遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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ほとんどエタってましたがちまちまとストック貯めて今年からまたゆっくりと更新していきますので、どうか温かい目で見守っていただければ幸いです


※このデュエル自体書き終えていたのがVRAINS放送前で、今日に至るまでの制限改定でこのデュエルのキーカードが禁止カードになってしまいました。
制限解除されるのを待つかデュエル内容変えるか悩んだんですが、今後の更新までのラグなども考えて以後こういうことがあってもある程度の修正はしても無理な部分は開き直っていきます。
(なんなら2023年1月の制限改正でまた面倒な感じになっちゃったので……)


最速必殺の行射

「「デュエル!!」」

 

【天宮】VS【葵】

 

お互いにデッキからカードを5枚ドローし、2人のデュエルが開始される。

 それに呼応するように周囲に僅かな変化が起こった。

「透明な壁、か……?」

 目を凝らさなければわからないような半透明な壁が、まるでデュエルする二人の逃げ場を封鎖するように現れる。そして周囲には彼ら3人しかいないはずなのに、こちらを監視するような気配を四方から感じられた。その居心地の悪い空間に黄昏は眉をひそめ、その隣にいる葵も身震いしていた。

 見た目こそ違うが、その雰囲気は以前葵たちを襲った蟹座の星の守護者(セイクリッド)が展開した空間とどことなく似ている。

 これがセイクリッド同士の戦いのときに発生するものなのか、それとも何か別の要因なのか、今の黄昏たちには知るすべがない。

『ふぃ……ひどい目にあったッス』

 そこへ、《ジャンク・アーチャー》の矢によって異次元へと飛ばされていた《スクラップ・ゴブリン》が黄昏の元へと戻ってきた。もともと《ジャンク・アーチャー》の効果は一時的な除外であったが、タイミング的にデュエルが始まったことでサイコデュエリストとしての力が一度リセットされたのかもしれない。

「《ゴブリン》、よかった無事だったんだな」

『もうしばらく除外はこりごりッスよ』

「心配しなくても相手に除外されない限りなかなかないだろうよ。しばらく休んでてくれ」

 身を挺して守ってくれた相棒を労いつつ、視線は少女の背中へと向けの。

 普通であれば自分のターンが来るまでフィールドを整えることはできないが、彼女が主軸として扱う《水精鱗》は起点さえあれば相手のターンでも次々に展開することができるデッキだ。

 だからこそ最初の手札というのは非常に重要になるため、彼女の手札がどうなのか気になったのだが、その表情は少し曇っている。

 何事かと背中越しにその手札を確認すると、思わず黄昏も眉をひそめてしまう。

 七波の最初の手札は《ドラゴン・アイス》、《水精鱗―アビスグンデ》、《水精鱗―アビスディーネ》、《浮上》、《融合》の5枚。

 全く動けないというわけでもないが、その手札にはリクルート、サーチの手段が一切揃っていない。最悪とまではいかなくてもまずい状態だった。

 対して、自らを射手座と名乗った一矢は不気味な笑みを浮かべて手札を1枚切った。

「ボクはまず《手札抹殺》を発動。

 お互いに手札をすべて捨て、捨てた枚数と同じ数カードをドローする」

 

【天宮】

手札…4→0→4

【葵】

手札…5→0→5

 

「手札交換……そっちも手札が悪かったってことかな?」

 などと言いながらも、こちらも願ったり叶ったりだ、などと楽観的に考えたことを葵は早々に後悔することになった。

 一矢の手札から墓地へ送られたカード。そのほとんどが同じカテゴリのモンスター群だったのだ。その名は――

「インフェルニティ……」

 葵の中でもはや手遅れに近い警笛が鳴り響く。

 天宮の墓地に送られたカードには、すでに必須となるカードのほとんどが揃っていた。あと1枚そろえばインフェルニティの驚異的なほどの展開力が牙を見せることだろう。

「っ、墓地へ送られた《アビスグンデ》の効果を発動だよ!

 墓地の他の水精鱗モンスターを1体特殊召喚する。私は同じく手札から捨てられたばかりの《アビスディーネ》を守備表示で特殊召喚!」

 

《水精鱗―アビスディーネ》

☆3・水属性・水族

DEF:200

 

墓地へと繋がるゲートからフィールドに降り立った、クリオネのような下半身を持つ女性モンスター。その効果は主にランク3のエクシーズへ繋げる起点となる。

 新しく加わった手札にもサーチ効果のあるモンスターはいない。だとしても、今できることを全力で行うべく葵は動く。

「《アビスディーネ》の効果。《水精鱗》の効果で特殊召喚に成功した時、墓地のレベル3以下の《水精鱗》モンスターを1体特殊召喚できる。

 私は墓地の《アビスグンデ》を特殊召喚!」

 

《水精鱗―アビスグンデ》

☆3・水属性・水族

DEF:800

 

「……終わりカ?」

 あざ笑うように問われるも、葵には頷く以外に何もできない。

 この一連の処理だけを見ても彼女手札がかなり厳しいことは明らかだろう。

 だが……

「どうしてここまでデッキの周りが悪いのか? という顔だナ?」

「……何か理由があるって言いたいのかな?」

「別にボクが何かしたわけじゃなイ。悪いのはお前自身だからナ」

「私の、せい……?」

「セイクリッドの加護を奪うのはデッキを奪う以外にも方法があるということダ。

 ジンが言っていたゾ。()()()()()()()()()()星の守護者(セイクリッド)を負かせば相手の戦力を削ぐことができるってナ。

 どういう原理かまではボクも知らないが、お前はすでに1度ジンに負けているんだろウ?

 デッキは死守したおかげで首の皮1枚は繋がっているようだが、今のお前のデッキは加護を得ていないデッキを扱うただの子供というわけダ」

 実質の戦力外通告だナ、と結論付けられたが、なんともオカルトで現実味のない話だ。しかし葵自身、思い当たる節がないわけでもないため強く否定できずにいた。

 もしかすると、以前の《リチュア・ディバイナー》の効果を外したことさえ、セイクリッドの加護が弱まったからという可能性すらある。

 仮にこの嘲笑うように語る青年の言葉が本当であれば、今の葵がこのままデュエルを続けるのはかなり分が悪った。

「……いや、むしろチャンスだよ」

「は?」

「今のこの状況、逆に私が貴方に勝てばそっちの戦力を削げるってことでもあるよね?」

 ハッタリでもいい。心だけは折れていけないと自分に言い聞かせて葵は相手を正面に見据える。

 その姿を見た天宮は呆れた様子でため息を吐いた。

「残念ながらお前はボクに勝てなイ。なぜなら――」

 不気味に笑う男は、1枚の手札を静かにフィールドへ召喚する。

「射手座の弓は、すでに絞られていル」

 天宮のフィールドに現れた1体のモンスター。甲冑に身を包んだそのモンスターは着地するとともに弓を構え、攻撃のできない1ターン目だというのに矢をつがえる準備を進めていく。

 

《アチャチャアーチャー》

☆3・炎族・戦士族

ATK:1200

 

「召喚したのは《アチャチャアーチャー》。こいつは召喚時、相手へ500ポイントのダメージを与えル!」

「っ!?」

『マスター!』

 

【葵】

ライフ:4000→3500

 

《アチャチャアーチャー》が矢をつがえた直後、矢じりが唐突に着火。その光景に《アチャチャアーチャー》自身が驚き、その拍子に矢が放たれる。

 闇のデュエルのダメージは精霊のカードである《エリア》によって軽減こそされるものの、敵対しているのはサイコデュエリスト。そのソリッドビジョンは現実となり葵へ襲い掛かる。

 そして悪いことに相手のサイコデュエリストとしての力はかなりのものらしい。闇のデュエルのダメージを抑えてもなお、その一射は凶器ともいえる破壊力を有していた。

 とっさに身体をひねることで辛うじて直撃は避けたが、目標を失った矢は彼女の後方の道路を大きく削る。

「七波!?」

「大丈夫だよ。……けどこれ、受けたらタダじゃ済まなそうだね」

 直撃すればどうなるのか容易に想像できる威力に、少女は額に冷や汗をにじませて表情を引きつらせる。

 それでも心が折れることはない。一度だけ手札を確認したのち、葵は再び一矢へと視線を向ける。

「運良く避けられたカ。だが、そう何度も避けられると思うなヨ。

 ボクは手札を1枚捨て、《ワン・フォー・ワン》を発動ダ!

 デッキからレベル1のモンスター、《インフェルニティ・ミラージュ》を特殊召喚すル!」

 

【天宮】

手札…2→1

《インフェルニティ・ミラージュ》

☆1・闇属性・悪魔族

ATK:0

 

呼び出されたのは民族衣装に身を包んだ不気味なモンスター。そして、この瞬間インフェルニティのキーカードがすべて揃ったことを表している。

 あとは手札0の状況を作り出すだけで相手のデッキは一気に回りだすことだろう。

「ボクは最後の手札をセット」

「……ハンドレス」

 あの1枚が処理できずでハンドレスが成立しない、などというわずかな希望もあっさり打ち砕かれた。

 葵の手札に《エフェクト・ヴェーラー》のような効果無効の手札誘発は、ない。

「止める術はなさそうだナ。ならボクは《インフェルニティ・ミラージュ》の効果を発動!

 フィールドのこのカードを墓地へ送り、墓地の他の《インフェルニティ》モンスターを2体特殊召喚すル。

 《インフェルニティ・デーモン》と《インフェルニティ・ネクロマンサー》を蘇生!」

 

《インフェルニティ・ミラージュ》

フィールド→墓地

《インフェルニティ・デーモン》

☆4・闇属性・悪魔族

ATK:1800

《インフェルニティ・ネクロマンサー》

☆3・闇属性・悪魔族

DEF:2000

 

《ミラージュ》と入れ替わるようにして現れたのは、ヤギの頭蓋骨のようなものを被る悪魔とボロボロのローブを纏った悪魔。そしてこの2体こそ《インフェルニティ》の要とも言えるモンスターたちだ。

「そして、ハンドレスの状態で《インフェルニティ・デーモン》特殊召喚された時、デッキから《インフェルニティ》カードを1枚サーチできル。

 サーチするのはもちろんインフェルニティの要、《インフェルニティガン》ダ! 」

 

【天宮】

手札:0→1

 

《インフェルニティ》を知るものならば見慣れた展開が続き、そのまま《インフェルニティガン》が発動される。

 フィールドに現れたカタパルトのような建造物は、自身のメインフェイズに手札から《インフェルニティ》モンスターを1体墓地へ送ることでハンドレスを加速させるカード。

 ただし、その神髄は他にある。

「そして《インフェルニティ・ネクロマンサー》はハンドレスの時、墓地の《インフェルニティ》モンスターを1体特殊召喚できル。

 《インフェルニティ・デストロイヤー》を蘇生ダ! [リターン・オブ・インフェルノ]」

 

《インフェルニティ・デストロイヤー》

☆6・闇属性・悪魔族

ATK:2300

 

《インフェルニティ・ネクロマンサー》の描く魔法陣により現れる巨体の悪魔。墓地肥やしをしていたとはいえ、《インフェルニティ・ミラージュ》からここまでのモンスターがいとも簡単にフィールドに展開されてしまった。

 デッキによってはここからさらにシンクロやエクシーズへ繋げて展開していくのだが、通常召喚権を消費してまで《アチャチャアーチャー》を召喚した一矢の場合はどのように展開していくのか見当もつかない。

「これでおおよその準備は整っタ。さあ、これでお前の未来が決まル。ボクはセットしてあった《モンスター・スロット》を発動!

 自分フィールドのモンスター1体と同じレベルのモンスターを墓地から除外し、その後1枚ドロー。ドローしたカードが最初に選択したモンスターと同じレベルでれば特殊召喚すル。

 ボクが選択するのはレベル4の《インフェルニティ・デーモン》、そして除外するのは同じくレベル4の《アマゾネスの射手》ダ!」

「《アマゾネスの射手》……!?」

「ならあいつのデッキの主軸は……!」

 

《アマゾネスの射手》

墓地→除外

 

《モンスター・スロット》のコストで除外されたカードは、自分のモンスター2体をコストにバーンダメージを与える戦士族モンスター。その最大の特徴は、効果に1ターン中の制限がないことだろうか。

 あの大神が一瞬でやられた訳も納得だ。もし今みたいに先攻を一矢が取っていたのであればインフェルニティによる展開力を使って先攻1ターンで決着が付くことも可能なのだから。

「そしてカードを1枚ドロー!」

 

【天宮】

手札:0→1

 

今の時点でフィールドには4体のモンスター。そして発動された《インフェルニティ・ガン》、レベル3のモンスターは2体存在していて、キーカードは除外。

 1ターンキルの準備は着実に整っている。もしここでモンスターを特殊召喚する術を引かれてた場合、()()()()でも葵の敗北はほぼ確定と言ってもいい。

 固唾を飲んでそのドローを見守る2人の前で一矢は引いたカードを確認。そのカードをフィールドへ……セットした。

「ドローしたのはモンスターカードではなかったタ。だが、そのままフィールドにセットすることで再びハンドレスは完成すル」

 モンスターカードではなかったとはいえ、天宮に落胆の様子はない。

 元々《アマゾネスの射手》を除外することが目的であり、このドローはハンドレスが崩れなければどうでもよかったのだろう。

「さあ、行くゾ!

 ボクはレベル3の《アチャチャアーチャー》と《インフェルニティ・ネクロマンサー》でオーバーレイ!

 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!

 次元の狭間に潜み、虚空より出でる道を切り開く魔物! 《虚空海竜リヴァイエール》」

 

《虚空海竜リヴァイエール》

★3・風属性・水族

DEF:1600

 

「《リヴァイエール》の効果! オーバーレイユニットを1つ取り除き、自分または相手の除外されているモンスターを自分フィールドへ特殊召喚すル!

 ボクが特殊召喚するのはさっき除外した《アマゾネスの射手》ダ! [ディメンショナル・リフト]」

 効果を使い切り役割を終えたモンスター二体を利用して新たに表れたのは次元の狭間を操る翼竜。

 その咆哮は空間にヒビを入れ、まるでガラスが割れるようにして開かれた暗黒の世界から《アマゾネスの射手》を引きずり出し煉獄の悪魔たちが蔓延るのフィールドへと呼び込んだ。

 

《虚空海竜リヴァイエール》

ORU:2→1

《アマゾネスの射手》

☆4・地属性・戦士族

DEF:1000

除外→フィールド

 

「覚悟は出来ているカ?

 ボクは《アマゾネスの射手》の効果を発動! 自分フィールドのモンスターを2体リリースすることで相手へ1200ポイントのダメージを与えル!

 フィールドの《インフェルニティ・デーモン》、《虚空海竜リヴァイエール》をリリースして1200ポイントのダメージ! [アマゾネス・シュート]」

 

《インフェルニティ・デーモン》、《虚空海竜リヴァイエール》

フィールド→墓地

 

モンスター2体の魂をその弓矢に宿し、《アマゾネスの射手》が放った一撃は寸分の狂いもなく七波の心臓へと伸びていく。たった500のダメージでも道路を削るほどの威力。その倍以上のダメージなど受ければ致命傷なのは火を見るより明らかだ。

『せめて実体のダメージだけでも……!』

 それでもただ見ているわけもなく、迫りくる一撃を半透明な姿で現れた《水霊使いエリア》が受け止める。

 だがどれだけ頑張っても彼女が受け止められるのは闇のデュエルによるダメージのみ。サイコデュエリストの力によるダメージの方は《エリア》の身体をすり抜ける。

「――させねぇよ」

 矢が葵の身体を射抜く直前、それを阻むように伸ばされた腕によって矢は軌道を変え、彼女の背後の道路を数メートル抉った後に消滅した。

 矢を弾いたそれは蛇の鱗が浮かび上がった人ならざる腕。その腕が誰のものなのかは考えるまでもない。

「黄昏……くん?」

「今の俺はこういう手助けしかできないから、勝手に出しゃばらせてもらうぞ」

 決定事項と言わんばかりに宣言する黄昏は葵の方を見ることなく、一矢と彼が従える《アマゾネスの射手》の姿を見据えている。

「……なるほどナ。ジンがお前のことは警戒しておけと言っていたが、そういう意味カ」

「警戒される程度には認知されてたか。そりゃ光栄だな」

 鱗を纏った腕を軽く振りながらあざ笑うように返す黄昏。

 通常の道路より頑丈に作られているデュエルレーンを抉るほどの威力を持つ攻撃を防いだにも拘わらず、その腕に傷らしい傷は全くついていない。

「サイコダメージとしてはかなりの威力なんだろうけど、闇のデュエルで発生するダメージに比べればどうってことないな」

「まあいいサ。サイコパワーによるダメージは副産物でしかなイ。どちらにしろライフさえ0にできれば目的は達成されル」

 

【葵】

ライフ…3500→2300

 

天宮の言う通り、ダメージの実体化とデュエルの勝敗は直結しているわけではない。だが、ダメージでデュエルが進行できなければ元も子のないのも事実。

「七波、ダメージは俺と《エリア》でどうにかする。アンタはデュエルだけに集中しろ」

「いや、でも……っ!!」

「文句があるならデュエルが終わった後だ」

 取り付く島もなく会話は打ち切られる。もはやこの状況をどうにかするには葵が早急にこのデュエルを終わらせるほかになかった。

「後で覚えておいてよ、黄昏君」

 目の前の頑固者へ向け、ささやかな文句を吐いた葵はフィールドへ視線を戻した。

 その間ご丁寧に待っていた青年は鼻で笑ったのちにデュエルを再開させる。

「手札誘発がないなら続けるゾ。

 ボクは発動されている《インフェルニティガン》を墓地へ送って効果を発動!

 墓地の《インフェルニティ》モンスターを2体特殊召喚すル! 蘇生するのは《インフェルニティ・デーモン》、《インフェルニティ・ネクロマンサー》ダ!」

 

《インフェルニティ・デーモン》、《インフェルニティ・ネクロマンサー》

墓地→フィールド

 

天宮のフィールドにあったカタパルトはフィールドに2体のモンスターを射出し、その役割を終えたといわんばかりに自壊する。

 そして再度現れた、インフェルニティデッキの展開の要。

 なおもハンドレスが維持できている状況で呼び戻された悪魔たちは先ほどと同様にその効果でデッキを回していく。

「まずはハンドレス状態で《インフェルニティ・デーモン》が特殊召喚されたことで、デッキから《インフェルニティ》カードを手札に加えル。

 ボクがサーチするのは《インフェルニティ・ブレイク》。そしてセットすることでハンドレスを維持すル!」

 セットされたのは、手札が0の場合に墓地の《インフェルニティ》カードを除外することで相手フィールドのカードを1枚破壊することができる罠カード。

 墓地コストがあるがここまでのループコンボによってその条件は容易に満たしている。勝敗の決め手とまではいかないが、残しておいて厄介なカードであることに変わりなかった。

「そして追撃ダ。もう一度《アマゾネスの射手》の効果発動!

《インフェルニティ・デーモン》と《インフェルニティ・デストロイヤー》をリリースして1200ポイントのダメージ! [アマゾネス・シュート]」

 

《インフェルニティ・デーモン》、《インフェルニティ・デストロイヤー》

フィールド→墓地

【葵】

ライフ:2300→1100

 

再度放たれた《アマゾネスの射手》の一撃は再び《エリア》と黄昏によって阻まれる。けれどもライフは確実に削られ、これで1ターンの間に合計2900のダメージ。

 まだ1ターン目だというのにもう後がない。

「まだ終わりじゃないゾ!

 ハンドレスのため、ボクは《インフェルニティ・ネクロマンサー》の効果で再び《インフェルニティ・デーモン》を蘇生すル! [リターン・オブ・インフェルノ]」

 

《インフェルニティ・デーモン》

墓地→フィールド

 

「そしてハンドレスで《インフェルニティ・デーモン》が特殊召喚されたことでもう一度効果を発動すル!

 ボクがサーチするのは《インフェルニティ・リフレクター》。そして――」

「待って! 《インフェルニティ・デーモン》の特殊召喚に合わせて墓地の《ドラゴン・アイス》の効果を発動するよ!

 相手がモンスターの特殊召喚に成功した時、手札を1枚捨てることで手札または墓地からこの子を特殊召喚する!

 私は手札の《海皇の狙撃兵》を捨てることで《ドラゴン・アイス》を蘇生!」

 せめてもの抵抗で声を張り上げて相手のコンボに割って入る七波。

 《インフェルニティ・デーモン》の特殊召喚に反応し、ドラゴンと言うよりは竜の髑髏を被った悪魔という方がしっくりとくるモンスターが、翼を羽ばたかせて墓地から葵のフィールドへと舞い降りる。

 

【葵】

手札:5→4

《ドラゴン・アイス》

☆5・水属性・ドラゴン族

DEF:2200

【天宮】

手札:0→1

 

「そして《ドラゴン・アイス》の発動コストとして墓地へ送られた《海皇の狙撃兵》の効果も発動!

 水属性のコストとして墓地へ送られた場合、相手フィールドのセットカードを1枚破壊できる!

 私が破壊するセットカードはさっき伏せられた《インフェルニティ・ブレイク》だよ!」

 墓地へと続くゲートが一時的に開かれ、その隙間から銃口のみを覗かせた《海皇の狙撃兵》は、七波の指示に従い先ほどセットされたばかりのカードを見事に撃ち抜いた。

 

《インフェルニティ・ブレイク》

セット→墓地

 

「……除去手段を持っていたカ。《リフレクター》よりもダメ押しでもう1枚《ブレイク》をサーチしておくべきだったカ……?

 まあ、だとしてもお前の負けもう確定していル!

 ボクはさっきサーチした《インフェルニティ・リフレクター》をセット!」

 《インフェルニティ・リフレクター》は自分フィールドの《インフェルニティ》モンスターが戦闘で破壊された際に、そのモンスターを蘇生しつつ相手へ1000ポイントの効果ダメージを与える罠カード。

 ここまでの展開から推測するに、一矢のデッキは展開力を重視しているため火力の高い《インフェルニティ》モンスターは少なくビートダウンをしてくる可能性は低いものの、あの罠カードがあるのなら自爆特攻によっても葵のライフを削ることができる。

 仮に《アマゾネスの射手》で射出し損ねた《インフェルニティ》モンスターがいたとしても、ダメージ優先で安易に攻撃するのは難しくなった。

 それでも、《インフェルニティ・ブレイク》を処理できたのは上出来と言ってもいいはずだろう。

「さあこれで終わりダ!

《アマゾネスの射手》の効果で《インフェルニティ・デーモン》、《インフェルニティ・ネクロマンサー》をリリースして1200のダメージ! [アマゾネス・シュート]」

 再三引き絞られる《アマゾネスの射手》の弓。

 与えるダメージ1200ポイントに対し、残る七波のライフは1100ポイント。ダメージは黄昏と《エリア》で無効化出来るとしても、このままでは葵のライフが尽きるが……

「ダメージを与えるモンスター効果が発動した時、手札の《クリアクリボー》を捨てることでその発動を無効にするよ!」

 

【葵】

手札:4→3

 

手札のカードを1枚切ることでフィールドに《クリアクリボー》の幻影が出現。マトリョーシカのように身体を無数に分裂させつつ《アマゾネスの射手》の放った矢を受け止め、葵に届く前に必殺を一撃を完全に相殺することに成功した。

「《クリアクリボー》、だト!? なんだそのカード、見たことがなイ!

 いやそれ以前にそんなカードを使っていたという情報はないし、そもそもそのカードは光属性の天使族じゃないカ!

 水属性でもなければ水精鱗のサポートカードを共有できる魚族、水族、海竜族ですらなイ! なぜそんなシナジーの薄いカードをデッキに入れていル!?」

 墓地へと送られた《クリアクリボー》のステータスを確認し、一矢はここにきて明らかな動揺を見せる。

「確かに、このデッキもアイドル用のと同じく水属性に統一してあるよ。

 それを断言できるぐらいの『情報』がどこから手に入れたのか気になるところだけど、それはこの際置いておけばいいかな。

 このカードはね、黄昏君のデュエルディスクに残されてたものなんだよ」

「黄昏遊糸の、だト……!?」

 その言葉で射殺すような殺気が黄昏の方へと向けられる。対する黄昏はそんな殺気など気にした様子もなく、むしろしてやったりと言わんばかりににやりと笑う。

「まあ《クリアクリボー》自体はリリアが『嫌な予感がする』って言うから借りてたものなんだけどな。

 ……そんなに睨むなよ。デュエルが始まる前にデッキに加わってるんだからルール上は問題ないだろうよ?」

「ぐ……っ!! このデュエルの次はお前の番ダ! 覚悟しておケ!!」

 黄昏の言っていることは最もなのだが、わざとなのか相手を煽るように語るせいで相手の神経を逆なでし続ける。

 そのまま吐き捨てるように一矢がターンエンドを宣言したことで、永遠にも等しかった1ターン目が終了した。

 

【一矢】

0/4000

--△--  

--■■-  

【葵】

3/1100

-△△--  

-----  

 

「私のターン……」

 

【葵】

手札…3→4

 

ギリギリ耐えしのいだとはいえ彼女のライフがデッドライン目前なのには変わりない。

 それに直撃はすべて免れたとはいえ、闇のデュエルとサイコパワーによって発生するダメージの脅威は彼女の精神を消耗させている。

 ただデュエルを続けるだけでも普段のデュエル以上に疲弊していくはずだ。

「……そんなに心配しなくても大丈夫だよ二人とも。いつも通り自分のデュエルを進めるだけだから」

 だからそのまま見てて、と言わんばかりに釘を刺された。

 どうやら黄昏や《エリア》の気持ちを察したらしい。

「さて、じゃあいくよ。私は手札から《下降潮流》を発動!

 自分フィールドのモンスター1体のレベルを1~3から任意のレベルへ変更する。

 私は《ドラゴン・アイス》のレベルを3へ変更!」

 

《ドラゴン・アイス》

レベル:5→3

 

「これでフィールドにレベル3のモンスターが3体。

 私はレベル3の《アビスグンデ》、《アビスディーネ》、《ドラゴン・アイス》でオーバーレイ。

 3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚!

 その渦巻く海流の加護にて目標を穿て! 《トライエッジ・リヴァイア》!」

 

《トライエッジ・リヴァイア》

★3・水属性・海竜族

ATK:1800

 

3体のモンスターを束ねて現れた、巨大な三叉鉾の得物を携えたモンスター。

 その効果はORUを1つ消費することで相手モンスター1体の効果を無効にしつつ攻撃力を800ポイント下げるというもの。

 《アマゾネスの射手》は守備表示であるためその効果は発揮されないが、それでも葵が数ある選択肢からこのモンスターを選択したのにはもちろん理由がある。

「バトル! 《トライエッジ・リヴァイア》で《アマゾネスの射手》を攻撃。[トライデントウォータースパウト]」

 得物を握り直し、得物を標的へと投擲する。

 その凶悪な得物に貫かれた《アマゾネスの射手》は背後に生まれた時空の狭間へと飲み込まれていく。

 

《アマゾネスの射手》

フィールド→除外

 

「オーバーレイユニットを使わず、戦闘破壊したモンスターを墓地じゃなくて除外する効果なわけか」

「そういうこと。これでループバーンの心配は少しは遠のいたんじゃないかな」

 もちろん《リヴァイエール》による帰還等の可能性は残っているが、墓地から蘇生する手段に比べれば除外から帰還する手段は少ない。再びフィールドに現れる可能性は低いはずだ。

「……ふぅ、私はこのままターンエンドだよ」

 多少なりとも戦況を元に戻せたことに胸をなでおろす葵。しかし、手札には未だうまく回るキーカードは来ない。

 

【一矢】

0/4000

-----  

--■■-  

【葵】

3/1100

--○--  

-----  

 

「……ケヒッ」

 ハンドレスの影響で手札はなし。そしてフィールドには今は効果を使えない《インフェルニティ・リフレクター》と正体不明のセットカード。

 《アマゾネスの射手》が除外されてダメージソースを失ったにも関わらず、その不気味な笑みが崩れることはない。

「セットカードなし、ということは《手札抹殺》で交換してもなお手札はあまりよくないんだナ?

 さっきは予想外のカードに焦ったが、やはりお前自身はセイクリッドの加護を受けていないということダ!!

 ボクのターン、ドロー!」

 

【天宮】

手札:0→1

 

「……ボクはカードをセット。

 そしてセットしていた《リビングデッドの呼び声》を発動すル。

 蘇生するのは《インフェルニティ・デーモン》!」

 

《インフェルニティ・デーモン》

墓地→フィールド

 

《モンスター・スロット》の時にドローしてセットしていたカードはモンスターを蘇生するカードだったらしい。それにより再三墓地からよみがえったインフェルニティのキーカード。

 ドローしたカードをセットしているため一矢は未だハンドレスを維持している。よって……

「ハンドレスで《インフェルニティ・デーモン》の特殊召喚に成功した場合、デッキから《インフェルニティ》カードを手札に加えられル。

 ボクがサーチするのは《インフェルニティ・アーチャー》ダ!」

「ハンドレスの状態ならダイレクトアタックできるモンスター……! さすがにそれをサーチさせないよ!

 私は《トライエッジ・リヴァイア》の効果を発動! オーバレイ・ユニットを1つ取り除いて、エンドフェイズ時までモンスター1体の効果を無効にし、攻撃力を800ポイントダウンさせる!

 私は《インフェルニティ・デーモン》にその効果を適応! [チェーン・リヴァイア]」

「っ、七波待て!」

「え……?」

 何かに気づいた黄昏が制止するも時すでに遅く、《トライエッジ・リヴァイア》が葵の指示に従いその効果で《インフェルニティ・デーモン》の効果を無効化してしまった。

 

《トライエッジリヴァイア》

ORU:3→2

《インフェルニティ・デーモン》

ATK:1800→1000

 

「ど、どうしたの黄昏君?」

「いや、確信があったわけじゃないんだが、あいつ《トライエッジ・リヴァイア》の効果を誘ったような気がしてな……」

 もちろん《インフェルニティ・アーチャー》をサーチされるのは阻止できるなら阻止しておいた方がいい。

 だがそれ以上に危険なものを一矢が狙っていると、デュエリストとしての勘が訴えかけているのだ。

「その通りだ、黄昏遊糸。ボクの本命は《インフェルニティ・アーチャー》ではなイ。

 ボクはさっきセットした《調律》を発動! デッキから《シンクロン》チューナーを手札に加え、その後デッキトップを墓地へ送ル。

 サーチするのは《ジャンク・シンクロン》ダ!」

 

【天宮】

手札:0→1

 

「《ジャンク・シンクロン》……?」

 サーチされたのは今までの一矢のデッキとはテーマが合うのか怪しいモンスター。

 確かに優秀なチューナーではあるが、彼のデッキは低レベルが墓地に落ちやすい構築にはなっていないはず。わざわざデッキ枚数を圧迫してまで投入するチューナーとは思えなかった。

「……しまっ!?」

「《調律》の効果によりデッキトップを墓地ヘ。墓地へ送られたのは……《インフェルニティ・リローダー》ダ。

 そして《ジャンク・シンクロン》を召喚すル!」

 

《ジャンク・シンクロン》

☆3・闇属性・戦士族

ATK:1300

 

「《ジャンク・シンクロン》は召喚に成功した時、自分の墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体を、効果を無効にして守備表示で特殊召喚できル。

 蘇生するのはさっき墓地へ送られた《インフェルニティ・リローダー》ダ!」

 

《インフェルニティ・リローダー》

☆1・闇属性・戦士族

DEF:0

墓地→フィールド

 

《ジャンク・シンクロン》の召喚に連鎖してフィールドへ現れる新たな《インフェルニティ》モンスター。

 その効果はハンドレス状態の時にカードをドローし、そのカードがモンスターならレベル×200ポイントのダメージを相手に、それ以外なら500ポイントのダメージを自分が受けるロシアンルーレットだ。

 幸い《ジャンク・シンクロン》の蘇生では効果は無効化されているため脅威ではないが、これによりレベル7かレベル8のシンクロモンスターへと繋げることができる。

 だが、《インフェルニティ・リローダー》の特殊召喚はあくまで《ジャンク・シンクロン》を召喚する流れで生まれた副産物であることは直感できた。

 デュエル開始早々にインフェルニティと《アマゾネスの射手》によるループバーンが印象的すぎて記憶から抜け落ちていたが、あくまでループバーンは射手座の加護を使って行われる、早急に決着をつけるための手段でしかない。

 つまり、まだ一矢の切り札ともいえるモンスターはこの場に現れていない。

 そして黄昏たちはデュエルが始まる前にすでに彼の切り札を目の当たりにしている……!

「ボクはレベル3の《ジャンク・シンクロン》で、レベル4の《インフェルニティ・デーモン》をチューニング。

 その渾身の一射はあらゆる存在を次元の狭間へ誘う一撃、シンクロ召喚! 放て、《ジャンク・アーチャー》!」

 

《ジャンク・アーチャー》

☆7・地属性・戦士族

ATK:2300

 

オレンジを基調とした鎧を身に纏った弓兵。その兜の奥から覗かせている目は今の状況も相まって不気味な雰囲気を放っている。

「《ジャンク・アーチャー》の効果を発動!

 1ターンに1度、フィールドの相手モンスター1体をエンドフェイズまで除外すル」

「私の《トライエッジ・リヴァイア》の効果はもうこのターンは使えない……」

「そういう風にボクが誘導したからナ! ボクが除外するのは《トライエッジ・リヴァイア》ダ! [ディメンジョン・シュート]」

 

《トライエッジ・リヴァイア》

フィールド→除外

 

《ジャンク・アーチャー》の放った一射は《トライエッジ・リヴァイア》に直撃した後、その場所を起点に空間を歪ませてモンスターを異次元へと吹き飛ばした。

 この効果で除外されたモンスターはエンドフェイズに同じ表示形式でフィールドへ帰還するが、エクシーズモンスターは一度でもフィールドを離れればオーバーレイユニットはすべて失ってしまう。

 なにより、このターン葵を守ってくれるモンスターはいなくなってしまった。

「これでフィールドはもちろん、墓地にもこの攻撃を止められるモンスターはいなくなっタ。どうせその手札でも何も出来ないんだろウ?

 終わりだ、《ジャンク・アーチャー》でお前にダイレクトアタック! [スクラップ・アロー]」

 《ジャンク・アーチャー》は再び矢を番え、攻撃の準備を整える、その標的はもちろん七波本人だ。

 その射線上に黄昏が立ちはだかってはいるものの、《ジャンク・アーチャー》の攻撃力は2300。《アマゾネスの射手》のバーンダメージのほぼ2倍のダメージだ。おそらく色々規格外な黄昏をもってしても完全に防ぎきるのは難しいはずだ。

 受ければ死もあり得る。その可能性に嫌でも身体が強張る葵だが、まだ諦めたわけでもない。

「私は墓地の《クリアクリボー》の効果を発動!

 相手モンスターの直接攻撃時、このカードを除外することでカードを1枚ドローする!」

「ドローしたからって何になル!!」

「もちろん、何とかなるから足掻くんだよ!

 ドローしたカードがモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚して攻撃対象を移させる!!」

 一矢の言う通り、葵のフィールド、手札、墓地すべてにこの攻撃を止められるモンスターはいない。されど、その三か所だけにこの状況を打開できる術があるとは限らない。

「この状況を打開する手段は、このデッキの中にある!」

 

《クリアクリボー》

墓地→除外

 

「…………」

 残りライフ1100に対して2300の直接攻撃。もしまともに受ければどんな未来が待っているかは考えるまでもない。いや考えたくもないだろう。

 全てはこのドローにかかっている。

 その事実を理解しているからこそ、デッキトップに置いたその手の震えは止まらない。

 不意に思い出してしまったのは、以前行った梓とのデュエル。こんな時に限って《リチュア・ディバイナー》の効果でデッキトップを引き当てられなかったことがフラッシュバックする。

 顔色は目に見えて悪くなり、呼吸も次第に荒く今にも倒れてしまいそうだ。

 だからこそ、背中に走る衝撃はあまりにも不意打ちすぎた。

「──っ!? っ!?!?」

 ぱぁんっ! と乾いた音が周囲に反響する。一体何が起こったのか目を白黒させる葵の傍らで、呆れた表情でこちらを見る人物が一人。

「黄昏、くん……?」

「そんな今にも死にそうな顔でドローするもんじゃねぇよ」

「あ、うん……あり、がと?」

 どうやら彼なりに活を入れてくれたらしい。いつの間にかこちらまで歩いてきて、フルスイングで、女の子の背中を本気で叩くことで。

 もう少し穏便な方法はなかったのかと小一時間ほど問い詰めたいところだが、手の震えは確かに止まった。

 再びモンスターの盾になる位置へ戻る少年の背中を見ながら、彼女は小さく笑う。

「まあ、今はいっか」

 一度深呼吸をし、呼吸を整えてから改めてデッキトップへ指をかける。

「ドロー!」

 

【七波】

手札:3→4

 

葵がどんなカードを引いたのか、それが明らかになる前に《ジャンク・アーチャー》の引き絞った矢が亜音速で放たれた。

 にじみ出るほどの殺気を込められた一撃は黄昏(邪魔者)ごと相手を葬らんと迫り――その直前で停止した。

「ドローしたカードは《水精鱗―ネレイアビス》。

 モンスターだったから《クリアクリボー》の効果で特殊召喚され、《ジャンク・アーチャー》の攻撃は《ネレイアビス》が受けるよ。

 ……ごめん、ありがとう《ネレイアビス》」

 シーラカンスのような下半身を持つ女性はその身を挺して《ジャンク・アーチャー》の一撃を受け止め、主の命を繋ぎ止める。

 

【七波】

手札:4→3

《水精鱗ーネレイアビス》

☆4・水属性・魚族

DEF:800

手札→フィールド→墓地

 

「ふん、やはりドローに恵まれないナ」

 その言葉は正しい。

 攻撃力の高いモンスターで返り討ちにすることも、《アビスパイク》のようなサーチ効果で着実に反撃の準備をすることもできなかった。

 だが確かに次へと繋がった。

「それに《ネレイアビス》はただ破壊されただけじゃないよ。

 《ネレイアビス》はフィールドから墓地へ送られた場合、カードを1枚ドローしてその後手札を1枚捨てことができる! まずはドロー!」

 プラスマイナス0で手札の枚数が増えるわけではないが、新たなカードが引けるだけで今は十分すぎる。

 デッキに眠るカードたちを信じ、デッキからカードをドローする七波。

 引いたカードを確認した直後、驚いたように目を見開いて少女は顔を上げる。その視線の先にいた少年は彼女の視線に気づきながらも振り返ることはなく、気にするな、と言わんばかりに背中越しに小さく手首を振るジェスチャーをするのみ。

「いや、これどうすればいいのよ……」

 呆れたように、されどどこか嬉しそうにため息を零した少女はしばしの間手札を眺め、悩んだ末に引いたカードとは別のカードを捨てたようだ。

 

【葵】

手札:3→4→3

 

「ボクはこれでターンエンド。この瞬間、《ジャンク・アーチャー》の効果で除外されていた《トライエッジ・リヴァイア》はお前のフィールドに戻ル。

 まあ、オーバーレイユニットはすべて失っているがナ」

 

《トライエッジ・リヴァイア》

除外→フィールド

 

【一矢】

0/4000

-△○--  

--□■-  

【葵】

3/1100

--○--  

-----  

 

「私のターン――」

 身体は無傷だが精神的な疲労は溜まる一方。まだ思考力は衰えていないが、気を張っていないとその場にへたり込んでしまってもおかしくないほど足は小刻みに震えている。

 にもかかわらず、もう七波の表情から恐怖は消えた。

「――ドロー!」

 

【葵】

手札:3→4

 

ドローしたカードは《水精鱗ーアビスパイク》。召喚、特殊召喚成功時に手札の水属性をコストにデッキからレベル3の水属性モンスターをサーチすることができる。

 今の状況でサーチするのであれば、《水精鱗》モンスターの効果で手札に加えたときに特殊召喚できる《アビスディーネ》あたりが妥当だろうか? しかし七波は別のカードを切る。

「私は《貪欲なウツボ》を発動!

 手札の水属性モンスター《深海の大ウナギ》と《水精鱗ーアビスパイク》をデッキへ戻し、新たに3枚ドローするよ」

「ドロー? セイクリッドの加護がない状態で無謀な運試しカ?」

 一矢の言葉が正しいのなら、今の葵はセイクリッドの加護を失っているためにデッキの周りが悪い。

 不確定なドローに頼るのは無謀かもしれない。

「だとしても、消極的なデュエルはもう終わりだよ。

 運がないなら、力づくでつかみ取る。下手な鉄砲も数撃てば当たるって言うからね!」

 2枚の手札をデッキへ戻し、オートシャッフルが終わると同時にそのデッキトップへ指をかける。

 その様は先ほどのような動揺はない。確実な1枚よりも不確定な3枚を選んだにも関わらず、その自信は揺らぐことなく3枚のカードをドローする。

 

【葵】

手札:4→1→4

 

新たに加わった3枚のカード。それらに目を通したのち、少女の表情は思わずといった様子でほころんだ。

「今からビックウェーブを起こすよ!

 私は《水霊使いエリア》を召喚。おいで、《エリア》!!」

『はいなのです、マスター!』

 

《水霊使いエリア》

☆4・水属性・魔法使い族

ATK:500

 

七波と心を通わす精霊のカードであり彼女のエースモンスターへと繋がる、なくてはならないキーカードがこの土壇場で彼女のフィールドに現れた。

 なお、《水霊使いエリア》の効果はリバースによるコントール奪取。フィールドに出す場合はセットが基本になる。

 それが表側表示で召喚し、さらにフィールドには水属性である《トライエッジ・リヴァイア》が存在するということは……

「そして手札から《置換融合》を発動! フィールドの《水霊使いエリア》と《トライエッジ・リヴァイア》を融合!

 水霊を操る魔術師よ、逆巻く海を統べる海竜よ、海原を巡る魔導師となりてその力を振りかざせ!融合召喚。我が親愛にして崇高なる僕《海流魔導師リヴァイエリア》」

 

《水霊使いエリア》

フィールド→墓地

《トライエッジ・リヴァイア》

フィールド→墓地

《海流魔導師リヴァイエリア》

☆8・水属性・魔法使い族

ATK:3000

 

七波が絶対的信頼を置くエースモンスターが満を持してフィールドへ顕現。数値上のステータスはあの《青眼の白龍》と並ぶほど強力で、融合素材によってはそれさえも上回る。

 とはいえその効果は自分フィールドの他の水属性をリリースすることで発動するというもの。海流族の融合素材としている場合はダメージ計算時に攻撃力を上昇させることができるが、今の七波にはそのリリース素材を用意する術がない。

「だとしても純粋な攻撃力で《リヴァイエリア》は《ジャンク・アーチャー》を上回っているよ!

 《リヴァイエリア》で《ジャンク・アーチャー》を攻撃!」

『[レヴィアタン・ボルテックス]、なのです!』

 海竜部分の咆哮により何もない空間から溢れ出した水が、エリアがその手に握る杖を振るうことでまるで意思を持つかのようにうねり出す。

 やがてその水は《リヴァイエリア》を覆う鎧となり、ただの突進を万物を押し返す一撃へと昇華させて《ジャンク・アーチャー》を飲み込んだ。

「ぐ……ッ!?」

「《リヴァイエリア》と戦闘を行ったモンスターはダメージ計算後に手札へと戻る。エクストラモンスターの《ジャンク・アーチャー》は代わりにエクストラデッキへ戻ってもらうよ!」

 

【天宮】

ライフ:4000→3300

《ジャンク・アーチャー》

フィールド→エクストラデッキ

 

「私はカードを1枚セットしてターンエンド」

 

【一矢】

0/3300

-△---  

--□■-  

【葵】

3/1100

--○--  

--■--  

 

 七波の受けたダメージと比べれば、700ポイントの戦闘ダメージはわずかなものではある。ただ、この戦闘ダメージがデュエルの流れが大きく変えるのだと彼女は直感していた。




ということで禁止カードの《アマゾネスの射手》と、これ上げる直前の制限改定で準制限になった《インフィニティガン》ですが、2017年あたりの制限改定ベースでやっていきます
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