「ゴハッ」
気が付くとベルは重傷を負っていた。体は至る所がボロボロになり全身激痛に苛まれていた。
椿の打った【ブレイズ・オブ・カオス】もボロボロになり力なく地面に横たわっている。
更に、これを機にした様に【フレイヤ・ファミリア】が突如攻勢を始め次々と神々が捕まっていく。
第一級冒険者がそれぞれの相手に釘付けにされている状況下に於いてなおその有様、誰がどう見ても勝負は決していた。
だがそんな状況下にあって、諦めの悪い馬鹿がいるのも世の常だ。
【フレイヤ・ファミリア】の蹂躙劇、その様に多くの者が諦めと達観の目でその光景を見ている。何人かの者は既に見るに値しない、或いは見たくないと言う気持ちから既に画面から視線を外し日常に帰ろうとしている。
「おい見ろ、立つぞ」
誰かが不意に漏れた様に掠れた声でそう言う、その言葉が呼び水となって諦めていた者達を次々に繋ぎ止めていく。
「【体は剣で出来ている】【血潮は鉄で、心は硝子】【幾たびの戦場を越えて不敗】【たった一度の敗北もなく、たった一度の勝利もなし】」
半死半生、意識も混濁した状態で立ち上がったベルは息を吐くと同時に右手を前に出す。
「動かぬが身の為だ。肋骨が肺に刺さっていよう、息をすることすら耐え難い苦痛の筈だ」
「【担い手はここに独り】【剣の丘で鉄を鍛つ】【ならば、我が生涯に意味は不要ず】」
「貴様…………」
オッタルは目の前で紡がれる詠唱を黙って見送る。
唱っている
詠唱している
立ち上がりなおも抵抗しようと試みている。
肉体的にはボロボロで立っているのも不思議な程の重傷、しかしその目は物語っていた。まだ終わってはいないと
同時に暗黒期終幕から今までピクリとも反応しなかったオッタルの勘が動いた、あの魔法を完成させてはならないと。
「……………………」
しかしオッタルはその本能をねじ伏せ魔法の完成を待つ。それは【猛者】としてのプライドか、或いは強者の余裕か、その真意はオッタル自身にしか分からない、そんな時
ガァンっ!!
と銃声が鳴り響きオッタルの頭を直撃するが弾丸の方が耐えられずバラバラに砕け散る。
そこにはライフルを構えるミユの姿があった。
「やっぱ駄目か、後は頼んだよ【正義の味方】」
そう言うと茂みの向こうから緑色の何かが飛び出しオッタルに迫る。
オッタルはその物体を剣で弾くとその正体であるリュー・リオンが立っていた。
「ベル!!」
「【この体は、無限の剣で出来ていた】」
瞬間、世界が塗り替わった。
無数に広がる武器の丘、先程まで闘技場跡地だったそこは見る影もなく見渡す限りの剣の丘。
「ここは……………………」
「ここは【固有結界】【無限の剣製】の中」
誰にでも聞き取れる程の声音が聞こえそちらを見るとベルはポーションの空き瓶を握り立っていた。
「固有結界…………」
聞き慣れない単語を呟きオッタルは警戒する。
「そう、とある人の心象風景。魔術の最奥、大魔術にして大禁呪、剣撃の極致」
ベルは地面に刺さっている白と黒の中華剣を抜く。
「この無限の剣と僕が貴方に挑む。覚悟は良いか?」
「………………………………来い」
オッタルはゆっくりと大剣を構えそう言うとベルは地面を蹴った。