超かぐや姫!〜縄文時代から時を超えて〜 作:ウミウシになりたい
できるだけ、かぐやちゃんのその時の心情をどう思っていたのか?とやったんですが…。
最後だけ気になる方は、流し読みで大丈夫です!申し訳ないですね…、こちらの技量不足です…。具体的にはイチマンセンモジイジョウイキマシタ(小言)
それでは、良ければどうぞ!次回は古墳時代かなあと。
私は、夢を見ていた。幾千、幾万、幾億と乞い願ったもう一度という夢。けれど、現実は残酷で………。悪夢を見ていた、いや…夢に幾度も浸りたいと願った日々があった。
「ッ!彩葉ッ!…………夢…かあ…」
「うおっ!………ビックリした…。コメントし辛いな、それ…」
「………あはは、ごめん…ハル…起こしちゃった?」
「気にすんな、こういう時は気分転換だ?だろ?」
全然、気にしていないような素振りを見せるハル。だが、私は知っている。ハルが寝ている中で、静かにうわ言のように時が過ぎないかと…もしくは────………時折寝言で"ハルの願い"を聞くたびに、物騒だったものだ。普段はおくびにも出さないくせに………
どんどん、しおらしくなる私を見てか、ハルが仕方なくといった様子で手を持ってきて…包んでくれた。それは、私にとって温度も感触もないものだったけど、安心できて…元気をもらったんだ。
「いやあ…かぐやの歌が聴きたいよ、聴かせてくれないか?俺、ファンなんだよ。かぐやの元気なところが見たいんだ」
「………えへへ、そういうことなら…元気に歌わないとねっ!」
「おう!特等席で聴くからな!」
まあ、いつでも特等席みたいなもんだが…と、ボソッと続けるハル。いつも、ハルはこういう時に気を利かせてくる。その優しさの暖かさがあったからこそ、私は今でも私でいられるのかな…。
これは、いつの日かのむかーしむかしのお話。まだ、ハルが元気だった頃のお話かな?盛り盛りと沢山食べてた頃のハルだった気がする。不味い〜、とか美味しい〜とか…一喜一憂してたなあ。えっ?今は…──────なんで、なんでこうなったんだろう…ハッピーエンド、になるのかな?いや、やっぱり………違うのかな?
_ _
「………あれ…?飯に、味が…しない…?」
私はハルの言葉に耳を疑う。しかし、普段からゲテモノを食べているハルだから、舌が麻痺をしていてもおかしくはない。うん、それが胸にストンと落ちる。きっと、舌が麻痺する定めだったのだ………。
この時は半ば治るだろうなあ…と、楽観視していたし事実、ハルも一時的なものだろうと、思っていた。
しかし、この後した狩りでもハルが、またまた違和感とそれを言う。
「………あれ?血の匂いも…しない?」
そう言ったハルは、何度も鹿の血を嗅ぐ素振りを見せる。傍目から見たら…その、絵面が………猟奇的な趣味があるのかなあと、本当に引いてしまって…。
「い、いや!そんな趣味は断じて無いぞ!………そのな、匂いもしないんだ…鼻も利かない…」
事態は思ったより深刻だった。だけど、そういった不具合?らしきものは、何時もハルの謎の光が治していた。その不具合だって、寝ればきっと治るだろう…きっと、だ。そうじゃないと、酷すぎるんだもん………。嫌な想像を振り切るように、ハルに念を押して治る治る!と、元気に言った。
だが、世は優しさでできていなかった。あれから、村に帰って1週間。ハルの味覚と嗅覚は、治らない…。日に日に、目に見えて元気を落とすハルの姿が、見ていられないくらいにやつれていた。
ハルはハルで、村の人には笑顔を見せるから、村の人はハルの違和感に全くと言っていい程、気付いていなかった。
私にその姿を見せるのは、信頼からくるものと思うが、1週間前に無責任に治る!と言った手前………胸にくるものがあった。
「………ねぇ…ハル…?大丈夫…?」
「…………大丈夫、だ。かぐや…俺は大丈夫…」
力なく、答えるハル。この状態のハルに、私は元気をおくることができない。それくらい、私の中で罪の意識が芽生えていた。それらしい希望を持たせて…落胆させちゃって…と。
そんな重い空気を断ち切るが如く、居住する家の扉が開いたのは、ある意味救いだったのかもしれない。
………はあ!ハルに女の子の弟子!?えぇ!断ってれば良かったよ〜!
気心知れた仲であるハルに、女の影がチラつくことになった。何が救いだ、ちくしょうめ!けれど、目を輝かせて弓の名手にしてやる!と意気込むハルを見て、やっぱり来て良かったな…と思うのだった。
………ハルめ!ポッと出の女の子がそんなに良かったかー!このこの!男の人が鼻の下を伸ばすって、今までピンとこなかったけど、よく分かった気がした1日だった。
それからというもの、ハルが弟子の女の子に弓を教える毎日。1日、2日目から才能がある!と目をキラキラさせるハルの姿に、やつれたハルよりこっちがやっぱり良いな…と、思うと同時に弟子の女の子に懸想しないかな?とハラハラする。だって、あの弟子…時々色目使うもん…。
さり気なくボディタッチしたり、そこ見せてるだろ!と思わずにいられない露出があったり………。ここまで、露骨にアピールする女の子は、今までで初めての経験であったため、焦りを募らせる。幸い、ハルが鈍感…というか気にしない素振りを見せるため大事にはなっていない。うん、きっと大丈夫だ。そもそも、ハルと一緒はむり………この考えはダメだろうな…。
でもでも………ハルが怖くなる時があって、その度に私の心はヒビが入っていくかのようで、喪うかもしれないと考えることもあった。幸い………ハルは覚えていないようだけど…。私にとっても思い出すのも辛いことだ。その衝動はいつの間にか無くなったような気もするし、そうでないかもしれない。真相は………探りたく、ないかな。
私はある日、ハルの弟子に対して真っ向から対峙することにした。日に日に増す色目行為…抱きついたり、上目遣いで口説いたり…くっ!ハルに惚れさせないため頑張ってきたが、エスカレートしていくため限界だったのだ(杞憂)。だって………寿命が違いすぎるんだもん…。それだけだもん!
いつの日かの夜に、尚も粘る弟子とやめろー!と説得?する私。勝者は───
『ふん………確かに、師匠には目を向けられていないな…諦める、べき…か…』
「ご、ごめんね!だって…ハルって、その〜かなーり特殊というか何と言うか…ほら、私にベタ惚れだし…?」
『くっ、師匠にそんな趣味が…負ける訳だっ!こんな生き物?が好きなもの好きだったとは…ッ!』
「こんなって、かぐやは元人間なんだぞ〜!失礼な〜!」
何を世迷言を!と宣うお弟子。ふん!でも………この出来事を契機にハルに対して、弟子のアプローチは減ったのは事実だ。まあ、ハルに向ける皆の目線と…私に向ける視線が、何だか優しいものになっていたのは………必要なことだったということで!
そんなこんなで、仲直り?して私とハルと、その弟子で楽しい時間を過ごせた。式も楽しくお祝いムードで、何時だってお祝い事は楽しいな、なんて思ったり?
だけど、暫く経ち長の人が危篤状態になって、関係は途端に崩れた。長は目の敵のようにハルに対して小言を言い、元弟子の娘の方は長の長寿を求め始めたのだ。それを同調するように娘のお相手さんもするもんだから、より一層居心地が悪くなっていく村。
ハルは未だに弥生の言葉に不慣れなため、気付いていないかもしれない。だったら、この事実を伝えずにそれとなく村から離そう、と思って考えていた矢先に事が起こる。
かつては、弟子だった娘がハルに矢を向けたのだ。私はそこまでいくのか、と驚愕とともに…なんでこうなったんだろうな?と思い、やはり原因は………不老だからだろうな。と、どうしようもない結論に至る。
やり場の無い怒りと、でもハルがそうじゃなかったら…と、もしもを考えると良かったという安堵。でも、だからこそ苦しんでいるハル…。
「…………なんで…ッ!…いつも、じゃないけど…こうなるんだろうねッ…本当に、私は…」
溢れ出しそうになる涙と、ぐちゃぐちゃになる思考。言葉も支離滅裂で全く繋がっちゃいない。そんな私に、私以上に苦しんでいるかもしれないハルは───
「まあまあ、落ち着けかぐや…いずれ起きることだっただろうし、それが今起きたことなんだ、だから気にするな」
─いつも優しく言葉をかけてくれる。ありがたくて…胸が張り裂けそうな思いにかられるものだった。
それから、私達は村から逃れての旅になった。追っ手はかなりしつこくて…矢がとんできたり待ち伏せされたりで………それらが重なって私は人間不信になりかけていた。だけど、
「なーに、しょぼくれてるんだお姫様?こういう時こそかぐやは歌えば元気になるんだろ?俺は歌を聴きながら、歩きたいんだ」
そう言われると、歌うしかない。ハルも感情を表に出していないだけで、きっと辛いはずだ。だから、精一杯歌って…いつしか、辛かった気持ちは晴れ晴れとするものになったのだった。それに、追っ手の攻撃も無くなっていた。
心機一転して、満を持して旅の目指す先というのはハルが恐らく最大規模だろうという村。あの、思い出すのも辛くなった村でも…中々の規模だったと記憶しているがそれ以上ということだろうか?
ハルの見立ててでは、一朝一夕で大規模な村はできないため、現時点でも最大クラスだろうとのこと。記録にもよると、邪馬台国とも言われるくらいだったそうだ。
それに、卑弥呼という人物がいるかもしれないとのことで、あっ!いつもメモってたやつだ!となるくらいには、見聞きした言葉。
道中で、ハルが巨体の熊を討伐した時のこと。その出会いは突然だった。私が、熊公め!ざまあみろ!としていると、ハルは疲れた身体にムチを打つかのように、のろりと起き上がり辺りを警戒する姿勢に入る。
私はというと、ハルの突然の行動に目を丸くしながらも、ハルの邪魔にならないように熊の後ろに身を隠し、その時を待つ。
「貴様ら!何奴!?」
その時を待って、第一声は可憐な声をした人物で、とても可愛らしい女の子だった。でも、件の女の子以外は物騒なモノを持っていて、剣呑とした雰囲気だ。それにしても………、機械音声の言葉じゃなかったような気がする。あれ?でも、翻訳しないと私でも分からないのになんで?と、一瞬フリーズするが、一つの結論になった。うん、きっとそうだ。ハルと同じような人かもしれない?!
それで…ハルはというと………ボケっとしていてアホ面?という何気にレアな表情をしている。何だろう?珍しいな?と思って、様子を窺う。………こらっ!こっちをチラッと見るな!向こう向け!向こうを!まだ、警戒してるんだから不審な行動をするんじゃない!
それから、ハルは投降するように武器を下ろして、私もいそいそと喋らないようにハルの肩に鎮座する。ジロジロと、視線を感じるが無視だ無視。私の身体で喋ろうもんなら、不審そのものだからだ。
「ほっほっー!この大熊を退治したのじゃな!大した腕前をしておるの!本来は、我らが討伐するものであったがの!」
と、どうやら賞賛してくれる様子。やはり耳にスッと入ってくる言葉。気になるが、ハルにも同じように伝わっているだろう。
「………なぜ、こちらの言葉を使えるんですか?」
「ッ!うん、そうだよ!なんでなんでー!?」
私もやっぱり気になって、尋ねる。女の子が目を丸くして、ギョッとしたが一瞬で気を取り直したのか、素早く腕を組んで答えてくれた。
「妾は、生きとし生けるものの声を垣根を超えて、聞くことができる。無論、話すこともな。産まれた時からそのようなものであったから、無意識にできるようになっておるのじゃ!フムフムソノチンマイノカワイイノ~」
うん、やらかしちゃった…女の子以外はまた警戒態勢になっちゃった………けど、気になるものは気になるもん…。でも、聞けたいことは聞けたから満足だ。というか、それって超能力的なものなのかな?昔にはあったんだ〜!へぇ〜!
それから、私とハルで自己紹介をした。そして、女の子もすることになったのだが…
「ッ!ああ、妾としたことが!名前を名乗ってなかった…改めて、妾の名前は"卑弥呼"じゃ。好きに呼んでくれていいぞえ?」
「「URじゃねか(じゃん)!!!」」
散々、ハルから聞いた人物で馴染みのある人物。その人である卑弥呼だった。メッチャ可愛い!愛嬌あるし、親しみやすい人で話しやすい。卑弥呼が、和気あいあいと私達と話しているのを察したのか、周囲の人も警戒が解けている。
うーん、何時もハルから聞いていた卑弥呼だったら、こんなに親しみやすくないのかな?と、思った1日だった。
うん、卑弥呼の里に行ったら…とんでもない程の歓迎されてとても疲れたのは蛇足だ。それに、卑弥呼が私達の旅を気になって聞いて来て、ハルの武勇伝を沢山聴かせてあげたのも蛇足というものだろう。
「ハルって、熊をばっさばっさって、これ以上の熊もラクチンで仕留めてきたんだよ!」(ラクチンではない)
「ほほー!確かに、熊を1人でやったと思えぬ程に堂々とした立ち姿であったの〜」
「それに、狼を数え切れないくらい退治してきんだよ!狼ハンターだよ!プロだよ!」(事実)
「熊を退治した御人だからのお、不思議ではない!スゴいのじゃ!」
「それにね!狼100体切り〜なんてね!」(10はしたことある、昼に狼の縄張りのど真ん中に行ったから)
おおお〜!と、次々に武勇伝を披露してあげたらとても喜んでくれた。ついつい、盛っちゃったところあるけど…概ね自身だし大丈夫!それに、強いが正義っていう感じはヒシヒシと肌身で感じるからねぇ…。言っとかないと、無用なトラブルに巻き込まれかねないから。
それから、とても楽しい日々が続いていった。進んで狩りは、あまりしなくなったハルだが、卑弥呼からのお願いでやる日々。
「おお〜〜!!!凄いッ、凄いぞ!その弓の腕前!そなたはやはり大熊を退治した狩人じゃな!」
ハルの狩りを見て、目を輝かせる卑弥呼はやはりハルは凄い腕をしてるんだなあと、深く実感させるものだった。くっそ簡単だったな…って呟くハルよ…、鹿の姿が点みたいに小さい的だったのに………。もっと誇ってくれても良いのになあ…と、思うのだった。
「『卑弥呼の妹です!よろしくお願いします!名前は…台与(とよ)です!』」
「フッフッフ!可愛かろう!これが妾の自慢の妹じゃ!」
これが、卑弥呼ちゃんの妹…話しにはちょくちょく出ていたけど、これが初めての対面だ。台与(とよ)ちゃん!メッチャ可愛い〜!彩葉に似てる面影が私の琴線に更に触れる。
「か、かわいいー!!!ねえねえ、何話す?何話す?かぐや何でも話しちゃうよ〜!」
「…お、おま!落ち着け!台与ちゃんが引いてる引いてるッ!」
ついつい、暴走しちゃってハルの頭を引っ張る形で、身を乗り出して話をしようとする。私のそんな姿に、とよちゃんが卑弥呼ちゃんの後ろに身を隠して泣いてしまった。
でも、その泣いている姿もどこか懐かしくて………。
「グヘヘヘ…かぐやといいお話、しちゃお???」キラキラ
暴走モードの私は、これ以上は見てられないとしたハルが、私を咎めて事態は収拾した。起きたら、台与ちゃんがハルに懐いていた…げせぬ………。
時間が経って、私とハルはこの村で楽しく過ごしていた時のこと、どこも危機というのはやってくるもので、とうとう卑弥呼の村にも危機が迫っていた。どうやら夏や秋に不作が続き、数多の餓死者が出るかもしれないとのこと。
そんな危機的状況に、卑弥呼ちゃんが儀式をするとのことで、私達は警備をすることになった。警備をするくらいに、卑弥呼ちゃんの評判は悪いといったものでなく、むしろとても良い。形だけみたいなもので、万が一のためだ。
「ハル殿、かぐや殿、妾は儀式を行う。その間、警備をお頼み申す」
いつも以上に気合いの入った衣装に身を包む、卑弥呼ちゃんの姿は綺麗で、とても美しいものだった。
そして、儀式の終わりで───
ドサッ
「あっ!?卑弥呼ちゃんが倒れた!ねぇ!ハル、体温測って!卑弥呼ちゃんが死んじゃうー!やだやだ!」
「ッ!分かった!取り敢えず、熱だな熱…」
見覚えのあるような形で、倒れた卑弥呼ちゃん。いつの日かの彩葉のように息を荒げていた。それに対して、焦りながらハルに体温を見てもらう。こういう時に私の身体が恨めしい。
しかしその後、熱は無かったようでますます原因が分からなくなる。卑弥呼ちゃんは、聞くところによると超健康に日々を過ごしているとのことで、病気の線も限りなく低い。
熱は、彩葉が死んでしまうかもしれない!となって強烈にそのインパクトは残っている。本当にどうすれば良いんだろう?となっていると、卑弥呼ちゃんがむくりと起き上がり、雰囲気を察したのか原因を言ってくれた。
「……ッ!ぐぅ…これは、前からある謎の頭痛の影響じゃ。立ってもおられんほどの頭痛が、儀式の後は必ず起こるでな…ッ!…」
それなら、安静に!と私達は揃って言い、看病にその日を費やした。そんな卑弥呼ちゃんのおかげが、その日を境に食料が採れるようになり、食料危機は収まったのだった。
「わっはっは〜結果オーライじゃ!………ぐぅ、頭がいたい…ハル殿〜、水をおくれ〜。かぐや殿は妾の抱き枕にー…」
「やめろ〜!!!ぐぬぬ、だせぇー!だせー!熱い〜!」
体温を感じないはずの私でも、錯覚で熱いと思ってしまう程に身体を抱き締められた。ハルは、ごっこ遊びとでも思っているのか呆れたような生暖かい目でこちらを見ている。
「ハル〜!出してー!このままじゃ、私が死んじゃう〜!」
このウミウシボディ…繊細なのよ〜!出してー!と助けを求めるが、二度見からの無視…。私は諦めた………。
さて、ここからまたまた日が経って…影で言葉を教えていた台与ちゃんがついに、こちらと違和感なく会話できるようになった。いや〜、台与ちゃんと仲良くなるために…コッソリ村の人から食べ物をおねだりしたり、他の子供と仲良くなったりして、地道に頑張った甲斐があったもんだ。
ちなみに、ハルの耳には届いていない。まあ、ハルは交流は一部の人とだけするスタイルみたいだし………。私も私で台与ちゃんと仲良くなるためだしね!
台与ちゃんが、言葉と文字を頑張って覚えてくれて………、ハルの方はというと、何故か料理を教えることになっていた。大丈夫かなあ…と心配の目で見ていたが、割り切ってやっているようでひと安心だ。卑弥呼ちゃんに頼まれたからには、しっかりやらないと、といつも以上に気張ってやっているから意識せずに済んでいるのかな?
さてさて、またまた日が経って………。台与ちゃんが、ハルが料理を教えていた2代目弟子と、結婚することになった。それでお祝いとなり…卑弥呼ちゃんとハルと一緒にいた。ハルはハルで、浮かない顔をしてしまっているようで、どうしたんだろう?と思っていると、新郎新婦がやってきた。
お似合いとでも言うべきか、2人は幸せそうな顔を浮かべていて羨ましいな…とつい思ってしまう。
「おー!台与ちゃん!メッチャ可愛いー!衣装も張り切ってるね!」
「そうでしょ〜!お姉ちゃんも見てよー!」
「こんな日がくるとはの………くっ、涙が出そうじゃ」
なんでよーも〜と台与ちゃんがおどけたように言う。あれ?いつの間にか、新郎さんとハルがいないぞ…?まあ、良いか!と遠慮なく女子トークを楽しむのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「よく、お二方共に参ってこられた。さて、話を長くするのは好きではなくてな…。単刀直入に問おう、お二方は永遠の生命を持っているだろう?」
と、卑弥呼ちゃんの口から言葉が呟かれる。その瞬間、ハルから一気に警戒に入ったという気配が伝わる。これは…緊迫した状況だ。私も私で、この手の話は碌なことにならないと肌身で知っているため、身を屈めて様子を見る。
そんな私達の様子を見て、慌てて卑弥呼ちゃんがもう興味はない、と言うが信用ならない…。だって…あんな形でお別れになったんだもん。
埒が明かないと感じ取った卑弥呼ちゃんが、両手をあげて口を開く。
「これは妾が失敬だった、迂闊だったの〜。………さて、単刀直入に言おう。ハル殿は、いずれまた大切な何かを喪うだろう。ということだ。それも、生きる上で大切なものを、な」
「「………………はっ?」」
「ハル殿は、今は味覚と嗅覚だったかの?それが無くなっておるとは夢でみたぞえ?それに、明晰夢というものじゃったか?近頃、よく見るようになっての───それもハル殿自身の─それも視点で」
「「………待て待て!!!待てー!」」
「むむむ?今、良いとこだったのじゃ…。んー、妾はもう眠くなってしもうた…」
「「はー!!?!」
「………一回でもこの話しをすると、眠気が凄まじくての……zzzz」
とんでもないことを口走る卑弥呼ちゃん。それに同様する、私とハル。ハルは目に見えて、唖然としており魂が抜けたような顔になっている。
私は、なんで?なんで?なんで?と、頭の中がいっぱいになる。私は私で、五感は地球に来た時からとっくに無くて…仕方のないものと、割り切れるものになっている。が、ハルは生まれた時から五感があり、人生の途中で失くなっている。この違いはあまりにも大きいもので、ハルの精神的苦痛は計り知れないものだろう。
なのに…また、なんで…。私達は、卑弥呼ちゃんが目を覚ますのを待って、もう一度問いただそうとした。
しかし───
「む?何のことじゃ…?ふむ……いや、存じぬな…。すまぬ…。むぅ…ハル殿よ、苦しいとは思うが辛抱するのじゃぞ?」
さっぱり覚えていないようで、もう思い出せないとのこと。この出来事は、ハッキリと記憶に残るもので…後にも先にも卑弥呼ちゃん以外に根幹に触れられたことはないからだ。
それからというもの、ハルは………表面上は明るくいつもの日々をおくっていたが、どうしても影が見られるところもあった。
そして、ついにその日は訪れた。
「卑弥呼ちゃん!………わ、私達を迎えてくれて…ありがとね…ッ!」
「ああ…俺も感謝するよ、卑弥呼………出来うる限り、この村を見守ることにするよ」
「うむ………、妾も良き友に巡り会えたものじゃ…願わくば、同じ時を歩みたかったのう…」
それはよしとけ、と苦笑いするハル。私は、幾人も見送ってはきたが…ここまで、感情が揺さぶれることは初めてで………声が言葉に出ない。
卑弥呼ちゃんと、台与ちゃんには私達の秘密を教えても、穏やかに村に居させてくれている。その事実がもっと嬉しくて、その秘密を共有できた1人の人物が喪うことが、悲しくて…。
「お姉ちゃん…、頑張ったね………ッ…」
「義姉さん…この国を…ありがとうございます…安らかに………」
妹と義弟が駆け付けて、その最期に立ち会う。そして、卑弥呼ちゃんが安らかに、眠った後に盛大に国中から見送られて埋葬されたのだった。
問題はその後だった。かつて、私達が村を来た時には大きな里程度だったのが、やがて卑弥呼の優秀な指導力の噂を聞いた村々が集まり、服属。その規模はもう国と言って差し支えのないもので、その後継決めは熾烈なものとなった。
「なあ…かぐや、暫く外には出ないようにしようか」
「………うん」
村…いや、里中がピリピリとした空気で触れ難いものなっているのだ。どうやら、最初に男王がとのことで即位したらしいのだが、これに対して他の里が反発。卑弥呼のように、奇跡を起こせるものなのか?司祭は務まるのか?と疑問が紛糾。結果、納得せずに服属しないとのこと…これに対して男王はキレたため………徴兵して争うことにしたらしい。
そんなことで、命を散らすのかと思わずにはいられないが、その時代の当事者じゃないと分からないものなのだろうか…。
ハルはというと、生前に卑弥呼ちゃんからの誓約で決して命令はしない旨が、告げられているため徴兵の件は来ていない。卑弥呼ちゃんが、またしても私達を護ってくれたのだ。
激しい内乱が国を覆う。外から響く怒号と悲鳴が、怖くてハルの胸に身を屈める。
「『この連中め!盗みやがって!』」「『卑弥呼様の里を守れ!』」「『この野郎!』」〜〜〜〜
「大丈夫だ、かぐや…。終わるまで、待とうか…。いずれ、終わる…終わるんだ。だから、今は耐えよう」
ハルが苦虫を噛み潰したような、表情でこちらを見やる。そんな顔、今までしなかったじゃん…?怖い、怖くて…仕方ない。
「すまないな、かぐや…。俺も気が抜けてたよ、人って争う歴史だったな…って今、思い出した」
「………ハルのせいじゃないよ…。でも、何で争うんだろうね?私、一生分からないかも…」
「…分からなくても良いんだ。かぐや、お前には綺麗な思い出を紡いで、未来に持っていって欲しいんだ。失敗したなあ…」
「そんな言い草…ッ!ハルが死んじゃうかもしれない文言じゃん!やめてよ〜!!!」
「あはは、わりぃわりぃ………」
その後、暫く経って男王が里中に広がる叛意を察したのかさっさと退位。その後の行方は…分かっていない。そして、その後継には───
「台与ちゃん…」
「台与………か…。」
目を真っ直ぐに見据えて、里を見渡す新たな女王。台与ちゃんだった。その目には、燃えたぎるような意思があるように凛としている。
どうやら、後継にという声があちこちから広がり、その民意が圧倒的に多く自然と後継となったらしい。
内乱が治まりを見せた後も、念には念を入れ、家にあまり出すにいた。時折台与ちゃんと、その夫が顔を見せて状況を伝えてくれていたので、分かってはいたのだが…。
台与ちゃんが、国を平定して平和をもたらしまた何時ものような日々へとなっていく中で…。
「私、村を出ようかなって思うんだ…。ダメ…かな…?」
「………いや、出た方が良いかもな。今だけ…かもしれないし、この先もまたあんなことがあるかもしれない。」
やはり、私とハルは時が流れようとその姿形は変わらない。だから、私とハルは里を出ることにした。里の人々は見知った顔がいなくなり、新しい人になっていっても変わらず親しく接してくれる。これは、いつもだったらあり得ない出来事できっと、幸運なものだろう。
けれど、時のどこがでそれがいつか無くなるかもしれない…。もしくは、心が耐えられないかもしれないとなった時に、生きるのが辛くなる。既に…くるものはある…。あるが、まだ、耐えられる…。
そのため、断腸の思いで出ることにしたのだ。人と関わることは別れもつきものと思っていても、感情ではかなり苦痛を伴うもので………
「かぐやちゃん、それにハルさんも…今まで里に貢献してくださりありがとうございました!」
「師匠も、そしてかぐやちゃんもお変わりないようで…ってこれはダメか…。とにかく、お世話になりました。ありがとう!」
わざわざ、配慮してか人払いをして見送ってくれた。台与ちゃんと弟子さん。そして、歩き出すハルとその頭に乗るいつものスタイルで、旅に出る。
「こっちこそ!ありがとうー!!!元気でねー!!!」
「ありがとうなー!元気で!」
後ろを振り返り、大声でハルも言葉を続ける。旅…とはいっても安住の地を見付けるためのもので、それは人とはあまり関わらないというある種の決意のものだった。
でも、やっぱり人と関わらないという選択肢は出来なかった。日に日に、ハルが衰弱していくようで見ていられなく………なったからだ。私が…やったんだ…。最初は、何時もどおりに旅をして…良さげな場所に居着いてから暫く経って、衰弱していった。
「かぐや………なあ、ここって現実か?現実じゃないのか?どっちなんだ?」
「ッ!現実だよ………ねえ、外に…出ない?」
罪悪感から、声も出ない。励ましも明るく元気にとはいかずに、やはり出ない。気の利いた言葉をかけようとする度に声が詰まる。
「………分かった、外に出ようか…」
「………うんッ!出ようッ!歌っちゃうね!」
私は精一杯歌うことにした。そうじゃないと、何かやらないと私も落ち着かなくて…。頭に乗って、歌う声を調整するその最中で切実とも言える声で、ハルが徐ろに口を開く。
「ああ、歌ってくれ…色んな声が、聴きたいんだ」
不穏な終わりですが、大丈夫です。大丈夫!(小並感)
曇らせは頻繁にあったらダメだと思ってるので。精神的にハルくんが参ってるだけなので、無問題です。はい(小並感)
かぐやちゃんが、心配ですねぇ。かぐやちゃん、ギリギリなので………ハルくんしっかりしっかり、頑張ろっか!