遊☆戯☆王 Xeno-N   作:駄蛇

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ようやくオリジナル召喚方法のお披露目です。
結構ややこしいです

まだ忙しい期間が続きますが、がんばります

※2時17日……今後の展開の関係で《クリッカー・ヴァイルス》の種族を機械族から雷族に変更しました


変異の化身、リバイバル・モンスター

 相変わらず人目が気になる時間を過ごすことになったが、午前の授業のほとんどを机にうつ伏せて過ごすことでどうにか乗り越えた。

 午後は実習のため直接デュエルスペースに行く必要があり、時間ぎりぎりまで屋上で過ごして人目を避けていたが、ほとぼりが冷めるまでしばらくこんな生活を続けなくてはいけないのだと思うと頭を抱えたくなる。しかも今回の実習はデュエルスペースの節約のためか、説明役として3年生のクラスが同時にするらしく、デュエルスペースには教室の約2倍の人数が集まっていた。

 いっそのこと誰か話しかけてくれれば気が楽なのに、とため息をついているとチャイムが鳴り響き、計ったように教師が現れて点呼が始まった。黄昏の名前で一瞬ざわつくなどの小さなトラブルはあったが、無事に点呼が終わると、教員が小さなチップを生徒全員に配り始めた。

「それでは新しいルールとカードでデュエル実習をしてもらいます。ですが、まだアップデートが済んでない方からどうすればいいのかと質問されたので、今回はデュエルアプリを使った仮想デュエルで実習をしてもらいます。今みなさんに回しているチップをデュエルパッドで起動してください。

 せっかくの機会なので普段使わないカードなどを使って、今後どのような対策をとればいいかを、各自考えてみましょう」

 じゃあデュエルスペース来る意味ないじゃん、とおそらくその場にいた生徒全員の意見が一致しただろう。とはいえ、周囲の人から避けられぎみの今の黄昏にとっては、デュエル相手を探すのも一苦労だから助かったと思うべきだろうが……

 教師の説明が終わると、みなそれぞれグループを作り各々のデュエルパッドでアプリを起動し始めた。

「俺もどっか隅に移動して確認するか」

「あ、あの……」

 周囲の邪魔にならないように振り返った時、不意に横から声をかけれた。振り向くと、メガネをかけた見た目文学少女の少女がおどおどとしながら立っていた。

「俺に何か用か?」

「え、あ……その、わ、わたし……あの時人質に……」

「人質……ああ、あの時の」

 黄昏の脳裏に1週間前の体育館での出来事が浮かぶ。どうやら彼女はあのとき神崎が人質にしていた生徒のようだ。

「それで、どうしたんだ?」

「えっと、その……実は、あの時のお礼が言いたくて……」

「別にそんなのいいよ。実際あんたを助けれたのは結果的にだったし。それから、もし俺に負い目を感じて謝りたいってのなら、それもお門違いだ」

「あ、う……」

「ちょっとー、謙虚すぎるのは逆に相手に失礼だよー」

 少女があたふたと慌て始めると、その背後別の人影が会話に割り込んできた。それは、寝ぐせなのか生まれつきなのかは知らないが、ところどころの髪がはねている金髪の少女だ。失礼だとはわかってはいるが、あからさまに黄昏が眉をひそめると、その少女はいたずらがバレた子供のようにウインクをしながら舌を出した。

「これは失敬失敬、クラス違うから自己紹介がまだだったねー。アタシはリリア・ミラー。あなたがこのまえデュエルしていた“あおいん”の友達だよー。で、こっちの人畜無害そうな人が3年生の早乙女卯月(さおとめ うずき)さんねー」

 短髪少女改め、リリアが自己紹介をすると、彼女の隣で未だにおどおどしている早乙女が勢いよく頭を下げる。

 早乙女という少女が年上だったことに驚くが、さすがに失礼だと思い言葉を飲み込み、とりあえず気になる部分にだけ突っ込んでおく。

「あおいんって誰だ?」

「あおいんはあおいんだよー?」

「…………」

 話が通じないと直感した黄昏は肩をすくめながら視線を早乙女の方に向ける。視線に気づいた彼女は小動物のように縮こまり、消え入りそうな声で口を開く。

「あの、たぶん七波さんだと思います」

「ああ、葵だからあおいんってことか。……そういえば、七波はどうしたんだ?」

「あおいん? あおいんなら午前中に帰っちゃったよー。なんか急用なんだってー」

「そうか……」

 どうも先ほどの屋上での様子が気になって尋ねはしてみたが、あまり有益な情報は得られなかった。いきなり黄昏がそんなことを聞いてきたからだろう、リリアが不思議そうな眼差しを送ってくる。

「何かあったのー?」

「いや、なんでもない。それで、用件は早乙女さんの件だけか?」

「えー、どうせなら一緒に確認しようよー」

「なんだよ、どうせって……」

「だって、なんか一人で確認しようとしてたでしょー? せっかくデュエルスペースに来てるんだから一緒に見ようよー。いいよねー?」

 そう言ってリリアは早乙女の方を向く。おそらく彼女は自分に向けて言われていると気づかなかったのだろう、彼女の目線に気づくと慌てたように周囲を見た後、肩をすくめながら首を縦に振った。

 それを見たリリアは人懐っこい笑みを浮かべながらガッツポーズをとる。どうやら勝手に多数決をとっていたらしい。

「じゃあ決まりー」

「おいちょっと待て……まあいいか」

 こういうことに慣れてない黄昏は断ろうとするが、隣で申し訳なさそうにしている早乙女の姿を見るとなんだか申し訳なくなる。完全にリリアの思惑にのせられてる気がするが、せっかく話しかけてきてくれた2人をこれ以上雑にあしらうのも気が引けた黄昏は、思わずため息をこぼすがその後は意識を切り替えることにした。

 

 四角で囲まれたデュエルコートの一角に陣取ると、黄昏たちは腰を下ろしてウエストバッグからデュエルパッドを取り出した。

 画面を操作すると透明なフィルムが側面から飛び出し、内部に搭載されたモーメントが回転し始める。するとソリッドビジョンによって、無地だったフィルムにモンスターゾーンが映し出される。

 さらにそれを腕に装着すると、デュエリストなら見慣れたデュエルディスクへと変形した。そしてデッキを入れる代わりに教師からもらったチップを挿入し、画面を操作してチップに入ったアプリを起動する。すると画面に普段見慣れているデュエル画面、つまりデュエルフィールドを現したものが上下に二つ、画面を半分に分けるように表示された。

「へー、仮想デュエルアプリって初めて見たけど、見た目は普通のデュエルしてるときと一緒なんだねー」

「デュエルするデバイスでデュエルアプリを使うんだ。特に変更させる必要はないだろ。違う点といえば、両方のフィールドを自分が操作できるのと、好きなカードと枚数と設定してデュエルできることだな」

 へー、と背後で感嘆の声を上げるリリアを不審に思った黄昏は思わず振り返る。

「あんたも自分のデュエルパッドで起動しろよ」

「えへへへ……実は忘れちゃってー」

「おい、デュエルパッドは常備が校則だろ」

「まーまー、忘れちゃったのは仕方ないよー」

「それはあんたが言うセリフじゃねえだろ。というか、それじゃあカードとか説明は午前の集会だけで、自分で確認できてないんじゃないのか?」

「もち! だから教えてほしいなー、なんて。うーちゃんも説明する自信ないらしいからー、お願い!」

 うーちゃんと言うのは、早乙女のことだろうか? 

「というか、年上相手にちゃん付けのあだ名ってどうなんだ?」

「い、いいんですよ? わ、わたしもあだ名で呼ばれるのはうれしいですから」

 その言葉にドヤ顔をするリリア。会って数分だがなんとなく彼女の性格がわかってきた黄昏はさっきまでとは違う意味で頭が痛くなってきた。

「早乙女さん、そっちは起動できましたか?」

「あ、はい」

「じゃあ、せっかくだからデュエル形式で確認するぞ。って、本当に俺が説明でいいんですか?」

「は、はい。先日のデュエルを拝見しましたけど、黄昏さんのデュエルタクティクスは私よりも上ですし。リリアさんの説明のためにも……」

「まあ、早乙女さんがいいならそれでいいですけど」

 少々腑に落ちない黄昏だが承諾すると、おもむろに画面を操作していく。そして何かのスイッチを押した瞬間、デュエルパッドの側面が開き、表面には何も描かれてないカードが5枚取り出された。

 このカードは『仮想カード』と呼ばれているもので、元々はトークンを表すためにつくられた間に合わせのカードだった。

 しかし、ライディングデュエルが普及したことでカードの受け渡しが危険になったことがきっかけとして瞬く間に改良されていった。今ではモンスターのコントロールが変更するカードや《エクスチェンジ》などの手札が相手に移るカードが使われた場合に、ソリッドビジョンを利用してそのカードに映写することで、わざわざカードを交換する手間を省き、デュエルを円滑に進めることができるようになった。

 現在のデュエルアプリでは、それを用いることで仮想なのにも関わらず実際にカードを用いてデュエルが出来ると好評らしい。

「既存のルールの改定とかの説明は省くぞ。まず超基本からだ。今回から導入された新しい魔法、プレート魔法。こいつはフィールド魔法を置く場所に横向きにして置くことで発動できる」

 そう言いながら画面で手札にあるカードの1枚を《電脳基盤》というプレート魔法に設定して、デュエルフィールドの一番左、つまり普段フィールド魔法を発動している場所に横向きに置いて発動する。

「ここまでは?」

「大丈夫です」

「問題ないよー」

「なら次だ。このプレート魔法は雷族と機械族の攻撃力を800ポイントアップする効果があるけど、今のままじゃこれは適応されない。試しに手札の《古代の歯車(アンティーク・ギア)》を召喚してみるぞ」

 

《古代の歯車》

☆2・地属性・機械族

ATK:100

DEF:800

 

 ソリッドビジョンにより複数の歯車で構成されたモンスターが現れる。また、デュエルアプリだからか、ソリッドビジョンは普段より小さく、手乗りサイズだった。

 そして一番気になるのが、そのモンスターのステータスには変化がないことだ。それを不思議そうにリリアがのぞき込むと、説明の邪魔にならないように早乙女が引き留めようとしていた。それを横目に黄昏は画面を操作し、フィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》扱いのカードをプレート魔法の下に重ねるように発動する。

 

《古代の歯車》

ATK:100→900

DEF:800→1600

 

「おおー! つまり、プレート魔法を使う場合はフィールド魔法が必須になるわけかー」

「必ずしもそうでもないけどな」

 そう言いつつ黄昏は先ほどと同じように画面を操作して、手札のカード2枚を《魔法の歯車》と《古代の機械戦車》に設定。

 その2枚をデュエルパッド上で発動済みの《電脳基盤》の下、かつ《歯車街》の右隣に来るように重ねていく。

 

《電脳基盤》

IV:0→2

 

「そしてこれがプレート魔法のもう一つの特徴だ。魔法・罠をプレート魔法に重ねることで、そのカードを《インフェクト・ヴァイルス(IV)》に“インフェクト”する。

 今回は手札から選択したけど、これはフィールドの表側表示のカードを選択することも出来る。ただし、インフェクトできるのは1ターンに1度、手札かフィールドどちらか一方だけ。それから、IVの上限は5枚だ」

「表側表示、ということは……フィールドからインフェクトできるのは基本的に永続魔法と装備魔法、永続罠ってことー?」

「原則は、だな。たぶんカードの効果でその例外が作られるだろうけどな。あと、このインフェクトにはチェーンブロックは作られない。これでこっちのターンは終了だ。

 早乙女さん、できればこっちのプレート魔法を破壊するつもりで来てくれますか?」

「は、はい!」

 緊張しているのか、はたまたこの手のデュエルアプリを使うのが初めてなのか、ぎこちない動きで画面を操作していく。

「えっと、じゃ、じゃあまずは《サイクロン》で《電脳基盤》を破壊します」

「……そういえば、両方発動するとカードが重なっちゃうけど、こういうときどうなるのー?」

 《サイクロン》はフィールドの魔法・罠を破壊する汎用魔法だ。そして、プレート魔法とフィールド魔法は今現在重なっており、1枚として認識されている。つまり……

「もちろん、何もできないと両方破壊される。プレート魔法は破壊されてもデッキに戻るから再利用できるといえばできるが、相手が1枚消費してこっちも最低1枚、IVなんかでカードを重ねていればその分だけさらにアドバンテージを失うことになる」

「結構考えないといけないんだねー」

「だからこそ、このIVが重要になってくる。俺は《サイクロン》の効果解決時、プレート魔法とフィールド魔法が破壊される代わりに、IVとなっている《魔法の歯車》をリリースする」

 

《電脳基盤》

IV:2→1

 

「へー、これで破壊を回避できるんだー」

「ルール効果だから、もしプレート魔法の効果が無効なっていてもこの身代わり効果は使える。それに効果解決時に個別で処理が行われるから、《ディメンション・マジック》のような追加効果で何もできずに破壊されることもないし、発動したカードに対して魔法・罠が使えない効果を持つ除去カードにも対処できる。

 ただし、バウンスや破壊を介さない除外にはどうにもならないから注意が必要だな。あと、プレート魔法がフィールドを離れたときにIVが残ってる場合は、そのIVは墓地に送られる」

「ということは、もう《フィールドバリア》は使われないってことだよねー」

「そうでもないぞ」

 リリアの見解に黄昏は早乙女にアイコンタクトをとりながら説明をしていく。

「まず、《フィールドバリア》は発動後お互いにフィールド魔法を発動できなくするから、むしろプレート魔法の効果を使いたいやつには今後重要な牽制球になる。それに、IVを使わずにフィールド魔法を守れるからカード消費も少ない。

 それからこれが一番面倒で重要なことなんだけど……早乙女さん頼みます」

「は、はい……私のフィールドにカードがないとき、先行1ターン目以外で《グラヴィティ・ベヒモス》はリリースなしで召喚できます」

 黄昏が促すと、早乙女が二本の角を持つ禍々しいモンスターを召喚する。

 

《グラヴィティ・ベヒモス》

レベル6・闇属性・獣族

ATK:2300

DEF:2000

 

「えっと、このモンスターは、攻撃する代わりにフィールド魔法を破壊する効果を持っています。じゃ、じゃあその効果を使いますね。《歯車街》を破壊します」

「これもまたIVで……ってあれ?」

 

《歯車街》

フィールド→墓地

 

 間の抜けた声を出すリリアだが、それもそのはずだ。IVがまだ残っているのにフィールド魔法が破壊されたのだ。すかさず黄昏が今起こったことに説明を加える。

「プレート魔法と重なったフィールド魔法は、プレート魔法と合わせて1枚として扱っている。だから、《サイクロン》のような、単に魔法・罠を選択する除去カードにIVを使うと、結果的にフィールド魔法も破壊から守っているんだ。

 けど、《グラヴィティ・ベヒモス》は“フィールド魔法”を破壊する効果だ。プレート魔法を選択してるわけじゃないからIVを使った回避は使えない。わかっ……てないな」

「えへへ……」

 照れくさそうに後頭部に手を置くリリアはただ笑うだけだった。

「まあ、とりあえず《フィールドバリア》は結構重宝するってのと、プレート魔法でも防げないものはあるってのだけ覚えておけばいいだろ」

 一連の説明を受けて、早乙女はメモを取っている。どうやら彼女は几帳面にメモをとるようにしているらしく、見た目通りずいぶんと真面目な性格のようだ。先ほどの《サイクロン》も、《電脳基盤》を破壊するためというよりは、黄昏がリリアに説明しやすくするために使ったように見える。

 そして黄昏が直接言うまでもなく、その意図を汲んで《グラヴィティ・ベヒモス》を召喚したことも含めて、彼女のデュエルタクティクスも非常に高いことがうかがえる。自信がないと彼女は言っているが、おそらく彼女が自信をもってデュエルをすれば、黄昏や葵とも引けを取らないのではないだろうか?

 そんなことを考えていると早乙女はメモを一通り見返して、自分なりにまとめているようだ。

「そういえばこれって、IVはエクシーズのオーバレイユニットと同じってことですか?」

「その考えでいいと思いますよ。《女神の加護》のような、フィールドを離れるとデメリット効果があるカードはIVにすることで回避できるし」

 一通りプレート魔法の説明を終えたところで、リリアは何か思う点があったらしく、眉をひそめて神妙そうな顔持ちで口を開いた。

「これってさー、もしかしなくてもすごく使いづらいよねー?」

「で、でも、さっき黄昏さんが言ったように、デメリット持ちのカードや、使い終わった《リビングデッドの呼び声》を使えばある程度アドバンテージの損失は軽減できますよ?」

「それはそうなんですけど、やっぱりカードの消費が激しいしー……」

 早乙女もフォローは入れるが、やはり使いづらいのは事実で、使用を検討し始めたリリア。別に黄昏もそれに共感できる部分はあるため別にフォローをする気はない。ただ……

「もう一つ新しいカードがあること忘れてないか?」

「あ、そっか。じゃあそれも教えてー」

「……まあわかっていたからいいけど」

 ただ、検討をするにはもう一つのカードの説明を済ませてからでも遅くはないだろう。

 早乙女に視線を送ると、彼女も黄昏の意図を汲んでターンを終了する。

「じゃあ、とりあえず《歯車街》が破壊されてたからモンスター出したあとに手札だけリセットして説明するぞ」

 そう言いながら黄昏は先に何かを確認してから、《古代の機械巨竜》ではなく《古代の機械獣》を特殊召喚する。

「……その前に確認だけど、フィールド魔法の張り替えが破壊から墓地へ送るに変わったのは知ってるよな?」

「は、はい」

「知ってるよー。でも、あれってなんか変化あるのー?」

「………………」

 予想通りだが、このリリアという少女は集会のとき一体何を聞いていたのだろうか?

「まあ基本的にこの《歯車街》ぐらいしか影響ないからいいんだけどな。今までの張り替えは破壊扱いだったから、発動していた《歯車街》を張り替えると、デッキから《古代の機械巨竜》を特殊召喚で来ていた」

 けど、と黄昏は一度《歯車街》を発動してから、もう1枚《歯車街》扱いにしたカードをセット状態にして見せる。すると張り替えによりさっきまであった《歯車街》が墓地に送られるが、効果が発動される気配はない。

「こんな感じで、《歯車街》の効果が使えない。それから、フィールド魔法がセット状態だとプレート魔法の効果も適応されないから注意な」

 そう言いながらセットしたフィールド魔法を再び発動させて、黄昏は手札のカード1枚を適当な魔法カードにしてIVにすると、一旦間を置いて新しいカードの説明を始めた。

「じゃあ、改めて新しいカード、というより新しい召喚方法の説明な」

「リバイバル召喚だねー」

「その名前だけは覚えてるんだな。ちなみに、どうするかは覚えてるか?」

 その問いにリリアは視線を巡らせるが、一向に話す様子はない。やはり彼女は集会を寝ていた可能性が高い。ただ、考えるだけ無駄だと黄昏は割り切って説明を再開しようとする。が、そこで一つ考えが浮かんだ。

 黄昏が視線を向けた先にいたのは、未だにおどおどとしている早乙女だ。

「なっ、なんでしょうか?」

「説明お願いできます?」

 正直説明にも飽きてきた黄昏は、リバイバル召喚の説明は彼女に任せてみようと思ったのだ。その旨を彼女に説明するとすさまじい速さで手を振り始めた。

「む、むむむ無理です! 私なんかの説明じゃリリアさんわからないかもしれないじゃないですか!!」

「やってみないとわかんないですよ。俺のフィールド使っての説明でいいですから」

「そ、そんな……た、黄昏さんの説明の方がわかりやすいですよ!」

 それからしばらく説得を試みたが、とうとう彼女の確固たる信念を折ることはできなかった。

 お節介なのはわかっているが、彼女がその性格のせいで本来の力が出せていないのならもったいないと思ってしまうのだ。ただ、時間も迫ってきているうえそろそろ早乙女が涙目になってきているため、さすがにやり過ぎたと反省する。

「じゃあ、リバイバル召喚の説明するぞ。特にリリア、あんたはよく聞いておけよ」

「はーい。ご指導よろしくー」

 緊張感のない返事に心配になる黄昏だが、とりあえず今は気にしないでおこうと黄昏は自分に言い聞かせる。

「まずリバイバル召喚だけど、簡単に言えば条件付きの《突然変異》だ。エクストラデッキにいる、召喚したいリバイバル・モンスターに記されたIVの枚数とレベルのモンスターをフィールドに揃える。細かい指定があるならそれも合わせる。そして、それらをシンクロ召喚の時みたいにリリースすることで、エクストラデッキからリバイバル・モンスターをリバイバル召喚できる。

 試しに《古代の機械獣》を素材にやってみるぞ」

 そう言ってアプリに登録してあるリバイバル・モンスターを確認すると、さっそく試して見せる。

「俺はレベル6の《古代の機械獣》に《アイアンコール》をインフェクト。エクストラデッキのリバイバル・モンスターへミューテーション――」

 黄昏の宣言と共に、《古代の機械獣》の周囲を2枚のカードが緑色の光の筋を作りながら回り始め、やがてその光が《古代の機械獣》を包み込む。すると今度は光の筋が0と1の羅列へ変化していき、内部にいるモンスターの姿がノイズが走ったように乱れ始めた。

 その光景に目を光られるリリアと、固唾を飲んで見守る早乙女。その目の前で、黄昏は本来エクストラデッキから出すべきモンスターを、手札として持っていたカードで代用してフィールドに召喚する。

「――リバイバル召喚! 現れろ、《クリッカー・ヴァイルス》!!」

 

《クリッカー・ヴァイルス》

☆6・地属性・雷族

ATK:1800 DEF:2600

 

 現れたのは目の辺りを鉄板でぐるぐる巻きにされたアンドロイドのようなモンスターだった。その体のどこから鳴っているのか知らないが、そのモンスターから定期的にマウスのクリックボタンを押したしたような音が聞こえてくる。

 そのモンスターを見た黄昏は満足そうに頷いた。

「これがリバイバル召喚だ。もちろんこれも他のエクストラモンスターの召喚と一緒で、《神の宣告》で止められるし、召喚後に《奈落の落とし穴》を発動されることもある。他の召喚方法よりモンスターの消費は少ないけど、再利用が難しい魔法・罠を複数枚使用するから、むしろこの召喚の方がリスクが高いかもな」

「はー、なんか面白そー!」

「ホントに集会で何にも聞いてなかったんだな……」

「い、いやー、一応聞いてたんだけどなー。確か、墓地がなんたらって……」

 頭を抱えて思い出そうとしているリリアに苦笑いを浮かべる黄昏と早乙女。このままリリアが思い出すのを待ってもいいが、それだと一体いつになるのか予想がつかない。もうそろそろ授業が終わりそうなため、黄昏が矢継ぎ早に説明を始める。

「リバイバル召喚は墓地のモンスターも蘇生することができるんだよ。ただし素材とするモンスターは蘇生させたいモンスターのレベル、エクシーズモンスターならランクを合わせて、IVは必ず魔法カードと罠カード1枚ずつ使うけどな」

「あーそれそれ! もう少しで思い出せそうだったんだけどなー」

「嘘だな」

「嘘ですね」

「う、嘘じゃないよー!」

 必死に弁解するリリアだが、もはや彼女の言葉に説得力はなかった。この授業でずいぶんと打ち解けた……というよりリリアの扱い方を覚えた黄昏たちは、最後にこのカードの重要な部分の確認をする。

「このリバイバル召喚は、すべてプレート魔法がカギになってる。もしプレート魔法がフィールドを離れた場合、フィールドに表側表示で存在するリバイバル・モンスターはチェーンブロックを作らずすべて同時にエクストラデッキに戻る。これもルール効果だから《スキルドレイン》とかで効果を無効にしても回避できない。

 あと、リバイバル・モンスター以外で、墓地からリバイバル召喚したモンスターも同じようにチェーンブロックを作らず、こっちは墓地へ送られる。

 それから墓地や除外ゾーンにいるリバイバル・モンスターは、召喚条件を満たしたうえで、自分の場にプレート魔法がないと蘇生や帰還が出来ないことも注意しとけよ」

 そこで授業終了を知らせるチャイムが鳴り、一度集合するように呼びかけが入った。

「一応全部説明できたな」

「お疲れー。いやー説明はわかりやすくて助かったよー。えっと、ゆう君2号!」

「誰が2号だコラ」

「だって、ゆう君だともう一人いるから被っちゃうんだよー」

「それが誰かは知らねえけど、なら普通に呼べばいいだろ」

「うーん……じゃあ遊糸でいいやー」

 リリアはしばらく考えた素振りを見せるが、結局思いつかなかったらしい。

「あ、あの……」

 デュエルアプリを終了し、元の場所に戻る準備を始めた黄昏たちに、申し訳なさそうな声で早乙女が引き留める。

「どうしましたー? 何かなくしちゃったとか?」

「あ、いや、そういうんじゃ……ないんですけど」

「?」

 さっきまで普通に話していた早乙女は再び口ごもってしまう。その光景に不思議そうに首を傾げるリリアだが、彼女が何を言おうとしているのか察した黄昏は、そっと彼女に助け舟を渡す。

「さっきの説明で、何か気になる場所でもありました?」

「あ、はい……。すいません、わざわざ引き留めちゃって……」

「気にしなくてもいいですよ。時間配分を違えた俺のミスだし。それに、迷惑かもなんて思う必要もないですよ。聞きたいことがあるなら聞いてください」

「そーそー、私なんていっつもあおいんに聞いてばっかりだしー」

「それはどうかと思うけどな……それで、どんな質問ですか?」

「あ、えっと……さっきのプレート魔法が無くなった場合、なんですけど……あれって、リバイバル・モンスターが裏側だとプレート魔法が無くなっても残るんですよね?」

「そうですね。あと、リバイバル・モンスター以外はリバイバル召喚にさえ成功すればプレート魔法がなくてもフィールドに残り続けます」

 それが質問かと視線で返すと、年上のハズなのに腰の低い少女は自分の中にある本命の疑問を投げかけてきた。

「その、プレート魔法がない場合に、貫通効果を持ったモンスターで裏側になってるリバイバル・モンスターを攻撃した場合はどうなっちゃうのかな、って……」

「……ああ、その場合か」

 早乙女の質問は、ダメージ計算が行われるかどうか、ということだろう。ちなみに、リリアはそもそも質問の意味が分かってないようだ。

「場に光属性以外のモンスターがいるときに、裏側の《雷電娘々》を攻撃したときの処理は知ってますか?」

「え、あ、はい……一応」

「その処理と一緒らしいです。もしプレート魔法がない状態で裏側のリバイバル・モンスターが攻撃された場合は、ダメージ計算後に自壊するから、もし貫通モンスターの攻撃力が高いと、こっちはダメージを受けたうえで自壊する。こんな説明で大丈夫ですか?」

「は、はい! ありがとうございました! じゃ、じゃあ私はこれで……」

 風切り音が聞こえそうなほどの勢いでお辞儀をすると、早乙女は小走りで自分のクラスの集合場所に向かっていった。

「どっちが年上かわかんねえな……」

「あははは、うーちゃんかわいいなー」

 彼女の背中を眺めながら思い思いの感想を言っていると、不意にリリアが黄昏に前に回り込み、下からのぞき込むようにして尋ねてきた。

「あおいんから聞いていたけど、遊糸ってすごく頼りになるねー」

「七波が?」

「そうだよー、今日はあおいんに説明してもらうつもりだったんだけど、今日午前中で帰るって言うから代わりに黄昏遊糸って人に教えてもらえって言われたんだー」

「おい、俺はお前の家庭教師じゃねえぞ」

「でも、結局は教えてくれるんだよねー」

 相手を警戒しない、緩みきった笑みを浮かべるリリアと、その笑みに戸惑う黄昏。その目線のむず痒さから逃れるように黄昏は歩き始めた。ただしリリアもまるで飼い主を追いかける犬のように少年の背中を追いかけてくる。

「そういえば、あんたがゆう君って呼んでるやつはこの学校にいるのか?」

「ううん、小学校まで一緒だったんだけど、中学校に入るといつの間にか転校しちゃったんだー」

 そうか、と振った側が生返事で返しているが、リリアはそんなこと気にせず、ジッと黄昏を見つめている。その視線に気づいた黄昏が怪訝そうに尋ねると、リリアは神妙な面持ちで首を捻った。

「なんだか、ゆう君と遊糸ってどこか似てるんだよねー」

「俺と?」

「うん、なんか危なっかしいというか……」

「大きなお世話だ」

「あー、信じてないでしょー! アタシの直感は結構当たるんだよー?」

「はいはい、気を付けるよ。じゃあな」

 適当にあしらって彼女と別れて自分のクラスの場所に集合する。

 全員集まったのを教師たちは確認すると、チップの回収と共に数枚のカードの束を生徒全員に渡し始めた。それは、黄昏の手にも渡される。

 確認すると、それは先ほど黄昏が説明で使った《電脳基盤》と《クリッカー・ヴァイルス》のカードだった。

 先程の仮想カードではその見た目を詳しく見ることが出来なかったが、プレート魔法は設置の関係かイラストのみが横向き、テキストは他のカードと同じように縦向きで記されていた。それ以外は他の魔法カードと違った様子は見られない。

 対するリバイバルモンスターはといえば、苔のような色褪せた緑に黒い筋が入った背景となっていた。これまで通常モンスターは黄色、効果モンスターはそれよりやや赤みがかった色、融合は紫、シンクロは白……など色によりカテゴリ分けされてきたが、色以外に模様が入ったのは今回が初めてだった。まるで電子基板のような見た目は、このカードが生み出されが原因とも言えるグレムリン・ダウンがウイルスによるものという一般認識だからかもしれない。

「えー、皆さんに渡したのは、試作品で作られたプレート魔法とリバイバル・モンスターで、アカデミアの生徒の皆さんには特別に支給されます」

 教師の言葉に生徒がざわつくが、これはある種予想できたことだ。新しいカードというのは、調整がうまくいっていないことが多々ある。そのようなカードを使って、重要なデュエルでエラーが発生するのは避けたいところだろう。そういうときに、黄昏たちアカデミアの生徒は都合がいいのだ。

 デュエルアカデミアでは授業でデュエルを学ぶため、通常の学校に通っているデュエリストよりデュエルの頻度は圧倒的に多い。さらに、さまざまなデッキと多彩な状況の中で新しいカードを使うことでプログラムのエラーを探すデバッグのように、荒さがしを効率よく行うことが出来る。

(簡単に言えばモルモットだよな。

 まあ、《電脳基盤》はまだ俺のスクラップに採用の余地はあるし、ありがたいけど)

「それではみなさん、今日の授業はこれで終了です。今日の授業で学んだことを生かして、新しいカードをデッキに入れて強化、またはプレート魔法やリバイバル・モンスターの対策のために編集をしてみましょう」

 その言葉で授業を締めくくると、生徒たちはみな散り散りにその場を離れ、黄昏もそれに倣ってデュエルスペースを後にした。

 

 次の日、デュエルアカデミア・ダイス校で妙な噂が生徒の間で話題になっていた。

 ――七波葵が自主退学した、と

 




文字が多くてわかりにくい部分があるかもしれないので、とりあえずデュエルディスクの説明をしておきます。
見た目はarc-Vのデュエルディスクと一緒です。モンスターゾーンですが、薄くて強度があり、カードが張り付く謎仕様のフィルムに、プロジェクションマッピングのようにフィールドが映し出される、といった感じです。プレート魔法の使用にあたって、フィールド魔法を発動する場所も5D'sまでのようなものではなく、モンスターゾーンの隣に置かれます。
(そういえばゼアルってどこに置かれてたんだろ……?)


タッグフォースをダウンロードした矢先に忙しくなって全く進んでませんが一言

アテム、マジックシリンダー伏せてるならそれフィニッシャーにしろよ

ライフ3000近く残ってるのに直接攻撃何回も食らった挙句に変なタイミングで使いやがったせいで相手のライフを削りきりなかった私のAIBOOOOOOOOOでした。
調整が大変なんでしょうけど、やっぱり変なプレイングをされると焦りますね(初手で黒魔術のカーテンとか)
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