ですので、今回は召喚方法とそれに関連したカードの名前だけの紹介になります
あと、諸事情で執筆する時間をとれないので、具体的な使い方の説明はもう少し後になりそうです。
1月26日……新しいカードの名前を間違えていたので修正しました
自宅待機が解けて今日から登校が始まったのだが、教室の席に着いた黄昏は1週間前より疲れているように見える。
1週間の自宅待機は生徒の休養と体育館の大まかな修理のためかと思われたが、実際はマスコミの整理が主だったことを実感させられた。自宅待機中、アカデミアの生徒に取材をしようと自宅や寮に張り込みをしていた人影を窓から隠れるように確認している日々はデュエルとは違う疲労感を感じた。
しかし、黄昏の心配していたのはそれ以外にもあった。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
珍しいものを見るような、好奇心と恐怖心が混じった、決して気持ちのいいものではない視線が、教室のいたることころから感じる。単純にデュエルが強いだけではここまで恐怖の眼差しを送られることはないだろう。つまり、こんな状態になったのは他の原因がある。一つは、1年の時の後期を免除されていたという異例の対応、そしてもう一つが……
(デュエル時以外でのモンスターの実体化。それも、ソリッドビジョンと違って実際に質量を持ってるんだから、普通の人間なら怖がるだろうな)
前にも話した通り、サイコデュエリストは昔、恐怖の対象として見られていた。しかし、力を制御できるようになった今でも、それが完全にぬぐわれたというわけではない。
平坂ジンという男が言っていたように、その力はれっきとした武器だ。力を制御できるというのは、あくまで誤爆がなくなったというだけで、力を失ったわけではない。いつも拳銃を身に着けている人に普通に接することができるかと問われれば答えは明白だろう。
(別にこの目線も1年の前期からだから慣れてるし、今さらなんだけどな……
けど、こんな状態じゃ誰かと話できるわけでもないし、教室に居ても居なくても一緒か)
ホームルームの時間が迫り、だんだんと教室内にも人が集まってきて、それに比例して目線も増えていく。
もうすぐホームルームが始まるが、気にせず席を立とうとしたその時、タイミングを見計らったように教室の戸を開いた。そこに立っていたのは、前回の神崎の襲撃で真っ先に止めに入った教師だった。
「みなさん、席についてください。ホームルームを始めますよ」
おっとりとした口調の男性がホームルームを始めると、自然と生徒の目線は教師の方に向き直り、黄昏をに向けられていた視線はなくなった。
「えー、みなさんももう知っていると思いますが、今学期の開始時からデュエルのルールに大きな変更がありました。ですので、今日の授業ではそのルールと、それから新たな召喚方法の説明と実践を行います」
「新しい召喚方法?」
気になる単語に反応した一人の生徒が、呟くようにその言葉を復唱する。
「はい、それに関しても後ほど説明があるので、まずは体育館に集合してください」
教師の言葉に従って体育館へと向かう生徒たち。しかし、一人だけ席を立たずに居座っていた。
「おや、どうしましたか? 黄昏くん」
「すいません、体調悪いので保健室で休んでいてもいいですか?」
その言葉で何かを察してくれたのだろう、二つ返事で許可してくれた。
「ルール改正のデータはデュエルパッドをアップデートすれば閲覧できますから、余裕があれば確認しておいてください。
午後の実習からは参加できますか?」
「大丈夫です。ありがとうございます……」
力なく頭を下げた黄昏は、そのままふらふらとした足取りで教室を後にした。
★
保健室に入ると、ここの担当教員も体育館の方に行っているのか誰もおらずシンとした空気が漂っていた。本来ここを利用する人にとっては困った事態だが、黄昏にとってはむしろ好都合だった。
そのまま真っ直ぐベッドに向かうとカーテンを閉めて簡素な個室を作ると、ベッドに腰を下ろすと深いため息をついた。その直後、誰もいないはずの保健室から機械音のような無機質だが、どこか生物じみた不思議な声が聞こえてくる。
『アニキ……』
驚くべきことにデュエルモンスターのカードである《スクラップ・ゴブリン》だった。
《スクラップ・ゴブリン》は心配そうな声で黄昏を気遣いながら虚空から現れると、その小さな手(というよりフォークだが……)を黄昏の手の上に乗せる。黄昏はその光景に驚くことなく、どこかホッとしたように肩の力を抜いた。
『大丈夫ッスか?』
「慣れてはいるけど教室の生徒全員からとなるとさすがに応えるな。これで体育館に行ったりしたら絶対めまい起こす自信がある」
『変なところで自信持たないでくださいッス』
「そう思うんだから仕方がない」
一度呼吸を整えて、制服のアクセサリーとして常備されているボディバッグからデュエルパッドを取り出すと、その有線ケーブルを保健室にあるプラグに差し込み、画面の指示に従ってシステムのアップデートを行っていく。
その様子を背中越しに見ていた《スクラップ・ゴブリン》は、おそらく人と同じように表情が作れるなら眉をひそめて、どこか腑に落ちないといった様子で唸った。
『これって、1週間前にはもうアップデート出来てたんスよね?』
「まあな。俺たち学生の始業式に合わせてアップデートが開始されたらしい。ただ、アップデートできる場所は限られてるけどな。できる場所はアカデミアのようなデュエル学校や、海馬コーポレーションの許可が下りたカードショップだけだ」
『なんでそんな面倒なことをしてるんスか? 確か、それより前はネットに繋げれば出来てたんスよね?』
「《グレムリン・ダウン》が原因だよ」
――《グレムリン・ダウン》
17年前、全世界で同時期にモンスターが見たこともないような姿に変化するという異変の名称である。これによって一時的にデュエルディスクを使ったデュエルに禁止令が下されるという過去例に見ない対応がとられた。その後、ある程度その異変を抑えられるパッチが開発されたことで一応普通のデュエルが可能となった、というのが、黄昏たちの習った事実である。
「俺たちの年代が生まれた辺りで起きたことだから、俺たちは教科書に書いてあること以上のことはわかんない。けど、あれが新手のサイバーテロだと思った政府が、再び同じことが起こらないよう、システムのセキュリティレベルを上げたうえで場所を絞って、ウイルスが拡散しないように対策をとったんだ」
一人と一匹(?)が会話をしていると、デュエルパッドから短い機械音が鳴った。どうやら、アップデートが完了したらしい。有線ケーブルを抜くとテキパキと収納すると立ち上がり、保健室の出口へと向かう。
『あれ、どっか行くんスか?』
「保健室でいたらさぼりの生徒が来るかもしれないだろ?」
『アニキもさぼりッスけどね』
「うっさい」
廊下は耳が痛くなるほどの静寂に包まれており、黄昏以外は集会に出ているようだった。特に目的地などはないが、とりあえず屋上が無難だろうと歩み始める。
その途中、既存のルールの改定があるかどうかだけでも確認するため、デュエルパッドを起動する。
「既存のルールで変更されたのは、フィールド魔法関係のルールと、ダメージステップのタイミング関係、あとは先行1ターン目のドロー廃止か……」
『ずいぶんと変更されてるッスね』
黄昏の肩辺りの高さに浮いている《スクラップ・ゴブリン》が並走(?)して画面をのぞき込んで感想を呟いた。
「先行ドローとダメージステップに関してはわかんないけど、フィールド魔法に関してはたぶんこのルールが大きく関係してんだろうな」
『どのルール……ってうわぁ!?』
「《ゴブリン》!?」
言いながら屋上の扉を押し開けると、丁度突風が吹いたらしく《スクラップ・ゴブリン》が軽く後方に飛ばされ、階段を転げて落ちていた。
心配になった黄昏は一度扉を閉めて下りていくと。踊場で目を回している《スクラップ・ゴブリン》を見て思わず吹き出した。
『ひ、酷いッス……笑う前に助けてほしいッス』
「俺より頑丈なんだから自分で起き上がれるだろ?」
『目が回って立ち上がれないッス……』
仕方ないな、と苦笑いと浮かべて《スクラップ・ゴブリン》を抱えると、今度は突風に注意して屋上のドアを開ける。
突如、視界全体に景色が入ってきて一瞬思考が停止した。1年生の前期も頻繁に訪れていたため見慣れた景色だと思っていたが、1年たつと目線の高さや記憶の相違があり、どこか新鮮な感覚があった。しばし風景鑑賞に浸っていた黄昏は満足したのか、ドアのすぐ隣を陣取って腰を落とし、デュエルパッドの操作を再開した。
画面をスクロールしていくと、見慣れない単語についての説明が記されていた。それを黄昏の両膝の間に挟まるような立ち位置からのぞき込む《スクラップ・ゴブリン》が、その名前を口にする。
『“プレート魔法”? これが新しいカードなんスかね?』
「みたいだな。どうやらフィールド魔法の上に重ねることができる永続魔法の一種みたいだ」
さらにスクロールすると、さらに3つの新しい単語とその説明が記されている。
「それから、プレート魔法に魔法・罠カードを重ねることでいろいろと効果が発揮できる“インフェクト・ヴァイルス”、そのインフェクト・ヴァイルスとフィールドのモンスターを素材に、エクストラデッキや墓地からモンスターを特殊召喚する“リバイバル召喚”。そして、そのリバイバル召喚でエクストラデッキから召喚できる“リバイバル・モンスター”……
大きく分けるとこんな感じか?」
『全部で4つも新しいカードがあるんスか……頭がパンクしそうッス』
「パンクするほどの頭脳ないだろ」
『ヒドイ!!』
黄昏の懐で抗議をする《スクラップ・ゴブリン》を適当にあしらって再び画面をスクロールしていき、各カードの説明を確認していくと、インフェクト・ヴァイルスの項目でその手が止まる。
しばらく黄昏は無言で目を通しているため、手持無沙汰な《スクラップ・ゴブリン》はそんな黄昏をじっと眺めているだけだったが、不意に左右から挟まれて間の抜けた声を出す。
犯人はもちろん黄昏である。何を思ったのか、両足で《スクラップ・ゴブリン》をホールドしているのだ。
『な、何事ッスか!?』
「気にすんな、ただの気まぐれだ」
『それ一番困るッス!!』
「まあ、いいじゃねえか。それよりこのカードの名前、これを作ったやつはずいぶんと皮肉が好きみたいだ」
『ど、どういうことッスか?』
「インフェクト・ヴァイルス。直訳すると“感染させるウイルス”だ。それから察するに、プレート魔法は電子回路基板のことだろうな。つまり、プレート魔法ってのはウイルスを栽培する温床ってことになる。しかもそれでフィールド魔法っていう自分の領域を守るんだ。パソコンでいうなら全く逆のことをしてるぞ、これ。
ウイルスだと思って対策をとってたのに、結局はウイルスを取り込むようなシステムにしたってのは、なんとも皮肉だよな」
さらにスクロールすると、最後にリバイバルモンスターについての説明を確認する。
「融合とシンクロ……いや、どちらかというと条件付きの《
『《突然変異》って、確か強力すぎて使用を禁止されているカードッスよね?』
「そうだ。まあ、《グレムリン・ダウン》以降の現象ってまさにこの召喚方法みたいなもんだったし、それを指してるのかもな。
にしても、癖が強そうなカードだな。シンクロやエクシーズみたいに万人受けするようなカードではねえぞ」
言いながら、《スクラップ・ゴブリン》の蛇口のような頭部を顎置きにして再度変更内容に目を通していく黄昏。対する《スクラップ・ゴブリン》はすでに黄昏の気まぐれに抵抗する気も失せたのか、気分屋の黄昏にされるがままになっているようだ。
『まあ、そう何回も誰でもデッキに入れれるカードは作れないッスよ。それに、そんなのばっかり作ってたらデッキに違いが無くなってきて面白くないッス』
「それもそうだな。デュエルは人それぞれデッキが違うから面白い。強い弱いも重要だけど、それだけでデッキを組んでも、そこにデュエリスト本人の意思がないならやってる本人もつまんないだろうし」
それに、と黄昏はいったん間を置いてから……
「勝ちを追い求めた結果、周りから人がいなくなったら、デュエル以前の問題だしな」
その言葉は、いったい何を思っての言葉なのか、それを知るのは黄昏本人だけだ。
『そ、そういえばアニキ。カードの説明は見たけど午後の実践は大丈夫スか?』
「ん? 実際に回してみないとわかんねえけど、ちょっと厳しいかもな」
『ずいぶん消極的ッスね』
「うるせえ、全く回り方が予想できねえんだよ。それに、俺はこのカード
雑談を続けていた黄昏は不意に口を閉じて顔を上げた。《スクラップ・ゴブリン》が不思議そうに首を傾げるが、何か言葉を発する前に黄昏が自分の指を口元に当てるジェスチャーをする。それにならってお互い静かに息を殺していると、コツコツと硬いもの同士がぶつかる音が一定のリズムでこちらに近づいてきていた。
「足音、か?」
デュエルパッドで時間を確認してみるとまだ30分もたっていなかった。さっきのカードの説明だけだとしても少し早いうえに、そもそもまだ体育館から人が出てきた様子もない。
『さすがに早くないっすか?』
「もしかすると、保健室へ確認に来た教師が俺がいないのが気になって見回りしているのかもな」
『それってマズくないっすか?』
「とりあえず隠れてやり過ごすか――」
しかし、行動に移る前に屋上の扉が静かに開かれてしまう。とっさに霧のように姿を消した《スクラップ・ゴブリン》だが、取り残された黄昏は変な体勢で開いたドアの方を見ることになり、そしてその人物に思わず動きを止めてしまった。
青色のセミロングを編み込みサイドテールにした、アイドルデュエリスト。1週間前に接戦を繰り広げたその少女の名前を、黄昏は静かに口にする。
「七波……」
「なんだ、黄昏君か……びっくりしたよ」
ここに誰かいるとは思わなかったのだろう、しばらくポカンとした表情のままだったが、そこにいたのが黄昏だとわかるとホッとしたように息を吐いていた。
対する黄昏も相手が教師ではなかったことに胸を撫で下ろして再び腰を下ろ……そうとしたがスカートの女子相手にそれはなんだかマズい気がして一緒に立ち上がる。その間に、扉を閉めた葵は黄昏の隣に移動して壁に体を預けている。
「それはこっちのセリフだ。そういえば、怪我は大丈夫なのか?」
「うん、すり傷だらけだったけど、ほとんど痕は残らないみたい。顔に傷つかなかったのは不幸中の幸いかな。アイドルっていう仕事柄、身体は私一人のものじゃないからね」
こちらに心配かけさせないためか、柔和な笑みをこちらに向けるが、事情を知っている黄昏からするとその笑みはただただ悲痛を訴えているようにしか見えない。そのことを感じ取ったのか、葵は「それより……」と話題を切り替えてきた。
「今は集会中だけど、こんなところで何してるの?」
「それはあんたもだろ。ここにいる理由は、たぶんあんたと同じだな」
「まあ、それもそっか」
黄昏の返答は言葉足らずなものだったが、その言葉で相手もある程度の事情を察したらしい。苦笑いで返すとあまり追求せずにそのまま屋上の柵の所まで歩いて行った。
その後ろ姿をじっと眺めていた黄昏は屋上を出ていくタイミングを見失ってしまった。かといって、もう一度座りなおす気にもならず、そのままの体勢でしばらく考えていると、その姿が気になったのか葵の方から声をかけてきた。
「ねえ、もしよかったらなんだけど、君のエースモンスター見せてくれないかな?」
「《ヘルサーペント》を? どうしたんだ急に?」
「ちょっと、効果が気になってね。嫌なら別に無理強いしないから言って」
「別に構わねえよ」
デッキケースの中をあさり、目的のカードを引き抜いた黄昏は、何の躊躇もなくそれを彼女に差し出した。受け取った葵はテキストに軽く目を通すと、どこか力が抜けたように肩をすくめる。その表情は悲しそうな、しかしホッとしたような複雑なものだった。
「《スクラップ》が攻撃すると、強制でモンスターを破壊するんだね。わがまま聞いてくれたありがとう。返すね」
「それはいいけど、いきなりどうしたんだ?」
何気なく感じたその疑問に対して、少女の表情は曇る。空は青々としているはずなのに、彼女の周りだけ雨雲がかかっているかのように、その空気は重くなりつつあった。そして、彼女の口が小さく開かれると、その内側に押し込めていたものが吐き出され始めた。
「この前のデュエル、最後どんなフィールドだったのか覚えてる?」
「ああ、たしかライフは俺が50で、七波が4000のまま。俺のフィールドは《ゴブリン》と《ヘルサーペント》が共に攻撃表示。七波のフィールドには攻撃力が3000になっている《ガイオアビス》と、俺が特殊召喚させた攻撃表示の《スクラップ・サーチャー》と……――」
「――リバースカード1枚だよ」
二人はお互いの記憶を補うように1週間前のフィールドを思い出す。しかしその真意が黄昏にはわからなかった。ただ、わざわざ聞いてくるということは何か意味があるのだろう。
「それで、俺が《ゴブリン》で《サーチャー》を攻撃して《スキル・サクセサー》と《ミラーメール》で相打ちになったぐらいに、神崎たちが来て中断になったんだっけ?」
「うん。あのときは《ヘルサーペント》の効果がわからなかったからどんな展開になるのか予想できなかったけど、黄昏君は突破口が見えてたんだよね?」
「《ミラーメール》で相打ちにされた時点でライフを削りきれなかったけどな」
「伏せカードが何なのか、下手したら《ミラーフォース》とかで全滅もあり得たのに迷わなかったの?」
「その可能性もよぎったけど、あんたはデッキに入れてないと思ってな」
「言い切ったね?」
「アイドルデュエリストっていうぐらいだしデッキのコンセプトがあるんだろ? あるとすれば序盤に使った《ポセイドン・ウェーブ》みたいなのかと思ったんだ。
あと、どっちにしても攻撃しないと負けは確定してたし、だったら攻撃してもいいかと思ってな」
「……たしかにね」
力なく笑う少女。実際、彼が攻撃すると決めた結果葵のモンスターは全滅。《ヘルサーペント》の効果で《スクラップ・ゴブリン》は破壊されていただろうが、むしろ攻撃力0をそのまま立たせておくのを防げるうえに《スクラップ》の効果で破壊され墓地へ送られることで《スクラップ》モンスターをサルベージでき、後続の確保もできている。普通のデュエリストならほぼ勝利を確信してもおかしくない布陣だ。
黄昏もそう思っているだろうと踏んでいた葵だったが、黄昏の口から出た言葉は、彼女の予想を裏切る結果となった。
「どっちにしろ、まだデュエルはこれからだったんだ。また改めて仕切り直しだな」
「え……?」
黄昏が放った言葉は、『もう少しだったのか』ではなく『これからだったのか』。
つまり、彼女のドローで何が起こるのかわからない。きっと自分の布陣を崩しに来るだろう。そういう意味を含んでいるのだ。
「やっぱり、君はすごいね。あんな状況でターンが回ってきても私は半分諦めてるよ。事実、さっき効果を確認した時に負けを意識しちゃったし」
「いや、お前だってエクシーズ2体並べたとき俺に言っただろ? 『デュエルはこれからだよ』って。
それに、戦意喪失はモンスターたちに悪いだろ。戦うのはモンスターでも、それを指揮するのは俺たちデュエリストだ。まだ何をドローするのかもわからないなら、俺たちデュエリストは一番勝負を諦めちゃいけないはずだろ?」
「……強いんだね、君は」
困ったように呟く葵。直後、再び屋上に突風が吹き荒れ、黄昏は思わず顔をしかめた。葵の方も無意識に髪を押さえているが、心ここにあらずといった様子だった。
その様子に疑問を覚える黄昏だが、体育館の方が騒がしくなり始めた。デュエルパッドを確認すると、葵と会ってから30分以上たっていた。ギクシャクとした時間が多かった気もするが、思ったより話し込んでいたようだ。
「……集会も終わったし、そろそろ戻った方がいいな」
「そうだね。先に戻っていいよ」
「……教師にばれるぞ?」
「いいのいいの。私一緒にいるところ見られたらさらに面倒なことになるよ?」
いたずらな笑みを浮かべる彼女に違和感を感じて黄昏は何か言おうとしたが、次第に校舎からも足音が聞こえてくる。冗談抜きにこのままだと今以上に目立ってしまうため、彼女の言葉通りその場所を後にした。
★
「後期から無理言ってさせてもらった学園生活、もう半年か……意外と早かったな」
誰もいなくなった屋上。心なしか吹き抜ける風が冷たくなったように感じる。屋上から一望できる景色を一人堪能していた少女は、ぽつりと呟く。その目線は、先ほど彼が入っていった屋上の扉へと向けられる。
不思議な雰囲気の少年だった。獰猛な獣のような雰囲気かと思えば、弄りがいのある年齢相応の反応も返してくれる。
接していて飽きないのは、彼女と同じクラスで唯一『友人』として接してくれるとある天然少女と同じだ。その友人の反応を思い出し小さく笑みをこぼした少女だったが、その頬を一筋の雫が伝う。
「黄昏君か……もっと早く、別の場所で出会ってれば、いい友達になれたんだろうな……」
その顔を見られないように腕で多い、その隙間から漏れる嗚咽する声は次第に大きくなるが、そこに慰めてくれる人はいない。
1人静かに涙を流す彼女の背中の震えが止まるのは、それからしばらくしてだった……
ホントは本家遊戯王みたいに恋愛描写は日常に少しだけ入れる予定だったんです。
でも、これ明らかにラブコメの起承転結の転でよくありがちなシリアス展開ですよね……
大まかな流れは作ってるはずなんですが、ホントどうしてこうなった
あと余談ですが、1月23日現在、1~5話の段落の最初のスペースや、モンスターの名前の括弧を《》に統一するなどの修正をしてます。