TS眷属にされたので、勇者よりも先に魔王殺しの聖剣集めます。――ダンジョン使って、のんびりスローライフ   作:あでぃかりん

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第27話・新しい街の話

 

 

 シャナルマト君を回収し、僕たちは山の上の街に到着した。

 

 「え、えっと。この前は掘っ立て小屋ひとつだったよね??」

 

 そこは既に見事に街だった。

 

 「どんな田舎かと思ったが……しっかり街があるね」

 

 シャナルマト君もしきりに感心している。

 

 街の中は、作業員っぽい姿の人たちがせっせと仕事をしていた。

 

 「(リアリス、あの人たちどうしたの?)」

 

 リアリスが心の中で説明し始める。

 

 (ああ、作業員は私が用意したよ。建物は生えるけどそれだけだと不気味じゃん?)

 

 えっと、ここに人を呼んだの?

 

 (いや作った)

 

 ん? 人間を作った!?

 

 (コストは低くないけどね。まあ1人でオークと同じぐらい)

 

 オークって凶暴で軍隊で駆除されるモンスターの代表だったはず。

 

 (だから今必要な最低限だよ。後はどこかから呼び寄せないとダンジョンが破産しちゃう)

 

 あ、破産するんだ、ダンジョン……

 

 僕は改めて街を見回した。

 荷物を運ぶ人。屋根を直している人。道端で何か相談している人。

 

 みんな普通の人間にしか見えない。

 

 「(あの人たちも、オキナさんみたいに普通に考えたりするの?)」

 

 (するよ。じゃないと作業員として使えないじゃん)

 

 そっか。

 

 じゃあ、あの人たちもちゃんと一人一人、人間なんだ。

 

 「(……ちゃんとお給料払ってる?)」

 

 (払ってるよ!? そこ疑う!?)

 

 「(だってリアリスだし……)」

 

 (酷くない?)

 

 少し安心した。

 

 でも、よく考えるとリアリスがお金を払って、そのお金でリアリスが作った人がお買い物して、そのお店もリアリスが作っていたら……

 

 「(そのお金、どこに行くの?)」

 

 (……)

 

 「(リアリス?)」

 

 (あはは、お金って増えすぎると経済が破綻するから、早く移民入れないとね)

 

 「(それダメなやつ!!)」

 

 

 

 

 

 

 「んー、この街どうやって出来たの?」

 

 シャナルマト君が聞いてくる。

 

 「えっと、作業員の人が少しずつ……」

 

 「いや、それにしては道が細すぎる。ここまで大規模な街なのに、街の外から運び込まないわけないよ」

 

 「(リアリス、どうしよう!? いきなりバレかけてる)」

 

 (んー、思ったより賢いね、この子)

 

 「(感心してる場合じゃないよ!)」

 

 僕が頭の中で慌てている間にも、シャナルマト君は街を観察している。

 

 「石材もおかしい。これだけの建物を作るなら、近くに採石場が必要だ。でも来る途中にはなかった」

 

 「そ、そうなんだ……」

 

 「木材も大量に必要なはずなのに、周囲の森はほとんど伐採されてない」

 

 やめて!

 それ以上調べないで!

 

 「それに、この街……」

 

 シャナルマト君が道端にしゃがみ込んだ。

 地面を指で軽くなぞる。

 

 「道も建物も新しすぎる。なのに、これだけの規模がある」

 

 シャナルマト君は立ち上がると、僕を見る。

 

 「アシュ。ここ、どうやって作ったの?」

 

 ふえーん

 

 「(リアリスが何とかして)」

 

 (私が出たらもっと大問題になるじゃん)

 

 「あー、アシュが不安そうだから、これ以上聞くのは辞める」

 

 シャナルマト君は、僕の目を見つめる。

 

 「僕がこの街を治めるなら、時間はあるからね」

 

 「……」

 

 「ふふふ、秘密がたっぷりな街。楽しみだ」

 

 冷や汗がたっぷり出た。

 

 ◆◆◆

 

 テールはリアリスと僕を集めて早速会議モードに入った。

 

 銀色の猫が冷静に言葉を発する。

 

 「現状この屋敷には間諜は居ないね。シャナルマト君の家の間諜は屋敷の家探しに夢中だ」

 

 「まあ当然ですわ、他人から用意された屋敷なんて、何があるか分かったものじゃありませんもの」

 

 テールが紅茶を飲みながら優雅にこたえる。誰がどこにいるかまで分かるのか。リアリスすごい。

 

 「実は会話も拾えるけど、全情報取得は疲れるから、他のことに気を回そう。敵対してるわけでもないしね」

 

 完全に盗聴じゃん

 

 「それで問題点はどうするんですの」

 

 「採石場ぐらいは作れるけど、めんどくさいのは道なんだよね」

 

 道、なの?

 

 「いつからかできたか分からないからです?」

 

 「それもあるけど、私が操作できるのはダンジョンだけなんだ。普通の地面が勝手に道にはならないんだよね」

 

 「しかも、ダンジョンだけ道を太くしたら境界線がバレる。だからあんまりしたくないんだ。道としての効果もないしね」

 

 そうか、リアリスじゃ無理なのか……

 

 「あれ? じゃあ人間が普通に道を作れば良くない?」

 

 「ああ、それならいける。なるほど、街の外に今から人間が新しい街を拡張すればいいんだ。なら人をどう集めるかかな」

 

 良かった。なんかうまくいきそう。

 

 「お待ちください。道も街の拡張も人手がかなり要りますの。そして今国は戦争中なのですわ。余分な人手はどこにありますの?」

 

 テールの指摘に言葉が詰まる。ただリアリスの尻尾は止まらなかった。

 

 「あはは、あるよ。モノとツヴァイの故郷にいた鬼族、どうせまだ戦力にできてないでしょ?」

 

 えっと、どういう事?

 

 「難民に居住区を与え、仕事を与える? 確かに余っていると思いますが纏った数の確保は……」

 

 「てへぺろ」

 

 あからさまに何かをごまかすリアリス

 

 「おい、リアリス! 今度は何やらかしましたの!?」

 

 「纏った数の鬼族の確保?」

 

 「そういう事ではありませんわー!」

 

 テールが机を叩く。

 

 紅茶が少し跳ねた。

 

 「それで、何人おりますの」

 

 リアリスの尻尾が少し止まる。

 

 「……子供含めて145人」

 

 「うわ、やけに正確に人数把握してやがりますわ」

 

 「一晩ダンジョンに泊めたから」

 

 「原因は?」

 

 「言えない」

 

 一瞬、部屋の空気が静まりかえる

 

 「……そうですの」

 

 静かに、折れたのはテールだった。

 

 「何日後に受け入れますの?」

 

 「無理な行軍をしなければ、2週間程度後かな」

 

 僕は内容がよくわかってないから見守るしかない。

 

 でも、多分いっぱい鬼族がいるってことはリアリスが助けた、んじゃないかな?

 

 そう考えると気持ちが明るくなった。

 

 「リアリス、ありがとう」

 

 「……何が?」

 

 「鬼族の人たち、助けてくれたんでしょ?」

 

 「……たまたまだよ」

 

 リアリスは僕から目を逸らした。

 なんだ、照れてるのかな。

 

 「ふふふ」

 

 「……」

 

 テールは何故か頭を抱えていた。

 

 ◆◆◆

 

 「それ、どこの情報? 完全に外交問題だよ!?」

 

 シャナルマト君が今度は頭を抱えている。

 

 何か問題でもあったんだろうか?

 

 「大丈夫?」

 

 「う、うん。ちょっと現実逃避したくなっただけ」

 

 シャナルマト君も大変だな。

 

 「こちらの家の者が誘導しておりますわ。他の街では、おそらく受け入れは難しいと思いますわ」

 

 「あー、もう、わかった。一時的に受け入れる。他の街の治安維持のためにも、王家として纏めないとまずい案件なんだよね!」

 

 「良かった、モノとツヴァイのお友達が増えるね」

 

 「アシュ、全然良くないから」

 

 「?」

 

 (シャナルマト君良いね。王族なんてそんな期待してなかったけど、面白くなりそう)

 

 リアリス、なんかまた悪いこと考えてない?

 

 

 

 

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