私、ヴィランを目指します!   作:Sano / セイノ

58 / 58
親バカたちの黄昏2

クラスの女生徒を集めたヤオモモちゃん。

彼女は大きな箱を下ろして、私たちを見渡した。

「相澤先生から指示が来ましたわ。ヒーロー科の女子はチアダンスで会場を盛り上げるように、ということです。それで、これがその衣装になりますわ」

「え、そんなの言われたっけ?」

唐突なことに皆が面食らっている中、芦戸ちゃんが首を捻りながら言った。

 

 

原作マンガにそんなイベントのあったっけ、と私も朧気な記憶を探る。

うーん、正直思い出せない。ということは大きく描写されたイベントでは無いのか、はたまたこの世界線で発生したイベントなのか、ということだ。

だからこそ私は慎重論を唱えることにしたのである。

「言い忘たから、伝言が来たということじゃないかしら?」

 

 

「でも確かに男子は借り物競争とか、大玉転がしとかのレクリエーション出てるもんね」

相槌を打ったのは透ちゃんだ。

彼女の言う通り、男子はいつくかの競技に参加しているメンバーがいるのである。そう考えると、女子には役割が無かった。

 

 

「でもポンポン使って踊るなんて、ウチやったことないよ」

箱からはみ出しているのはポンポンを見て、耳郎ちゃんが眉間に皺を寄せた。

「ケロケろ、これもチームワークで乗り越えろってことなんじゃないかしら?」

「雄英ならそういう無茶言いそうや」

梅雨ちゃんとお茶子ちゃんの言葉に、耳郎ちゃんは〝確かに〟と渋面を作りながらも息を吐いた。

 

 

唐突な無茶に慣れた私たちは、既にどうやって課題を達成させるか頭を捻り始めているのである。

 

 

「ダンスなら任せて! 私がお手本になるよ!」

芦戸ちゃんが元気よく手を上げる。

とはいえ、練習時間なんてとることは出来ないのである。だとしたら、彼女の動きを真似できる工夫が必要だった。

そこで、私は閃いたのであった。

「芦戸ちゃんの動きを連動させた糸でガイドをするのはどうかしら?」

 

 

「どゆこと?」

「細い糸で芦戸ちゃんと全員を結ぶのよ。つまり彼女が足を上げたら、私たちの足も上に引かれるわ。どの程度上げればいいかは糸だけでは伝わらないけど、タイミングと動作はすぐに判断できるわ」

私のアイデアに、全員が眦を決して頷いた。

 

 

「では、皆で力を合わせて乗り越えましょう!」

生真面目なクラス委員が持ち込んだチアダンス、その対策を私たちは真剣に講じたのである。

 

 

「ど、どーしたA組!?」

「…………何やってんだ、お前ら?」

ポンポンを手に入場する私達を迎えたのは、状況を飲み込めていない実況者と解説者の声だった。

マイク先生と相澤先生が困惑したのは伝わってきたが、それは私達とて同じ事。私達は皆一様に首を捻ってしまうのだった。

 

 

私らは先生に、〝レクリエーションだから、参加は自由だ。わざわざ出て来たならきちんとやり切れ〟と言われてしまう。

そんな私達に下心丸出しの視線を投げかけながら、ハイタッチしているのは峰田君と上鳴君だった。つまりは、二人にしてやられたということだ。きっと女子のチア衣装を眺めたいがために、ヤオモモちゃんに嘘の伝言を吹き込んだに違いない……あいつら!

〝後で殺すッ!〟と、耳郎ちゃんも憎しみの籠った眼差しで二人を睨む。

 

 

「……なぜこうも私は騙されてしまうの」

まんまと騙されたことを知り、うな垂れるヤオモモちゃん。その背中をトガちゃんが慰めるように叩いている。

「もうこうなったら、やるしかないんだから頑張ろう!」

そう言って、透ちゃんがポンポンを振り上げた。

 

 

 

――――――――オールマイトside――――――――

 

ふふふ、全くエンデヴァーは心配性だな。いや、むしろ親バカなのかも知れないね。

そんなことを思いながら戻って来た私に、ミッドナイトが〝あれ、娘さんを見なかったの?〟と声を掛けてくる。

 

 

「何のことだい?」

疑問符を浮かべる私に、ミッドナイトは自身のスマホをかざした。

そこには、チア衣装でポンポンを振り回して踊るA組の女生徒たちの姿があった。その端っこでイト少女も生き生きとポンダンスをしているのである。

 

 

娘の晴れ姿を見逃したことを悟り、体を電撃に打たれたような衝撃が走り抜けた。

イト少女の活躍を見逃しただと、何てことだ。

そしてあまりの絶望感に、私は地面へと手をついてがっくりとうな垂れてしまう。

 

 

「……ふ、不覚だ」

「全く親バカねぇ」

恨めし気に呟く私に、ミッドナイトはからからと笑ったのだった。

 

――――――――オールマイトsideここまで――――――――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

闇なる鴉はかく語りき(作者:とんこつラーメン)(原作:僕のヒーローアカデミア)

あの日、俺が『彼女』と出会ったのは偶然だったのかもしれない。▼けど、出会ったこと自体は決して間違いではなかったと今でも思っている。▼彼女がいなかったら、色んなことが変わっていたかもしれないから。▼これは、そんな闇の中で生きて、闇の中で育ってきた『彼女』と、アングラな俺が出会ったことで始まる物語だ。▼


総合評価:792/評価:7.82/連載:25話/更新日時:2026年07月15日(水) 23:01 小説情報

治療狂人のヒーローアカデミア(作者:熊田ラナムカ27)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼ この世界は病んでいる。▼ ▼ あまりに命を粗末にし過ぎている。▼ ▼ 故に特効薬と万能薬が必用だ。▼ ▼ 存在しないなら私がなろう。▼ ▼ この世界全てを癒す存在に。▼ ▼「よって貴方を病源体だと判断します。直ちに治療致しますので、どうかその場を動かずに」▼ ▼「手洗い忘れただけで病源体扱い!?流石に酷くない!?直ぐ洗うから、ちょっとま──うあぁ!?」▼…


総合評価:1117/評価:7.86/連載:10話/更新日時:2026年07月08日(水) 00:35 小説情報

地獄の氷叢さん家(作者:M.T.)(原作:僕のヒーローアカデミア)

地獄の轟くん家以上に地獄の氷叢分家の女の子がヒーローを目指すお話。▼燈矢くんや外典くんを見て、氷叢の血が濃くなりすぎた末路が気になって執筆した作品です。▼※注意▼・女主です。▼・お話の都合上、青山くんが出てきません。すまんな。▼・他作品のクロスオーバーをやり出す可能性があります。▼・オリ主の必殺技や一部設定のみ、以下のキャラの要素があります。▼ ・クザン(O…


総合評価:1338/評価:7.95/連載:33話/更新日時:2026年07月17日(金) 11:58 小説情報

善意の剥製(作者:タロットゼロ)(原作:僕のヒーローアカデミア)

「あの子が持ち上げたのは法律じゃない。鉄の塊だ」▼九歳で奇跡を起こし。▼数カ月後に社会に疑われ。▼十四歳で、彼女は「完璧な淑女」として、かつて自分を捨てた世界を否定し始める。▼【警告】この物語に、救世主(ヒーロー)は現れません


総合評価:1445/評価:7.55/連載:25話/更新日時:2026年07月14日(火) 00:01 小説情報

シューターのヒーローアカデミア(作者:なかりょた)(原作:僕のヒーローアカデミア)

ハイスぺの体と個性『射手』で転生した主人公がおくる物語。なお全方位にさわやかスマイルを振りまいて、脳破壊をしていく模様。


総合評価:717/評価:6.11/連載:26話/更新日時:2026年06月08日(月) 14:43 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>