封鎖突破船   作:koe1

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いよいよ5回目の封鎖突破となります。


封鎖突破5回目

4回目の封鎖突破が成功して、『黄金樹号』と『白銀樹号』はそれぞれ別々な港に向かったことにして、『白銀樹号』は出発点である造船所近くの本島東側の港に入港した。

すぐに整備点検を名目に造船所の連中と『造船所の連中に変装した連中』がやって来て、整備点検聞き取りの嵐。

なにせこいつは武装を積んでいないとはいえ、元々は海軍が机上の空論を検証しようとしている、いわゆる実験艦。

そして船長は『元身内』。

海軍の連中、容赦ない聞き取りだったぜ全く。

今回は『発見され敵艦と接触した通報艦が敵艦を振り切る』という想定での聞き取りになっていると思うんだが、どうも海軍連中としてはまだ満足いかねぇみたいだな。

端的に言えば『もっと敵艦と追いかけっこしてこい』という感じだったな・・・。

 

で、早速5回目の封鎖突破先としてノアトゥンがまた選ばれた。

理由としては荷役設備や鉄道が整っていることと、とうとうエルフィンド海軍が文字通り全滅したせいで、これまでどんなにベレリアンド半島に近寄ってきたとしても水平線にギリギリ見えるかどうかだった海賊船共がもう堂々と見える範囲でうろつき始めたという話しがミスターMから伝えられたからだ。

今までは沿岸監視で発見されてしまうと、電信や白エルフの魔法であっという間に通報されて、隠れているエルフィンド艦艇が出撃し、商船改装程度の海賊船はあっという間に沈められてしまう恐れがあるからだ。

なのでベレリアント半島からだいたい50~100海里(約93~185km)ぐらいの海域をうろちょろしていることが多いらしく、どんなに離れても200海里(約370km)ぐらいで、俺達はだいたい75~180海里(約139~約333km)の間で遭遇していた。

しかし自分達を襲うエルフィンド軍艦はもう存在しない。

なら港からはっきりと見える場所まで近寄っても問題ない。

つまり俺達からしてみるとある程度の防衛力が無い港でないと逃げ込んだとしても追いかけられて沈められる。

1回目や2回目のような防備設備が全くない小さい港や湾内なんてあり得ない。

そして残り少ない港の中でノアトゥンには門数は少ないが沿岸防衛用の重砲が設置されているとのこと。

まぁ重砲といっても軍艦基準では豆鉄砲に近い24ポンド砲(おおよそ155㎜前後の砲)だそうだが、装甲のない商船改造の海賊船程度には十分だ。

なので逃げ込んでしまえば、よほどの根性ある艦長以外なら諦めて外洋に戻って、港の外でこちらが出てくるのを待ち伏せる。

 

そして確か出航は3月末だったと思ったが、今度は船倉にはたっぷりと野砲の砲弾を、空いている船室や船内通路、甲板には小銃弾をたっぷりと積み込んで港を出た。

もちろんミスターMと組んで事前に大量の偽情報を流し、最後に『白銀樹号』と『黄金樹号』2隻共にそれぞれの港から出航したという欺瞞情報を流した上でだがな。

実際には1隻なのにな(笑)。

航路は基本的には10ノット(時速 約18.5km)でノアトゥンまでの真っ直ぐな航路をとると距離にして約370海里(約690km)だから、海賊達に一切遭遇しなかったとしても38時間、感覚としては2日間の航海だ。

そして欺瞞情報は、繰り返しだが出航一週間前からいろんな内容で流していた。

出航日予定日を含めてな。

さてさて、その情報が海賊船の諸君に伝わったとして、彼らはひっかかってくれるだろうか。

居もしない2隻目の封鎖突破船を探し回って疲れ果ててくれるだろうか?

 

そんな打てる手は全て打った上で出航し、10ノット(時速 約18.5km)で6時間ほど東に真っ直ぐ進んでから進路を北北西にとって日が落ちてから本島北部に逆戻り(笑)。

欺瞞情報のとどめを刺す、最後のもう一手という奴だ。

人気が無い、外からは見えにくい入り江で3日ほど隠れて停泊した後、夜になってからこっそりと再出航。

海賊船達にもしこちらの予定が伝えられたとして、その通過予定日よりも1~2日程度の遅れなら集中力はなんとか維持できるだろうが、通過予定日よりも3日もたってしまえば、既に突破されたか、別な海域を航行していると思うだろう。

艦長はそう思わなくても水兵達はそう思う。

つまり見張りがおろそかなるというわけさ。

要は肩すかしをさせようという奴だ。

もちろんそれだけじゃ突破はできないだろうから、今回はとっておきの物を3つほど艦尾に強引に搭載した。

本来ならしっかりとした改造が必要なんだが船匠担当の船員に頼んで、積荷に紛れて積み込んだ物を甲板で組み立てて、船尾に搭載したという奴だ。

海賊船連中に効きますようにと、神と白エルフ達に祈っておく。

 

そんな感じで海賊船の諸君が油断してくれていますようにと祈りつつ、隠れていた入り江からノァトゥンまで約423海里(約785km)なので、海賊達に一切遭遇しなかったとしても10ノット(時速 約18.5km)で約43時間。

感覚としては丸2日間の航海になる。

昼間の見張りは人間族の野郎共だけでおこなっているが、夜は無灯火航行ということもあり、他船との事故を防ぐためにも、海賊船の魔種族の夜間見張りに対抗するためにも夜目が利く白エルフの淑女の皆様にお願いしている。

ちなみに彼女たちは貴重な機関員であるので、代わりに野郎共を機関員として釜焚きに・・・炭投員に投入したんだが・・・かなりきついので手を上げる奴はさほどいないだろうと踏んでいたのだが、俺が甘かった。

暑い…いや熱いから薄着の上、汗まみれの白エルフと一緒に仕事が出来るということで凄まじい人気でもう調整が大変だったぜ・・・。

もちろん心の中では機関室配置になった奴のことを少し羨ましいと思ったが口にすることはなかった(笑)。

そんな感じで8時間ほど進んでいき夜が明けると推測で約80海里(約148km)へほど進んでいて、残り距離は約340海里(約630km)なので、何ごともなければ約34時間で到着。

なので明日の夕方頃に着けるが、そんなに世の中が上手くいくはずがないと。

さらに9時間ほど・・・90海里(約166km)程進んだあと少しで日が暮れるというとき、とうとう海賊船らしい船と接触した。

マストトップの見張りから伝声管を通じて

「マスト見えつつある!当船の進行方向正面を北から南へ向けて航行中!」

という報告が入った瞬間に東にとっていた進路を北北西に変針し、速度も12ノット(時速 約22km)に上げ。

すぐに相手のマストは見えなくなったそうだが、念のために進路そのままで1時間ほど進むと日が暮れたので、見張りの主力を白エルフ達と交代。

進路は念のために東ではなく北東に変針して海賊船から離れつつ、別な北部の港に向かうようにもとれる進路でありつつもノアトゥンに少しでも近づく進路をとる。

そのまま進路を維持し速力も速度を12ノット(時速 約22km)に保ったまま2時間ほど進んでから10ノット(時速 約18.5km)に落とし、進路をノァトゥンに向かう南西に変える。

雲のせいで月も出ていないので回りは真っ暗。

海賊船も当然灯りを落としての無灯火航行をしているだろうから、俺達人間族だけだと近くに居ても気がつかなかったかもしれないが、白エルフ達のおかげでずっと付近の見張りが効くような状況だ。

幸いなことに海賊船と再接触することなく朝を迎えたが、迂回したのでノアトゥンへの到着は数時間程遅れて夜になりそうだった。

で、夜が明けたので見張りが人間族に再び交代し、同時に釜焚きとして機関室に送り込んだ連中の一部の莫迦共と、同じく見た目は淑女の皆様が休憩なったんだが、汗まみれでシャツが透けて見えていた白エルフ達の身体のすばらしさを仲間に熱く語っていた莫迦がいたが、正直羨ましいと心の底から思ったぜ(笑)。

ちなみに熱く語っていた莫迦は、同じく休憩になった釜焚きの白エルフの1人と殴り合いの喧嘩になって物の見事に負けていたぜ(笑)。

莫迦は文字通り海に叩き込まれそうになったが、俺が葉巻1本を進呈することでそれはすまないが勘弁してくれと頭を下げて我慢してもらった(苦笑)。

 

で日中は幸いなことに海賊船には遭遇しなかったんだが、あと3時間ほどで日が暮れるというときにとうとうキルシュバオム型貨客船とまた遭遇しちまったんだ。

真っ正面からこちらに向かってくるマストが見えたと報告があった瞬間に進路を北に変えたんだが無駄だったようで、16ノット(時速 約30km)で追跡してきて1時間半ほどで信号旗が楽に見える距離まで詰めるとすぐに信号旗の『L』を上げて停船を指示してきたが、こちらは応答旗も上げずに12ノット(時速 約22km)で逃げ続ける。

そうしている内に差はどんどん詰まってきて、とうとう手旗信号も望遠鏡や双眼鏡を使えば楽に見える距離になったら、繰り返し

『ワレ、オルクセンカイグンホジョジュンヨウカン、ゼーアドラー。テイセンセヨ。シカラザレバゲキチンス(我、オルクセン海軍補助巡洋艦ゼーアドラー。停船せよ。しからざれば撃沈す)』

と送ってきたので、いつも通りに

『ワレ、キャロメロットセンセキ。ワレ、ヒブソウ。ワレ、ジユウコウカイチュウナリ(我、キャメロット船籍。我、非武装。我、自由航海中なり)』

と繰り返し手旗信号で発信させる。

まだ左舷か右舷、どちらに来るかわからないので船名はまだ名乗らないでおく。

そうしているうちにとうとう、こちらがキャメロット船籍だといっているのに打って来やがったが、腕の良いこと良いこと!

2門で交互に打ってきて、こちらの船体を挟んで弾着させやがる。

いつでも当てられるというプレッシャーを掛けて来やがった!

しかし無視!

1発2発当たってもこの船は簡単には沈むまねぇ!

この波なら、元々通報艦として建造されたときに船体側面の一部にベルトのように着けられた装甲帯がしっかりと波の中に入っているから、装甲帯が波の上にある時に発生する、装甲帯と海面との隙間の装甲が全くない部分に砲弾が命中して大穴があいて、そこから大浸水して沈没するっていうこともない!

煙突も4本あるから最悪1本に被弾しても何とかなる!

というかどうせだったら、船体側面そのものが完全に装甲になっている『装甲艦』の方が良かったな!

『装甲通報艦』!滅茶苦茶格好いいじゃねえか!

船足は滅茶苦茶遅そうだがな(笑)!

となると装甲と足の速さのバランスをとった、今の無装甲船体の側面の一部にだけに装甲帯を着ける『装甲帯巡洋艦』方式の防御は正しいのかもしれねぇな・・・

あ、でも真上から装甲のない甲板に砲弾が落ちてきたら船底まで突き抜けるかもしれないからまずいか…いやそもそも砲弾が真上から落ちてくるか?

と半ば現実逃避のようなことを考えつつ、たしか『ゼーアドラー』って、オルクセン海賊衆の中でもトップスコアだと推測されている奴だよな・・・というミスターMに渡された資料のことも思い出しつつ、真っ直ぐ海水のシャワー浴びつつ逃げていくが、とうとう距離が半海里(約900m)まで縮まったので、白エルフに魔法を使うように指示し、

『トウセン、テキノツイビヲウケツツアリ。ワレニカマワズトツニュウサレタシ!(当船、敵の追尾を受けつつある。我に構わず突入されたし!)』

と、まだ追いつかれて同航状態になっていないので、船名を出さないようにさせて、居もしない僚船に呼びかけさせ続ける。

相手が少しは迷ってくれますように祈りながらな。

しかし相手は少しも迷わず真っ直ぐこちらに近づいてきて、どっからどうみても強引に接舷乗船を仕掛けてくるような進路をとってきたので、ここで初めて左に大きく舵を取る。

前の航海でもキルシュバオム型貨客船とダンスを踊ったが、舵の効きはこっちの方が上だからたっぷりと隙が出来るまでダンスを踊ってやるぜ!

ん?隙が出来なかったらどうしていたのかって?

17ノット(時速 約31.5km)で逃げるだけさ(笑)。

 

その後は左舷側から追いつかれて海上でのダンスとなったので、以後は『白銀樹号』と名乗ったが、情けないことに俺のミスを突かれて右舷側に回り込まれちまったので右舷側に書いていた『黄金樹号』っていう船名をはっきり見られちまったよ。

こちらからでもゼーアドラー号の連中が指をさしていたり、大爆笑していたり、怒っていたりする様子が丸見えで、もう恥ずかしかったぜ(苦笑)。

なので、その後は魔法を使うのをやめさせて、引き続き12ノット(時速 約22km) VS 16ノット(時速 約30km)でダンスを踊り続けたが、舵の効きはこちらが上でも速力は向こうの方が上。

なので油断するとあっという間に船体を近づけさせて強引にこちらに着けようとしてくるのでとにかく回避する。

少しでも接触したら水兵を強引に接舷移乗させて制圧するつもりだったんだろう。

正直、打ってこないのは銃弾や砲弾を山積みのこちらとしては助かったと言える。

砲弾は幾ら信管を外して載せているとはいえ、完全に爆発しないわけじゃないからな。

え?なのにどうして最初の当てる気満々の威嚇射撃を恐れなかったのかって?

・・・銃砲弾を積んでいたことを忘れていたんだよ(苦笑)。

 

そうしている内に夕暮れとなり陽が沈む直前に双方の判断ミスで直角に衝突…ゼーアドラー号の脇腹にこちらが突っ込みそうになり、双方ともに後先考えないで全力回避。

そのおかげで半海里(約900m)引き離すことができたので、12ノット(時速 約22km)のまま夜陰に紛れて逃走を図ろうとするが、見張りから追尾しているゼーアドラー号の砲が再度こちらを向きつつあると報告が来たので、いよいよ念のためと船尾に準備していた物を使うことにした。

「船尾積荷投棄!!」

でかい声でそう命じると、船員が何人か船尾に行き、船尾積荷の梱包を解く…といっても簡単にばらける様に組んである梱包なのでアッという間に梱包に木箱がばらける。

そしてその中にあるのは機雷!!…の実物大模型が3つだ。

積荷リストにもちゃんと『販売見本用実物大機雷模型 3個』と記してある。

もちろん火薬なんて入っていないが、見た目と大きさだけは機雷そのもの!!

それを船尾から船員たちが力任せに投下…いや棄てていく!!

本物の機雷ならこんな船からの投下はできないらしいが、それに相手が気が付かずに引っかかるか!?

ちなみに後ほど問題になったら

『追尾から逃れるために船体を少しでも軽くして速度を上げるために致し方なく積荷を投棄した。船員にもそう指示したし、そもそもあれは販売見本用の実物大機雷模型で爆発なんてしません。火薬は入っていません。積荷リストにも販売見本用実物大機雷模型と記してあります。何か問題でも?』

と言い張る所存だったし、航海日誌にもそう書いたぜ(笑)。

ただ模型でも実物大なので衝突すると危険なのかもしれないので、『U』の信号旗をすぐに掲げさせて『貴船の行き先に危険あり』とゼーラドラー号の連中に知らせてやったぜ(笑)

で、ゼーラドラー号の連中はこちらが『販売見本用実物大機雷模型』を投棄したのにはしっかり気が付いていたようで、こちらが『U』の信号旗を揚げ終わるか否かに大きく右に舵を切り、棄てた販売見本用実物大機雷模型を回避しようとしながら、律儀にも『応答旗』を揚げやがった。

練度、高すぎだろう。

そのあと、こちらを追わずに海面に向けて盛んに砲撃をしているという報告が入ったので、機雷を本物と誤解して爆破しようとしていたらしい。

「引っかかった!引っかかった!」

俺はブリッジにいる連中と大喜びした後、伝声菅で機関室にも伝えたら機関長も大喜びだったぜ(笑)

そうしている内に完全に陽が落ち、ゼーアドラー号との距離もだいぶ開いたので、速力を17ノット(時速 約31.5km)に上げて、無灯火で一路ノアトゥンに直進だったぜ。

 

で、その後は新たな海賊船に捕捉されることはなく、ゼーアドアー号に追いつかれることもなくノアトゥンには真夜中についたので、湾内を微速前進しながら白エルフ達に打たれないように発光信号で到着したことを呼びかけていたら、すぐに発光信号で反応があって

『オカエリナサイ。オソッカタノデシンパイシタ。ナオ、ナンジハオウゴンジュゴウ、ハクギンジュゴウノドチラナルヤ?(お帰りなさい。遅かったので心配した。なお、汝は黄金樹号、白銀樹号のどちらなるや?)』

と嬉しい返事が来たので

『タダイマ。ワレ、ハクギンジュゴウナリ(ただいま。我、白銀樹号なり)』と返した。

真夜中にもかかわらずすぐに汽船ダグボートが2隻やってきて1時間ほどで岸壁に据え付けてくれてから、荷揚げがすぐに始まった。

こちらももちろん手伝ったが、たった2日半の航海だったが船員たちの疲れがひどかったので、夜が明けてからは船のデリック操作のみを各員休憩を取りつつ交代でやって、あとは全部白エルフの沖仲氏や税関職員達に丸投げした。

もっとも書類仕事や船体や機関の整備点検がある俺と一等航海士と機関長を除いてだがな。

もちろんというとあれだが、運んできた銃砲弾は倉庫に入れられることなく、すぐに有蓋貨車やゴム引き布や革製の防水シートで覆われた無蓋貨車に積み込まれていった。

そして荷揚げは翌日の昼過ぎには終わったが、前日の夕方に沖合に船が見えたという報告が入り、朝になっても水平線上を行ったり来たりしているとのことだった。

ただはっきりと船体が確認できない距離なので、1隻なのか複数隻かまではわからないということ。

完全にこちらが港から出るのを待ち伏せているぜ…

こっちに軍艦がないのにノアトゥンに近づかずに、水平線ぎりぎりに姿を見せているということは隻数を把握させないためだな。

プレッシャーをかけているぜ…。

俺と一等航海士と機関長、さらにノアトゥンの防衛部隊指揮官と善後策を練る。

防衛部隊指揮官から夜陰に紛れてノアトゥンに残存している小型捕鯨船と共に出港し、小型捕鯨船をおとりにするという案が出されたが、俺が

「軍人以外を戦争に巻き込むのは絶対反対だ」

と言って強く反対すると全員が無言になって俺を複雑な表情で見つめてくるので、どうした?と思っていたら機関長がおずおずと

「船長…あなたも軍人ではないのですが…」

と言われ、自分でも呆然としちまったぜ。

怪我して辞める前の若いころに戻っちまっていたぜ(苦笑)。

 

結局は夜陰に紛れて単独で出港することにし、拙ければノアトゥンに逃げ帰ってくるので、その時はすまないが24ポンド砲で助けてくれとノアトゥンの防衛部隊指揮官お願いする。

ノアトゥンの防衛部隊指揮官は満面の笑みに若干の覚悟を決めた顔で快諾してくれた。

いい女だな。

その後、出港まで船長室で一等航海士と共にこれまでの海賊船との遭遇海域と時間から何らかの法則性がないかと頭を悩ましていたところに機関長がやってきて、機関並びに機関部異常なしと報告した後、俺の宝物の二角帽をじっと見つめてから

「船長、前から思っていたのですが、失礼ですがあの二角帽はエルフィンド海軍の物ではないでしょうか?」

と尋ねてきたので、その通りと答えた後に、恥ずかしい手に入れた時の説明をすると、

「手に取ってよろしいでしょうか?」と言ってきたので、もちろんだと言いながら二角帽を手に取り、機関長に手渡した。

機関長は手に持った二角帽をまじまじと見つめつつ

「どなたにもらったかはご存じないのですよね?」

と尋ねてきたので、

「おう。偉そうな士官・・・二角帽を被っているからには士官で間違いないが、さっき言ったとおり何を自分が口にしたかも覚えてねぇ。ただ大笑いされてこの帽子をもらって、船長か艦長になったら会いに来いといわれたのだけは覚えている」

と言うと、この二角帽は私の姉様の物だと思いますと言ったので

「お!まじか!それじゃ今度あわ・・・」

と何も考えずに口にしてしまった後、とあることに気がつき、途中からは続けられなかった。

機関長はそんな俺をみながら

「姉様は・・・ミリエル・カランシア少将は・・・ベレリアンド半島東方沖海戦(オルクセン側名称 キーファー岬沖海戦)にて、乗艦していたリョースタと共に名誉の戦死を遂げました・・・」

と静かにいった。

俺は天井を見上げちまった。

一等航海士は神への祈りの言葉を捧げてくれていた。

当たり前だよな。

考えれば当たり前だよな。

エルフィンド海軍が文字通り全滅したのに、士官が生き残っている可能性は低いもんな。

あ~・・・死んじまっていたか・・・ガキの俺が何を口走ったかを聞きたかったんだがな・・・

あん時回りで俺のことを大笑いしたり、下げずんだ目で見たり、呆れたような表情を浮かべたりしていた他の士官や水兵達もきっとみんな死んじまっているよな・・・

俺は立ちあがって、金属カップを4つと未開封のキャメリッシュ・ブラックバーンの12年物を棚から取り出すと、一等航海士と機関長にカップを渡してからキャメリッシュ・ブラックバーンを注ぎ、残った2つのカップにも注いだ後、カップを1つ手にとって

「ミリエル・カランシア少将をはじめとする勇敢なる戦死した全てのエルフィンド海軍将兵に」といってから一気飲みした。

一等航海士と機関長も続いてくれた。

カランシア少将、この酒は美味いぜ。

そして残ったキャメリッシュ・ブラックバーンは機関員の白エルフ達でわけて飲むようにと機関長に押しつけた。

さて、気合い入れてキャメロットに帰って、また積荷を運ぶか!!

 

深夜、静かにだが盛大この上ないとしか表現できない白エルフ達の見送りという、実際にあの光景を見ないと意味がわからないと思う見送りを受けながら、『白銀樹号』は応答の汽笛も鳴らさずに静かに汽船ダクボート2隻の支援を受けながらノァトゥンを出航した。

もう下手な進路はとらずにキャメロット本島の港に一直線で進むことにした。

一等航海士と機関長と色々相談した結果、こっちの速力は16ノット(時速 約30km)前後だとオルクセン側に見破られていると判断し、12ノット(時速 約22km)で東進し、海賊と遭遇次第、16ノット(時速 約30km)に増速して突破することにした。

機関長の計算では20ノット(時速 約37km)出しても港まで石炭は余裕で持つそうだが、最後の1枚のカードは隠しておきたいのと、19ノット(時速 約35km)から発生するあの振動が怖いというのもあったので16ノット(時速 約30km)に抑えることにした(苦笑)。

そして日が昇ると同時に進路前方に2隻の船が見えた。

完全に待ち伏せしていやがった。

なにせ2隻ともキルシュバオム型貨客船だった。

俺は天を見上げた後、伝声管に向けて

「機関室、速力16ノット(時速 約30km)にあげ!」

と怒鳴ると、いつも通りゾクッとする機関長の声で

『アイアイ!速力16ノット(時速 約30km)!』

と返事が来た。

前方の左右からこちらを挟もうとキルシュバオム型貨客船が近づいてくる。

そういえば1隻は『ゼーアドラー』っていう艦名だとミスターMから渡された資料には書いてあるが、もう1隻の名称は不明らしく記されていなかった。

ちょっと知りたいから名乗ってくれねーかな、もう1隻のキルシュバオム型貨客船。

 

どんどん2隻は近づいてくるがまだ手旗信号を送る距離には遠かったので、極力使うのを控えていた発光信号で

『ワレ、キャメロットセンセキ、フテキナルハクギンジュゴウ。セイセイドウドウマカリトオル(我、キャメロット船籍、不敵なる白銀樹号。正々堂々まかり通る)』

と送らせる。

しかし相手は2隻共に無反応。

ただマストに停船命令旗である『L』の信号旗を掲げてはいるが、手旗信号も発光信号も送ってこない。

散々色々とやらかしたから、もうまともに相手してくれなくなっちまったようだったぜ(笑)。

とりあえず、停船命令の信号旗を視認したことを向こうに知らせるために応答旗を揚げさせた後、停船命令に対する拒否を示すために『N』の信号旗を別に掲げさせる。

すると向こうの2隻はほぼ同時に『U』の信号旗を・・・先日俺達がゼーアドラー号に対して販売見本用実物大機雷模型を棄てた後に揚げた『貴船の行き先に危険あり』の信号旗を揚げて来やがった。

間違いなく怒っているなあれ。

ここまで距離が詰まっても1発も打ってこないのは、面子にかけて拿捕しようとしていることだろう。

だけどこそ泥は逃げます。

 

俺はだんだんとテンションが上がってきたので、2回目の航海の帰りから船員達が勝手に歌い始め、白エルフ達が加入してからさらに歌詞が追加された歌を歌い始めた。

この歌はルールがあって、1~3番は人間族だけが歌い、4番は白エルフ達だけが歌う。

で4番目でいったらまた1番から歌うんだが、この2回目のループからは全員で全部の歌詞を歌う。

さぁ!今日は船長自らが歌い始めるぜ!!

野郎共並びに淑女の皆様、俺に続けェ!

 

 

今日は小唄を口遊み、特配のラムを飲もう!

なぜなら覚悟が必要だからだ!

命をかけて積荷を届けに行かねばならないから!

握手しておくれ、その白き手で。

元気だったかい、美しいエルフよ。

元気で!かならずまたくるから!

そうとも俺達は、そう俺達はエルフィンドへ積荷を届けるから!

 

俺達の聖なる旗は帆柱にはためいて、

キャメロット船乗りの気概を宣布する。

この聖なる旗の閃くはもはや俺達の意地のみだから!

握手しておくれ、その白き手で。

元気だったかい、美しいエルフよ。

元気で!かならずまたくるから!

そうとも俺達は、そう俺達はエルフィンドへ積荷を届けるから!

 

俺達がオークの前に散ったと沈没の報が届いたら、

可愛いエルフよ、少しでいいから悲しんで欲しい。

愛しいエルフの為にその血は流れたんだと。

握手しておくれ、その白き手で。

元気だったかい、美しいエルフよ。

元気で!かならずまたくるから!

そうとも俺達は、そう俺達はエルフィンドへ積荷を必ず届けるから!

 

私達は命短い人間族と共に積荷を届ける。

風のように速いこの『白銀樹号』で!

ベレリアントの地で戦う同胞達にこの『白銀樹号』で!

手を振って、その美しい手で。

お元気でしたか、綺麗な姉様。

元気で!可愛い妹よ!

そうとも私達は、そう私達はエルフィンドへ積荷を再び届けるから!

 

盛り上がって来やがったぞぉ!!

 

 

キルシュバオム型貨客船2隻の海賊との追いかけっこは・・・海上でのダンスは4時間ほど続いた。

その間、指示や応答するとき以外は全員が船のあちこちで歌いっぱなし(笑)。

後で聞いたんだが、白エルフ達の一部に至ってはわざわざ魔法で歌って海賊船側にもその美声を聞かせていたらしい(笑)。

 

で、こっちは半ば自棄になって歌いながら逃げ回っているんだが、相手は魔法を使っているかの如く、常にタイミングを合わせてこちらを追い込んで接舷しようと繰り返した。

で、これはちょっと莫迦な話しなんだが、俺がとうとうぶち切れて

「くそったれ!あんなに息を合わせて来やがって!奴ら魔法でも使っているのか!」

と歌うのをやめて叫んだら、魔法担当としてブリッジ下に置いている白エルフが歌うのをやめ、きょとんとした顔で俺の方見上げて

「船長、何を言っているんですか?当たり前じゃないですか!」

と心底呆れたように言ってきた瞬間、キルシュバオム型貨客船2隻がどう動くかを常に魔法でやりとりをしているということに気がついたというか、すっかりと忘れていた魔法の存在を・・・本来の魔法は相手と意志を伝えるものだったということを思い出した。

俺はしまった・・・と心の底から思い、こうなったら、後先考えずに本当に最後のカードである20ノット(時速 約37km)以上の速力をここで切って、海賊船を振り切るべきか?と考えていると

「船長、邪魔しますか?」

とブリッジ下の白エルフが場違いに感じるようにのんびりと言ってきたので、俺はすがるような気持ちで「出来るのか!?」と聞くと

「ノアトゥンで教えてもらいました!白エルフ全員でやれば邪魔できます!」

と誇らしげに言ってきたので、機関室に繋がる伝声管に向かって

「機関長!!白エルフ全員で海賊船の魔法を邪魔してくれ!釜焚きには増員を送る!」

と叫ぶように言うと

『アイアイ!!魔法による意思伝達妨害了解!交代が到着次第すぐに実施します!』とすぐに返事来たので、あちこちにそれぞれ繋がっている伝声管の蓋を全部開けて「白エルフ達の身体が見たい、手が空いている莫迦共は機関室へ行け!」と叫ぶと、目に見える範囲でも3人ほどがすっ飛んでいった。

こりゃ10人は機関室に行ったな・・・と思いつつ、さらに5分ほど操舵手と共にギリギリの舵取りをしていると、機関室の伝声管から

『魔法による意思伝達妨害準備完了!』

と機関長の声がしてきたので「直ちに実施!」と短く返すと

『アイアイ!!魔法による意思伝達妨害開始します!』

と伝声管から返事はきたものの、俺達人間族には何が起きているのかさっぱりだったが、すぐに海賊船達の動きが変になった。

間違いなく息が合わなくなってきた。

その隙を突いて海賊船2隻を上手く誘導して、当船含めて3隻仲良く衝突寸前にさせて、3隻共に後先考えずに全力で回避した結果できた間隙をこじ開けるような感じで16ノット(時速 約30km)で西へまっしぐらに逃げ始める。

2隻共にこちらと同じ16ノット(時速 約30km)で慌てて追ってくるが、相変わらず打っては来ない。

その後、さらに2時間ほど2海里(約3.7km)前後の距離を保って、こそ泥と騎馬警官2名の追いかけっこが続いたが、おそらく石炭の残量を気にしたんだと思うが、とうとう2隻共に速力を緩めて追跡してくるのを諦めてくれた。

白エルフ達のおかげで助かった訳だ・・・。

なので翌日にキャメロットに到着すると、俺の財布から特別ボーナスを白エルフ達全員に出して、さらにきっかけを作ってくれた魔法担当の白エルフには、キャメリッシュ・ブラックバーンを1ダースと葉巻も1箱送った。

 

こんな感じで5回目の航海が終わったわけだ。

そして次の航海が最後の封鎖突破となった。

 




魔法による意思伝達 = 魔術通信

キャメロット語に適切な語彙がまだないため、この様な訳になっているという設定だそうです。

船長の甥っ子も似たような訳をつけています(笑)。

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