次回を1月中には投稿予定なので、大体1ヶ月ほどアンケートを実施する予定です。
見やすなったが見づらくなったか、見てる人がPCかスマホなのか等細かく設定するつもりなので、もしよければ回答お願いします。
もっとこうやったほうが……的な意見も大歓迎ですが、上手く反映できる保証はないです……
時間は少し遡り、黄昏とニュートのデュエルが始まった直後。
襲ってきたボレアスがニュートだけではないと判断し、葵はリリアをつれてひとまず大通りへと向かっていた。しかし当初の想定していたルートから大きく外れ、未だ人気の少ない路地裏を彷徨っている。
理由は単純。2人とも黄昏に比べればこういった荒事を対処する経験が少なく判断に時間がかかること。それに追い打ちをかけるようにボレアスのメンバーが主要なルートに待ち伏せをしていたからだ。
なんとか鉢合わせするのを回避できているのは、ひとえに精霊の《水霊使いエリア》が斥候の役割を担ってくれているからに尽きる。
カードの精霊という、知覚できる人間が限られるという特性を生かして一方的に相手の位置を知れるのは非常に有利な状況だ。しかし、包囲網から逃げようとすればするほど大通りから遠ざかっており、精神的に追い込まれているのも事実だった。
これなら多少ゴリ押しでも最短距離で駆け抜けたほうが良かったかもしれないと後悔し始めたそのとき、急に視界が開けた。メインの通りからは遠いこの場所なら闇のデュエルにはもってこいな空間と言える。
(っ、誘い込まれた!?)
声には出さず表情を強張らせる葵はまだ後ろを走っていたリリアの身体を押し込むようにして慌てて路地へ戻る。偵察を担当してくれていた《エリア》との合流にはまだ十数秒ほどはかかる。
このまま突っ切るべきか、引き返してどこかに隠れてやり過ごすか……
慎重に考えすぎた結果、葵は知らず知らずのうちに周囲の警戒が疎かになっていた。
「あおいん!!」
「──っ!?」
視界の端で動く赤い鎖に気づく頃にはすでに目と鼻の先にまでそれは迫っていた。とっさにリリアが突き飛ばしてくれたことで葵はその魔の手から逃れることができたものの、身代わりとなったリリアの腕に巻き付いた鎖が彼女を強引に引っ張っていく。
「わ、ととと……っ!!」
辛うじて転ぶことは避けられたが、その場で踏ん張ることができなかった彼女の身体は誰が待ち伏せているかもわからない広場へ引きずり込まれてしまった。
背の高い建物に囲まれた牢獄にも似た空間は、改めて見ても闇討ちするにはもってこいの場所と言えよう。
しかし意外にもその場で待ち構えていたのは一人の女性だけだった。
例に漏れずその腕にはエヴァやニュートと同じデュエルディスクを装着しており、そこから禍々しい程に赤い鎖がリリアの腕まで伸びている。
ボレアス側の
見た目から歳は30代前半ぐらい。ゆったりとしたシルエットでコーディネートされたファッションやウェーブのかかった長い茶髪といった風貌は、リリアとはまた違ったベクトルで周囲を落ち着かせる雰囲気を醸し出している。そこへ眼鏡を身に着けた知性的な雰囲気も加味すると、総合的には保健室の先生もしくはカウンセラーという印象を受けた。
そして何より特筆すべきは彼女からは『殺意』が一切感じられないことだった。いや、殺意や敵意といったものを放つのに慣れていないといった表現のほうが正しいかもしれない。慣れないながらもこちらを睨む姿は、人によってはむしろ庇護欲を抱いてしまうだろう。
リリアとてそういった敵意に鋭いわけではないが、それでも自分の中に出来上がりつつあったイメージとの齟齬から相手が本当に敵なのか確証が持てていない様子。対する女性の方はリリアの姿を見るやいなや目を丸くし、次第に顔色が悪くなっていく。
その理由を尋ねる前に周囲を漂う空気が変わり、彼女たち二人を囲むように円状に乱立したのは十数本の十字架。それが高いものは2階建ての天井ぐらい、小さいものは人の背丈ぐらいの大小様々な大きさで隙間を埋めるように展開されている。
エヴァの時は黒い霧、ニュートは炎の壁、一矢は透明な壁と、法則性こそ謎だが何かしらに周囲を囲まれるのがこの闇のデュエルの特徴らしい。
さらにリリアのポーチから勝手に彼女の腕に装着されて展開するデュエルディスク。そこに赤い鎖が入り込んでいったことで、赤い鎖に繋がれた一組のデュエリストという形が完成。
この状況が整ってしまえば、この二人を邪魔する者は何人たりとも許されない空間が形成される。
「リリア、無事!?」
「あ、うん。なんとかー」
顔を真っ青にして路地から飛び出してきた葵だが、乱立した十字架でできた壁にある隙間は小さすぎて侵入することは不可能。言葉を投げかけることが出来たのがせめてもの救いだった。
そんな葵に対してリリアは表情は穏やかだった。こんな状況でもその和んだ雰囲気でいられるのは彼女の強みかもしれない。つられて思わず葵も表情が和らぐが、そんなリリアを持ってしても和ませられない女性が1人。
リリアと赤い鎖で繋がれた女性は、今にも泣きそうな表情で忙しなくデュエルディスクを操作している。
「あ、あの、大丈夫ですかー?」
「ごめんなさい!!」
「はぇ!?」
あまりにも切羽詰まった表情のため心配し始めたリリアだが、まさか謝罪されるとは思ってもみなかっただろう。素っ頓狂な声をあげてしまうのも無理はないかもしれない。
「リリアさん、でしたね。私はボレアスの牡羊座の
「え、あ……どうもー……」
丁寧な挨拶と共にお辞儀をする女性に反射的にリリアもお辞儀を返す。
「訳あって私はそちらの七波葵さんに用があったのですが、どうやら関係ない貴女を巻き込んでしまったようです。
……この赤い鎖も一度デュエルディスクと繋がると使用者にも解除できないようでして。本当に申し訳ありません」
軽く手を振って鎖を揺らしながら説明を続ける。先程デュエルディスクを忙しなく操作していたのはこの鎖を解こうとしていたらしい。
「このデュエルでサレンダーはできません。どういう原理かデッキを引き抜くことも出来ないので、ライフやデッキが0になる以外での解除方法も私は知りません。
ですので、どうかデッキ切れで負けては頂けないでしょうか?」
それは彼女にとっての最大限の譲歩なのだろう。無関係な人は巻き込みたくないという優しさが嫌というほどに伝わってくる。
だが……
「えっと、ごめんなさい。それは無理、かなー」
困ったように笑いながらも、リリアはその癖っ毛の金髪を揺らしながら首を横に振る。
「だって、アタシが負けちゃったら次はあおいんと闇のデュエルっていうのをしちゃうんだよねー?
だったらアタシも絶対に負けられないもん!」
おそらく、リリアは事の重大さを理解していない。幸か不幸か最初の闇のデュエルでリリアは一度もダメージを受けておらず、戦闘時のわずかな余波すら黄昏の《スクラップ・ゴブリン》によって守られていたのだ。
知識としてはあるが実際にどれほど危険なのかは理解できていないはずだ。それを察せてしまえるからこそ、甘音は顔をしかめた。
しかしもう動き始めたデスゲームを誰にも止められない。
「わかりました。お互いに引けない理由があるならこれ以上の話し合いは無意味ですね」
数回の深呼吸をしてから甘音はデュエルディスクを構える。赤い鎖が繋がった時点ですでにお互いのオートシャッフルは終わっている。
あとはお互いに開始の宣言をするのみだ。
「……できる限り、痛みは少ないようにしますから」
その直前、甘音は誰にも聞こえないほど小さく、されど迷いなくそう呟いた。争い事に慣れていない彼女も紛いなりにもボレアス。覚悟はできているらしい。
「リリア……ごめん」
「ううん、今まであおいんには何度も助けてもらっているんだもん。少しぐらいお返ししないとねー!」
リリアもリリアなりに決意を胸にデュエルディスクを構える。
そして、相対する二入は示し合わせたようにその言葉を口にする。
「「デュエル!!」」
【甘音】VS【リリア】
「先攻後攻はリリアさんが決めてもらって構いません」
「じゃあ後攻でー」
「わかりました。では私のターン、まずは《 終末の騎士 》を通常召喚です」
バトルフェイズを行えないため場を整えることが重要となる先攻にて、手札から迷いなく呼び出されたのは黒い装束に身を包んだ騎士。
その効果は、このカードを利用しないデュエリストでも知っているであろうほどに汎用性の高い墓地肥やし。
「《終末の騎士》が召喚に成功したことでその効果を発動です。デッキから闇属性モンスターを1体墓地へ送ります。
私は《ゼータ・レティキュラント》を墓地へ。
そしてフィールド魔法《フューチャー・ヴィジョン》を発動してターンエンドです」
| 【甘音】 3/4000 --○-- ○ ----- |
| 【リリア】 5/4000 ----- ----- |
フィールド魔法によって周囲に幾何学的な模様が浮かび上がる中、それを気にした様子もなく天真爛漫な少女はデッキトップに指をかける。
「アタシのターン、ドロー!」
手札:5→6
加えた手札も含めてリリアの手札の中にあるモンスターは2体。加えてうち1枚は実質手札に温存しておく他ないカードだった。
されどそれに気を落とすことなく、むしろそのカードを待ってましたを言わんばかりに笑みを浮かべてカードを切る。
「いくよー! まずアタシは手札の《あまびえさん》の効果を発動だよー!」
「あ、《あまびえさん》……?」
相手にもよく見えるように掲げたモンスターは人魚のような可憐なモンスター。モチーフは疫病を封じるために現れたという妖怪であり、リリアたちが生まれるよりも前の時代に何らかのキャンペーンで作られたプロモカードの1枚だった。
今となってはかなりマイナーなカードであり、甘音も初めて見るカードのため困惑している様子。さらに言えばリリアが喜々として掲げるほどの効果を持っているとも言いづらかった。
「《あまびえさん》はメインフェイズ1開始時に手札から相手に見せることでお互いにライフを300ポイント回復させるんだよー」
「な、なるほど……」
ライフ4000→4300
ライフ:4000→4300
手札で握ってさえいれば確実にライフを回復できるとはいえその数値は微量。さらにお互いに回復していてはライフアドも稼げるわけではない。だとしてもこのカードは彼女が数ある中から選んだ1枚。本人が自覚しているかは別として何かしらの意味があるのだろう。
「続いてアタシは《 サンライト・ユニコーン 》を通常召喚!」
少女の呼び声に応えて現れるのは青白い炎を纏った一角獣。その攻撃力は敵対する黒衣の騎士を葬るに十分であったが、その四肢が大地を踏みしめた直後空間が歪んだ。
「《フューチャー・ヴィジョン》の効果です。
モンスターが通常召喚された場合そのモンスターは2ターン後、つまり次の自身のターンのスタンバイフェイズまで除外されます」
「うぇっ!?」
フィールド→除外
少女を護るべくフィールドに降り立った純潔の守護獣。しかしその力を発揮する前に空間の狭間へと飲み込まれてしまった。
さらにその狭間から産み落とされるように甘音のフィールドに小さなエーリアンのようなモンスターが出現。
「相手フィールドのモンスターが除外されたので、墓地の《ゼータ・レティキュラント》の効果を発動です。
私のフィールドに《 イーバトークン 》を特殊召喚します」
まずはリリアが先制するかと思われたが、フィールド魔法によって形勢は甘音へ一気に傾いてしまった。
唸りながらリリアは自身の手札とにらめっこをしているが、一向にカードをセットする様子がない。ポーカーフェイスの欠片もない彼女の様子からして、ガラ空きとなったフィールドを補えるようなカードがないのは明らかだろう。
「……どうしよう《エリア》。これ、ヤバいよ」
劣勢とはいえまだ始まったばかりのデュエルを見守る葵の表情は、先ほどよりもより深刻に青ざめていく。
通常召喚が主体のリリアのデッキが《フューチャー・ビジョン》と相性が悪いのもあるが、これが闇のデュエルであり、次のターンに直接攻撃がほぼ確定しているという状況が非常にまずい。
「せめて《エリア》だけでもリリアの側に行ければ……」
『……いけるかもしれないのです』
「え?」
不可能であると思いながら呟いた言葉に対する《エリア》の返答に葵はとっさに隣の相棒の顔を見る。
『この結界、今までの結界に比べると弱いというかなんというか……とにかく、黄昏さんではなくても力押しで突破できそうな気がするのです』
少し待ってください、と目をつぶり集中し始めた《エリア》。そうしている間にもデュエルは進行し、リリアのターンが終了してしまう。
| 【甘音】 3/4300 --○○- ○ ----- |
| 【リリア】 5/4300 ----- ----- |
「私のターン、ドローです」
手札:3→4
「バトルです。《終末の騎士》で直接攻撃します」
ドローから間髪入れずに攻撃宣言まで進むと、命令を受けた《終末の騎士》がリリアへと肉薄する。
それを眺めることしかできない葵の脳裏に浮かぶのは、先日行った天宮とのデュエルで受けたダメージ。《エリア》に闇のデュエルによるダメージを無力化してもらった上であの激痛なのだ。今の状況でリリアが直接攻撃を受けるのは生死に関わると言っても過言ではない。
「《エリア》……」
急かしても意味はないと分かっていても、口にせずにはいられない。だがその願いが届いたのか、目を開いた《エリア》の表情がわずかに緩んだ。
『結界の薄い部分を見つけましたのです。これなら私でも突破できるのです!』
「本当!?」
『ですがこの姿では力が足りないのです。マスター、《リヴァイエリア》として私を呼び出してくださいなのです』
「う、うん、わかった。お願い、《エリア》!!」
相棒の言葉を信じてデュエルディスクへカードを読み込ませることで《リヴァイエリア》がソリッドビジョンとして顕現。海竜と融合した《水霊使いエリア》はその杖を振るってその身に水を纏い、攻撃準備を進めていく。
『[レヴィアタン・ボルテックス]、なのです!!』
己が身を覆うほどの水を纏った突進はあらゆるものを押し流す激流となり、葵たちを阻む十字架へと迫る。
その威圧感はさるものだが、あくまでソリッドビジョン。いくらカードの精霊といえどこの世界に干渉できるわけではない。そのはずなのだが──
バギンッ!! という重々しい音を皮切りにビルの鉄骨を重機でへし折るような轟音が鳴り響き、そびえ立つ十字架の一つが崩壊。それにより生まれた隙間へと葵は身体をねじ込ませ、閉鎖された空間へ侵入することに成功した。
その光景にリリアと甘音が唖然としているが、すでに攻撃宣言を終えた《終末の騎士》は我関せずと突き進み、今にもリリアにその剣を振り下ろそうとしていた。
「っ、《エリア》!」
『お任せなのです』
杖を振るい、自身に纏っていた水の一部を射出して《終末の騎士》の剣を狙い撃つ。直撃したそれが剣を弾くことはなかったが、少なくとも纏っていたオーラのようなものは消滅した。おそらくそれが闇のデュエルによるダメージ。しかしまだ安心できない。
故に葵は転がるようにしてリリアと《終末の騎士》の間に割り込んだ。
「あお──」
リリアが状況を理解する前に振り下ろされる剣。精霊によって闇のダメージが無力化できてもサイコダメージは別。せめてデュエルディスクを盾にすれば抵抗できたかもしれないがそんな余裕はない。
されど少女は背後の親友を守るため、自分の身が切り裂かれる恐怖を押し殺して踏みとどまる。間も無くして、《終末の騎士》の剣は少女の身体を……すり抜けた。
「……え?」
激痛を覚悟して呼吸さえ止めていた少女から間の抜けた声が漏れる。
ライフ:4300→2900
斬られたのに気づいていないというわけではない。どれだけ待っても激痛も、血飛沫も上がらない。だが、聞き慣れた電子音とともにリリアのライフが減少したため、手札誘発で攻撃を防いだわけではない。
予想外の出来事にしばらく唖然としていたが、程なくして冷静になった葵の中に一つの仮説が生まれる。
その視線は自分の身体から離れ、相対するふわふわした印象を受ける女性へと移る。
「あなた、もしかしてサイコデュエリストじゃないの?」
「…………」
返答はない。ただ、人口全体で考えればサイコデュエリストはほんの一握りだ。目の前の女性がサイコデュエリストでない可能性だって十分にある。エヴァという前例もあるため、
しかし裏を返せば、エヴァと同等かそれ以上の理由が彼女にあるということ。初対面でも争いごとが苦手であるとわかるような女性が、一体どんな気持ちでここに立っているのか。その覚悟の重さは計り知れなかった。
「続いて私は《イーバトークン》で直接攻撃です」
「っ、《エリア》!」
『はいなのです』
ライフ:2900→2400
続く小さなエイリアンの攻撃に対し、《エリア》はリリアを守るように水の結界を作り出す。その力は闇のデュエルによる実ダメージしか防げないのだが、どういうわけか《イーバトークン》はその水の結界に弾かれていた。とはいえ《終末の騎士》の攻撃同様ライフポイントの処理は正常に行われている。
この不自然な挙動は闇のデュエルというイレギュラーな状況に由来するのかもしれないが、それを明確に説明できる者はこの場に存在しない。
「メインフェイズ2、モンスターとカードを1枚ずつ伏せてターンエンドです」
| 【甘音】 2/4300 -▲○○- ○ --■-- |
| 【リリア】 5/2400 ----- ----- |
帰還する《サンライト・ユニコーン》の追撃があるにも関わらず、《イーバトークン》でダメ押しを行った甘音が伏せたのは1枚のセットカードのみ。それはその1枚だけで十分対処できるという計算か、はたまたただのブラフか……
考えることが山積みなうえに周囲の状況までもが目まぐるしく変化していく。今の時点でリリアはキャパオーバー寸前だろう。
そんな不安からか、泳ぎに泳いだ視線は最終的に助けを求めるように葵の方へ。それに気付いた彼女は優しく微笑みそっと抱き寄せた。
「リリア、大丈夫?」
「……えへへ」
始まってしまった闇のデュエルを止める術を彼女たちはしらない。だからこれはただの気休めでしかないのだが、そんな気休めでも少女の震えを止めることぐらいはできたらしい。
しかしデュエルを代わることはできない。見守ることしか出来ない歯痒さを感じ、同時に先の一矢とのデュエルでは黄昏がこんな感情を抱いていたのだと理解した葵。
ならば彼女ができることはひとつだけ。わずかでも不安を紛らわせればと願いリリアの隣に立つ。
「……当然わかっていると思いますが、アドバイス等は遠慮してください」
「言うまでもないね。というか、リリアのデッキに関しては他人がアドバイスしてどうなるものじゃないし」
「じゃあいくよー! ドロー!!
それからスタンバイフェイズに《サンライト・ユニコーン》は帰ってくる、だよねー!」
手札:5→6
《サンライト・ユニコーン》
除外→フィールド
出だしこそ挫かれたものの、主人を守るべく貞潔の聖獣は今度こそその四肢は大地を踏みしめた。
「それじゃあまずはメインフェイズ1開始時に《あまびえさん》を見せてお互いにライフを300回復ー!」
ライフ:4300→4600
ライフ:2400→2700
「続いて《大胆無敵》を発動ー! これで甘音さんがモンスターを召喚・特殊召喚・反転召喚するたびにアタシはライフを300ポイント回復できるからねー。
そして《サンライト・ユニコーン》の効果を発動ー!
デッキの一番上をめくって装備魔法カードなら手札へ、違ったらデッキの一番下へ戻すよー。[聖獣の恵み]」
勢いよく引かれたカードが、ソリッドビジョンによってお互いのプレイヤーが確認しやすいように表示される。
「引いたカードは《D・D・R》。装備魔法だから手札に加えるねー」
手札:5→6
「ってことで、《サンライト・ユニコーン》で《イーバトークン》を攻撃ー![グレース・ダッシュ]」
「あ、バカ──」
アドバイスはしないと決めていたにも関わらず、思わず声が出てしまった葵だが時すでに遅し。
主人の命に従って攻撃を開始した一角獣の一撃がエイリアンを貫く直前、突如として両者の間で空間に亀裂が走った。
「伏せていた《次元幽閉》を発動です。
攻撃宣言を行なった相手モンスター1体を除外します」
「うぇっ!?」
「さらに、再び相手フィールドのモンスターが除外されたため、墓地の《ゼータ・レティキュラント》の効果を発動です。
私フィールドに《イーバトークン》を生成します。それからリリアさんの《大胆無敵》の効果も発動されますね」
フィールド→除外
【リリア】
ライフ:2700→3000
1ターンぶりにフィールドに戻ってきたにも関わらず、主に従って攻撃を仕掛けた聖獣は再度次元の狭間へと飲み込まれてしまった。
そしてこれは《フューチャー・ヴィジョン》のような一時的な除外ではない。何かしらの手段を用いない限り幽閉された一角獣が戻ってくることはないのだ。
思わず頭を抱える葵は口を閉じて耐えようとする……が、やっぱり我慢できなかった。
「リ〜リ〜ア〜っ!!」
「あわわわわわ……」
確かに彼女の手札に伏せカードを除去できる手段はなかった。それに《サンライト・ユニコーン》の効果で《D・D・R》が手札に加わっており、手札コスト要員の《妖刀竹光》もすでに手札にある。さらに帰還させた《サンライト・ユニコーン》はステータスのリセットが適応され再び効果を使える。
結果的に全体で見れば±0。相手の伏せを消費させているので、除去カードが乏しいリリアのデッキであればプラスと考えてもいいかもしれない。
ただし、リリアがそこまで考えれていれば、だが。
「まあそれもリリアらしいか」
「あれ、なんだか呆れられてたり?」
「今更だから気にしなくてもいいよ」
「あうう……気を付けますー……
ええっと、じゃあ手札の《D・D・R》を発動するよー。
コストで手札1枚を墓地へ送って、除外された《サンライト・ユニコーン》をもう一度アタシのフィールドへー!」
手札:5→4
《サンライト・ユニコーン》
除外→フィールド
次元の狭間から再びフィールドへと舞い戻ったリリアの守護獣。さらに一度フィールドを離れたことで1ターンに1度の制約もリセットされている。
「さらにさらに、コストで墓地へ送った《妖刀竹光》の効果ー! このカードが墓地に送られた場合、同名以外の竹光カードをデッキから手札に加えるよー。
この効果でアタシは《黄金色の竹光》をサーチ!
何もないなら《サンライト・ユニコーン》の効果でデッキの一番上を確認するよー![聖獣の恵み]
一番上のカードは……《シンクロ・ヒーロー》! 装備魔法だから手札に加えるねー!」
手札:4→5→6
かなり運が絡んでいるものの、消費した分の手札をすべて補ってみせた。いつかの黄昏が言っていた『デッキに愛されてる』という意味をこうしてまじまじと見せつけられると、その体質の異常性がよくわかる。
「カードを2枚セットしてターンエンドだよー」
| 【甘音】 2/4600 ○▲○○- ○ ----- |
| 【リリア】 4/3000 --○-- -■□□■ |
「私のターン、ドローです」
手札:2→3
味方でさえ引いてしまうほどの驚異的なドロー運を見せつけられながらも、甘音はそれに動揺することもなく真剣な表情で自分の手札へ目を通す。……いや、もしかすると彼女は動揺する暇すらないほどに余裕がないのかもしれない。
リリアのフィールドは軽く確認する程度で、彼女は手札のカードを切っていく。
「私は《調律》を発動です。デッキから《シンクロン》モンスターを手札へ加え、その後デッキトップを1枚墓地へ送ります。
デッキから《ジャンク・シンクロン》をサーチし、デッキトップを墓地へ。
……ではこのまま《 ジャンク・シンクロン 》を通常召喚します。
この瞬間《フューチャー・ヴィジョン》の効果で《ジャンク・シンクロン》は次のスタンバイフェイズまで除外です。
ああ、《ジャンク・シンクロン》召喚時にリリアさんは《大胆無敵》の効果でライフを300回復ですね」
フィールド→除外
ライフ:3000→3300
召喚時に墓地のレベル2以下の仲間を蘇生できるチューナーモンスターだが、彼女の墓地にその効果を適応できるモンスターはいない。それだけなく、リリアの《サンライト・ユニコーン》の時と同じくフィールドへ降り立つと同時に小さな残骸の戦士は次元の狭間へと吸い込まれていく。これが単に甘音に《フューチャー・ヴィジョン》を回避する方法がなかったからなのか、他の思惑があったのかはわからない。わかっていることは、次のターンにはほぼ確実にシンクロ召喚が行われるということだけ。
「カードを2枚セットしてターンエンドです」
| 【甘音】 0/4600 ○▲○○- ○ --■■- |
| 【リリア】 4/3300 --○-- -■□□■ |
「アタシのターン、ドロー!」
手札:4→5
「まずは手札の《あまびえさん》を見せてお互いにライフを回復して、それから《サンライト・ユニコーン》の効果ー![聖獣の恵み]
一番上のカードは……《ラプテノスの超魔剣》だよー!」
ライフ:4600→4900
ライフ:3300→3600
手札:5→6
もはや確定ドローと言っても差し支えない確率で得た潤沢な手札と睨めっこをするリリアを横目に、葵はデュエルの状況を俯瞰する。
手札枚数は圧倒的にリリアの方が有利でライフ差もほとんどない。ことデュエルモンスターズにおいて手札枚数の優位性が高いのは確かだが、フィールドアドバンテージがそれを差し引いても厳しい。
何より《フューチャー・ヴィジョン》が痛い。リリアのデッキはカードが揃うまで動きが少ないのが難点だが、揃ってしまえばその瞬間火力で相手を一気に倒せるポテンシャルがある。だがそのほとんどが通常召喚であるため、どうしても動き始めるまでにタイムラグが発生するのを避けられない。
さきほどのドローで《ビックバン・ガール》も彼女の手札にきたものの、このモンスターを出す手段が通常召喚しかない現状では今出すべきかどうかも悩ましいところだ。
「……むむ?」
そう小さく呟いたのは先程まで手札とにらめっこをしていたリリアだった。
首を傾げフィールドを眺め、何かを思い出すように腕を組んで唸ること数秒。何かを思いついたように意気揚々と手札のカードに手を伸ばした。
「じゃあ《 ビックバン・ガール 》を召喚するよー!」
杖を携えたそのモンスターはライフを回復するごとに相手へバーンダメージを与える効果を持つ、キュアバーンのキーカードだ。すでに継続的な回復手段を準備できている今の状況であれば、フィールドに存在するだけでフィニッシャーにもなりうるだろう。ただしフィールドに存在すれば、だが。
「《フューチャー・ヴィジョン》の効果でそのモンスターも次のリリアさんのスタンバイフェイズまで除外されます。そしてこの瞬間墓地の《ゼータ・レティキュラント》の効果も発動し、《イーバトークン》が生成されます」
「それからアタシの《大胆無敵》のライフ回復もねー!」
フィールド→除外
【リリア】
ライフ:3300→3600
「ふっふっふ、ターンエンドだよー!」
複数のカード処理が終わり、蓋を開けてみればリリアのモンスターは増えず、逆に甘音のフィールドがモンスターで埋め尽くされるだけ。次のターンに《ビッグバン・ガール》を用意するための行動にしてはその意味深な笑みはいささか戦術が浅いといえよう。
ターンエンドの宣言を受け、優先権が移った甘音のデュエルディスクのランプが点滅し始める。あとは甘音がカードの処理などを終えて優先権を放棄すればリリアのターンが終了する。
「……なるほど、そういうことですか」
手元で一定のテンポを刻む光をその身に受けつつ、今度は甘音の方が小さく呟いた。
「今私のフィールドはすべて埋まっています。この状態では《フューチャー・ヴィジョン》で一時的に除外された《ジャンク・シンクロン》はフィールドに戻れず墓地へ送られるため、このままではシンクロ召喚をする素材が揃わないというわけですね」
「大正解だよー! アタシだってちゃんと考えてるんだからねー!」
「確かに効果の穴を突いた戦術だと思います。ですが、私もそこに関しては対策済みです!
伏せていた《ハイレート・ドロー》の効果を発動です。自分のモンスターを2体以上破壊することで、2体につき1枚カードをドローできます。
《イーバトークン》3体と伏せモンスターの《 ダンディ・ホワイトライオン 》の4体を破壊し、2枚ドローです」
「うぇーっ!?」
「さらに墓地へ送られた《ダンディ・ホワイトライオン》の効果発動です。このモンスターがフィールドから墓地へ送られた場合、自分フィールド上に《 白綿毛トークン 》を3体守備表示で特殊召喚します。これでリリアさんの《大胆無敵》も発動してしまいますね」
フィールド→消滅
《ダンディ・ホワイトラオン》
フィールド→墓地
【甘音】
手札:0→2
ライフ:3600→3900
《終末の騎士》を残して破壊され尽くした甘音のフィールドだが、破壊された獅子の綿毛が3体フィールドにとどまり続けている。リリアの思惑を回避しつつもフィールドのトークンの数はほとんど減らさずドローまでする見事なカード回し。さらに《ハイレート・ドロー》は墓地にある場合フィールドのモンスター1体を破壊することで再セットできる効果もある。効果の噛み合い具合から、これを見越して天音はこの2枚のカードをセットしていたということなのだろう。
闘争心などがないため油断しそうになるが、彼女のデュエルタクティクスは非常に高いものであることがうかがえる。
「私の処理はこれで以上です。リリアさんの方はなにかありますか?」
「うう……ない、です」
| 【甘音】 2/4900 △△○△- ○ ---■- |
| 【リリア】 5/3900 --○-- -■□□■ |
「私のターンです。ドロー。そしてスタンバイフェイズ、除外されていた《ジャンク・シンクロン》が帰還します」
手札:2→3
《ジャンク・シンクロン》
除外→フィールド
どうにかして阻止しようとしたが止められなかったチューナーと非チューナーの組み合わせ。そのレベルの合計は7。この付近のレベル帯は汎用性が高いものが多すぎて何が飛び出してくるか想像もつかない。
「いや、でも……」
隣で固唾を飲んでいる親友に気づかれないように、葵は小さく呟いた。このフィールド及び彼女の使用するデッキとの相性的に適しているであろうモンスターがすぐさま思い浮かんだのは、そのモンスターと少なからず縁がある葵だからこそだろう。そして、予想が正しい場合リリアの敗北は濃厚になる。
もはや予想を裏切ることを祈るしかない少女たちの前で、その答え合わせをするかのようにモンスターたちは一筋の光となっていく。
「レベル3の《ジャンク・シンクロン》でレベル4の《終末の騎士》をチューニング。増幅された力場は空間を切り裂き次元を跳躍する奇跡を起こす。シンクロ召喚、往来せよ《 PSYフレームロード・Z 》」
フィールド→墓地
【リリア】
ライフ:3900→4200
そのモンスターの姿は、鎧というよりはパワードスーツに近い装備に身を包んだサイキッカーというべきだろうか。頭部や肩などに備えられた棘のようなものは余剰分のエネルギーの排出機構なのか、その棘の先では蜃気楼のように空間を歪めながら激しくスパークを起こしている。
「……え?」
その小さな呟きに対し、反応する者はいなかった。
「召喚時に何もないのであれば《PSYフレームロード・Ζ》の効果を発動です。このカードと相手の特殊召喚された表側攻撃表示モンスター1体を次の私のスタンバイフェイズまで除外します。
《PSYフレームロード・Z》と《サンライト・ユニコーン》を次のエンドフェイズまで除外です。[ワンタイム・ターミネート]」
「ええっと、つまり《PSYフレームロード・Ζ》がフィールドを離れちゃうってことだよね?
だったらその効果にチェーンして伏せていた《捲怒重来》を発動して《PSYフレームロード・Ζ》に装備だよー!」
ATK:2500→3300
フィールド→除外
《サンライト・ユニコーン》
フィールド→除外
《D・D・R》、《捲怒重来》
フィールド→墓地
スパークが激しくなり周囲の空間が歪み始めた直後、それに割り込むようにリリアがセットしていたカードを発動。しかし装備カードとなっていたカードは装備していたモンスターがフィールドを離れたことでルール効果により墓地へ送られてしまった。
パッと見ればカードを1枚無駄にしたようにしか見えない行動だったが、行った本人は胸を張って自慢げに効果の説明を始めている。
「さっき発動した《捲土重来》は発動後に相手のモンスターの攻撃力と守備力を500アップさせる装備カードになるんだけど、モンスターがフィールドを離れたことでこのカードが墓地へ送られたら、カードを1枚ドローできるんだよー。
さらに、発動したターンに墓地へ送られたのなら2枚ドローして1枚捨てる効果になるんだよねー!」
手札:5→7→6
「にへへへ、どうどう? アタシもちゃんとコンボ考えられるようになってきてるよねー?」
「………………」
「あおいん?」
あからさまに褒めてもらおうとするリリアが話を振ったものの、隣に立つ親友から帰ってきたのは無言のみ。見れば、その青髪の少女は何かを考え込んでいる様子だった。
「あの、どうして《ジャンク・アーチャー》じゃないんですか?」
「……あのカードを私が使うと、あの子が拗ねちゃいますから」
想定した最悪の状況にならなかったことを喜ぶよりも疑問の方が強かったがための質問に、甘音は力なく笑いながらそう答えた。それだけで彼女が葵を襲撃しようとした理由は明確。
しかしそれ以上の追求……いや同情は不要と言わんばかりにデュエルは再開。リリアも困惑しながらもそれに対応するほかなかった。
改めて、各々が発動したカードの処理が終わった結果、リリアの手札がさらに補充されたとはいえフィールドはガラ空き。
対する甘音のフィールドにも攻撃力0のトークンしか存在していなかったが、異次元へと続く空間が閉じる直前に小さなエイリアンが1体姿を現してしまう。
「リリアさんのフィールドからモンスターが除外されたので墓地の《ゼータ・レティキュラント》の効果発動です。
これにより《イーバトークン》を生成します」
「えっと、じゃあ《大胆無敵》の効果も発動だねー」
「ええ、もちろん覚えています」
ライフ:4200→4500
ついにライフが4000を超え、ここまで受けたダメージ以上のライフを回復したリリアだが、依然としてフィールドに関しては劣勢のまま。そして今は彼女を守るモンスターが1体もいない状態だ。
「バトルフェイズ、《イーバトークン》で直接攻撃です」
『護衛はお任せなのです!』
ライフ:4500→4000
ガラ空となったフィールドを駆け抜けて襲いかかるエーリアンの攻撃を《リヴァイエリア》の作り出した水の壁が阻む。しかしそれで防げるのは闇のデュエルによる痛みのみで、ライフダメージそのものは通っている。《PSYフレームロード・Z》の継続的な除外を止めないかぎりリリアの守りは無理やり剥がされ、残ったエイリアンに蹂躙されていくことになるだろう。
「けど次のターンには《サンライト・ユニコーン》も《ビッグバン・ガール》も戻ってくるから──」
「残念ですがそうはさせません。まずは手札の《七星の宝刀》を発動です。手札のレベル7モンスターである《風の天翼ミラドーラ》を除外し、カードを2枚ドローします」
手札:2→1→3
食い気味にカードを切ったかと思えばその効果は手札交換。除外されたモンスターもそれをトリガーとするものではなく、相手のEXモンスターに対して効果を発動するモンスターだ。リリアのデッキでは必要ないと判断して切り捨てたのだろうが、なぜこのタイミングで、しかもリリアの次ターンの思惑を阻止するような素振りで発動したのかはわからなかった。
故に、直後に発動されたカードにリリアだけでなく隣で見守っていた葵も息を呑んだ。
「そして《大欲な壺》を発動です。自分と相手の除外されているモンスターの中から3体を選び、デッキに戻すことでカードを1枚ドローします。
私が戻すのは自分の《ミラドーラ》とリリアさんの《サンライト・ユニコーン》と《ビッグバンガール》の3枚です」
「っ!?」
除外→デッキ
【甘音】
手札:2→3
除外→デッキ
少女が少しずつ手繰り寄せ、ようやく見えてきた逆転の布陣はあと一歩のところで徹底的とも言える妨害行為により無に帰してしまった。《PSYフレームロード・Z》の効果は一度発動さえしてしまえば帰還時に片割れがいなくとも正常に処理される裁定。
リリアの潤沢な手札には《あまびえさん》を除けばモンスターはいない。いかにライフを回復し続けているとはいえ、がら空きになったフィールドで何度も耐えられるほどの回復量はないだろう。
「カードを1枚セットしてターンエンドです」
| 【甘音】 2/4900 △△-△○ ○ --■■- |
| 【リリア】 6/4000 ----- -■-□- |
「ううう……アタシのターン、ドロー!!」
手札:6→7
「……っ!」
戻ってくるはずだったモンスターすべてをデッキへ戻され、手札は潤沢なれどアタッカーとなるモンスターがいないこの状況では打開はできない。その状態で迎えた運命のドロー。
結果は……少女の屈託のない笑顔が物語っていた。
「いいカードが引けたみたいですね」
「えへへ! でもまずは手札の《あまびえさん》を見せてお互いにライフを回復するよー!」
ライフ:4900→5200
ライフ:4000→4300
「そして手札から《フォトン・ベール》を発動ー! 手札のレベル4以下の光属性モンスターを1体特殊召喚するねー。
お願い《 騎士デイ・グレファー 》!」
手札:6→5
足を踏み入れる者を次元の狭間へ飛ばしてしまうフィールドに囚われないようにフィールドに降り立った騎士は、数多のifの姿を持ち、その生涯が数多の魔法・罠カードとしても描かれている《戦士ダイ・グレファー》の形態の1つ。正義の道を進み、とあるガーディアンから力を授かった姿とされている。
「そしてこのターンの通常召喚権を使って《騎士デイ・グレファー》を再度召喚! さらにさらに、手札の《シンクロ・ヒーロー》を《騎士デイ・グレファー》に装備だよー! これで《騎士デイ・グレファー》のレベルは1上がって攻撃力は500ポイントアップー!」
レベル:4→5
ATK:1700→2300
「何もないならバトル! っとその前に、バトルフェイズ開始時に速攻魔法《封魔の矢》を発動ー! このカード発動後、エンドフェイズ時まで魔法・罠カードの効果を発動できなくなるよー」
「ではその発動にチェーンして伏せていた《トラップトラック》を発動です。自分フィールドのモンスター1体を破壊し、デッキから同名カード以外の通常罠カード1枚をセットします。
私は《イーバトークン》を破壊してデッキから《トークン謝肉祭》をセットです。この効果でセットした罠カードはセットしたターンでも発動できる代わりに、このターン中私が発動できる罠カードは残り1枚だけになりますが、《封魔の矢》が適応されたならあまり気にすることではありませんね」
フィールド→消滅
「……むう」
すべてのカード処理を終え、安心して攻撃できる準備が整ったのはいいものの、唯一攻撃表示だった《イーバトークン》が消滅してしまった。《メテオ・ストライク》のような貫通効果を付与できる装備魔法も無いこの状況では《白綿毛トークン》1体を過剰な火力で破壊するぐらいしかできることはない。
とはいえ、このまま攻撃しないのはまずありえないだろう。
「よし、それじゃあ《騎士デイ・グレファー》で《白綿毛トークン》を攻撃ー![紫電双閃]」
黒いマントをなびかせ、滑るような動きで肉薄した騎士はその手に握る1対の剣でトークンを瞬殺。ダメージこそ与えられなかったがその技量の高さをまざまざを見せつけた。
「それからメインフェイズ2にカードを1枚伏せてターンエンドだよー。
そしてエンドフェイズ時に再度召喚してる《騎士デイ・グレファー》の効果発動ー! 墓地の装備魔法を1枚手札に加えるねー。
選ぶのは《D・D・R》だよー![閃光闘志]」
手札:3→4
| 【甘音】 2/5200 △△--- ○ --■■- |
| 【リリア】 4/4300 --○-- ■■□□- |
「私のターン、ドローです」
手札:2→3
「スタンバイフェイズに、先ほどのターンに除外された《PSYフレームロード・Ζ》がフィールドに戻ります」
激しいスパークと共に空間が歪み、2ターン前に除外されたモンスターがフィールドに舞い戻る。が、そのままメインフェイズに移った瞬間再び《PSYフレームロード・Ζ》が放電を始めた。
「メインフェイズ、再び《PSYフレームロード・Ζ》の効果を発動です。
次の私のスタンバイフェイズまで《騎士デイ・グレファー》と共に除外します。[ワンタイム・ターミネート]」
「ちょっと待ったー! その効果にチェーンして伏せていた《武装再生》を発動ー! 自分か相手の墓地にある装備魔法を対象に、そのカードを自分フィールドにセットするか装備可能な自分モンスターに装備できるよー!
私は墓地の《ラプテノスの超魔剣》を《騎士デイ・グレファー》へ装備ー!」
再度《PSYフレームロード・Ζ》の効果に割り込み、今度は《騎士デイ・グレファー》へカードを装備するリリア。
双剣の代わりにその手に持つのは先日のデュエルで早乙女が使用していた剣であり、確かに《PSYフレームロード・Ζ》の効果への対抗策として有効なカードであった。……タイミングが正しければ、だが。
「……私から説明します」
「え、ええ、どうぞ」
自信満々なリリアと対照的に、なんとも言えない表情を浮かべる葵と甘音。そのなんとも言えない空気に流石のリリアも『何かやらかした』ということを察し、恐る恐る隣の親友に視線を向けた。
「確かに《ラプテノスの超魔剣》を装備したモンスターは攻撃表示の場合は相手の効果の対象にならなくなるよ?
けどねリリア、このタイミングでチェーンしても《PSYフレームロード・Ζ》の効果はすでに『効果の対象を選ぶ』って手順を終えてるから『効果の対象にならない』っていう効果で防ぐことはできないの」
「…………マジ?」
「うん、マジ」
とはいえ、この処理は《安全地帯》で類似のミスをする学生が多いのも事実だった。《安全地帯》の場合は『効果の対象にならない』効果とは別で純粋な破壊耐性も内蔵しているため、破壊されなかったのを『効果の対象にならない』から防げたと勘違いしてしまうからだ。
そのためデュエルアカデミアでも念入りに授業を行う処理の一つでもあるのだが、本日ようやく正式に進級できたぐらい勉強が苦手なリリアがそのあたりの複雑な処理を理解してるわけがなかった。
なにより、知っていたなら先程の《捲怒重来》で《ラプテノスの超魔剣》を捨てるような真似はしないだろう。
「まあ、相手の効果にチェーンして奇襲を仕掛けようとしたのはわかるけどね……」
「だ、だだだだだ大丈夫っ!
あ、あたっ、アタシは《迷い風》発動ー!」
再三小刻みに震える小動物となった少女は、表情を引きつらせつつもう一枚の伏せカードに手を伸ばした。
とはいえ慌てているせいか効果の説明をする余裕すらない様子。《迷い風》は特殊召喚でフィールドに呼び出されているモンスターを対象に発動でき、永続的に効果無効と攻撃力を半減させる事ができるカードだ。
そして半減した攻撃力であれば《騎士デイ・グレファー》が戦闘破壊される心配もない。こちらを先に発動していれば《武装再生》及び《ラプテノスの超魔剣》は必要なかった可能性もあるが、プレイミスからなんとか持ち直せたのがせめてもの救いか。
ATK:2500→1250
「ふ、ふふふふふふふっ!!!
これで《PSYフレームロード・Ζ》の効果は無効化されたから《騎士デイ・グレファー》が除外されることはないぞー! どうだー! うらー!!」
「《武装再生》が発動損になってるからアドバンテージ的には損してるの忘れちゃだめだからね?」
「あ、うー……」
「……ふふ」
なんとか持ち直せたことでランナーズハイになりかけていたところ、背後で腕を組んでいる親友に冷水を浴びせられたことですぐに小さくなり、敵ながらもその光景に甘音の表情も僅かに緩んだ。
何はともあれリリアの機転により甘音優勢で進んでいたデュエルに小休止が入った。
一度流れが止まったことで状況を見つめ直す機会が訪れ、甘音はいましがたドローしたカードを含めた手札を確認する。
「やっぱりこのままじゃ……でも、だとしても……」
その手札にこの状況を打開する手段がないのか、眼鏡の奥にある大人しそうな視線はゆっくりと自分のフィールドのセットカードへ。次第にその表情が強張っているのはそのセットカードでも打開が難しいのか、あるいは『その流れ』を躊躇っているのか……
「あ、あのー、大丈夫ですかー?」
「ごめんなさい。私は、負けられないんですっ!」
こんな状況でも相手の心配をするお人好しな金髪少女に今一度謝罪し、甘音は覚悟を決めてセットカードへと手を伸ばした。
「私は伏せていた《死なばもろとも》を発動です! お互いに3枚以上手札がある場合その手札を全てデッキボトムへ戻し、自分は戻したカードの合計×300ライフを失い、その後お互いにカードを5枚ドローします。
私とリリアさんの手札は合計7枚。よって私はライフを2100失い、そしてドロー!」
手札:3→0→5
ライフ:5200→3100
手札:4→0→5
「あぐ……っ、あ゛あ゛あ゛っ!!」
相手ともどもとはいえ大量ドローが可能なそのカードの代償は大幅なライフロス。リリアの《あまびえさん》のおかげでまだまだライフが残っているとはいえ、闇のデュエルによる痛みから守ってくれてる存在もいない彼女は全身に走る激痛に悲痛な叫びを上げる。
先程までのどこか緩かった空気は消え去り、殺伐としたものへ変わり果ててしまった。その変化に対応できなかったリリアは思わず小さくなって震え始め、今にもへたり込んでしまいそうだった。見かねた葵が彼女を抱き寄せなだめようとするが、気休め程度にしかならないらしい。
そんな少女たちを気に留める余裕もなく、甘音は補充された手札を確認し……そして静かに目を伏せた。まるで、《死なばもろとも》を発動するとこうなる未来がわかっていたと言うように……
「まずは手札の《魔法石の採掘》を発動です。手札2枚を捨て、墓地の魔法カード1枚を手札に加えます。
私は手札の《融合》と《シャッフル・リボーン》を捨て、そして今捨てた《融合》をサルベージ!
さらに墓地の《シャッフル・リボーン》の効果です! 墓地のこのカードを除外し、自分フィールドのカード1枚を対象にデッキへ戻すことでカードを1枚ドローします。
《PSYフレームロード・Z》をデッキへ戻し、1枚ドロー!」
手札:4→2→3→4
《PSYフレームロード・Z》
フィールド→EXデッキ
「そして……私は手札の《 亡龍の戦慄-デストルドー 》の効果を発動です! 1ターンに1度、ライフを半分払って自分フィールドのレベル6以下のモンスター1体を対象に発動。このカードを手札・墓地から特殊召喚し、対象としたモンスターのレベル分自身のレベルを下げます!
私はライフを半分支払い……ぐぅっ!? れ、レベル1の《白綿毛トークン》を対象に手札から特殊召喚し、レベルを7から6へと下げます。[破滅疾走]」
ライフ:3100→1550
手札:4→3
《亡龍の戦慄-デストルドー》
レベル:7→6
ライフ:4300→4600
止まった流れを再び動かすべく呼び出された最初のモンスターは白骨となる途中段階の竜の亡骸。なまじ肉の残った状態である故に生々しく、おぞましさは下手なアンデット族よりも上だろう。
「っ!?」
「リリア、落ち着いて」
《大胆無敵》のライフ回復効果の宣言も忘れ、デュエルディスクが勝手に処理してくれている中、甘音のフィールドにいるのはレベル6となったチューナーとレベル1のトークンたち。レベル7のシンクロモンスターが召喚可能となったことでリリアの表情が強ばるが、すかさず葵がその背中をさすってなだめる。
厄介な効果のためトラウマとなっているのだろうが、《PSYフレームロード・Z》が除外できるのは特殊召喚された攻撃表示のモンスターに限られる。そして今の《騎士デイ・グレファー》はその条件に当てはまってはいるが 《ラプテノスの超魔剣》によって対象に取られない。
リリアが発動するタイミングが致命的にミスっていただけで、《PSYフレームロード・Z》に対して《ラプテノスの超魔剣》は非常に有効なカードなのだ。
だがそれ以外にもレベル7帯にはこの状況を打開する効果を持ったシンクロモンスターは多数存在する。問題はそれらが甘音のデッキに入っているかどうかだが……
「甘音さん、大丈夫かな……?」
こんな状況でも心配するのは相手のことらしい。
ただ、デュエルで受けるダメージが現実のものとなる闇のデュエルで精霊に守られること無く一息にライフを3000以上も失ったのだ。平然を装っているが、よく見れば呼吸が荒くなっており血走った目で何かを耐えようとしている。
コストからくるライフロスであるため外傷こそないが、見えない部分はすでにボロボロなのかもしれない。リリアが心配するのも無理はないだろう。
「心配は、無用です……では続いて手札から《融合》を発動です。
私のフィールドの《白綿毛トークン》2体で融合。力を持たない無垢な精霊たちよ、今ここに混ざり合い反旗を翻しましょう! 融合召喚! 神秘の鱗に守られし翼竜、《 始祖竜ワイアーム 》!
そしてライフを1000ポイント払い、伏せていた通常魔法《運命のウラドラ》を発動です。自分フィールド上の表側表示モンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップ。さらに相手モンスターを戦闘破壊した際に自身のデッキボトムを確認し、そのまま戻すかデッキトップへ戻す事ができる追加効果を付与します。
《ワイアーム》の攻撃力を1000ポイントアップです」
フィールド→消滅
【甘音】
ライフ:1550→550
《始祖竜ワイアーム》
ATK2700→3700
ライフ:4600→4900
さきほどまであった豊富なライフを全て捨てる勢いでコストを払い続けた結果、甘音のライフはセーフティラインまで切ってしまっている。そこまでして己のモンスターを強化していくが、そのカードの真価を発揮するには付与された効果のさらなる効果を発揮しなければ割に合わないだろう。ただしそれは普通に行えば難易度の高い賭けでしかない。
普通に行えば、だが。
「バトルです! 《ワイアーム》で《騎士デイ・グレファー》を──」
「その前に《ラプテノスの超魔剣》の効果を発動するよー! 《サンライト・ユニコーン》を守備表示にして、手札からレベル4以下のモンスターを召喚。
お願い《 聖騎士の槍持ち 》! それから守備表示になったから《ラプテノスの超魔剣》の効果で《騎士デイ・グレファー》は戦闘では破壊されないからね!」
「ですがその召喚は特殊召喚ではなく通常召喚扱いです。ならば《フューチャー・ヴィジョン》により次のスタンバイフェイズまで《聖騎士の槍持ち》は除外されます。
そしてリリアさんのモンスターが除外されたことで《イーバトークン》が生成!」
「ならアタシの方も《大胆無敵》でライフ回復だよー!」
《騎士デイ・グレファー》が携えた剣を地面に突き刺して防御姿勢を取ると、突き刺した地面からモンスターの通り道が出現。その通り道を使い、フィールドに降り立ったのは鎧に身を包んだ重装騎士。ただしその召喚時に発動する効果をリリアが発動する素振りはなく、さらに呼び出された直後に異次元の彼方へと吸い込まれてしまった。
手札:5→4
《聖騎士の槍持ち》
手札→フィールド→除外
モンスターの増減により戦闘の巻き戻しが発生し、ひとまずは小休止。
迫りくる翼竜の攻撃をしのぎ、戦闘破壊されなくなったリリアのモンスターに対処できるモンスターは天音のフィールドには存在しない。しかしその過程で生まれた1体の小さなエイリアン。
リリアが生き残るためにはそのエイリアンが生まれることを許容する以外に方法はなかったが、前のターンに甘音がセットした罠カード及び《調律》のコストで墓地へ送られていたカード。加えてフィールドに存在する2体のドラゴン族モンスターたち。それらの組み合わせが何を意味するのか、俯瞰的に状況を見ていたがゆえに理解した葵の顔からはみるみるうちに血の気が引いていく。
「《大胆無敵》の効果にチェーンして私は伏せていた《トークン謝肉祭》を発動です。トークンが生成された時に発動できるこのカードは、フィールド上の全てのトークンを破壊し、その数×300ポイントのダメージを与えます。
フィールドのトークンは1体。よって300ポイントのダメージです!」
『リリアさんには傷ひとつ付けさせないのです!』
フィールド→消滅
ライフ:4900→4600→4900
《エリア》の防壁によりただのソリッドビジョンと化した爆風がリリアのライフを僅かにだが削る。《大胆無敵》によってそのダメージはあまり意味がなかったようにも見えるが、甘音にとってこのカードの発動の役割はその火力ではなく『ダメージを与えた』という条件を満たすためのもの。
「自分もしくは相手が効果ダメージを受けた場合、墓地の速攻魔法《青い天使の涙》の効果を発動です! 墓地のこのカードを除外し、手札・デッキから通常罠カード1枚をセットします。
私はデッキから《ナイトメア・デーモンズ》をセット。そしてこの効果でセットされた罠カードはセットしたターンでも発動できます! フィールドのモンスター1体をリリースし、相手フィールドに《 ナイトメア・デーモンズ・トークン 》を3体特殊召喚します。
リリースするのは《デストルドー》。そして《デストルドー》は自身の効果で特殊召喚されている場合、墓地へ送られた場合デッキボトムへ戻ります」
フィールド→デッキボトム
さまざまなカードの効果が重なり合い、相手を確実に葬らんとする布陣が完成していく様をリリアたちは見守ることしかできない。《死なばもろとも》のドローによって……いや、《調律》の追加効果で《青い涙の天使》が落ちた時点で甘音はここまでの流れを構築し、そしてそれを実現してみせたのだ。
……これが闇のデュエルでなければ、彼女が傷つくことなく披露されていたならば、リリアだけでなく葵も拍手を送っていたことだろう。そう悔やんでしまうほど、このカード回しによる代償で疲弊した女性の姿は痛々しかった。
「そして、手札から速攻魔法《竜の闘志》を発動です。このターンに特殊召喚された自分フィールドのドラゴン族モンスター1体は、相手フィールドのこのターンに特殊召喚されたモンスターの数まで、このバトルフェイズ中に攻撃できます」
震える指を無理やり動かして発動したそのカードにより、攻撃力3700の《ワイアーム》は《ナイトメア・デーモンズ・トークン》すべてに攻撃可能。そして《ナイトメア・デーモンズ・トークン》は破壊された時にコントローラーに800ポイントの効果ダメージを与える。この攻撃が全て通ればその合計は7500のダメージだ。
「リリ──」
「《ワイアーム》でまず1体目の《ナイトメア・デーモンズ・トークン》を攻撃![原初の咆哮]」
「──手札の《クリフォトン》の効果発動ー! このカードを墓地へ送ることで、このターン自分が受ける全てのダメージは0になるよー!」
手札:4→3
ライフ:4900→2900
翼竜の咆哮を受け跡形もなく吹き飛んだ小さな悪魔。その余剰分および悪魔から溢れ出た穢れは、無視できないダメージとなって金髪少女を蝕まんと迫りくる。そのダメージを前に立ちふさがったのは以前ニュートとのデュエルでも彼女を守った小さな精霊。主のライフという施しを受け、その身を光のベールへと姿を変えた精霊はこのターン限りあらゆる脅威から主を守る盾となる。
「……このターンで決着は尽きませんね。ならば《運命のウラドラ》が適応された《ワイアーム》で戦闘破壊したので追加効果を発動です。デッキボトムを確認し、そのカードをデッキトップかデッキボトムへ戻します。
デッキボトムのカードは先程自身の効果で戻った《亡龍の戦慄-デストルドー》です。今回はこのままデッキボトムへ戻します。
さらにこの効果で確認したカードがドラゴン族であったので追加効果が発生です。確認したモンスターの攻撃力1000ポイントに付き1枚ドローし、その後ドローした数×1000ポイントライフを回復します。
《デストルドー》の攻撃力は1000。よって1枚ドローしてライフを1000ポイント回復します」
手札:1→2
ライフ:550→1550
フィールド→消滅
「何もなければ続けます。《ワイアーム》で2体目の《ナイトメア・デーモンズ・トークン》を攻撃![原初の咆哮]
そしてデッキボトムを確認し、《デストルドー》を再びデッキボトムへ戻して1枚ドローとライフを1000回復。……そして3体目の《ナイトメア・デーモンズ・トークン》も攻撃です![原初の咆哮]
そしてデッキボトムの《デストルドー》をデッキボトムへ戻して1枚ドローとライフを1000回復!」
手札:2→3→4
ライフ:1550→2550→3550
フィールド→消滅
瞬く間にリリアのフィールドに巣食う悪魔を葬り去っていく翼竜と、それに伴うドロー加速。《クリフォトン》のお陰で首の皮1枚繋がったものの、《始祖竜ワイアーム》は効果モンスターとの戦闘では破壊されず他のモンスターの効果を受けないという効果モンスターに対する絶対的な耐性持ち。
これを早い段階で対処しなければジリ貧なのは間違いない。
「そして《 異次元の生還者 》を通常召喚し、《フューチャー・ヴィジョン》で次のスタンバイフェイズまで除外。カードを3枚セットしてターンエンドです。エンドフェイズ時、《シャッフル・リボーン》のデメリット効果で手札1枚を除外しなければいけませんが、手札はありませんので不発。さらに《異次元の生還者》はフィールドから除外された場合、自身の効果によりエンドフェイズに帰還します」
フィールド→除外→フィールド
| 【甘音】 0/3550 --○○- ○ -■■■- |
| 【リリア】 3/2900 --△-- --□□□ |
「……ふぃ」
「リリア大丈夫?」
「えへへ、これぐらいなら大丈夫だよー」
わざとらしいため息と共に額に滲んだ汗を拭うその身を案じ、隣で見守る葵は不安そうに覗き込む。
いくらダメージが無力化されているとはいえ、その攻撃による『圧』までは無効化できない。檻に隔たれていたとしてもその先にいる猛獣に恐怖を感じることがあるように、知らずしらずのうちに精神が疲弊していてもおかしくはなかった。心配をかけまいと気丈に振る舞っているが、汗を拭う手がわずかに震えているのがその証拠だ。
「あおいん、ちょっといいー?」
「何?」
「ちょっと前のターン、《PSYフレームロード・Z》が出たぐらいだっけ? あの時に甘音さんのことが何かわかったわかったみたいだったけど、一体何があったのー?」
今の状況に関係がないことを突然の尋ねられたものだから、葵は最初言葉が出なかった。それから葵は対峙しているデュエリストを見て、その後視線をそらしてから口を開く。
「たぶんあの甘音って人、前に私がデュエルした
自分が原因の因縁で親友を巻き込んでいるという事実を再認識し、謝らずにはいられなかった。
しかしそれは葵の自己満足であり、謝罪を受けたところでこの状況が変わるわけでもない。優しいリリアのことだからそこには触れず、また締りのない笑みを返してくれるのだろうと思っていた。
「ふむふむ、なるほどー。じゃあ、このデュエルで決着つけないとだねー!」
しかし予想に反して、リリアの顔つきが少し凛々しくなった。
「今のターン、甘音さんすっごく苦しそうだったもん。ここでアタシが負けちゃったら、あおいんとデュエルする時にまた苦しんじゃうでしょー?」
リリアはこの
それでもただ目の前の女性が苦しんでるという事実だけならリリアでも痛いほど察することができた。
覚悟の決め方は他の
気づけば、もう手の震えは止まっていた。
「よーし、いくよー!」
長い長い甘音のターンを乗り越えて、リリアのターンが動き出す──。
※2023/12/31
複数のアンケートを一括で表示させるのは無理そうだったので、残り3つのアンケートをそれぞれ36~38話に表示されるように変更してきました。
お手数をおかけしますが、余裕があればそれぞれのページでの回答をしていただけると幸いです。