遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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放送777回記念では《ナナナ》を使ってくれると信じてた人は僕です
今週出るパックの彼岸が面白そうだと思ったけど(エクストラが)ガチっぽくて先立つものが足りなさそうなので断念しました

ネタデッキって回らない時の気まずい静けさ半端ないですよね

今回やってるデュエルは決まれば(自分は)「おお!」ってなるデッキをコンセプトにしています


終焉を止めろ! 勝利をつかむエンドレスループ

【リリア】

1/1億1600

--△▲-  

-□□□-

【ニュート】

1/2000

--○▲-  

--■■-

 

「私のターン、ドロー!」

 

【リリア】

手札:1→2

 

「じゃあそのままバトルフェイ――」

「お待ちください。僕はスタンバイフェイズに《魂の氷結》を発動させるので」

 メインフェイズが行えないため、いきなりバトルフェイズへ移行しようとした瞬間、ニュートはセットカードの内1枚を発動させた。

「このカードは自分のライフが相手より2000ポイント以上少ない場合に発動でき、あなたの()()()()()フェ()()()をスキップします」

「うー、バトルフェイズを行わないとメインフェイズ2には行けないよー。

 アタシはターンエンドだよ」

「っ、おいバカ!!」

「ひゃいっ!?」

 リリアのターンエンド宣言に思わず神崎が叫ぶ。

 一体何がいけなかったのかわからずろたえるリリアに、背後の刻魅が表情を曇らせながらこめかみを押さえて説明を始めた。

「《魂の氷結》は、『次のターンのバトルフェイズ』ではなく、『次のバトルフェイズ』をスキップする効果です」

「つ、つまりー?」

「バトルフェイズを宣言しない限り、スキップ効果は延々と保留状態というわけです。

 《魂の氷結》の盲点ですが、これはテストでも出る初歩的な問題ですよ」

「うっ……ご、ごめんー」

 とはいえ、時すでに遅し。すでにターンエンドを宣言してしまったために《終焉のカウントダウン》の光がまた1つ消え、ターンはニュートへと移ってしまった。

 

終焉のカウントダウン:19→18

 

 

【リリア】

2/1億1600

--△▲-  

-□□□-

【ニュート】

1/2000

--○▲-  

--■■-

 

「僕のターンですので、ドロー」

 

【ニュート】

手札:1→2

 

「ではバトル、《タイム・イーター》でセットされた《フリントロック》を攻撃するので。[イート・クロック]。

止める手はありますので?」

「ないよー……」

「ではそのまま戦闘破壊。そして次のあなたのメインフェイズ1はスキップするので。[タイム・ディストラクション]」

 

《フリントロック》

フィールド→セット

 

 流れるように処理を行い、再びメインフェイズ1は封じられる。

 さらに《魂の氷結》の効果によりバトルフェイズもスキップされるため、実質次のターンは何もすることができない。

 スペルスピード2のカードをスタンバイフェイズに発動するなら別だが……

 しかし、この鉄壁の布陣も、《魂の氷結》と《タイム・イーター》の効果が使えなければ成り立たない。

「《魂の氷結》はもう墓地にいってるし、そう何度も……」

「メインフェイズ2、セットしていた《闇の仮面》を反転召喚し、そのリバース効果を発動するので。

 墓地の罠カードを手札に加えるので、《魂の氷結》をサルベージ」

 

《闇の仮面》

☆2・闇属性・悪魔族

セット→ATK:900

《魂の氷結》

墓地→手札

【ニュート】

手札:2→3

 

 何度も発動されないと高を括っていた《魂の氷結》が手札に戻される。

 これにより、次のターンはもちろん、その次のリリアのターンさえもバトルフェイズが行えなくなってしまった。

「そしてわたしは1枚カードをセットしてターンエンドですので。

 そしてこの瞬間、さらに終焉へ近づくので」

「ううー……」

 着々と敗北へと進んでいく状況に、リリアにも焦りが見えてきた。

 しかし、《終焉のカウントダウン》を止められなかった以上、この状況を覆すには終焉を迎える前に相手を倒すしか手段はない。

 

終焉のカウントダウン:18→17

 

【リリア】

2/1億1600

---△-  

-□□□-

【ニュート】

2/2000

--○○-  

--■■-

 

「くそっ、これ本当に他人のデッキなのか?

 デッキテーマにもよるが、こんな癖の強いデッキをここまで上手く操るやつなんて見たことねぇぞ」

「それが僕の特技ですので」

 神崎の独り言に、ニュートは興味なさそうに答える。

「僕がいた場所では自分のデッキを持つ人なんてほとんどいませんでしたので、回し方もわからないデッキを使いこなす技術が必要だったんです。

 今ではほとんどのデッキ、特に特殊勝利デッキなら、僕に使えないデッキはありませんので。

 他人のデッキだと油断する余裕はありませんので。

 さあ、あなたのターンですよ」

「わ、私のターン、ドロー」

 

【リリア】

手札:2→3

 

「こ、今度こそ私はバトルフェイズを宣言するよー」

「なら、《魂の氷結》によってスキップされるので」

「……そのままターンエンドだよー」

 

終焉のカウントダウン:17→16

 

【リリア】

3/1億1600

---△-  

-□□□-

【ニュート】

2/2000

--○○-  

--■■-

 

「僕のターンですので、ドロー」

 

【ニュート】

手札:2→3

 

「スタンバイフェイズ、《魂の氷結》発動ですので」

 すでに効果説明もなく、淡々と処理を終えておくニュートは、メインフェイズに移ってさらにモンスターを召喚する。

「僕は《月読命》を通常召喚しますので」

「あ……」

 

《月読命》

☆4・闇属性・魔法使い族

ATK:1100

 

 フィールドに現れた和服に身を包んだ男性モンスターを見た瞬間、刻魅の口から声が漏れた。

 その表情は絶望に染まっており、状況を把握していないリリアに説明することすら忘れている様子。

 ただ、リリアが状況を理解するのにそこまで時間はかからなかった。

「そして《月読命》の効果。召喚成功時にフィールドのモンスター1体を対象に、そのモンスターを裏守備表示にしますので。

 《闇の仮面》を選択」

 

《闇の仮面》

ATK:900→セット

 

 《月読命》が《闇の仮面》の周囲から光を奪うと、《闇の仮面》はその姿を隠す。

 一昔前に猛威を振るい、教科書にもその詳細を記されていたため、リリアにも《月読命》の効果は知っていた。

 しかし、彼の《月読命》の使い方はその猛威を振るう前の、正確には《サウザント・アイズ・サクリファイス》のレプリカが一時的に配布される前の環境の使われ方だ。

「そして《闇の仮面》をリバースしますので。

 《闇の仮面》の効果により墓地の《魂の氷結》をサルベージ」

 

《闇の仮面》

セット→ATK:900

《魂の氷結》

墓地→手札

【ニュート】

手札:2→3

 

 ただのリバースモンスターのリサイクル要因。今の環境ではほとんど使われない手法だろう。

 しかし、このデッキではそれが相手の息の根を止めるコンボと化す。

「で、でも《タイム・イーター》で戦闘破壊できるモンスターはいないよー!」

「では作ればいいので。リバースカード《ギブ&テイク》。

 墓地の《ミラクル・フリッパー》をあなたのフィールドに守備表示で特殊召喚し、《タイム・イーター》のレベルをそのレベル分あげますので」

 

《ミラクル・フリッパー》

☆2・光属性・魔法使い族

DEF:500

墓地→フィールド(リリア)

《タイム・イーター》

レベル:6→8

 

「あ……」

 フィールドに現れた、《ブラック・マジシャン》に似た黒装束を身に纏った幼い魔術師。

 その効果は、破壊されればバトルフェイズ終了時に()()のフィールドに蘇生する効果だ。

 限定的な使い方ではあるが、これも《タイム・イーター》の効果を半永久的に発動するコンボに利用出来る。

 そして、これにより彼の布陣は完全に完成したことになる。

「流石にあなたにも理解できたようなので、安心しました。

 バトル。《タイム・イーター》で《ミラクル・フリッパー》を攻撃。[イート・クロック]」

 

《ミラクル・フリッパー》

フィールド→墓地

 

 《タイム・イーター》の攻撃になす術なく《ミラクル・フリッパー》は破壊される。

 ダメージにはならないが、その衝撃はリリアの癖っ毛のある髪を激しく揺らした。

 しかし、今の彼女にはそんなこと気にする余裕はなかった。

 そんな彼女を追い詰めるように、ニュートは淡々とデュエルを進めていく。

「これで僕はバトルフェイズを終了しますので。

 この瞬間、破壊されていた《ミラクル・フリッパー》があなたのフィールドに特特殊召喚されますので。

 ダメージを与えたところで雀の涙にしかならなので、表示形式は守備表示でいいでしょう」

 

《ミラクル・フリッパー》

墓地→フィールド(リリア)

 

「メイン2。僕はカードを1枚セットしてエンドフェイズに移りますので。

 この瞬間、スピリットモンスターの《月読命》は手札に戻り、《ギブ&テイク》のレベル上昇も元に戻りますので」

 

《月読命》

フィールド→手札

【ニュート】

手札:2→3

《タイム・イーター》

レベル:8→6

 

「僕はこれでターンエンドですので」

 ニュートの言葉と共に、《終焉のカウントダウン》がさらに一つ進む。

 

終焉のカウントダウン:16→15

 

【リリア】

3/1億1600

--△△-  

-□□□-

【ニュート】

3/2000

--○○-  

--■■-

 

 その光景を黙って見ることしかできないリリアに、ニュートは追い打ちをかける。

「あなたの負けは確定ですので」

 しかし、それは脅しでもなんでもなく、本当のことだ。

 このままではリリアのターンはドローフェイズとスタンバイフェイズ、エンドフェイズしか訪れない。

 なのに、それを対処できるメインフェイズとバトルフェイズは行うことが出来ない。八方塞がりとはこのことだろう。

 それでもリリアは諦めずデッキトップに手をかける。

「まだ諦めませんか。

 往生際が悪いとしか言えませんので」

「まだ、デュエルに負けたわけじゃないからねー。ドロー!」

 

【リリア】

手札:3→4

 

「……まだ絶望しませんか。少々面倒な性格ですので」

 一瞬だけ眉をひそめたニュートは小さく呟いた。

 このデュエルの終焉まで、あと15ターン。

 活路は、未だ見いだせない。

 

 

「――黄昏君、あれ!!」

 葵の指さす上空に目を向けると、火の玉が円を描くように16個並んでいた。

 直後、その内の一つが消える。

「あれは、《終焉のカウントダウン》か?

 ってことは、誰かデュエルをしてることになるな」

「『闇のデュエル』っていうやつ?」

「あれだけじゃわからないな。ひとまず急ぐぞ!」

「うん……」

 黄昏はずり落ちるエヴァを背負い直して葵を促す。

 そのときの葵の返答がなんとも歯切れの悪いものだった。

「ねえ、黄昏君」

「どうした?」

 走り出そうとした黄昏は足を止めて葵の方に振り返る。

 言うべきかどうかを悩んだ様子で視線を巡らした後、ゆっくりと一言一言確かめるように口を開く。

「その、腕は大丈夫なの?」

 少女の視線は、エヴァを背負う黄昏の右腕に向けられている。

 折れてはいないと言っていたが、あれほど青あざになっていたのだ。折れていなくても罅ぐらいは入っていてもおかしくはない。

 もしかしたら、それを悟られまいとやせ我慢しているだけではないのだろうか?

 そう思って仕方がない様子だった。

 そんな心配もよそに、黄昏は興味なさげに自分の腕を少しだけ見る

「問題ないだろ。こうやってちゃんと人一人背負えるぐらいの力は入るんだし」

「ちょ……っ!」

 そう結論付けると、葵の意見も聞かずに走り出した。

 慌てて葵も後を追うが置いて行かれないように走るので精いっぱいだ。その身軽さは人一人背負っているとは思えない。こうなっては彼の言葉を信じるほかなかった。

 しばらくして本校舎裏にたどり着くと、黄昏たちは思わず顔をしかめる。

「これ、セキュリティだけじゃなくて消防も呼んだ方がいいんじゃ!?」

「いや、これたぶん……」

 炎の壁を目の当たりにして慌てる葵の言葉に対して首を横へふり、黄昏はその火の近くに駆け寄ると背負うエヴァを落とさないように気を付けつつ、迷わず腕を突っ込んだ。

 その光景にギョッとした葵は言葉にならない悲鳴を上げるが、当の本人からは悲鳴どころか反応すらなかった。

「やっぱり。これ、たぶん本物じゃないな。

 炎に触れる前に、壁みたいなのに阻まれてる」

「壁? それって……」

 お互いに顔を見合わせ、何も言わずとも同じ結論に至っていることを察した2人は静かに頷いた。

「さっきの霧と同じかもな……」

「じゃあ、誰かがあの危険なデュエルをしてるってこと!?」

「あくまで可能性だ。否定材料がないけどな。

 もしそうだとしても《スクラップ・ゴブリン(アイツ)》が深刻なダメージは防いでくれてると思うけど……」

 ふと、黄昏は自分の右腕の方をチラリと見た。しかし葵はその動作を見逃さず、すかさず釘を刺す。

「言っておくけど、またさっきみたいに無茶したら承知しないよ」

「……何のことやら」

「とぼけても無駄だよ。

 どうせ、私の時みたいに《スクラップ・ヘルサーペント》の力を使ってこの空間こじ開けるつもりでしょ?」

 葵の言葉に返す言葉もなく黄昏は眉をひそめる。

 とはいえ、精霊の力以外でこの状態をどうにかできるとは思えない。

「じゃあ、どうやって……」

「あのねえ、何も君だけが精霊を持ってるわけじゃないよ?」

「……あ」

「まあ、確かに私と《エリア》じゃこの壁は破れないけどね。

 《エリア》どこまで出来そう?」

『通信ぐらいならお任せなのです!!』

 葵に呼ばれて半透明な姿を現した《水霊使いエリア》は、その杖を振るい、目の前に巨大な水鏡を生成。

 再度杖を振るうと、その鏡にリリアの姿が映し出された。

「リリアっ!」

『ひゃうっ!? な、なになに誰!?』

 どうやら声もちゃんと届いているらしい。が、こちらの姿は見えていないようだ。

 おどおどしながらリリアは周囲を見回しているが、こちらと目が合う気配がない。

「リリア、私の声が聞こえてるんだね?」

『えっと、もしかしてあおいん? 幽霊になっちゃったのー?』

「詳しい話はあと! それより、そっちの状況はどうなってるの?」

 的外れなことを口走るリリアだが、今はそれに付き合っている暇はない。

 《水霊使いエリア》の生成した水鏡が端からどんどん溶け出しているのだ。

 杖を握る彼女の顔色も見る見るうちに悪くなっていく。おそらく、あまり長くは通信できない。

『えっとー……』

『なるほど、精霊の力を使ってこちらと連絡を試みましたか。

 ですが、ここはその程度の力ではどうすることもできないので、それも長続きしないでしょう』

 リリアの言葉を遮り、奥の方から少年の声が聞こえてきた。

 おそらく、その声の主がデュエルの相手なのだろう。水鏡越しなのにピリピリとした空気が伝わってくる。

「……貴方が、この空間を作った犯人だね?」

『ええ、その通りですので。

 そちらにも一人向かわせたはずでしたが……なるほど、どうやら倒されてしまったようですので』

「その口ぶりだと、彼女の仲間で間違いなさそうだね。

 リリアたちに何をする気? 他のみんなは!?」

『心配しなくとも、全員生きてはいますので』

「貴方……っ!?」

 頭に血が上り始めた葵が水鏡越しに殴るかかる勢いだったため、慌てて黄昏が制止する。

「落ち着け、七波。相手に乗せられたら向こうの思うつぼだ。

 《エリア》、デュエルの様子は映せるか?」

『な、なんとか……でも、もうあまりもたないのです』

 苦しそうだが、おかげでデュエルの状況は確認できた。

 ライフのことは正直なところ予想の範囲内だったので、黄昏はスルーして他の部分に意識を向ける。

「《終焉のカウントダウン》のリミットがあと11ターンと……マズいな、ロックが完成してる」

「あれじゃあ、リリアは何も出来ないよ!?」

 彼女の言う通り、今のフィールドは普通のデュエリストなら投げ出したくなる絶望な状況だろう。

 しかし、それでも黄昏は焦らずにリリアに質問を投げかけた。

「リリア、今の状況を覆せるカードはデッキに入ってるか?」

『え、ど、どういうことー?』

「このロックを切り崩すカード。もしくは逆転できるカードは入ってるか? それとも入ってないか?

 1枚のカードじゃなくても、複数枚のカードが必要でも何でもいい」

 もうすでに《エリア》の水鏡は手鏡程度の大きさまで溶け出しており、向こうの様子は確認できない。

 間もなくこの声も届かなくなるだろう。

 急かしていることは重々承知だが、それでも黄昏は彼女に尋ねる。

『えっとー、一応あるにはあるんだけどー……』

「なら大丈夫だ」

『え?』

「ど、どういうこと、黄昏君?」

 黄昏のホッとした声に、隣の少女は怪訝そうに眉をひそめる。

 確認できないが、火の壁の向こう側にいるリリアも同じ表情をしていることだろう。

 リリアの歯切れの悪い返答から、そのカードが手札にない、もしくは実現が絶望的なのだろう。

 それでも、黄昏の自信は揺るがない。

「自分のデッキを信じろ。必ずお前のデッキは答えてくれる。

 俺()()で作ったデッキはそういうデッキだ」

 もう水鏡は形が確認できないほど小さくなっている。

 リリアに詳しく説明している暇はない。

 説明不足でも、なんとか伝えようと黄昏は落ち着いた口調で語り掛ける。

「だから、どのカードが来てほしいのか強く願え。

 そうすれば絶対――」

 そこで水鏡は完全に解けきってしまった。

「黄昏君、リリア大丈夫かな?」

「問題ないだろ。どちらにしても、俺たちにはもう何も出来ないけどな」

 若干不安は残るが伝えるべきことはすべて伝えた。

 あとはリリアを信じてデュエルの結末を待つだけだ。

「っと、その前に……」

 黄昏は振り返り、肩で息をする《エリア》の方に向く。

 肩で息をしている彼女は十分な成果を上げてくれたというのに、申し訳なさそうに顔を曇らせていた。

「お疲れさま、《エリア》」

『え、あ……はいなのです!』

 少し戸惑ったようだが、満々の笑みで《エリア》はそれに答えた。

 やはりその前に、苦労した仲間を労うのが筋と言うものだろう。

 

 

 黄昏の言葉が終わる前に、彼の声が聞こえなくなってしまった。

 どうやってこちらに声を届けていたのかも謎だが、どうやらその連絡手段が使えなくなってしまったのだろう。

「自分のデッキを信じて……ですか、そんな奇跡に頼るとは滑稽ですので」

「そう、かなー?」

 嘲笑うニュートに対し、リリアは自分のデッキに視線を落とす。

 黄昏の不思議なデッキ構築法によって作られたこのデッキは、デッキ内容はほとんど変わらないのに葵のデッキと競り合えるほどになっている。

 黄昏の言っていたことがすべて間違いというのは言い過ぎではないだろうか?

「それは負け惜しみですので。

 何もないなら早くターンを終了してください」

 ニュートの言う通り、《月読命》を召喚しロックが完成したターンからさらに数ターンが経過した今、ドローするしかできないリリアの手札は6枚になっている。

 このターンのバトルフェイズもスキップされており、あとはエンドフェイズを宣言するだけである。

「じゃあ、アタシはこれでターン終了だよー」

 

終焉のカウントダウン:11→10

 

【リリア】

6/1億1600

--△△-  

-□□□-

【ニュート】

5/2000

-ー○○-  

--■■-

 

「僕のターン、ドローですので」

 

【ニュート】

手札:5→6

 

 新たに加わったカードと手札を見て、今後の戦略を練り直す。

 ロックデッキはロックが完成すると、こちらの思考力が低下するのが注意する点だろう。

 ロックを維持するのが大前提だが、時にはそれを崩して新しい手を考える必要がある。

 決してそのタイミングを見誤らないよう、常に戦略を立てておくことに越したことはない。

 

(《大逆転クイズ》……

 もしあちらがロックを突破してきた場合、今の僕のライフでは耐えきれないですので。

 幸い手札にはこのカードとコンボを決められるカードもありますので、セットしておいて損にはならないでしょう)

 一通り戦術を見直し、まだ自分が思考停止していないことを確認できた。

 後はすでにルーチンと化している《月読命》の召喚から《ミラクル・フリッパー》の蘇生までを終わらせる。

 そしてメインフェイズ2へと移ると、ニュートは《魂の氷結》と《大逆転クイズ》のカードを手に取った。

 

「メインフェイズ2、僕は2枚のカードをセットしてターンエンドですので。

 そしてこの瞬間《月読命》が手札に戻り、《終焉のカウントダウン》のカウントがさらに1つ迫りますので」

 

《月読命》

フィールド→手札

【ニュート】

手札:4→5

 

終焉のカウントダウン:10→9

 

 

【リリア】

6/1億1600

--△△-  

-□□□-

【ニュート】

5/2000

-ー○○-  

-■■■-

 

「私のターン……」

 デッキトップにかかるリリアの手。その手は震えているが、決して諦めることはしない。

「アタシのために色々してくれた遊糸やあおいんのためにも、こんなところで諦められないよねー!

 ドロー!」

 

【リリア】

手札:6→7

 

 勢いよく引かれたそのカードをリリアは恐る恐る確認する。

 直後、リリアの表情が晴れていく。

「まさか、何か引いたというのですか?」

「えへへ、それは次のターンのお楽しみだよー。

 アタシはバトルフェイズを宣言!」

「た、《魂の氷結》の効果で無効化しますので」

 明らかにニュートの方が有利だというのに、リリアの勢いに彼が押されている。

 根拠のない人間が、ここまで生き生きとするだろうか?

「じゃあエンドフェイズだねー。

 アタシの手札は7枚だから、1枚捨てるよー」

 

【リリア】

手札:7→6

 

「……なら、最後に《終焉のカウントダウン》のカウントがさらに進みますので」

 

終焉のカウントダウン:9→8

 

【リリア】

6/1億1600

--△△-  

-□□□-

【ニュート】

5/2000

-ー○○-  

-■■■-

 

「僕のターン、ドロー」

 勢いよくカードをドローしたニュートは、スタンバイフェイズにセットカードに手を伸ばす。

 

【ニュート】

手札:5→6

 

「僕はスタンバイフェイズに《魂の氷結》発動。

 これで次のターンにあなたがバトルすることは不可能ですので」

 先ほどのターンと同じように《魂の氷結》を発動したというのに、リリアがそれを気にした様子はない。

 今までのターンと違うことと言えば、先ほどのイレギュラーなアドバイスと、手札調整のルールによって墓地へ送られたカードだ。

「《シールド・ウォリアー》……それが、あなたの起死回生のカードですか?」

「さあ、どうだろうねー?」

 《シールド・ウォリアー》はダメージ計算時に墓地から除外すれば、モンスターの戦闘破壊を免れることができる。

 《タイム・イーター》の効果発動条件は相手モンスターを戦闘破壊して墓地送ることだ。つまり、《シールド・ウォリアー》の効果を使えば、リリアは次のターンにメインフェイズを行うことが出来る。

「ですが、それもダメージ計算までに処理をすればただの無能ですので。

 僕は手札から《D.D.クロウ》を捨ててその効果を発動。相手の墓地のカードを1枚除外します。

 僕が選択するのは《シールド・ウォリアー》ですので」

 

【ニュート】

手札:6→5

《シールド・ウォリアー》

墓地→除外

 

 リリアの墓地に1枚だけあった、この状況を覆す一手は失われてしまった。

 だというのに、リリアの表情から光が失われる様子はない。

「まだ何かあるというのですか?」

「えへへ、内緒だよー」

「……何を考えているのかわかりませんので。ですがお忘れですか?

 《タイム・イーター》の攻撃を止めない限り、そのコンボは始めることが出来ませんので。

 バトルフェイズ、《タイム・イーター》で《ミラクル・フリッパー》を攻撃。[イート・クロック]」

 矢継ぎ早に処理を終えていくニュートは、どこか焦った様子で攻撃宣言をする。

 ここまでのターンで、リリアが何も出来ないことはすでにわかっている。

 これで《ミラクル・フリッパー》を破壊し、《大逆転クイズ》と()()()()()()を発動すればチェックメイトだ。

 そう確信していたニュートだったが、ここでイレギュラーなことが起こる。

「な、なぜ《タイム・イーター》の攻撃が止まっているのですか!?」

 見ると、悪魔のような姿を見せていた《タイム・イーター》に巻き付くように虹がかかっており、身動きが取れない状況に陥っていた。

「ふふん、《タイム・イーター》の攻撃宣言時に手札の《虹クリボー》の効果を発動させたんだよー!」

「《虹クリボー》? なんですかそのカードは、そんなカード見たことありませんので!」

「それは仕方ないよー。

 これ、アタシがデザインして作ってもらった世界に1枚だけのカードなんだもん」

「作ってもらった?

 ……はっ、カードデザインのコンテストですので!?」

 ニュートの予想をリリアは笑顔で肯定する。

「手札の《虹クリボー》は相手モンスターの攻撃宣言時に、そのモンスターに装備する効果を持ってて、装備モンスターは攻撃できなくなるんだよー」

「なるほど、それで《タイム・イーター》の攻撃がリセットされたということですか」

「うん、それに《士気高揚》の効果で私のライフは更に回復するよー!」

 

【リリア】

手札:6→5

ライフ:1億1600→1億2600

 

 《タイム・イーター》の攻撃を防いだことにより、ここまで苦しまされていたメインフェイズの封印は解かれた。微々たるものだが、相手が築き上げてきた牙城に亀裂が入ったのはたしかだ。

 とはいえ、まだ完璧に崩れたというわけではない。

「これ以上ターンを長引かせる必要はありませんので!

 僕は速攻魔法《時の飛躍-ターン・ジャンプ-》を発動!」

「な、《ターン・ジャンプ》!?

 なぜあなたがそのカードを!?」

 この場の誰よりもニュートの使っているデッキに詳しく冷静だった刻魅がそのカードの存在には一番動揺してた。

 それもそのはず。このカードは禁止カードにこそなっていないが、限定的に強力なカードに化けるため生産が中断し、世界に数枚しか存在しないカードなのだから。

「グールズである篠村を有効活用させていただきました。

 コピーカードではありますが、使えるのであればそれでも問題ありませんので。

 この《ターン・ジャンプ》の効果は、《運命の火時計》の完全上位互換。

 お互いのターンを3ターン、つまり合計6ターン進めますので!」

「え、それってー!?」

「《終焉のカウントダウン》は早まり、残り2ターンにまで加速しますので!」

 

終焉のカウントダウン:8→2

 

 上空に浮かんでいた8つの火が瞬く間に消え去り、残る火は2つだけ。

 まだ折り返し地点を過ぎて間もないと高を括っていた者からすればそれは絶望ともいえる光景だろう。

「い、いや、だが相手のライフは2000だ。

 バトルは出来ないつっても、バーンを使えばどうにかなるんじゃねぇのか?」

「ならその微かな希望も奪って差し上げますので。

 通常魔法《鳳凰神の羽根》を発動! 手札1枚をコストに、墓地のカードをデッキトップに戻します。

 僕は《月読命》を手札コストに墓地の《魂の氷結》をデッキトップへ」

 

【ニュート】

手札:3→2

《魂の氷結》

墓地→デッキトップ

 

 《終焉のカウントダウン》によって次のニュートのターンは確実に回ってこないのにも関わらず、彼はデッキトップを操作する。

 その光景に誰もが首を傾げるが、ニュートは1人処理を進めていく。

 そして最後のリバースカードを発動した瞬間、刻魅と神崎は今度こそ絶望した。

「僕は《大逆転クイズ》を発動します。効果の説明は必要ですので?」

「う、うん」

「このカードは、僕の手札とフィールドのカードすべてをコストに発動できるカード。

 その効果は、デッキトップのカードの種類を宣言して確認。そのカードが宣言したカードの種類なら、自分と相手のライフを交換しますので」

「え、じゃあ……」

「僕のデッキトップは《鳳凰神の羽根》によって操作された《魂の氷結》。

 クイズとは名ばかりの出来レースですので。

 では行きます。僕は手札、フィールドのすべてのカードを墓地へ!」

 

【ニュート】

手札:2→0

《闇の仮面》、《タイム・イーター》

フィールド→墓地

《虹クリボー》、《進化する人類》

フィールド→墓地

 

「そしてこの瞬間、あなたの装備カードである《虹クリボー》と《進化する人類》が墓地へと送られますので。

 まだ効果処理中のため《士気高揚》の効果は発動しませんが、これであなたに2000ポイントのバーンが入るのは確定しましたので!」

 そしてニュートのライフは丁度2000。

 ただライフを交換して安心するだけにとどまらず、可能であれば相手にとどめを刺すその用意周到さがここに来てリリアに明確な牙をむく。

「え、えーと、アタシは……」

「今さら何をやっても遅いので!

 僕は罠カードを宣言してデッキトップを確認。もちろんデッキトップは罠カードの《魂の氷結》。

 よって僕とあなたのライフを交換しますので!」

 《大逆転クイズ》が正解したことで、お互いのデュエルディスクに表示されるライフが入れ替わる。

「これであなたのライフは2000となり、《士気高揚》の効果であなたに2000ポイントのダメージですので。

 自分のカードで首を絞めなさい!」

 ここまでリリアに恩恵を与えてきた《士気高揚》が一変して雷撃をリリアへと落とす。

 精霊のカードによってリアルダメージは軽減されるだろうが、これを喰らえばライフは0。

()()()である彼女を覚醒させるのが僕の役目でしたが、まあ僕に負ける程度のデュエリストならどの道覚醒することは……」

 独り言を呟いていたニュートは、目の前の光景に唖然として言葉が出なかった。

 リリアに向かっていった《士気高揚》のバーンダメージが、彼女の手前で霧散したのだ。

「何が起こっているので!?」

「アタシが手札に持ってた《クリフォトン》の効果だよー」

「《クリフォトン》? また僕の知らないカード……

 それもあなたがKCに作ってもらったカードの1枚ですか。

 一体何枚のカードを……」

 ここに来て初めて表情を歪めるニュート。未知のカードによって自分の勝ち筋がここまで乱されるとは思ってもみなかったのだろう。

「《クリフォトン》はライフを2000払って手札から墓地に送ることで、このターンのアタシのダメージをすべて0にできるんだよー。

 《大逆転クイズ》の効果でライフは入れ替わっちゃったけど、その《大逆転クイズ》にチェーンして発動したからライフコストは入れ替わる前に払ってるし痛くもかゆくもないもんねー!」

「僕の今のライフは1億600……なるほど、だからライフが減っているわけですので」

 

【リリア】

手札:5→4

ライフ:1億2600→1億600→2000

【ニュート】

ライフ:2000→1億600

 

「このターンに勝負をつけることは出来ませんでしたが、それでも《終焉のカウントダウン》の勝利が迫っていることに変わりありませんので。

 次のターンにこの1億以上のライフを削れるとは思えません。

 僕はこれでターンエンドですので」

 

終焉のカウントダウン:2→1

 

【リリア】

4/2000

--△△-  

--□□-

【ニュート】

5/1億600

-ー---  

-----

 

 とうとう《終焉のカウントダウン》の終わりを告げる火も1つになってしまった。

 あの火が無くなってしまうとどうなってしまうのか、好奇心旺盛なリリアは少々気になっていたが、今回ばかりはその好奇心は押さえるべきだろう。

 手札には逆転への手札が揃いつつある。あと1枚、それでリリアの勝ちが決定する。

 その瞬間、リリアのデッキが鈍く光りだした。

 周囲が炎に包まれて明るいため注視しなければわからない程度の光であり、リリアでさえ気づいていない様子だがニュートは見逃さなかった。

「……任務完了ですので」

 デッキが光ったことにも、ニュートが何かを呟いたことにも気づかなかったリリアは、そのままデッキからドローする。

「アタシのターン、ドロー!」

 

【リリア】

手札:4→5

 

 引き込んだカードに描かれた、黒い鎧に全身を包んだ騎士。

 この瞬間、勝利のピースはすべてその手に揃った。

 ニュートのフィールドには何もない。あとは、この手札でできることをするだけだ。

「アタシはまず《鉄の騎士ギアフリード》を召喚だよー!」

 

《鉄の騎士ギアフリード》

☆4・地属性・戦士族

ATK:1800

 

「なぜ装備ビートのあなたが装備メタのそのカードを……」

「それは後のお楽しみだよー。

 さらにアタシは《二重召喚》を発動ー!

 《ビックバン・ガール》を通常召喚するよー」

 

《ビックバン・ガール》

☆4・炎属性・炎族

ATK:1300

 

「これで必要なモンスターはフィールドに揃ったよー!」

「装備した装備カードを破壊する《鉄の騎士ギアフリード》、ライフを回復した時にバーンダメージを与える《ビックバン・ガール》……

 リリアさんは一体この2体で何をするおつもりですか?」

「えへへ、あとはこの《おろかな埋葬》を発動すれば終わりだよー!

 アタシは《暗黒魔族ギルファーデーモン》を墓地へ送るよー」

 

《暗黒魔族ギルファーデーモン》

デッキ→墓地

 

 首を傾げる刻魅に、まるで得意話をする子供のように楽しげに話す。

 先にニュートの方がこの布陣の意味を理解したようで、一瞬だけ眉をひそめた。

「《ギルファーデーモン》が墓地へ送られたとき発生する装備効果と《鉄の騎士ギアフリード》の装備カード破壊効果による無限装備コンボ。

 それと《士気高揚》と《ビックバンガール》を組み合わせたループキルをするつもりですね」

「その通りー!」

「わかったところで、布陣を作られる前に理解して止められなければ意味ありませんので……」

 そう返すニュートからはすでに戦意は感じられなかった。

 だというのに不気味な雰囲気を纏っているが、リリアはそれに気づいていない。

「なら、一気に行くよー!

 墓地へ送られた《ギルファーデーモン》の効果で《鉄の騎士ギアフリード》に装備、そしてこの瞬間《士気高揚》で1000ポイントライフを回復するよー」

 

《暗黒魔族ギルファーデーモン》

墓地→フィールド(《鉄の騎士ギアフリード》)

【リリア】

ライフ:2000→3000

 

「そしてこの瞬間、《ビックバン・ガール》の効果でニュート君に500ポイントのダメージだよー![イグナイト・バーニング]」

「ぐ……っ!」

 《ビックバン・ガール》の杖から放たれた火球がニュートに襲い掛かる。

 たった500の微々たるダメージしか与えられないが、これで実質決着はついた。

 

【ニュート】

ライフ:1億600→1億100

 

「じゃあ、ここで《鉄の騎士ギアフリード》の効果で《ギルファーデーモン》を破壊するよー。

 あと装備カードがフィールドを離れたから、《士気高揚》の効果でアタシは1000ポイントのダメージだねー」

 

《暗黒魔族ギルファーデーモン》

フィールド→墓地

【リリア】

ライフ:3000→2000

 

「そして、墓地に行った《ギルファーデーモン》の効果で……」

 そこで、本日2度目になる遅延防止によるループ処理省略のブザーが鳴り響く。

 が、この場合はニュートに止める手段があるかどうかの確認を取り、デュエルが終了するかを決めることになる。

「参りました、僕の負けですので」

 

【ニュート】

ライフ:1億100→0

 

 ニュートの降参宣言によりデュエルディスクからデュエル終了のブザーがけたましく鳴り響く。

 無限ループにより始まった奇怪なライフ差のデュエルは、無限ループによる即死コンボにより収束したのだった。




今回はどっちも綺麗に回ると友達がいなくなるロマンデッキになりました

次回はデュエルはないと思います
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