こんな感じで1回目の封鎖突破は船に乗っているこっちとしてはずっとハラハラしていたが、蓋を開けてみれば全くもって無事に終了したわけだ。
もしマルシャルさんが俺の話を元に小説を書いたりしたとしても、手に取った読者はすぐに『何も起きて無くてつまらない』って投げ出すんじゃないかな?
で、さっき話したとおりにすぐに2回目の航海についての話し合いになったんだが、ミスターMからは嫌な情報が追加で知らされた。
船舶保険の保険金があり得ないぐらい値上がりしたというのは話したと思うが、どうもオルクセン側が裏で糸を引いているらしいとのこと。
もちろんマルシャルさんなら知っていることだが、キャメロットやグロワールの各保険会社から更に保険を引き受けていたオルクセンのファーレンス商会が保険を馬鹿上げしていた黒幕と聞かされた上に、その保険契約を利用してこっちの船の動きを把握しているとのことだった。
流石に洋上にいる海賊船にすぐに伝えられるわけではないが、どうもキャメロットやグロワールからオルクセンへ向かう商船を連絡船兼洋上補給船に仕立てたり、電信でオルクセン本国に伝えられた情報を携えて出航した、そいつら連絡船兼洋上補給船が海賊船と会合できたときに情報や食料を引き渡しているらしいとのことだった。
つまりだ、1回目のエルフィンド行きの際にクソ高いどころじゃない保険金を支払った俺達の船はその時点でオルクセンに把握されているということだ。
流石に1回目の航海では海賊達への情報伝達は間に合わなかったようだが、次はどうなるかわからない。
もしかしたら向こうの港に近寄って俺達を追跡してきた海賊船は、洋上でその情報を知らされたのかもしれない。
俺は少し考えてからミスターMに
「現在の船舶保険を解約して欲しい。代わりに俺自身が北星大陸行きの船として保険を偽装して結び直す」
と言うと、ミスターMは
「それではエルフィンドに向かった際に船に何かあったとき、保険が降りないなのでは?」
と心配そうに言ってきたので、こっちの妙案を説明する。
「保険を解約した金を俺達と船自体に何かあったときの支払金に充ててくれ。よく考えれば積荷の被害は俺達には一切請求できない契約だし、積荷に関しては保険契約はしなくていいんじゃないか?なにせ今の保険契約金じゃ凄まじい額になっているだろ。もちろんあり得ないぐらい上がっているとはいえ何かあったときの保険支払金額そのものには足りないが、積荷の保証を船長である俺がしなくていいのなら、保険契約金分をそのまま俺達に何かあったときの保証金にあててくれるのならエルフィンドにまた行ってもいい。なにせ船を沈められたり没収されたりしても、その保険契約金分を丸々もらえるのなら、船員達に約束した報酬を払った上で、俺自身もなんとか再起が図れる」
というと、少し考えてから
「良いアイディアだと思いますが、流石にそれは私の独断では決められない。なにせ保険契約金は有志による募金が原資ですので。すぐに電信をログレスに打って判断を仰ぎます。もしかしたら私自身がログレスに戻ることになるかもしれない」
といってくれて。
もしこれが通ればハラハラドキドキの無保険航海だ。
まぁ実際にそうなったがな。
その後は更に細かくなった海賊達の情報を教えてくれた。
海賊船の隻数は更に絞り込めたらしく、帆船も含めた6~8隻。
細かい船型についての情報もあったが、特に厄介な船が2隻いた。
その船が民間航路に投入されたとき、キャメロットの船会社や船長達の間で『あんな船で採算がとれるのか?魔種族はやはり魔法が使えて、それで採算がとれるようにしているんじゃないのか?』と話題になった、北オルク汽船のキルシュバオム型貨客船。
足がかなり速く、確か最大で16ノットは出るといわれていたはずだ。
もっとも速力重視のクリッパー型船体で、積み荷はあまり積めなかったらしく、それがさっき説明した低評価に繋がっていた。
速力の数字だけみれば俺の『愛しのエルフ号』と同じとは言え、こっちは風次第で向こうは汽罐。
さらにそいつに最低でも2門、最大で4門の火砲を搭載しているらしい。
ぶっちゃけ分が悪い、悪すぎる。
1回目の航海は本当に運が良かっただけのようだ。
ただマストの高さはこちらの方が高いので、1回目同様に先に発見して進路を変えて逃げるしかない。
武器をどうしてつまなかったのかって?
素人がそんな物を積んで打っても当たることはねーし、そもそも武装しているという理由で問答無用で沈められちまうかもしれねぇ。
それにそんな役に立たない物を積んで船を重くするのなら、少しでも積荷を増やした方がいい、そっちの方が白エルフの嬢ちゃん達のためになると考えたわけさ。
で、結局ミスターMはログレスに戻ることはなく、電信だけで俺のアイディアは採用されたそうで、すぐに保険会社の代理店へ行き、ミスターMが結んだ現在の保険を解約して、改めて俺が北星大陸行きの船として自腹で保険を結びなおした。
で、その後はミスターMは港でエルフィンドに行く他の船を探すふりをしていた。
影ではもちろん2回目の航海のための積荷の手配をしながらだけどな。
ちなみにもちろんエルフィンド行きを受けいれる船はなかった。
なにせ『保険金を自腹の上で、積荷代金は普段の3倍程度』だからな。引き受けられるはずがねえ。
そうしていると、俺も含めてうちの船の船員達に近づいてくる奴らが沢山で始めてきた。
もちろん羽振りが良くなったからたかりに来ている連中が大半だったらしいが、ミスターMの話しだとオルクセン側が探りを入れてきているらしかったし、俺に近づいてきた奴は間違いなく次のエルフィンド行きの航海への出発はいつかと探りを入れに来ていたし、船員に話を聞いても、間違いなく探りを入れてきているような話しがいくつもあった。
2回目の航海では積荷は公式では北星大陸宛の『印刷機』を大量に積み込んだが、実際には全部『プレス機』と『機織機』、それらの動力源となる『蒸気機関』と『発電機』さ。
そうだよ。
銃弾の薬莢や大砲の薬嚢を作るための機械さ。
肥料は・・・硝石は北星大陸行きということで積まなかった。
なにせ火薬の原料であると同時に肥料の原料である硝石は南星大陸が大産地だからな。
それなのに遠いキャメロットから肥料を積んでいくなんて馬鹿でも本当に行き先がわかっちまう。
まぁ硝石以外の肥料だといって積む手もあったが、バレバレだとしても少しでも誤魔化さなきゃならねえからな。
で、2回目の航海は北星大陸に行きに偽装するわけだから、港を出てから北上せずにだいたい370海里(約680km)ほど南下。
本島を越えてから西へ転進して270海里(約500km)進んでから、いよいよエルフィンド行き航路へ。
一気に約650海里(約1200km)ほど北上してから東進。
ここからは前回航路とほぼ同じと言える。
460海里ほど(約850km)進んでから、前回と同一点で南下開始。
南下距離は230海里(約420km)程を見込んでいたんだが、出発数日前になってエルフィンド側から前回使った港をはじめとした寄港予定先の港の沖合に海賊共が張り付いているらしく、場所を変えられたいとのことだった。
ミスターMからそれを聞かされたときは、港湾設備や鉄道がしっかりと整っているベレリアンド半島東海岸のタスレンか西海岸のノアトゥンに向かわされると思ったが、実際に指示されたのは半島北端部近くの湾・・・入り江だった。
そこで艀を使って荷揚げするとのことだったが、ミスターMと2人してベレリアンド半島の地図をにらめっこするが、指定された入り江近くにはまともな町すら記されていない。
本当にここでいいのかと思ったが仕方ない。
ただ艀での荷揚げは時間がかかりすぎる。
前回は書類手続きは全て後回しでとにかく一刻も早く約船から岸壁に降ろすと言うことで後先考えずに降ろしまくったから、なんとか8時間で済んだだ・・・正直あり得ねぇ速さだった。
見た目は綺麗か可愛い女だが、その中身は厳ついむさ苦しい沖仲仕と全く変わらない白エルフ達の沖仲仕や、手伝いに来た一般市民の白エルフ達の怪力のおかげでなんとかなったおかげだ。
あとうちの連中も、白エルフ達にいいとこ見せようと張り切りまくったのもあるかもしれん。
普段よりずっとデリックの操作と積み込みが早かったからな。
で、今度は岸壁がないと。
前回の岸壁もうちの船がギリギリつけられる大きさだったし、そもそも水深もギリギリだった。
欲張って100万ポンド(約500トン)積み込んでいたら拙かったかもしれない。
なので今回も積み込むのは前回同様90万ポンド(約408トン)程度にすることにし、2台ほど『印刷機』を諦めることにした。
そして前回の航海から3週間たたないうちに2回目の封鎖突破に向けて出航した。
まず平均して12ノット(時速 約22km)で丸1日南下して本島南方に抜けてから西進。
平均10ノット(時速 約18.5km)ぐらいだったと思うが、丸1日進んでから北に転舵。
風上に向かって約650海里(約1200km)程を、上手回し・・・ジグサグに進んで平均6ノット(時速 約11km)で5日ほど掛けて本島北側に抜け出たが、この時点でぐるっと1周した感じだな。
で、いよいよエルフィンド目指して東へ転舵。
ここからは前回の航路とほぼ一緒。
460海里(約850km)を平均10ノット(時速 約18.5km)で2日ほど進んでから、見張りを強化してから南下開始。
前回よりも風が強い上に船員達が上手く風を掴んでくれたおかげで15ノット(時速 約28km)も『愛しのエルフ号』は出してくれた。
だが目的地の湾まで残り120海里(約222km)ぐらいに来たときにいよいよ海賊船に見つかった。
ただ距離はまだかなりあった。
マストトップの見張り所からだけでなく、ブリッジにいた俺からも船体がすぐに見えたので、双方の距離は約6海里(約11km)程度。
ただし本船のほぼ真っ正面。
船体の形ははっきりとは見えないが薄く煙も見えるので機帆船であることは間違いなし。
当然そんな距離じゃ信号旗はもちろん見えないし、喇叭の音も届かない。
汽笛ならなんと届いただろうがな。
だから近づかさせなければ向こうの指示命令を聞く必要も無い。
なので逃げの一手だが、進路を変えても向こうもこちらに合わせて進路を変えてくる。
流石にそんなに話がうまくいくもんじゃねえ。
だがこちらも目的地を悟られないよう、相手を避けるような動きで目的地からずれるような航路をとる。
元より目的地に馬鹿正直に真っ直ぐ進んでいる航路じゃなかったから、振り切りさえすれば何とかなるはずだ。
そうしているうちに距離がつまり船体もはっきりと見えてくる。
機帆船で間違いないが、帆は下ろしている。
速力は8ノット(時速 約15km)程。
幸いなことにキルシュバオム型貨客船じゃない。
もっとずんぐりとした船だ。
あの船体では速度はどんなに出しても12ノット(時速 約22km)ぐらいが限界だろう。
サイズはこちらとほぼ同じぐらいか?
火砲の類いは見えないが、甲板前方の不自然な位置に大型の梱包木箱が見えるし、双眼鏡のおかげでブリッジ後方に置いているボートに人影がいるのもなんとか見えた。
つまり最低でもあの2つが砲だな。
なら上手くやれば逃げ切れる。
こちらが進路を何度も変えているのに相手はそれに合わせてどんどん近づいてくる。
近づいてくるなっつーの。
そうしているうちに双眼鏡のおかげで相手をしっかりと確認できているマストトップにいる見張りから
「ロヴァルナ旗を掲げています!続いて信号旗あげつつある!まずK(キロ)!・・・さらに続いて数字!読みます!1・・・6・・・4・・・8!」
それを聞いて一等航海士が呆れたように
「時刻合わせですか・・・既に知れ渡っている手だというのに・・・何を考えているんでしょうか?」
と言った。
俺は隣にいた船員から望遠鏡を借りて覗いてみるが、望遠鏡の倍率ではまだ信号旗は読み取れない。
あいつら信号旗をあげる気が早くないか?
焦ってねーか?
この距離じゃ普通は見えんぞ。
素人か?間合いが遠いぞ。
そんなに早く揚げたら時刻合わせと思われないだろうにと思いつつ、望遠鏡を返して双眼鏡で見直すと辛うじて信号旗が確認できる。
確かに『K』の信号旗を・・・『本船は貴船と連絡を取りたい』を掲げて、別の竿に数字旗を揚げている。
俺は双眼鏡を降ろしつつ一等航海士に
「これで逃げればエルフィンド船。応答すれば他国船と考えているんだろう」
と答える。
向こうもなるべく手荒なことはしたくないだろうからなと思いつつ
「相手信号は全部無視!進路そのまま!!」と指示を出す。
どんどん相手が近づいているが、こちらは応答しない。
船員達も見える範囲ではびびっている奴はいない。
いいぞ。
そうしているうちに望遠鏡でも楽に相手が確認できる距離になったところ、相手がとうとうロヴァルナ旗を下げて、オルクセン海軍旗を・・・戦闘旗を掲げたという見張りが声が降ってくる。
こちらでも確認できた。
続いてそれまで掲げられていた信号旗が降ろされて『L』の信号旗が掲げられる。
「信号旗L(リマ)!正面オルクセン国籍船、あげる!停船命令!!」
同時に見張り員の声も降ってくる。
「解答旗、半揚しろ!」
本来ならば、既に信号を読み取っているのだから解答旗は全揚して『了解した』とすべきだが、あえて時間稼ぎで『あなたの信号は確認したがまだ読み切れていない』と言う意味の解答旗半揚にする。
時間稼ぎだな。
距離が更に詰まる。
しかしこちらはまだ半揚のまま。
そんときは『相手はいらついているだろうな(笑)』と思っていたよ。
いらついてきたせいか、まだ距離がそこそこあるのにとうとう手旗信号も送り始めてきた。
船名を出して『こちらオルクセン海軍。貴船の臨検をおこなう。停船されたし』
もちろん最初のうちは無視(笑)。
なにせ低倍率の望遠鏡じゃまだはっきりと確認できない距離だったからな(笑)。
ただあまりにも可哀想になってきたので、双方の距離が1海里(約1.85km)を切った時点でようやく解答旗を全揚にしてやったら、向こうが速度を落としはじめたので、こちらも手空きの船員をマストに上げさせて帆を下げて停船するふりだけしてやった上で、速度そのままの15ノット(時速 約28km)で、ほぼ止まりかけた相手の脇を走りさってやったぜ(笑)。
あのときの呆然としたり、怒っていたり、悔しそうなオークやコボルト、ドワーフたちの顔が顔忘れられないぜ(笑)。
もちろん色々な叫び声を上げたりもしていたな(笑)。
で、更に煽るために『U』『V』『9』の信号旗・・・『本船は自由航行中』を掲げさせて、続いて『U』『W』の信号旗・・・『貴船の安全な航海を祈る』を掲げた時点で、相手がとうとう切れたらしく砲の偽装を解いて1門をこちらに向け出したと知らされたので、艦尾の船員に手旗信号で
『ワレヒブソウ。ワレキャメロットセンセキナリ。ウテバコクサイモンダイ。ワレヒブソウ。ワレキャメロットセンセキナリ。ウテバコクサイモンダイ』
を繰り返し発信させたが、その手旗信号を全力で無視して打って来やがったよ(笑)。
中立国の船に打つなんて国際問題だぜ(笑)。
もちろん威嚇のためだろから全然遠い位置に着弾したので、こちらとしては無視無視(笑)。
続けてもう一発撃ってきたがこれも明らかに当てる気のない威嚇射撃とバレバレ。
当てる気の砲撃だったら、当たらずとも止まったかもしれんが威嚇射撃バレバレの砲撃で止まるいわれもねぇし、相手が3発目を用意しているうちにこっちは有効射程外。
この距離であの砲で当たるわけねーだろうと思っていたら、3発目は今まで以上見当違いの場所に弾は落ちてザマーミロだぜ。
で、向こうの船が再びペラを動かして、さらに舵を切って舳先をこっちに向ける前にこちらは水平線の向こう。
その間にミスターMから渡された海賊共の資料を確認して、今回遭遇した奴はやはり10ノット(時速 約18.5km)ぐらいしかでないと記されていたので、念のために相手は12ノット(時速 約22km)出る想定として、こちらがこのまま神様の恩寵で15ノット(時速 約28km)を維持できるとしたら、その差は3ノット(時速 約5.5km)。
既に約7海里(約13km)程度は離したが、まだこちらのマストは向こうから見える距離だろう。
このまま1時間もすれば距離は10海里(約18.5km)に広がるし、陽が完全に落ちるから逃げ切れるだろう。
ただ問題は魔種族が夜目が効くということだ。
どのぐらい夜目が効くかはわからんが、13海里(約24km)は離さないとマストは水平線の上に見えるはずだ。
13海里(約24km)引き離すためには後2時間いるが、風が弱くならなずに船足が維持できるという都合のいい想定だ。
なので、もう1つ手を打つことにした。
陽が落ちてから船内の灯りを全て落として無灯火航行にし、さらにキャメロットにいるうちから用意していた『Dボート』と名付けていた、子供が乗るようなサイズだが舷側だけは高く改造させて上で、大人の身長程度の低い1本マストに簡単な帆を張ったボートの低いマストに煤がこびりついて、光があまり漏れないカンテラを固定して火をつける。
煤のせいで光りはあまり漏れないが見えないことはない。
そして2時間程度はついたままの量の油を入れてある。
すぐに沈むなよと祈りながら船足を落とさないまま左舷から海に降ろし、無人のDボートを切り離しつつ、右30度ほどで舵を切ってDボートから離れていくと上手く浮いてれた上に風を受けて進んでいくのがうっすらとした灯りで確認できたが、すぐに暗くて見えなくなる。
『頼んだぞDボート・・・』と祈りつつ、30分ほどそのまま進んでから舵と帆を操作しながら半径10海里(約18.5km)の半円を描くようにしてぐるっと回り、今度は目的地まで一直線に進む進路にした。
少しするとかなり遠くから微かな砲声が何発も聞こえた。
勇敢なるDボートよ、安らかに眠れ・・・。
ちなみに次に海賊船にあって逃げ切れそうになかったら速やかに停船して臨検を受ける所存だったぜ。
なにせもう打つ手がなかったからな。
だが幸いにもその後海賊船には遭遇せず、140海里(約260km)ほどを、少し速度が落ちて平均13ノット(時速 約24km)ぐらいの約10時間で走りきり、翌朝の5時半頃に指定された湾に着くと、合図をするまでもなく、あちこちからわらわらと可愛いか綺麗かどちらかの白エルフ達がこぐ手こぎカッターが沢山やって来たので慌てて帆を下ろして、船足を止め、その曳舟になる手こぎカッター達と愛しのエルフ号をロープで結び、6時半頃には引っ張りはじめていき、湾の奥深くにある、風が回りの地形に遮られている上に波も殆ど無い静かな入り江まで連れて行かれた。
まぁそこまで行ってびっくりよ。
木製の仮設だったがえらく立派な桟橋が出来ていたんだ。
そこにも100名近い白エルフ達・・・服装からいって、沖仲仕や兵隊、一般市民が待機していて、砂浜から少し進んだ位置には馬車も沢山待機していた。
だが流石に水深が浅く、木製仮設桟橋に『愛しのエルフ号』をつけることは出来ないってことで、碇を降ろして予定通りの艀荷役。
ついさっきまで曳舟だった手こぎカッター達が艀になって、早速マストをデリックにしたり、舷側から直接ロープで下ろしたりと船降ろしをはじめたが、波や風は殆どなかったがやはり効率が悪い・・・というか艀の数が足りない。
さらに分解されているとはいえ、どうしてもそれぞれの荷が重い。
仕方ないので何人かの沖仲仕に船に乗ってもらったり、こちらの救命ボートも艀代わりに提供したが、それでも船降ろしは翌日間の朝まで・・ほぼ24時間かかった。
なお、俺はその間全く休ませてもらえずずっと書類仕事。
分解してある機械類のためか前回ほどゆるくなく、各梱包ごとに白エルフの担当者と書類と照らし合わせていた。
これも時間がかかった理由だな。
で、砂浜をみれば桟橋にあげた荷物を苦労しながら馬車の元まで運んでいるのが見えたが、馬車の数も到底足りるような見えなかったし、馬車はなんとか走れる道だろうが、無事に目的地まで辿りつけれるのだろうかと心配になったが、ここから先は向こうの仕事と割り切る。
で、船降ろしが終わった後は全員俺も含めてくたくただったので、白エルフ達には悪いが陸の作業の手伝いはせずに2日ほどゆっくりと休ませて頂いてから出航。
まだ殆どの荷物が残っているような見える砂浜から目を逸らしつつ、一旦手を休めた白エルフ達の盛大な見送りの中、手こぎカッター達がダグボート役をまたしてくれて、入り江の外、湾の外まで引っ張っていってもらい、すぐに総帆展帆して半島の西へでてからは斜めからの風を受けて、前回同様に上げられるだけの速度で進路を南西にとって、オルクセン西部海域を掠めるように進んでいき、アルビニー・グロワール方面へ遁走さ。
ちなみに帰りは全く海賊船らしい船には遭遇しなかった。
運が良かったんだろうが、そん時は逆に不気味で怖かった。
そして入り江をでてから9日ほどでキャメロットの港に帰ってきたわけさ。