リリカル!黄金十字! ──What a beautiful nostalgia──   作:るべおら

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文才の無いスチパン中毒の末路。
てか全然デートしてねえ…


第七話 ドキドキデート大作戦!

 

冷たい風は、東から。

春の訪れを待つ2月の夜天。その、下に。

一つの光が浮かび上がる。

 

───これは、ある日の夜のこと。

 

───フェイトと約束をした、夜のこと。

 

雲の切れ間からは月明かりが溢れ、地表を、街を、人を、淡い光で包み込んでいく。

 

場所は、海鳴。

 

街の中心部には高層のビルが立ち並び、風情ある海辺の街とは様相の違う姿が見られる。

風は、強風。

高い建物。

広い道路。

月光。

電灯。

照明。

 

月光の光と人工の光。

 

その、光溢れる街の端。

喧騒を外れた、海辺の区画に。

 

光の届かぬ屋敷があった。

月の光が届かない。街の光が届かない。

 

それはある種の結界だ。

魔力を漏らさぬ遮断の結界。

人の視覚を妨げる拒絶の結界。

 

見えない、気付かない、聞こえない───

 

その、一時だけ外界から遮断された屋敷の前に。

 

一つの、人型の光が明滅する。

 

夜天の下に浮かび上がる光だった。

人の輝きを愛する光だった。

それは、御伽の光だった。

 

黄金の名を持つ、光の王───

 

ハルスタッド・ローゼンクロイツは、結界の中で静かに屋敷を見上げていた。

 

その男の手には───異形の本。

 

「一項…二項…三項。確認。了承。逆算開始」

 

喧騒の届かぬ領域に、呟く声が響き渡る。

男の低い声音。

その呟きの後に、ページを捲る紙の音。

 

「屋敷を本来の姿に…腐敗を正せ。朽ちを癒せ。我が光の名の下に、現象数式(クラッキング)を展開する」

 

本が、輝く。

───辺り一片が、輝く。

 

凄まじい光の奔流!

輝かしき魔力の迸り!

 

そこにある種の怪異は無く───

そこにあるのはある種の異形。

 

「黄金写本を大計算機に接続。終了。根源を再現。…演算終了」

 

光が、結界内部の屋敷を包む。

 

───腐敗が、治る。

───老朽を、癒す。

 

腐敗し老朽化していた筈の屋敷は───

 

瞬く間にその姿を取り戻した。

 

 

だが、それに周りは気づかない。

その光を、知ることはない。

ただ、辺りを照らす月明かりと

喧騒を照らす街灯があるのみで。

 

男は本を閉じ、腕を軽く振る。

 

それと同時に月光を歪めていた結界は霧散し───

 

美しい屋敷が夜天の下に姿を顕した。

それが、人知れず起きたこの夜の出来事である。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

───そして、放課後。

 

…放課後?

あれ?

 

今日、授業何をやったんだっけ…

まずい。思い出せない。ノートも当然、とってない。

 

…うん。

まぁ、いいよね!

 

「良くないわっ!!」

 

バキッ!

という音が頭から鳴ったその瞬間、猛烈な痛みがやってきた。

目が、クラクラと。

 

「あ痛っ…!」

 

「全く!真面目なあんたのことだか大丈夫だと思ってたら!放課後までボーっとしてるんだからっ!!」

 

後ろを振り向く。

やっぱりと言うかなんと言うか…私の頭を叩いたのはアリサだったらしい。

 

「痛いよアリサ…」

 

「あんたが悪い!」

 

うん。確かに。

 

「にゃはは…うん。フェイトちゃんずーっとボーッとしてたね?」

 

なのはまで言うなんて…私そんなにボーッとしてたかな?

 

「「してた」」

 

即答…酷いよ2人とも…

いや、私が悪いんだけど。

 

「フェイトちゃんずーっと心ここに在らずだったもんね?そんなにデートが楽しみだったの?」

 

「そ、そんな事ないよっ!!もう、すずかっ!!」

 

すずかの馬鹿っ!!笑顔で意地悪言うんだもんっ!!

 

「はぁー…ハルトさんのおかげで、フェイトちゃんの可愛さが割増やな」

 

はやてまで!

 

「うっ…!もう!知らないっ!」

 

そう言って、バッグを掴んで教室を出る。

途中みんなが呼ぶ声がしたけど、無視だ無視!

もう、知らないんだから!

 

 

* * * *

 

 

 

「にゃはは…結局待ってくれてる所がフェイトちゃんらしいね?」

 

周りのみんなも苦笑して頷いている。

…うぅ…

 

「だ…だってだって…みんなを置いて行くようなこと…」

 

出来なかったし…

と言おうとした瞬間、何故かなのはが飛びついて来た。

 

「うわっ!」

 

「フェイトちゃん可愛いっ!!」

 

「…またイチャイチャしだした」

 

「まぁ…管理局でも2人は『カップルランキング』の堂々No. 1やからね」

 

「え…それホント?」

 

「ホンマホンマ」

 

「ふふ…二人とも楽しそうだね」

 

「全く…ん?」

 

と、2人のラブラブ(?)っぷりに辟易としていたアリサがふと前の方を見ると、何やら人だかりが出来ていた。

どうやら校門の前に生徒が集まっているらしい。何かを囲むように生徒が群がっているのがうかがえる。

 

「なんや?あれ」

 

どうやらはやても気付いたらしい。気付いていないのは恐らく後ろの方でイチャついているバッカップル(暫定)ぐらいだろう。

 

「すごい人だね…?何かあったのかな?」

 

「人がゴミのようね」

 

「アリサちゃんが言うとシャレにならんなぁ」

 

「なんですって!」

 

そこで、ようやくイチャついていた2人もその人ゴミに気付いたようだ。

 

「なに?あれ」

 

「何かのイベント?」

 

前を見ると、人だかり。

 

人だかりは門を塞ぐ勢いでが出来ている。

…近づいてみると何やら女生徒達の黄色い声も聞こえてきた。

 

…あそこに溜まると…邪魔だなぁ…

 

五人の感想といったら、それ。

 

「避けて行こうか」

 

フェイトがそう提案する。けれど…

 

「面白そうじゃない」

 

「せやな。ちょっと興味あるわ」

 

はやて、アリサの2人がそれを即座に却下した。ネタ好きの2人にとって面白そうな事は見過ごせないのだろう。

そうして5人は人ゴミに近付こうとして。

 

……始めに気付いたのは、なのはだった。

 

「あれ?あそこにいるのハルトさんじゃ?」

 

そう言ってなのはが指差した方向───つまり人ゴミの方角。

周りが女子生徒で固められている為だろう…

高い身長が飛び抜けて目立って。

太陽の光に反射する金糸が、ここからでも見える。

…それは間違いなくフェイトの父親、ハルトの姿だった。

 

「はぁー…なんやあれ。凄まじいモテっぷりやなぁー…ってフェイトちゃん!?」

 

その姿を見つけるや否や、フェイトは尻に火がついたように駆け出した。

 

「───父さんっ!!」

 

 

 

* * * *

 

 

 

寒風が吹き荒ぶ中……

ハルスタッド・ローゼンクロイツは、実は無表情の仮面の下で内心焦っていた。

いや、彼の身はすでに光……故に寒さというものを感じないハルトにとって、この肌寒い気候は彼の焦る事象に足り得ない。

それならばなぜ彼は焦っているのか、それは勿論、彼の周りに所狭しと群がっている女生徒達が原因である。

……遠い昔に御伽の存在となって久しいハルトは、女性に言い寄られた事など数え切れない程にある。

かつて「母」と呼んだ女性……テスラ夫人にも、女性には優しくすべしと口を酸っぱくして言われたものだ。

それを忠実に守ってきた彼は当然、女性の扱いにも熟知していた。

─────しかし。

しかし、彼はそう……40年間、いや、彼の体感で200年もの間「虚無」の空間で過ごしていたのだ。

人と話すこと自体が久しいことだった。

それ故に、制服姿というある意味で若者の象徴である服装に身を包んだ少女達に囲まれる事に、ハルトは似合わない動揺を見せていた。

 

「誰かを待ってるんですかー?」

 

「私達とお茶なんてどうですか?」

 

─────別に、女子生徒達が苦手な訳ではない。

制服はいいものだとハルトも思う。

瑞瑞しい雰囲気が実に、よい。

 

─────だが、これはいかがなものか。

 

ハルトは別にマスター・テスラのように『淑女から男性に声をかけるなど……』などと硬い思想を持っているわけではない……ない、が。

この、まるでタブロイド紙に載るアイドルに群がるような接し方はどうなのだろう。 そんな大層なものになった覚えなど欠片もないハルトは内心でため息を吐きつつ状況の打開を図る。

さてはて、この麗しき少女達をどうしたものか。

そう考えていたところで……

 

「───父さんっ!!」

 

愛すべき娘の声が、響いた。

 

 

 

* * * *

 

 

 

人の波をすり抜けて。父さんの元に駆けつける。

そうすれば、ほら。

 

「フェイト」

 

私の名前を、呼んでくれるから。

思わずその腕に飛びついてしまったり

……この時にほんの少しでも冷静さを欠いていなかったら…

この後ももっと落ち着いた展開になった筈。

認めよう。

……私は少々浮かれていたと。

─────そして……父さんの側に群がる生徒達に、言いようのない感情が芽生えたことも。

 

───それに気付いたのは、周りの生徒の喧騒が聞こえてからだった。

 

「え……ハラオウンさんの彼氏っ!?」

 

「でも父さんって…?」

 

「え"っ…親子!?」

 

「それにしては若くない?でも、あの金髪…」

 

ワイワイと。ガヤガヤと。

噂が飛び交う只中で、私の顔にどんどんと血が集まっていく。

 

人前なのを忘れてたっ!!

 

喧騒は今も勢いを増していってる。…その真ん中にいる私と父さんは、はっきり言って檻の中の猿。

 

「と、父さんっ!!こっち」

 

「ん」

 

堪らず私は駆け出した。

父さんの腕を急いで引いて学校を出る。

後ろからなのは達の声が聞こえるけど、今は立ち止まってる暇はない。

一刻も早くここを離れないと…

私は恥ずかしさで倒れちゃうと思う。

ん……、もっとゆっくり歩いてくれ─────

そんな父さんの声が聞こえたけれど、私はこの場を離れることに一杯一杯で聞き入れることはとてもできなかった。

 

 

 

* * * *

 

 

 

所変わって、海鳴デパート。

 

8階建てのこのデパートは、何と言っても品揃えの豊富さが売りの人気店で、海鳴市民以外の人々も多く訪れ活気溢れる店だ。

家具やオモチャ、アンティークにフードコート。

学生は商店街の方に流れるから、このデパートに訪れるのはおおよそ家族連れが多い。

だから女子校生特有の姦しさも無く、静かな買い物が楽しめるのも人気の一つとして挙げられる。

 

そんなデパートの4階家具売り場に、私と父さんは学校から逃げるように来ていた。

 

「まずはお前の新しい机とベッドだな。選べ」

 

「え?机とベッドならハラオウン家に…」

 

お金も勿体無いし…ハラオウン家に家具を置きっ放しにしておくのも悪いし。

そう言ったら父さんは……

 

「馬鹿者。ハラオウン家は他人ではないだろう……向こうに泊まりに行く事もある。何より、彼女らはお前の家族だろう?遠慮をするな。新しいベッドを選べ」

 

……そう言われると。

確かに……ハラオウン家に行く時もあるだろうし……うん。

 

「うん。わかった」

 

「よし」

 

「あ、父さん!ダブルベッドがお買い得だよ!」

 

「……お前は何を言ってるんだ?」

 

 

 

* * * *

 

 

 

そんな2人を側から見つめる人影が、4つ。

 

「楽しそうやな〜」

 

「本当。フェイトちゃん幸せそう」

 

「それにしてもフェイトのお父さん若いわね…なのはの両親やリンディさんも若く見えるけど、それ以上じゃない」

 

「ホントだね…」

 

なのはやはやてはハルトの「不老」を知っているので純粋に2人の感想を述べるのみだが、それを知らないアリサとすずかはハルトの若さにしきりに首を傾げている。

まぁ、ハルトはどう見たって20前後くらいにしか見えないので疑問に思うのも当然だ。

 

「…お、また腕組んどる」

 

「にゃはは…親子というより完全に恋人さんだね」

 

そう、何を隠そうあの2人は見た目も様子も親子というより恋人である。

すれ違う人々が2人を羨まし気に見つめるのがその証拠。

道行くカップルは彼氏がフェイトに目を奪われては彼女に怒られ、彼女がハルトに目を奪われては彼氏に拗ねられるというのが固定化している。

 

「あ、移動したわよ」

 

「机とベッドは決まったみたいだね」

 

「追うんや!」

 

ぞろぞろと4人が尾行を始める。

…幸か不幸か、それを訝しげに見つめる客の視線に4人は気付いていなかった……

 

「あれ……階段の方に向かっていったのに戻ってきたよ?」

 

「ん?なんや?なんか言い争っとるで」

 

『もう!階段は疲れるからヤダって!お祖父ちゃんみたいなこと言わないの!』

 

『おい、年寄り扱いをするなよ。肉体はまだまだ若輩だ』

 

そんな会話が向こうから聞こえてきて、4人は深いため息をついた。

 

 

 

* * * *

 

 

買い物中にも色々あった。

ハルトなどは近代の家具デザインにやたら関心を示していたし、フェイトはフェイトでそんな年寄り臭いハルトの反応を楽しんでいた様に見える。

 

「父さん、すごいね」

 

2人がデパートを歩いていると、隣のフェイトが唐突にハルトに尋ねた。

 

「……何がだ?」

 

何の脈絡も無い言葉だ。

一体何がすごいというのか。

ハルトが聞き返すと、フェイトは少し顔を俯かせて…

 

「周りのお客さん、みんな父さん見てるよ?……モテるんだね」

 

などと、訳の分からないことを言い出した。

……何を言ってるんだ?この子は。

思わずといった風に、ハルトは首を傾げて。

 

「いや、私では無い。全員お前を見ているのだろう」

 

「いや、私の訳ないよ……」

 

ふむ。やはりプレシアにそっくりだな。顔立ちといい気の弱い所といい…

 

呟き一つ、頷いて。

 

「周りはお前の美貌に見惚れているんだ……流石私の娘だ。見目麗しい」

 

「なっ……!麗しいって…っ!!私なんて全然可愛くないよっ」

 

フェイトが可愛くなかったら、世の中の淑女の8割は何だ?ゴブリンか?

 

「そうか?私はフェイトは世界一可憐だと思うがな」

 

紛れもなく親バカの一言に尽きるが…

親というより、孫を可愛がるお爺ちゃんの様な気もする。

…まぁ、それはハルトの出す老練の雰囲気のせいかもしれないが。

 

「せ、セカ…っ!?」

 

案の定、フェイトはこれでもかと言うほど顔を赤くし声にならない声を上げている。

 

「全く、お前はもう少し自覚を…ん?」

 

そこで、ハルトはある店で足を止める。

その鋭い視線の先には…

 

ぬいぐるみが。

 

「?どうしたの父さん」

 

「あぁ……そう言えばぬいぐるみを買っていなかったな。選べ」

 

「……え?」

 

「なんだ、どうした?」

 

「いや…ぬいぐるみって…私そんな子供じゃ無いよ!?」

 

フェイトはもう中学二年生。

あと少しで三年生だ。そんな年にもなってぬいぐるみは…と、その気持ちは分からなくはない。

勿論、ぬいぐるみ好きの子も多いだろうが。

 

…だが、そこはこのハルトの事。

思春期真っ只中であるフェイトの気持ちなど少しも理解していない。

…いや、出来ない。

傲岸故に。

不遜故に。

年頃の娘の気持ちに気付かない。

 

「そうなのか?」

 

「そうだよっ!」

 

たが、ハルトは首を傾げるばかり。

 

「そうか……プレシアがフェイト位の時、あれはぬいぐるみを肌身離さず持ち歩いていたものだが」

 

……衝撃の事実が発覚した。

 

それはもう、とんでもない事実が。

プレシアのイメージ像が音を立てて崩れ去った瞬間である。

 

「えっ…プレシア母さんが…?」

 

流石は現ファザコンで元マザコンのフェイト、プレシアの名前が出た途端、恥ずかしそうな顔から一変して真面目な顔をした。

……実はプレシアがぬいぐるみを持ち歩いていたのは8割方ハルトのせいなのだが、それはまた別の話である。

 

「うむ」

 

何故か物凄く偉そうに頷くハルト。

その不遜過ぎる態度は、相手がフェイトでなければ訝しげに睨まれる所だ。

 

「…えと、その…ちなみに、母さんはどんなぬいぐるみを…?」

 

「ん……ウサギだ。確か」

 

「ウサギ…」

 

そう一言呟くと、フェイトはトテトテとウサギのぬいぐるみが売っているスペースへ移動する。

 

 

……ちなみに余談だが、このウサギのぬいぐるみの買い物が本日で1番時間が掛かった。

 

190強の大男と金の長い髪を持つ美少女が真顔でぬいぐるみを選ぶ様は、周りの客を唸らせるのに十分な程にシュールだった。

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

─────人知れず息を整える。

……うん、やっぱり緊張する。

 

当然だ。私がこれから父さんに言うことは、私達の今後にとっても大切な事なのだから。

 

買い物中も、ずっとその事を考えていた。

いつ、言おう。

いつ、切り出そう。

言うタイミングがなかなか見つからなくて。

 

気付けばもうデパートを出て、ハラオウン家に帰る所だ。

 

「そういえば、買った家って何処なの?」

 

なんとか切り出そうと、話題を振る。

 

「行けばわかる。…まぁ一種のサプライズだ、期待していろ」

 

…ダメだ。

一瞬で話題が終わってしまった。

父さんの馬鹿。もう少し話題を続けても良かったじゃないか…

 

「まぁ、住む「家族」は私達2人だけだからな。広さは十分だろう───」

 

───!

きた!チャンスだ。

家族…!

このタイミングで!!

 

 

「あの……父さんっ!!」

 

できるだけ声を、張り上げて。

 

「ん?なんだ」

 

父さんが振り返る。うん…やっぱり今言わなきゃ!!

 

「その…父さんに言わなきゃいけないことがあって…」

 

「ん」

 

少し首を傾げてるけど、そのすぐ後に真っ直ぐ私の瞳を見てくる。

言ってみなさい─────

瞳が、私にそう語りかけてきているのがわかる。

…やっぱり、父さんは優しいね。

それだったら、きっと大丈夫。

 

「実は───」

 

 

 

 

 

 

「─────私っ!子供がいるんだっ!!」

 

 

「──────────は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…父さんからの、反応がない。

 

「あの…父さん?」

 

どうしたんだろう?

父さんの顔を見てみると…

怒っているわけでもなく笑っているわけでもなく…いつもの無表情。

あぅ…出来れば何かを言って欲しいんだけど。

 

「あの─────」

 

父さん?

そう言いかけた瞬間、父さんは重い口を開いて…

 

「……相手は誰だ?」

 

やっと反応してくれた。

けど…相手?相手って何の相手だろう?

 

「相手って?」

 

「……質問を変えよう。相手の…名前は何だ?」

 

名前…?

相手っていうのは何だかよくわからないけど、名前を教えればいいんだよね?

 

「エリオだよ」

 

エリオ・モンディアル。

半年以上前に私が保護した子供だ。最近ようやく私にも笑顔を見せてくれるようになってきて…

 

「エリオ……エリオ…」

 

……父さんは、何だかしきりにエリオの名前を呟いている。

うん。気に入ってくれたのかな?

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

あかん。腹がねじ切れそうや。

 

物陰で話を聞いていたはやては、今にも大口を開けて笑い出しそうな自分の口を閉じるのに必死だった。

 

─────勘違いしとる。ハルトさん絶対にエリオの事勘違いしとる!!

 

私にはわかる。「エリオ…エリオ…」と何故か名前を繰り返しているハルトさん…

あれ、絶対怒っとるで。

 

ほら、今も─────

 

「エリオというのはどんな男だ?」

 

もう「子供」やなくて「男」言っとるやん。

 

「えっと……少し遠慮しちゃうところもあるけど…優しくて」

 

あ、ハルトさんの手が震えとる。

 

「思いやりがあって」

 

……無表情やけど、雰囲気が尋常やない。

なんでフェイトちゃんは気付かんの?

 

「……笑顔が可愛い子だよ!」

 

プチッ

 

っと音がした。……様な気がする。

 

「あの…はやてちゃん?」

 

「何?なのはちゃん」

 

「ハルトさん……絶対勘違いしてると思うんだけど…」

 

「そうやろなぁ…」

 

「本当のことを伝えた方がいいんじゃ…」

 

「あかん!あかんよ!これはフェイトちゃん家の事なんやから!ウチらが出ちゃあかん!」

 

「─────本音は?」

 

 

「この方がおもろいやん☆」

 

 

 

* * * *

 

 

 

「……エリオとやら……幼気な愛しき我が娘に手を出した愚かさ……必ず悔いさせてやる」

 

「何、君に落ち度はないさ……愚かさは人間の美徳だ」

 

 

ちなみに、ハラオウン家の人達もハルトの勘違いに気付いた様だが、あえてそれを口に出そうとはしなかった。

 

クロノなどは言おうとしたのだが、リンディ達に止められた。

 

理由は勿論─────

 

はやてと同じである。

 




ハルトが主人公なのに、フェイトさん視点で話が進んでいる事に気付きました。だが手遅れ。
もう、一章の主人公フェイトさんで良くね。

では、次回まで!さようなら!
読んで下さってありがとうございました!




≪現象数式黄金写本≫
ハルトの持つ異形の本。
その本の力は謎に満ちている。
万能王レオナルド・ダ・ヴィンチより賜ったとされるが、詳細は不明。
オリジナルの道具です。


≪現象数式≫
認識によって世界を書き換える力。
用途は医療や兵器など多岐に渡る。
御伽噺の魔法めいた力で、本来は個人で使える力ではありません。※一部wikiより引用
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