「──《士気高揚》の効果でライフを1000回復ー! ライフが回復したから《ビッグバンガール》の効果で先生に500ポイントの効果ダメージだよー!」
寝癖のようにところどころ跳ねた金髪の少女が自信満々に宣言すると、それに応えるように炎を纏う魔法使いが火球を放ち相手のライフを削りきる。
デュエル場にデュエル終了のブザーが鳴り響く中、ライフを削りきられた女性教師が背後にいた別の女性教師と顔を見合わせること数秒、お互いに頷いて改めて少女に向き直った。
「おめでとうございます、ミス・ミラー。このデュエル結果を持って、貴女を正式に2年生への進級を認めます」
「えへへ、やったー!!」
「た・だ・し、今年度の前期中間テストの成績も決していいとは言えませんでした。近々ある期末試験の結果によっては単位もギリギリでしょう。今年度も単位が足りないようなら仮進級ではなく留年も検討しますので、くれぐれも精進するように」
「うぇっ!?」
「返事は?」
「は、はいー……」
飛び跳ねて喜ぶのもつかの間、念入りに釘を刺されたリリアはこれでもかと身体を小さくして肩を落とす。
ただしそれでもまだ言い足りなかったのかさらなる追撃が来そうになるが、もう一人の女性教師になだめられてなんとか堪忍してもらえたようだ。
再び刺激して爆発する前に帰るようジェスチャーで促されると、気を遣ってくれた教師に小さくお辞儀をしてからリリアはそそくさとその場を後にする。
「……にへへへ」
渡り廊下を使って本校舎へ戻る途中、周りに人がないとはいえ我慢できなかったリリアはにへらと笑う。
普段からふわふわとした雰囲気の彼女ではあるが、ようやく進級試験が終わったという開放感が加わりでさらに締りが無い様子。
しかし彼女の進級をこの場で喜んでくれる生徒はいない。七波はいまだ入院中だから仕方ないとして、何度もデッキ調整に付き合ってくれた黄昏がいないのは別に愛想つかされたわけではない。
その証拠にややスキップ気味に廊下を進むリリアはまっすぐとある教室の前まで来ると、勢いよくその戸を引き開けた。
「遊糸ー! おっつかれー!!」
「開け方加減しろバカ」
出会い頭に容赦ない言葉が飛んでくるが、今のリリアがその程度で怯むことはない。見ている相手まで気が抜けそうな笑みを浮かべた少女は鼻歌まじりに中にいる少年の元まで歩み寄る。
「その様子だと無事進級できたみたいだな」
「えへへへー、遊糸のおかげだよー。本当にありがとー!!」
「はいはいどういたしまして。お礼なら七波に言ってやれ。昨日も面会時間ギリギリまで最終調整してくれたんだろ?」
「もちろん、あおいんにも言うよー? でも遊糸だって何度も手伝ってくれたんだから、同じぐらいお礼言わないとねー。……にへへへ」
「また一段と締まりのない笑顔だな」
「にへへ……」
指摘されて恥ずかしがるのではなく、さらに緩みのない表情になるのがリリア・ミラーというお調子者の性か。
にも関わらず、彼女の振る舞いが周囲を不快にさせることがほとんどないというのが不思議なところだ。締まりがなさすぎるが故に先程のように教員から釘を刺されることはあれど、改善するよう指導を受けたことはない。そういった周囲への影響力も含めて彼女の持ち味なのだろう。
「それに今日はあおいんの退院日だからねー。これで心置きなく退院祝いができるってもんよー!! もちろん遊糸も行くよねー?」
「『これ』が完成したらな」
言いながら黄昏がの手には絵の具がカラフルに混ぜられたパレットと筆が握られている。そして彼の目の前にはA3程度のキャンバスが立てかけられているのだが……
「……なにこれー」
先程まで締まりのない笑みを浮かべていたリリアがぽかんとした表情でそう呟いた。
キャンバスには肌色を基調とした前衛的なデザインが描かれている。それだけを見ればまだフォローのしようがあっただろうが、その隣に見本らしき写真がキャンバスの隅にクリップで留められており、その差が否応無しに明らかとなっていた。
故に少女はどう尋ねるべきか言葉を選びかねていたのだが、当の本人はさも当然のように少女の独り言に返答する。
「人物画」
「あ、いや、えっとー、それはわかるんだけどー……」
クリップで固定されていたのはリリアもよく知る美術の担当教師のものだ。状況的に黄昏のクラスでは美術で似顔絵の授業があったのだろう。
似顔絵でペアが組めなかった場合は先生の似顔絵を描くのがこの授業の恒例であることも彼女は知っている。
そして授業中に完成しなかったため居残りで、そして教師の予定がつかなかったから写真を借りて作業をしているということも、放課後リリアが進級試験を受ける前に聞いていたから納得できる。が、なぜ写真を見ながら描いて目の前の前衛的なデザインになるのか、リリアには理解できなかった。
デッサンが狂ってる、とか絵を描くのが不慣れ、とかその次元ではなく、もはや見えている世界が違うと言われたほうが納得できるレベルだ。
「そういやリリアって美術の成績だけは5段階評価の5貰ってたよな? どうやったらマシになりそうだ?」
「ええっとー……、ここまで来たらアタシの手を加える余地はないというか、なんというかー……」
「そっか」
『だけ』は余計だ、なんてツッコミが思いつかないほど本気で困った様子でリリアはお茶を濁す。海馬コーポレーション主催のデザインコンテストを毎年受賞している猛者でもできないことはあるのだ。
「ち、ちなみにあとどれぐらいで完成なのー?」
「あとは調整作業だけだからリリアの都合に合わせる。帰る準備できたらもう一度ここに来てくれるか?」
「う、うん。わかったー」
引きつった笑みを浮かべながら、少女は逃げるように教室を去っていく。
「そこまで酷くはないと思ったんだけどな……」
去り際、そんな呟きが聞こえた気がするが気のせいだろうか。いや気のせいだろう。気のせいに違いない。彼の名誉のため、リリアはこの事実を墓まで持っていく決意を静かに固めるのだった。
葵が入院していることは世間には隠している関係上、退院も同様に少々手間がかかるものだった。
そのお陰か、院内で働く看護師の殆どにも彼女の存在は知られず、彼らから情報がリークさせるという事態を避けることができた。
すべて巫が手はずを整えたのだろうが、その用意周到さには毎度毎度驚かされている。
「この車も何かに偽装してるんだろうなー。知らないけど」
『マスター、なんだか入院してたとき以上に疲れているように見えますのです』
「あれが関わるといつものことだよ……」
独り言にも近い言葉に反応を示してくれたのは、その必要もないのにわざわざお行儀よくシートに座っている風にしている葵の精霊《水霊使いエリア》。
というより、彼女たち以外に車内には誰も乗車していなかった。もちろん、まだ高校を卒業していない葵が運転しているわけでもない。
5人乗りの乗用車ぐらいの広さの車内だが、その運転席に座っているのは人ではなくソリッドビジョンによる虚像。外側から見れば普通に運転手が運転しているように見えてはいるものの、その手では当然ハンドルは握れず、自動運転機能によって勝手に動いていた。
外観は一般的な乗用車だが、その内側はまるでシェルターと見間違うほどの堅牢さが素人目でもわかる。
以前出演した情報バラエティで紹介されていた、各国の首脳が極秘のやり取りをする際に利用している車の内装がこんな感じだった気もするが、葵は深く考えないことにした。
巫梓という少女ならその権力でやりかねないが、彼女のやることを理解しようとしてはいけないのだと、葵はよーく知っているのだ。
悩みのタネから現実逃避するように精霊と雑談すること10分程度。車は寂れた無人駅のコインパーキングへと駐車された。
周囲の街に比べてかなり発展しているダイスシティでも郊外となればそれなりの風景になるのだと一人感心していると、大通りの方から現れたのは二人の男女。
少女の方はこちらを見つけるやいなや駆け寄ってきて抱きつくというか飛びつくようにハグをかわす。
「あおいん退院おめでとー!!」
「ふふ、ありがとうリリア」
「巫から七波に会うならここに行けって連絡があったんだけど、誰かに送ってもらったのか?」
「あーうん……そんな感じ。できれば詳しく聞かないでくれると助かるかな」
ハグをするリリアの頭を撫でながら苦い表情を浮かべる少女は視線をそらす。小首を傾げつつも彼女の意図を察した黄昏も追求はせず話を打ち切った。
「それで、どこ回る? 結局そこまでは話詰めれてないよな」
今日は葵の退院祝いとついでにリリアの進級祝いで遊ぼう、までは以前お見舞いに行ったときに決まっていたが、結局どこに行くかまでは決めれていなかった。
時間や資金の都合で近場になるのは間違いないが、ショッピングが中心なのかゲームセンターのような遊び場が中心なのかぐらいははじめに決めておきたいところだろう。
「ところで日盛君は呼べなかったの?」
「連絡したけど反応なかったから諦めた」
巫の神社に全員が集まった時に連絡先は交換していたが、黄昏いわく遊形の反応はいつも遅いらしい。
状況が状況だけにボレアスに襲撃されているのでは、と最初の時は葵やリリアから心配されていたが、この中ではおそらく1番付き合いの長い黄昏にとってはいつものことであるためそこまで深刻には考えていなかった。
「あいつ、昔から作業を一時中断して別の作業をするのが下手くそだし、別件で忙しいんじゃねーの?」
「今の状況だとその別件っていうのボレアスに襲撃されてるとかじゃないか不安になるんだよね」
「その時は先にワンコールだけでもいいから俺の端末に連絡するように言ってる。もし破ったら……その時はその時だな」
リリアがいたから言葉は控えたが、右手の拳を握って開いてを数回繰り返すジェスチャーで何をするか容易に想像できた葵は小さくため息をついた。
「ああよかった、まだここにいたんだね」
そこに唐突に割り込んできた声にその場にいた三人は咄嗟に振り返る。そこにいたのは、黄昏と雰囲気の似た短髪の少年。
その姿を見た瞬間、葵にコアラのごとくしがみついていたリリアが目にも止まらないスピードでその少年にタックル……もとい抱きついた。
「ゆうくんだー!!」
「……ほんと、日盛君には狙ったように鳩尾に頭突きするよねリリアって」
もはやうめき声すら出せず悶絶する遊形。その姿を見て表情を引きづらせる葵は隣に立つ黄昏に視線を送る。
視線に気付いた黄昏は葵と遊形を交互に見て肩をすくめた。
「遊形、別件の方は大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。近くだったからそのまま徒歩で来たんだけど、D・ホイール取りに行った方がいいかな?」
「問題ない。徒歩圏内で何かないか探す予定だし」
そっか、と返す遊形はようやく痛みが引いてきたのかリリアをなだめるように引き剥がす。額に脂汗をかいたままだが、あまり触れないであげたほうがいいだろう。
黄昏が力を貸してリリアを完全に引き剥がすとそのまま葵へ預けたことで遊形はようやく解放され、ホッと一息ついた。その様子を見た黄昏は不意にその顔を触り始める。
「……遊糸?」
あまりにも突然の行動に困惑して固まる遊形はされるがまま。しばらくその状態が続き……
「──っ!?」
その顔に黄昏は蹴りを入れた。
「へ……え、なんで!?」
「黄昏君!?」
とっさに腕で防いだ遊形(?)だが地面を転がり、黄昏たち三人から遠のいていく。どれほど本気で蹴りを入れたのかは明白であり、その事実に後ろの2人から悲鳴にも似た言葉が投げかけられた。
しかし黄昏はその問に答えることなく、彼女たちを庇うように移動した黄昏が遊形を睨む。その目は完全に彼を『敵』として認識している。
だが彼が敵に回るなんてことは考えづらい。だからこそ黄昏の行動の意図がわからず困惑する葵たちだったが、ふと何かを察知したかのようにリリアが呟いた。
「……もしかして、ニュートくん?」
もちろん確信があるわけでは無いだろう。黄昏の対応が遊形に対するそれとはかけ離れていたため、消去法でそう呟いただけのはずだ。仮にそうだとしても目の前の『彼』が否定すれば偽物であるという証明は誰にも出来ない。……はずなのだが。
「あーなるほど、
ギョロっと前髪の隙間から見える目だけを動かし『彼』を捕らえた黄昏は納得した様子で小さく笑う。
もはや言い逃れは出来ないと判断したらしい『彼』は素早くデュエルディスクを装着し、例の赤い鎖をリリアへ向けて射出。しかしその鎖は黄昏の右手によって阻まれた。
「……一応報告は受けていましたが、本当にその鎖を掴めるようですので」
「あんたは他のメンバーよりこの鎖について詳しそうだな。ちょいっと情報共有させてもらいたいんだが?」
「当然話すわけがありませんので」
「だろうな。じゃあ篠原は? 今も近くで待機させてるのか?」
「それは貴方には関係なのでは?」
「かもな。七波、リリアと一緒にここから離れろ。こいつは俺が相手する」
わかりきっていた返答ばかりに小さく笑った黄昏は背後の二人へ一方的な指示を出しつつ、自身のデュエルディスクに赤い鎖を繋げる。
闇のデュエルの犠牲者を得た赤い鎖は禍々しい輝きを放ち、鎖で繋がれた二人の逃げ場を奪うように虚空から鉄くずが降り注ぎ、それらが勢いよく燃え上がった。以前リリアがデュエルしていた時と結界の雰囲気が違う気もするが今は気にする必要はないだろう。
どちらにせよこうなってしまえば、デュエルの決着がつくまで中からも外からも干渉することは不可能。黄昏は一応干渉できる力はあるが、彼が自分の意志でこの空間から逃げ出すようなことはしないだろう。
オートシャッフルが終わるまでの間、手持ち無沙汰となったのかニュートは遊形の変装を解き、以前も見た中性的な少年の姿へと戻っていく。
「どうやって変装に気づいたので? 背丈や声はもちろん、今回は性格もかなりプロファイリングして模していたはず」
「ああそうだな。その辺りは誇ってもいいともうぞ。
喋り方とかとっさのリアクションとかはまんま遊形のそれだったし。ひょっとしたらホントに遊形かもとは思ったからな」
「思いながらも容赦なく蹴るんですかあなたは」
「あいつにはこれぐらいが丁度いいんだよ」
「……信頼してるのか雑に扱ってるだけなのかよくわからないので。では──」
直後、オートシャッフルが終わりデュエルの準備が整った。何かを訪ねようとしたニュートは口を閉じ、デッキトップからカードを5枚引く。
もはや二人の間に時間稼ぎの言葉は不要。
故に、示し合わせたように同じ言葉を唱える。
「「デュエル!!」」
【ニュート】VS【黄昏】
「僕のターン、カードを1枚セット。そして《手札抹殺》を発動しますので。お互いに手札を全て墓地へ送ってから捨てた枚数だけドローです」
【ニュート】
手札:3→0→3
【黄昏】
手札:5→0→5
「……そして手札から《トップ・シェア》を発動しますので。デッキからカードを1枚選び、お互いに確認してからデッキトップへ置きます。その後相手にも同じことを行ってもらいます。
僕はデッキから《終焉のカウントダウン》を選び、デッキトップへ置きますので。次は貴方です」
「なら俺は《破滅へのクイック・ドロー》をデッキトップに置かせてもらう」
「これでお互いにキーカードは次のドローで揃うわけですので。カードをもう1枚セットしてターンエンドです」
| 【ニュート】 1/4000 ----- --■■- | 【黄昏】 5/4000 ----- ----- |
「俺のターン、ドロー」
【黄昏】
手札:5→6
ドローしたのは先程デッキトップ操作をした《破滅へのクイック・ドロー》。お馴染みとなった黄昏の貴重なドローソースだ。対するニュートがデッキトップに置いたのは20ターンという途方も無いターンさえ耐えきれば問答無用で勝利できる魔法カード。つい先日もこのカードとロックデッキを組み合わせてリリアを追い詰めている。
そんな彼のフィールドにモンスターは存在せずセットカードが2枚。そして墓地には《手札抹殺》によって墓地へ送られたカードが3枚。
「《ゴブリンのやりくり上手》と《タスケルトン》、そして《
魔妖という未知のカテゴリをサポートする永続魔法。その効果は3つ。墓地の魔妖モンスターの種類×100ポイント相手のモンスターの攻守を下げる永続効果。自分フィールドの魔妖モンスターとともに墓地へ送ることでカードを1枚ドローする効果。墓地のこのカードとアンデッド族モンスター1体を除外することで魔妖モンスターを1体蘇生する効果。
残念ながらどの効果もカテゴリの特徴を把握するには特徴が薄い。強いて言うなら、魔妖モンスターは墓地に溜まりやすいということぐらいか。
対する《タスケルトン》は墓地に存在する場合、デュエル中に一度だけモンスターの攻撃を無効にできる。
《終焉のカウントダウン》を次のターンに確約したということは、順当に考えれば20ターンを耐え忍ぶための強固な守りの一つと考えられる。《ゴブリンのやりくり上手》もすでに不要となったが、《終焉のカウントダウン》を引くための手段の一つなのだろうか。
「俺は《スクラップ・サーチャー》を通常召喚。
そして自分フィールドにスクラップモンスターがいるため手札から《スクラップ・オルトロス》を特殊召喚し、そのデメリット効果で《サーチャー》を破壊する」
《スクラップ・オルトロス》
☆4・地属性・獣族
ATK:1700
《スクラップ・サーチャー》
フィールド→墓地
特殊召喚に伴い、己の不安定な体を安定させるために仲間の体を食らう双頭の獣。それは現在の黄昏の手札から出せる最高打点の攻撃力だ。
このまま攻撃宣言をすれば伏せカードもしくは《タスケルトン》に攻撃を阻まれるだろうが、相手の防御札を消費させることはできる。だが……
「俺は手札からプレート魔法《罠解卓上》を発動し、手札すべてをセットしてターエンドだ」
| 【ニュート】 1/4000 ----- --■■- | 【黄昏】 0/4000 --○-- ● -■■■- |
何の躊躇もなく黄昏は攻撃できるチャンスを棒に振って守りを固めただけでターンを終了。なぜそんな決断を下したのか、長い前髪で隠れ気味の表情から読み取ることは難しい。
「《タスケルトン》の効果を使わせるために攻撃してくると思いましたが、《終焉のカウントダウン》が次のターンには発動されていることをお忘れなので?」
ゆえに挑発を兼ねた質問を投げかけるニュートだったが、黄昏は興味なさげに吐き捨てる。
「だからこそだよ。あんたのデッキ、前にリリアと戦ったときのロックデッキと内容違うだろ?」
「なぜそう思うので?」
「魔妖なんてカテゴリ、前は見る影もなかったからな。それに他人のデッキをまんまパクるぐらいだ。あんたは『自分のデッキ』ってオリジナリティよりも勝つことを優先してるはず。
だとすれば、一度負けたデッキと同じ構成にする理由はない。より強い構成にした方が効率的だからな。
どうせ、その伏せカードは《魔法の筒》みたいなカウンタータイプの罠じゃねーの?」
その指摘に対するニュートの返答は無言。しかしこの状況での沈黙は肯定に等しい。
「……僕のターン、ドロー」
【ニュート】
手札:1→2
「セットしていた《ゴブリンのやりくり上手》を発動しますので。墓地の《ゴブリンのやりくり上手》の数+1枚をドローし、その後手札の1枚をデッキボトムへ戻します」
【ニュート】
手札:2→4→3
「手札すべてをセットして……エンドフェイズへ移行しますので」
カードをドローし、こちらも守りを固めるだけ。そしてせっかく手札に加えたであろう《終焉のカウントダウン》も発動していない。
「図星か。運良く《ゴブリンのやりくり上手》があってよかったな。ブラフの《終焉のカウントダウン》をデッキボトムに送ることが出来て」
「妄想は好きにすればよろしいので。それよりエンドフェイズです。貴方も発動するカードがあるのでは?」
「そうだな。そのためにあんたも手札を全てセットしたんだもんな? 俺はエンドフェイズにリバースカード《破滅へのクイック・ドロー》発動させてもらう」
「これでドローフェイズに手札が0なら追加で1枚ドローできますので。使える恩恵は存分に使わせていただきましょう」
| 【ニュート】 0/4000 ----- ■■■■- | 【黄昏】 0/4000 --○-- ● -■□■- |
煽る黄昏に不快そうに眉をひそめつつ処理を促し今度こそターンは終了。両者ともに大きな動きはないものの、この数ターンを経て彼らはデュエリストの本能で感じ取っているはずだ。『あいつは自分と似ている』と。
これは嵐の前の静けさ。準備が整えばその牙は容赦なく相手の首を噛みちぎらんと食らいつくことだろう。
命を削る決闘は、すでに始まっているのだ。
※2023/12/31
アンケートは39話にて大きく描写を変えたものに対してものです。
1つの話にまとめて表示するのは無理そうなので、急遽ここへ移動させてきました。