遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

1 / 47
早速ですが、今回のデュエルで色々と編集しました
内容は日付ごとに下記のとおりです

12/29…デュエルで手札数を間違える致命的なミスがあったので、オリカを追加しました。ミスを指摘していただいた方、ありがとうございます

2022/12/26…更新再開に先駆けて違和感の合ったプレイングの修正をしました。流れ自体に大きな変化はありません

2023/1/4…プレイ内容が《スピードワールド2》でもそこまで大きな変化がなかったので、《Sp》系のオリカを作る方針に変更しました
あと行間を詰めてみました。ひとまずこの行間で残りの話も修正していきます


忍び寄る影!1対2のライディング・デュエル

 4月、まだ冬の名残が残りながらも日に日に暖かくなっていくのを実感する早朝に、ガレージの中で1人の少年がバイクの整備を行っていた。

 黄昏が整備しているのは《デュエルモンスターズ》と呼ばれるカードバトルを行うために設計された、『D・ホイール』と呼ばれるバイクである。

『──おおっと、ここで葵選手のエースモンスター《水精鱗-ガイオアビス》がエクシーズ召喚!!

 今回のデュエルも、彼女の勝利で決まりなのかーっ!?』

 傍らに置いていた小型テレビから流れるデュエルの実況をBGMに整備を終えると、黄昏は満足そうに立ち上がった。

「よし、これであらかた調整は終わったか」

「──あなたが黄昏(たそがれ)遊糸(ゆうし)君、よね?」

 背後からかけられた声に振り返ると、そこにはライダースーツに身を包んだ、黄昏と同い年ぐらいの背丈の人物が佇んでいた。

 フルフェイスのヘルメットかつバイザーをつけているため顔はわからないが、声などの別の要素から女性であることは察せられる。

「えっと……あんた誰?」

「あなたと同じデュエルアカデミアの生徒だよ。

 今日は公開デュエルに参加する日だってこと、忘れてるよね?」

「……やば」

 黄昏は顔をしかめると小さく呟く。

 今日はデュエリスト養成学校『デュエルアカデミア』の始業式であり、恒例となった始業式後に行われる公開デュエルというものに出なくてはいけない日だったのだ。

「やっぱり、忘れてたんだ」

「きれいさっぱりな。けど、まだD・ホイールで飛ばせば間に合うだろ?」

「通学許可証を発行してないと、D・ホイールでの通学はできないよ」

「…………」

 呆れたようにため息をつく少女に対して、黄昏はバツが悪そうに視線をそらした。

 一般生徒からすればただ教師からこっぴどく叱られるぐらいだが、黄昏の場合はそれだけでは済まされないのだ。……そんな日を忘れる黄昏も黄昏だが。

「心配しなくても大丈夫だよ。そのために私が来たわけだし」

「どういうことだ?」

「私のD・ホイールにサイドカーを付けてあるから、それで向かえば十分間に合うと思う」

 あ、なるほど、と黄昏は理解すると、ライダースーツの少女は無言でガレージを後にする。おそらくついて来いということだろう。

「あ、ちょっとタンマ!」

「なに?」

 振り返った少女は明らかに不機嫌そうだった。

 対して、黄昏は申し訳無さそうに苦笑いを浮かべる

「デッキを調整させてもらっていいか————?」

 

 

 黄昏たちが住む『ダイスシティ』の大通りを疾走する、サイドカー付きの真っ白なD・ホイール。ライダースーツの少女はD・ホイールを運転しながらサイドカーにのる黄昏に向かって愚痴っていた。

「――まったく、デッキ調整に何十分かかってるの?おかげで時間ギリギリだよ!」

「いや、普通時間かかるもんだって」

「それでもかけすぎだってこと! それで無様なデュエルでもしたらただじゃおかないよ!!」

「その心配はねぇよ。公開デュエルの相手が誰だか知らねぇけど、デュエルで手を抜くぐらいならデュエリストを辞めたほうがマシだ」

「……そう」

「どうしたんだよ、急におとなしくなって」

「何でもないよ!」

 するとそこに二台のD・ホイーラーが現れ、二人の行くてを挟むように走行しだした。

「え、何!? 私たち急いでるんだけど!?」

「なになに? お二人さんこれからデートでもすんの?」

「で……っ!? そ、そんなんじゃ——」

 デートと言う単語に相当焦っているライダーの少女の傍ら、黄昏は彼らのD・ホイールに施された装飾に目線を向ける。

 D・ホイールの側面に描かれた黄金の目玉のマーク。それは《封印の黄金櫃》の箱にも描かれていたものだ。

 それが何を示しているのか、黄昏は詳しく知らない。しかし過去に一度、このマークを付けていた人間がどんな集団に属しているのかは知っている。だからこそ、黄昏はそれを踏まえて相手にこう告げる。

「遅刻覚悟でバイク通学してんだよ。邪魔だからどけ」

「……へぇ、兄ちゃん喧嘩売ってんのか?」

「そう聞こえてないなら、お前の言語機能はイかれてるな」

「てめぇ……!!」

 左右を走る男たちは目に見えて怒りだし、今にも攻撃をしてきそうな勢いだった。

「ちょ、煽ってどうするのよ」

「なんならデュエルで決めねぇか?」

 少女の言葉など気にせず、黄昏は勝手に話を進めていく。

「デュエルだと?」

「そ、サイドカー付きのD・ホイールは一人しか出来ないようになってるから、1対2のバトルロワイヤル形式だ。ただし、先行は俺が貰う。

 俺がお前らに勝てばおまえ等は俺たちの前から消えろ。その代わり、お前らが勝てばコイツをくれてやるよ」

 そういって黄昏は一枚のカードをデッキから引き抜き提示する。

 それはレアリティこそそこまで高くないシンクロモンスターだったが、その場の黄昏以外が知らないカードだった。

「なんだこのカードは?見たことねぇぞ」

「そりゃそうさ。これは俺しか持ってないカードだ。レアリティはそこまでだが、価値は計り知れないだろうな」

「ちょ、ちょっと本気!?自分のカードを自分から賭けるなんて……!」

「いいんだよ、それで。どうだ、悪くない条件だろ?」

「……いいんだな?」

「確認なんざする必要もねーよ」

 少女を置いて話が進んでいくと、男たちは少し間を取る。

「つうことで、《スピード・ワールド2》の準備頼んだ」

「……ねぇ」

「ん?」

「負けたら承知しないから」

「……善処する」

 不機嫌そうにため息をついてはいるがきちんと《スピード・ワールド2》を発動する少女を見て、黄昏は肩をすくませながらデッキを取り出してディスクに入れた。

『《スピード・ワールド2》セット。

 コレヨリ、ライディングデュエルヲ開始シマス』

 無機質な電子音がそう告げると、道路の電光掲示板に《RIDING DUEL》と表示され、黄昏たちのいる道路上から自動車たちが離れていく。さらに、それぞれのD・ホイールに対戦相手の名前と顔が映し出された。

 デュエルディスクにあるオートシャッフル機能によりカードがシャッフルされ終わると同時に、右側の神崎という男が高らかに告げる。

「いくぞ!

ライディング・デュエル――」

 

「「「アクセラレーション!」」」

 

【黄昏】vs【神崎】vs【篠村】

 

「俺のターン、ドロー」

 

【黄昏】

手札:5→6

 

「一番最初のターンはスピードカウンターが増えず、さらにターンが1周するまでバトルフェイズは行えない。

 俺はモンスターをセットし、さらに手札のカードをすべてセットしてターンエンドだ」

 

【黄昏】

0/4000/0

-▲---

■■■■■

【神埼】

5/4000/0

-----

-----

【篠村】

5/4000/0

-----

-----

 

「全部のカードをセットだと?」

「ちょ、《大嵐》とか発動されたら終わりだよ!?」

「うっさい静かにしろ。俺だって考えなしの初心者じゃないっての」

「何か企んでるか……俺のターンだ!」

 

【神崎】

手札:5→6

 

Sp

黄昏

  1

神埼

  1

篠村

  1

 

「俺は手札からモンスターをセット。そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ」

「何をするでもなく、ただ守りを固める、か。

 威勢のわりにはずいぶん消極的だな。怖じ気づいたか?」

「はっ!余裕でいられるのも今のうちだ」

 デュエルが始まるまでは売り言葉には買い言葉を投げ返してきたものの、いざデュエルが始まればそうではないらしい。

 言動はただのチンピラだがデュエルの腕は別だと考え、黄昏も目の前にデュエルに意識を集中することにした。

 

【黄昏】

0/4000/1

-▲---

■■■■■

【神埼】

3/4000/1

---▲-

-■■--

【篠村】

5/4000/1

-----

-----

 

「いくぜ……、オレの、タァーン!」

 

【篠村】

手札:5→6

 

Sp

黄昏

  2

神埼

  2

篠村

  2

 

「手札から《鉄の騎士 ギア・フリード》を攻撃表示!」

 

《鉄の騎士 ギア・フリード》

☆4・地属性・戦士族

ATK:1800

 

 呼び出されたのは全身を堅牢な鎧に身を包んだ漆黒の騎士。その堅牢さはいかなる装備魔法の恩恵を受けることも叶わないが、逆に相手から望まぬ装備を与えられる可能性もないという利点がある。

 その効果がこのデュエル中に活躍するかは不明だが、すくなくともアタッカーとして申し分ない攻撃力を有しているのは確かだった。

「カードを2枚伏せてターンエンドだ」

「そのエンドフェイズにリバースカード《破滅へのクイック・ドロー》を発動!

 お互いのプレイヤーはドローフェイズ開始時に手札が0のとき、2回ドローをすることができる」

 

【黄昏】

0/4000/2

-▲---

■□■■■

【神埼】

3/4000/2

---▲-

-■■--

【篠村】

3/4000/2

--○--

-■■--

 

 何もないと踏んでいた神崎たちは黄昏の思惑を知って渋い顔をする。

「手札をすべて伏せたのはこれを成立させるためか」

「そういうことだ。俺のターン、ドロー!そして《破滅へのクイック・ドロー》の効果でさらに1枚ドロー!」

 

【黄昏】

手札:0→1→2

 

Sp

黄昏

  3

神埼

  3

篠村

  3

 

「そして俺が2回目のドローで引いたのは《ロータリー・ブースト》。このカードは罠カードの効果でドローした場合、このカードともう1枚手札を墓地へ送ることでカードを2枚ドローできる」

 

【黄昏】

手札:2→0→2

 

「……俺はセットモンスター《スクラップ・ゴブリン》を反転召喚」

 

《スクラップ・ゴブリン》

☆3・地属性・獣戦士族

セット→ATK:0

 

「チューナーモンスター……シンクロ召喚か?」

 攻撃力0のモンスターをわざわざ表側表示にするとなれば自ずとその可能性を連想するのは当然だろう。 

 眉をひそめながら少年の場を眺めていた神崎は、それから視線をゆっくりと横へそらして隣で並走する篠村へと移動させる。篠村もそれに気づくと、何かを汲み取ったかのように小さく頷いた。

「俺は《暗黒の謀略》を発動!

 お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ捨て、その後2枚ドローする。

 今回のバトルロワイヤルでの『お互い』って効果はプレイヤー全員を指すルールだ。

 《暗黒の謀略》は相手……この場合は俺以外のプレイヤー誰かが手札1枚を捨てることでこの効果を無効にすることができるが、どうするよ?」

「オレは問題ねぇぜ」

「俺も別に構わねーよ」

 

【神崎】

手札:3→1→3

【篠村】

手札:2→0→2

【黄昏】

手札:2→0→2

 

 このタイミングで手札交換を狙ってきたのは、十中八九黄昏の手札にあったであろうシンクロ素材候補のモンスターを墓地へと送るのが目的だ。

 だが黄昏もそれに抗うことなく手札をすべて捨てて新たなカードをデッキからドローする。

 手札に来た2枚の手札は当然ながら《スクラップ・ゴブリン》を反転召喚したときに行おうとした動きとは全く違うものを要求されることに違いない。だというのに、少年はその2枚のカードを見て小さく笑った。

「俺はまず《破滅へのクイック・ドロー》をリリースして、手札から《Sp-マジック・プランター》を発動。

 カードを2枚ドローする。

 そしてこの瞬間《破滅へのクイック・ドロー》のデメリット効果により俺は3000のダメージを受ける」

「え、ちょ、はぁっ!?」

 

《破滅へのクイック・ドロー》

フィールド→墓地

 

【黄昏】

手札:1→3

ライフ:4000→1000

 

 どこからともなく降り注いだ雷撃に打たれ黄昏たちの乗るD・ホイールはその衝撃にともなって大きく揺れて一時的にコントロールを失ってしまう。

 暴れる車体はあわやコースアウト寸前になるところだったが、運転する少女の頑張りにより事なきを得た。

「そしてダメージを受けたことでリバースカード発動《ダメージ・ワクチンΩMAX》。受けたダメージ分ライフを回復する」

 

【黄昏】

ライフ:1000→4000

 

 一気に削られたライフを元通りに戻し事なきを得たわけだが、元通りになったからと言ってすべてが丸く収まるかといえばそれは話が別というものだろう。

 次に切るカードを眺める少年の胸ぐらをつかむ勢いで、しかしハンドルから手を離すわけにはいかない少女が行き場のない怒りに震えながら吠える。

「あ、あなたねぇ! 大ダメージあるなら先に言ってよ!! D・ホイール運転してるの私なんだからね!」

「あ、悪い。つい」

「ついじゃないよ、ほんとにもう! 次やったら容赦しないからね!」

 ダメージを帳消しできる布陣だったからこその思い切ったプレイングだったわけだが、それを聞かされていない少女からすればいきなりの大ダメージを受けたわけだからたまったものではない。

 至極当然の怒りに黄昏が言い返す言葉はなく、D・ホイールの運転を任せている彼女のご機嫌をこれ以上損なわないようにデュエルを再開する。

「それじゃあ改めて、俺は手札から《Sp-Sp(スペシャル)ギフト》を発動! スピードカウンターが1以上ある時、手札、墓地に存在する魔法カードを除外することでその効果を発動することができる」

 発動されたのは十数年前にライディング・デュエルが高校生でも行えるように法改正が行われた際、それに合わせるように要望する声が跳ね上がり実現したあったもの。

 汎用性のある魔法カードに関してはライディング・デュエル用に《Sp》が付与されたカードが作成されてきたが、特定のカテゴリをサポートする専用カードの《Sp》は現実的ではないとして後回しになっていた。

 それを擬似的にでも使用できるように作られたのがこのカードなのだ。 

「このカードの発動によって俺は墓地の速攻魔法《スクラップ・スコール》を除外し、その効果を発動。

 自分フィールドの表側表示の《スクラップ》モンスター1体を対象に発動。デッキから《スクラップ》モンスターを墓地へ送り、カードを1枚ドローする。その後、選択したモンスターを破壊する。

 俺は《スクラップ・ゴブリン》を選択し、デッキから《スクラップ・キマイラ》を墓地へ送り、さらに1枚ドローして《スクラップ・ゴブリン》を破壊する。

 ……そして《Spギフト》は効果発動後、墓地へ送られる代わりにデッキへ戻る」

 

【黄昏】

手札:2→3

 

《スクラップ・ゴブリン》

フィールド→墓地

 

「《スクラップ》専用の《愚かな埋葬》ってことか。手札を減らさずに墓地肥しが出来るのは強みだが、それでフィールドのモンスターがいなくなるならサクリファイス・エスケープにしか使えなさそうだが」

「それはどうかな? こいつは《スクラップ》のデッキではなくてはならないカードだ。ライディングデュエルでダメージが発生したとしてもお釣りが来るぐらいにはな。

 元々は《ダメージ・ワクチンΩMAX》でリカバリーする予定だったんだが、あんたのお陰で余計なダメージを受けずに済んだよ」

 わざと相手を煽るように説明するが、《暗黒の謀略》がなければライフを維持したままここまでの展開を許すこともなかったのも事実。

 それゆえに煽られた側の神崎も不快そうに眉をひそめつつも反論する様子はなかった。

「さて、それじゃあ《スクラップ》の本領発揮と行こうか! 俺は破壊された《スクラップ・ゴブリン》の効果を発動。《スクラップ・ゴブリン》はスクラップの効果で破壊されて墓地へ送られた場合、墓地の同名カード以外の《スクラップ》モンスターをサルベージできる。

 よって、俺は《スクラップ・スコール》の効果で墓地へ送られた《スクラップ・キマイラ》をサルベージする!」

 

【黄昏】

手札:3→4

 

 1枚のカードから始まり、フィールドのみならずデッキ、手札、墓地のすべてでカードが回り、黄昏の手札はさらに1枚追加された。

「《スクラップ》は1つの効果に2つ、3つと新たな効果が連なっていくカテゴリだ。目先の利益だけに気を取られて足元すくわれないようにな?」

「へ、ならさっさと続けろよ。お前のフィールドから貴重なチューナーが消えたのには変わりないだろ!」

「それはどうかな? 俺は《スクラップ・キマイラ》を召喚!」

 召喚とともに、黄昏の隣を《スクラップ・ゴブリン》と同じように金属で形作られた、翼の生えた獅子が現れて飛行する。

 

《スクラップ・キマイラ》

☆4・地属性・獣族

ATK:1700

 

「こいつは通常召喚に成功した時、墓地の《スクラップ》チューナーを蘇生する!」

「な、チューナーモンスターを蘇生するだと!?」

「俺は墓地の《スクラップ・ゴブリン》を蘇生。[リバイバル・ハウリング]」

 《スクラップ・キマイラ》の雄叫びにより墓地の《スクラップ・ゴブリン》が蘇る。そして間をおかずに《スクラップ・ゴブリン》は白く輝きだす。

「俺は、レベル4《スクラップ・キマイラ》を、レベル3《スクラップ・ゴブリン》でチューニング。

 異なる身体が結合し、やがて地獄の悪魔へと変貌する。シンクロ召喚、凶変せよ《スクラップ・デスデーモン》!!」

 

《スクラップ・ゴブリン》、《スクラップ・キマイラ》

フィールド→墓地

《デスデーモン》

☆7・地属性・悪魔族

ATK:2700

 

 輝きを増した《スクラップ・ゴブリン》は3つの輪へと変わり《スクラップ・キマイラ》を包み込む。ほどなくして一段と光を増すと、鉄の残骸で構成された悪魔へと姿を変える。

「いくぞ、俺は《スクラップ・デスデーモン》で《ギア・フリード》を攻撃! [デモン・スクラップ]」

 《スクラップ・デスデーモン》は雄叫びをあげると金属同士がこすれる音を鳴らしながら剣を構える《ギア・フリード》へと走り出す。

 が、それをさせまいと神崎がリバースカードに手を伸ばす。

「そうはさせねぇ。罠カード、《シフト・チェンジ》発動! このカードは、相手の攻撃対象、または効果の対象を別の自分のモンスターに変更できる。

 攻撃対象を《ギア・フリード》から俺のセットモンスター、《ビック・シールド・ガードナー》に変更!」

「だが、それでも《デスデーモン》の方が上だ」

 鉄の騎士へと迫っていた残骸の悪魔の周囲で空間が歪み、目の前に現れたのは身体が覆われるほどのシールドを携えた守護騎士。ただしその盾でも《スクラップ・デスデーモン》の攻撃を防ぐことはできず、残骸で形作られた拳が立ちはだかる敵を粉砕する。

 

《ビック・シールド・ガードナー》

レベル4・地属性・戦士族

DEF:2600

フィールド→墓地

 

「そしてメインフェイズ、俺は魔法カード、《Sp-エンジェル・バトン》発動。

 自分のスピードカウンターが2以上あるとき、デッキからカードを2枚ドローし、1枚を捨てる」

 

【黄昏】

手札:2→4→3

 

「そして俺は今手札から墓地へ送られた《絶対王バック・ジャック》の効果を発動。このカードが墓地へ送られた時、自分のデッキトップ3枚を確認し、任意の順番にして戻す。

 ……俺はデッキトップを上から《破壊神の系譜》、《Sp-死者蘇生》、《スクラップ・サーチャー》の順番で戻す。

 カードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

【黄昏】

1/4000/3

--○--

■■■■■

【神埼】

3/4000/3

-----

-----

【篠村】

3/4000/3

--○--

-■■--

 

「俺のターン!」

 

【神崎】

手札:3→4

 

Sp

黄昏

  4

神埼

  4

篠村

  4

 

 ドローフェイズを終えてメインフェイズ、神埼のプレイに割り込むようにカードを発動したのは彼の隣を並走する篠村だ。

「メインフェイズ、オレは伏せカード《ディーラーズ・チョイス》を発動! お互いにデッキをシャッフルしてからカードをドローし、その後お互いに手札1枚を捨てさせる。

 この場合の『お互い』って効果はオレがその組み合わせを決めさせてもらうぜ。神埼の手札を捨てるのはオレ、そこのガキの手札を捨てるのは神埼、オレの手札を捨てるのはガキの組み合わせだ」

「……なるほどな」

 篠村の手札がデュエルディスクの機能によって表示され、その内容に少年は小さく呟いた。

 《Sp-サイクロン》、《Sp-エネミー・コントローラー》、《Sp-Spギフト》手札に揃っているその全ては《Sp》カードであり、次の黄昏のターンにはスピードカウンターが4つ以上溜まっている篠村はそのバーン効果で大ダメージを与えるつもりなのだろう。

 正直なところどれを捨てても大きな変化がない。しばし捨てるカードに悩んだ後、伏せカードを除去されるのを避けるために《Sp-サイクロン》を選択すると、各々選択されたカードが墓地へと捨てられた。

 なお、黄昏の手札から墓地へ送られたのは《速攻のかかし》。《Sp-二重召喚》とどちらか選ぶとなれば妥当なところだろう。

 

【神埼】

手札:4→5→4

【黄昏】

手札:1→2→1

【篠村】

手札:2→3→2

 

「俺は《Sp-スピード・フュージョン》を発動!スピードカウンターが4以上あるとき、俺は融合召喚ができる。

 手札の《暗黒騎士ガイア》と《カース・オブ・ドラゴン》を融合し、《竜騎士ガイア》を融合召喚!!」

 

《竜騎士ガイア》

☆7・風属性・ドラゴン族

ATK:2600

 

【神崎】

手札:4→1

 

 手札を大量に消費しながら呼び出されたおそらく彼の主力となるモンスター。

 ただしその攻撃力は惜しくも黄昏の従える残骸の悪魔には届かない。だが……

「さあバトルだ! 《竜騎士ガイア》で《スクラップ・デスデーモン》に攻撃だ!」

「え、《竜騎士ガイア》じゃ《スクラップ・デスデーモン》には勝てないんはずじゃ……?」

「そのガキのモンスターをよく見てみな!」

 

《スクラップ・デスデーモン》

ATK:2700→2200

 

 ライダーの少女が視線を向けた先には、黒いモンスターに羽交い締めにされ、身動きが取れない《スクラップ・デスデーモン》の姿。

 そのモンスターを見て、黄昏が舌打ちをしながら呟く。

「《ギルファー・デーモン》か」

「そういうこった! 篠村が使った《ディーラーズ・チョイス》で捨てられたのは《暗黒魔族 ギルファー・デーモン》。

 こいつは墓地に送られたときに相手モンスターの装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせることができるってわけよ!」

「だったら返り討ちだ。俺はリバースカード《聖なるバリア-ミラーフォース》発動……なっ!?」

 攻撃力を下げられても冷静だった黄昏が驚愕の声をあげる。なぜなら、彼がリバースカードを発動したその直後、発動したカードをレーザーが貫いたのだから。

 そして、神崎とは反対側を走る篠村が不意に笑い出す。

「へへっ、オレもその効果にチェーンして伏せカード《リビングデッドの呼び声》を発動ぉ! 墓地の《人造人間 サイコ・ショッカー》を攻撃表示で特殊召喚だ!

 《サイコ・ショッカー》がフィールドにいる限り、罠カードは使えず、その効果も無効化される!」

「ナイスだ篠村! そして俺は《リビングデッドの呼び声》の発動にチェーン、つまり《サイコ・ショッカー》がフィールドに特殊召喚される前に伏せカード《シールド・スピア》発動! フィールドのモンスター1体の攻撃力を400ポイントアップする。

 これで《竜騎士ガイア》をさらに強化だ!」

 

《竜騎士ガイア》

ATK:2600→3000

《人造人間 サイコ・ショッカー》

☆6・闇属性・機械族

ATK:2400

墓地→フィールド

 

 《ギルファー・デーモン》のせいで身動きの取れない《スクラップ・デスデーモン》に、得物を《シールド・スピア》に持ち替えた《竜騎士ガイア》の槍が接近。

 罠カードを封じられたことで成すすべなく《竜騎士ガイア》の握る真紅の槍が《デスデーモン》を貫かんと放たれる。が、その槍は突然現れた、シールドを携えた戦士の幻影によって阻まれ、今度は神崎が驚愕した。

「なに!?」

「墓地の《シールド・ウォリアー》は、ダメージ計算時にこのカードを除外することで自分のモンスターに戦闘破壊耐性をつける」

「ちっ、だがダメージは受けてもらうぜ!」

「っ!?」

 墓地より現れた剣闘士の力により破壊を免れたものの、超過したダメージは容赦なく黄昏たちを襲いD・ホイールを軋ませる。

 

《シールド・ウォリアー》

墓地→除外

【黄昏】

ライフ…4000→3200

 

「手札交換で墓地発動のカードを捨てるとは、用意がいいじゃねぇか」

「お前らもな。まあ、《暗黒の謀略》の発動前にアイコンタクトしてたみたいだし、そのあとの《ディーラーズ・チョイス》含めてそういう手筈だったんだろ」

「ちょ、それルール違反だよ!?」

「……なんのことだ?」

 神崎と篠村は黄昏にバレていたことで言葉に詰まるが、そのまましらを切った。

 その様子に少女が何か言いたげだったが、黄昏はそれを片手で制する。

「野良デュエルでそこまで厳密にやる必要はねーよ。結局はこのデュエルに勝てばいいんだからな。それで、まだ何かあるか?」

 挑発気味に尋ねる黄昏に対し、神崎は舌打ちをしながら首を横に振る。

「モンスターが残っちまったが、俺はこれでターンエンドだ」

 

【黄昏】

1/3200/4

-○---

-■■■■

【神埼】

1/4000/4

---○-

-----

【篠村】

3/4000/4

○-○--

-■□--

 

「オレの、タァーン!」

 

【篠村】

手札:3→4

 

Sp

黄昏

  5

神埼

  5

篠村

  5

 

「オレは《スピード・ワールド2》の効果を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、手札の《Sp》の魔法カードの数×800ポイントのバーンダメージを与える!

オレの手札には《Sp》が《エネミー・コントローラー》と《Spギフト》と《エンジェル・バトン》の3枚、よって2400ポイントのダメージだ!」

 

【篠村】

Sp…5→1

 

【黄昏】

ライフ…3200→800

 

「う、ぐぅぅ……っ!?」

 篠村のD・ホイールから放たれる雷撃は《破滅へのクイック・ドロー》のデメリット効果にも匹敵する強力な衝撃。

 事前に覚悟ができていたにも関わらず2人の乗るD・ホイールは大きく揺れ、それを運転する少女が歯を食いしばりながらクラッシュを耐えている状況だ。

 それでもライフはついに800のセーフティラインを超えてしまった。

 これによりモンスターの猛攻を警戒するのは当然として、スピードカウンターが4つ貯まれば再びバーンダメージが来る可能性を考えると、すでにカウンターは溜まってる神埼がいるこの状況では悠長に構えている場合ではなくなったといえよう。

「そして俺は手札から《Sp-Spギフト》発動!

 墓地の《拘束解除》除外してその効果を発動だ! オレのフィールドの《鉄の騎士 ギア・フリード》をリリースすることで、手札、デッキから《剣聖-ネイキッド・ギア・フリード》を一体特殊召喚できる!

 デッキから《ネイキッド・ギア・フリード》を特殊召喚! そして効果解決後に《Spギフト》はデッキに戻る」

 

《剣聖-ネイキッド・ギア・フリード》

☆7・光属性・戦士族

ATK:2600

 

 《ギア・フリード》を覆う鉄の鎧に亀裂が入り、鉄の鎧が弾け飛び中から現れた一人の戦士。

 その攻撃力は本来であれば《スクラップ・デスデーモン》に届かないが、今の《デスデーモン》の攻撃力は《ギルファーデーモン》が装備されていることにより2200まで下がってる。

 このままでは前のターンに耐えた意味がない。

 それを理解しているライダーの少女が思わず黄昏の方へ視線を送る。さらに少女はこの少年が伏せているカードが何なのかすべて確認している。そのすべてがこの状況を即座に打開できるものではなく、すべてが罠カードであるがゆえに《サイコ・ショッカー》がいる限り発動させることすら許されない。

 

 ――――このカードをくれてやる。

 

 デュエルが始まる前に黄昏が賭けに提示したのは自分のエースモンスター。デュエリストにとってカードは命にも等しい価値を持っているものだ。

 それがエースモンスターなら尚更。だからこそ、少女はデュエルに口出ししてはいけないと思いながらもその口を閉ざすことができなかったのだろう。

 しかし当の本人が浮かべていた表情は、絶望とは程遠い獰猛な笑みだった。

 それに気づかない相手は己の勝利を信じ、少なくなった手札のカードを切って処理を進めていく。

「その鉄くずは壁にもならないぜ! 手札から《アーマー・ブレイカー》を攻撃表示!

 こいつはメインフェイズに1度、自分の場の戦士族モンスターに装備、または装備解除して特殊召喚できるユニオンモンスターだ。

 その効果を使って《ネイキッド・ギア・フリード》に装備させる!

 そしてこの瞬間、《ネイキッド・ギア・フリード》の効果発動! このカードに装備カードが装備されたとき、相手のモンスターを一体破壊できる。

 《スクラップ・デスデーモン》を破壊だ!」

 

《アーマー・ブレイカー》

☆3・地属性・戦士族

ATK:800

フィールド(モンスター)→フィールド(装備カード)

《剣聖-ネイキッド・ギア・フリード》

ATK:2600→3100

《スクラップ・デスデーモン》

フィールド→墓地

 

 拘束具から解き放たれた《ネイキッド・ギア・フリード》の類まれなる武芸の腕は装備をする際に行う素振りでさえも攻撃と見間違う技量を有しているらしく、振るわれたハンマーによって《スクラップ・デスデーモン》はいとも簡単に破壊されてしまった。

「これでテメェを守るモンスターはいなくなった! バトルだ!」

「ならそのバトルフェイズに入ってからスタートステップ終了時に墓地の《絶対王バック・ジャック》の効果発動! 相手のターン中に墓地のこのカードを除外することでデッキトップを確認し、それが罠カードであればセット、それ以外なら墓地へ送る」

「はっ、何かと思えば運試しか。《ディーラーズ・チョイス》でシャッフルされたってのにまともなカードがくると思ってんのか?

 まあ、どっちにしても罠カードなら《サイコ・ショッカー》がいる限り無意味だが」

「そうとも限らないぞ? 

 ……デッキトップは《タックルセイダー》だ。罠カードではないから墓地へおくられるが、この瞬間《タックルセイダー》の効果を発動。このカードが墓地へ送られた場合、相手フィールドの表側モンスター1体を裏守備表示にするか、相手の表側表示の魔法・罠カードを手札に戻してこのターン中に同名カードの発動を制限するか選べる。

 俺は裏守備表示にする効果を選び、《サイコ・ショッカー》を裏守備表示へ変更!」

 

《人造人間 サイコ・ショッカー》

ATK:2400→セット

 

「なん……っ、だ、だが残念だったな! オレは手札から速攻魔法《Sp-エネミー・コントローラー》を発動!

 《サイコ・ショッカー》の表示形式を表側攻撃表示へ変更させる!」

「ならその効果にチェーンして《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地の《ジャンク・コレクター》を表側攻撃表示で特殊召喚!

 さらにリバースカード発動《針虫の巣窟》! デッキからカードを5枚墓地へ送る。

 ……この5枚の中に《髑髏顔 天道虫》があったから、その効果でライフを1000回復させてもらう」

 

【黄昏】

ライフ:800→1800

 

《ジャンク・コレクター》

☆5・光属性・戦士族

ATK:1000

 

《人造人間サイコ・ショッカー》

セット→ATK:2400

 

「そんな気休めの回復と雑魚を呼び出した程度でどうするんだよ! 《サイコ・ショッカー》で《ジャンク・コレクター》を攻撃! [サイキック・ウェーブ]」

「それはどうかな? 俺は《ジャンク・コレクター》の効果発動! フィールドのこのカードと墓地の発動条件が正しい通常罠カードを除外することで、その罠カードの効果を発動する。

 発動するのは《聖なるバリア-ミラーフォース》だ」

「なん……っ!?」

「一応言っておくが、この効果はモンスター効果として発動されるから《サイコ・ショッカー》の効果は適応されない。

 あと、《アーマー・ブレイカー》の身代わり効果は戦闘で破壊される場合だけだったよな?」

 罠カードの発動に目を光らす人造人間だが、その攻撃の矛先となったアンドロイドのほうが一枚上手だった。

 己の身を犠牲に人造人間にすら認識されない手腕によって構築された不可視の壁は《サイコ・ショッカー》の攻撃を受けるとその効果を発動。

 篠原のフィールドにいる攻撃表示モンスターすべてを焼き払ってしまった。

 

《人造人間サイコ・ショッカー》

フィールド→墓地

《剣聖-ネイキッド・ギア・フリード》

フィールド→墓地

《アーマー・ブレイカー》

フィールド→墓地

 

「ば、バカな、オレのモンスターが全滅だと!?」

「これで手札は今は使えない《エンジェル・バトン》のみ。フィールドはがら空きで墓地も使えそうなカードはないよな?」

「くっ……ターンエンド」

 

【黄昏】

1/1800/5

-----

-■--■

【神埼】

1/4000/5

---○-

-----

【篠村】

1/4000/1

-----

-----

 

 あの絶望的な状況からの形成逆転。神埼のフィールドには未だモンスターを残しているものの、一番優勢だった篠村に関して次の自分のターンが来るまで何もできないという状況にまで追い込むことに成功する。

 不敵に笑うその底の知れなさからか隣でD・ホイールの運転を担当している少女がまじまじと黄昏を見る中、彼はデッキトップに右手を添える。

「俺のターン、ドロー」

 

【黄昏】

手札:1→2

 

SP

黄昏

  6

神埼

  2

篠村

  2

 

「なあ、あんた」

「……え、私に話しかけてる?」

 ドローしたものの動きのない少年からいきなり声をかけられたからか、ライダーの少女はすぐには気づかず間をおいてから慌てて聞き返す。

「さっきはやらかしたからな。あんたには先に見せとく」

 言いながら手札のある1枚のカードをひらひらと見せびらかせるように揺らしている。

 そのカードが何を意味するのか、バイザー越しにその表情が怪訝そうに歪むのがわかった。

「何をするつもりかわかったけど、今の状況でそれできるの?」

「いや? だからこそ今からその状況を作り出すんだ。

 さあ、反撃を始めようか!!」

 不敵な笑みがより獰猛さを帯びながらそう高らかに宣言する少年。はっきり言って今の手札とフィールドからでは反撃などできるわけがないのだが、前髪で隠すようにしている彼の目はすでに先の未来が見通せているらしい。

「俺はまず手札から《Sp-二重召喚》を発動しこのターンの通常召喚を2つにまで増やし、その発動にチェーンして俺はリバースカード《無謀な欲張り》で二枚ドロー!

 ……さらに《Sp-シフト・ダウン》発動。自分のスピードカウンターを六つ取り除き、カードを二枚ドローする」

 

【黄昏】

Sp:6→0

手札:0→2→4

 

 立て続けのカードの発動で準備を整えていく黄昏の一連の動作だが、その途中で発動したカードに対してライダーの少女はが怪訝そうな声で呟いた。

「《無謀な欲張り》にはライフやカードを消費するようなコストは存在しない。その代わり、2ターンもの間通常ドローができなくなる厳しい制約効果がある。

 このタイミングで発動するってことは、まさか……」

「さっき言っただろ、反撃を始めるって。このデュエル、このターンで終わらせてみせるさ」

「……ふふふ、そこまで言い切られたら私も覚悟しなくちゃね」

 黄昏としてはつべこべ言わずに黙ってみてろ、ぐらいのニュアンスで荒っぽく伝えたのだが、どうやら彼女はその返答がお気に召したらしい。

 こちらも準備万端、と言わんばかりにD・ホイールのアクセルを勢いよく回してモーメントの回転を無理やり引き上げていた。

「俺は手札から《Sp-死者蘇生》を発動!

 墓地の《スクラップ・ゴブリン》を蘇生する!」

 

《スクラップ・ゴブリン》

墓地→フィールド

 

「さらに手札から《スクラップ・ブレイカー》を特殊召喚。このモンスターは、相手フィールドにモンスターがいるとき手札から特殊召喚できる。

 ただし、この効果で特殊召喚した場合は自分フィールドのスクラップモンスター1体が破壊される。

 ……悪い、《スクラップ・ゴブリン》」

 特殊召喚された《スクラップ・ブレイカー》はどこか不安定で、傍らの《スクラップ・ゴブリン》を分解して吸収することでようやく安定した。

 

《スクラップ・ブレイカー》

☆6・地属性・機械族

ATK:2100

《スクラップ・ゴブリン》

フィールド→墓地

 

「わざわざ特殊召喚したモンスターを破壊してまで、攻撃力の高いモンスターを召喚した……?

 いや、墓地の《スクラップ》モンスターをサルベージするつもりだね」

「もちろんそれもある。けど、《針虫の巣窟》で落ちていた別のモンスターのお披露目と行こうか。

 俺は墓地に送られた《スクラップ・ゴブリン》と、墓地にいた《スクラップ・サーチャー》の効果発動! 《スクラップ・ゴブリン》の効果で《スクラップ・キマイラ》をサルベージ!

 さらに墓地の《スクラップ・サーチャー》はスクラップモンスターが破壊され、墓地に送られたとき、墓地から特殊召喚できる!」

 

《スクラップ・キマイラ》

墓地→手札

《スクラップ・サーチャー》

墓地→フィールド

【黄昏】

手札:2→3

 

「そして俺は手札に加わった《スクラップ・キマイラ》を召喚!

 この瞬間《スクラップ・キマイラ》の効果発動! 召喚時に墓地に存在する《スクラップ》チューナー、《スクラップ・ワーム》を蘇生![リバイバル・ハウリング]」

 フィールドに現れたのは先ほども召喚された、神話上の生き物キマイラを模したスクラップモンスターだ。その雄叫びは今一度墓地の仲間を呼び戻す。

 ただし呼び戻されたのは《ゴブリン》ではなく、《針虫の巣窟》により墓地へと落ちた別の仲間。

 

《スクラップ・ワーム》

☆2・地属性・昆虫族

ATK:500

墓地→フィールド

 

「さらに二度目の通常召喚権で《スクラップ・サーチャー》をリリースし《スクラップ・ゴーレム》をアドバンス召喚!」

 

《スクラップ・サーチャー》

フィールド→墓地

《スクラップ・ゴーレム》

レベル5・地属性・岩石族

ATK:2300

 

 フィールドに並び立つ4体の《スクラップ》モンスターたち。そのすべてが別々の種族を模しており、統一性がないにも関わらず各々が仲間のためにその身を捧げる結束の強いモンスターたちだ。

「ここで俺は《スクラップ・ゴーレム》の効果発動。1ターンに1度、墓地のスクラップモンスターを自分、または相手フィールドに特殊召喚できる。

 俺は墓地の《スクラップ・サーチャー》を()()のフィールドへ特殊召喚する! [クリエイト・ジャンク]」

「俺のフィールドに特殊召喚だと?」

 

《スクラップ・サーチャー》

墓地→フィールド(神崎)

 

 怪訝そうに眺める神崎の前で、墓地からフィールドに舞い降りた残骸の不死鳥。その役割は決してサンドバックにするだけではないことを証明するように黄昏は効果を告げる。

「《スクラップ・サーチャー》の第二の効果発動。このモンスターが特殊召喚されたとき、そのプレイヤーのフィールド上のスクラップモンスター以外は破壊される! [パーツ・リジェクション]」

 《スクラップ・サーチャー》から破片が飛び散ると、飛び散った破片が付着した《竜騎士ガイア》は拒絶反応をおこして破壊された。

 

《竜騎士ガイア》

フィールド→墓地

 

「これでお前らのフィールドはがら空き同然だ。まずは《スクラップ・ゴーレム》と《スクラップ・キマイラ》で篠村にダイレクトアタック!」

「ぐ……っ! くそ、くそぉぉぉぉっ!!」

「篠村ぁぁぁっ!?」

 

【篠村】

ライフ…4000→1700→0

 

 《スクラップ・ゴーレム》のその太い腕と《スクラップ・キマイラ》の牙。二体のモンスターの攻撃をまともに受けた篠村は体勢を大きく崩す。

 ライフを削りきられたことで篠村のD・ホイールはオーバーヒートを起こし、排熱しながら急停止。これでもう彼がこのデュエルに参加することはない。

「次はあんただ」

「……だが残ってるのは攻撃力500の《スクラップ・ワーム》と攻撃力2100の《スクラップ・ブレイカー》の二体だけ」

「だと思ってるのか? 俺は手札から速攻魔法、《スクラップ・ポリッシュ》発動! 自分フィールドのスクラップモンスターを破壊し、他のスクラップモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる!

俺は《スクラップ・キマイラ》を破壊し、他のモンスターたちを強化!!」

「あ? バカかてめぇは。《スピードワールド2》が発動してるライディングデュエルで《Sp》を持たない魔法カードをそのまま使えば2000ポイントのバーンダメージが発生するの忘れてんのか?」

「もちろん忘れてねーよ。だからさらに墓地の《ダメージ・ダイエット》をチェーンして効果発動! 墓地のこのカードを除外することで、このターン受ける効果ダメージをすべて半分にする!」

 ペナルティにより虚空から飛来した雷撃は、直前に展開された光の壁によりその威力が半減。無視できない威力には間違いないが、それでも黄昏のライフはたしかに残っている。

 そしてその傍らで《スクラップ・キマイラ》の身体が分解されると、その部品が各モンスターに装備されて即席の武器となり残る味方の攻撃力を補強していく。

 

【黄昏】

ライフ:1800→800

 

《スクラップ・キマイラ》

フィールド→墓地

 

《スクラップ・ワーム》

ATK:500→1500

《スクラップ・ブレイカー》

ATK:2100→3100

《スクラップ・ゴーレム》

ATK:2300→3300

 

「な……」

「それぞれの部品が分解、結合することで新たな力が生まれるモンスターたち、それがスクラップだ」

「このガキホントにやるつもりか、1ターン2キルを……」

「有言実行は基本だろ? まずは《スクラップ・ワーム》の攻撃だ。こいつは相手フィールドにモンスターがいようが関係なく相手プレイヤーへ直接攻撃できる!」

 

【神崎】

ライフ…4000→2500

 

 本来であればモンスターに阻まれる攻撃も、その軟体な動きで死角から回り込んで迫ることで相手へ直接ダメージを叩き込む。元々の攻撃力は微々たるものであるが、仲間の残骸を背負ったその攻撃はライフを半分近く削る大ダメージとして刻まれる。

「トドメだ!《スクラップ・ブレイカー》で《スクラップ・サーチャー》を攻撃! [スクラップ・プレス]」

「させねぇよ! 手札から《クリボー》を捨てて、戦闘ダメージを0にする」

 

【神崎】

手札:1→0

 

 仲間の残骸によってその凶悪さを増した《スクラップ・ブレイカー》の腕が神崎へと振り下ろされる。

 が、その攻撃が神崎を襲う直前、目の前に巨大な《クリボー》が現れて攻撃を遮った。

「あ、危ねぇ……けど、どうにか凌いだぞ。これで俺が次のターンに《Sp》か一発逆転になるカードを引けば……」

「何を言ってんだ?まだ俺のバトルフェイズは終わってないぞ」

「強がるのもいい加減にしろ! もうお前のモンスターは攻撃を終えている。新しいモンスターでも召喚しない限り追撃は無理だ」

「なら、その新しいモンスターを召喚すればいい。このリバースカード《緊急同調》を発動してな!」

「こ、ここでバトルフェイズ中にシンクロ召喚が可能になる罠カードだと!?」

「そうだ。俺はレベル6《スクラップ・ブレイカー》に、レベル2《スクラップ・ワーム》をチューニング……――」

「レベル8のシンクロモンスター……スクラップデッキだから《スクラップ・ドラゴン》かな?」

「残念ながら、俺は《スクラップ・ドラゴン》をデッキに入れてない」

「はい?」

 黄昏から返ってきた予想外な返答に、少女は間の抜けた声が出てしまう。

「じゃ、じゃあ一体何を召喚するつもりなの?」

「さっきも見せたコイツだよ。異なる身体が集結し、ここに破滅の魔物が誕生する。シンクロ召喚、這い上がれ《スクラップ・ヘルサーペント》!!」

 

《スクラップ・ブレイカー》、《スクラップ・ワーム》

フィールド→墓地

《スクラップ・ヘルサーペント》

☆8・地属性・爬虫類族

ATK:2800

 

 現れたのは先ほど黄昏がアンティルールで提示した、他のスクラップモンスターと同じように残骸で形作られた大蛇。

 見たこともないモンスターを目の前に、黄昏以外の二人が《スクラップ・ヘルサーペント》に釘付けになる。

「なに、このモンスター……?」

 空中を這うようにバイクと並走するそのモンスターが放つプレッシャーは、ライダーの少女は思わず身震いするほどだ。

 同時に、それと同等の殺気を彼女はすぐ隣から感じていた。

「こいつの攻撃力は2800。あんたのフィールドにモンスターはなく、ライフは2500。これで届いたな」

「くそ、なんなんだ、なんなんだよお前は!?」

「ちょっと複雑な事情を持った、ただの高校生だよ」

 直後、身体のどこからか発せられる《スクラップ・ヘルサーペント》威嚇の声に神崎が怯んだのを見計らって、黄昏は《スクラップ・ヘルサーペント》に攻撃命令を出す。

「やれ、《ヘルサーペント》。プレイヤーへダイレクトアタック![ヘイト・スワロー]!!」

 巨大な身体を動かしながら進む《ヘルサーペント》の顎が大きく開くと、そのまま神崎を上から丸呑みしてしまった。

「あ゛あぁぁぁぁああっ!!」

 

【神崎】

ライフ…2500→0




遊戯王恒例の攻撃力3000のモンスターとの戦闘。
とりあえず後付けなので1ターンだけの3000でしたが、やっぱり遊戯王の二次創作書くならならこういうお決まりは書いて見たいですよね

そしてオリジナルカード第一号、となってほしかった「スクラップ・ヘルサーペント」
このモンスターがこの物語のキーカードになってくることと思います。
効果は後ほど明らかになってきますが、とりあえず言えるのは「スクラップ・ドラゴン」の代わりとなるモンスターです

--------

そして本当のオリカ第一号『ロータリー・ブースト』。しばらく後になるデュエルで出る予定でしたが、思わぬ修正ミスで出張してきてもらいました。


『ロータリー・ブースト』
レベル1・地属性・機械族
ATK:500 DEF:400
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①このカードが罠カードの効果でドローされた場合、このカードと手札の他のカード1枚を墓地へ送ることで発動できる。
デッキからカードを2枚ドローする。
②このカードが墓地に存在し、自分墓地の罠カードが効果を発動するために除外された場合に発動できる。
このカードと除外された罠カード1枚をデッキへ戻す。その後、デッキトップからカードを2枚ドローする。


条件が限られていますが、自分だけ手札交換や墓地肥やしができる手札交換カードです。
主人公のデッキコンセプトは罠をフィールドはもちろんフィールド外からも発動していくトラップデッキです。
スクラップではいかに早く墓地にキーカードが貯まるかで動きやすさが変わりますので、これからもちょくちょく出てくるかと思います。

……『ファクトリー』が出てからはちょっと変わりましたけどね(ボソッ)

※再編集を含めて2023年から投稿を再開しましたが、流石に効果が限定的すぎたので②の効果を追加しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。