その間にゴルガー軸のセリフバウンスエーリアンを作ってましたが……
会話フェイズを入れてたら20000文字超えたので次回にも続きます
月明かりが遮られたこの空間で、黄昏はうつ伏せのまま未だに動く気配がない。
先ほどまでうめき声に顔を真っ青にしていた七波も、そんなこと気にならないほど動揺していた。
もしかしたら、そんな嫌な状況を振り払うため黄昏の元に駆け寄る。
「まさか自滅を選ぶなんて変わったガキだったわね」
「貴女が、貴女がやったくせに!」
ため息混じりに吐かれたエヴァの言葉に、七波は立ち止まってエヴァの方を睨む。
対するエヴァは肩をすくめ、両手をあげて降参のポーズをとった。
「私に言われても困るわよ。防ぐ手段があるのに使わなかったのはそっちのガキよ?
私だって悲鳴を聞けなくて冷めちゃったんだから」
「……っ!」
彼女の言葉は、七波の感情を爆発させるには十分すぎた。
「貴女みたいなやつに――!」
すでに装備されていたデュエルディスクを操作し、デュエルに乱入しようとする。が、それを制するように七波は腕を掴まれた。
その腕の主はゆっくりと立ち上がると眉をひそめて頭を振る。
「黄昏君っ!」
「七波、怪我はないか?」
「ちょ、黄昏君、頭から血! あとそれ貴方が言う言葉じゃないからね!?」
「ん、落下した時にどっかで切ったか。まあ問題ないだろ」
起き上がって第一声が予想外すぎて思わず七波は素っ頓狂な声をあげてしまう。明らかに心配する相手を間違っている。
額から血が流れているというのに、黄昏はそれをを拭うと興味なさげにすぐに話題を切り替えた。
「それから七波、お前デュエル乱入しようとしただろ?
ただでさえ顔色悪いんだから、こんな危険なデュエル参加するなんて無茶だろ」
「う、うるさい! 顔色悪くなった原因は黄昏君にもあるんだからね!
それから、その危険なデュエルを自分からしてる黄昏君には言われたくないよ!」
「だから、経験者の助言ってやつだ。とっさに右腕で防いでなかったらホントに危なかったかもな。
まあ、おかげで色々わかったけど」
そう言って蛇の鱗が浮かび上がっている右腕を見せると、内出血でもしているのか真っ青になっていた。
「それ、まさか折れて……」
「ドローは出来るから大丈夫だろ」
腕の調子を確かめるように軽く振った黄昏は淡々と答える。
ソリッドビジョンによる体感どころでは済まないリアルダメージを受けてその程度で済んでいるとは思えないが、黄昏が大丈夫だと言い張るのだから彼を信じるほかない。
「ふぅん、あのダメージで起き上がれるのね」
「ちーっとばかし気失ってたけどな。
おかげで、カードの精霊が手元にあればリアルダメージを軽減できるってことがわかったけど」
「…………」
エヴァからの返答はないが、むしろその行為が黄昏の言葉を肯定している。
確かに、黄昏のデッキには精霊を宿した《スクラップ・ゴブリン》のカードが入っていたはずだ。
その力で2500ものダメージを軽減したのだろうが、七波は一つ疑問に思う部分があった。
(なんで、《スクラップ・ゴブリン》が見えないんだろう?)
精霊と言っても千差万別で、七波の《水霊使いエリア》のように精霊としての力が弱い場合、自由に行動することが出来ても、デュエル中は手札にいないと姿を現せないこともある。
ただ、彼の《スクラップ・ゴブリン》は見えるどころか実際に触ることもできる。
その現象に黄昏の力が働いていたのだとしても、精霊としての力が強かったのは確かだ。
何か事情があるのだろうか、などと予想はするが、それ以上のことはわからなかった。
「それで、まだあんたのターンは終わってないってことでいいんだよな?」
「そうね。でも特にすることもないからターンエンドよ」
そうか、と頷いた黄昏は首元に手を伸ばす。いつも身に着けてはいたが全く使う様子がなかった、ひも状のヘアバンドを手に取ると、それを使って前髪をまとめ始めた。
口元まで伸びた前髪をすべてあげ、額が見える状態でヘアバンドで固定した黄昏は、一度深呼吸をしてから改めてエヴァをまっすぐ見据える。
「いきなりどうしたのかしら? 願掛けか何かのつもり?」
「まあそんなところだ。こうすると、相手が
「……っ!?」
その真っ赤な眼はエヴァをまっすぐ捉えている。まるで相手のすべてを見透かすような鋭く不思議な視線を向けられたからか、エヴァは表情を強張らせて身構えている。
その様子に、黄昏は少し肩を落としてため息をついた。
「アンタもそういう顔するんだな。まあいいけどさ。デュエルを続けるぞ。
俺はあんたのエンドフェイズに《破滅へのクイック・ドロー》を発動!」
「《破滅へのクイック・ドロー》……手札0だったら通常ドロー時に追加で引ける永続罠ね。
……すべてをセットしたのはこのためか。
まあいいわ。処理が済んだのならあなたにターンは移るわ」
| 【エヴァ】 3/4000 --○○- --■-- | 【黄昏】 0/1400 ----- -■■□- |
「俺のターン、ドロー!
そして手札0枚で通常ドローをしたとき、《破滅へのクイック・ドロー》でさらに1枚ドローする」
【黄昏】
手札:0→1→2
「さらに《破滅へのクイック・ドロー》で手札に加わったのは《ロータリー・ブースト》。
このカードが罠カードの効果でドローされたとき、このカードと手札1枚を墓地へ送ることでさらに2枚ドローできる。
俺は手札の《シールド・ウォリアー》と共に墓地へ送って2枚ドロー!」
【黄昏】
手札:2→0→2
《絶対王バックジャック》によって操作されたデッキトップによって流れるように墓地肥しとデッキ圧縮をしていく。
そして改めてドローされた2枚のカードを見て黄昏は小さく笑った。
「そしてメインフェイズ、俺は《スクラップ・コング》を召喚」
《スクラップ・コング》
☆4・地属性・獣族
ATK:2000
始めてお披露目となったゴリラ型のモンスターはフィールドに現れると、相手を威嚇すべくドラミングを行う。
攻撃力2000と下級アタッカーとしては申し分ない数値を誇るが、すでに《強化人類サイコ》に太刀打ちできない。
加えて、このモンスターには非常に重すぎるデメリットが存在する。
「そして《スクラップ・コング》は通常召喚成功時、自壊する」
「はい!? ちょ、黄昏君それ正気なの!?」
《スクラップ・コング》
フィールド→墓地
七波の嘆きも空しく、あろうことかドラミングで自身を砕いてしまった《スクラップ・コング》は早々にフィールドを退場した。
確かに《スクラップ》には自壊効果を持つモンスターも多数存在するが、ここまで扱いづらいモンスターをデッキに投入している彼の心境が理解できない。
それは相手であるエヴァも思ったようで、心底不愉快そうだった。
「お前、私をバカにしてるの?
そんなクズモンスターをデッキに入れているなんて……」
「まあ落ち着けって。本当は別のカードと組み合わせて使う予定のカードなんだ。
それに、ただ無駄死にしたわけでもないさ。《スクラップ・コング》にも《スクラップ》カードの効果で破壊され墓地へ送られたとき、墓地の同名カード以外の《スクラップ》モンスターをサルベージする効果がある。
もちろん自身の効果でも条件を満たしてるから、墓地の《スクラップ・ブレイカー》を手札に加える!
同時に、墓地の《スクラップ・サーチャー》の蘇生条件も満たすから蘇生する!」
《スクラップ・サーチャー》
☆1・地属性・鳥獣族
DEF:300
墓地→フィールド
《スクラップ・ブレイカー》
墓地→手札
【黄昏】
手札:1→2
一時はどうなるかと冷や冷やしたが、《スクラップ》の真骨頂である様々な場所を利用したカード操作により、黄昏の手札は減ることなく次々に展開への布石を打っていく。
召喚権を消費してしまったのは痛いが、今の黄昏の手札ではあまり気にはならない。
「そして、相手フィールドにモンスターがいるとき、《スクラップ・ブレイカー》は手札から特殊召喚でき、その後自分フィールドの《スクラップ》モンスターを破壊する。
俺は《スクラップ・サーチャー》を破壊する」
《スクラップ・ブレイカー》
☆6・地属性・機械族
ATK:2100
《スクラップ・サーチャー》
フィールド→墓地
フィールドに現れた不安定な《スクラップ・ブレイカー》は《スクラップ・サーチャー》を破壊し、その部品を取り込むことで安定する。
「どれだけデッキを回そうが所詮は雑魚。攻撃力は《強化人類サイコ》の方が上よ!」
「それはどうかな?
俺は墓地の《ブレイクスルー・スキル》の効果を発動!」
「墓地から罠を発動ですって!?」
「墓地のこのカードを除外することで、エンドフェイズまで相手モンスター1体の効果を無効にするする!
俺が無効にするのは《強化人類サイコ》だ。これにより、上昇していた攻撃力も元に戻る!」
《ブレイクスルー・スキル》
墓地→除外
《強化人類サイコ》
ATK:2500→1500
「さあバトルだ! 《スクラップ・ブレイカー》で《強化人類サイコ》を攻撃。[スクラップ・プレス]」
《ブレイクスルー・スキル》によって纏っていたオーラのようなものをはぎ取られ、攻撃力を戻された《強化人類サイコ》では接近する《スクラップ・ブレイカー》に対処できない。
抵抗虚しくその残骸で構築された拳に粉砕され、その衝撃はプレイヤーのエヴァにまで到達する。
【エヴァ】
ライフ:4000→3400
「つっ!」
超過ダメージは微々たるものだがこのデュエルはどういうわけかダメージが本物となるデスゲーム。
これぐらいの衝撃でも彼女の身体が軽く浮いて吹き飛ばされた。すぐさま体勢を整えて難なく着地をするが、その拍子に身に着けていたローブがはだけてしまう。
彼女が身に着けていたのはノースリーブのハイネックとローライズのショートデニム。アームウォーマーで腕は覆っているが、非常に露出が多い格好だ。
その異常な服装に黄昏は一瞬たじろいだ。
「またスゲー格好してるな、おい」
「黄昏君ハレンチ」
「なんでだよ!?」
「うるさい、こっち見ないで」
「お前な……はぁ」
たじろいだのだが、それと同時に後ろからの冷ややかな視線を送られる。理不尽なことこの上ないが、この際反論は置いておいて肩をすくめるだけに抑えた。
そんなことも気にせず、エヴァは自身のモンスターの効果を発動する。
「この瞬間、《テレキアタッカー》の効果!
フィールドのサイキック族が破壊されるとき、ライフを500払うことで代わりに《テレキアタッカー》を破壊する!」
【エヴァ】
ライフ:3400→2900
《テレキアタッカー》
フィールド→墓地
「破壊を肩代わりする効果を持ってたのか……
ここで《強化人類サイコ》を破壊できなかったのはマズいな……」
彼女にダメージを与えることはできたが、肝心の《強化人類サイコ》の破壊を回避されては意味がない。
《ブレイクスルー・スキル》によって攻撃力を元に戻したが、墓地には《テレキ・アタッカー》が送られたし、そうでなくとも黄昏の《手札抹殺》によって墓地には他のサイキック族も落ちていることだろう。
結局、次のターンには再び2500まで上昇してしまうと考えた方がいい。
それは後ろの七波も理解しているようで、声には出さないが心配そうにこちらを見つめている。
「驚いた。まさかこの状況で私にダメージを与えるなんて、ね」
嬉しそうに呟くエヴァは口が裂けたような笑みを浮かべる。
「いいわ、それでこそ悲鳴をあげさせる価値がある! 《破滅へのクイック・ドロー》の維持コストで自滅するなんてヘマは承知しないわよ?」
「言われなくても対策は組んであるっての! 俺は、リバースカード発動《バックドア》!
墓地の《針虫の巣窟》、《荒野の大竜巻》、《妖怪のいたずら》、《無慈悲な指名》、《手札抹殺》を《罠解卓上》へインフェクトする」
《罠解卓上》
IV:0→5
「そして俺はレベル6の《スクラップ・ブレイカー》に、《無慈悲な指名》をインフェクト。エクストラデッキのリバイバル・モンスターへミューテーション。今ここにフィールドを陰る力を示せ。リバイバル召喚! 電子に住まう形なき魔物、《クリッカー・ヴァイルス》!!」
《罠解卓上》
IV:5→4
《スクラップ・ブレイカー》
フィールド→墓地
《クリッカー・ヴァイルス》
☆6・地属性・雷族
DEF:2600
《スクラップ・ブレイカー》を素材とし、不釣り合いなほど巨大な両腕を持ち絶えずクリック音を発しているアンドロイドが姿を現した。
そのモンスターを目にした瞬間エヴァの眼光が鋭くなる。その瞳はまるで親の仇を見るかのような憎悪を宿しており、ただのモンスターに向けるものとしては異質なものだった。
「リバイバルモンスター……すべての元凶……っ!」
「元凶、だと?」
唸るような声に黄昏は首を傾げるが、それ以上彼女がその話に触れることはない。
「なら、《クリッカー・ヴァイルス》の効果だ。フィールドの表側表示の魔法か罠カードをセットし直す。
俺は《破滅へのクイック・ドロー》を再セット。[クラッキング・リバース]」
《クリッカー・ヴァイルス》からカタカタと言うクリッカー音が鳴り響くと、それに共鳴するように《破滅へのクイック・ドロー》のカードが無理やり裏側に変更された。
《破滅へのクイック・ドロー》
表側表示→セット
「これで、俺はライフコストを払う必要はない。まあ、《クリッカー・ヴァイルス》の効果でセットしたカードは、こいつがいる限り発動できないんだけどな。
俺はこのままターンエンドだ」
| 【エヴァ】 3/2900 --○-- --■-- | 【黄昏】 1/1400 --△-- ● -■■■- |
「ライフコストの踏み倒し……いや、それならプレート魔法にインフェクトすればいいだけ。
ということは何か隠してるわね」
「…………」
エヴァの言う通り、黄昏のデッキには《破滅へのクイック・ドロー》を再度利用することができるカードが眠っている。
しかし、今はそのカードを出すことより目の前の脅威をどうにかする必要があった。
「私のターン、ドロー!」
【エヴァ】
手札:3→4
ドローしたカードを確認することもなく、エヴァは速攻でメインフェイズへ突入する。
「《強化人類サイコ》の効果!
墓地の《テレキアタッカー》、そして《沈黙のサイコウィザード》を除外して攻撃力を合計1000ポイントアップする![ディメンジョン・サクリフォース]」
《テレキアタッカー》
墓地→除外
《沈黙のサイコウィザード》
墓地→除外
《強化人類サイコ》
ATK:1500→2000→2500
攻撃力が上昇し、再び攻撃力が2500に戻った《強化人類サイコ》。しかし、その数値は《クリッカー・ヴァイルス》の守備力には届いていない。
「攻撃力が足りないと思ってホッとしたかしら? けどそれは大間違いだ!
私は《パワー・インジェクター》を召喚!」
《パワー・インジェクター》
☆4・地属性・サイキック族
ATK:1300
《強化人類サイコ》の隣に並び立ったのは全体的に丸々としたモンスター。
どちらも似たような改造が施されており、どんな効果を持っているのかはなんとなく想像がついた。
「《パワー・インジェクター》はライフを600払うことで、エンドフェイズまでフィールドのサイキック族の攻撃力は500ポイントアップする。[エナジー・ディール]……つっ!」
【エヴァ】
ライフ:2900→2300
《強化人類サイコ》
ATK:2500→3000
《パワー・インジェクター》
ATK:1300→1800
エヴァのライフが吸収されることでモンスターたちの攻撃力が上昇。
このターン限りとはいえ、とうとう《強化人類サイコ》の攻撃力があの《青眼の白龍》と同じ3000の大台に乗った。
ただし、闇のデュエルはライフコストさえも現実のダメージとなるらしく、彼女は一瞬だけ苦痛に表情を歪めていた。
「お前のフィールドのセットカードはすべてわかってる。
守る手段のない《クリッカー・ヴァイルス》はここでお終いだ!
《強化人類サイコ》で《クリッカー・ヴァイルス》を攻撃![フル・マッドネス]」
自身の効果及びサポートを受けて強化された《強化人類サイコ》が再び地を駆け、《クリッカー・ヴァイルス》を叩き潰さんと得物を振り上げる。
生憎と、黄昏のセットしたカードはこの状況を確実に覆すカードではないため、このまま何もしなければ《クリッカー・ヴァイルス》は破壊される。
そうすれば再び《破滅へのクイック・ドロー》を発動することは可能なのだが、さすがにそれは黄昏の思い描く展開には程遠い。
「――ダメージ計算時、墓地の《シールド・ウォリアー》を除外することで、戦闘を行う俺のモンスターに戦闘破壊耐性を与える!」
《シールド・ウォリアー》
墓地→除外
《強化人類サイコ》の棍棒が振り下ろされ、《クリッカー・ヴァイルス》を叩き潰す直前、《シールド・ウォリアー》の幻影がその攻撃をはじいた。
攻撃を防がれたエヴァは露骨に顔を歪めて舌打ちをする。
「そういえば、さっき《ロータリー・ブースト》で墓地へ送ってたわね。まあいいわ。
私はこのままターンエンド。この瞬間、《パワー・インジェクター》の効果は切れて攻撃力は元に戻るわ」
《強化人類サイコ》
ATK:3000→2500
《パワー・インジェクター》
ATK:1800→1300
| 【エヴァ】 3/2300 --○○- --■-- | 【黄昏】 1/1400 --△-- ● -■■■- |
「俺のターン、ドロー」
【黄昏】
手札:1→2
「俺は手札から通常魔法《一時休戦》を発動。
お互いカードを1枚ドローして、次のアンタのターンが終わるまでお互いが受けるダメージは0になる」
「あら、わざわざドローをさせてくれるなんて親切ね」
【黄昏】
手札:1→2
【エヴァ】
手札:3→4
エヴァの手札も増えてしまったのは痛いが、黄昏の手札も新たにカードを引いて合計2枚となった。
それらのカードを確認した黄昏の中で、一つの道筋が切り開かれる。
「俺はカードをすべてセットしてターンエンドだ」
| 【エヴァ】 4/2300 --○○- --■-- | 【黄昏】 1/1400 --△-- ● -■■■■ |
「私のターン、ドロー」
【エヴァ】
手札:4→5
「バカの一つ覚えみたいに手札のカードを全部セット。毎回同じ戦法はさすがに飽きるわよ!
私は《パワー・インジェクター》の効果でライフを600払うことで、エンドフェイズまでフィールドのサイキック族の攻撃力を500ポイントアップする。[エナジー・ディール]!」
【エヴァ】
ライフ:2300→1700
《強化人類サイコ》
ATK:3000→3500
《パワー・インジェクター》
ATK:1300→1800
2度目のライフロスで再び《強化人類サイコ》の攻撃力が《クリッカー・ヴァイルス》の守備力を超えた。
「同じ戦法はお互い様だろが。どっかの誰かさんみたいな脳筋だな」
「なんか言った?」
「いや、なんでも?」
未だに顔色は良くない七波から冷ややかな視線を向けられるが、デュエル中に味方を敵にする気はないため黄昏は肩をすくめながらシラをきる。
その間にエヴァはメインフェイズを終え、バトルフェイズへと移行していた。
「《一時休戦》でダメージは与えられなくてもモンスターは破壊できる!
バトルだ! まずは《強化人類サイコ》で《クリッカー・ヴァイルス》を攻撃![フル・マッドネス]」
「っと流石にそれは勘弁だな。《強化人類サイコ》の攻撃宣言時、俺はリバースカード発動《リビングデッドの呼び声》!
墓地の《スクラップ・ブレイカー》を表側攻撃表示で特殊召喚する」
《強化人類サイコ》が迫る中、黄昏が発動したカードによって新たなモンスターが現れたことにより、巻き戻しが発生した。
《スクラップ・ブレイカー》
墓地→フィールド
「ここで《リビングデッドの呼び声》を発動? いまさら攻撃力2100のモンスターを出したところで……」
「まあそう慌てるな。
俺はチェーンを組みなおしてリバースカード発動《ギブ&テイク》!
《スクラップ・ブレイカー》のレベルを1つ上げ、アンタの場に《スクラップ・サーチャー》を表側守備表示で特殊召喚する」
「な……っ!?」
《スクラップ・ブレイカー》
レベル:6→7
《スクラップ・サーチャー》
墓地→フィールド(エヴァ)
続けて発動されたのは、防御カードでもカウンターカードでもなかった。
ただし、一部のカードと共に用いれば、さまざまな付加価値を得ることが出来るカードでもある。
「《スクラップ・サーチャー》は特殊召喚時にアンタのフィールドの《スクラップ》以外の表側表示モンスター、《強化人類サイコ》と《パワー・インジェクター》を破壊する。[パーツ・リジェクション]」
《強化人類サイコ》
フィールド→墓地
《パワー・インジェクター》
フィールド→墓地
《スクラップ・サーチャー》から破片が飛び散り、他のエヴァのモンスターに付着した瞬間その身体が破壊された。
破壊された爆風さえもリアルの闇のゲームでは、モンスターの破壊時でも顔を覆うほどの衝撃が襲ってくる。
効果処理が終わったエヴァのフィールドには、強力なモンスターは跡形もなく吹き飛び、《スクラップ・サーチャー》だけが守備表示で佇んでいた。
「ちっ、そういう使い方があるのね」
「いつもは、な。けど俺にはまだプレート魔法がある。
リバースカード発動《ステルス・リバイバル》。これにより俺はバトルフェイズにリバイバル召喚できる!」
「このタイミングでリバイバル召喚ですって!?」
「俺は、レベル7となった《スクラップ・ブレイカー》に《荒野の大竜巻》と《妖怪のいたずら》をインフェクト。エクストラデッキのリバイバル・モンスターへミューテーション。 否応なくフィールドを照らす力を示せ。リバイバル召喚! 電子を操作する象徴、《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》!」
《罠解卓上》
IV:4→2
《スクラップ・ブレイカー》
フィールド→墓地
《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》
☆7・地属性・雷族
DEF:2800
似た名を持つモンスターが《クリッカー・ヴァイルス》の隣に現れたが、その姿は大きく違っていた。
比較的人型に近いアンドロイドである《クリッカー・ヴァイルス》に対して、《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》は逆関節の足で前傾姿勢をとっており、獣に近い容姿をしていた。
そしてこの一連のカードプレイングにより、エヴァのモンスターは一掃され、代わりに守備力300でバニラ同前の《スクラップ・サーチャー》が佇んでいるだけとなる。
「これじゃあ攻撃できないわね。けれど、それは何もできないってことにはならない!
メインフェイズ2にリバースカード《地霊術-「鉄」》を発動! 自分フィールドの地属性モンスターをリリースして、リリースしたカード以外の墓地の地属性・レベル4以下のモンスターを特殊召喚する!
私は《スクラップ・サーチャー》をリリースして墓地の《寡黙なるサイコプリースト》を蘇生!」
《スクラップ・サーチャー》
フィールド→墓地
《寡黙なるサイコプリースト》
レベル3・地属性・サイキック族
DEF:2100
「《地霊術-「鉄」》は最初から伏せてあったリバースカード……用意周到だな」
「さすがに私も《強化人類サイコ》だけで勝てるとは思てないわ。まあ、こんなところまで追いつめられている相手に使うのも勿体無い気もするけど」
「……ちっ」
自分のモンスターを利用して出された、新たなサイキック族モンスター。危機を回避するための黄昏の一手は、皮肉にもさらなる危機を呼ぶ引き金となってしまったのだと思うと、黄昏は思わず舌打ちする。
「その苦悶の表情もそそるわね。もうすぐいい声で鳴かせてあげる」
「そういう趣味はないから勘弁してほしいな」
「なら今からその趣味を持ってもいいのよ?
さあ、《寡黙なるサイコプリースト》の効果! 手札を1枚墓地へ送ることで、墓地のサイキック族を除外できる。
私は手札の《ジェネティック・ウーマン》を墓地へ送り、その《ジェネティック・ウーマン》を除外する!」
【エヴァ】
手札:5→4
《ジェネティック・ウーマン》
手札→墓地→除外
「《寡黙なるサイコプリースト》は、墓地へ送られたとき、自身の効果で除外したモンスターを1体帰還させる。
破壊したいなら破壊しなさい。まあ、今のお前のモンスターじゃ戦闘破壊することすらできないけど。
私はカードを2枚セットしてターンエンド。」
「ならそのメインフェイズ終了時、俺は《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》の効果を発動! 相手のメインフェイズ時に1度、フィールドにセットされている魔法・罠カードを表側表示にする。
俺は《破滅へのクイック・ドロー》を表側表示にする。[ラフリー・オープン]」
《破滅へのクイック・ドロー》
セット→表側表示
「……ふぅん、確かに《クリッカー・ヴァイルス》で制限するのは『発動』だけ。《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》のように表側表示にすることは可能ってことね。
しかも、《破滅へのクイック・ドロー》は表側表示で存在するなら発動ではなくてもいい。
これで自分はライフコストを払う必要はなく、私が《破滅へのクイック・ドロー》の恩恵を受けることもない、と」
「そういうことだ」
エヴァは簡単に流したが、これは非常に大きいアドバンテージだ。
毎ターン手札を0にして2体のモンスターを守るというのは難題ではある。
しかし、逆に言えば2体のモンスターを守るのに手札を使い切っても常に手札が2枚補充させるのだ。
(これが、黄昏君の新しいデッキのスタイル……
元々使っていたカードと新しく入れたカードがうまくかみ合ってる)
「さあ、メインフェイズ終了時の発動だからまたあんたのメインフェイズに戻ったぞ?」
「特にすることはないわ。ターンエンドよ」
| 【エヴァ】 2/1700 -△--- --■■- | 【黄昏】 0/1400 --△△- ● --□□- |
平常を装ってターンを終了したエヴァだが、その内心では笑みをこぼさないように必死に見繕っていた。
(私がセットしたカードは《聖なるバリア-ミラーフォース》と《神秘の中華鍋》。
破壊以外の除去をしてくるなら《神秘の中華鍋》でサクリファイス・エスケープできるし、高火力でライフを削り切ろうとしてくるなら《ミラーフォース》で返り討ち。
お前が何をしようが《寡黙なるサイコプリースト》は墓地へ送られるのは決定事項ね)
そんな絶望的な状況とは知らない黄昏は、いつも通りデッキトップからカードをドローする。
「俺のターン、ドロー。さらに《破滅へのクイック・ドロー》の効果でさらにドロー!」
【黄昏】
手札:0→1→2
新たに加わる2枚の手札。その内の最初の1枚を確認して思わず顔をしかめた。
「……《破壊神の系譜》。まさかここでこいつを引くか」
それは、相手の守備モンスターを破壊したターンに自分フィールドのレベル8モンスター1体に2回攻撃の権利を与えるカードである。
黄昏のデッキでレベル8のモンスターは1体しかいない。いつの日か巫梓に使用を控えるように言われた破滅のモンスター《スクラップ・ヘルサーペント》だ。
「何度もデッキを調整したのに、結局こいつと《ヘルサーペント》だけは抜いてなかったんだよな……
このカード抜いていたら別のカードを引けたのに。ホント、俺って……」
意志が弱いな、と自嘲気味に笑う。使うなと言われ、頷いたはずなのにこうしてデッキに投入し、こうして危機に陥っている。
ただ、今さら後悔していても仕方がない。もう1枚のカードでこの場を切り抜けることに専念する。
「今の手札じゃこれがベストか。
俺は永続魔法《スクラップ・オイルゾーン》を発動。墓地の《スクラップ・ブレイカー》を蘇生する!」
《スクラップ・ブレイカー》
墓地→フィールド
「このカードを発動したターン攻撃をすることはできないが、どうせ攻撃をするつもりはなかったから問題ない。
そして《クリッカー・ヴァイルス》の効果で《破滅へのクイック・ドロー》をセットし直す。[クラッキング・リバース]」
《破滅へのクイック・ドロー》
表側表示→セット
「……カードを1枚セットしてターンエンド」
| 【エヴァ】 2/1700 -△--- --■■- | 【黄昏】 0/1400 -○△△- ● -□□■■ |
動くに動けず、黄昏は壁になりそうなモンスターを増やすだけでターンを終えてしまった。
準備は整わず、エヴァのデッキの真髄は未だわからないまま、エヴァのターンを迎える。
――次のターンで大きく動く。
そう直感した黄昏は次のターンで起こるかもしれない惨劇に備えて、せめて覚悟だけでも決めようと深呼吸をするのだった。
《クリッカー・ヴァイルス》と《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》。
冷静に考えるとこの二枚、初期のモンスターとしてはちょっと効果がいやらしすぎましたね
それにしても《スクラップ・ファクトリー》はスクラップの救世主でした。
手札全部使い切って頑張って《スクラップ・ドラゴン》や《ツイン》を出してた時期が懐かしいです。
以下、《クリッカー・ヴァイルス》と《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》の説明です↓
あと、何だかんだリバイバルモンスターの表記も初めての気が……
---------------------------
《クリッカー・ヴァイルス》
☆6・地属性・雷族
ATK:1600 DEF:2600
IV(1枚)+レベル6モンスター
①1ターンに1度、魔法&罠ゾーンに表側表示で存在するカード1枚を対象に発動できる。
そのカードをセットし直す。
②このカードがフィールドに存在する限り、このモンスターの①の効果でセットしたカードは発動できない。
---------------------------
《ダブル・クリッカー・ヴァイルス》
☆7・地属性・雷族
ATK:1600 DEF:2800
IV(2枚)+レベル7モンスター
①相手ターンのメインフェイズ時に一度、魔法&罠ゾーンにセットされているカード1枚を対象に発動できる。
そのカードを表側表示にする。この効果で表側表示にしたカードは、2ターン後の自分のスタンバイフェイズに墓地へ送られる。
②フィールドのこのカードがフィールドを離れたとき、①の効果で表側表示になっているカードはすべて破壊される。