それでは、前回の続きの部分からどうぞご覧ください。
「周りには……僕1人か……」
第11層に落とされたレイは、1人でモンスターに囲まれていた。そんなレイの頭からは、落ちる時に瓦礫に頭をぶつけたのか血が流れていた。
「とにかく、さっさと合流しよう――――剣雨!」
レイはこの状況でも冷静で、目の前のモンスターたちを次々と魔法や剣技で倒していき、他のパーティーメンバーとの合流を急ぐ……レイの実力は既に生徒の域だけではなく、塔の上位魔導士たちをも超える勢い――――いや、実際には超えており、この層のモンスターでも苦戦することなく倒していっていた。一方その頃……
「劣る者……?」
「魔導大祭のスカウト或いは新たな魔法の創出……才を示した者は、学院の卒業過程など関係なく塔へ登っていく。この6年間、そんな者たちの背中を眺めることしかできなかった……まさしく私たちは、ある例外を除いて売れ残りだ」
孤立しているリアーナとコレットは、そんな話をしながら11層を進んでいた。
「でも貴女だって、完璧才女って呼ばれるほどの――――」
「所詮、学院の中の話だ……私たちは、大海を知らない蛙にすぎない。何より、私は見てしまった……当時、私と同じ学院1年生の身で、至高の五杖に登り詰めた真の天才を」
「……」
(氷姫の杖……エルファリア・アルヴィス・セルフォルト……)
「あの時から、心の何処かで分かっていたのかもしれない……真の才能の前に、劣る者は決して敵わないと……」
リアーナは目の光を無くしながら、自虐するようにコレットにそう話した……が、それを訊いたコレットは……
「リアーナ……貴女たちが塔に劣等感を持っているのはよく分かったわ。でも、私は無能者なんて馬鹿にされながら、ずっと頑張っている男の子を知ってる……貴女達の自虐を聞いても、私の友達は笑い飛ばしちゃうんだから!」
「コレット……」
「それに貴女も知ってるはずよ?才能がありながらも驕らず、その男の子と同じくらいに努力を積み重ねている魔導士のことを」
「!」
リアーナの脳裏には剣の魔法を使う、ずっと前から片思いをしている1人の少年のことが浮かんでいた。
「……そうだな。彼なら自虐している暇などあれば、前を向き続け努力を重ねていくのだろうな……」
そう言うリアーナの目には、少しばかり光が戻ってきていた。
「あっ、そういえば……さっき言ってた『ある例外』って……?」
コレットはふと、そんなことをリアーナに訊いた。
「……レイのことだ」
「レイの?」
「レイの実力は、既に学生の域を超えている……塔の上位魔導士たちに遅れを取ることもないだろう」
「確かにそうね……なら何で塔からの推薦状が――――」
「いや、実際には前々から氷や雷を中心とした複数の派閥から声を掛けられているらしい。本人から聞いた話だから、これは事実だろう」
「!?」
リアーナから明かされた事実に、コレットは思わず驚きの表情を浮かべた。
「ならなんで尚更、レイは学院に残って……」
「目だ」
「目……?」
リアーナは自身の左眼を指差しながらも話を続けた。
「レイは目に何かがある」
「何かって……?」
「10層で誰よりも早く、ナベルスの魔素が薄まっているのに気付いたのにも関係している……私はそう見ている」
「じゃあそれのせいで、レイは塔に行けていないってことなの?」
「私も詳しくは知らないが……その可能性が高いだろう」
そんな話をしながらも、モンスターたちの襲撃も何とか退けていき……
「リアーナ、時間はどれくらい経った?」
「11層に落ちて、16時間が経過した」
「っ……」
(水と食料がもう尽きる……だましだまし休んではいるけど、モンスターたちがまともな休憩を取らせてくれない。リアーナのおかげで襲撃自体は耐えられてる……けど、彼女も限界が近い……このままじゃ――――)
コレットがそんなことを考えていると……
「……すまない、コレット」
「!」
リアーナが急に謝ってきたのだ。
「功名心に逸ったせいで、貴女達を危険に晒してしまった……全て私の責任だ」
「何言ってるの!?悪いのは全部、10層に出てきたあの怪物のせいでしょ?考えるまでもなく、みんな分かることよ!」
「コレット……しかし……」
「それに、その……そんなこと言ったら……誘われてもないのに勝手についてきた私は自業自得よ!」
「……ありがとう、コレット」
「……」
(大丈夫……ウィルやレイなら、きっと助けに来てくれる……!)
その時……
「あっ……!」
学院の教師らしき人物が前から現れたのか、コレットは安心した様子で近づこうとしたが……
「……」
「!待て、コレット……何か様子がおかしい……」
リアーナは何か異変を感じたのか、そんなコレットの手を掴んで止めた。そうして見えた人物は、学院の教師の1人であるブルーノのものだったが、明らかに様子がおかしかったのだ。
「ブルーノ、先生……?」
コレットがブルーノを見ながら、恐る恐るそう呟くと……
「ひっ……!?」
何とその首が胴体から落ちてしまった。コレットがその光景に怯えた表情をすると……
『ごきげんよう、麗しいお嬢さんたち』
首のない長身の男の姿をした存在は、話すことができないのか杖で空中に文字を書くことで挨拶をしてきた。その後ろから……
「ごきげんよう、じゃねぇだろ間抜け。上はてめぇに任せたはずだぞ『首無し』……どうして11層にガキが迷い込んでいやがる」
黒ずくめの男が現れ、首無しと呼ばれた魔導士に文句を言ったのだ。それに対し、首無しは……
「デュークが仕留め損なったみたい。床でもぶち抜いて、落っこちてきちゃったんじゃないかな?」
落ちたブルーノの首をわざと上に乗せると、その首を使うことで話し始めたのだ。
「他人事みたいに言ってんな!てめぇの遊びのせいで、秘密裏の秘も守れてねぇじゃねぇか!」
「怒らないでよマルゼ……」
そんな異常ともいえる光景を見て……
「な、何なの……その首……先生たちの……殺したの……?貴方達、一体なんなの!?」
すると……
「あ……」
首無しは乗せていた首を握り潰し……
『ただの悪者だよ――――偽りの空をブチ壊したいんだ!』
「っ……」
(偽りの空……まさか……至高の五杖の大結界……!?)
(どういうこと……?伝承では結界が割られれば厄災が始まるって……!)
混乱する2人を余所に……
『それじゃあせっかくだし――――君たちの首、ちょうだい?』
首無しは魔力で黒い刃のようなものを作り出すと……
『バイバイ!』
それを2人に向けて放ち、その首を落とそうとしてきたのだ……その時、
「「!?」」
「な、何だ……?」
「大きな、剣……?」
上から巨大な剣が現れ、2人のことを守るように床へと突き刺さった。その直後……
「2人とも無事?」
両手に魔法で生み出した剣を手にしたレイが現れたのだ。もちろん、2人を守った巨大な剣はレイが生み出したもので、真理眼で2人の魔力反応を下に見つけたことで、そのまま王剣召喚で床を突き破って助けたというわけだ。
「レイ!」
「来てくれたか……!」
さらに……
「3人とも!」
「ウィル!それに、みんなも!でも、どうやってここに?」
「キキの鼻と、コレットの鉱石のおかげ!いくつも落ちている鉱石を見つけたから、もしかしてと思ってね」
一方でウィルたちは、コレットが道の途中で残してきていた鉱石を辿ってここまで来ていたようだ。
「それよりも……何だ、あいつらは……?」
「首が……無い……?」
ユリウスとシオンが目の前にいるマルゼや首無しの姿に困惑していると……
『可愛い首がこんなに沢山!』
「「っ!!」」
レイとウィルは剣を構えると、同時に首無しに向かって駆け出していく。
「僕たちで抑える!その間に――――」
『ボン!』
「「っ!?」」
ウィルは首無しの魔法に吹き飛ばされたものの、コレットの壁とイグノールの真に具現化できるようになった幻想魔法によって受け取められる。
「千剣剣舞!」
一方で、首無しの魔法をぎりぎりで回避したレイは、背後から剣を撃ち出すのと同時に自身も剣をとって首無しとマルゼに攻撃を仕掛けるも……
『おっと!?』
「ちっ……!」
ぎりぎりのところで避けられ、距離を取られてしまっていた。そんな様子を見て……
『いいね、君たち……ゾクゾクするよ……!君たちの首、ぜひコレクションに加えてみた――――』
「時間切れだ。それにあの白髪のガキは厄介そうだし、面倒な連中も迫ってきてやがる……例の物を回収しに行くぞ」
首無しは戦おうとしたものの、マルゼに襟を掴まれ引きずられていく。すると……
『えー?残念……それじゃあ、皆殺しにしといて――――
デューク』
首無しがそう書いた途端、レイたちの上に次々と魔法陣が現れた。
「なっ!?」
(
(あれは……まさか……!)
(嘘でしょ……!?)
「10層に現れた、あの化け物を……!?」
そして、その魔法陣の中から……
「……!?」
(単位数270……イヴィル・グランド・デューク!!)
レイたちの前に、絶望がやってきた……。
読んでくださり、ありがとうございます!
次回からは、本格的にデュークとの戦闘へと入っていきます。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。