遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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次のパックCOREで収録される《イグナイト》、効果だけ見て作りたいって思ったんですが、図書館と組み合わせるとグルグル回りそうですね
あと《デカトロン》さん怖い
《スクラップ》しかり、作ってないですが《バブーン》デッキしかり、自壊効果が展開に絡んだデッキが好きな私としてはあまり強力なデッキにはなってほしくないんですけどね……
制限改定で調整するのめんどくさい(ボソッ

あ、チョウホウさんにはいつもお世話になってます。
他の9期シリーズの動き止めるのすごい楽になりました


それぞれのデッキに込められたもの

 葵の退学騒動からしばらく経ったが、黄昏が思っていたよりもひどくはなかった。

 どうやら葵の父の将生がいろいろと手を回してくれたようで、いろいろと考察が飛んでいた葵の退学理由は『アメリカへ移住してそこを中心にプロデュエルの活動をしようとする父親についていくため』、という風に広めたようだ。

 それだけだと葵が今後もアカデミアに在学しているのが不自然になるのだが、どうやら彼女らは非常に運がいいらしい。

「《グレムリン・ダウン》でモンスターが変化してしまった場合は無効試合になるのは知ってるよね?

 今まではそれを仕方なく受け入れていたんだけど、プレート魔法でそれが改善されるってわかったから、そのデータを元にプレート魔法を使わないデッキ同士のデュエルでもほぼ100%抑制できるシステムがようやく完成したみたいなんだよ。

 で、そのシステムを世界各地のデュエル会場に導入するにあたって、安全面を考慮した試験運用期間のために全世界で開催される大会が軒並み中止になったみたい。

 期間にしたら半年から1年ぐらいはプロデュエリストは休業だね。そのせいで、大会目的で本当に移住を考えていた一部のプロデュエリストが移住を取りやめるって記者会見を開いてたんだって。

 そのおかげで、私のお父さんもその類だろう、って深読みして議論を広げてくれる人が出てきてくれたから、今後も私がアカデミアで普通にいてもなんらおかしくない状況が作れたんだけどね」

「長々と説明ありがたいけど、結論だけ言ってくれないか?」

「すべて丸く収まって万々歳」

「そりゃよかった」

 なによりこのアカデミアはデュエル好きが集まるデュエリストのための学校だが、同時に一般科目も学ぶ高校であることに変わりない。

 色々トラブル続きながらも授業が行われ、つい先日中間テストが終わったばかりの校内はその結果に一喜一憂している生徒ばかり。

 今を生きる学生たちにとって一ヶ月も前の退学騒動など話題になることもなくなっていた。

「念のためにお父さんが大会運営の知り合いに口裏を合わせてもらったらしいから、この件に関してはもう気にしなくて大丈夫だよ」

「ああ、それはよかった。よかったんだけど、一つ聞いていいか?」

「何?」

 キョトンとした様子で首を傾げる葵に、こめかみを押さえて何とも言えない表情で黄昏は疑問を口にする。

「リリアのデッキ調整のために残ったはずなのに、なんでそのリリアがいないんだ?」

「……まあ仕方ないよ。あの子補習入っちゃったし」

「まだ1学期の中間テストから補習ってマジかよ。一体何したらこの時期に補習なんて組まれるんだ?」

「1年のころから酷かったからね。デュエル……というよりデッキはあんな感じだし、基礎的な教科も赤点ギリギリらしいよ」

「よく進級できたな、あいつ」

「仮進級だって言ってたよ。今回の補習も、足りない単位の補充をするためだって」

「…………」

 本格的に頭痛がしてきた黄昏は休憩がてらここまでの経緯を思い返してみる。

 

 ★

 

 昼休み、目的もなく廊下を歩いていた黄昏は、廊下でとある人と顔を合わせていた。

「お久しぶりです、っていうほど経ってもないですね、早乙女さん」

「こ、こんにちは、黄昏さん。そ、それじゃあ急いでるので」

「あ……」

 先週あったばかりの早乙女は、以前よりもよそよそしくお辞儀をすると、黄昏に何も言わせる暇もなくそそくさとその場を離れて行った。

「まあ、普通はそうだよな」

 言い方は悪いが、リリアが異常なほど順応性とコミュニケーションスキルが高いのだ。早乙女のような対応をしてしまうのが普通だろう。それでも説明の余地すら与えてくれないのは対策を練るべきだろうか?

 そんなことを考えながら再び廊下を歩いていると、葵たちのいる教室が目に入った。

 ただそれだけで教室に入る予定はなかったのだが、立ち止まったところを教室にいたリリアに見られたらしく、手招きをされた。しかも廊下から身を乗り出すようにして手招きされたものだから、周囲の目線がリリアと黄昏に集まるはめになった。

「……っ!?」

 集まる視線に威圧感など微塵もないのだが、それでも黄昏は一瞬身体がこわばるのを自覚する。少し嫌な汗をかきながらもそれを悟られれば余計に注目されるのは理解しているため、自然体を装って少年はの元へと向かった。

「目立つの嫌いなんだから勘弁してくれ」

「ごめんてー。それで、遊糸は何してたのー?」

「特になにもしてねぇよ。購買帰りに適当に散歩してただけだ」

「じゃあ、黄昏君も()()、手伝ってくれる?」

 言いながら葵が机に指をさすと、そこには誰かのデッキらしきカードが並べられていた。水精鱗ではないところを見ると、順当に考えてリリアのデッキなのだろう。

「デッキ調整か?」

「そういうこと。リリアのやつなんだけど、結構難航してるんだよ。午後の実習までにはある程度完成させたくてね」

「えへへ……、あおいんごめんねー」

 アカデミアは生徒の自主的なデュエルを強く推奨しているため、昼休みは2時間という他の学校よりも長く設定されており、デュエルスペースも解放されている。時間的な問題はないのだが、黄昏の方に個人的な問題があった。

「俺、人のデッキにとやかく言うのは好きじゃないんだけど」

「じゃあ、とりあえずリリアとデュエルしてみてよ。時間はまだたっぷりあるし、デッキがあまりにも酷かったら手伝う、っていうのはどうかな?」

「…………」

 しばし考える素振りをする黄昏は、渋々と言った様子でデッキを取り出す。

「まぁ、俺もデッキ調整してるところだから、そのついででいいなら。

 今からデュエル場言ってもスペースないだろうから卓上デュエルでいいな?」

「ありがとう。助かるよ」

「そんなにひどいのか?」

「まあね、やってみたらわかるよ」

 妙にはぐらかされるが、それに対しては特に疑問に思うことはなく、黄昏は気にせずデュエルを開始した。

 

「……なんだこれ?」

 デュエルが始まって数ターンで決着がついたところで、我慢しきれずに黄昏の口からそんな言葉がこぼれてしまう。

 デュエルが終了した直後のお互いのフィールドだが、黄昏は《スクラップ・デスデーモン》と《クリッカー・ヴァイルス》、そしてプレート魔法の《電脳基盤》が存在している。そして問題のリリアのフィールドなのだが……

「守備表示の《ビックバンガール》と、俺の《スクラップ・デスデーモン》に装備された《フリント》、《クリッカー・ヴァイルス》でセットし直された《士気高揚》……

 さっき戦闘破壊した《重装武者ベン・ケイ》から装備カード主体のデッキってのはわかるんだが、一体どんなデッキ構築してるんだよ?」

「あ、あはははは……やっぱり変かなー?」

 ため息混じりに頭をかく黄昏を見て、リリアは肩をすくめる。あまりキツい言葉を言うのは気が引けるのだが、さすがに黄昏もこれは言うしかなかった。

「ある意味これで入学できたのが奇跡なぐらいだ。その奇跡みたいな回り方したら完封出来ちまうのが怖いところなんだが……」

「そうなんだよ。波が激しいんだけど、ここぞって場面では良い回り方するの。だから今まで目瞑ってたんだけど、今回はリリアの方から頼まれてね」

「周りのみんなからいろいろ言われちゃったんだよー。アタシも安定したデュエルがしたいからデッキ調整したいんだけど、どうやればいいのかわからなくてー……」

「とりあえずもう一回デッキ見せてくれ」

 自分のデッキを収めながら、リリアのデッキを受け取り、再び机の上に並べていく。

 そしてコンボ性のあるカードに分けていくと、リリアのデッキは大きく分けて3つに分かれていた。

「《ビックバンガール》、《士気高揚》、《鉄の騎士ギアフリード》、《暗黒魔族ギルファー・デーモン》を使ったループバーンと、《重装武者-ベン・ケイ》の装備ビートダウン、あとは《フリントロック》を使ったモンスター除去、かな?

 改めて見るとすごいデッキだな。共通してるの装備カード主体ってだけだぞ」

「一応主軸は《ベン・ケイ》だよー。でも攻撃ロックとかされると《ベン・ケイ》で対処できないから、装備カードを使うバーン関係もいれて……」

「それがまずダメだんだよ」

「へ?」

 これは最初から指導する必要があるのか、とデッキ構築云々の前に根本的な部分がマズいリリアに黄昏は頭を抱えた。とりあえず午後の授業までに調整するのは不可能だと予め説明すると、まずは言葉で説明をしていく。

「まずリリアは戦術を絞れ。話はそれからだ」

「え、なんでー!? 戦術は多ければ多いほどいいでしょー?」

「それ初心者によくある間違いだっての。さっきのデュエルでも学んだだろ?

 確かに戦術は多ければ多いほど対応できる状況が増える。けどそれと同時に事故率も増えるんだよ」

「でもー……」

「口答えしない。今からデッキ調整したら中途半端なデッキになるから、今はしなくてもいいけど、今日の放課後残って作るぞ」

(なんかわからないけど、黄昏君スイッチ入っちゃったみたいだね。これは放課後大荒れな予感がするよ。けど……)

 あうー、と隣でうなだれる友人に苦笑いしつつ、その光景が微笑ましくなって、葵は小さく呟いた。

「すごく学生生活してる、って感じだなぁ……」

「七波、どうかしたのか?」

「ううん、何でもないよ。私も手伝うから、リリアも頑張ってね」

「あうー……」

 

 ★

 

 それから昼休みを丸々使って黄昏の指導を受けたリリアは、デュエル実習ではデッキ構築に気を取られて教師に注意され、いざ放課後になったと思うと補習につかまるという、踏んだり蹴ったりな状況に至っている。

 リリアが不在でデッキ調整ができず、彼女が戻ってくるまで他愛もない会話が続いていたが、適当な話題もなくなってくると自然と会話は精霊の話になっていた。

「七波の《水霊使いエリア》って精霊のカードなんだろ?」

「そうだよ。そういえば紹介してなかったね」

 葵に呼ばれて半透明の姿を現した《水霊使いエリア》は深々とお辞儀をしてから柔和な笑みを浮かべた。

『初めましてなのです』

「こちらこそ、かな。ちょっと気になってたんだけど、《エリア》は七波の普段使っている方のデッキには入れてないのか?」

「まあ、ちょっとね。この子がデッキに入れると、どうしてかパワー寄りの回り方しちゃって水精鱗のイメージに合わないんだよ」

「《水霊使いエリア》にそんな効果ないだろ」

「私だってわからないよ。ただ自然と高火力モンスターが並ぶんだよね……」

 口をへの字にして本格的に首を傾げている葵だが、黄昏としてはそもそもそういうモンスターの数を減らしてコントロール寄りにすればいいのでは? などと考えてしまうのだった。

「まあ、別にそこいらは七波の自由だろうけど、いっそのことイメチェンってのはダメなのか? アイドル業界のことわかってないから素人意見でしかないけどさ」

「何度か事務所に相談したこともあるけど、イメチェンは無理みたい。私のあだ名何か知ってる?」

「いや?」

「ホントに私のこと知らなかったんだね。流石にちょっと傷つくよ?」

「悪かったな情弱で。で、なんて呼ばれてたんだ?」

「人魚姫」

「……誰が?」

「私が」

「ありえ……いや何でもない」

 静かに拳を構える葵に対して両手をあげて降参のポーズをとる黄昏はその状態で肩をすくめる。

「七波、たぶんその血の気が多いのがデッキに出てるんじゃないのか?」

「誰が血の気が多いよ、まったく。まあ、そんなわけで私に対するイメージが固まってるせいで水精鱗主体のエクシーズから離れるのはちょっとマズいんだよ。

 私の場合《エリア》はエクシーズより融合寄りになっちゃうし」

「アイドルって意外と大変なんだな」

「私が望んだ世界だし不満はないよ? 水精鱗主体のデッキも好きだし、《エリア》とはこうして直接話ができるから」

 言いながら隣に佇むエリアと顔を合わせて二人は微笑みあう。

「あのほぼ脳筋デッキか……

 もし知らない人が見たら唖然とするだろうな」

「ほほう? なんなら今から捻りつぶしてもいいんだよ?」

「いちいち言うことが怖いんだよお前は」

「そっちが煽ってきたんじゃん!」

『お、お二人とも落ち着いてくださいなのです!』

『そうッスよアニキ。なんか色々と話が脱線しすぎてるッス!』

 本気で怒っているわけではないだろうが、売り言葉に買い言葉で話が逸れ始めたため、それまで黙り込んでいた《スクラップ・ゴブリン》も現れてお互いの精霊が主人の止めに入る。

 しかし、そんなことをせずとも二人は前かがみになっていた姿勢を直して息を吐いた。

「なんかデッキ調整のつもりで来たからか話が続かねぇな」

「もう少ししたら流石に補習も終わると思うよ?

 それはそうと黄昏君の方のデッキ調整はどうなの? 梓から何枚かカード貰ってたよね?」

「リリアほどじゃないけど難航中だ。リバイバルモンスターの方は俺のデッキにシナジーがあるのが1体、あとは数合わせだな。と言っても、数が増えただけでも十分なんだけど。

 問題はプレート魔法の方がな。シナジーがありそうなプレート魔法もあるんだけど、結局フィールド魔法がないから意味ないんだ」

「スクラップに合うフィールド魔法、か……

 たぶん地属性か、獣族あたりにシナジーを合わせるべきなんだろうけど、どれもこれもピンとくるカードがないね」

 葵も記憶の限りフィールド魔法を思い浮かべていくが、基本入れるメリットが低いものばかりだ。それならプレート魔法の効果を無視した方がマシだろう。

「こうなったら、今後スクラップのフィールド魔法が出るのを期待するしかないよ」

「とは言っても、スクラップって俺たちが生まれる前から存在してるカード群だぞ?

 稀に思い出したように古参カードの新規が来たりするけど、そこまで古くもないし、そんなうまい話が――」

「あるよー」

 お手上げだ、とでも言うかのように両手を軽く上げながら放った黄昏の愚痴に、妙に間延びした声が被さってくる。

 二人が振り返ると、若干疲れが見えるが、人懐っこい笑みを浮かべるリリアの姿があった。

「リリア、ようやく終わったの?」

「なんとかー。でもちょっと休憩させてー」

「はいはい」

 葵に駆け寄ったリリアが抱き付くように身体を預ける。呆れながらも葵が優しく介抱すると、リリアは表情をさらに緩めていた。

「ネコかお前は。まーうん、完全に自業自得だろうけど、お疲れさん。

 それで疲れてるところ悪いんだけど、さっきの言葉……」

「あ、うん。これだよー」

「カードホルダー? ……ってこれって!?」

 未だ葵から離れる様子を見せないリリアはそのままの体勢をキープしつつ、器用に背負ったカバンからカードホルダーを取り出して机の上に置く。それを黄昏が確認すると、信じられないとでも言うかのように目を見開いた。

 葵もそのカードが気になったらしく、リリアに抱き付かれて身動きが取れない状態のまま首だけ伸ばしてくる。そんな彼女に見やすいように黄昏は気を利かせ、彼女の正面にそのカードを持っていく。

「えっと、《スクラップ・ファクトリー》っていうフィード魔法……ってスクラップ!?」

「リリア、これどこで手に入れたんだ? これでもパックの情報とかは随時確認してんだが」

「パックとかでは出てないから仕方ないかもねー」

「パック以外でどこからカードが……あ」

 一般的にカードはパックの販売、または大会の景品などで配布される。だがそれ以外にカードの入手が可能な方法があった。

KC(海馬コーポレーション)のカードイラスト募集に当選したのか?」

「えへへ、ブイ!」

 満面の笑みでピースサインを向けるリリア。先日梓が話していた通り、カードの作成を一般人から募集することがある。特にKCは頻繁に行っているため、イラストレーター志望などが数多く応募しているのだ。

 しかしその審査基準は厳しく、1回の応募に1枚も採用されないこともあると言われている。

「アタシのデッキじゃ使えないし、遊糸使っていいよー」

「そりゃありがたいけど、なんで装備ビートのリリアがスクラップ関係のカードイラストなんて応募したんだ?

 普通こういうのって、自分の使いたいカードを応募するもんだろ?」

「それはね……」

 リリアは少し寂しそうな表情で俯いた。普段は悩み事などないような天真爛漫な表情が曇ったことで葵が心配そうにのぞき込むが、すぐにリリアは気を取り直して話を続ける。

「前にゆうくんってあだ名の人がいるって話したよねー?」

「ああ、そうだったな」

「そのゆうくんも《スクラップ》デッキだったんだー。で、このカードはアタシが小学6年生の時にゆうくんの誕生日プレゼントであげようとして応募した、アタシの最初のイラストなのー」

 説明しながらカードのイラストを撫でるリリアの表情は、その『ゆうくん』のことを思い出しているのか懐かしそうで、しかし悲しそうな表情をしていた。

「結局、このカードが当選してカード化する前に、ゆうくんはどっか行っちゃったんだけどねー」

「そんな大切なカード、俺が使っていいのかよ?」

「うん、せっかくのカードをいつまでもカードホルダーの中に仕舞っているのも可哀想だからねー」

 それに、とリリアは葵から離れると、いつもの人懐っこい笑みを浮かべる。

「なんか、アタシより遊糸の方が先にゆうくんに会う気がするんだー。だから、我がままなんだけど、ゆうくんに会ったらそのカード、渡してくれないかなーって」

「いつもの直感か?」

「うん、アタシの直感は当たるんだよー?」

「あーそ、わかった。その配達引き受けるよ。

 報酬はその『ゆうくん』に会うまで《スクラップ・ファクトリー》を使う権利だな」

「えへへー、ありがとう!」

 リリアから《スクラップ・ファクトリー》を受け取り、改めてそのカードを確認する。いずれ会うだろうリリアの大切な人に渡すため、大切に扱おうと心に誓った黄昏は自分のデッキケースに仕舞った。

 そして黄昏はこのしんみりとした空気を払うため、手を叩いて乾いた音を鳴らす。

「さて、これで俺のデッキ調整の問題は解決した。ってことでリリアのデッキ調整を始めるか」

「あうー……やっぱり?」

「なんのために集まったと思ってんだよ。甘やかしたりしないから覚悟しろよ?」

 やる気を見せる黄昏に対してうなだれるリリアとそれを慰める葵。

 補習で疲れた身体を頑張って動かしカードを並べていくリリアを眺めていると、黄昏が不意に思いついた疑問を口にする。

「そういえば、《スクラップ・ファクトリー》が最初に応募したカードって言ってたけど、他にも当選したカードってあるのか?」

「1年1回のペースで出して全部当選してるよー?」

「ってことは《スクラップ・ファクトリー》含めて4枚ってことか」

「ううん、一度に何枚か同時に当選したこともあるからもっとあるかなー」

「……どんだけ運いいんだよ」

「むー、アタシのデザインセンスの賜物だよー」

 頬を膨らませて子供っぽく口を尖らせて抗議するリリアの傍ら、黄昏は言葉とは裏腹に実際ある程度の予想はついていた。

 その要因が彼女のデッキだ。むちゃくちゃな構築をしているのに回ることが多いということは、一般的に見れば運がいいと見えるだろうが、カードの精霊の存在を知っているものからすると、また別の観点から見ることができる。

(潜在的にカードに好かれる体質か。しかもカードの精霊が見えてないのにそこまでカードに好かれてるってことは、よほどだろうな)

 黄昏たちのように対話をして親睦を深めるのではなく、モンスターの方から心を開いて主人を助けようと立ち回ってくれるというのは、デュエリストとしてはこれ以上にない強みだった。

 葵によれば少なくとも定期試験デュエルではリリアのデッキの回りがよかったらしいが、それもデッキ構築の酷さよりカードたちの思いの方が勝ったからなのではないだろうか?

 考えてみるとずいぶんとオカルトでトンデモ理論だと思うが、存在自体がオカルトな黄昏からすればなんら不思議ではなかった。

「リリア、デッキ調整についてだが……」

「あうー、わかってるよー。今からでも頑張ってするよー」

「いや、話が変わってきた。その当選したカードも含めて、リリアの組みたいようにデッキを組んで、そこからデュエルで一番良い回りをするように長期的に仕上げていくぞ」

「ふぇっ?」

「どうしたのいきなり?」

 つい数分前までやる気に満ちていた黄昏がいきなり方針を変えるものだから、リリアはもちろん葵まで思わずあんぐりとしてしまう。

「カードに好かれやすいリリアに合ったデッキ調整をするってだけだ。たぶん基本に乗っ取ったデッキを作るより、そっちの方がリリアに合ってる気がするしな」

「カードに好かれやすい?

 ……ああ、そういうこと。わかったよ」

「いや、わかんないよー!?」

 黄昏と同じくカードの精霊を理解している葵も、その言葉である程度理解したのだろう。

 当の本人を放って話がまとまっていくのをリリアはただ嘆くしかなかった。

「簡単に言えば、リリアはリリアのままでいいってことだよ。私も手伝うから一緒に頑張ろう?」

「あ、そうだ。デュエルするなら《エリア》が入った方のデッキで容赦なくやってくれ」

「え、それでいいの?」

「そっちの方がリリアの()()()が本気になりやすいだろ」

「まあ、そうかもしれないけど……」

「ねー、なんか色々としてくれるのはありがたいんだけどー、アタシが状況理解できてないっていいのかなー?」

「「いいんだよ」」

「あうー……」

 せっかく広げたデッキを戻しながらうな垂れるリリアに黄昏は申し訳なさそうにするが、方針を変えるつもりはないらしい。

「とりあえず今夜、自分が思うようにデッキを調整してみてくれ。それを明日俺と七波でテストデュエルするから」

「ホントにそれで大丈夫なのかなー?」

「大丈夫だよ、私もしっかりフォローするから」

 リリア本人は納得がいってないようだが、二人に後押しされる形で彼女のデッキ調整の日々が始まるのだった。




なんかリリアの性格が変な方向で固定されてた気がする(後悔はしてません)

ちなみに、リリアのデッキは私が遊戯王を本格的に再開して最初に一から作って大失敗したものと全く同じです(笑)
あのころは小学生のころに作ったなんちゃってコンボデッキの癖が抜けてなくて苦労しました

まだ放送されてない地区もあるのでネタバレは控えますが、ARC-Vのopが変わって久しぶりにテンションがハイになりました
登場早々ゲニスになってしまったデニスですが、いつ裏切るのか気になる反面、あの手の敵っていざというときユーリに刃向ってくれそう、という希望を持ってみたり
ハガレンのキンブリーみたいな、どっちつかずで自分の欲望に正直なキャラ(敵役に限る)が大好きなんで、是非ともデニスにはその枠になってもらいたい
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