あと、前々回ぐらいのデュエルから試しに、先攻のプレイヤーに関係した処理は左側、後攻のプレイヤーは右側って感じにしてみましたが、今回のデュエルからはさらに攻撃表示は《》を《》って感じに赤色、守備表示は《》って感じに青色で表記していきます
地図に印をされていた場所は、今は閉鎖された複合施設の一角だった。
元々は更地にされて新しいデュエル場が建築される予定だったが、数年前に建設予定地が変更されて解体工事は頓挫。その結果、周囲に民家はないがそこそこ大きな道路が近くを通っているという立地条件から、ならず者の溜まり場と化していた。
D・ホイールがない黄昏でもタクシーを使えば街の中心から20分程度。D・ホイールなどがあればもっと手軽に寄ることができるだろう。
そんな場所に足を踏み入れたが、黄昏は至って自然体で敷地内を歩いていく。
『なんかすごい視線を感じるッス』
「ただ好奇心で覗いてるだけだ。お互い面倒事は避けたいだろうし、こっちから何もしなけりゃ向こうも何もしてこねーよ」
そもそもの話、都心部から外れているとはいえここはセキュリティのパトロール範囲内だ。こういういかにもな場所は普段はパトロールしないとしても、大神の報告で事情を知るセキュリティなら調べない訳がない。
わざわざさらに注目を集めるようなことをして自分たちの秘密基地を失うような真似はしないだろう。
そこへ黄昏の端末から着信音が鳴り響いた。通話相手を見て今すぐ出るべきと判断すると、周囲に危険がないことを確認してから応対する。
「七波、遊形とは連絡ついたか?」
『ううん、電話は圏外でメールも反応なしだよ。今はリリアが代わりに連絡取ろうとして、数分おきにかけてるところ。
それより、本当にそこに日盛君が来るの?』
「なんとも言えねーな」
不良とはいえそれも一種の住人の目だ。これまで
なにより、遊形への連絡は圏外なのにこうして黄昏たちは問題なく連絡が取れているのだ。遊形の端末が壊れているか、電波の届かない隠し部屋などがない限りはこの周辺にいる可能性は低いだろう。ただし、『ボレアスのアジト』という観点で言えば全くの見当違いというわけでもないのも確かだ。
敷地の中でも一番奥に位置する喫茶店跡の中を覗くと、つい最近にもここを利用した様子があった。ただし、使われたのはおそらく喫茶店の中にある大きなテーブル1つとそれを囲む椅子のみ。ここだけ埃が掠れたような跡があり、何か大きな用紙を広げていたのだろう。時間を潰すだけが目的の不良の仕業とは考えにくかった。
『それにしても、「無茶させないように出るまでずっと電話かけ続けろ」って言われてそうしてるけど、日盛君って本当にそんな無茶するタイプなの? 今までの印象だと早乙女先輩みたいな真面目なタイプだと思ったんだけど』
「しばらく関わってたら嫌でもわかる。あいつはただアドリブが苦手なだけで、どちらかと言えば問題児側だ。でなきゃ、部外者なのに当たり前のようにアカデミアの保健室についてくるわけねーだろ」
『いやそれは……うーん、そう言われてみると否定はしきれないかも』
「しかも頑固で『これ』って決めた行動は意地でも実行する馬鹿だからな。
言ってしまえ馬鹿の一つ覚えなんだが、一度始めたら止めるのが滅茶苦茶面倒なんだ。
放っておいたら勝手にどこかで無謀なことしでかすんだよ、あの馬鹿は」
『馬鹿って言い過ぎじゃない? ……というか、どこかで無謀なことするっていうのは黄昏君も同じだよね?』
「俺は全部ひっくるめて考えて一番良さそうな行動をしてるだけ──っ!?」
何かを察知してとっさに身をかがめる黄昏だが、それが無駄だと即座に判断すると転がるように喫茶店跡から飛び出した。
直後、さっきまで黄昏がいた場所に巨大な腕が振り下ろされて喫茶店跡はいとも簡単に半壊してしまった。
『ちょっ、黄昏君!? 何かすごい音がしたけど大丈夫!?』
「後で連絡する」
土煙が舞う中、通話を切って改めて喫茶店跡を見る。
窓どころか屋根や壁まで壊すなど普通の人間にできることではないし、重機が動いている気配もない。
ともすればどんな能力が必要かは考えるまでもなく、その中から候補を探すのは難しくなった。
「久しぶりだな、ジン」
「こそこそ嗅ぎ回っとるネズミがいると思ったらお前かいな。ほんと目障りな奴やな」
小さく笑う黄昏に対し、眉をひそめて吐き捨てるように悪態をつくのはボレアスのリーダー、平阪ジン。
その後ろには彼のサイコパワーによって実体化した巨大なモンスターの影があったが、黄昏がその正体を視認する前に溶けるように消えてしまった。
「どこでここの情報を聞きつけたんや?」
「聞かれて答えると思うか普通?」
一触即発の状況で短いやり取りを行う二人。爆音に釣られて集まってきた不良たちも、その危険な空気に気圧されて蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
無関係な人間が巻き込まれずに済むことを安堵しつつ、それはそれとして黄昏はこの状況に舌打ちする。
ここを訪れる時点でボレアスの構成員と鉢合わせする可能性は十分にあった。下っ端であれば《Ol-セイクリッド》の試運転も視野に入れていたが、それがリーダーのジンでは流石に相手が悪いだろう。
お互いに次の一手を決めかね睨み合いを続けること十数秒。耳が痛くなるほどの静寂に包まれた空間で、ふとジンの視線の違和感に黄昏は眉をひそめた。
まるで黄昏を通して何か別のものを捉えているかのような……
「……ああ、そういうことかいな」
力なく項垂れ、すべてを悟ったかのように自嘲気味に笑う。
「こっちはまだまだやること山積みやってのに、まあええわ。ここで出会ったのが運の尽きやと思って、ちょっとボクの八つ当たりに付き合えや」
デュエルディスクのオートシャッフルを起動させながら、飄々とした態度の男は黄昏に言葉を投げかける。別に声を荒げるわけでもなく、ドスの利いた声で脅しているわけでもないのに、その言葉には凄みがあった。
対する黄昏もそれに怯むことはなく、しかしデュエルディスクを構えず即座に踵を返し走り出した。
「な、ん……っ、待てや!!」
「やなこった」
あっけに取られたジンをあざ笑いながらも建物の影を利用し、最適な逃走経路を考えながらの全力疾走。
その隣を並走するように浮遊する彼の相棒《スクラップ・ゴブリン》も最初こそ驚いた様子だったが、どこか納得した様子で背後に気を配る役割を担っていた。
『めちゃくちゃ怒ってるみたいっすけど……』
「俺のせいじゃねーよ。何でかはわからねーけど、ここに来た時点でかなりイライラが溜まってたみたいだからな。最初からきっかけがあればああなってただろうよ」
『その「きっかけ」はアニキの行動が原因じゃないっすか?』
「……そりゃ見事に肩透かし食らったわけだからな」
流石に相棒からのごもっともな意見には反論できなかったらしい。バツが悪そうに舌を出しながら少年は廃墟と化している路地をひた走る。
「仮に俺が逃げたのが原因だとしても、俺だって逃げる以外の選択肢はなかったけどな。
これまでの情報共有でジンのデッキ内容や使ってる《Ol-セイクリッド》の大まかな概要もすでにわかってんだ。今の俺じゃジンには勝てないし、やるだけ無駄なデュエルでサンドバッグになる理由もねーだろ」
途中で他のボレアス構成員に待ち伏せされている可能性もあったが、道中でジン以外に黄昏へ敵意を向けてくる気配はなかった。部下を引き連れていないということは、向こうも向こうで黄昏を鉢合わせしたのは想定外だったのだろう。
「…………あ?」
ふと、自分の端末に違和感を感じた黄昏は逃げるスピードは落とさないようにしつつ画面を確認する。どうやら不在着信が来ていたようだ。
時間的に葵と通話中のタイミングだったため、着信履歴だけが残っていたらしい。それだけなら今は無視してもよかったのだが、相手が相手のためそうも言っていられなかった。
「遊形……あーもう面倒だな!」
葵の話ではリリアが彼と連絡を取ろうとしてくれていたらしい。
よく知る相手からの着信を無視してまで黄昏へ発信した理由となれば一つ。あちらもあちらで何かトラブルに巻き込まれた……いや自分から頭を突っ込んだのだろう。
ダメ元で掛け直してみるが、案の定出る様子はない。メールの方にも通知が来ているが、そちらを見ている余裕は今はなかった。
『……一応アニキにも責任あるッスよ?』
「わかってる!」
実際、こうなる可能性は十分にあったのだ。その状態で葵と通話を続けながらこの施設の探索をしていた自分を棚に上げるわけにもいかず、相棒の指摘には眉をひそめるぐらいしかできなかった。
「てか、まだ追いかけてくるのかよ!
俺なんか倒しても何もならねーだろうに、よっぽど鬱憤が溜まってるんだな──とっ!?」
その小言は誰に言うでもなく行き場のない鬱憤を吐き出した独り言のつもりだったのだが、相手に聞こえてしまったのかはたまたタイミングよく痺れを切らしたのだろう。
遮蔽物を壊すように大きな細腕が振り下ろされた。先程喫茶店跡を半壊させたモンスターと同じだろうが、建物が邪魔で全容はやはり把握できない。それを承知で入り組んだ場所を選んでいるのだから当然ではあるが。
ひとつだけ間違いないのは、この攻撃の主が《Ol-セイクリッド・グガランナ》……ジンの
……そこまで考え、ふと黄昏の中で小さな疑問が生まれた。
彼の持つ《Ol-セイクリッド・グガランナ》は効果こそ対峙した遊形も把握しきれていない。しかしその強力無比な攻撃力と巨体は、サイコパワーで実体化できるジンにとってまさに切り札級の武器のはずだ。
相手を殺しかねないほどの殺気を放っていたにも関わらず、その力を使わない理由とはなんだろうか?
何かしらのポリシーでもあるのかもしれないが、判断材料が少なすぎて今の黄昏では仮説を立てることすら難しかしい。しかし、無視していいほど小さな問題とも言いづらかった。
「……探ってみるか」
大きなため息をこぼした少年は、手早く端末を操作して遊形から着信があったことや諸々の憶測を葵宛でメールを送っておく。
その後、迫りくる謎のモンスターの攻撃に巻き込まれないようにしながら逃走経路を変更し、デュエルの衝撃で建物に影響が出づらい広場へと移動した。
間もなくして相手もこちらの意図を察したのだろう。実体化したモンスターで追い詰めることは止め、黄昏の誘いに乗るように広場へと姿を現した。
「さっきまで無様に逃げ回ってたのがどういう風の吹き回しや?」
「気が変わったんだ。あんたの八つ当たりに付き合ってやるよ」
負けるつもりはない。しかし相手との実力差がそう簡単に埋まるものではないのも理解している。今デュエルをするのは得策とは言えないだろう。
だとしても、このデュエルに意味を見出してしまったのであれば、黄昏遊糸という少年はその身を危険を晒すことに躊躇しない。
また、ジンにとってもこのデュエルは八つ当たり以上の理由があるのだろう。でなければ、ここまで執拗に追いかけてくる必要がないのだから。
念のために再度付け足すが、今この瞬間において彼らがデュエルする必要性はどこにもない。
ただし無意味というわけでもない。おそらくこのデュエルは分岐点。この先に待ち受ける『何か』のために彼らがどう進むのかを決める重要な一戦であることはお互いに直感していた。
故に全力で、目の前の敵を打倒するために叫ぶ。
「「デュエル!!」」
【黄昏】VS【ジン】
お互い先攻を譲るつもりはない。故にデュエルディスクの自動選択に委ね、そうして先攻をもぎ取ったのはジンの方。
「モンスターとカードを1枚づつセットしてターンエンドや」
| 【ジン】 3/4000 --▲-- --■-- |
| 【黄昏】 5/4000 ----- ----- |
その撒き散らすような殺意とは裏腹に、彼が選択したのは守りの布陣。
拍子抜けかもしれないが、彼らは何度も顔を合わせている割にデュエルをするのは今回が初めてなのだ。まずは様子見ということなのだろう。
「俺のターン、ドロー!」
手札:5→6
「《 カードガンナー 》を通常召喚。そして効果発動! 1ターンに一度、デッキトップからカードを3枚まで墓地へ送ることで1枚につき500ポイント攻撃力をエンドフェイズまで上昇させる。
墓地へ送る枚数は3枚。よって攻撃力は1500ポイントアップさせる!」
ATK:400→1900
おもちゃのようなカラーリングのロボットが電子音を響かせ、その攻撃力が上昇。
低ステータスながらも、その低ステータス故にサポートカードの恩恵を受けやすく、強化すれば1ターン限りだが下級アタッカークラスの攻撃力になり、その強化の際に3枚もの墓地肥やしが可能。さらに破壊されたときはドローブーストと、1枚で何役もこなす非常に優秀なモンスターだ。
1ターン目にこのカードを出せたという点では黄昏の方も好調な出だしだと言える。
「バトル!《 カードガンナー 》でセットモンスターをを攻撃」
「お前が攻撃したんは《 ピラミッド・タートル 》や! このカードが戦闘で破壊された時、デッキから守備力2000以下のアンデッド族モンスターを1体特殊召喚できる!
デッキから《 ゾンビ・マスター 》をリクルートするで!」
フィールド→墓地
《 カードガンナー 》の砲撃が貫いたのは、ニュートも使っていたアンデッド族専用のリクルーター。
そしてその亡骸を糧に、ボロボロの衣装に身を包んだ不気味な人型モンスターがフィールドへと呼び出されてしまった。
焦点が合わずゆらゆらと身体を揺らすそのモンスターの効果は黄昏も知っている。加えて相手のデッキがどんなテーマなのかを考慮すると、その厄介さに思わず少年は眉をひそめる。
「カードを2枚セットしてターンエンドだ。そして《 カードガンナー 》の攻撃力はもとに戻る」
ATK:1900→400
| 【ジン】 3/4000 --◯-- --■-- |
| 【黄昏】 3/4000 --◯-- -■■-- |
「ボクのターンや!」
手札:3→4
「ほんなら、まずはそのおもちゃをぶっ壊そうか。《 ゾンビ・マスター 》で《 カードガンナー 》を攻撃!」
ライフ:4000→2600
《 カードガンナー 》
フィールド→墓地
「い゛、づ……っ!?」
《 ゾンビ・マスター 》の放った雷撃によって《 カードガンナー 》は粉々に爆散。さらにその超過ダメージは現実のものとなって黄昏を襲う。
本物の雷撃と違い感電するというわけではなかったが、鞭で叩かれたような鋭い痛みに思わず足元がよろけた。
「あー……そうだったな。闇のデュエルじゃないから油断してたけど、相手がサイコデュエリストだったらこうなるか」
「お前、それだけのダメージ受けてよろけるだけとか嘘やろ」
「耐久力には自信があるんでな。それに《 カードガンナー 》が破壊されたから1枚ドローさせてもらう」
手札…3→4
ジンの驚きようからして、このダメージでダウンする人も多くないのだろう。にも関わらず黄昏は首を鳴らして調子を確かめている程度。
そんな規格外の青年の効果処理が終えたことで改めてデュエルが進行する。
「ほんま、お前も日盛遊形もデュエルするの疲れるわ」
わざとらしく首を振って煽ってるかと思いきや、彼からの『圧』が一層強くなり周囲の景色が一変。廃墟だった風景はさらに禍々しくなり、足元には夥しい数の髑髏。さらにその影響は風景以外にも現れる。
「手札から《アンデット・ワールド〉》を発動や。効果はお前でも知っとるやろ?」
「フィールドと墓地のモンスターがアンデット族になって、アンデット族以外アドバンス召喚できない、だろ」
「せや。っちゅうことで《 ゾンビ・マスター 》の効果発動! 手札からモンスターを墓地へ送り、自分か相手の墓地からレベル4のアンデット族モンスターを1体特殊召喚する!
アンデット族扱いになってるお前の墓地の《 カードガンナー 》を守備表示で蘇生させてもらうで!」
手札:3→2
《 カードガンナー 》
墓地→フィールド(ジン)
「そして《 カードガンナー 》の効果。
デッキトップから3枚墓地へ送って攻撃力を1500ポイント上昇や。まあ、このままターンエンドやから攻撃力はすぐもとに戻るんやけどな」
ATK:400→1900→400
| 【ジン】 2/4000 --○△- ○ --■-- |
| 【黄昏】 4/2600 ----- -■■-- |
「俺のターン……」
手札…4→5
険しい顔でドローしたカードを確認し、そのまま視線はジンのフィールドへ。
これまでジンとデュエルした面々から情報共有で彼のデッキがアンデット族中心なのは知っている。今の展開を見てもその内容が大きく変わった様子はない。ニュートのような根底からのデッキ調整などはないと判断して間違いないだろう。
「となると、この状況はまずいな。まー、わかってたけど」
蘇生方法が豊富なアンデット族と《 カードガンナー 》の墓地肥やしは非常に相性がいい。
最速で除去する必要があるが、まずは《 ゾンビ・マスター 》を除去しない限りは《 カードガンナー 》を破壊してもいたちごっこなだけだ。
除外デッキだった葵の父……将生のときはスクラップの動きが止められて苦戦したが、今回はその逆。
お互いに似たデッキであるからこそ、自分のモンスターが奪われた場合にアドバンテージ差がどんどん広がっていってしまう。
「俺は《 スクラップ・ゴブリン 》を通常召喚」
「攻撃力0を攻撃表示、な……」
呼び出したのは彼の相棒でもある残骸で構築された小人。ただしその攻撃力は0であり、効果が本領を発揮するのも守備のとき。
故にこれは次の展開への布石であることは相手も察しており、黄昏も間髪入れずに次のカードを切った。
「相手フィールドにモンスターが存在する場合、手札の《 スクラップ・ブレイカー 》は特殊召喚できる。
そして──」
「ちょい待てや。その《 スクラップ・ブレイカー 》の特殊召喚に対して伏せカードの《昇天の黒角笛》を発動や!
モンスターの特殊召喚を無効にして破壊させてもらうで」
黄昏がいつものコンボを繋げようとするが、残念ながらその流れは断ち切られてしまった。
そこまで痛手ではないにしろ出鼻がくじかれたことに違いない。小さくため息をつきながら、少年は止められた流れを引き戻すべく新たなカードへと手を伸ばす。
「手札から速攻魔法《スクラップ・スコール》発動。デッキから《スクラップ》モンスターを1体墓地へ送り、1枚ドロー。その後自分フィールドの《スクラップ》モンスター1体を破壊する。
デッキから《スクラップ・サーチャー》を墓地へ送って1枚ドローしてから《 スクラップ・ゴブリン 》を破壊」
手札:2→3
《 スクラップ・ゴブリン 》
フィールド→墓地
「そして《スクラップ》カードの効果で破壊され《 スクラップ・ゴブリン 》の効果を発動。墓地の同名モンスター以外の〈スクラップ〉モンスターを手札へ加える。
墓地の《 スクラップ・ブレイカー 》をサルベージ。さらに自分フィールド《スクラップ》モンスターが破壊されたことで、墓地の《 スクラップ・サーチャー 》2体は自己蘇生する」
手札:3→4
《 スクラップ・サーチャー 》×2
墓地→フィールド
流れるように処理を行い手札、フィールド、墓地のカードを回していく黄昏の十八番。しかしその処理の渦中にいた彼の精霊カードである《スクラップ・ゴブリン》は疑問を投げかけた。
『墓地には《スクラップ・ラプター》も落ちてるッスけど、そっちをサルベージした方が後々良かったんじゃないッスか?』
《 ゾンビ・マスター 》がどうにかできればな。今のところジンの墓地にアタッカーは落ちてないけど、もし次のターンに《カードガンナー》の効果とかで墓地が肥えたら巻き返しが難しい。
……墓地が肥えるだけならあとで巻き返しも出来るんだけどな」
手札も補充できたが未だ苦い表情なのはそれが原因だ。だがこれで突破口は開けた。
「もう一度、手札から《 スクラップ・ブレイカー 》を特殊召喚! そして自身の効果で《 スクラップ・ブレイカー 》を特殊召喚したため、デメリットとして《スクラップ》モンスターを破壊する。
《 スクラップ・サーチャー 》を破壊」
フィールド→墓地
「ずいぶん無茶して回したな。考えてた最適解とは違うやろ、それ」
「デュエルで最適解なんざ詰めデュエルぐらいでしか出せねーだろ。
バトル! 《 スクラップ・ブレイカー 》で《 ゾンビ・マスター 》を攻撃。[ジャンク・プレス]」
ライフ:4000→3700
《 ゾンビ・マスター 》
フィールド→墓地
迫り来る雷撃をもろともせず、金属の塊から繰り出される一撃が《ゾンビ・マスター》を粉砕。その超過ダメージがジンのライフを削る。
闇のデュエルではないため、その衝撃はソリッドビジョンにより彼の髪が若干なびくだけであり、数値としても黄昏が受けたダメージと比べれば微々たるもの。それでも目下の危機は去った。
「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
| 【ジン】 2/3700 ---△- ○ ----- |
| 【黄昏】 2/2600 -△○-- -■■■- |
「ボクのターンや、ドロー!」
手札…2→3
「伏せカードを使わんのやったらメインフェイズに《 カードガンナー 》の効果を使うで。
もう一度3枚デッキトップを墓地へ送って攻撃力を1500ポイントアップや」
「っ、リバースカード《針虫の巣窟》発動! デッキトップからカードを5枚墓地へ送る」
お互いに墓地利用が重要となるため、いつも以上に墓地へ送られるカードを確認していた黄昏は思わず舌打ちをしながら伏せカードを発動。
黄昏のデッキトップから墓地へ送られる5枚のカードを確認する傍らで、ジンのフィールドで佇む《 カードガンナー 》の攻撃力が再び上昇する。
ATK:400→1900
「その様子やと、今墓地に落ちた《牛頭鬼》の効果を警戒したみたいやな。こいつは墓地へ送られた場合、墓地のこいつ以外のアンデット族モンスターを除外することで手札からアンデット族を特殊召喚できる。
お望み通りボクは墓地の《ピラミッド・タートル》を除外して──」
「コストまで払ったなら先にこっちの誘発即時効果を処理させてもらう。墓地へ送られた《絶対王バック・ジャック》の効果発動! デッキトップを3枚好きな順番で戻す。
……《聖なるバリア─ミラーフォース─》、《死なばもろとも》、《道連れ》の順番でデッキトップに戻す」
「なんや面倒やな。まあええわ。改めてボクは《牛頭鬼》の効果で手札の《 死霊王ドーハスーラ 》を特殊召喚するで!」
手札:3→2
デュエルディスクに叩きつけるようにして召喚されたモンスターは、骨が剥き出しになっているのかはたまたそういった外装なのか、頭部・腹部・肩部にそれぞれ巨大な髑髏を身につけた上半身と、大蛇のような下半身という禍々しい姿。
その周囲を漂う人魂のような青白い炎は《アンデット・ワールド》の風景と相まって見る者によっては恐怖で動けなくなることだろう。
「さあバトルや!」
「だったらメインフェイズ終了時に墓地の《絶対王バック・ジャック》の効果を発動! このカードを除外してデッキトップを確認し、それが罠カードならセット、違うなら墓地へ送る!」
「《ミラーフォース》をセットさせるわけにはいかへんな!
《 ドーハスーラ 》の効果を発動や! 自分か相手のフィールドまたは墓地のアンデット族が効果を発動した時、『その効果を無効にする』か『自分か相手のフィールドまたは墓地のモンスター1体を除外する』を選択して発動できる」
「《アンデット・ワールド》効果下だとすべてがそのモンスターの適応範囲ってことか」
「そういうことや。《バック・ジャック》はもう除外されてアンデット族ではなくなっとるが、発動したタイミングは墓地やから適応されるで。
今回は効果無効を選ばせてもらおうか!![バロルの邪眼]」
髑髏の怪物が雄叫びを上げ、頭部と胴体の間にある肉塊がめくれ上がった奥にあったのは不気味な目玉。その眼がギョロリを蠢くとともに《絶対王バック・ジャック》の効果が失われてしまった。
「ミラフォがセット出来んで残念やったな。改めてバトル!
《 ドーハスーラ 》で《 スクラップ・ブレイカー 》を攻撃![ルイン・ボレロス]」
巨大な身体がうねり、後頭部側を攻撃対象へと向けると今度はそちら側の表皮がめくれ上がって目玉が現れる。同様に目玉が蠢くと、今度はその眼光はレーザーとなって《 スクラップ・ブレイカー 》を飲み込んだ。
ライフ:2600→1900
《 スクラップ・ブレイカー 》
フィールド→墓地
「ぐ……っ!」
受けたダメージは先程よりも小さいにも関わらず実際の衝撃は段違いだ。モンスターもろとも地面をえぐり、黄昏の身体はいとも簡単に空中へと吹き飛ばされる。
しかし黄昏は空中で体勢を整えて着地。やり返しと言わんばかりに墓地のカードへ手を伸ばした。
「自分が戦闘または相手の効果でダメージを受けた場合、墓地の《ペロペロケルペロス》を除外してその効果を発動! フィールドのカード1枚を対象に破壊する。
《アンデット・ワールド》を破壊!!」
ガラスが割れるような音と共に世界が崩壊。辺りに散乱していた髑髏も禍々しい風景も消滅し、元の廃墟へと戻ってきた。が、攻撃を終えた《 ドーハスーラ 》が再び雄叫びを上げ、正面の邪眼がこちらを捉えていた。
「なん……っ!?」
「《 ドーハスーラ 》の効果は2つの内一つを選ぶわけやが、それぞれ1回ずつは1ターンの間に使用することが出来るんやで?
《ペロペロケルペロス》の効果は無効には出来ん代わりに、お互いのフィールドか墓地からモンスター1体を除外する効果を使わせてもらおうか。
対象はお前の墓地の《スクラップ・ラプター》や。[バロルの邪眼]」
墓地→除外
再度《 ドーハスーラ 》の背後の邪眼が開き、墓地にいた《スクラップ・ラプター》が独りでにデュエルディスクから射出れて墓地から取り除かれた。
「フィールドの《 サーチャー 》は狙わないんだな」
「反撃を警戒して《 カードガンナー 》は守備表示のままやったからな。まあ《ラプター》除外しておけば《スクラップ・キマイラ》をサーチしてシンクロって流れにはそうそうならんやろうし。
ボクはこれでターンエンドや。《 カードガンナー 》の攻撃力も元に戻るで」
ATK:1900→400
| 【ジン】 2/3700 --○△- ----- |
| 【黄昏】 2/1900 -△--- --■■- |
「俺のターン、ドロー……」
手札:2→3
ドローされたのは先程デッキトップ操作で置いた《聖なるバリア─ミラーフォース─》。これはジンも分かっている。
このターンにカードをセットすればまず対策されるだろう。
「囮になるカードもない、か。あーくそ、やっぱ全然勝ち筋が見えてこねーな……」
わかった上で相手の喧嘩を買ったわけだが、ここまで一方的に蹂躙され反撃手段がないというのもなかなか堪える。それでもどうにか傷跡を残してやろうと抗うのがデュエリストとしてのプライドだろう。
「俺は《 スクラップ・ワーム 》を通常召喚」
「壁にするにはしょぼいステータスやな」
「攻撃要員だからな。こいつは相手フィールドにモンスターがいようと関係なく直接攻撃ができる。
バトルだ。《 スクラップ・ワーム 》でジンへ攻撃!」
ライフ:3700→3200
地中を掘り進むことでジンのモンスターをかいくぐって一撃を与えるも、その威力は言われた通り微々たるもの。
「はっ! この程度屁でもないわ」
「だろうな」
しかし黄昏の目的はそこではなく、バトルフェイズが終わるとともに崩れ始めた《 スクラップ・ワーム 》自身にこそある。
「《 スクラップ・ワーム 》は直接攻撃ができる代わりに、そのバトルフェイズ終了時に破壊される。けどこいつが《スクラップ》の効果で破壊されれば墓地の同名モンスター以外の《スクラップ》を手札に加えることが出来る。
《スクラップ・ゴブリン》をサルベージ。さらに《スクラップ》が破壊されたから墓地の《 スクラップ・サーチャー 》は自己再生だ」
フィールド→墓地
《 スクラップ・サーチャー 》×2
墓地→フィールド
【黄昏】
手札:2→3
自壊しフィールドに残った瓦礫は2体の不死鳥となり、計3体の残骸の不死鳥は主の盾として立ち塞がる。
「随分とまあ防御を固めるんやな。臆病風に吹かれたんか?」
「言ってろ。カードを2枚セットしてターンエンド」
| 【ジン】 2/3200 --○△- ----- |
| 【黄昏】 1/1900 -△△△- ■■■■- |
劣勢なのには変わりない。だがそれを承知の上でのデュエルならそれなりの動き方というものが存在するものだ。
どれだけライフを削られようと、0になる前に獲物の喉元へ噛みつけさえすればいい。
長い前髪の隙間から覗く瞳は鋭く目の前の標的を見据え、少年は虎視眈々と反撃の瞬間を待つ。