カイトさんとペア組んでから小鳥と組むと基本に忠実なデュエルすぎて感動しました
たぶん今までペア組んだ中では速攻でクリアしたと思います(デッキ構築に慣れたってのもあるでしょうが)
今回はただでさえデュエル長いのに、その前に話をくっつけたんで前半後半に分けました。
モンスターの表示形式変更が頻繁に起こるので、改行多めです
授業開始のチャイムと共に教師からの説明が始まる。
今回は教師の方から指定された人同士でデュエルを行うらしい。なんでも、今までの実習では同じ人とデュエルする生徒が目立ったため、さまざまな種類のデッキとデュエルさせるために試験的に実施してみるそうだ。
生徒の一部は不服そうに顔をしかめるが、大多数はそれに賛成したのを確認した教師はグループ表を張り出して実習を開始した。いざ始まると、不満そうにしていた生徒たちもテキパキと指定されたグループを作っていく。
「アタシとあおいんは別のグループだねー」
「んー、そうみたいだね。じゃあまた後で」
葵とリリアも例に漏れずグループ表を元に自分のグループの元へ向かう。指定されたグループと合流するやいなや葵と一緒ということで微かに歓声があがった。
その状況に肩をすくめつつも笑みを浮かべて対応していると、背後から異様な気配を感じて反射的に振り返った。
「……なんで貴女がここにいるのよシャル。貴方は別の班だよ」
「先ほどの宣戦布告をお忘れですの? さあ、さっそくデュエ――」
「いや、先生の話聞いてたんだよね? 今回の実習じゃ無理だって」
「じゃあいつデュエルしますの?」
「この実習終わったらしてあげるから……」
子どもの駄々の対応に困る親のような対応で妥協案を出すが、シャルロッテは納得していないようだった。どうしたものかと悩んでいると、彼女の背後にいつの間にかキザミが立っており、シャルロッテの肩をがっちりとホールドアップしていた。
「お嬢様、それ以上の我儘は周囲の迷惑です。あなたの精神は五歳児以下でございますか」
「あ、ちょ、お待ちなさい! まだ話は……!?」
驚くべき力でシャルロッテを引きずっていくキザミは一度こちらにお辞儀をすると、その後はなさき容赦なくシャルロッテを本来のグループへと連行していく。
「で、では今日の放課後、必ずデュエルを申し込みますわ! 約束ですわよー!!」
「はいはい、またあとでね」
本当に主と従者の関係なのか疑いたくなるほど容赦なく引きずられて行くのを横目にため息をつく。その一連のやり取りを見ていた同じグループの女子生徒が同情の言葉を投げかけてくれた。
「シャルロッテさんに目付けられるなんて、葵さんも大変だね」
「んー、まあ、悪い子じゃないんだけどね……じゃあ始めよっか」
同じグループのメンバーと顔を見合わせ、全員が頷くのを確認すると、全員デュエルディスクを構えてデュエルを開始した――――。
──今さらではあるが、葵が退学をした理由について父親が厳しくデュエルに負けたのが理由という噂が広がっていたが、あれは半分正解でもあった。
アイドルの仕事を減らしてまで学生生活を送りたいという我儘を、父親の将生に許可してもらうためにはそれなりに条件が必要だったのだ。その条件として将生から提示されたのが、学生生活中に1度もデュエルで負けないという条件だ。
実際に自主退学を決断したのはそれだけではないのだが、その条件を飲んでアカデミアに編入した葵はどんなデュエルでも勝つことを目標にしていた。時には理不尽とも言えるデュエル内容だったこともあっただろう。
しかし、何故か将生からその条件は取り消しとなり、今では普通に敗北しても問題なくなった。それにより……
「――モンスターで葵さんにダイレクトアタック!」
【葵】
ライフ:1300→0
「……負けちゃった」
「やった! 七波さんに勝っちゃった!」
葵のライフを0にした女子生徒は、デュエル終了のブザー音に負けないぐらい大きな声ではしゃいでいた。
……実際のところ、今彼女が使用しているのは《水霊使いエリア》のいるアイドル用とは別のデッキだ。そのためシンクロや融合に関するカードを引いた際にその手札が使用できないというハンデを負っているわけなのだが、それを差し引いても今のデュエルは文句なしの敗北だった。
また、負ける気がないのは当然ながら、敗北を必要以上に気にする必要がなくなったことで以前より相手のことがよく見えるようになったのも実感していた。
「おめでとう。最近デュエルの腕上がったよね?」
「え、本当!?
……そういえば、七波さんって雰囲気変わったよね」
「え、そうかな?」
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったため、少し上ずった声になった。見ると、そのやりとりを眺めていた同グループの生徒たちも何度も頷いて肯定している。
「なんかね、前はデュエルで鬼気迫る感じだったじゃない?」
「あ、それオレも思った。正直近寄りづらかったよな」
「それ本人に直接言うことかな……?」
まさかのカミングアウトに過去の自分を思い返した葵は恥ずかしさで自分の顔が赤くなっていることを自覚する。
だが逆に言えば、今のリラックスして行えるデュエルは普段の自分が戻ってきたのを証明しているようで、照れくさいながらも自然と笑みがこぼれた。
編入してからの半年間、勝率だけは間違いなくトップクラスだったが、それ以外の多くのものをどれほど取りこぼしてきたのだろうか。
これではわざわざ無理を言ってアカデミアに編入してきた意味がない。
そう考えると、七波葵のスクールライフは今ようやく始まっとも言えた。
授業中に関係ないことに時間を費やすことに罪悪感はあったが、デュエルをする以上に必要なものを得られている気がして、少女は1人の生徒としてその後も世間話に花を咲かせていた。
……ただし、デュエルをするべき時間にそんなことをしていれば先生から注意を受けたのは言うまでもなかったが──。
★
放課後、再びデュエル場に足を踏み入れると、そこにはシャルロッテが仁王立ちして待ち構えていた。
「お待ちしておりましたの、さあデュエルですわ!」
「はいはい、一回だけね」
「じゃあ、アタシたちは観戦席にってるねー」
キザミとリリアが観戦室へ上がっていくのを横目に、シャルロッテと向かい合ってデュエルディスクを構える。
「じゃあ、準備はいいかな?」
「望むところですわ!」
「「デュエル!!」」
【シャルロッテ】vs【葵】
「先攻はいただきますわ! 私のターン!」
先攻を取り自分の手札を確認したシャルロッテは、手早くその内1枚を引き抜く。
「私はモンスターをセットしてターンエンドですわ」
| 【シャルロッテ】 4/4000 --▲-- ----- | 【葵】 5/4000 ----- ----- |
「私のターン、ドロー!」
【葵】
手札:5→6
「……う、この手札か」
ドローしたカードを含めて手札には《融合》、《水霊使いエリア》、そしてその融合素材になる《水精鱗アビスグンデ》なども揃っていた。
「……そういえば《
デュエルが開始された戻ってくると踏んできたのだが、彼女が所有するカードの精霊であり相棒でもある《水霊使いエリア》は彼女の隣にいない。おそらくだが、盗まれたデッキの捜索が難航しているのだろう。
「とりあえず一旦帰ってくればいいのに……」
「どうかしましたの?」
「あ、ごめん。まずは今はこのデュエルに集中しないとね」
とは言ったものの、と自分の手札を再確認する。流石にこの手札のままデュエルをするのは避けたい。
ただ、逆に言えばこの手札をどうにかすれば乗り切れそうだ。幸い手札に《手札抹殺》があるため、今はこれを使うのがベストだろう。
「私はまず《手札抹殺》を発動!
お互い手札をすべて捨てて、その後捨てた枚数ドローするよ」
「いきなり手札交換ですの? 余程手札が悪かったと見ますわ!」
「まあ、ある意味悪かったかな……」
【葵】
手札:5→0→5
【シャルロッテ】
手札:4→0→4
この場にいない相棒を墓地へ送るという行為に少し抵抗はあったが、交換した手札も比較的マシなのはせめてもの救いだろうか。
「っとその前に、私は手札から墓地へ送られた《アビスグンデ》の効果を発動! 墓地の他の《水精鱗》モンスターを特殊召喚するよ!
私は同じくさっき墓地へ送られた《アビスノーズ》を特殊召喚!」
《水精鱗アビスノーズ》
☆4・水属性・魚族
ATK:1500
墓地→フィールド
墓地へと繋がるゲートからフィールドへ舞い降りた、甲冑を被った男性の人魚。しかしその攻撃力はアタッカーとしては少し心もとない数値だった。
「攻撃力1500。確か効果も戦闘破壊ありしのものでしたわね。貧弱とまでは言いませんがフィールドを預けるには不安が残りますわね」
「確かにこのままだとリクルーターを倒すぐらいの力しかないね。でも、何もモンスターだけのステータスで戦うものじゃないよ!」
言いながら葵は交換された手札から新たな1枚を切る。その1枚により、鎧でがっちりとした風貌をしている《アビスノーズ》の鎧がさらにがっしりとしたものに変化し、それにならって攻撃力も上昇した。
《アビスノーズ》
ATK:1500→1900
「……っ!?」
「装備魔法《アビスケイル-クラーケン》。これを《アビスノーズ》に装備することで《アビスノーズ》の攻撃力は400ポイントアップするよ」
「なるほど、大体の下級モンスターを倒せるぐらいのステータスにはなったわけですわね」
「それだけじゃないよ。《クラーケン》がある限り、一番最初にフィールドで発動されたモンスター効果を無効にできるよ。その後このカードは墓地へ送られるんだけどね」
「な、それじゃあ……っ!?」
「そのセットされたリバースモンスターの効果も無効になるね」
「な、何のことですの? い、言ってることがわかりませんわ」
シャルロッテのセットモンスターはわかってないはずだが、まるでわかっているかのような言動で葵はニッコリと笑う。思わずと言った様子で口ごもるシャルロッテは白を切るが、明らかに隠しきれていない。
「貴女がわかりやすいんだよ。どうせそのモンスター、《ゴーストリック・キョンシー》でしょ?」
「うぐ……ど、どうでしょう?」
「デュエルするならもう少しポーカーフェイスを覚えた方がいいよ。
バトル、《アビスノーズ》でセットモンスターを攻撃!」
鎧をまといより強力になった《アビスノーズ》がセットモンスターに向かって突き進む。その正体は葵が指摘した通り《ゴーストリック・キョンシー》だった。
元から悪い顔色をさらに真っ青にして逃亡を図った《ゴーストリック・キョンシー》だが、すでに勢いのついていた《アビスノーズ》の突進を避けることは叶わず、盛大に吹き飛ばされた。
「ご、《ゴーストリック・キョンシー》のリバース効果、デッキから《ゴーストリック》モンスターを手札に加えますわ」
「なら私も《アビスケイル-クラーケン》の効果。その効果を無効にして、その後このカードを墓地へ送るよ。これで《アビスノーズ》の攻撃力が《ゴーストリック・キョンシー》の守備力を下回っちゃうけど、リバース効果が発動するのはダメージ計算後。つまりこの時点で攻撃力が下がっても《ゴーストリック・キョンシー》の戦闘破壊は確定してるから問題ないよ」
《アビスケイル-クラーケン》
フィールド→墓地
《水精鱗アビスノーズ》
ATK:1900→1500
《ゴーストリック・キョンシー》
☆3・闇属性・アンデット族
DEF:1800
フィールド→墓地
盛大に吹き飛ばされた《ゴーストリック・キョンシー》が最後の力で発動した効果も叶わず、ささやかな功績として《アビスケイル-クラーケン》が消滅したことで《ゴーストリック・キョンシー》の役目は終えてしまった。
しかし、現実はさらに非道である。
「そして《
私は手札の《アビスマンダー》を墓地へ送ってデッキから《アビスディーネ》をリクルート!」
【葵】
手札:4→3
《水精鱗アビスディーネ》
☆3・水属性・水族
DEF:200
デッキ→フィールド
戦闘破壊を行った《アビスノーズ》が起こした水流の中から現れたのは、一回り小さい女性人魚モンスターだ。しかし、ここからが《水精鱗》の真骨頂。一度起こった波はすぐに収まることはなく。さらに新たな波をたててゆく。
「《水精鱗》モンスターの効果で特殊召喚に成功した《アビスディーネ》は、墓地のレベル3以下の《水精鱗》を特殊召喚することができる。これで私は墓地の《アビスグンデ》を特殊召喚!」
《水精鱗アビスグンデ》
☆3・水属性・水族
ATK:1400
《アビスディーネ》の歌声に誘われて墓地から誘われた《アビスグンデ》は攻撃表示でフィールドに現れる。そして今は葵のバトルフェイズ。この状況が意味するのは容易に想像できた。
「さあ行くよ! 《アビスグンデ》でシャルロッテにダイレクトアタック!」
「きゃあっ!」
【シャルロッテ】
ライフ:4000→2600
リクルーター級のステータスの《アビスグンデ》だが、ダイレクトアタックなら致命的なダメージになりゆる。止めるすべのないシャルロッテはその攻撃とただただ受けるしかなかった。
しかし、ただ無駄にダメージを受けただけでは終わらない。
「この程度のダメージ、私の新たな展開の下準備でしかありませんの!
戦闘または効果によってダメージを受けたとき、手札の《ゴーストリック・マリー》を手札から墓地へ送ることで、デッキから《ゴーストリック》モンスターを裏守備表示で特殊召喚することが出来ますの!
私はデッキから《ゴーストリックの人形》を特殊召喚!」
《ゴーストリック・マリー》
手札→墓地
【シャルロッテ】
手札:4→3
《ゴーストリックの人形》
☆2・闇属性・魔法使い族
DEF:1200
デッキ→フィールド(セット)
手札から墓地へ送られた《ゴーストリック・マリー》の鏡の中から怯えた様子で顔を出した《ゴーストリックの人形》は、そそくさとフィールドに舞い降りるとすぐさま裏側守備表示となってその姿を隠した。
これが2ターン目、七波だけで言えば最初のターンであるとは思えないカードの応酬により盤面が一気に切り替わっていった。
しかし《手札抹殺》を起点として葵が巻き起こした波もようやく収まり、ようやくシャルロッテのターンへと移る。
| 【シャルロッテ】 3/2600 --▲-- ----- | 【葵】 3/4000 -○○△- ----- |
「私のターンですわ、ドロー!」
【シャルロッテ】
手札:3→4
「まずはセットされている《ゴーストリックの人形》を反転召喚しますわ」
《ゴーストリックの人形》
セット→ATK:300
「そしてこの瞬間、《ゴーストリックの人形》の効果を発動ですわ。
このモンスターがリバースした時、エンドフェイズにすべてのモンスターを裏守備表示にすることが確定します。そしてその後、その効果で裏守備になったカードの数と同じレベル以下の《ゴーストリック》モンスターをセットしますの」
「今フィールドにいるのは全部で4体。《ゴーストリック》モンスターはレベル3以下のモンスターばっかりだから、このままだとどのモンスターでもリクルートできるわけだね」
「そういうことですの。そして私は《ゴーストリックの雪女》を通常召喚しますわ」
怯えた様子の《ゴーストリックの人形》の隣に、着物に身を包んだ《ゴーストリックの雪女》が姿を現す。その効果は戦闘破壊されることをトリガーとする受け身の効果だが、今回はその効果を使う場面はなさそうである。
《ゴーストリックの雪女》
☆2・闇属性・魔法使い族
ATK:1000
「レベル2のモンスターが2体……」
「葵さんが予想している通りですわ!
私はレベル2の《ゴーストリックの人形》と《ゴーストリックの雪女》でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!
幼き瞳に秘められた妖艶なる力を見せつけなさい!《ゴーストリック・サキュバス》」
《ゴーストリック・サキュバス》
★2・闇属性・魔法使い族
ATK:1400
2体のモンスターによって現れたエクシーズモンスターは、何とも眠そうな様子でフィールドで座り込む。まるで戦闘に参加する気がないような態度だが、シャルロッテのデュエルをよく知る葵には当然に思えた。
「確か、セットモンスターを破壊してそのフィールドを使えなくする効果だったね。
といっても、どうせ『あのモンスター』になるための通過点なんだよね?」
「さすが七波さんですわ。私の思考をこうも読み取るなんて」
「だから貴女はわかりやすいんだって……」
困った様子で頭を押さえる葵だが、やはりシャルロッテの耳には届いてないようだ。その証拠に葵を気にせずさっさとデュエルを進行している。
「さらに私は《ゴーストリック・サキュバス》でオーバーレイネットワークを再構築! エクシーズチェンジ!
おどけた態度は余裕の証。摩訶不思議なその力で勝利を掴みなさい!《ゴーストリックの駄天使》」
《ゴーストリックの駄天使》
★4・闇属性・天使族
ATK:2000
ケタケタと言う笑い声と共にフィールドに舞い降りた《ゴーストリックの堕天使》。ステータスこそまずまずと言ったものだが、それに見合った十分な効果を持ち合わせている。
「《ゴーストリックの駄天使》はとても怠惰な性格ですの。わざわざ攻撃をするのが億劫なこのモンスターが身に付けている効果が――――っ!」
「オーバレイ・ユニットを補充する効果と、オーバレイ・ユニットが10個になると勝利するルール干渉効果でしょ」
「……ムードがありませんわね」
「うるさい。ただでさえあなたとのデュエルは時間かかるんだから効果説明は省略させてよ」
シャルロッテは口を尖らせて抗議するが、実際特殊勝利に重きを置いたデッキというのは、手っ取り早く条件を満たすか、相手の動きをロックして条件が満たされるまで待つかのどちらかである。
今までの経験から、シャルロッテの場合は後者寄りであるから毎回デュエルが長引いてしまうのだ。
といっても、葵の記憶が正しければ彼女はいつも後先考えずに手札をオーバレイ・ユニットに変えてしまって自分の首を絞めているため、思ったよりは長引かないが……
「う……それもそうですわね。ならさっそくバトルと行きますわ!
《ゴーストリックの駄天使》で《アビスノーズ》を攻撃。[トリック・オア・トリック]」
ふわふわと宙を舞う《ゴーストリックの駄天使》はその不規則な動きで《アビスノーズ》の懐へ潜り込み、その体に軽くタッチする。その行動に唖然とする《アビスノーズ》を気にせず自分のフィールドに舞い戻った《ゴーストリックの駄天使》は、一段とケタケタと笑い声をあげて指を鳴らした。直後、《アビスノーズ》の体は風船のように膨らんで破裂したことでその衝撃が葵を襲う。
「く……っ!」
【葵】
ライフ:4000→3500
《アビスノーズ》
フィールド→墓地
「これでひとまずモンスターが展開する機転は叩けましたわ。そして私はメインフェイズ2に移って《ゴーストリックの駄天使》の効果を発動。
1ターンに1度、手札の《ゴーストリック・ワーウルフ》を《ゴーストリックの駄天使》のオーバレイ・ユニットにします。[セルフ・トリート]」
【シャルロッテ】
手札:3→2
《ゴーストリックの駄天使》
ORU:3→4
シャルロッテの行いによって、《ゴーストリックの駄天使》の周囲を舞うオーバレイ・ユニットがさらに追加される。
これで特殊勝利まで残るは6つ。まだまだ猶予はあるとはいえ、確かに終幕へのカウントダウンを刻み始めた。
「さらにカードを1枚セットしてターンエンドですわ。
そしてこの瞬間、《ゴーストリックの人形》の効果が適応されますわ。場の合計3体のモンスターすべてを裏守備表示に変更。そしてデッキからレベル3の《ゴーストリック》モンスター、《ゴーストリック・キョンシー》を裏守備表示で特殊召喚ですの」
《ゴーストリックの駄天使》
ATK:2000→セット
《アビスグンデ》
ATK:1400→セット
《アビスディーネ》
ATK:1000→セット
《ゴーストリック・キョンシー》
デッキ→フィールド(セット)
| 【シャルロッテ】 1/2600 --▲▲- --■-- | 【葵】 3/3500 -▲-▲- ----- |
「私のターン、ドロー!」
【葵】
手札:3→4
カードを補充し、改めて手札を確認する。フィールドに存在するモンスターはすべて裏返り、さらに1体のモンスターが増えたその布陣は、緩やかにだが着実に動きが制限され始めていた。
はなっから長引かせるつもりは毛頭ないが、少し攻め方を考えるべきだろうか。
「まあ、どっちにしてもすることは一緒だよ!
私はセットされた《アビスグンデ》、《アビスディーネ》を反転召喚、さらに《アビスヒルデ》を通常召喚するよ!」
《アビスグンデ》
セット→ATK:1400
《アビスディーネ》
セット→ATK:1000
《アビスヒルデ》
☆3・水属性・水族
ATK:1300
手札から召喚されたエビのような被りものを身に着けた人魚のレベルは3。リバースしたモンスターも含めると葵のフィールドには同じレベルのモンスターが3体並んだ。それが何を意味するのか、全員が理解する前に葵は実行に移る。
「私はレベル3の《アビスグンデ》、《アビスディーネ》、《アビスヒルデ》でオーバーレイ。3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!
その渦巻く海流の加護にて目標を穿て!《トライエッジ・リヴァイア》!」
《トライエッジ・リヴァイア》
★3・水属性・海竜族
ATK:1800
「おおー、あおいんの新しいモンスターだー!」
「ということは、リリア様もあのモンスターが何なのかはご存じないのですか?」
「うん、知らないよー。あ、でもカタログで見たことはあるかもー」
3体のモンスターを束ねて現れたそのモンスターの正体はその場にいた誰も知らず、比較的新しいモンスターであることが読み取れる。
つまりはその効果もわからないため対策しようがないのだが、シャルロッテはその自信がどこから来るのかわからないが焦る様子はない。
「始めてお見受けするモンスターですが、攻撃力は1800。その立派な槍も守備力2500の《ゴーストリックの駄天使》を貫くことはできませんわ!」
「それはどうかな?」
攻撃は通らない。そう高を括っていたシャルロッテだが、葵の不敵に笑う姿に思わず身構える。
「でもその前に下準備だよ。私は手札から速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動!
2つある内の表示形式変更の効果で《ゴーストリックの駄天使》を攻撃表示へ変更するよ!」
ソリッドビジョンによって現れたコントローラーはそのコードを裏守備表示になっている《ゴーストリックの駄天使》に接続すると、独りでにボタンが押されて操作が開始。最後のコマンドが打ち終わるとともに、裏守備表示になっていた《ゴーストリックの駄天使》は強制的に攻撃表示へと変更された。
《ゴーストリックの駄天使》
セット→ATK:2000
「そして《トライエッジ・リヴァイア》の効果を発動するよ! オーバレイ・ユニットを一つ取り除いて、エンドフェイズ時までモンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を800ポイントダウンさせる!
私は《ゴーストリックの駄天使》にその効果を適応! [チェーン・リヴァイア]」
「なんですって!?」
《トライエッジ・リヴァイア》
ORU:3→2
《ゴーストリックの駄天使》
ATK:2000→1200
《トライエッジ・リヴァイア》が得物を振るうとそれに伴って《ゴーストリックの駄天使》の足元から海流が巻き起こる。海流にとらわれた《ゴーストリックの駄天使》は言わば籠の中の鳥。
その末路は《トライエッジ・リヴァイア》の得物にその体を穿たれるのを待つだけである。
「さらに《トライエッジ・リヴァイア》が戦闘破壊したモンスターは墓地ではなく除外されるよ。
バトル! 《トライエッジ・リヴァイア》で《ゴーストリックの駄天使》を攻撃! [トライデントウォータースパウト]」
葵の宣言によって《トライエッジ・リヴァイア》がその得物を握り直し、《ゴーストリックの駄天使》を貫かんと接近する。この攻撃が通れば《ゴーストリックの駄天使》は除外され、その特殊勝利を主軸としたシャルロッテのデッキは致命的なダメージを受けることだろう。
「そう易々と私の要に手を出させはしませんわ!
相手モンスターの直接攻撃時、または《ゴーストリック》モンスターを攻撃対象に選択されたとき、私は手札の《ゴーストリック・ランタン》の効果を発動ですの!
その攻撃を無効にしながら《ゴーストリック・ランタン》を裏守備表示で特殊召喚しますわ!」
【シャルロッテ】
手札:1→0
《ゴーストリック・ランタン》
☆1・闇属性・悪魔族
DEF:0
手札→フィールド(セット)
シャルロッテは最後に握っていた手札を使い、《ゴーストリックの駄天使》の破壊を免れる。
「戦闘破壊出来なかったのは残念だけど、《トライエッジ・リヴァイア》の効果はスペルスピード2。つまり貴女のターンでも発動できるよ。
これで《ゴーストリックの駄天使》の効果も2ターンは……」
「あら、ではそのモンスターにはお休みしていただきますわ。
永続罠《ゴーストリック・ロールシフト》発動。その効果により、私はセット状態の《ゴーストリック・キョンシー》を表側攻撃表示にして、《トライエッジ・リヴァイア》を裏守備表示にさせていただきますわ。お眠りなさい《トライエッジ・リヴァイア》」
「……っ!?」
《ゴーストリック・キョンシー》
セット→ATK:400
《トライエッジ・リヴァイア》
ATK:1800→セット
裏側守備表示になる《トライエッジ・リヴァイア》の光景に葵の表情が強張る。しかしそれだけでは終わらない。先ほどは不発に終わった《ゴーストリック・キョンシー》の効果が今度こそ適応される。
「さらに《ゴーストリック・キョンシー》がリバースしたことでデッキから《ゴーストリック・スペクター》をサーチしますわ」
《ゴーストリック・スペクター》
デッキ→手札
【シャルロッテ】
手札:0→1
「これで私のターンになっても気兼ねなく効果を発動させられますわね」
「まさかもう伏せてあったなんて……」
「警戒が足りませんわよ」
「前にデュエルした時より守備に力入れてるね」
「私を何だと思っているんですの? 敗北から自分の欠点を見つめなおす。デュエリストの基本ではありませんか!」
「うん、すごくごもっともな意見だけど、つい最近までそれ出来てなかったからね?」
おそらく本格的にデッキ内容が変わっているのは今回が初めてではないだろうか……
とはいうものの、今ピンチであることは、まごうことなき事実である。口を尖らせた葵は改めて自分の手札を確認するが、現状何もできそうにない。
素直にターンエンドを宣言すると、《トライエッジ・リヴァイア》の効果が切れた《ゴーストリックの駄天使》の攻撃力が元に戻った。
《ゴーストリックの駄天使》
ATK:1200→2000
| 【シャルロッテ】 1/2600 -▲○○- --□-- | 【葵】 2/3500 --▲-- ----- |
「私のターンですわ、ドロー!」
【シャルロッテ】
手札:1→2
「ではまず《駄天使》のオーバレイ・ユニットを補充といきましょう。
先ほどサーチした《ゴーストリック・スペクター》を《ゴーストリックの駄天使》のオーバレイ・ユニットにしますわ。[セルフ・トリート]
そして《ゴーストリック・キョンシー》を自身の効果で裏側守備表示に変更いたしますわ」
【シャルロッテ】
手札:2→1
《ゴーストリックの駄天使》
ORU:4→5
《ゴーストリック・キョンシー》
ATK:400→セット
「さらにリバースして効果発動でもするのかな?」
「いえ、いいカードが引けたのでこれ以上無駄に効果は使いませんわ」
そう言って残った1枚をひらひらと見せびらかす。
が、そのカードを発動する前に先に《ゴーストリック・ロールシフト》の効果が発動された。
「《ゴーストリックの駄天使》をセットして《トライエッジ・リヴァイア》をリバースしますわ。
よかったですわね、葵さん。自分のモンスターが表側表示になりましたわよ」
「どうせろくなことが起こらないのは目に見えてるよ」
《ゴーストリックの駄天使》
ATK:1200→セット
《トライエッジ・リヴァイア》
セット→1800
肩をすくめる葵はシャルロッテの最後の手札に意識を集中させる。おそらく、あのカードがこのデッキの要になる。そう予想している彼女は、決して見逃さまいとしているのだ。
現時点で彼女が予想しているのは《ゴーストリック・ハウス》。あれならば裏守備表示のモンスターは攻撃対象に選ばれないため戦闘破壊の心配はなく、さらに戦闘ダメージも半減するため耐え忍ぶにはもってこいのフィールド魔法なのだから。
でも、と相手の動きを予想する葵は気づかれない程度に小さく笑った。
(今使っているデッキならダメージが軽減されたとしても高火力のモンスターで総攻撃を仕掛ければ削りきれる。今回はデッキが悪かったね。……って)
そこまで思考を巡らしていたところ、ふと自分の思考回路がデュエル開始直後とは違ったものになっていることに気がついた。
「私、このデッキの全力を出したいと思ってる……?」
『勝ちたい』『全力で戦いたい』と思うのはデュエリストとして当然の本能。しかしそれだけでは業界を渡り歩けない。
各々のこだわりやコンセプトに則って勝利を掴んでこその『プロ』デュエリストなのだ。その点で言えば、デッキが違えども『アイドル』のイメージを損なわないようにしつつ手を抜かないのが葵の本気といえる。
だというのに、今のこのデュエルではそんなことを投げ出してただ全力で、このデッキが持てる全てを出し切って戦いと思っているのだ。
それは、勝つことだけに執着して周りが見えていなかったころから成長したからなのか、対峙している同級生がそのレベルまで上り詰めてきたからなのか、はたまた両方か。
「もう、黄昏君と出会ってからほんと変なこと続きだよ」
悪態を付きながらもこの感覚が嫌いな訳では無い。
全力を出すかどうかはひとまず置いておき、まずはシャルロッテが高らかに掲げたカードの効果に警戒するように葵は意識を切り替えていく。
「では、お初にお目にかかるでしょうパレードにご招待いたしますわ。
フィールド魔法《ゴーストリック・パレード》発動!」
シャルロッテが発動したそのカードは、葵の知るカードとは少し違っていた。
ソリッドビジョンに映し出されたのは、薄暗い洋館の中ではなく、華々しい装飾と光に包まれた、文字通りパレードの中だったのだ。
予想とは違う光景に、葵は眉をひそめて辺りを見回す。
「何、これ?」
「効果は後ほどのお楽しみですわ。念のために言っておきますが、このカードも《ゴーストリック・ハウス》同様、裏側守備表示のモンスターを攻撃対象に選択はできませんし、すべてのモンスターが裏側守備表示になっている今の私にはダイレクトアタックが可能ですの。
私はこれでターンエンドですわ。どうぞ、葵さん?」
| 【シャルロッテ】 0/2600 -▲▲▲- ◎ --□-- | 【葵】 2/3500 --○-- ----- |
「《ゴーストリック・パレード》、ね……」
綺羅びやかなフィールド魔法の空間で、葵の手札には対策を講じる術は無し。加えて《ゴーストリック・ロールシフト》によって今のままでは攻撃を通すことすら叶わない。
さらには、今は裏側守備表示となって姿を隠した《ゴーストリックの駄天使》のオーバレイ・ユニットも折り返し地点を迎えている。
着実にこちらを打倒せんと布陣を構築されていく中、葵は笑みを崩さずにデッキトップのカードに手を添える。次の自分の手を確認し、目の前のデュエリストを打倒するために……
シャルロッテのデッキは【ゴーストリック】。それも《ゴーストリックの駄天使》の効果で地道に素材を貯めるロマンデッキです。
バリアンとか使わずに《ゴーストリックの駄天使》の効果で特殊勝利目指すのはロマンすぎて逆に書いてみたくなったので……