封鎖突破船   作:koe1

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初めての封鎖突破♪

なお作中の船内のやりとりは専門用語等ではなく、
全部適当だそうですw
わかりやすさ最優先だそうで。



封鎖突破1回目

すまねえが細かい日付は覚えていない。

マルシャルさん、それは許してくれ。

ただ覚えているのは、あの戦争が始まって1ヶ月ぐらいしてから北星大陸までの往復を終えて帰ってきたとき、下宿している部屋の女将さんが実家から・・・当主となっていた兄貴から俺宛の手紙と金を預かってくれていて、戻ったらすぐに電信で連絡をしろとのことだった。

ん?どうして下宿かって?

あ~当時の俺はいい年していたがまだ独身だったんだよ。

もうその時には『船乗り随一のエルフ狂い』って言われているぐらいだったからな。

今は最高のカミさんがいるがな。

 

でだ。

すぐに兄貴に電信を打つとログレスに・・・なんと驚くことにこの店に何日の何時に来いっていう返信がすぐに来たので、言われたままに列車に飛び乗って向かうことにした。

理由なんて何も記されていなかったが、これでも元貴族家の一員。

言えない内容があるなと察したのと、俺の船は俺の個人所有だが、買ったときに何人かいた出資者の内、2人いた最大出資者の1人が兄貴ということもある。

ちなみにもう1人の最大出資者は、その時にはもう亡くなっていたが親父だった。

で、出資者様のご機嫌を損ねちゃならねえし、帰ってきたばかりですぐに船を動かすこともないし、そもそも兄貴とは仲がいいから断る理由もない。

船の整備を信頼している部下に多めの金と共に押しつけて、指定された日にこの店に来れば・・・マルシャルさんと違って名前を明かさないが、どっからどうみても我がキャメロット国の貴族に属するであろう、俺と同い年ぐらいの男が1人待っていた。

「私のことはMと呼んでください」

そいつは握手しながら、自分のうさんくささを隠そうともせずにそう名乗ると優雅な食事の時間と相成った。

そうだよ。

名は名乗れないがテーブルマナーによって、間違いなく我が国の貴族階級に属しているということを証明しているわけさ。

で、探り合いも兼ねたたわいもない雑談をしてから、いよいよ本題に入った。

まぁ本題にいよいよ入ったとはいえ、もしマルシャルさんがその場にいたらえらく遠回りな会話をしているなと思うだろうな。

そんな貴族言葉による会話だった。

で、その時の会話を要約して説明するとだな・・・

 

 

・今回のエルフィンドとオルクセン間の戦争に関して我が国は、我が国の建国神話を無視し、オルクセンへの好意的中立という立場を取っている。

 

・オルクセンは開戦初日にエルフィンド海軍を壊滅に追い込んでいる。確かに戦争だからどうこうは言えないが、まともに戦うことさえ許されなかったエルフィンド海軍のことを思うと慚愧に堪えない。

 

・開戦以来、エルフィンド船籍の民間船が大量に行方不明になっている。

 

・エルフィンドに向かっていた我が国やグロワール船籍の多数の民間船もオルクセン海軍によって臨検を受け、引き返すように指示を受けたり、積み荷によっては没収や拿捕抑留という目に遭っている。

 

・我が政府はその件に関しては形ばかりの抗議をおこなっている。

 

・国王陛下や王室は今回の戦争に関しては、内閣と違い深い憂慮を表している。

 

・海軍内の一部でも憂慮が広がりつつある。

 

・過日、『レラーズの森事件』というエルフィンドによる闇エルフ虐殺という事実が判明したが、その件が判明したことにより、陸海軍内の一部ではオルクセンに対する不信感が醸成されつつある。

 

 

ん?どうして闇エルフ達への虐殺が判明したせいで軍内部でオルクセンに対する不信感が出てきたかって?

あ~気分を悪くしないでくれよ。

その時はエルフィンド側がトンチキナ発表を・・・『不幸な事故』なんていう発表をまだしていなかったのと、オルクセンの手際が良すぎたからだ。

闇エルフ達はオルクセンに逃げ込んでからすぐにグスタフ王の警備につけられただろ?

それと虐殺の事実、あとオルクセン側の宣戦布告からの侵攻開始までのあまりの速さに『もしかしたらオルクセンは事前に長い時をかけて闇エルフ族と内応の約束を取りつけていて、それを察知したエルフィンドが先手を打って内応していた闇エルフ達を処分したのでは?そうでなければ保護した闇エルフ達で騎兵旅団を編制するのはともかく、いきなり国王官邸の警備になんか就けないだろう』という声が馬鹿にできない速さで広がりつつあったらしいのさ。

もっともエルフィンドが『不幸な事故』なんていう、誰もが納得できない馬鹿な発表をしたことで『それは流石にないだろう』と一気に沈静化したことや、そもそも『ミスターM』がエルフィンド寄りの立場な人物だったからある程度割り引く必要があるだろうが、俺も調べたがそういった声がかなりあったのもまた事実だ。

あそこで『事前に内応を察知したので反乱の芽を摘み取ったのみ。その証拠がオルクセン軍の闇エルフ騎兵旅団だ』と言えばまた違ったろうにな・・・

 

で、そんな国内上部内の馬鹿にできない声とオルクセンとの間で挟まれた我が国の政府がとった方針というのは『エルフィンドとの商取引は従来通り。中立国だから禁止も何もない』というやつだ。

要は『我が国は何もしない。自己責任で好きにやれ』というやつだが、一部上層部からしてみれば『何もしていない』ということのままだ。

だが一部上層部の更に一部・・・口だけじゃなくてやる気に満ちていた連中は『なら私達は好きなやる』ということになり、エルフィンドとの貿易を何とか継続しようとしたんだが、それを阻んだのが船舶保険の値上がりだ。

エルフィンド船籍の船は1隻も母国にたどり着けないし、こちらにやってくることもないし、うちの船も引き返すは抑留や積荷が没収されるはで・・・信じられるか?最低でも20倍、大抵の船で50倍・・・船によっちゃ下手すりゃ100倍以上に保険金が値上がりしたんだぜ。

やる気のある連中ですら心が折れちまう。

エルフィンド側は幾ら高値でも買うと言っていたらしいが、誰かの陰謀を感じるほど値上がりした保険金を考慮すると、最低でも開戦前の20倍以上の価格で取引しないと割に合わない状況を説明すると『人間族は私達の苦境を前に足元を見ている!』とご立腹。

まぁ理解している白エルフ達もそれなり以上にいることはいたらしいんだが、うちと同じで政府指導部がその考えに固まっちまったらしいんだわ。

で、当時のこっちの『やる気のある連中』からしてみると、オルクセンがエルフィンドを併合するとまでは思ってもみていなかったから、戦後のエルフィンドとの外交を考えると何か手を打たなければならないということになり、何とか1隻分の保険金を募金で掻き集め、積み荷の値段を頑張って3倍程度に押さえ込める目処を立てた上で、この俺に白羽の矢が立てたというわけさ。

エルフィンド派に属すとみなされていた貴族家の一員で、何度もエルフィンドへ行っている、最大船速16ノットを記録したこともある高速帆船であるクリッパー『愛しのエルフ号』を持っていて、実戦経験がある元海軍軍人の船長であるこの俺に。

 

俺は半端ない高値の報酬と、船舶保険の支払い金を連中が俺や兄貴に対して如何なる事態が発生しても如何なる形でも請求しない・・・無担保無保証無責任で引き受けること、俺の船が拿捕抑留された場合は俺をはじめとする船員全員と船の早期解放をオルクセン側に強く要求することといった諸条件を確認したあと、積荷は今俺の船が止まっている港に持ってくること・・・間違っても目立つことこの上ないでかい港に行って積み込みはしないことをはじめとして、俺自身はキャメロット国内ではエルフィンド側とは絶対に接触しないこと、新聞報道は可能な限り押さえ込むこと、積荷書類の偽装、梱包の偽装、可能な範囲でいいから拿捕抑留臨検を受けたうちの国の船の状況や位置の情報、噂に聞く軽量小型かつ高倍率の『プリズム双眼鏡』を最低でも5個無償で支給すること、エルフィンド側に対してはエルフィンド到着予定日の2日前に出航したことを通告すること等を要求すると、それら要求をあっさりと飲んだ上で、驚いたことに拿捕抑留臨検に関する情報はその場で手渡してくれた。

なので俺はその場で輸送契約を結んだ。

というか結ばざるを得ないだろう。

金と白エルフにに目がくらんだのは事実だが、それ以外の逃げ道を全部塞がれているんだからな。

そしてその後俺はミスターMと色々なすりあわせを食事をしつつさらにおこなってから一旦解散し、ログレスのそれなりの値段がするホテルに泊まり、翌日に泊まっているホテル宛てに返信を要求した電報を兄貴宛に打ち、再びこの店でミスターMと行き先はどの港にするのかや積荷を何にするか等の綿密な打ち合わせをしたあと、2人でとある商会で赴いて、ミスターMが8個ものクソ高い双眼鏡を今日中に俺の泊まっているホテルに届けるように手配しているのを横で見て内心驚いたりしつつ、ホテルに戻ると既に兄貴からの『領地で待っているからすぐにこい』という返信やすぐに届けられた双眼鏡を受けとり、兄貴に『明日列車で向かう』という電信を自分で郵便局に赴いて打ってもらい、翌日の列車と手荷物の手配をしたりして、朝一の列車で懐かしの我が領地に向かった。

と言っても、ログレスから距離はあるものの、愛しの船が待っている港へ向かう経路上にある駅からすぐの場所だがな。

 

駅に降り立つと、我が家の下僕が馬車と共に既に待機していて、俺と荷物を馬車に積み込むとすぐに実家に向けて出発。

あれとあれよという間に当主となっている兄貴と久しぶりの対面だ。

流石に実家の中じゃこんな砕けた言葉は使えないので、なんだかんだいっても身に染みついている貴族言葉で・・・兄上と色々と話す。

今回の件では兄上が後見にたっていることや激励の言葉。

甥っ子が・・・そう、マルシャルさんとの仲介にたってくれた外交官になった兄上の次男が道絶の秋津洲で色々とやらかしているらしく、そのことに頭を抱えたり、その次男が外務省の秘匿命令で秋津洲から大慌てで戻り、戦場になっているエルフィンドに向かうことになっていること。

そのことを取引材料にし、今回の件では外務省は何も言ってこないことといざという時に救出に関しては確約していること等、家族と貴族家に関する入り交じったことを色々と話し込んだ。

そして翌日には早々と実家を辞し、ログレスをでた4日後の夕方には俺の船、『愛しのエルフ号』が待っている、キャメロット北西部の、さほど大きくない港に帰り着いた。

 

すぐに『愛しのエルフ号』の元に向かうと、整備点検を押しつけた、軍艦で言うところの副長にあたる一等航海士にさんざん嫌みを言われたが、船長室に連れ込んだ上で、次の航海のことを他言無用とした上で説明すると、ニヤリと笑い「それなら仕方ないですな」と言いつつ、俺から詫び金を受け取った。

そして船員達には『ロヴァルナ行きの特急便の仕事が入った』と嘘を言い、一週間半ほど掛けて船の整備点検を大慌てでこなしつつ、五月雨式に送られてくる荷物を、何をどれだけ積むか、どのように積むかを、冬を目前にして既に軽く荒れ始めている荒海の状況と、積み込んだ重さで船足がどれだけ落ちるかを一等航海士と共も真剣に検討計算した結果、積荷をやや多くして船の安定性を優先することにした。

結果、全長250フィート(約76m)、全幅30フィート(約9.5m)、3本マストの最大長45フィート(13.7m)、過去最大積載量約110万ポンド(約500トン)の『愛しのエルフ号』に、90万ポンド(約408トン)程を積み込むことにした。

これ以上重くしたら船足はかなり落ちるが、これ以上軽くしたら喫水が浅くなって安定性に欠け、冬直前で荒れ始めつつある荒海で遭難する可能性が高い。

なのでバランスを取った選択だ。

数日遅れで追加の情報や報酬の先払い分に当たる報酬の半分の現金と共に港までやってきたミスターMは、俺達の決定に一切文句をつけず、その範囲で優先して運びたいものを選び出し、その中で特に重たい物・・・工作機械類やその部品を優先して船底近くの船体中央部の船倉に押し込んで船の安定性を確保して、肥料と偽造されている硝石類はその周辺部に積み込みこんだ。

もちろん輸出書類もロヴァルナ宛ということになっている。

流石に武器弾薬は臨検を受けた際に誤魔化しきれないと言うこともあり拒否したが、これに関してもミスターMは一切文句をつけなかった。

はっきり言って理想の荷主と言える。

 

ミスターMがもってきた追加の情報から、さほど大型でない機帆商船を改造したと思われる、最低でも5隻、最大でも9隻と推測される武装商船でもって構成されている『グスタフ王の海賊』達は、ベレリアンド半島近海で半島を取り囲むように活動しているらしく、更に他国船に偽装して『時刻合わせ』を求めて接近してくること、エルフィンド船籍以外の船にも容赦なく火砲を突きつけて臨検を要求すること等の手口がわかり、そのことをふまえた上で一等航海士と何度も航路について検討した結果、下手な迂回航路はとらず、ロヴァルナ行きの一般的な航路を東に進み、ベレリアント半島直北に達した時点で南に進路を取り、3つほどの小さな港を候補としつつ、多少危険でも総帆展帆で吹き荒れている北風に乗って最大船速で一気に封鎖線を突破することにし、発見されて停船要求が出されたとしても一切停船しないことにした。

ただ情報から海賊船のマスト長はこちらより低いので、あちらからも見えるが先にこちらが海賊達を発見できる可能性が高いので、発見されたとしても振り切れると判断していたのもあった。

そして前回の航海からわずか2週間半ほどで可愛い白エルフ達が待っているエルフィンドに向けて・・・表向きはロヴァルナに向けて出航した。

俺と一等航海士を除いた23人の船員達は休息が殆どとれなかったことに不満を漏らしていたが、ミスターMが持ってきた先払い分の報酬を使って、滅多にお目にかかれない金貨で報酬を先払いすると誰もが黙り、更に出発2日前にもう一度ボーナスを支払うと、それで色々と英気を養い、やる気満々となった。

ちなみに今回、見張りを重視するために追加で4名ほどの船員を募集した結果、乗組員は総勢29名となった。

普段なら余計に金がかかるから絶対にやらないことだな。

 

航路は風向きによって多少の差は出るだろが、本島西側の港を出て北上してから東進してベレリアンド半島直北付近までが765海里(約1415km)程で、南に転進後は190海里(約352km)前後の航海を想定していた。

入る港を完全に決めていないとはいえ、片道総計で955海里(約1768km)前後、最大でも1000海里(1852km)の航海を想定していた。

速度としては、この時期の航路上の海域で風が止むことはまずないから、風待ちはないとして日数でいうと、まず本島の港をでて北上する距離が約410海里(約740km)を平均6ノット(時速 約11km)ぐらいと見積もり、西進点まで3日。

西進してから南下点まで455海里(約830㎞)は平均10ノット(時速 約18.5km)で2日。

南下点からベレリアンド半島までの190海里(約352km)は吹き荒れる北風に乗るから14ノット(時速 約30km)で半日。

こんな感じで5~6日ほどの短い航海を想定していたし、実際にほぼその通りの日数となった。

ん?本島西側を北上するときは逆風だからもう少し時間がかかるんじゃないかって?

何言ってやがる。

いつも必ず通っている場所だぜ。

船乗りを舐めるなっての。

 

で、西進を開始して半分ほどの距離を進んでから、本来の行き先を船員達に伝えた上で念のために夜は完全に火を落としておっかなびっくりの無灯火航行。

だけど笑ったぜ。

戦場になっているエルフィンドに向かうと知ったらびびると思っていたら、全員が可愛いエルフに会えると知って大喜びだったんだぜ。

で、南下点まで来てからはずっと北風が吹くはずなので、風向きが急に変わって帆が風を掴まなくなることは、変な舵を切ることがなければまずないが、神様に『北風以外が吹きませんように』とお祈りしつつ、見張り員を大幅に増やし、特に目が良い奴や注意力が良い奴を双眼鏡持ちに指定して、マストトップに2人、右舷、左舷、艦尾と艦首に1人ずつ配置し、俺も1つ持って、最後の1つは予備として保管としていた。

もちろん普通の望遠鏡もあるだけ使って、とにかく見張りは厳重。

用を足しているときや飯の時は、一時的とはいえ見張りの数が減ったり、注意力が減ったりするから、怖かった。

これが2日以上続くのなら続かなかっただろうが、1日なら何とかなると踏んでの行動だ。

申し訳なかったが飯は軽食でその場で見張りながら食べさせて、温かい飲み物を何度もそれぞれの見張りに届けさせて少しでも注意力を維持しようとした。

酒も4時間に1回、カップ1杯分だけ許可した。

 

最初は夜間に海賊達がうろついている海域を通過するように時間を調整しようかとも考えたんだが、前に甥っ子が『魔種族は人間よりずっと夜目が利く』と言っていたのを思いだし、堂々と真っ昼間に突破するようにした。

で、これが正解だった。

南下開始時はまだ夜が明けていなかったが、南下を初めて3時間ほど・・・夜が明けて1時間ほどしたときに、予想通りの14ノットほどの船足で40海里(約76㎞)程進んだとき、マストトップの見張り所にいる奴から

「進路前方より右舷45度、マストみえる!!」

という声が降ってきたのに続いて

「マストは1本!40度位置に進む!当船の進路前方を西から東へ横切りつつある模様!」

当然のことながら俺もそっちに双眼鏡を向けるが、まだみえない。

船首付近にいるにいる見張りもまだ声を上げていない。

うちのマストトップの見張り場所の高さは甲板から40フィート(約12.2m)ぐらいの高さにあったから、海面からの高さも考えると55フィート(約16.7m)と見積もって、相手もマストしかみえていないことから距離は最低でも約8海里(15km)以上・・・10海里(18.5km)前後と見繕い、こちらがみえるということはあちらもこちらのマストもみえているだろうが、まだ見つかっていないことを祈りつつ、風向きと相手の進路を考えて

「舵、右に30度!風を掴みそこうな!」

と相手の後ろに回りこむような進路の指示を出すと、舵をすぐに回し、何も言わなくても帆を上手く調整したりして、速度をほぼ落とすことなく転進に成功。

そしてマストトップの見張りから「マストみえなくなる!」ていう声が降ってきたときはホッとしたね。

まあそのマストが海賊だったかはわからねーが、あの時期にあの辺りをうろついている船なんて海賊か俺達と同業に決まっているからな。

近づかないに越したことはない。

その後、更に2回ほどマストをまたみたが、進路を変えてなんとやり過ごすことに成功した。

 

で、南進開始から早くて半日ほどで・・・ギリギリ明るい内に半島に到着できるとみていたが3回ほど大きく変針したせいでかなり遅れ、真夜中といっていい時間に予定していた3つの港の内、一番小さい港にある小さい灯台の灯りがみえたときは心底ホッとしたぜ。

で、一部の帆を畳んで速度を落としつつ、真夜中だったが信号喇叭は吹かさせずに、光量を落とした発光信号だけを港に向かって繰り返し送った。

『ワレ、キャメロットセンセキ、イトシノエルフゴウ。ハクギンジュ。ハクギンジュ。ハクギンジュ』。

最後の『ハクギンジュ』は事前に決めていた俺達であるという証明をするための符丁だな。

正直言えばこの時が1回目の航海で一番危険なときだった。

近くに海賊がいればもう逃げられない。

とはいえ、喇叭なんか吹かせて知らせれば、海賊共にも聞こえてすっ飛んでくるかもしれない。

早く気がついてくれと神に祈りながら発光信号を送り続けた。

同時に気がついても、派手な音だけは鳴らしてくれるなよとも祈った。

だいたい5分ほど送り続けたかな?

向こうもようやく気がついたようで、発光信号を送り返してきた。

流石に向こうも派手な音を出す危険性はわかってくれていたようでホッとしたが、向こうの発光信号が海賊に気がつかれないことも祈った。

祈ってばっかりだが、祈るほか無いというのがそんときの状況だな。

ちなみにその時の相手の返信だが、泣けるぜ。

なにせ一心不乱に『キテクレテアリガトウ。キテクレテアリガトウ。キテクレテアリガトウ』たぜ。

で、港から蒸汽ダクボートが1隻来てくれて、真夜中なのに手際よくうちの船を押し始めてくれたと思ったら、今の時代に手こぎカッターも4隻やってきて、こちらもすげえ手際良く俺の船とカッターをロープで結んで牽いてくれるんだぜ。

とにかく少しでも早く港に入れなきゃならねぇという強い意志を感じて本当に泣きそうになっちまったよ。

ここまで白エルフ達は追い詰められているのかってな。

 

発光信号を送ってから2時間ほどで岸壁に着けられたんだが、凄かったぜ、もう。

真夜中にもかかわらず港中の白エルフ達が来たんじゃないかっていうぐらい白エルフ達があちこちに鈴なりだ。

そうだよ、暗くて姿ははっきりと見えないがあの赤く光る目がもう数えきれねぇぐらいだったぜ。

流石に音を鳴らすことはなかったが、もし戦時じゃなかったら、ありとあらゆる楽器をかき鳴らしていたんじゃねーかなと思うぐらいの大歓迎だ。

すぐにマストをデリック(クレーン)に切り替えて、船倉から肥料を・・・硝石を甲板にあげて、見た目は可愛いが勇ましい白エルフの沖仲仕(おきなかし 港湾労働者)達がそれをどんどんおろしていく。

無灯火なのに事故も起こさずだ。

甥っ子が言っていた『魔種族は夜目が利く』は本当だったと心底感心しちまったぜ。

でだ、ぶっちゃけていうと、最初にやらなきゃいけない検疫とか書類手続きとかは完全に後回しにされていた。

なにせ、いの一番に乗り込んできた向こうの港湾管理者が

「とにかく先に降ろさせてください。もし書類と量の齟齬があっても、事故があってもこちらで責任持ちます」

なんていう、今までの上から目線の口調じゃない上、酷く面倒な検疫だの輸入手続きだの無しだから、戦争が始まってまだ二ヶ月ぐらいだっていうのに、本当に追い詰められているんだと心底同情しちまったぜ。

流石に工作機械類は、ばらしているとはいえ壊したらことだということで明るくなってからなってから降ろすことになった。

そのせいで明るくなって岸壁をみれば沖中氏達だけじゃなくて、どうみても一般市民の白エルフ達も手伝っていたことに、ようやくうちの船員共が気がついた。

で、その見た目は細くて可愛らしい女ばかりなのに、白エルフ達のすげえ怪力ぶりにうちの船員共はあっけにとられていたのが笑っちまったよ。

まぁ白エルフ達の大半が俺達のお袋どころか婆さんより年上なんだがな。

 

で、白エルフ達の怪力のおかげで昼前には荷下ろしが終わったら、港をあげての大歓迎会だったよ。

まぁ俺は書類手続きが丸々残っていたから、不参加だったが。

流石に船長が書類仕事を船員に押しつけた上に可愛いエルフ達の歓迎会に参加していたら、帰りの航海の途中で『事故』にあっちまうよ。

で、船長室で港湾管理者と書類のやりとりをしていたら、そいつが壁に掛けられている帽子に気がついた。

そうさ、俺のあだ名の元になっている、命と船の次に大事な俺の『二角帽』さ。

「失礼ですがあの二角帽は我が海軍の帽子では?」

と尋ねてきたから、

「そうさ。俺がガキの頃に白エルフの軍人にもらった帽子さ」

と答えるととても驚いていたな。

手に入れたきっかけだが・・・今にして思えばとても恥ずかしいんだが、俺がガキの頃にエルフィンドの親善艦隊がキャメロットにやってきたんだ。

で、うちはそこそこの貴族だったんで、出迎えホストの一員として家族丸ごと招待されたんだが、海にあこがれまくっていた大馬鹿な次男が出迎え式典の際に親父やお袋、兄貴に執事や下僕の目を盗んで逃げ出し、一般市民向けの見学船に潜り込んで船の上からエルフィンド艦隊を見学していたんだが・・・はしゃぎすぎて海に落ちた。

で、そんな海に落ちた溺れかけている馬鹿ガキに気がついたエルフィンドの軍艦がボートを降ろして助けてくれたのさ。

で、俺はそのままエルフィンドの軍艦に連れて行かれると、たぶん艦長だと思うんだが、とても偉そうな白エルフに色々と尋問された。

普段なら少しでも嘘をついて誤魔化そうとしたんだが、あまりにも白エルフ達が綺麗だったんで、正直に色々と話したと思うんだが、白エルフの綺麗さにあてられていたから何を話したが全く覚えていない。

ただ最後にその偉そうなエルフに大笑いされてから

『よし!ならこの帽子をやろう!将来、艦長か船長になったらこれを被って私に会いに来い!』と言われてから、その白エルフが被っていた二角帽を被らせてもらったことだけは覚えている。

ん?もちろん親父やお袋にはめっちゃ怒られたよ。

ただ『無事でよかった。心配したんだぞ』と泣きなながら抱きしめられた後にな。

 

で、それはいいとして、到着してから3日目には沖合に船影がちらほらと見え始めと言う報告が入り始めた。

どうもどんな手段を使ったかわらないが、俺達が入港したことをオルクセン側が察知したようだった。

出港した後に因縁をつけて拿捕しようとしているのではと考えたんで、特に船体が傷んでいないこともあったので、到着してから4日目には出港することにした。

まだ夜も明けない内から、手こぎカッターの連中が引っ張って俺の船を岸壁から離れた後、蒸汽ダクボートが港外まで押して行ってくれて、一気に総帆展帆して斜めからの風を受けて、上げられるだけの速度で進路を南西にとって、アルビニー・グロワール方面へ遁走さ。

もちろん方針としては海賊・・・他の船に会っても一切無視の一手のみ。

そして実際に帰路じゃ海賊船と思わしき船に、お互いのマストが見えるか見えないかの距離で20海里ほど追跡されたが、最後は諦めてどっかに行っちまった。

そんでもって、念のためにアルビニー・グロワールの陸が見える距離での沿岸航行で進んでいき、エルフィンドをでてから8日程で港に帰ってきた。

向こうでの滞在も含めると往復で20日程だったな。

港に着いてからすぐに兄貴とミスターMに電報を打った。

もちろん向こうをでる際にもミスターMには電報を打っていたがな。

5日ほどしてミスターMがまた港までやってきて、残っていた報酬を現金で払ってくれた。

俺はすぐにそれを船員達に気前よく配ると、船長室でミスターMと次のエルフィンドへ向けての航海の話し合いとなった。

ん?どうしてそんな危険なところにまたすぐに行こうとしたのかって?

決まってんだろ。

金と可愛い白エルフ達に目がくらんだままだったからさ。

 




1回目の封鎖突破は大した危険も無く無事に成功。
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