ブレード・ストレンジャー・アンド・レッドブラック   作:pugcode

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4話

 燃える集落を背景に、西部劇めいた決闘が始まる。

 先に仕掛けたのは忍者(シノハ)。全力疾走を以て接近し、忍手"暗刃”で狙うは魔津田の首! 直前の跳躍による加速を載せた、神速の突きが放たれる!

 

 対する魔津田は身を弓なりにのけ反らせて攻撃から逃れる! おお、見よ! これはニンジャのブリッジ回避である!

 

 しかし忍者(シノハ)の加速は魔津田の計算を僅かに上回っていた! 忍者(シノハ)の暗刃がジャケットを掠め、魔津田の首を薄く切り裂く!

 

 忍者(シノハ)は着地して即反転、ブリッジ体制で無防備な魔津田に向かって再び暗刃を放つ!

 魔津田はニンジャ腕力で大きく跳躍! 暗刃の軌道から大きく距離を取って態勢を立て直す。

 

 忍者(シノハ)は暗刃を魔津田の首へ放つ! 魔津田はこれをブリッジ回避し、ニンジャ腕力で跳躍して大きく距離を取って態勢を立て直す!

 

 忍者(シノハ)は暗刃を魔津田の首へ放つ! 魔津田はこれをブリッジ回避し、ニンジャ腕力で跳躍して大きく距離を取って態勢を立て直す!

 

 忍者(シノハ)は暗刃を魔津田の首へ放つ! 魔津田はこれをブリッジ回避し、ニンジャ腕力で跳躍して大きく距離を取って態勢を立て直す!

 

 息を吐かせぬ攻防の連続。しかし両者に疲労の色は無い。

 魔津田は首からの出血を拭って嗤った。前世ぶりの出血と痛みを、娯楽として楽しんでいるかのように。

 

「おうおう、速ェなやっぱり忍者はよォ~~~」

 

「オレも驚いたぜ、アンタが暗刃回避(かわ)せるとはな」

 

「俺はテメェに殺されて、ニンジャとして生まれ変わったのさ! 速くなって当然よォ」

 

「極道のテメーが忍者だと? 寝ぼけた事を言ってんじゃねぇ」

 

 シノハの言葉に一瞬キョトンとする魔津田。そしてやれやれという表情で溜息をついた。

 

「そうか、テメェは知らないのか」

 

「何のことだ?」

 

「それなら教えてやるよ、テメェは耐え忍ぶ”忍者”。俺はこの世界で人間(モータル)共より上位に君臨する”ニンジャ”! 存在の格が違うんだよ!」

 

「話になんねーな。一回死んで脳味噌腐敗(クサ)ったのか?」

 

「言っても分かんねぇなら、身体に分からせるしかねぇな!」

 

 次に仕掛けたのは魔津田のカタナである!

 忍者(シノハ)に劣らぬ速度で急接近、恐るべき重さを乗せた超速の刃が放たれる! その異常な速度に忍者(シノハ)は驚愕しつつも軌道を読んで紙一重で回避!

 

 更に魔津田は仕掛ける! 忍者(シノハ)に劣らぬ速度で急接近、恐るべき重さを乗せた超速の刃が放たれる! その異常な速度に忍者(シノハ)は驚愕しつつも軌道を読んで紙一重で回避!

 

 更に魔津田は仕掛ける! 忍者(シノハ)に劣らぬ速度で急接近、恐るべき重さを乗せた超速の刃が放たれる! その異常な速度に忍者(シノハ)は驚愕しつつも軌道を読んで紙一重で回避!

 

 更に魔津田は仕掛ける! 今度はニンジャ脚力による速度を乗せた超速の極道居合! 忍者(シノハ)は魔津田の速度に目を見開き、一か八かで暗刃で迎撃する!

 

 CRASH!

 

 暗刃とカラテが衝突し、爆発めいた衝撃波が生じる!

 

「うおおおおお!?」

 

 吹き飛ばされたのは忍者(シノハ)である! 切断こそ免れたものの魔津田の圧倒的なカラテのエネルギーを正面から受けてしまったのだ! タツジン級のワザマエとニンジャ筋力の組み合わせから放たれた一撃は、鍛え抜かれた忍者といえども人間(モータル)に耐え得るものでは無かったのだ! ニンジャのイクサを知らぬ忍者(シノハ)であれば猶更である!

 

 忍者とニンジャ。それは似て非なる存在。

 片や闇に生きる正義の執行者、片や一時代をカラテによって支配した神話めいた怪物。

 その力の差を、知識(アタマ)ではなく体験(カラダ)理解(ワカ)らされたシノハは、無様に転がりながらも思考を切替え、己の敵を見据えて立ち直る。

 しかし、そこには既に魔津田の姿はない。

 

 ────殺気。

 直感的に身を逸らす! しかし刃が忍者(シノハ)の首筋を裂く!

 

 ────殺気。

 直感的に身を屈める! しかし刃が忍者(シノハ)の背中を裂く!

 

 ────殺気。

 直感的に跳躍する! しかし刃が忍者(シノハ)の右足を裂く!

 

 ────殺気。

 直感的に身をひねる! しかし刃が忍者(シノハ)の左腕を裂く!

 

 ────殺気。

 直感的に身を転がす! しかし刃が忍者(シノハ)の脇腹を裂く!

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

 決死の連続回避の末、何とか態勢を立て直した忍者(シノハ)は既に満身創痍だった。

 

「どうよ、これがニンジャと極道技巧(ごくどうスキル)の組み合わせ、テメェら忍者を凌駕する俺の力よ!」

 

 魔津田は勝ち誇るように諸手を上げる。勝利への確信を得て慢心に溢れていた。

 しかし忍者(シノハ)は反撃に移れない。その速度(スピード)に、その(パワー)に、直感(カン)でしか対応できていない自分の無力さを痛感したからだ。

 

(これ以上続けてもジリ貧にしかならねぇ。なら、一か八か、アレをやるしかねぇ……!)

 

 忍者(シノハ)はかつての戦いを思い出す。総理官邸の戦いで、宿敵(ガムテ)相手に使ったあの方法を。

 

 再び闘志を目に宿し、無造作に仁王立ちする忍者(シノハ)

 未だに戦う意思を見せる忍者(シノハ)に対し、魔津田は嗜虐的に嗤う。

 

「そうだ、そうこなくっちゃなァ!」

 

 歓喜の咆哮を上げた魔津田は、最大限の力を以て居合を放つべく基本の構えに立ち返る。基本の型こそが、至高の型であると本能的に理解しているのだ。

 

 対する忍者(シノハ)もまた極限の集中と脱力の中に身を置き、己の覚悟を成し遂げることだけを考えていた。

 

 静寂が周囲を包み込み、炎が揺らめく。

 泥の様にも感じられる、短くも長い時間。その中で、火の粉が弾けた。

 

 極道技巧(ごくどうスキル) ”極道居合”(死んでもらいます)

 

 音を置き去りにした神速の居合が、忍者(シノハ)の命を刈り取らんと迫る!

 忍者(シノハ)は迫りくる死に対し、敢えて一歩踏み込んだ!

 

 忍手”暗刃”

 

 放たれる暗刃。それはまたもや、真正面から居合に向かっていった!

 なんたることか、これでは先程の二の舞! また吹き飛ばされるのは火を見るよりも明らか!

 

 CRASH!

 

 再び生じる爆発的な衝撃波! 

 二重の轟音が生じるとともに、忍者(シノハ)の身体は大きく吹き飛ばされた!

 なんたるウカツ! これではただの自殺行為でしかない!

 

 しかし、ご注目頂きたい。対する魔津田の、その手に握られたカタナの状態に!

 

「何ィ~~~~!?」

 

 驚愕する魔津田の手に握られていたのは、根元からへし折られた柄のみのカタナであった。

 

 読者はお気づきになられたであろうか? 忍者(シノハ)は再び暗刃で刃を受け止めただけではない! 東洋に伝わる神秘の技、化勁を以て迫る刃をて強引に制止、それと同時にカタナの側面に二発目の暗刃を打ち込んでへし折ったのだ! ワザマエ!

 

 忍者(シノハ)は土煙の中、ふらつく体を無理矢理立ち上がらせる。

 

(せっかく治ってきたのに、また骨折()れちまったな……)

 

 カタナを受け止めた腕は折れ、肋骨や足にもヒビが入ったような痛みを感じる。

 それでも気合で無視して前進する。目の前の極道(てき)をブッ殺すために。

 

 だがしかし。

 

 揺らぐ視界。身体が言う事を聞かず、忍者(シノハ)は地面に頽れた。

 

(クソッ……力が、入らねェ……)

 

 ニンジャのカラテが持つエネルギーは容易に人間(モータル)を死に至らしめるエネルギーを秘めている! むしろ五体満足で、ここまでニンジャと渡り合えたことが奇跡なのだ!

 

「驚いたぜ。流石は忍者、こんなことまでやっちまうとは」

 

 魔津田は心からの賛辞を忍者(シノハ)に送る。そこに嘲笑や邪念は一切なく、ニンジャ相手に一矢報いたその技量に、その覚悟に対する純粋な評価だった。

 

 魔津田は折れた刃をその手で直接握り、指から血を滴らせながら忍者(シノハ)の元へゆっくりと接近していく。

 

「ハイクを詠め、カイシャクしてやる。これが強者に対する、ニンジャ流の看取り方だ」

 

 忍者(シノハ)は動かぬ体で、何とか顔を動かして魔津田を見る事しかできない。

 最早これまでか。忍者(シノハ)が諦めかけたその時である。

 

「イヤーッ!」

 

 どこからともなく叫ばれたカラテシャウト! 赤黒い影が飛来する!

 

「グワーッ!」

 

 アンブッシュから鋭く放たれたトビゲリを側面から受け、魔津田は吹き飛ばされる!

 一体現れたのは何者か?

 

 ウケミを取って立て直す魔津田は、最大の警戒心を以てメンポを付け直す。

 その視線の先には、赤黒い装束を着た、「忍」「殺」の文字が刻まれたメンポのニンジャが直立していた。

 

「ドーモ、デッドブレード=サン。ニンジャスレイヤーです」

 

 ニンジャを殺すニンジャ。ネオサイタマの死神。ベイン・オブ・ソウカイヤ。その名を、ニンジャスレイヤー。

 それが、目の前に現れた。

 その狂気的な偉業を、魔津田は噂程度に聞き及んでいた。

 その実在を疑問視しつつも、生前の世界では”忍殺番長”なる存在がいたこともあって否定することもできない驚異の存在。それが彼の中の評価であった。

 

 魔津田は折れたカタナを杖に立ち上がり、深々とオジギした。

 

「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。デッドブレードです」

 

 イクサの前の神聖なる儀式。彼を前にしてこれを欠かすなどシツレイだ。魔津田ではなくデッドブレードとしての、ニンジャとしての本能がそう告げていた。

 しかし極道の部分も不満を告げる。

 

「噂はかねがね聞いている。だが、邪魔されるたァ気に食わねェな」

 

 デッドブレードは破いた衣服を折れたカタナの刃に巻き付け、即席の持ち手を作り出す。新たなイクサに備えた状況判断だ。

 ニンジャスレイヤーは死神の眼光で、敢えてそれを見届ける。

 

「暗黒メガコーポの手先となり、あまつさえ無辜のホムレスまでをも殺戮したオヌシの罪は重い」

 

 死神はカラテを構え、その目から威圧的な殺意を迸らせた。

 

「ニンジャ殺すべし、慈悲は無い」

 

 もはやイクサは回避できない。

 覚悟を決めたデッドブレードは、カタナを鞘に納めて居合の姿勢で迎え撃つ。目の前の死神が本物であるかを確かめるために。

 

「イヤーッ!」

 

 先手を打ったのはニンジャスレイヤー! 腕が鞭のようにしなり、目にも止まらぬ速さでスリケンが飛ぶ!

 

 デッドブレードは紙一重のステップでこれをかわし、必殺の領域に持ち込むべく決断的に前進する。

 

「イヤーッ!」

 

 再び投擲するニンジャスレイヤー! 今度は同時に8枚のスリケンが飛来する!

 

 これにはたまらずデッドブレードはカタナを抜く。必要最小限の居合でスリケンを弾き飛ばし、ニンジャスレイヤーへの道を切り開いた。

 

 更に加速するデッドブレード。死神を射程圏内に収め、神速の居合が空気を切り裂く!

 だがニンジャスレイヤーは回りながら上体を屈め、頭を地面すれすれまで下げて躱す。同時に回し蹴りを合わせる!中世に海を越えて南米に伝搬した暗黒カラテ蹴り、メイアルーアジコンパッソである!

 

「グワーッ!」

 

 大きく吹き飛ばされるデッドブレード!

 デッドブレードはその一撃が見えていた。しかし、刃を鞘に収納するのが僅かに遅れて動くことができなかったのだ。

 居合は次の一撃までにカタナを鞘に戻さねばならない。普段であればこの一瞬でそれができていたが、一度折られたカタナでは勝手が違う。その違いが僅かながらに隙を生じさせてしまったのだ。

 

 助走からの鋭いトビゲリですかさず追撃するニンジャスレイヤー! 

 しかし、デッドブレードは吹き飛ばされながらも刃の収納を終え、着地して居合の構えで待ち受ける!

 

「イヤーッ!」

 

 極道技巧(ごくどうスキル) ”極道居合”(死んでもらいます)

 

 蹴りと斬撃が交錯し、カラテエネルギーの衝突による衝撃波が空気を揺らす。その余りの威力に二人は衝突時の姿勢で一瞬硬直、空中で踏ん張りの利かぬニンジャスレイヤーは吹き飛ばされた! 

 

「グワーッ!」

 

 しかしデッドブレードは追撃に移れない。衝撃によってアスファルトに足がめり込んでしまっているのだ。更にはカタナを尋常ではない力で握ったが故に、即席の持ち手を貫通して刃が指を裂いているではないか!

 

 もはやもうカタナは使えぬか? 否! 握れるならばまだ居合はできる!

 デッドブレードは追撃でも脱出でもなくカタナの持ち手を作る事に集中した。襲い来る全てを切り払うべしという状況判断である。

 

 ニンジャスレイヤーは着地、しかしデッドブレードに接近しない。近づく敵を居合で断つという狙いを見抜いていたからだ。

 歴戦の死神は距離を保ったまま、腕をしならせ複数のスリケンを幾度も投擲し始めた!

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 

 腕を、脚を、胴を、頭を狙ったスリケンが豪雨めいて次々とデッドブレードを襲う!

 ただひたすらに無心でデッドブレードは弾き飛ばす!

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 

 更なるスリケンの雨が降り注ぎ、次第にその数と速度も加速度的に増加していく!

 無心であったデッドブレードにも焦りが生じ始め、遂にデッドブレードは鞘にカタナを収納する事すらできなくなった。これでは不完全な弾きによって刃に衝撃が溜まり続けてしまうではないか!

 

 気の迷いがカタナに伝播したかの様に、僅かな刃こぼれが生じる。それを見逃すニンジャスレイヤーではない!

 

「イヤーッ!」

 

 一際大きく振りかぶり、強大なカラテを込めたスリケンを投擲! これぞチャドー奥義ツヨイ・スリケン!

 

 彗星めいた速度で飛来するスリケンを前に、デッドブレードはカタナで受ける! 身体の芯を捉えた軌道を前に回避は不可能、たとえ不完全であろうとも居合で太刀打ちするしかないという決断的状況判断だ!

 

「グワーッ!」

 

 直撃! ツヨイ・スリケンの恐るべき衝撃力に耐えきれず、脚を埋めたアスファルトごと後方へ吹き飛ばされるデッドブレード! その手のカタナにも、最早修復不能な致命的亀裂が入っている!

 

「ハァッ……ハァッ……俺は、ここで終わる訳にはいかねェんだよォ!」

 

 地面の呪縛から解放されたデッドブレードは、全ての痛みを無視して捨て身の突撃を敢行する! 手から血を滴らせ、狙うはニンジャスレイヤーの首一つ! 砕け散る寸前のカタナに己の極道技巧(ごくどうスキル)とニンジャのカラテをすべて乗せた渾身の極道居合!

 

 それを前にしてニンジャスレイヤーは深く腰を落として構える。回避行動すらとらない。これはチョップの構え、カラテあるのみだ。

 

「「イヤーッ!」」

 

 二重のカラテシャウト! 二つの刃が交錯し、光の破片が乱反射して舞い散る!

 

 おお、ナムサン! 既に限界を迎えていたカタナは死神の恐るべきチョップによって無惨にも打ち砕かれた!

 そしてチョップの勢いは止まらない! 煌めく破片の軌跡を描きながら手刀はデッドブレードの肩口へと吸い込まれ、鎖骨から胸部へと無慈悲に切り裂いた!

 

「アバーッ!」

 

 噴火めいて出血し、膝を折るデッドブレード。その手に砕かれず残った僅かばかりの刃を落とし、死神を見上げた。

 

「ハイクを詠め、カイシャクしてやる」

 

 上には上が、忍者を超えてもニンジャがいる。ニンジャとなって万能感に酔っていた己の何と浅いこと。デッドブレードは自嘲しつつも震える手でメンポを外し、未だに倒れ伏す忍者(シノハ)を見た。

 

「まァ、アイツに勝てたから……ゴフッ、良しとするかァ」

 

 血を吐きながら目を閉じ、首を垂れた。

 

「イヤーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーのチョップが再度、振り下ろされる。

 

「サヨナラ!」

 

 デッドブレード、いや、魔津田黒雨は爆発四散! 邪悪な極道ニンジャは、ネオサイタマの漆黒の空へと消えていった。

 

 激闘が終わり、動けぬ身で一部始終を見ていた忍者(シノハ)は安堵する。

 

「誰だか知んねーけど……有難(アザ)っス」

 

 そういえば、アザマさんは無事に逃げられただろうか。

 そう思いながら忍者(シノハ)の視界はブラックアウトした。

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