遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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気づけば2ヶ月更新を止めてすいませんでした
今後とも気長にお待ちください……

今回は遊形のデッキのお披露目回です


モンスターにしてモンスターにあらず

 デュエルディスクを操作してブザーを止めると、二人はデッキとデュエルディスクをそれぞれ仕舞う。

「惜しかったな」

「嫌味か?」

「なわけあるまい。さっきも言っただろう?

 オレのシンクロモンスターを3体とも出させた上にそれを撃破。しかも切り札の《ナチュル・エクストリオ》まで出させたんだ。

 まあ、負けは負け、と言うのがお前さんらしいかもしれんが」

「…………」

 実際、今回のデュエルで大神との実力差はわかった。

 おそらく何度やっても大神には敵わないだろう。どれだけ追い詰めたとしても、最後の一手が届かない。

 《スクラップ・ヘルサーペント》を使えば、その一手が届くのかもしれないが……

(やっぱり、《スクラップ・ヘルサーペント》にはそれだけの力があるってことか。

 それとも、()()()()のデッキを使えばよかったのか……)

 思考を巡らせていると、観覧に徹していた葵たちが歩み寄ってくる。

「遊糸ー、えーっと、き、気を落とさないでねー?」

「まあ、私たちは下手に出しゃばらない方がいいってことかな。

 実際、私なんてセイクリッドの序列だけを見れば最下位だし。

 たぶん黄昏君と互角か、下手すれば私の方が弱いんじゃないかな?」

 肩をすくめる葵は苦笑いしながら自分の序列の低さを話題に上げる。

 確かに、魚座は序列だけを見れば黄昏が勝った蟹座より下だ。

 しかし黄昏にはエヴァより葵が弱いとは思えなかった。二人共とデュエルした黄昏だけがわかる僅かな差だが、そのように感じた。

「……心配しなくても、お前らに迷惑かけるような真似はしないっての。

 セイクリッドの加護をもらったモンスターも俺じゃ太刀打ちできないのもわかったしな」

「ずいぶんあっさりしているな。てっきりしつこく食い下がるかと思ったんだが」

「はっきりと実力差見せつけられてるんだ。

 最低でもアンタを倒せるぐらいにならないと出しゃばる気はない」

「ふむ、それがお前さんの心情か。結構さっぱりしとるな」

「悪いかよ」

「いや、話が早くて助かるわい。

 なら今日はもう解散でいいだろう」

「それはけど実際の話、護衛はどうつけるんだ? 俺は護衛される必要もないけど、それでも大神以外の星の守護者(セイクリッド)は遊形と七波、リリア、早乙女さんの4人。

 全員帰宅場所が違うのに1人で2人を護衛するのも無理がないか?」

「心配はいらん。早乙女卯月にはこの神社の関係者が護衛についてくれる。遊形も普段は巫のご令嬢と行動しているからそれが護衛になるだろう」

「はい、セイクリッドを奉る神社の巫女として、みなさんの安全は可能な限りお守りいたします。

 では、大神さんたちも護衛をよろしくお願いいたしますね――」

 

 

 前回と違いD・ホイールで神社にやってきた黄昏は、葵たちと別れて公道を疾走する。

 その護衛は……

「この組み合わせは大神の嫌がらせか、遊形?」

「あははは……まあ、今日だけね。

 それに大神さんたちはセキュリティの増援も望めるし、七波さんとリリアの護衛に重視を置いたら自然とこうなるんじゃないかな?」

「大神はともかく、神崎や他のセキュリティ程度の実力でボレアスを止められるとは思わないけどな」

 D・ホイールを走らせながら会話をする黄昏は毒舌気味に指摘する。

 厳しい言い方だがその指摘は的を射ており、遊形はその言葉の意味を理解して微笑む。

「……やっぱり遊糸は心配なんだね」

「あん?」

「遊糸が毒舌になるときは、必ず相手を思ってる時だよね?」

「……それより、気づいてるか?」

 ため息交じりに話題を変えると遊形の表情も真剣なものになる。

 2人が意識を向けるのは自分たちの後方。

 約100メートル後ろを維持してピッタリ追っている影か複数あった。

 先ほどから振り切ろうと道を変えてみるなどいろいろ試しているがすべて無駄に終わっている。

 余程の手練れと見た方がいいだろう。

「どうする?

 取り決めなら僕一人で引き受けるけど」

「お前、わかってて言ってるだろ。

 気配からしてセイクリッドじゃない。大方偵察係かなんかだろ」

「まあ、遊糸ならそれぐらい気づくよね」

 困った笑みを浮かべる遊形だが彼も予想はついていたらしく、それ以上は言わなかった。

 方針が決まったところで2人は一気にハンドルを切って大通りから路地裏へ向かい、人気がない廃工場に停車する。

「何人ぐらいついてきたかわかる?」

「4人だな。大通りではもうちょいいた気がするけど」

「報告しに部下を帰らしたのかな?」

「逆に様子見で下っ端をこっちに寄越したかもな。

 どちらにしても数は減ったし、ここまで来るなら好戦的だと見ていいだろ」

 追ってきた敵が来るだろう方向を睨みながら状況を確認する。

 しばらくして現れたのは黒いローブに身を包んだD・ホイーラーだ。

 数は黄昏に予想通り4人。

「何人引き受けるつもりだ?」

「3人、て言いたいけど遊糸が納得しないよね。ここは相手に任せようか」

 呑気に会話をしている間に強制デュエルを伝える機械音が響く。

 D・ホイールの個人情報にプロテクトをかけているのか名前はUNKNOWNと表示されており、そしてデュエルする人数はそれぞれ2人づつだ。

「コース指定なしの野良ライディングデュエルとかいつの時代だよ」

「僕の方は通常デュエルだよ」

「わざわざ分ける理由……ああ、そういことか」

「何か心当たりが?」

「俺の方はリリアから貰ったフィールド魔法を使わせないつもりだろうな」

「フィールド魔法?」

「後で話す。お前にも関係あることだからな!」

 D・ホイールを加速させ、黄昏は敵二人を引き連れて廃工場の敷地内へ向かう。

 その背中を見送った遊形はD-ホイールを降りてスタンディングデュエルの準備を行う。

「まったく、遊糸も気になる引っ張り方するよ。

 さあ、僕らも始めようか!!」

 

「「「デュエル!」」」

 

【遊形】vs【UNKNOWN1】vs【UNKNOWN2】

 

【遊形】

 

「先攻は貰うよ!」

 デュエル形式はバトルロワイアル。

 全員に攻撃できるわけだが、UNKOWNとなっている相手二人は協力してこちらを攻撃してくるだろう。

 二人分の攻撃を受けるとなると、それなりの布陣を形成する必要がある。

「なら、僕は手札のカードすべてをセット!」

「手札全部だと!?」

 5枚のカードをデュエルディスクが読み込み。ソリッドビジョンが5枚の伏せカードを映し出した。

「ふ、血迷ったか!」

「それなどうかな? 僕はこれでターンエンドだよ」

 

【遊形】

0/4000

-----  

■■■■■

【UNKNOWN1】

5/4000

-----  

-----

【UNKNOWN2】

5/4000

-----  

-----

 

「俺のターン、ドロー」

 

【UNKNOWN1】

手札:5→6

 

 続いてUNKNOWN1と表記される男のターンとなると、カードをドロー後すぐさまカードを切る。

「俺は《霞の谷のファルコン》を通常召喚」

 

《霞の谷のファルコン》

☆4・風属性・鳥獣族

ATK:2000

 

 翼を携えた戦士が、風を巻き起こしながらフィールドに現れる。

 その攻撃力は通常召喚できる下級モンスターの中ではトップクラスの数値だ。

「なるほど、初手の牽制にはいいカードかもしれないね。

 でも、そう簡単にモンスターは並べさせないよ!

 リバースカードオープン《サイバー・シャドー・ガードナー》。このカードは発動後、攻撃力不明のモンスターとしてフィールドに特殊召喚される。

 さらにそれにチェーンしてリバースカードオープン《苦紋様の土像》。こちらも同様に守備力2500のモンスターとしてフィールドに特殊召喚される!」

 

《苦紋様の土像》

☆7・地属性・岩石族

DEF:2500

《サイバー・シャドー・ガードナー》

☆4・地属性・機械族

ATK:?→0

 

 フィールドに現れたのはどちらもモンスターでありながらモンスターではない、罠モンスターという種類のカードだ。

 そしてそのうちの1体《苦紋様の土像》はチェーンの逆処理により先にフィールドに現れ、後から召喚された《サイバー・シャドー・ガードナー》に反応して禍々しい光を放ち始めた。

「そして、《苦紋様の土像》はフィールドに存在する限り、他の罠モンスターが魔法&罠ゾーンから特殊召喚される度にフィールドのカードを破壊する。

 僕は《霞の谷のファルコン》を破壊!」

 幾何学的な模様を掘られた土偶から発せられる禍々しい光は、《霞の谷のファルコン》を包み込み跡形もなく消滅させた。

 

《霞の谷のファルコン》

フィールド→墓地

 

 モンスターを破壊された男は遊形のコンボに驚く様子もなく、ただただ忌々しそうに舌打ちする。

「ちっ、すでに伏せられていたか。

 なら俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ」

「相手のターンのエンドフェイズ、《サイバー・シャドー・ガードナー》は再びセットされる」

 

《サイバー・シャドー・ガードナー》

フィールド→セット(魔法&罠)

 

【遊形】

0/4000

-△---  

■-■■■

【UNKNOWN1】

3/4000

-----  

-■■--

【UNKNOWN2】

5/4000

-----  

-----

 

「俺のターン、ドロー」

 

【UNKNOWN2】

手札:5→6

 

 続く2人目の名称不明の男がドローしたカードを確認すると、こちらの男も小さく舌打ちする。

 望みのカードは来なかったのだろう。

「どうせ、その伏せカードの1枚は《宮廷のしきたり》何だろう?

 ってことは《カース・オブ・スタチュー》辺りも伏せられてるかもなぁ」

「……よく調べてあるね」

 遊形は黄昏たちに会う前までのことを思い出し、流石に手の内を晒し過ぎたか、と少し後悔する。

 遅かれ早かれ、この事態は来るとわかっていた。

 この程度の揺さぶりで、遊形の余裕の笑みが崩れることはない。

「俺は《霞の谷の戦士》を通常召喚」

 

《霞の谷の戦士》

☆4・風属性・戦士族

ATK:1700

 

 戦士という名前のとおり、両手に歪な形をしたナイフを構えるモンスターが姿を現す。

 あのモンスターには戦闘破壊できなかったモンスターをバウンスする効果を持っているはず、と遊形は記憶している。

 《宮廷のしきたり》は罠モンスターをあらゆる破壊から守ってくれるが、バウンスまでには対応できない。

 これも、手の内をさらした結果だ。ある程度予想は出来ている。

「なら僕はリバースカードオープン《サイバー・シャドー・ガードナー》」

 

《サイバー・シャドー・ガードナー》

☆4・地属性・機械族

ATK:?→0

 

 再び遊形の場に鈍色に輝くモンスターが姿を現し、《苦紋様の土像》が光り出す。

「《サイバー・シャドー・ガードナー》が特殊召喚されたことで、《苦紋様の土像》の効果を発動!

 《霞の谷の戦士》を破壊する!」

「おっと、今度はただ破壊されるだけじゃ終わらない。《苦紋様の土像》の効果にチェーンして《終焉の地》を発動。

 デッキから《霞の谷の祭壇》を発動する」

「……これは予想外だね」

 UNKNOWN2と表記されている男が発動したカードにより《苦紋様の土像》が《霞の谷の戦士》を破壊する前に周囲が濃霧に包まれる。

 《霞の谷の戦士》が破壊された直後、UNKNOWN2のフィールドが一際濃い霧に包まれた。

 

《霞の谷の戦士》

フィールド→墓地

 

「《霞の谷の祭壇》の効果だ。

 フィールドの風属性が効果で破壊されたとき、デッキからレベル3以下の《霞の谷》モンスターをデッキから特殊召喚できる。

 《霞の谷の祈祷師》をリクルート」

 

《霞の谷の祈祷師》

☆3・風属性・鳥獣族

DEF:1200

 

 相手が見えなくなるほどの深い霧が晴れると、いつの間にか目を隠した女性型のモンスターが佇んでいた。

 一連の処理が終わり、メインフェイズが終わるタイミングでUNKNOWN1の男の方もセットカードに手を伸ばす。

「俺は伏せてあった《ポップルアップ》を発動!

 相手フィールドにのみフィールド魔法がある場合、デッキからフィールド魔法を発動できる。

 俺が選択するのは同じく《霞の谷の祭壇》!」

「……これは、少し覚悟しないとマズいかな」

 2人の男の後ろに同じ祭壇がそびえ立ち、辺りの霧の濃度がさらに増す。

 モンスターが増えたことよりも《霞の谷の祭壇》が展開されたことが遊形にとっては痛手だった。

 遊形の基本戦術は《サイバー・シャドー・ガードナー》と《苦紋様の土像》によるカード除去だ。

 もともとリクルーターデッキとは相性がよくないのだが、《霞の谷の祭壇》によってモンスターの除去はほぼ無意味と化した。

「俺はこれでターンエンドだ。

 日盛遊形、俺たちはお前のデッキの情報は知り尽くしている。

 果たしてお前はこのデュエル、勝つことはできるか?」

 

【遊形】

0/4000

-△---  

■-■■■

【UNKNOWN1】

3/4000

----- ◎

-■---

【UNKNOWN2】

4/4000

--△-- ◎

-----

 

 UNKOWN2がターン終了を宣言する傍ら、遊形はこのデュエルでの戦術の練り直しを行う。

「そうだね。とりあえず遊糸が帰ってくるまでに目処を立てないとね……」

 ただし、男たちは気づいていない。

 未だに遊形の表情から笑みは消えていないことを。

 

 

 一方、黄昏のデュエルは早くも終幕を迎えていた。

「――バトル、《ハブ・リスク》で《霞の谷のファルコン》を攻撃」

 黄昏の指示により不気味な蛇は《霞の谷のファルコン》をかみ砕き、その衝撃で()()()の男のライフが0を示すブザーとともにD・ホイールを停止させる。

「……昨日のエヴァとのデュエルに比べたらまだマシか」

 身体に残る擦り傷を見て黄昏は肩をすくめる。

 ただのソリッドビジョンでこんな傷が出来ることはまずない。

(あのニュートとかいうやつもサイコデュエリストだったし、ボレアスはサイコデュエリストの集まりなのか?

 いや、エヴァはそうでもなかったか。

 あいつの言っていた『仲間じゃない』ってのはこれのことを言ってたのか?)

 いろいろ思考を巡らせるが、今は特に気にするべきことではないだろう。

 D・ホイールを走らせながら、すでに見えなくなった敗者の方へと一瞬だけ視線を送る。

 先ほど倒した2人は明らかに実力の劣る格下だった。あれなら4人ぐらい一気に相手にしても負けることはないだろう。

 ならば、どうしてこんな無駄なデュエルを仕掛けてきたのか……?

 予想でしかないが、それらしき理由は1つしか思い当たらない。

 同時に、人気のない広場でデュエルをしている遊形の姿を思い浮かべてため息をつく。

「どうせ、あのバカはまだ地道にやってるんだろうな……」

 そして黄昏は普段使っているデッキケースとは別に、上着の裏側に仕込んでいた薄いケースから数枚のカードを抜き出しデッキに加える。

 デッキのオートシャッフルが行われるのを確認すると、アクセルを回してギリギリまで加速させて遊形の元へと急ぐ。

 

 

「――《鳥銃士カステル》の効果!

 《サイバー・シャドー・ガードナー》をお前のデッキに戻す」

 

《鳥銃士カステル》

ORU:1→0

《サイバー・シャドー・ガードナー》

フィールド→デッキ

 

 《鳥銃士カステル》の羽が巻き起こす突風により《サイバー・シャドー・ガードナー》はなす術なくデッキへと戻される。

 これで遊形のフィールドにはセットカード1枚だけとなり、他のカードはUNKNOWN1の《霞の谷の執行者》によりすべて手札にバウンスされてしまった。

 がら空きのフィールドをカステルはゆっくりと照準を合わせ、引き金を絞る。

「バトル、《鳥銃士カステル》でダイレクトアタック」

「ぐ……っ!

 流石にサイコデュエリストの攻撃は何度も受けたくないね」

 その狙撃は寸分の狂いもなく遊形の身体を貫いた。

 黄昏の方のデュエリスト同様、こちらの男たちもサイコデュエリストらしい。

 

【遊形】

ライフ:4000→2000

 

 ダイレクトアタックを許したことで一気に遊形のライフが削られた。だが2人相手に数ターン経ってもダメージを受けたのはこれが1回目。

 それだけで彼のデッキがどれほど堅牢な守りを固めていたのか容易に想像できた。

 だが遊形の危機はこれだけでは終わらない。

「さらに伏せていた《大暴落》を発動。

 相手の手札が8枚以上のとき、その手札をすべてデッキへ戻し、新たに2枚ドローしてもらう」

 

【遊形】

手札:9→0→2

 

 言われたとおりに手札をデッキに戻し、新たにカードをドローする。

 手札に来たのは《メタル・リフレクト・スライム》と……

「《王家の神殿》。ここできちゃうか」

 そのカードは1ターンに1度だけ罠カードをセットしたターンに発動できる強力な効果を持つ永続魔法だ。

 そして、()()モンスターが住まう神域でもある。

「俺はこれでターンエンドだ」

 

【遊形】

2/2000

-----  

-□■--

【UNKNOWN1】

1/1600

--○○- ◎

--■--

【UNKNOWN2】

2/1300

--○-- ◎

--■--

 

 男がターンエンドを宣言し、ターンが遊形へと移る。

 デッキトップを見た遊形は直感的に()()カードがすぐに来ることがわかった。

 このデュエルも終わりが近いだろう。

「とりあえずは時間稼ぎかな……

 僕のターン――」

「悪いが乱入させてもらうぞ、俺のターン、ドロー!」

 

【黄昏】

手札:5→6

 

 D・ホール特有のモーメントの回転音を響かせてつい先ほど別れた人影がデュエルに乱入してきた。

「遊糸!? そんな血相変えて何かあったの?」

「こいつらの目的はただの時間稼ぎだ。

 どうせお前なら遅かれ早かれ勝ってるだろうけどそれじゃ遅いんだよ」

「なんだって?」

 遊形は反射的に相手の方を見る。

 距離があるのとフードによって表情が読めないが、微かに動揺しているのがわかった。

 それだけで黄昏の言葉に確信を持つのは十分だった。

「じゃあ、アシスト頼んだよ」

「言われなくてもやってやるよ」

 とは言ったものの、手札を確認した黄昏は顔をしかめた。

 彼の最初の5枚の手札は《スクラップ・ファクトリー》、《死なばもろとも》、《エクスチェンジ》、《スクラップ・エリア》、《疑似空間》。

 動くには少々きついカードたちだ。

 そしてドローしたカードも同様。強いて言うなら遊形のサポートなら申し分ないといったところだろうか。

「……遊形に託せってことか? まあ早く終わらせられるならなんでもいいか。

 俺は《通販売員》を通常召喚!」

 

《通販売員》

☆2・光属性・戦士族

ATK:1200

 

 呼び出されたモンスターは相手とカードを見せ合うことで効果を発揮する。そしてバトルロワイアルは変則的なルールが適応されるが、今回の場合は『お互い』のような相手を指定するカードは任意の相手一人を選択するようになっている。

「で、何か発動するカードは?」

 ここに来て相手を挑発するように尋ねるが、顔の見えない二人はお互いに顔を見合わすだけでそれぞれが伏せたカードに手を伸ばす様子はない。

 召喚反応系のカードではないのか、はたまた発動するタイミングを見計らっているのか……

「どちらにせよ、ここで動けないのなら危ないかもしれねーぞ?

 俺は《通販売員》の効果発動。お互いに手札を1枚見せてそれが同じカードの種類だった場合、モンスターならそれをお互い特殊召喚、魔法ならお互い2枚ドロー、罠ならお互いデッキからカードを2枚捨てる。

 対象にする相手は遊形だ。……じゃあいくぞ」

「了解。遊糸なら……こっちが望みかな?」

 2人がそれぞれ提示したのは《スクラップ・ファクトリー》と《王家の神殿》。特に示し合わせたわけでもなく見事に揃ったにも関わらず黄昏は喜ぶ様子もなく、これぐらいは当然と言わんばかりにカードを2枚ドローした。

 

【黄昏】

手札:5→7

【遊形】

手札:2→4

 

 ここで黄昏の手札に来たのは《スクラップ・シャーク》と《荒野の大竜巻》。

 これらと《スクラップ・ファクトリー》を組み合わせれば《スクラップ・ツイン・ドラゴン》を出して相手のフィールドをかき乱すことはできる。

 しかし、それでは相手の反撃の隙も与えてしまい時間がかかるだろう。

 今黄昏がするべきなのは自分のフィールドの場を整えることではなく、遊形のターンでデュエルが終わるように準備をすることだ。

「ったく、デュエルの女神ってのはホント自分勝手だよな!

 俺は《エクスチェンジ》を発動! お互いの手札のカードを1枚づつ交換する。

 交換する相手はさっきと同様に遊形だ」

「使えるカードがあればいいんだけどね」

「《王家の神殿》がある時点でそれしか使うつもりねーよ。

 それはいいとして、お前ならこの手札で何をしたいかわかるだろ?」

「……なるほどね」

 お互い手札を見せ合い、黄昏の手札に目を通した遊形はそれだけで相手の意図を汲み頷いた。

 先ほどの《通販売員》の時といい、黄昏の態度こそ悪いものの2人は一心同体と言わんばかりに息が合っていた。

 そして宣言通り迷わず《王家の神殿》を引き抜いた黄昏に対し、遊形が注目したのは《通販売員》の時にも見た1枚のカード。

「《スクラップ・ファクトリー》、やっぱり僕の見たことないカードだ。

 もしかして……」

「話はあとだ。このカードはお前が持ってろ」

 半ば強引に《スクラップ・ファクトリー》を押し付けられて苦笑いする遊形だが、他に自分が必要なカードもないからおとなしく受け取っておく。

 それに、ここで遊形が使いそうなカードを引いたところで結局使うことはできない。

「さて、それじゃあ俺は永続魔法発動《王家の神殿》! こいつがある限り、俺は1ターンに1度だけ罠カードをセットしたターンに発動することが出来る。

 俺はカードを1枚セットし、《王家の神殿》の効果で《死なばもろとも》を発動! お互い手札が3枚以上存在するときにそれぞれのカードをデッキボトムへ戻し、カードを5枚ドローする。

 対象にする相手は当然遊形だ。そして、このカードを発動したプレイヤーはその後デッキに戻したカード×300ポイントのライフを失う」

 

【遊形】

手札:4→0→5

【黄昏】

手札:4→0→5

ライフ:4000→1600

 

 黄昏が大きくライフを失うものの、これで遊形の手札は5枚にまで回復させることに成功。

 相手からすれば、この数ターンの苦労を水の泡にされたも同然でこれほど屈辱的なことはないだろう。

「そして手札に来た《ロータリー・ブースト》の効果。

 このカードは罠効果でドローされた場合、もう1枚の手札とともに墓地へ送ることでカードを2枚ドローすることができる!」

 

【黄昏】

手札:5→3→5

 

 手札に補充された2枚を含めた手札を確認し、黄昏の視線はここまで傍観したままの相手へと向けられる。

「ここまで好き勝手やってるのに止められないとなると、アンタらの底は見えたな。

 遊形の方も準備は整ってるみたいだし、反撃を始めようか。

 俺は《罠解卓上》を発動し、手札の《スクラップ・エリア》、《スクラップ・スコール》をインフェクト!」

 

《罠解卓上》

IV:0→2

 

「そして手札から通常魔法《波動共鳴》を発動。《通販売員》のレベルを4にする!」

 

《通販売員》

レベル:2→4

 

「そして俺はレベル4となった《通販売員》に、《スクラップ・エリア》と《スクラップ・スコール》をインフェクト。エクストラデッキのリバイバル・モンスターへミューテーション。

 すべての道を繋げる中心点が、今ここにフィールドをかき乱す化身となる。リバイバル召喚! とぐろを巻く輪廻の渦、《ハブ・リスク》!!」

 

《通販売員》

フィールド→墓地

《罠解卓上》

IV:2→0

《ハブ・リスク》

☆4・闇属性・爬虫類族

DEF:0

ATK:?→2700

 

「《ハブ・リスク》の攻撃力はリバイバル召喚時にフィールドに表側表示で存在するカードの数×300になる。

 今フィールドにあるのは合計で9枚だから2700だ」

 《通販売員》の姿が書き代わり、フィールドに現れたのは不気味な蛇。

 《ハブ・リスク》に睨まれた相手はその異質な姿に後ずさりしているが、すぐにその違和感に気づいた。

「守備表示だと?」

「俺が攻撃する必要ないからな。心配しなくても次のターンで終わるからこいつの表示形式なんて気にすんな」

「……次のターンだけで俺たち2人のライフを0にすると?」

「まあ見ていればわかるさ。

 俺は最後の手札をセットしてターンエンドだ」

 ひらひらと見せびらかすようにカードをセットし、すべてのカードを使い切った黄昏。

 これでようやく遊形のターンへと移るわけだが、念には念をと言わんばかりに遊形は伏せていたカードに手を伸ばした。

「エンドフェイズ時、僕はリバースカードオープン《幻影霧剣》。フィールドの効果モンスターを対象に発動。対象になったモンスターは攻撃できず、攻撃対象にならず、効果を無効にする。

 対象にするのは《霞の谷の雷人鬼》だ」

「なっ! そのカードは最初のターンから伏せていたカード。

 このタイミングで発動するだと!?」

「一番効果的なタイミングだからね。それじゃあ遊糸よろしく」

「あいよ。俺はエンドフェイズ時の《ハブ・リスク》の効果を発動。

 フィールドの表側表示のカード2枚を入れ替える。

 入れ替えるのは《王家の神殿》と遊形の《幻影霧剣》だ」

 

《王家の神殿》

フィールド(黄昏)→フィールド(遊形)

《幻影霧剣》

フィールド(遊形)→フィールド(黄昏)

 

 

【遊形】

5/200

-----  

-□□--

【UNKNOWN1】

1/1600

--○○- ◎

--■--

【UNKNOWN2】

2/1300

--○-- ◎

--■--

【黄昏】

0/1600

--○-- ◎

--□--

 

 長い長いカード回しを終えてターンプレイヤーは遊形へ。

 たった1ターンだけだったにも関わらず黄昏の介入により手札は十分。

 黄昏が伏せたカードによってはこのターンに決着をつけることも可能だろう。

「ホント、ここまで見事に手助けされたら頑張るしかないね。

 僕のターン、ドロー!」

 

【遊形】

手札:5→6

 

 ドローしたカードが何なのか、それは遊形以外に知る由もない。しかしまるでそのカードが何なのかわかっているかのように、黄昏はため息交じりに急かす。

「急げよ。今は一分一秒が惜しい」

「うん、これで僕も準備は整った。それじゃあ反撃を始めようか!!」

「僕はカードをセット。そして今セットした《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》を発動!」

「黄昏遊糸によって戻された《王家の神殿》の効果か」

「残念、《シェード・ブリガンダイン》は墓地に罠カードがない場合、セットしたターンに発動することが出来る効果があるんだ。

 大方、遊形が発動してる《宮廷のしきたり》の対策でバウンスに徹してたんだろうが、裏目に出たな」

「そして、このカードも罠モンスター。

 よって守備力300のモンスターとして守備表示で特殊召喚する!」

 

《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》

☆4・闇属性・戦士族

DEF:300

 

 フィールドに鎧の胴体部のようなモンスターが現れるが、そのモンスターにはそれ以上の効果はない。

 とすれば、このモンスターは次へと繋ぐ布石だ。

「僕は《シェード・ブリガンダイン》をリリースしてモンスターをアドバンス召喚!

 さあお披露目だよ、棺を守りし異形の女神《聖獣セルケト》!」

 

《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》

フィールド→墓地

《聖獣セルケト》

☆6・光属性・天使族

ATK:2500

 

 《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》を生贄に呼び出されたのは《王家の神殿》に住まう巨大な蠍。これで天使族だというのだから天使のイメージをぶち壊しているにも程がある。

 ただし見た目通りに効果は残酷非道の一言に尽きる。《王家の神殿》が存在するフィールドでしか姿を維持できないが、戦闘破壊したモンスターを除外してモンスターを倒すたびに攻撃力が500ポイント上昇することができるのだ。

 戦闘破壊をトリガーとする多くのモンスターの効果を封殺し、攻撃力は1体倒すだけで《青眼の白龍》と並ぶ。

 召喚方法こそ今の時代の高速展開に分が悪いが、効果は強力だといえるだろう。

「カードが揃えば案外簡単に出てくるけど、それはどのカードでも一緒か」

 《ハブ・リスク》に負けず劣らず不気味なと息を吐く《聖獣セルケト》は主の指示を待つ。その凶悪な牙は相手モンスターを食らわんとしているが、そこで遊形はまさかの行動に出た。

「僕は《フリント》を《セルケト》に装備」

 

《聖獣セルケト》

ATK:2500→2200

 

 遊形が装備したカードは記憶にも新しい、リリアが使っていた装備魔法だ。

 そのカードは《フリントロック》に装備すれば戦闘破壊耐性を得る装備カードとなるが、他のモンスターに装備させた場合は攻撃力を300ポイント下げて攻撃できなくする拘束効果になる。

 相手に装備するならまだしも自分のモンスターに装備するのは愚策としか考えられない。

 ただし、これだけで終わるなら、だが。

「僕はカードをセットしてバトルフェイズに移行。

 そして今度こそ《王家の神殿》の効果を使ってセットした罠カードを発動!

 僕が発動するのは《イクイップ・シュート》。自分モンスターに装備した装備カードを相手モンスターに装備して、そのモンスターをダメージ計算を行う。

 よって《フリント》を《霞の谷の雷人鬼》に装備してダメージ計算![サクリファイス・イーター]」

「なに、《幻影霧剣》によって《霞の谷の雷人鬼》は攻撃対象にならないのではないのか!?」

「《イクイップ・シュート》は戦闘とダメージ計算を行うだけの効果だからね。

 《幻影霧剣》の効果もすり抜けられるよ」

 

《聖獣セルケト》

ATK:2200→2500

《霞の谷の雷人鬼》

ATK:2600→2300

 

 装備の対象が変わり、それぞれのモンスターの攻撃力が変動する。

 そして《聖獣セルケト》が弱体化した《霞の谷の雷人鬼》へと肉薄する。

 本来なら効果を発動すれば撃退できる数値だが、《幻影霧剣》によって力を失った《霞の谷の雷人鬼》は微かな差で《聖獣セルケト》の捕食対象となってしまった。

「そうはいかない。

 トラップカード《次元幽閉》。これで《聖獣セルケト》は終わりだ!」

「残念だけどそれも無理だよ」

「なに!?」

「さっき遊形が言っただろ?

 《イクイップ・シュート》で行う戦闘は、攻撃宣言をすっ飛ばしたダメージ計算だ。

 そして、《次元幽閉》は攻撃宣言に対して発動するカード。

 つまり、この戦闘に対して《次元幽閉》は使えないってわけだ」

「なんだと……がっ!?」

 

【UNKNOWN1】

ライフ:1600→1400

 

 《次元幽閉》が発動できず、《霞の谷の雷人鬼》は《聖獣セルケト》に捕食される。

 ……その光景は《ハブ・リスク》の攻撃同様にグロテスクな光景だ。リリアなどが見れば怯えていたにちがいない。

 戦闘ダメージによる超過ダメージで発生した衝撃で男は後ろに転がっていく。

 ただしソリッドビジョンではそんなことは起こらないし、遊形はサイコデュエリストではない。

 これが蠍座の象徴するモンスター(セルケト)の力か、はたまた星の守護者(セイクリッド)として目覚めたことによる能力だと黄昏は推察する。

 それが真実かどうかはわからないが、一つの可能性として考えておいて損はないだろう。

 

《霞の谷の雷人鬼》

フィールド→除外

《フリント》

フィールド→墓地

 

 《聖獣セルケト》の効果で《霞の谷の雷人鬼》は破壊後に除外される。

 そして、対象を失った《フリント》は破壊されるが、《幻影霧剣》はその場に残り続けている。

「わかってると思うが、遊形が発動している《幻影霧剣》の自壊は類似効果の《デモンズ・チェーン》同様に《宮廷のしきたり》によって破壊からは守られる」

「そして、モンスターを戦闘破壊した《セルケト》は攻撃力が500ポイントアップする。[サクリファイス・ソウル]」

 

《聖獣セルケト》

ATK:2500→3000

 

「さらに《フリント》は装備モンスターが破壊されることによるルール効果でフィールドを離れた場合はフィールドのモンスターに再装備できる効果がある。

 これを使えば《カステル》との攻撃力差がライフと一緒になるな」

「だ、だが俺が伏せているのは《聖なるバリア―ミラーフォース》だ。

 これを破壊しない限り絶対に突破できない!」

「……なるほど。まー、そのつもりでこっちも戦術立ててるんだけどな」

「僕が《フリント》を装備させるのは《セルケト》だよ」

 

《フリント》

墓地→フィールド

《聖獣セルケト》

ATK:3000→2700

 

「そういうことか……

 その手札が墓地の《イクイップ・シュート》を回収するカードなんだな?

 だが、このターンで決着がつかないのであれば俺のドロー次第で……」

「リバースカードオープン《ギブ&テイク》。俺の墓地のモンスター1体を相手フィールドに守備表示で特殊召喚し、自分フィールドのモンスター1体のレベルを特殊召喚したモンスターのレベル分上げる」

「この期に及んで何をするつもりだ?」

「俺は《ジャンク・コレクター》を遊形のフィールドに守備表示で特殊召喚」

 

《ハブ・リスク》

レベル:4→9

《ジャンク・コレクター》

☆5・地属性・戦士族

DEF:2200

墓地→フィールド(遊形)

 

 黄昏のモンスターが遊形のフィールドに現れるが、守備表示のため攻撃には参加出来ない。

 それでも黄昏の思惑はしっかりと伝わっているようで、遊形は満足そうに頷いた。

「うん、丁度僕がほしかったカードだ。流石だね、遊糸」

「お前に褒められてもうれしくないっての。

 てか、ガキの頃俺とお前が何回タッグ組んでたと思ってんだよ、のんびり屋。

 さっさと決めろ」

「うん、じゃあいこうか。

 《ジャンク・コレクター》の効果を発動! フィールドのこのカードと墓地の通常罠カードを除外することで、除外した通常罠カードの効果を発動する。

 僕は《ジャンク・コレクター》と墓地の《イクイップ・シュート》を除外してもう一度《イクイップ・シュート》の効果を発動!」

 

《ジャンク・コレクター》

フィールド→除外(黄昏)

《イクイップ・シュート》

墓地→除外

 

 《ジャンク・コレクター》が墓地から《イクイップ・シュート》を引っ張り上げ、その効果を発動させる。

 効果は説明するまでもない。

「僕が対象にとるのは《フリント》と《鳥銃士カステル》だ」

 

《聖獣セルケト》

ATK:2700→3000

《鳥銃士カステル》

ATK:2000→1700

 

「これで《ミラーフォース》に引っかからずに《セルケト》の攻撃が通る。

 さあ《セルケト》の攻撃だ。[サクリファイス・イーター]」

「こ、こんな奴らに……がはっ!?」

 

【UNKNOWN2】

ライフ:1300→0

《鳥銃士カステル》

フィールド→除外

 

 《霞の谷の雷人鬼》の時同様、《鳥銃士カステル》も《聖獣セルケト》に捕食されて養分へと変換される。

 超過ダメージでライフをすべて失った男は吹き飛ばされてこのデュエルから脱落。

「これであと一人だ。《フリント》は遊糸の《ハブ・リスク》に装備させてもらうよ」

「好きにしろ」

 

《フリント》

フィールド→墓地→フィールド

《ハブ・リスク》

ATK:2700→2400

 

「そして、モンスターを戦闘破壊したから《聖獣セルケト》の攻撃力がさらに上昇する。[サクリファイス・ソウル]」

 

《聖獣セルケト》

ATK:3000→3500

 

 肥大化した《聖獣セルケト》の攻撃力と《霞の谷の執行者》の攻撃力の差はジャスト1400。

 そして《聖獣セルケト》はまだ《イクイップ・シュート》の効果以外で攻撃を行っていない。

 しかし、男が伏せているのは《次元幽閉》だ。

 先ほどは《イクイップ・シュート》の効果ですり抜けられたが、次はそうはいかない

「はははっ、残念だったな!!

 《次元幽閉》がセットしてある限り《聖獣セルケト》は攻撃できない。

 黄昏遊糸が乱入してきたときはどうなることかと思ったが、勝ち急いだ結果、お前たちは負けるんだ!」

 勝利を確信したのか、男は今までの冷静な対応を忘れて高笑いする。

 しばらくその優越感に浸り笑っていた男は、その後異変に気付いた。

「まさかここまで予想通りの展開になるとはな。

 遊形、その手札の内1枚って《フリント・アタック》なんだろ?」

「もしかして、そこまで予想していたの?

 もうそれ予言の類なんだけど」

「ガキの頃も似たようなことしてただろ。

 どういうわけかお前とのタッグ組んだ時はお互いの行動がそれぞれの望んでいるものになってるんだ」

「いやー、不思議だよね」

「こっちはいい迷惑だ。何がうれしくてお前と息ぴったりなんだよ」

「葵さんとかだとうれしいのかな?」

「……どうしてそうなる」

 このような状況に陥ったと言うのに黄昏たちは絶望していない。

 むしろ勝ちを確信したかのように会話をしていた。

 遊形のフィールドに攻撃できるモンスターは存在せず、伏せカードも存在しない。

 ここから新しいモンスターを出すにしても、遊形のデッキの特性からして不可能だ。

 意味の分からない状況が男の優位性を否定していく。

「ど、どうしてお前たちはそんなに余裕なんだ!

 もう攻撃できるモンスターはいないはずだ!」

「ああ、もう遊形は攻撃できないだろうな。

 そこに関しては安心していいと思うぞ」

「なら、もうターンを俺に渡す以外ないはずだ。

 ほぼ100%遊形遊形は次のターン何もできず俺に負ける!

 俺の手札には《死者蘇生》、墓地に《霞鳥クラウソラス》が眠っている。

 《ハブ・リスク》の攻撃力が0になれば、手札を使い切ったお前も遠からず敗北するだろう!」

「次のターンが来ればな」

「このターンで勝てると言うのか!?」

 自分の優位性をいくら主張しても黄昏たちに焦りは見えない。

 むしろ動揺する男に黄昏は心底呆れた様子で肩をすくめた。

「遊形、時間の無駄だからさっさと終わらせてやれ」

「相変わらず、こういうときの遊糸って容赦ないよね。

 まあ仕方ないか。

 僕は《フリント・アタック》を発動! 《フリント》が装備されたモンスターを1体破壊する。

 破壊するのは遊糸の《ハブ・リスク》だ」

 どこからか行われた爆撃が《ハブ・リスク》を襲う。

 煙が晴れると黄昏のフィールドもモンスターがいなくなってしまった。

 これでは《霞鳥クラウソラス》の効果を使うまでもなく、モンスターを2体揃えるだけで男の勝利が確定してしまう。

「効果を使用した《フリント・アタック》は墓地に送られた後デッキに戻る。

 そして墓地へ行った《フリント》は《霞の谷の執行者》に装備させてもらうよ」

 

《フリント・アタック》

墓地→デッキ

《フリント》

フィールド→墓地→フィールド

《霞の谷の執行者》

ATK:2100→1800

 

「なぜわざわざ《ハブ・リスク》を破壊……まさか!?」

「その様子だと、《ハブ・リスク》の効果知ってるのか。

 ってことは、お前ら神社の俺と大神のデュエル見てたのか?」

「《ハブ・リスク》ってリバイバル・モンスターのプロトタイプだし、どこかで見たのかもね」

「こいつの効果使いづらいから使ってるやついないと思うけどな……

 まーいい。お前が考えている通りだ。

 《ハブ・リスク》は破壊されて墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時かつ、直前のタ-ンに効果を適応させたカードが2枚存在する場合、フィールドの表側表示のカードの数×300ポイントのダメージを相手に与える効果がある。

 《王家の神殿》と《幻影霧剣》は今もフィールドに健在。そしてフィールドの表側表示のカードは合計で6枚。1800のバーンダメージに対してお前のライフは1400」

「あ、あああああっ!!」

「……僕はこれでターンエンド」

 遊形の宣言でフィールドに表側表示で存在するカードから牙が生え、男に照準が向けられる。

 止めるすべがない男はただ射出される牙を受けるしかなかった。

 

【UNKNOWN1】

ライフ:1400→0

 

 男のライフを0にするが、いまだデュエル終了のブザーは鳴らない。

 これはバトルロワイアル。自分以外が倒れるまで終わることのないデュエルだ。

「さて、俺のターンだ」

「ちょっ、遊糸!?」

「嘘だよ。お互いがデッキ引き抜けば強制終了するんだからそうするだけだ」

「遊糸ってたまに冗談かどうかわからないよね」

 2人のデュエルディスクがデッキを認識できなくなり、無効試合と判断されてソリッドビジョンが消滅していく。

「あ、交換したカード元に戻さないと」

「《スクラップ・ファクトリー》はそのままでいいぞ」

 《エクスチェンジ》や《ギブ&テイク》によって移動していたカードはデュエル中の処理でほとんどが持ち主に返されている。唯一遊形のデッキボトムに眠っていた《スクラップ・ファクトリー》だが、その返却を黄昏は拒否する。

「そのカードは元々リリアがお前のために作ったカードだ。

 俺が借りてたのもお前に会えるかもしれないからだったしな」

「でもスクラップなら遊糸の方が……」

「遊形、俺が使ってるデッキが元は誰のデッキなのか、忘れたなんてことはないだろ?」

「…………………………」

 黄昏の静かな問いにしばらく無言を貫くが、やがて小さく頷いた。

「まあ、今のお前のデッキには入れるメリットないだろうけどな。

 このいざこざが終わった後にでも使ってやれ」

「いざこざが終わるまでは遊糸が持っていてもいいんじゃないかな?」

「また黙ってどこか行かれたら面倒だから今渡しておく。

 それに、俺の方はいざって時には奥の手がある」

「奥の手? それって……」

「それより、早くD・ホイールに乗れ。

 七波と大神のところに向かうぞ」

「あ、うん。ということは大神さんたちの所が本命?」

「一番守りが薄いのは確かだ。

 神崎とリリアのところは神崎がグールズの部下を招集して数で押してるらしい。相手の星の守護者(セイクリッド)はいないみたいだから大丈夫だろ」

「わかった、急ごう

 ……この人たちはどうする?」

「とりあえず不審人物ってことにしてセキュリティに通報した」

「仕事早いね」

「いいから急げ」

 遊形がD・ホイールに乗りアクセルを回す。

 モーメントの回転音を確認した2人は急いでその場を後にした。




今回のデュエルは正直《イクイップ・シュート》の攻撃宣言しない攻撃をやりかっただけかも……
ただ遊戯王あるあるだと思いますが、普段使わないカードはコンマイ語を理解するのに時間がかかりますね。調べるの好きなので苦ではないんですけど
《イクイップ・シュート》とか使ったら面白そうだけどOCGだと使う枠がない
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