私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

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USJは燃えているか5

――――――――緑谷出久side――――――――

 

蛙吹さんの舌で高く放り投げられた僕は、標的を睨んで拳を握っていた。あとは迫る天井へと攻撃を叩き込むだけだ。

だけどその時、下から皆の焦ったような大声が響いたのだった。

 

 

「緑谷、横!横!」「横を見るんだ、緑谷君!」

言われるがままに、視線を向けた顔が引きつってしまう。何と自動販売機が、僕目掛けて飛んできていたのである。彼らは知らないことだが、これは麗日お茶子が飛ばしたものであった。

「いぃッ!?」

 

 

なぜという疑問はこの際置いて、まずはどうにか対処が必要だ。

ワン・フォー・オールによる超強化といえども、流石に空中で途中から軌道を変えるのは無理だ。やるとすれば障害を打ち返すことだが、既に僕は拳を振るうモーションに入っているのである。

 

 

手が使えないなら、即ち足で蹴り返すしかない。

筋力強化した足で自販機を蹴っ飛ばし、その勢いで体を回転させながら天井を拳で打ち抜いた。壁面に穿たれた穴から覗く青空に、僕は安堵する。

よし、何とかなった……これで先生たちを呼べる!

 

 

落下する僕を、再び蛙吹さんが伸ばした舌でキャッチしてくれる。

彼女がゆっくりと地面に下ろしてくれる間、僕は自分の腕と脚を見比べていた。

不完全なワン・フォー・オールにすら耐え切れず青く腫れあがった腕は、またリカバリーガールに睨まれながら治癒してもらう必要があるだろう。だが、それに比べて脚の方は鈍い痛みだけに留まっているのである。

 

 

――そうか! 焼き付いたオールマイトの勇姿に引っ張られて、パンチのみが攻撃手段だと僕は思いこんでいたんだ! でも、まだ力を制御できない僕には、蹴りの方がずっと向いているのかも知れない。

今度の補習の時にでも、蹴り主体のスタイルをオールマイトに聞いてみよう。

 

 

そして、僕の取り留めもない思考を破るように、煌々と赤く燃える烽火が、眼下の轟君によって打ち上げられたのである。

 

――――――――緑谷出久sideここまで――――――――

 

 

 

「へぇ、これが脳無か」

声に隠し切れない高揚を露にして、私は強大な敵へと笑みを投げかける。

幼い頃に俊典さんに挑んだ私は、相手にもされなかった。以来、研ぎ鍛えてきた私の力、それをこの刺客にぶつける機会が訪れたのである……さあ、力を試す場の再来を言祝ごうじゃないの。

 

 

じろりと巨躯の改造人間が虚ろな瞳を私に向けた。

その水晶体に映ったのは、不遜に笑う私と――高速で振るわれた銀糸の束だ。

 

 

硬糸をギッチギチにより上げ束ねたワイヤー、その硬度は人体よりもはるかに硬い。

縦横無尽に宙を走る幾つものワイヤーが、流星のように光を弾いた。輝線の残像を宙に刻みながら、私は鞭の猛連打を脳無へと浴びせかけたのである。

 

 

立て続けに響く爆竹の束が弾けるような轟音は、鞭頭が空気を裂く衝撃波だ。

その速度は音速にも迫る。前後左右から軌道を変えて襲うワイヤーの猛攻は、脳無といえども応じることはできない。

 

 

――否、応じる必要がないのだ。

唸りをあげる鞭が銀光の綾を生み、半ば斬撃と化してほとばしる。体表を削り取り続けるそれに、改造人間は苦悶の一つも見せることはない。抉られた傷口はたちまち盛り上がって元に戻っていくのである。

 

 

チッ、超回復の個性だ……やはりオールマイトを相手取ろうって耐久力は尋常じゃない。

 

 

幻糸が脳無の初動を感知し、私の体が糸に引かれて宙を舞う。

そして僅かに遅れて脳無の剛腕が空を薙いだ。たった一振りだ、その一振りが生んだ衝撃が大気を震わせ、その余波が鞭もろとも私が張っていた不可知の細い糸をまとめて破断したのである。

 

 

「うぐッ!?」

そして千切れ飛んだ鞭の破片が、私の額を裂いたのであった。

頬を熱いぬめりが伝い、胸元に垂れる雫の赤さに私は口を引き結ぶ。

 

 

分かってはいたことだが、その圧倒的な身体スペックに歯噛みしてしまう。

不可知の幻糸(見えないくらい細い糸)は私にとっての攻防の起点だ。周囲に張り巡らせたその揺らぎで動きを読んで、私は脳無の攻撃を回避したのである。

だから幻糸の設置状態が失われることは、そのまま私の旗色の悪さに直結してしまう。

 

 

素早く糸を伸ばして張り直しながら、私は脳無を前に宙空で回転してスカートを翻す。そして作った死角から、頭部に露となっている脳へと蹴りを放ったのである。

高速でしなる脚線は、体内の筋繊維にも糸を巻き付けて出力を増強したものだ。そして足の外側にも硬糸を纏って、その内外を強化した一蹴で敵の弱みを強襲したのである。

 

 

――う、噓でしょ⁉ 

手ごたえの無さに目を剥いた私は、はたと気づく。

この弱点に見える部分ですら、衝撃吸収の個性により打撃ダメージを無効にしているのである。

 

 

攻撃直後の隙を捉えようと脳無が伸ばした手、それを私は変則的な立体機動により間一髪でかい潜った。

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