遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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キャラのイメージ固めで、ヒロインを描きました
サイズがでかいので、スマホだと大丈夫だと思いますが、パソコンだと注意です


【挿絵表示】


ひとまず男子制服のデザイン決めも兼ねて主人公は描く予定です

ヒロイン描いてる途中に気づいたんですが、主人公のほうの容姿説明をしてませんでしたね…
細かい部分はまた描いてる途中で変わると思うんですが、とりあえず決定してるのは、
・ZEXALのドロアと同じぐらい、前髪が長い(メカクレキャラではない)
・銀髪
・赤い目
・スポーツ用のヘアバンド(基本は首にしてて、D-ホイールの整備時にしてる)
です。


今回は主人公の設定を一部公開する回で、デュエルはなしです


不思議な『眼』を持つ少女

 翌日、黄昏は指定された時刻より1時間も早く校門前に着き、壁に身体を預けていた。前髪によって隠れていてよく見えないが、彼の目元には微かに隈ができており、顔色もいいとは言えない。

 昨日逃げるように学生寮へと帰宅した後、現実逃避するためにベッドに潜り込んだはいいものの、全く寝られずに朝日が昇ってしまったのだ。

 その後も結局一睡もできなかった黄昏は、昨日の昼から何も食べなかったことで空腹を訴える身体のため、押し込むように朝食兼昼飯を済ませると、部屋ですることもなく、運動がてらさっさと集合場所へ向かったのだが……

「さすがに早すぎたな。カードショップにでも寄って時間を潰すか」

『さすがに《電脳基盤》は限定的過ぎるッス。アニキのデッキに相性のいいカードがあればいいッスね』

「プレート魔法を検討するなら、フィールド魔法についても考えないとな。フィールド魔法がないなら別に《電脳基盤》のままでも問題ないし――」

 誰もいない校門前で《スクラップ・ゴブリン》と会話をしていた黄昏はその口を紡ぐ。最近はこういうことが多々あり、《スクラップ・ゴブリン》もどうしたのかと尋ねることなくその姿を消した。

 視線を向けた先にいたのは、私服に身を包んだ金髪の少女だった。

「リリア……」

「や、やっほー」

 黄昏が彼女の名を呼ぶと、リリアは笑みを浮かべて挨拶を返す。しかし、その笑みはどこかぎこちなかった。

「ずいぶん早く来たんだな」

「それは遊糸だって一緒だよー」

「まあな」

 そこで話が途切れると、二人の間に気まずい空気が流れる。会話が無くなった二人はお互い距離を置き校門前で時間が来るのを待っていた。

「ちょっと、聞いてもいいかなー?」

「どうした?」

「昨日、カードの精霊とかなんとか言ってたよねー? あおいんはいるって言ってたけど、ホントにいるのかなー、なんて……」

「いるよ」

 即答する黄昏にリリアは次の言葉を探して視線が彷徨う。間を置かないようにするために焦っているのか、何かを言おうとしては口を閉じるというのを繰り返し、かえって時間がかかっていた。

「ご、ごめんねー。なんか、丁度いい言葉が見つからないやー」

 ハハハ、と乾いた笑みを浮かべるリリア。その横顔にかける言葉を、黄昏は生憎持ち合わせていない。

 《スクラップ・ゴブリン》を見せれば解決だったのだろうが、それを思いつかなったところを見ると、黄昏自身も相当混乱しているのだろう。

 これまでを思い返してみると、過去に自分の正体がバレたとき、避けられることはあってもこうやって歩み寄ろうとしてくる人はほとんどいなかった。特に同年代の子供たちには恐怖の眼差しを向けられ、石をぶつけられることもしばしばあった。

 そうやって、長い間ほぼ『敵意』だけを向けられて育った黄昏は、リリアのような接し方をしてくる人を珍しく感じて仕方がなかった。

「あんたは、俺のこと怖くないのか?」

 故に、昨日と同じその質問は至極当然のものだった。

 葵たちはカードの精霊を知っていた。知っていたからこそ、黄昏に普通に接することが出来たのかもしれない。だが、リリアはカードの精霊のことを知らない。害はないと言ってはいるが、未知の存在に臆することなく言葉を投げかけるのはどれだけの勇気がいることだろうか?

 黄昏の質問に対して約10秒、たっぷりと時間を置いたリリアは、慎重に言葉を選ぶように、ゆっくりとその口を開く。

「わかんない」

「はぁ?」

 ゆっくりと、しかしはっきりと言われたその言葉に、黄昏は目を丸くする。

「だって、遊糸自身、自分のことわかってないんでしょー? だったら、今のところはわかんないよー」

「いや、それなら俺から避けるもんじゃないのか?」

「なんでー?」

「なんでって、そりゃ……」

「人の意見なんて気にしても仕方がないよー?」

 普通だから、と言う前にリリアがそれを否定する。自分の考えが読まれていることに言葉を失っていると、リリアはさらに続ける。

「アタシは、アタシの直感を信じてるからねー」

「なんだよ、それ」

 考えているようで考えてない彼女の返答に、黄昏は思わず吹き出してしまう。するとリリアはいつものような人懐っこい笑みを浮かべた。

「ようやく笑ったねー」

「え……」

「だって遊糸、さっきからずっと怖い顔してたんだもん、アタシ何か悪いことしたのかと思っちゃったよー」

 言われて、黄昏はさっきまでの自分を振り返ってみる。たしかに、昨日からずっと気を張っていて、心に余裕がなかったのかもしれない。先ほどの《スクラップ・ゴブリン》との会話も、会話というよりは自分の独り言に近かった。

(後で謝っておかないとな)

 いつも自分の傍にいてくれる相棒のありがたみを実感した黄昏は、同時に申し訳なさでいっぱいになる。ただし、調子を取り戻したリリアを相手に落ち込む暇はない。

「それより遊糸って、あおいんのことどう思ってるのー?」

「ど、どうって?」

「もちろん好きか嫌いかだよー」

「なんでいきなりそんなこと聞くんだよ?」

「だって、昨日のあれ、あおいんに告白してるみたいだったよー?」

「はぁ!?」

 思わぬ指摘に黄昏は裏返った声を出してしまう。

「で、どうなのー?」

「いや、あれはそんなつもりで言ったんじゃ……

 変に思われてなければいいんだけどな」

「大丈夫だよー。だってあおいんも――」

「いきなり何口走ろうとしてるのリリア!?」

 いつの間にか背後に立っていた葵が、リリアの口を塞いでこれ以上の発言をしないように物理的に口封じを行う。

「七波、お前いつからそこに?」

「ちょっと前からだよ。なんか楽しそうに話してたし? 邪魔しちゃ悪いでしょ?」

 心なしか、葵の口調が刺々しい。

「怒ってる?」

「怒ってないけど?」

 ……完全に怒っている。何が理由がわからないが、これ以上触れると更なる地雷を踏むと理解した黄昏はこれ以上の追及を止め、もう一つ気になっていることを尋ねる。

「それはそうと、そろそろリリアが死にそうだが?」

「え……ってご、ごめん!」

 黄昏に言われて確認すると、口封じで口どころか鼻まで覆われていたリリアの顔色は見る見るうちに青白くなっていた。

 ようやく解放されたリリアは必死に酸素を取り込もうと喘いだあと、恨めしそうに葵の方へ振り返る。

「ううー、あおいんひどいよー」

「貴女が変なこと口走るからでしょ?」

「だって本当のことだよねー」

「もう一回苦しい思いする?」

「う、それは勘弁……」

 黒い笑みを浮かべた葵に肩をすくめるリリア。おそらく、いつもこういったやり取りをしているのだろう。

 そんな2人のやり取りをしていた葵は不意に周囲を見回す。

「早乙女先輩は……いないんだね」

「ああ、まだ見てない」

「そっか。いきなりでいろいろ混乱してたし、もしかしたら来ないかもね」

「普通はそうだろうな」

 それからしばらく待ってはみたものの、一向に彼女が来る様子はなかったため、黄昏たち一行は早乙女との合流は断念して目的地に向かうことにした。

 

 ★

 

 葵に連れられどこまで行くのかと心配していた黄昏だったが、以外にも目的地はアカデミアからそう遠くない神社だった。

「こんなところに神社なんてあったんだな」

「アカデミアから近いとは言っても、この周辺は学生が立ち寄るような場所はあまりないからね。意識してこっちに来ない人だと、知らなくても仕方ないかも」

 言いながら鳥居を潜ると、竹ぼうきを持った巫女装束の少女が境内で清掃を行っていた。

 地面についてしまいそうな長い黒髪を後ろで束ね、黒曜石のような透明感のある黒目少女はこちらに気づくと、微笑んで出迎える。

「あら、見覚えのある慎ましい胸と思えば、葵ではございませんか」

「ぶっ飛ばされたいの?」

 ただ、その口から放たれたのはとんでもない爆弾発言だったが……

 葵が条件反射で拳を握りしめると、口元を隠して少女は優雅に微笑む。

「冗談でございますよ。2割ほど」

「ほとんど本心だよねそれ!?」

「そうとも言いますね。それで、今日はどういったご用件で?」

「……まあ、さっきの話はあとでじっくりするとして、貴女の父親と話したしたいんだけど?」

「ふふふ、相変わらずね。ですが、お父様は不在でございますよ」

「こんな時に限って……」

「運がいいでございますね」

「むしろ不運だよ。よりにもよってこのタイミングに来ちゃうなんて……」

「そうは言っても、本当は私に会いたかったのでございませんか?」

「誰が好き好んで会いに来るもんか」

「ふふふ、それは残念でございます。急ぎのようでしたら私が対応しますが?」

「むしろ梓じゃないとできない用事だよ。話が脱線しないように、本当は貴女の父親も同席して欲しいかったけどね」

「……なるほど、話してみなさい」

 葵の言葉に少女は表情を引き締めると、2人だけで会話が進んでいく。

 その直前までアイドルとして見せてはいけないのでは、と思う応答があったが、それだけ彼女の前では気を張っていない、ということだろう。

「なんだかあおいん、楽しそうだねー」

「まあ、気を許してるって意味なら合ってるかもしれねえけど、それ本人に言うなよ?

 何をされるかわからねえから」

「わかってるよー」

 リリアとそんなやり取りをしていると、用件を伝えたのか少女の視線がこちらに向いていた。彼女は真剣な眼差しで黄昏とリリアを品定めするように視線を上下に移す。

 しばらくして、なるほど、と何かに納得すると彼女は教科書の手本を見ているかのような綺麗なお辞儀をし、再び柔和な笑みを浮かべて自分の名前を名乗る。

「わたくしは(かんなぎ)(あずさ)と申します。ここの巫女ですが、葵の相談役も受け持っております。黄昏遊糸さんと、リリア・ミラーさんでいらっしゃいますね」

「あ、はいそうですー」

「敬語は使わなくても大丈夫ですよ。葵と並ぶとよく年上だと勘違いされますが、わたくしもあなたたちと同じ17歳でございますから」

「私が子供っぽいっていいたいの? 梓がひねくれてるだけでしょ」

「馬鹿正直ではダメな場面も頻繁にございますから」

「それ遠回しに私が馬鹿正直って言ってるよね!?」

 クスクスと笑う梓の煽りに噛みつく葵だが、お互いに嫌っているというわけではないのは黄昏にもわかった。これが彼女たちのコミュニケーションなのだろう。

 そう理解しつつも下手にこちらに飛び火されないように一歩引いたところで見守っていると、葵とのやりとりを満足そうに終えた梓がこちらに気づいて手招きをする。

「葵から事情は承りました。みなさんこちらへどうぞ」

 改めて梓によって本殿へ招かれると、彼女の背中を追うように長い廊下を進むと、ある部屋の前で立ち止まった。

「神主であるお父様が不在のため、本殿へ招くことはできませんので、お客様が利用する控室で詳しく聞かせていただきます」

 そう言ってふすまを開けると、他の和式の内装とは打って変わって、西洋の一室を彷彿とさせる、部屋が広がっていた。

 少女はその部屋の中心に置かれたソファーに腰を下ろしように促し、全員が座るのを確認してから彼女も3人と向かい合うように腰を下ろす。

「では、改めてご用件を」

「さっき話した通りだよ。黄昏君のこと、梓ならわかるんじゃないの?」

「ええ、彼が人ならざる者だということぐらいは一目でわかります。それにしても、ずいぶんと面白い組み合わせでございますね」

「……どういう意味?」

「言葉通りの意味でございますよ。いろいろと含んでおりますが、ね。」

「というか、その一部使いどころ間違えたような敬語どうにかならないの?」

「使うべきときにはちゃんと正しい敬語は使っておりますので、お気になさらず」

「…………」

 リリアとはまた違ったタイプで掴みどころのない少女は、葵の不機嫌そうな顔を見て楽しそうに笑みをこぼす。

「さて、時間を無駄にするのももったいないでございますから、そろそろ本題に映りましょうか。黄昏さんの正体について解明してほしいとのことでしたね?」

「呼び捨てでいい。それで、わかるのか?」

「では黄昏と。先ほども申した通り、今の時点で貴方が『人間でない』ということはわかります。ですが、それ以上を調べるとなると、特殊な手順を踏む必要があります」

「わかるならやってくれ。いい加減、自分の存在を自分がわからないのはうんざりだ」

「では、失礼します」

 言うが早く、梓は自然な動作で近寄り両手で黄昏の前髪を分けて素顔を見やすくすると、そのまま彼の顔を固定し、鼻先が触れそうなところまで自分の顔を近づける。至近距離で彼女の目を見た黄昏は、その瞳にすべてを見透かされているような、あまり心地のいいものではない感覚を覚えた。

 しかし、あまりに急な状況に黄昏はなすがままになっており、この状況に異を唱えたのは意外にも葵だった。

「ちょ、貴女一体何してっ!?」

「あら、お忘れでございますか? 説明してからまだ1年経っていないと、私は記憶しているのでございますが?」

「わかってるよ! 確かあなたの『眼』、見たものの『本質』が色と形で見えるんだよね?」

「ええ、わたくしたち梓家の巫女は、代々この『眼』を宿しています。というよりは、『眼』を持つものが巫女になる、と言うべきでございますね。

 まあ、わたくしの説明は今必要ではないでしょう。重要なのは、この『眼』は対象のものに近ければ近いほど、より『本質』の色や形が見やすくなるということでございます」

「だからって顔じゃなくてもいいでしょ!?」

「顔ではなく目でございますよ。目からはいろいろなことがわかるものでございますから」

 それより、と梓は顔を葵の方に向けると、意地悪な笑みを浮かべる。

「ずいぶんと慌てているようでございますが?」

「目の前でそんなことされたら誰だって慌てるよ!」

「それ以外にもありそうでございますが?」

「あるわけない! というか、黄昏君も何か言ったらどうなの!?」

「え、俺のせいなのか!?」

 思わぬ飛び火にギョッとする黄昏。葵は明後日の方を向いてそれ以上の会話を拒否したため、この討論は黄昏のせいということで幕を閉じた。

「……これどういう反応すれば正解だったんだ?」

「ふふふ、葵があんなに慌てるのは初めて見ました。あなたと、それからリリアのおかげでございましょうか?」

「え、アタシも? さ、さあどうなんだろー?」

「人に影響を与えるときというのは、基本無自覚であるものです」

「それで、黄昏君について何かわかったの?」

「ああ、そうでしたね。あなたの奥に、蛇のようなモンスターの黒いシルエットが見えました」

「蛇?」

「ええ、普通の人間なら色はまちまちでも、そのまま人のシルエットが見えるだけなのですが、あなたからはそれが見えません。

 つまり、あなたは人ではなく蛇に関係した何か。それに加えて、わたくしの経験上、黒は良い面と悪い面の両方の側面を持っている、ということになるのですが、心当たりはありますか?」

 思い浮かぶのは、自身の右腕に浮き出る蛇の鱗。しかし、それはいつも自分の意思とは関係なく現れるため、今ここで見せることはできない。

「これは、関係あるのか?」

 代わりに黄昏が取り出したのは、彼だけが持つスクラップモンスター《スクラップ・ヘルサーペント》。そのカードを受け取った梓はまじまじとその『眼』で観察する。

「私が『視』たモンスターとは違いますが、同じものを感じますね。

 ……なるほど、これは《スクラップ・ドラゴン》だったカードですか」

「わかるのか?」

「あら、ずいぶん立派な記憶力の持ち主でございますね?」

「……ああ、そうだったな」

「いかがなさいました?」

 不思議そうに首を傾げる梓に黄昏は肩をすくめる。

 てっきり彼女の毒舌はわざとなのかと思っていたが、どうやら葵に対してわざとらしい敬語を使う以外、彼女の素なのだろう。

「いや、気にしないでくれ。それで、何かわかったのか?」

「そうですね……。ベースは《スクラップ・ドラゴン》のままのようですし、このカードが原因というよりは、あなたの影響を受けてこのように変化したようですね」

「俺の?」

「はい。《グレムリン・ダウン》発生以降、姿を変えたモンスターを何度か見たことがありますが、このモンスターは別格です。カードそのものにここまで浸食が進んでいるのは初めて見ました。

 その上、蛇のモンスターに変化したということは、あなたの影響が少なからずあるのでしょう」

 梓に向けていた視線が、自然と彼女の手にある《スクラップ・ヘルサーペント》に向けられる。精霊が宿っていたわけではないが、自分のせいでカードが変化してしまったというのはあまりいい気分ではなかった。

「カードに浸食って言ってるけど、あれってウイルスの拡大で起こったんじゃないの?」

「一般にはそう公表されてございますが、本当は全く違うものでございますよ。事実とは皆が望む虚構であるべきときも必要ですから」

「モンスター、だろ?」

「おや、ご存知でしたか」

 明かされる真実に、葵とリリアは驚愕する。いや、それ以前になぜ黄昏が知っているのか、それが想像できないリリアは率直に尋ねる。

「待ってよー、なんで遊糸は知ってるのー?」

「《スクラップ・ドラゴン》が《スクラップ・ヘルサーペント》になるときに偶然な。

 ノイズが走る《スクラップ・ドラゴン》に、霧みたいなあいまいな形のモンスターが入っていくのが見えたんだよ」

「で、でもそんなモンスター、アタシ見たことないよー?」

「他の国では作られてるって可能性もあるけど、カードになってないモンスターだっているんだよ。俺たち人間がこの世界に住んでるように、デュエルモンスターの世界に住むモンスターたちがな。それが、俺や葵が言ってたカードの精霊だ」

「そういうことです。デュエルモンスターのカードは我々人間が作り出したものに違いありません。しかしそのアイディアというのは、カードの精霊の姿や力などのイメージを感じ取った製作者が、その通りに作成しているだけなのです。

 我々一般人にモンスターの募集をするのも、そういったものを感じ取れる人からの募集を狙ったものなのですよ」

 加えて彼女が言うには、その作成者によって作られたカードは言わば器であり、稀にそのカードに、本物のモンスターの魂が宿ることがある。これが、俗に言う精霊を宿したカードなのだという。

 さらに《グレムリン・ダウン》を起こしたのも、この精霊の仕業らしい。その精霊は特殊で、自身のカード以外にも宿ることができ、尚且つ宿ったカードの情報を書き換えてしまうのだ。ただし、降霊するのはデュエル中だけらしく、デュエルが終了すればその繋がりは断たれ、元のモンスターに戻るようだ。

 この性質が原因で、《グレムリン・ダウン》はウイルスが原因だと勘違いされていたのだ。ただ、カードの精霊といって信じる人は限られているうえ、下手をするとさらに混乱を招くと直感した梓の提案で、真実はもみ消されて一部の関係者だけが知るだけとなった。

「さしずめ、デュエルモンスター界の怨霊ってことか。けど、それ俺たちに言ってもよかったのか?」

「たかが数名の意見で世間の意見が覆られることはありませんから」

「あ、うん。まあそうなんだけどな」

 先ほどと同じように手厳しい発言を素で行う梓。実際その通りなのだが、黄昏は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「それに、黄昏はすでに知っていたようですし、葵も精霊を知っているので、不用意に広めるようなことはしないでしょう? リリアはそもそも信じていなさそうですし」

 言われて視線を向けてみると、リリアは口をポカンと開けたまま動かず、そしてあまり理解できてなさそうであった。

 たしかに、現象を目の当たりにしている黄昏やカードの精霊について知っている葵ならともかく、そもそもカードの精霊を知らない彼女からすると、この話はおとぎ話の一種にしか聞こえないのだろう。

「リリアが望むんなら、精霊見せることはできるぞ?」

「あー、いや、たぶん混乱すると思うよー。でも、見えるなら見てみたいかもー」

 好奇心にかられた彼女の目を確認すると、黄昏は頷いてから虚空に向かって話しかける。最初その姿にポカンとするリリアだったが、次の瞬間、驚愕の声を上げることとなった。

『ど、どうもッス』

「え、ええええええええ!? 今ソリッドビジョン起動してないよねー? というか、しゃべったー!?」

 ソファに座る黄昏の膝の上に現れたのは、今まで黄昏が何度も召喚し、そのピンチを救ってきたモンスター、《スクラップ・ゴブリン》だった。ただし、現在デュエル中ではないためソリッドビジョンは起動しておらず、何より意思を持っているかのように人語を話す《スクラップ・ゴブリン》など、リリアは見たこともないため思わず叫んでしまう。

『え、えっと、ホントに出てきてよかったんスか? なんかすごい引かれてる気がするッス』

「お前の無機質な顔のせいじゃないのか?」

『ヒドイ! これでもスクラップ(なかま)の中じゃ美形って評判なんスよ!?』

「いや、それはないだろ。つーか、美形以前にスクラップの中で標準誰だよ。

 まー、心配しなくてもリリアなら何だかんだ順応してくれそうだし、他の二人はそもそも精霊について知ってるはずだから」

 なだめるも抗議を続ける《スクラップ・ゴブリン》を説得させるために葵と梓が座っている方を見る。しかし、その二人も唖然とした様子で目を丸くしていた。

「……あれ?」

『見た感じ、2人も驚いてるッスよね?』

「いや、だって七波は知ってるって昨日言ってたし、精霊関係の相談をしたのは梓だって言ってなかったか?」

「いや、だって……」

 慌てて確認を取る黄昏に、葵がようやくその口を開いた。

「どうして黄昏君の精霊はちゃ()()()見えるの?」

「どういうことだ?」

 葵の言葉の意味がわからない。確かに精霊は自分の姿を消せるため、普段は見ることが出来ないが、ちゃんと姿を見せれば誰でも目視できるはずなのだが。

「確かにカードに宿った精霊は、その姿を見せるなど、こちらの世界に干渉することができます。ですが、その力は皆無に等しい。おそらくですが、カードという依代だけでは弱すぎて満足に力を発揮できないのでしょう。

 ですので、姿を見せたとしても半透明な姿が見えるのが限界で、それを認識できる人も限られているのです。『視』たところ、リリアさんは見えないと思うのですが……」

「じゃあ、俺は精霊が見えるサイコデュエリストなんじゃねえの? それならモンスター実体化できるだろうし。てか、昨日も言ったけど俺ずっとそう思ってるんだけど」

「いえ、違います」

 黄昏の予想をはっきりと否定すると、梓はソファに座りなおして背筋を伸ばした。その真剣な眼差しに黄昏たちも自然と背筋が伸びる。と思っていたが、リリアだけはいつのまにか《スクラップ・ゴブリン》を黄昏の膝の上から取り上げて、不思議そうにまじまじと観察していた。

 ある程度は予想していたが、それ以上の順応の速さに黄昏は苦笑いを浮かべる。

 身体中を触られ、持ち上げられ、ひっくり返されている《スクラップ・ゴブリン》から助けを求める目線が送られるが、黄昏は小さくエールを返すだけで梓の方に向き直った。

「黄昏君の正体がなんなのか、わかったの?」

「わかりません」

「ちょ、あれだけやってわからないの!?」

「黄昏が何者なのか、その正体はわかりません。ですが、その力については理解できました」

「力ってのはこのサイコデュエリストの力のことか?」

「いえ、彼はサイコデュエリストではありません」

「サイコデュエリストじゃ、ない?」

 怪訝そうに眉をひそめる黄昏の問いに、梓は静かに頷く。

「はい、実体化した《スクラップ・ゴブリン》を『視』たことで、あなたとサイコデュエリストの違いがはっきりとわかりました。

 あなたは、精霊の力をこちら側の世界に引き出す『橋』の役割を持っているようです」

「橋? いや、それよりも、その精霊の力を引き出すのと、サイコデュエリストの力ってどう違うんだ?」

「わたくしの認識でよければ。

 まずサイコデュエリストについてですが、彼らの力はソリッドビジョンを実体化させるものです。ですので、どんなカードでも実体化させることが出来ますが、デュエルディスクを介する必要があります。

 それに対して黄昏の場合は、カードに宿ったデュエルモンスター世界の精霊をそのままこちらに呼び寄せることが出来るようです」

「モンスターそのものを?」

「はい。おそらく、あなたの場合は精霊が宿ったカードしか実体化できないでしょうが、デュエルディスクを介する必要ないのでしょう」

「待て、確かに《ゴブリン》のカードには精霊が宿ってるけど、《ヘルサーペント》も実体化させたことあるぞ?」

「おそらく、《スクラップ・ヘルサーペント》そのものではなく、そのカードに取りついた未知のモンスターを実体化しているのでしょう。それが結果的に《スクラップ・ヘルサーペント》の姿で現れているだけだと思われます。ご理解いただけましたか?」

「なるほどな……」

 返された《スクラップ・ヘルサーペント》をデッキケースに仕舞いながら、黄昏はこれまでに梓に説明させられたことを思い出していく。

 完全にわかったわけではないし、わからないことだらけであることには変わりない。唯一わかったのは、自分がサイコデュエリストとは全く違った存在だということぐらい。ただ、自分の存在について少しでもわかっただけでも進歩と言えるだろう。ただし……

「ただし黄昏、その力は危険です」

「ああ、わかってるさ。『扉』じゃなくて『橋』って言ったってことは、そういうことだろ?」

 真剣な目で忠告を促す梓に、黄昏も頷く。

「どういうこと?」

「彼の力は、《グレムリン・ダウン》を起こしたモンスターのような、望まないモンスターまでこちらに呼び寄せてしまう可能性があるということでございますよ、葵。

 ところで黄昏、一つお伺いしたいのですが、その力が暴走したこと、もしくはしそうになったことはありますか?」

「といわれても、この力自体俺もわからないことだらけでな……

 けど、《ヘルサーペント》がフィールドにいるときは、高確率で俺の右腕に蛇の鱗みたいなものが浮き出てくる」

「それが兆候の可能性がありますね。なら、今後《スクラップ・ヘルサーペント》の使用は控えた方がよろしいかと」

「まあ、そうなるよな」

 梓の提案は至極もっともなものだが、黄昏は顔をしかめる。自分の主力モンスターを使わないという縛りが、これからのデュエルでどう響くのか考えているのだろう。

「《スクラップ・ドラゴン》を入れれば、ある程度同じ動きは出来ると思うよ?」

「そうなんだけど、なんか抵抗があってな……」

 葵の提案が一番現実的なのだろうが、黄昏は決定を渋る。また同じことが起こるのでは、という不安と共に、すでに自分のせいで変化してしまったモンスターをデッキから外し、同じ名前のモンスターを入れるということに抵抗を感じているのだ。

 それは提案した梓も想定していたようで、大丈夫ですと黄昏に微笑んだ。

「今後開発されるプレート魔法とリバイバルモンスターで、貴方のデッキとシナジーがあるものは優先して提供させていただきます」

「そんなことできるのか?」

「はい、プレート魔法の作成には、わたくしたち梓家が大きくかかわっておりますので」

「本当なのかそれ!?」

「はい、わたくしたちの『眼』が大きく貢献しています。

 この力がなければ、おそらく開発は滞っていたことでしょう」

 口元を隠して上品に笑う梓に、葵はため息をつく。

「それ、下手したら職権乱用になるよ?」

「承知しておりますよ。葵の『特別な』友人だからこそできる無茶でございますから」

「な……っ!?」

 妙に強調された言葉に葵は顔を真っ赤にして硬直する。何か言い返そうとして口を開けるが、よほど焦っているのか声が出ていない。

「……どうした?」

「な、なんでもない! あ、梓、貴女ねえ!!」

「あら、葵がアカデミアに入学してから初めてできた男友達という意味で言ったのですが、一体どう解釈されたのでございましょうか?」

「ぶ、ぶっ飛ばす。今すぐぶっ飛ばす! 今日という今日は許さないからね!!」

「ふふふ、そんなにカリカリして、そんなままではいつまでも年下扱いからは脱せませんよ?」

「元はと言えば梓の言葉のチョイスが原因でしょうが!」

「なんかアイドルとしてどころか女子として色々とアウトな部分が出てきてる気がするんだが?」

「うっさい! 黄昏君は黙ってて!」

「お、おう……」

 顔を真っ赤にして鬼気迫る勢いの葵に気圧される黄昏と、その光景を微笑ましく眺める梓。そして終始蚊帳の外のリリアは、彼女にもみくちゃにされてぐったりとしている《スクラップ・ゴブリン》を抱えてその3人のやり取りを見守っている。

「あおいん必死でかわいいなー。それにしても、あれだけあからさまなのに遊糸って気づかないんだねー」

『まあ、アニキの鈍感さは仕方ないッスよ』

「俺がどうしたって?」

「なんでもないよー」

『右に同じッス』

「そうか……」

 口を合わせる二人(?)に怪訝そうに眉をひそめる黄昏が振り返ると、梓たちはデュエルディスクを身に着けて部屋から出て行くところだった。おそらくだが、先ほどの口喧嘩の決着をデュエルで決めるつもりなのだろう。

 黄昏たちが慌てて後を追うと、すでに2人は境内で距離をとり、準備万端の様子だった。

「今日こそ貴女を倒してぎゃふんと言わせてやるからね!」

「今までわたくしに勝てたことなどなかったと記憶してございますが? なんなら、『本気』の方でも構いませんよ?」

「ほほう……」

 梓の煽りに葵はこめかみに青筋を浮かべ、笑みを引きつらせる。アイドルとしてあるまじき表情の彼女はデュエルディスクにセットしていたデッキを取り出し、別のデッキをセットする。

「後悔しないでよ?」

「こうでもしないとデュエルになりませんので」

「その余裕面、絶対に引っぺがしてやるから! 謝るなら今のうちだよ!」

 口にする言葉のことごとくに小物臭が漂ってしまう葵だが、その実力の高さは黄昏もよく知っている。

 故にそのギャップに困惑する黄昏をよそに、怒声ともとれる葵の声が外から聞こえてくる。

 

「デュエル!!」

 

 どうやら、黄昏の記憶する限り最も理解できない理由で始まるデュエルが幕を開けた。




先日久しぶりに友人とデュエルしましたが、第九期のデッキの回り方ってホント怖いですね。
一応私も第九期の竜星を使ったスクラップ竜星ですが、破壊がトリガーのモンスターばかりなので、いかに《スクラップ・ドラゴン》とかを利用して展開できるかでリンチにされるかどうかが決まります。
早く幻竜星が欲しい今日この頃


2022/5/25:誤字脱字の修正中にやっぱり深夜テンションでしつこい貧乳いじりはしっくりこなかったので歴史改変しました()
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