遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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前回の投稿との間に、プロキシの真帝王デッキにボコスカにやられてきました
効果知らないカードあるから、止めるタイミングがわからないってのもありましたが、手札増えるわエクストラからの特殊召喚封じられるわで、ばっちり9期の動きでした。
エクストラが必要ないから比較的安く作れるのもうれしいですね。

アークファイブのスタンダードは、みんな帝使えば他の次元に勝てるんじゃないかな?←


今回のデュエルですが、いろいろとカオスなことになってます


お披露目! リリアの新生装備カードデッキ

 時間は遡り、黄昏と別れた直後の神崎たちはシャルロッテの捜索を進めていた。

 とはいっても、いきなり怪我人を一人任せられ、もう一人は荒事とは無縁そうな少女。唯一の男で荒事にも慣れている神崎は、つい先日犯罪者として一方的に彼女たちに悪い印象を持たれている。

 ギクシャクしたメンバーで捜索がはかどるはずがなく、神崎が手当たり次第に捜索、その後を刻魅と彼女に肩を貸しているリリアがついていく形だった。

「それにしても……」

 神崎は先行して安全を確保しながらの捜索する合間に、黄昏から渡された1枚のカードに目を向ける。

「あいつ、《スクラップ・ゴブリン》を預けるなんてどういうつもりなんだ?」

 事情を知らない神崎は、そのカードが闇のゲームから防いでくれるとは知らない。

 ただ黄昏に言われた通りに持っているだけだ。

 敷地の半分ほど探し回り、本校舎の裏に足を踏み入れた瞬間、神崎はただならぬ殺気に思わず足を止めた。

「あ、あのー、どうかしたんですかー?」

「隠れてろ!」

「ひゃ、ひゃい!」

「そう怖がらなくても、必要以上の危害は加えませんので」

 声の元をたどっていくと、そこには中性的な容姿の子供が立っていた。

 その表情は仮面でも被っているかのように無表情だが、声からしておそらく男だと予想はつく。

 ただ……

「それ、ここの女子の制服じゃねぇか。

 もしかしてそっちの趣味か?」

「ああ、これですか?

 もちろん男子制服も用意していたのですが、不本意ながら私に気づいたのが女子生徒だったですので、仕方なく。

 違和感があるのなら……」

 そこまで言うと少年は両手で自分の顔を覆い、こねるように皮膚を動かす。

 次に手を放して露わになった顔を見て、全員が絶句した。

「これなら違和感はございませんわね?」

「しゃ、シャルロッテさん!?

 え、ど、どうなってるのー!?」

 顔どころか声までシャルロッテのそれになり、先ほどまでの少年が幻だったかのように、雰囲気まで変わってしまった。

 目の前の光景に言葉を失った神崎とリリアだが、刻魅だけはすぐに鋭い目つきを向けて声を荒げる。

「っ、本物のお嬢様はどこですか!」

「……あの方ならこちらですので」

 再び顔を無表情の少年に戻すと、彼は自身の後ろを指さし、全員の意識がそちらに向く。

「お嬢様っ!!」

 月明かりにより微かに見えるその先に、確かにシャルロッテの姿はあった。

 ただし、半円状の鉄の檻に閉じ込められており、その制服は所々焦げているという、思わず目をそむけたくなる状態だったが……

「あれは、《悪夢の鉄檻》じゃねぇか。

 ってことは、てめぇサイコデュエリストか!」

「はい。彼女は私が偽物だと気づいてしまったので、少し痛めつけて拘束させていただきましたので」

「てめぇ、何が目的だ?

 こんなことすればセキュリティに捕まることぐらいわかるはずだろ」

「あなたに言う必要はありませんので。

 用があるのはその後ろの金髪の子ですので」

「あ、アタシ?」

 いきなり指名されて戸惑うリリアの盾になるように神崎は一歩前に出る。

 その腕にはデュエルディスクと、非常に長いロープに繋がれた手錠が握られていた。

「それは、強制的にデュエルディスクを起動させる手錠ですか。

 セキュリティの制服を着ていますが、まさか本当にセキュリティの人とは思いませんでしたので」

「はっ、サイコデュエリストの無力化の仕方はこれ使うのが手っ取り早いんだよ。

 その危険な力も、デュエルに持ち込めばデュエルのルールに縛られて自由に使えねぇからな!」

 そしてサイコデュエリストの凶悪犯のデッキは、その力をフルに発揮するため、バーンデッキかパワーデッキになっていることが多い。

 紛いなりにもセキュリティの仕事をしている神崎も、その対策をしたデッキは持ち歩いている。

「危険、ですか……」

「あん?」

 ポツリと呟いた少年の言葉が聞き取れず、眉をひそめた神崎。

 次の瞬間、彼らを囲むようにコロッセオが出現。実体化したのはおそらく《サベージ・コロシアム》。

 四方を高い壁に囲まれた空間に囚われた神崎たちは逃げ場を失ってしまう。

「だが、それはてめぇも一緒だろうが!」

 相手のデュエルディスク目がけて投げられた手錠は、吸い込まれるように少年のデュエルディスクに向かう。

「――無駄ですので」

「なんだと!?」

 手錠が少年のデュエルディスクにかかる直前、その周囲に水が発生し、渦巻き始めた。

 激しく渦巻く水は手錠を巻き取ると、鈍い音を立てながら粉々に砕いてしまった。

「その手錠が厄介なのを知ってるなら、対処法を持っているのも当然ですので」

 そう言って彼が見せたデュエルディスクには1枚のカードがセットされていた。何のカードか知らないが、どうやらそのカードを使用したらしい。

「これであなたがデュエルを強制することは不可能になりましたので。

 大人しくその金髪の子を差し出せば、拘束している彼女も、他のみなさんにもこれ以上危害は加えませんので」

 だから大人しく要求を飲め。遠まわしにそう忠告する少年の目は本物だ。

 無表情のため、余計にそれが目についた神崎は、リリア自身に気づかれないように彼女の方に目を向ける。

 今この火に囲まれた場には怪我人が二人もいる。そして退路はない。目の前の少年はサイコデュエリストで、腕に自信がある神崎でも力づくでどうなるかはわからない。

「けど、悩んでるわけにはいかねぇよなぁ!!」

「っ!?」

 自分を鼓舞するように声を張り上げ駆け出した神崎は、拳を握って少年に肉薄する。

 対する少年は、まさか本当に力づくで来るとは思っていなかったらしく一瞬怯んだ。それでもすぐさまデッキからカードを引き、デュエルディスクにセットしようとする。

 しかし、怯んだぶん神崎の拳が届く方が早い。

(よし、これで……)

 届いた、そう確信した直後、神崎の視界がブレる。

 それが第三者による真横からの攻撃だと理解した時には、神崎の身体は地面に倒れていた。

 すぐに起き上がろうとするが、受け身が取れなかったためうまく呼吸ができない。

 ようやく動けるようになった時には、神崎を攻撃した『誰か』に腕を後ろで固められ、無力化されていた。

「遅いですよ。まあそのおかげで隙を突けましたので、良しとしましょう。

 それで、例のものはどうなりましたので?」

 神崎を無力化した『誰か』と会話をする少年。その口ぶりから、彼の部下か何かだろう。

 何かを要求した少年に無言で答え、取り出したものを投げ渡す『誰か』。それはデッキケースのように見えた。

 少年はそれを受け取り、確認すると妥協点だ、と言わんばかりに鼻を鳴らした。

 せめてその顔を拝んでやるという意地から首を動かし、馬乗りになっている正体を確認した。

「な……っ!?」

 その正体は、神崎がよく知る人物だった。

 周囲の火によって、燃えるような赤色の髪がはっきりと確認でき、肩まである後ろ髪は後ろで縛られている。

 見間違うはずがない。故に信じられない。

 否定したいが否定できない悔しさを表すかのような悲痛な叫びで、神崎はその者の名前を呼ぶ。

「てめぇ、自分が何してんのかわかってんのか、篠村!!」

「…………」

 数週間前、神崎とタッグを組んでいた彼の相棒は、行方不明という出来事を挟み、現在は神崎を拘束し、あまつさえ明らかに敵であろう少年の言いなりとなっていた。

 神崎の心の叫びに対する篠村の返答はなく、ただ神崎の叫びだけが空しく反響していた。

 

 ★

 

 状況を飲み込めないまま、リリアの目の前では刻一刻と状況が変わっていく。

 正直何が起こっているのかわからないが、一つだけ気になることがあった。

「も、もしかしてそのデッキって、あおいんのデッキ?」

「……驚きました。まさかあのカードだけで気づくとは思いませんでしたので。

 あなたの言う通り、これは昼に七波葵が盗まれたデッキですので」

 デュエルディスクからそのデッキを取り出し、カードの正体が見えるように扇状に広げる。

 離れているが、そのデッキが葵のデッキ(マーメイル)であることは確認できた。

「そこの篠村という男、どうやらスリが達者なようでしたので、昼の自由時間で存分に発揮してもらいました」

「じゃああの時あおいんが倒れたのって……」

 昼休み、葵が廊下に飛び出した直後に背中から倒された光景を思い出し、リリアはハッとする。

「まあ、本当のデッキはケースから出されていたようですが……」

「クソがっ!」

 少年の説明を聞き、神崎は吐き捨てるように悪態をついた。

 幼いころから磨いてきたスリの技術が、こんな場面で利用され、関係ない彼女たちを危険な状況に追いやってしまったのだ。悔やんでも悔やみきれないことだろう。

「か、返してよー! 予備のデッキだとしても、それはあおいんの大切なデッキなの!」

「なら、あなたの賢明な判断に委ねますので」

「あ、アタシの?」

「ええ、あなたが僕とデュエルをすれば、このデッキはもちろん、他のみなさんの無事は保証しますので」

「ほ、本当ー?」

「騙されるな!」

「ひゃっ!?」

 神崎の喝で飛び上がったリリアは反射的に彼の方に顔を向ける。

「理由はわからねぇが、こいつはお前をデュエルで痛めつけるのが目的なんだ!

 俺たちの無事も保証する確証なんてどこにもねぇんだぞ!!」

「……篠村、今すぐ黙らせなさい」

 篠村は少年に言われた通り神崎の頭を地面に押し付け、強制的に黙らせる。

 しかし、この状況も神崎の想定通りのことだった。

 この光景を見ればリリアは余計に委縮し、デュエルを受ける可能性は低くなる。あとは、隙を突いて拘束を解き、今度こそ少年を押さえればいい。

 それまで自分が痛めつけられるだろうが、彼女たちへの報いだと思えば気にすることではない。

 そう思っていたのだが、どうやら目の前の少年は神崎の思惑を理解したらしく、一瞬だけこちらに意味深な目線を向けた。

「ではこうしましょう。

 あなたがデュエルを受けるというのなら、このデッキはお返ししますので」

「も、もし受けなかったらー?」

「その場合は、その時考えますので。

 確実にこのデッキは無事では済まないでしょうが」

「っ、ダメ!!」

 その返答に無表情の少年は小さく笑う。

 その笑みが不気味に見え、リリアは小さく悲鳴を上げる。しかし、葵のデッキを失うことだけは避けたい彼女は逃げずに対峙する。

 少々乱暴な部分はあるが、優しい葵のことだ。リリアとデッキならもちろんリリアの無事を願うだろうし、もしこんなことで迷ってるところを見られたら鉄拳が飛んできてもおかしくない。

 しかし、それはリリアも一緒だ。仮に本当のデッキではないとはいえ、友人のデッキが傷つけられるかもしれないのを黙って見逃すことはできない。

「なら、何をすればいいのかおわかりですので?」

「………………」

「おいバカ、よせ!」

 神崎の制止も空しく、リリアは肩を貸していた刻魅を下ろした。

「刻魅さん、悪いけどちょっと待っててねー」

「リリアさん……」

 身軽になったリリアは腰のホルダーからデュエルパッドを取り出し、デュエルディスクに変形させて装備する。

 そしてデッキもデュエルディスクにセットし終えると、少年は満足そうに頷いた。

「素直なところは好意が持てますので。では……」

「待って、あおいんのデッキを返してもらうのが先だよー」

「まあいいでしょう。信用できないなら心ゆくまで確認してもらって構いませんので」

 投げ渡されたデッキを受け取ったリリアは、素早くデッキを広げ、自分の記憶と照らし合わせていく。

 しばしの照合作業を終え、覚えている限り紛失したカードはなさそうだと判断したリリアは、そのデッキを刻魅に預ける。

「リリアさん、本当に大丈夫ですか?」

「うん、あおいんには助けてもらってばっかりだし、今くらいはアタシが頑張らないとねー!」

 明るく振る舞うリリアからは、普段のふんわりとした雰囲気はなりを潜め、確かな信念を宿していた。

「ちっ、おい金髪のガキ!」

「ひゃいっ!?」

「どうしてもデュエルするってんなら、このカード持ってろ!」

 片腕を拘束され地面に伏した不自由な状態で器用に懐からカードを取り出すと、それをリリアに向かって投げつけた。

 綺麗な軌道を描くカードはそのままリリアの元に向かうと、落としそうにはなるがしっかりと受け取った。

「これって、遊糸の《スクラップ・ゴブリン》?」

「アイツが俺に渡してきたお守りだ!

 デッキに入れなくてもいいらしいから大事に持ってろ!」

「……遊糸のお守り、かー。

 えへへへ、じゃあよろしくね、《スクラップ・ゴブリン》」

 精霊が宿っているらしきそのカードは、黄昏から離れているためか今のリリアには確認できない。

 しかし、それでも《スクラップ・ゴブリン》が胸を張って頷いている姿が見えた気がして、リリアの表情は自然と緩んだ。

 神崎に言われた通り、空になっているデッキホルダーにカードを仕舞うと、今度こそ少年と対峙する。

 直後、先程葵を捕らえた赤い鎖がリリアに向かって伸びる。

「ひっ!?」

「心配しなくとも、この鎖そのものに危害を加える効果はありませんので」

 小さく悲鳴を上げるリリアが頭を押さえてしゃがみ込むも、赤い鎖は意志を持ったように不自然にうねり彼女の左腕に装着されたデュエルディスクへ接続。

 強制的にデュエルが開始画面へと移り変わる。

 それに合わせて周囲を囲んでいた《サベージ・コロシアム》は消滅。入れ替わるように真っ赤な炎がその場にいた全員を囲い込んだ。

「これで僕の準備は整いましたので。そちらは?」

「う、うん。大丈夫だよー」

 一度深呼吸をしてリラックスした後、リリアは自分のデッキに視線を落とす。

 そこに装填されているのは、黄昏とリリアに協力してもらって作った、リリアの新しいデッキだ。

 第一戦目がこんなプレッシャーのかかる舞台にはなってしまったが、不思議とリリアは落ちついていた。

「……うん、このデッキのみんなとなら大丈夫!」

 黄昏たちの言う『カードの精霊』というものがいまいちピンときていないながらも、リリアは小さくガッツポーズをしてモチベーションを高めていく。

「じゃあ、始めよっか!

 えっとー、君の名前は?」

「……ではニュートと」

「わかったよー。じゃあ、準備はいいよー」

 

「「デュエル!!」」

 

 無表情の少年、ニュートとリリアの宣言により、火に囲まれた中のデュエルが開始された。

 

【リリア】VS【ニュート】

 

「先攻は譲りますので」

「え、いいの?」

「ええ」

 なら遠慮なく、と先攻を譲ってもらってリリアは自分の手札を確認する。

(《重装武者-ベン・ケイ》に《フリントロック》、この手札ならどっちのモンスター出しても大丈夫そうだけどー)

 一通り戦術を組み立てると、とりあえず自分の直感を信じて一枚のカードをデュエルディスクに置く。

「アタシは《フリントロック》を攻撃表示で召喚だよー」

 

《フリントロック》

☆4・光属性・機械族

ATK:1500

 

 現れたのは戦闘機を模したモンスター。続けてリリアは2枚のカードを手札から発動する。

「さらに永続魔法《士気高揚》を発動!

 このカードがある限り、アタシは装備カードを装備するたびにライフを1000ポイント回復して、装備カードがフィールドを離れるたびに1000ポイントダメージを受けるよー」

「なるほど、ということはリリア様のデッキは装備魔法主体のデッキでございますか」

「まあねー。それじゃあ、続けてアタシは装備魔法《フリント》を《フリントロック》に装備ー。そして《士気高揚》の効果で1000ポイント回復ー」

 

【リリア】

ライフ:4000→5000

 

「最後にカードを1枚セットしてターン終了だよー」

 

【リリア】

1/5000

--○--  

-■□□-

【ニュート】

5/4000

-----  

-----

 

「では僕のターンですので、ドロー」

 

【ニュート】

手札:5→6

 

「僕は《手札抹殺》を発動します。お互いに手札を捨てて、捨てた枚数だけドローします」

「手札交換のカードかー……おっ!」

 リリアのデッキで主力アタッカーになりうる《ベン・ケイ》が墓地に送られてしまい少し苦い表情になるが、新たに加えたカードを見た途端渋っていた表情が明るくなる。

 

【ニュート】

手札:5→0→5

【リリア】

手札:1→0→1

 

「良いカードを引きましたか?」

「まあ、いいカードだねー」

「そうですか、僕もいいモンスターを引きました。ですが、まずは墓地へ送られた《ライト・サーペント》の効果を発動します。このカードが手札から墓地へ送られた場合、墓地から蘇生することができます」

 

《ライト・サーペント》

☆3・光属性・爬虫類族

ATK:1200

墓地→フィールド

 

「そして特殊召喚された《ライト・サーペント》をリリースし、《タイム・イーター》をアドバンス召喚しますので」

 

《ライト・サーペント》

フィールド→墓地

《タイム・イーター》

☆6・闇属性・機械族

ATK:1900

 

 墓地から蘇った光り輝く蛇は、間を置かずして生け贄として再び墓地へと送られる。そして入れ替わりフィールドに現れたのは、歪に歪んだ針を持つ懐中時計のようなモンスターだ。

 レベルの割に低い攻撃力を持つモンスターだが、葵とのデュエルで攻撃力が低いモンスターに何度もヒドイ目に合っているリリアとしては全然油断はできない。

 一体どんな効果かと警戒していると、背後の刻魅が驚きをあらわにする。

「な、《タイム・イーター》!?」

「ど、どうしたのー?」

「そのデッキ、私のデッキをコピーしましたね?」

「自分のデッキとなると気づくのが早いですね。

 バレれないよう、本人のデッキはそのままお返ししましたが、まさかこの1枚で気づくとは思いませんでしたので」

 特に気にした様子もなく、ニュートは淡々と答えていく。 

「えっと、一体どんな効果なのー?」

「見ていたらわかりますので。バトルフェイズ、《タイム・イーター》で《フリントロック》を攻撃しますので。[イート・クロック]」

 攻撃を命じられた《タイム・イーター》は懐中時計の真ん中から巨大な黒いモンスターを表し、そのモンスターが腕を振るう。

 すると空間が引き裂かれ、《フリントロック》を襲った。

「リリアさん、あの攻撃を防ぐ手立てはありますか!?」

「そんなのないよ――きゃっ!?」

 

【リリア】

ライフ:5000→4600

 

 空間が裂けるというのが目の前で起こったことでとっさに顔を覆う。実際何ともないのだが、やはり心臓に悪い。

 対して刻魅の方も違うことで眉をひそめる。

「……なぜですので?」

「えへへ、《フリント》を装備したモンスターは通常なら攻撃力を300ポイント下げて、攻撃をできなくするカード。

 でも、《フリントロック》だけは《フリント》の効果も受けなくて、代わりに戦闘破壊耐性もつくんだよー!」

 リリアの説明した通り、《フリントロック》は悠然とリリアのフィールドに浮遊している。

 えっへん、と得意げに胸を張って説明をするが、刻魅は未だ曇った表情のままだった。

「その効果は知っていますので。

 僕がわからないのは、()()()()()()()()()()()、ということですので」

「え、どういうことー?」

「僕のサイコデュエリストとしての力が弱いのは、僕自身十分理解してますので。

 デュエルで相手が感じるのは、ピリピリと肌が痛む程度でしょう」

「あ、うん、そうだねー。これぐらいならあまり気にしなくても大丈夫かもー」

「ですが、この炎の中で行われる『闇のデュエル』は、僕の力とは別にダメージが現実のものになりますので。

 なのに、なぜあなたは平然としているのですか?」

「なぜって……」

 逆にリリアの方が聞きたいくらいだった。

 そもそも『闇のデュエル』という単語が初耳のうえ、サイコデュエリストとのデュエル以外でダメージが本物になるというのが理解できないのだ。

 そのとき、リリアの脳裏に1枚のカードがちらつき、デッキケースに視線を落とした。

 そこに入っている1枚のカード。葵や黄昏曰く精霊が宿っているといわれるそのカードは、黄昏の重要なカードだ。

「もしかして、君のおかげー?」

 黄昏の力なしでは精霊の姿も声も認識できないリリアには確認する術はなかったが、なぜか《スクラップ・ゴブリン》が頷いてくれたような気がした。

「なんですか、そのカードは?」

「友達の大切なカード、かなー」

「なるほど、どうやらそのカードは相当な精霊の力をお持ちのようですので、痛みで極限状態に追いつめるのは諦めましょう。

 その代わり、全力で息の根を止めますので」

「っ!?」

 直後ニュートからの殺気が異様なほど膨れ上がる。背筋に氷柱を差し込まれたような、鋭く冷たい殺気にリリアとシャルロッテは身体が強張った。

「では僕はこのままターンエンドですので」

 

【リリア】

1/4600

--○--  

-■□□-

【ニュート】

4/4000

--○--  

-----

 

「あなたのターンですので、早くドローしてください」

「あ、う、うん。アタシのターン、ドロー!」

 急かされるようにドローしたカードを確認すると、リリアはそのカードを手札に加え、もう1枚の方のカードをデュエルディスクに置く。

 

【リリア】

手札:1→2

 

「じゃあ行くよー!

 アタシは手札からもう一枚の《フリントロック》を召喚」

 フィールドに並ぶ2体の《フリントロック》。しかしその攻撃力は《フリント》を《タイムイーター》に装備したとしても届かない。

「まだ手が残っているので?」

「もちろん! アタシは伏せていた《進化する人類》を《タイム・イーター》に装備!

 《進化する人類》はアタシのライフが相手よりも少ないと装備モンスターの元々の攻撃力を2400にするけど、逆にライフが多いと装備モンスターの元々の攻撃力を1000にすることができるよー。

 アタシのライフはニュート君より上。つまり《タイム・イーター》の攻撃力は1000になるよー!

 さらに《士気高揚》の効果でライフも1000回復ー」

 

《タイム・イーター》

ATK:1900→1000

【リリア】

ライフ:4600→5600

 

「なるほど、ライフ回復により弱体化を行うコンボ……いいコンボですので」

「結局戦闘破壊したら《士気高揚》でダメージ受けるから、アタシのライフはプラスマイナス0だけどねー。

 よーし、伏せカードもないからこのままバトルだよー。

 さっき召喚した《フリントロック》で《タイム・イーター》を攻撃。[フリント・シューター]」

 《フリント》を装備していない方の《フリントロック》はブーストを吹かして一気に《タイム・イーター》の頭上を取ると、爆撃を開始する。

 数えきれない爆弾が《タイム・イーター》へ投下される。

 その攻撃が直撃する思われた直前、ニュートが動いた。

「――墓地の《超電磁タートル》を除外し、バトルフェイズを終了しますので」

 

《超電磁タートル》

墓地→除外

 

 フィールドに《超電磁タートル》の幻影が現れると、その放電と磁力が爆撃を《タイム・イーター》から逸らせる。

 さらにリリアのデュエルディスクにまでその放電は及び、強制的にバトルフェイズを終了させた。

 「あうー……じゃあメインフェイズ2に移るよー。

 アタシは装備カードを装備してない《フリントロック》の効果を発動。

 フィールドに存在する《フリント》をこのカードに装備するよー。そして装備カードが装備されたことで《士気高揚》の効果で1000ポイント回復ー」

 

【リリア】

ライフ:5600→6600

 

「で、装備カードを回収された《フリントロック》の方でまた《フリント》を回収して《士気高揚》でライフを回復ー」

 

【リリア】

ライフ:6600→7600

 

「ちょ、ちょっと待て!! その効果、まさか1ターンに発動回数制限がないんじゃねぇか?」

「え、ないよー?」

「つまりリリアさんのコンボは」

「……無限回復ができるということですので」

 首を傾げるリリアに、他のメンバーは驚きが隠せない。

 ライフゲインはデュエルモンスターズにおいて、もっとも優先順位の低い効果である。

 まさかその効果に重点を置いたコンボを組むデュエリストがいるとは思わなかったのだろう。

 そこでタイミングを計ったようにデュエルディスクから警告音が鳴る。

 この警告音はループ処理による遅延対策の一つで、相手が同意した場合のみ処理を省略できるものだ。

「わたしに止める手段はないので、好きなライフを宣言してください。そのライフに設定するので」

「むー、じゃあ1億600までいっちゃおっかー!」

「「「は?」」」

 3人の声がハモり、表情が固まる。

「あ、そっか1億600だと表示形式変えられる《フリントロック》に《フリント》が装備されないねー。じゃあ1億1600でお願いー」

「わ、わかりましたので」

 3人が驚いている部分とは見当違いの部分を修正したリリアは眩しいほどの笑顔を作る。

 そこに一切の嫌味はなく、ただ純粋にお願いしているだけだというのが、この闇のデュエルの中では異彩を放っていた。

 

【リリア】

ライフ:5600→6600→1億1600

 

「じゃあ、あとは攻撃してない方の《フリントロック》を守備表示にしてターン終了だよー」

 

《フリントロック》

ATK:1500→DEF:800

 

【リリア】

1/1億1600

--○△-  

-□□□-

【ニュート】

4/4000

--○--  

-----

 

 デュエルモンスターズでまず見ることがないだろうライフに一瞬デュエルディスクの表記がバグるかと思われたが、それは杞憂に終わりちゃんと表記されている。

 その無駄な処理能力を端から見ているメンバーは、このデュエルが身体に危険が及ぶ闇のデュエルであることを一瞬忘れてるほど異様な光景だった。

 このデュエルをけしかけたニュートですら、一瞬だけ思考が停止していたのだから。

「で、では僕のターンですので、ドロー」

 

【ニュート】

手札:4→5

 

「ライフ1億越え……

 普通ならあり得ない数字ですので」

「これで負けることはなくなったねー」

「そうですね」

 自慢げに胸を張るリリアに、ニュートは短く返答する。

()()()()()で勝つのは難しそうですね」

「え……?」

 ニュートが何を言ったのか、リリアは聞き取ることが出来なかった。が、すぐにどのようなことを言われたのかは察しがついた。

 フィールドの中心、その上空に現れる計20個の光から形成された円。

 そのカードはコピー元のデッキを持つ刻魅はもちろんリリアも知っているカードだった。

「通常魔法《終焉のカウントダウン》を発動ですので。このカードはライフを2000払い発動。

 発動ターンを含めた20ターン後のエンドフェイズ時が来たとき、わたしは勝利しますので」

 

【ニュート】

ライフ:4000→2000

 

「つまり、ライフの回復は無意味ってことですね。しかもこの布陣、結構厳しいです」

「えっと……」

「私の……いえ、彼が使っているデッキは《終焉のカウントダウン》デッキです。

 弱点は《終焉のカウントダウン》が貯まる前に倒すことですが、この布陣はチェックメイト一歩手前です……」

 悔しそうに歯噛みする刻魅。だがまだ望みはある。

「幸い《タイム・イーター》の攻撃力は《進化する人類》で下がってますし、このライフ差なら攻撃力が上がることもないでしょう。

 《タイム・イーター》の効果は、自身がモンスターを戦闘破壊したときに、次の相手のメインフェイズ1をスキップするルール干渉効果です。

 次のメインフェイズに賭けましょう」

「その望み叶わないですので。

 僕は墓地の《ADチェンジャー》の効果を発動。墓地のこのカードを除外して、フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更するので。

 《フリント》を装備していない《フリントロック》を攻撃表示から守備表示へ」

 

《ADチェンジャー》

墓地→除外

《フリントロック》

ATK:1500→DEF:800

 

「あ……っ!」

「これで攻撃力の下がった《タイム・イーター》でも戦闘破壊できますので。

 バトル。《タイムイーター》で守備表示の《フリントロック》を攻撃。[イート・クロック]」

 先ほどと同じように空間が引き裂かれ、今度こそ《フリントロック》は消滅する。

 《スクラップ・ゴブリン》のおかげで痛みを伴うダメージは防がれているが、ソリッドビジョンとは違った衝撃にリリアは思わず顔を覆う。

 

《フリントロック》

フィールド→墓地

 

「そしてこの瞬間、《タイム・イーター》の効果発動。[タイム・ディストラクション]」

 攻撃を終えて懐中時計の形へ戻った《タイム・イーター》の針が、リリアへ向かって射出される。

 小さな悲鳴を上げながらとっさに頭を庇うが、最初から狙いは彼女のデュエルディスクであり、吸い込まれるようにデュエルディスクへ突き刺さった。

「これで次のあなたのターンのメインフェイズ1は訪れないので。

 さらに僕は《浅すぎた墓穴》を発動。お互い自分の墓地のモンスターを裏守備表示で特殊召喚できるので。

 僕は《手札抹殺》で墓地へ送っていた《闇の仮面》を選択。あなたはどのモンスターを選択しますか?」

「……《フリントロック》だよー」

 

《闇の仮面》

墓地→セット

《フリントロック》

墓地→セット

 

 墓地からセット状態で舞い戻ってきた《フリントロック》。しかしその末路は火を見るより明らかだ。

(いや、まだメインフェイズ2が残ってるし、バトルフェイズさえ行えればまだまだ勝てるよー!)

 挫けそうになる心を自分で鼓舞しながらニュートをまっすぐ見据える。

 その瞳には未だ闘志が宿っている。

「……カードを2枚セットしてターンエンドですので。

 そしてこの瞬間、終焉の時が一つ迫りますので」

 ニュートの宣言の通り、上空に描かれている光の玉の円の内、一つの光が消える。

 

終焉のカウントダウン:20→19

 

【リリア】

1/1億1600

--△▲-  

-□□□-

【ニュート】

1/2000

--○▲-  

--■■-

 

 圧倒的有利な状況かと思えば状況は一変した。

 しかし、リリアはまだ知らない。このデッキの本当の恐ろしさは、ここからであるということを……




ライフ1億越え。
ここで《ヲーの翼神竜》こと、ライフちゅっちゅギガントを出したら面白いことになりそうです(出さないけど)

ニュートのデッキ、もとい刻魅のデッキは【終焉のカウントダウン】デッキです。
まあ、さらに二次創作ならではの鬼畜デッキにしてますが……

このデュエル、作成していたのが11話の巫と七波のデュエル講成を同時期だったので、正直ふざけて作ってました。
この前の黄昏たちのデュエルを結構真面目に作ってたので、ギャップがあるかもしれませんが、温かい目で見守ってくださいww
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