…盗聴も何も、あれだけヒステリックに喚いてたらそりゃ聴こえるでしょ…」

 

 う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!! 

 うるさいうるさいうるさぁぁぁい!!!

 そうやっていっつもわたしのことバカにしたような目で見やがって!!

 ふざけんな、わたしよりブスのくせに!!

 志村殺すっ!!

 殺す殺す殺す!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 私が剣を創造して志村を斬り殺そうとした、その時だった。

 急に体が宙に浮いて、指一本も動かせなくなった。

 

「な、何これ…!? 動けない…!!」

 

 ふと下を見ると、志村が私に向かって掌を向けて睨んでいた。

 今まで見た事がない、殺気と憎悪に満ちた目で。

 

「そうやって、アタシのママのことも殺したんだね。人殺し」

 

 

 

 ☆破滅まで、残り0日───

 

 

 

 

 




みんな大好きカッターキャーでございます。
皆さん大変長らくお待たせしました。
次回、伏線回収&断罪タイムです。
予想していた方もいたかと思いますが、転生者が犯した終身刑レベルの重罪は、もう一人の転生者の瑠奈ママ関連です。
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