遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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気が付いたらまた一ヶ月ほど空いてますね。お待たせしました

黄昏と大神のデュエル、前編です


静かなる威圧と冷酷の眼

 巫に連れられて来たのは、先日葵と梓がデュエルをした場所だった。

 お互いデュエルディスクを展開し、オートシャッフルが終えたころには、遅れてきた遊形たちを含めた全員がその場に居合わせる形となった。

「そういえば坊主、お前さん巫のご令嬢から使用を控えるよう言われているカードがあるみたいだが、それはキャンサーとのデュエルでは使ったのか?」

「エヴァとのデュエルには使ってない」

「ふむ、そうか」

 その言葉の意味を理解したのかしていないのかわからないが、大神は顎に手を置いて頷いた。

「今回のデュエルも使うつもりはないさ。

 《スクラップ・ヘルサーペント》を使いすぎるとマズいのは理解してるし、使わずに勝てないようじゃ、たぶんアンタらの言う通り足手まといだろうからな」

 その言葉に大神が返答をする前にオートシャッフルが終わり、2人の会話は打ち切られた。

 ここから先は真剣勝負だ。お互いこれ以上話を長引かせるのは無意味だと判断したらしい。

 

「「デュエル!!」」

 

【黄昏】vs【大神】

 

 掛け声とともに、お互いデッキから5枚のカードを引く。

 そのまま黄昏が先攻を取り、5枚の手札のうち2枚を引き抜いた。

「俺のターン、モンスターとカードを1枚づつセットしてターンエンド」

 

【黄昏】

3/4000

--▲--  

--■--

【大神】

5/4000

-----  

-----

 

「ずいぶん消極的な出だしではないか」

「出だしはこれでいいんだよ」

「ふむ、そういう戦術か。ならこれ以上何も言うまい!

 オレのターン、ドロー!」

 

【大神】

手札:5→6

 

「オレは《ナチュル・ストロベリー》を攻撃表示で召喚!」

 

《ナチュル・ストロベリー》

☆4・地属性・植物族

ATK:1600

 

 デュエルディスクがカードを読み込み、イチゴを模したモンスターがソリッドビジョンにより出現する。

 しかし、現れたモンスターはアタッカーとしてはあと一押し足りない攻撃力だ。

 まあでも、と黄昏は大神に気づかれないようにセットモンスターに目を配る。

 そのカードは《スクラップ・ゴブリン》。守備力は500のため、あっさり倒されてしまう数値だ。

「さあ、バトルといこう!

 《ナチュル・ストロベリー》でそのセットモンスターを攻撃だ!」

 《ナチュル・ストロベリー》の四肢が伸び、鞭のようにしなってセットモンスターへと迫る。

 攻撃対象となり、姿を現した《スクラップ・ゴブリン》はその一撃を受け止める。

 

《スクラップ・ゴブリン》

☆3・地属性・獣戦士族

DEF:500

 

「セットモンスターは《スクラップ・ゴブリン》だったか。

 確か、戦闘破壊耐性があるんだったな」

「……その様子だと、俺のデッキの内容はわかってるのか」

「そういうことだ。

 公平にオレのデッキの内容も言うべきかとも思ったが、本来の敵はお前さんのデッキを調べているがこちらのデッキのことは教えてくれまい?」

「つまり自分で探れってことか。上等……!」

 言いながら黄昏は首にかけていたヘアバンドで前髪をあげ、はっきりと見えるようになった視界で改めて大神をとらえる。

 その眼光に大神は臆することはないが、不思議な感覚に眉をひそめた。

(射殺すような眼光を向けるものは何度も会ってきたが、坊主のものは特別だな。

 まるで、こちらの動きすべてを観察するような冷たくまとわりつく目つきだ。

 念のため、切り札を出す準備だけはしておくか。

 とはいえ……)

 それ以上は気にするまでもない、と言わんばかりにデュエルを再開する。

「なら続きといこう。

 メインフェイズ、手札からフィールド魔法《ナチュルの森》を発動!」

 瞬く間に周囲には木々が生い茂り、神社の境内だったその景色は一気に樹海と化した。

 ナチュルと名の付くフィールド魔法ということは、これによりこのフィールドは大神のテリトリーとなったも同然。

 逆に言えば、このフィールド魔法の効果で、ナチュルのテーマとなっている効果がわかるということでもある。

 状況は芳しくないが、早い段階で敵の情報が探れるのは運がいい、と切り替えて大神の挙動に気を付ける。

「さらにカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「ならエンドフェイズ時に《スクラップ・ゴブリン》を対象にリバースカードオープン《スクラップ・スコール》!

 デッキから《スクラップ・キマイラ》を墓地へ、さらに1枚ドローしてから《スクラップ・ゴブリン》を破壊する!」

 

《スクラップ・キマイラ》

デッキ→墓地

【黄昏】

手札:3→4

《スクラップ・ゴブリン》

フィールド→墓地

 

「続けてスクラップの効果で《スクラップ・ゴブリン》が破壊されたことにより効果を発動!

 墓地のスクラップモンスター、《スクラップ・キマイラ》をサルベージ!」

 

《スクラップ・キマイラ》

墓地→手札

【黄昏】

手札:4→5

 

 次のターンの準備を整えた黄昏の手際の良さに、大神も敵ながら称賛する。

「ふむ、キャンサーを倒したというのは本当らしいな」

「信じてなかったのかよ」

「再確認しただけだ。ある程度の実力があるのは見ればわかるもんよ」

 ガハハ、と豪快に笑う大神は、ここから黄昏がどう展開するのか楽しみにしているような眼差しを向ける。

 それが黄昏には煩わしく思えて、その視線から逃れるように自分のターンに移った。

 

【黄昏】

5/4000

-----  

-----

【大神】

3/4000

--○-- ◎

--■--

 

「俺のターン、ドロー!」

 

【黄昏】

手札:5→6

 

「俺は手札に加えた《スクラップ・キマイラ》を召喚!」

 

《スクラップ・キマイラ》を召喚

☆4・地属性・獣族

ATK:1700

 

 これまでも何度も危機を救ってくれた《スクラップ・キマイラ》はフィールドに降り立つと雄叫びを挙げる。

 《スクラップ・キマイラ》には通常召喚成功時、墓地のスクラップチューナーを蘇生する効果がある。

 これで《スクラップ・ゴブリン》を蘇生することが出来れば《スクラップ・デスデーモン》をシンクロ召喚し、大神のライフを一気に1100ポイント削ることができる。

「《スクラップ・キマイラ》の召喚時──」

「その前に《ナチュル・ストロベリー》の効果を発動させてもらおう!

 《ナチュル・ストロベリー》は相手がモンスターを召喚、特殊召喚したとき、そのモンスターのレベル×100ポイント攻撃力をエンドフェイズまで上昇させる!」

 《スクラップ・キマイラ》のレベルは4。よって、攻撃力は400アップだ!」

 《ナチュル・ストロベリー》の四肢が伸び、《スクラップ・キマイラ》に繋がると、その養分を吸い取り、一時的に攻撃力が上昇した。

 

《ナチュル・ストロベリー》

ATK:1600→2000

 

 上昇した攻撃力は《スクラップ・キマイラ》では到底太刀打ちできない数値になってしまった。

 とはいえ、《スクラップ・キマイラ》はあくまでシンクロ召喚への布石。

 《スクラップ・デスデーモン》をシンクロ召喚できれば《ナチュル・ストロベリー》を倒すこともできる。

「俺は《ナチュル・ストロベリー》の効果にチェーンして、《スクラップ・キマイラ》の効果発動!

 墓地の《スクラップ・ゴブリン》を蘇生する![リバイバル・ハウリング]」

「悪いがそうはさせない。

 リバースカードオープン、《エンペラー・オーダー》。モンスターの通常召喚時に発動するモンスター効果を無効にする」

「なっ!?」

 《スクラップ・キマイラ》が仲間を呼び寄せる雄叫びを挙げようとしたその直後、大神が発動した永続罠により力が吸収され不発に終わってしまった。

「その代わり、無効にしたモンスターのコントローラーに1枚ドローさせる。

 オレからのささやかな餞別だ」

「……そりゃどうも」

 

【黄昏】

手札:5→6

 

「手札に加わったのは《ロータリー・ブースト》。

 このカードが罠カードの効果でドローされた場合、もう一枚の手札とともに墓地へ送ることで、カードを2枚ドローする。」

 

【黄昏】

手札:6→4→6

 

 大神に促され1枚のドローからさらにデッキを圧縮する。

 モンスターを召喚した分の手札アドバンテージは回復したが、悠長に考えてもいられない。

 永続罠の《エンペラー・オーダー》がある限り、《スクラップ・キマイラ》の効果は使えない。

 《ナチュル・ストロベリー》がモンスター召喚時に強制効果を持つため、こちらも召喚時に強制効果があるモンスターを出した場合に限り優先権によるチェーンの関係で無効にされることはない。

 とはいえ《スクラップ》で通常召喚時に強制効果があるのは《スクラップ・コング》のみ。その効果も自壊からのサルベージだ。わざわざ狙うことはないだろう。

 それより重要なのは、《ナチュル・ストロベリー》もモンスターの召喚時に効果を発動するカードということだ。

 そして《エンペラー・オーダー》が無効にできる対象は発動したプレイヤーのモンスターでも可能。

 つまり……

「俺はどちらかを処理しない限り、俺がモンスターを通常召喚するたびにアンタに1枚ドローさせてしまうってことか」

「そういうことだ。しかし、これだけでは終わらんぞ。

 この《ナチュルの森》は、発動を無効にされたことで無駄になったカードたちのエネルギーを元に新たなナチュルを生み出す。

 それにより、デッキからレベル3以下のナチュルモンスターをサーチすることができる。

 オレは《ナチュル・チェリー》をサーチ!」

 

【大神】

手札:3→4

 

 相手のカードの発動を無効にすることにより効果を発動するフィールド魔法。

 これだけわかりやすい効果なら、大神の使うナチュルがどんなテーマになっているのかは容易に想像がついた。

「なるほどな。そのナチュルってモンスターたちは、パーミッションデッキになってるわけか。

 植物族統一デッキってわけではなさそうだが、それでも主軸になるのはたしかだ。

 となると、無効にする場合は自身をリリースするってところが妥当か」

「これは驚いた! お前さん、フィールド魔法の効果だけでそこまでわかるのか」

「その返答は正解だと解釈させてもらうぞ。

 フィールド魔法ってのは、そのモンスター達に住みやすい環境になってるもんだろ?

 なら、その効果がわかればある程度はわかる」

 説明を終えた黄昏は残りの手札すべてを引き抜く。

 相手の戦い方はこちらの効果を無効にしつつアドバンテージを稼いでいくパーミッションデッキに近いのだ。

 それを止める手段がないなら、小出しにするより一気に使って無効にするペースが追いつかないようにしたほうがいい。

 幸い、()()()()()も手札に来ているから躊躇する必要はない。

「俺はプレート魔法《罠解卓上》を発動!

 さらに手札の《スクラップ・ポリッシュ》を《罠解卓上》にインフェクトする!」

 

【黄昏】

手札:5→4

《罠解卓上》

IV:0→1

 

「プレート魔法……巫のご令嬢が考案した新しいカードか」

「さらに手札すべてをセットしてターンエンドだ」

「手札すべてだと? これは面白くなってきたわい!

 エンドフェイズ、《ナチュル・ストロベリー》の攻撃力は元に戻る」

 

《ナチュル・ストロベリー》

ATK:2000→1600

 

【黄昏】

0/4000

--○-- ●

-■■■■

【大神】

4/4000

--○-- ◎

--□--

 

「オレのターン、ドロー!」

 

【大神】

手札:4→5

 

「オレは《ナチュル・マロン》を攻撃表示で通常召喚!

 そして《ナチュル・マロン》の効果だ。このモンスターは召喚時にデッキからナチュルモンスターを1体墓地へ送ることができる。

 それを《エンペラー・オーダー》で無効にして1枚ドローする!」

 

《ナチュル・マロン》

☆3・地属性・植物族

ATK:1200

【大神】

手札:4→5

 

 召喚された《ナチュル・マロン》はイガを割ってその効果を発動しようとするが、《スクラップ・キマイラ》同様《エンペラー・オーダー》によりそのエネルギーは持ち主の手札増強に変換される。

 召喚した分の手札を補充するが、それ以上何をするわけでもなく、バトルフェイズも行わずに大神はエンドフェイズを宣言する。

「ならエンドフェイズ、リバースカードオープン、《破滅へのクイック・ドロー》!」

「早速そのカードの御出ましか!」

 プレート魔法を導入してからはほぼ毎回発動している黄昏の貴重なドローソース。

 このカードの発動は大神も待っていたのだろう、不敵に笑い黄昏へとターンを譲る。

 

【黄昏】

0/4000

--○-- ●

-■□■■

【大神】

5/4000

--○○- ◎

--□--

 

「俺のターン、ドロー。

 さらに手札0でドローしたことにより《破滅へのクイック・ドロー》の効果でさらに1枚ドローする!」

 

【黄昏】

手札:0→1→2

 

 手札に加わった2枚のカードはどちらもモンスターカードではなく、今は利用するのが難しいカードだった。

 しかし、プレート魔法が発動している今なら、使い道がないカードも戦術に組み込むことが出来る。

「俺は手札の《スクラップ・クラッシュ》、《リ・バウンド》を《罠解卓上》にインフェクト!」

 

【黄昏】

手札:2→0

《罠解卓上》

IV:1→3

 

「これで準備は整った!

 俺はレベル4の《スクラップ・キマイラ》に、《スクラップ・クラッシュ》と《スクラップ・ポリッシュ》をインフェクト。エクストラデッキのリバイバル・モンスターへミューテーション。

 すべての道を繋げる中心点が、今ここにフィールドをかき乱す化身となる。リバイバル召喚! とぐろを巻く輪廻の渦、《ハブ・リスク》!!」

 

《罠解卓上》

IV:3→1

《スクラップ・キマイラ》

フィールド→墓地

《ハブ・リスク》

☆4・闇属性・爬虫類族

ATK:?

 

 《スクラップ・キマイラ》の体が書き換えられたことで現れたモンスターの見た目は頭部が異様に肥大化した蛇そのものだったが、口を開ければその異様さがわかる。

 まるで全身を貫いているように喉の中心部には骨のようなものが突き出し、それを中心に同じく骨のようなものが車輪のスポークのように皮膚に向かって伸びていた。

 第一印象は、車輪を丸のみした蛇の口の中、というところだろうか。

 そんな気味の悪いモンスターはとぐろを巻き、口内の車輪を高速回転させながら相手を威嚇する。

「《ハブ・リスク》の攻撃力は、リバイバル召喚成功時にフィールドに存在するこのカード以外の表側表示カードの数×300となる。

 フィールドの表側表示のカードは6枚。よって《ハブ・リスク》の攻撃力は1800となる!」

 

《ハブ・リスク》

ATK:?→1800

 

「ふむ、攻撃力を上げてきたか。だが忘れていないか?

 モンスターの特殊召喚に成功したとき《ナチュル・ストロベリー》の攻撃力はそのモンスターのレベル×100ポイントアップする!」

「そんなことわかってんだよ。

 墓地の《ブレイクスルー・スキル》を除外することで、相手モンスター1体の効果を無効にする!

 《ナチュル・ストロベリー》の効果を無効だ!」

 《ハブ・リスク》へと伸びるツタが、途中で見えない壁に弾かれて不発に終わる。

「さあ、バトルだ!

 《ハブ・リスク》で《ナチュル・ストロベリー》を攻撃! [ブレンダー・スワロー]」

 黄昏の命令を受けてとぐろを巻いていた《ハブ・リスク》は上空へ向かって跳ねると、《ナチュル・ストロベリー》を頭部から丸のみにした。

 その際、口内のスポークがまるでミキサーのように《ナチュル・ストロベリー》の体を粉砕していく。

 幸い攻撃したモンスターが果物を模したモンスターだったが、これがもし普通のモンスター、ましてや人型のモンスターなど丸のみにした暁にはトラウマ確実の光景だっただろう。

 それでも観客のリリアは小さく悲鳴をあげていた。

 また、攻撃の余波を受けて大神は顔を覆う。

 

【大神】

ライフ:4000→3800

《ナチュル・ストロベリー》

フィールド→墓地

 

「これがリバイバル・モンスターか。

 セキュリティではまだそれ用のモンスターがいないため使うやつがいないから初めて見たわい」

「その余裕面、とっとと剥がしてやるよ。

 俺はバトルフェイズを終了してエンドフェイズに移る。

 ここで本来なら《破滅へのクイック・ドロー》の維持コストで700ライフ払うことになるが、その前に《ハブ・リスク》の効果を発動する!

 毎ターンのエンドフェイズ時、俺と相手の魔法&罠ゾーンに表側表示で存在するカードを入れ替える。

 俺は自分フィールドの《破滅へのクイック・ドロー》と大神のフィールドの《エンペラー・オーダー》を交換する。[エクストラ・プリアンブル]」

 《ハブ・リスク》が天を仰ぐとその首から骨のようなものの一部が突き抜け、黄昏のフィールドの《破滅へのクイック・ドロー》と大神のフィールドの《エンペラー・オーダー》に突き刺さる。

 そして再び口内で車輪が高速回転し、突き刺さったカードの位置が入れ替わった。

 

《エンペラー・オーダー》

大神→黄昏

《破滅へのクイック・ドロー》

黄昏→大神

 

「ほう、これは面白い効果だが強制効果か。使うには癖が強そうだ」

「今の状況ならこの効果も最大限に活用できる。

 《破滅へのクイック・ドロー》の維持コストを払うのは自分のターンのエンドフェイズ時だ。

 このターンのターンプレイヤーじゃない大神は《破滅へのクイック・ドロー》の維持コストを払う必要はない」

「とはいえ、このままだと次のオレのターンには払う必要があるんだろう?」

「まあ、そういうことだな。大神も手札0にしたらどうだ?

 ライフ700払う代わりに毎ターン1枚余分にドローできるぞ」

「ふむ、まあ考えておこう」

 

【黄昏】

0/4000

--○-- ●

-■□■■

【大神】

5/3800

---○- ◎

--□--

 

 不敵に笑う黄昏に適当に返す大神は今後の展開を考えて眉をひそめた。

(今後、俺は毎ターン700ポイントのライフコストを払うことになるわけだ。

 オレのフィールドにある《破滅へのクイック・ドロー》を墓地へ送ったとしてもダメージを受けるのは黄昏だから、早々にそうするのがいいんだろうが、困ったことにオレのデッキにはそんなカードほとんどない……)

 ちらり、と黄昏を確認する。

 先ほどまで挑発をしていた好戦的な笑みはどこへやら、再び大神の挙動すべてを確認するかのような冷たい眼光が大神を貫いていた。

 発動しているフィールド魔法を相まって、まるで草木の影から隙を伺う毒蛇のように錯覚してしまう。

(やれやれ、この森はナチュルのような温厚なモンスターが住まうフィールドだというのに、お前さんのプレッシャーのせいでまるで猛獣の住まう樹海に感じてきたわい)

 おそらくハッタリなどではなく、本気で大神の挙動すべてを観察しているのだろう。

 となれば、下手に考えすぎると黄昏の策略に飲まれる可能性もある、と大神は考えをまとめてデッキトップへ手をかける。

「ならば短期決戦が一番単純でわかりやすい! オレのターン、ドロー!」

 

【大神】

手札:5→6

 

 ドローしたカードを確認する。そのカードを見た瞬間、ぼんやりとした戦術が形を成す。

「まずは《ナチュル・パンプキン》を攻撃表示で通常召喚だ!」

 

《ナチュル・パンプキン》

☆4・地属性・植物族

ATK:1400

 

 カードがデュエルディスクに読み込まれ、名前の通りかぼちゃの姿をしたモンスターが姿を現す。

 そして間をおかずに《ナチュル・パンプキン》の頭の一部がぱっかりと開いた。

「《ナチュル・パンプキン》には通常召喚時、手札のナチュルモンスターを特殊召喚する効果がある。

 オレは《ナチュル・チェリー》を特殊召喚する。

 《エンペラー・オーダー》は発動するか?」

「俺は……」

 大神が見せた《ナチュル・チェリー》のカード。それがどんな効果を持っているのかはわからない。

 それに攻撃力はたったの200。ナチュルはバニラモンスターデッキではないため、ステータスが低いということは、それに伴い効果が厄介である可能性もある。

 《エンペラー・オーダー》は確かに召喚時の効果を無効にしてくれる永続罠だが、この場合大神が1枚ドローしてしまう。

 新たなモンスターの召喚か、大神の手札の増量か。

 どちらも勘弁願いたいが、苦渋の決断を迫られた黄昏は舌打ちをした。

「《エンペラー・オーダー》の効果で無効にする」

「うむ、なら1枚ドローさせてもらう」

 

【大神】

手札:5→6

 

「……悪いがお前さんの葛藤は無駄になったらしい。

 《二重召喚》を発動する!」

「なっ!? くそ……っ!」

 まるで勝利の女神にあざ笑われているかのような運のなさに黄昏は思わず毒づいた。

「これによりオレはもう一度通常召喚ができる。

 オレは改めて《ナチュル・チェリー》を通常召喚だ!」

 

《ナチュル・チェリー》

☆1・地属性・植物族

ATK:200

 

 これまでのモンスター同様、サクランボを模したモンスターが飛び出し、フィールドに降り立った。

 そのステータスは非常に低い。だからこそ、一体どんな効果があるのかと黄昏は身構えた。

 しかし、その前に大神はさらに手札のカードを切る。

「さらに手札のモンスターカード、《ナチュル・ストロベリー》を捨て、《ワン・フォー・ワン》を発動! デッキからレベル1のモンスターを一体特殊召喚する。

 オレは《ナチュル・モスキート》をリクルートだ!」

 

【大神】

手札:3→2

《ナチュル・モスキート》

☆1・地属性・昆虫族

DEF:300

 

 デフォルメされた蚊のモンスターは羽を羽ばたかせてフィールドに降り立つ。

 これで合計4体のモンスターがフィールドに並んだが、そのモンスターたちの攻撃力はすべて《ハブ・リスク》を戦闘破壊するほどの攻撃力を有していない。

 なら、注目すべきは《ナチュル・チェリー》の効果外能力だろう。

「《ナチュル・チェリー》はチューナーモンスター。ってことは、シンクロ召喚狙いか」

「ふむ、だがその前にひと手間かけさせてもらおう。

 《ナチュル・チェリー》で《ハブ・リスク》に攻撃!」

「自爆特攻、だと?」

 普通ならこんなことするはずがないが、低ステータスでこのようなことをする効果モンスターなら限られてくる。

「そのモンスター、リクルーターか!」

「その通りだ。だが、それだけではないぞ!」

 その傍らで《ナチュル・チェリー》が《ハブ・リスク》の口に入り、ミキサーにかけられたように粉砕される。

 そのダメージの余波が大神を襲う、はずだった。

「ダメージ計算時、《ナチュル・モスキート》の効果を発動!

 このモンスターがいる限り、ナチュルモンスターの戦闘ダメージは相手が受ける!」

「な……っ!?」

 《ナチュル・モスキート》の羽ばたきが黄昏の方に衝撃を反射する。

 思わぬ効果に黄昏は目を見開くが、すぐさま冷静にリバースカードに手を伸ばす。

「リバースカードオープン、《ダメージ・ダイエット》!

 このターン俺が受けるすべてのダメージを半分にする……つっ!」

 

【黄昏】

ライフ:4000→3200

 

 リバースカードによりダメージを軽減したはいいが、リクルーターの《ナチュル・チェリー》が破壊されてしまった。

 弾けた種子がフィールドにばらまかれ、新たに2体の《ナチュル・チェリー》がフィールドに攻撃表示で現れる。

 

《ナチュル・チェリー》

フィールド→墓地

《ナチュル・チェリー》×2

デッキ→フィールド

 

「ふむ、ダメージ軽減のカードが伏せられてたか。

 案外この総攻撃で決まるかと思ったが、これはおとなしく予定通り進めるとするか」

 予想外のダメージを受けて眉をひそめている黄昏をよそに、大神は顎に手を置いて一人頷く。

「メインフェイズ2に移り、オレは《ナチュル・チェリー》で《ナチュル・パンプキン》をチューニング。その姿の前では奇跡さえも無となり肥しとなる。シンクロ召喚! 雄々しき獣、《ナチュル・ビースト》!」

 

《ナチュル・チェリー》、《ナチュル・パンプキン》

フィールド→墓地

《ナチュル・ビースト》

☆5・地属性・獣族

ATK:2200

 

 2体のモンスターを消費して現れた巨大な獅子は黄昏を一瞥すると吠えることもなく、ただ悠然とたたずんでいた。

 それはこのモンスターが攻撃する意思がないのか、それともする必要もないという余裕の表れなのかもしれない。

 とりあえず今の状態で言えるのは、《ナチュル・ビースト》が向ける無言のプレッシャーを黄昏は肌でピリピリと感じているということだけだ。

「メイン2はそれだけか?」

「いや、《ナチュル・マロン》の効果も発動しておこう。《ナチュル・マロン》は墓地のナチュルモンスターを2体デッキに戻すことで1枚ドローできる。

 オレは墓地の《ナチュル・チェリー》と《ナチュル・ストロベリー》をデッキに戻して1枚ドローする!」

 

《ナチュル・チェリー》、《ナチュル・ストロベリー》

墓地→デッキ

【大神】

手札:2→3

 

 大神の手札が補給されたのと同時に、デッキに《ナチュル・チェリー》が補充された。

 相手のフィールドにチューナーを残しているのは非常にマズいのだが、《ナチュル・チェリー》はリクルーターでもある。

 それに《ナチュル・モスキート》の効果でダメージはこちらに反射させられる。

「オレはこれでターンエンドだ」

「は?」

「何かおかしいか?」

「カードをセットしないのか?」

 反射ダメージがあるとはいえ、その要の《ナチュル・モスキート》は守備表示だ。

 おそらく、《ナチュル・モスキート》自身の戦闘ダメージは反射できないのだろう。

 そこまではわかるが、その《ナチュル・モスキート》を守るカードを伏せないというのは戦術としてはどうなのだろうか?

 ブラフすら伏せないというのは、伏せるカードがない、ということなのだろうか。

 しかし、ここまでの大神のデュエルは大胆ではあるがしっかりと計画の立てられたものだ。ここで雑なデュエルをするデュエリストだとは思えない。

 たとえ有効なカードがなくともブラフをセットする性格だと予想していたがその推測が外れていたのだろうか……?

「いや、違う。そうか《ナチュル・モスキート》自身が破壊耐性や、それに近い耐性持ちなのか」

「…………」

 沈黙を通すが、その表情は驚きを隠しきれていない。

 やがてそれを悟ったのか、肩をすくめてやれやれと首を振った。

「まさかここまで勘の鋭い奴だとはおもわなかったわい。

 確かに、《ナチュル・モスキート》には、他のナチュルがいる間は攻撃対象にされない。

 とはいえ、それがわかったところであまり状況は変わるまい?」

 大神の言う通り、戦闘以外で《ナチュル・モスキート》を倒すとなると、黄昏のデッキでは少々手間がかかる。

 手っ取り早い《スクラップ・サーチャー》も、今はまだ墓地へ落せていない。

 かと言って、《ナチュル・モスキート》を戦闘破壊するまでには無視できないほどの反射ダメージが待っている。

(ひとまず《ナチュル・ビースト》の効果を探りつつ破壊するのが無難か)

 フィールドのリバースカードと墓地を確認しながら《ナチュル・ビースト》を見据える。

「ならそのエンドフェイズ時、《リビングデッドの呼び声》で墓地の《スクラップ・ゴブリン》を攻撃表示で蘇生する」

 

《スクラップ・ゴブリン》

墓地→フィールド

 

 《ナチュル・ビースト》がどんな効果を無効にしてくるのか探るために発動したが、どうやら不発に終わったらしい。

 とはいえ、黄昏のフィールドにもチューナーが用意出来たのでよしとしていいだろう。

 しかし、大神はそれでは終わらせてくれなかった。

「相手が罠カードを発動した時、デッキトップを1枚墓地へ送ることでこのカードは特殊召喚できる!

 いでよ、《ナチュル・ロック》!」

 

《ナチュル・ロック》

☆3・地属性・岩石族

ATK:1200

【大神】

手札:3→2

 

 《ナチュルの森》に上書きされているフィールドに転がっていた大岩が動き出し、それがモンスターとして大神を守るようにフィールドに現れた。

 攻撃力はリクルーター以下だが、それでもシンクロ素材としてさらに大神のフィールドが強固なものになるのは間違いないだろう。

「できればその前に終わらしたいんだけどな……

 まずは《破滅へのクイック・ドロー》の維持コストで700ポイントのライフを払ってもらうぞ」

「ふむ、しばらくはこれがお前さんのダメージソースとなりそうだな」

 

【大神】

ライフ:3800→3100

 

「そしてその処理の後に《ハブ・リスク》の効果で《リビングデッドの呼び声》と《破滅へのクイック・ドロー》を交換する」

 

《リビングデッドの呼び声》

黄昏→大神

《破滅へのクイック・ドロー》

大神→黄昏

 

【黄昏】

0/3200

--○○- ●

-■□□-

【大神】

4/3100

○○○○△ ◎

--□--

 

 再び《ハブ・リスク》の効果によりお互いのカードが入れ替わる。

 しかも黄昏が入れ替えたのは次の黄昏のターンで用済みになるだろう《リビングデッドの呼び声》だ。

 これで実質《エンペラー・オーダー》と《破滅へのクイック・ドロー》は黄昏の支配下になったことになる。

 しかし、それでも黄昏は全くと言っていいほど安心が出来なかった。

 どれだけ策を練ろうと関係なく捻り潰されそうな胸騒ぎが、むしろ強まる一方だ。

「顔色がよくないように見えるぞ?」

「あんたの目が悪くなったんじゃないのか?

 《エンペラー・オーダー》はほぼ完全に奪った。

 《ナチュル・ビースト》の効果はまだわかってないけど、さっさと倒してそのまま勝ってやるよ」

 その言葉は大神への挑発か、はたまた自己暗示の一環か。

 一度息を整えた黄昏は静かにデッキトップへと手の伸ばした。




最近カードの情報もあんまり仕入れてなくて、エクゾディア新規が来てたの発売されてから気づきました。

とりあえずリアルの方はセレナの月光シリーズが出れば再び本気出します
ブリキンギョとアイアイアンとブリキの大公ぐらいしか出してない鉄男のカードがOCG化されてるんですからワンチャンありますよね!?
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