クラスの女生徒を集めたヤオモモちゃん。
彼女は大きな箱を下ろして、私たちを見渡した。
「相澤先生から指示が来ましたわ。ヒーロー科の女子はチアダンスで会場を盛り上げるように、ということです。それで、これがその衣装になりますわ」
「え、そんなの言われたっけ?」
唐突なことに皆が面食らっている中、芦戸ちゃんが首を捻りながら言った。
原作マンガにそんなイベントのあったっけ、と私も朧気な記憶を探る。
うーん、正直思い出せない。ということは大きく描写されたイベントでは無いのか、はたまたこの世界線で発生したイベントなのか、ということだ。
だからこそ私は慎重論を唱えることにしたのである。
「言い忘たから、伝言が来たということじゃないかしら?」
「でも確かに男子は借り物競争とか、大玉転がしとかのレクリエーション出てるもんね」
相槌を打ったのは透ちゃんだ。
彼女の言う通り、男子はいつくかの競技に参加しているメンバーがいるのである。そう考えると、女子には役割が無かった。
「でもポンポン使って踊るなんて、ウチやったことないよ」
箱からはみ出しているのはポンポンを見て、耳郎ちゃんが眉間に皺を寄せた。
「ケロケろ、これもチームワークで乗り越えろってことなんじゃないかしら?」
「雄英ならそういう無茶言いそうや」
梅雨ちゃんとお茶子ちゃんの言葉に、耳郎ちゃんは〝確かに〟と渋面を作りながらも息を吐いた。
唐突な無茶に慣れた私たちは、既にどうやって課題を達成させるか頭を捻り始めているのである。
「ダンスなら任せて! 私がお手本になるよ!」
芦戸ちゃんが元気よく手を上げる。
とはいえ、練習時間なんてとることは出来ないのである。だとしたら、彼女の動きを真似できる工夫が必要だった。
そこで、私は閃いたのであった。
「芦戸ちゃんの動きを連動させた糸でガイドをするのはどうかしら?」
「どゆこと?」
「細い糸で芦戸ちゃんと全員を結ぶのよ。つまり彼女が足を上げたら、私たちの足も上に引かれるわ。どの程度上げればいいかは糸だけでは伝わらないけど、タイミングと動作はすぐに判断できるわ」
私のアイデアに、全員が眦を決して頷いた。
「では、皆で力を合わせて乗り越えましょう!」
生真面目なクラス委員が持ち込んだチアダンス、その対策を私たちは真剣に講じたのである。
「ど、どーしたA組!?」
「…………何やってんだ、お前ら?」
ポンポンを手に入場する私達を迎えたのは、状況を飲み込めていない実況者と解説者の声だった。
マイク先生と相澤先生が困惑したのは伝わってきたが、それは私達とて同じ事。私達は皆一様に首を捻ってしまうのだった。
私らは先生に、〝レクリエーションだから、参加は自由だ。わざわざ出て来たならきちんとやり切れ〟と言われてしまう。
そんな私達に下心丸出しの視線を投げかけながら、ハイタッチしているのは峰田君と上鳴君だった。つまりは、二人にしてやられたということだ。きっと女子のチア衣装を眺めたいがために、ヤオモモちゃんに嘘の伝言を吹き込んだに違いない……あいつら!
〝後で殺すッ!〟と、耳郎ちゃんも憎しみの籠った眼差しで二人を睨む。
「……なぜこうも私は騙されてしまうの」
まんまと騙されたことを知り、うな垂れるヤオモモちゃん。その背中をトガちゃんが慰めるように叩いている。
「もうこうなったら、やるしかないんだから頑張ろう!」
そう言って、透ちゃんがポンポンを振り上げた。
――――――――オールマイトside――――――――
ふふふ、全くエンデヴァーは心配性だな。いや、むしろ親バカなのかも知れないね。
そんなことを思いながら戻って来た私に、ミッドナイトが〝あれ、娘さんを見なかったの?〟と声を掛けてくる。
「何のことだい?」
疑問符を浮かべる私に、ミッドナイトは自身のスマホをかざした。
そこには、チア衣装でポンポンを振り回して踊るA組の女生徒たちの姿があった。その端っこでイト少女も生き生きとポンダンスをしているのである。
娘の晴れ姿を見逃したことを悟り、体を電撃に打たれたような衝撃が走り抜けた。
イト少女の活躍を見逃しただと、何てことだ。
そしてあまりの絶望感に、私は地面へと手をついてがっくりとうな垂れてしまう。
「……ふ、不覚だ」
「全く親バカねぇ」
恨めし気に呟く私に、ミッドナイトはからからと笑ったのだった。
――――――――オールマイトsideここまで――――――――