リリカル!黄金十字! ──What a beautiful nostalgia── 作:るべおら
大分厨二要素アリ。そしてスチパン用語が多いのであとがきに少し解説を。
「君は、誰だ?」
突然、暗闇の中に響いてきた声。
男の人の声。
低く
それでいて柔らかく
けれども硬い
……そして何よりも悲しさを含んだその声に。
私の心は知らないうちに惹きつけられ、震えていた。
震える、心
それは闇に取り残された寂しさから来たものだったのだろうか?
それは定かではないけれど…
姿の見えないその声に、私は深い安心を覚えた。
何故だかは、わからない。何も。
声のした方を振り向く。
この暗闇で視認など出来るはずはない。それはわかっていた。
……けれど。
けれど。
─────暗闇の中に─────
─────輝く赫瞳、一つ─────
「もう一度問おう、
静かに「彼」が問う。
「あっ…ぇっ…と…フ、フェイト・T・ハラオウン…といいます」
少し、声が震えてしまったけれど。
それを気にする余裕は私には無い。
ついさっきまで私を押し潰していた孤独の文字が、誰かと話すことを渇望していたから。
静寂が戻る。
音が戻る。
世界、が戻る。
彼が誰なのかは、わからないけれど。
「…フェイト」
そう、呟く声が聞こえる。
名前だ。
私の名前。
なのに…彼が言うと、何故かその名前が特別に感じて。
不思議だった。
不思議に、その響きは暖かかった。
「あの…貴方は?」
だから、今度は私が問う。
彼を。
彼の名前を。
「…私は…」
「…私は世界の、全ての、凡ての敗者だ。……故に、私に名乗る名前など無い。名前も無ければ生きる価値もない…だから、私はこの時間牢獄にいる。永久に囚われたままに。ただ、その運命のままに」
彼の声音。
聞いたことがある。
そう、それは……後悔の、声音だ。
懺悔の響きだ。
─────そんな…
価値が無いって…そんな。
寂しい事を言わないで欲しい。
人は誰でも生きる権利があるのに。
そう。
私のような紛い物でさえ。
それを認めてくれた人達がいるのだから。
「そんな…そんな寂しい事を言わないで下さい」
だから、漏れる。
言葉が、溢れる。
「君は」
姿の見えない彼の息遣いを感じる。
ため息にも似た吐息。
「君は優しい。そして、何処までも優しく限りなく美しい。君のような心の持ち主が時間牢獄にいるのを心苦しく感じる……」
「時間…牢獄?」
さっきも言っていた、その言葉。
それがこのロストロギアの名前なのだろうか。
「時間牢獄。だが、かの≪チクタクマン≫の作りしオリジナルとは違う。これはこの世界に合わせて作られた言わば贋物。かつて我が師…ニコラ・テスラが囚われていたという≪アルカトラズ時間牢獄≫に限りなく似た、しかし全く非なる牢獄だ」
チクタクマン?…誰だろう。
ニコラ・テスラ、その名前は聞いたことがある。確か、そう……地球の物理学者の名前だった筈。
─────それよりも、わからない。
難しい言葉。
理解が、出来ない。
「えっと…チクタクマン?それって…?」
「それを」
一呼吸。そして、紡ぐ。
「…それを、君に言う意味など無いし、言うつもりもない。君のような幼子が≪時計仕掛けの神≫と関わりを持つべきではない。例え、名だけだとしても」
明確な、拒否。
これ以上聞いても、この人はチクタクマンについて口を割らない。
そう、感じる。
決意を感じる。
覚悟を感じる。
「…この時間牢獄から出る術は…無いんですか?」
だから、私は話題を変えることにした。
気になったことから、核心へと。
「あぁ。出る術は本来無い。私にも、そして君にも≪
じゃあ、本当に…
本当に出る術は…
再び、堕ちる。
闇が。
黒が。
鎖のように、心に絡みつく。
「出る……術がない……?」
「最早。……≪一輌だけの地下鉄≫はこの地を走ることはない。また、あの万能を求められそれを体現するしかなかった≪
淡々と話す彼。でも、私はその話を聞いてなどいなかった。
……だって。
……だって。
「君の…心の震えを感じる」
思考の海に沈もうとすると、突然彼が語りかけてきた。
先程よりも、優しい声音で。
「…え?」
「君は今悲しんでいる。君は今絶望している…」
そんなの、当たり前だ。
出られない…この闇の中で、ずっと取り残されたままなのに。
落ち着けという方が無理だろう。
「君の香りを感じる。酷く優しく懐かしい香りだ。そう…私が愛するべきだった幼子の様」
そう呟く彼の声は…
悲しみも勿論だけど…
どこか懐かしむような、どこか愛おしそうな声音だった。
まるで幼子に語るような。
まるで、愛娘に囁くような。
「な、何を…」
「フェイト」
突然、名前を呼ばれる。
その事に酷くドギマギとしてしまう。
「君の…君の顔が見たい」
だが、言われたことはよくわかなかった。
「…え?」
この人は今何と言ったんだろう…?
「私に…その顔をよく見せてくれ」
…へっ?
「か、顔!?」
肯定を示すような、頷く気配。
「そ、そんな事を言われても…こんな何も見えない所で…」
どうやって顔を見せるというのだろう。
下を見れば、自分の身体さえ見えないというのに。
こんな、漆黒に塗りつぶされた様な空間で。
「見えずとも視える事はある。ただ、この闇に委ねて欲しい…眼を、閉じろ」
言われたままに、慌てて眼を閉じる。
相変わらずの暗闇だ。
怖くなるぐらいに
溶けてしまうくらいに
…でも、何だろう…
さっきまでとは違う気がする…
闇なのに…なんだか暖かい。
それは…なんでだろう…
すごく心地いい…まるで…
母さんの腕の中にいた時みたい…
「……」
…気配がする。
闇の中に…光の気配が。
そっか、この光のせいなのかな?
こんなにも暖かいのは…
「…見えた。君の顔…」
「へっ!?」
突然の言葉に返事が出来ない。
「美しい」
「はいっ!?」
「まるで芸術。東の園に忘れられた花のように可憐で、その肢体は静かに佇む若木の様に品やかだ」
「ちょっ…!ちょっと…!!」
いきなり何ですかっ!?
流石に、慌ててしまう。
でも、本当にいきなりだ…
頬、勝手に熱くなる。
「いきなり何を言うんですか!?」
そう言えば、素知らぬ顔で
「感想を述べただけだ。君の美貌の」
などと言う。
…なんだろう、この人。
─────美貌、とか。
いきなり!
「は、恥ずかしいからやめて下さいっ!!」
まったく、もう…なんなのだろう、この人は。
しかし、次の彼の言葉は─────
「…似ているな。かつて私と共にあった少女と…そう…」
「プレシアと瓜二つだ」
─────容易く、私の理性を砕いて。
* * * *
「はやてちゃん!!まだダメなの!?このままじゃフェイトちゃんが…!!」
黒いロストロギア。
そこから少し離れた所に位置する簡易基地。
そこには美しい栗色の髪を横に纏めた…
そう…高町なのはがいた。
「少し待ちぃ!!無闇に突っ込んだ所でフェイトちゃんの二の舞や!」
そう叫んでいるのは八神はやてだ。
「だって!あれからもう6時間も経つんだよっ!?もしフェイトちゃんに何かあったら…!!」
「高町、いい加減に冷静になれ」
「し、シグナム…さん…」
熱くなってたなのはの肩に、シグナムの腕が諌めるように置かれる。
まるで割れ物を扱うように。
慰めるように。
発破するように。
「ここで主はやてに激昂したところでどうにかなる事でもないだろう。いい加減にしろ…わかるだろう?」
そう諭すように言われれば、頭に登っていた血が下がり始める。
「…はい。ごめんね…はやてちゃん」
「いや…気にせんでええよ…」
そう言い、はやては冷めかけのコーヒーを口に運ぶ。
その口元は、言いようのない悔しさで歪んでいた…
* * * *
「プレ…シア…?」
待って
待って欲しい。
プレシアって…そんな…え?
「知っているのか、あの子を。…あの悲しく、美しく、酷く優し過ぎた少女を。私の、守れなかった輝きを」
自らの耳を疑う。
幻聴じゃ、ない?
だって…その名前は…
プレシアは…
「プレシア…母さんの事?」
「……何?」
話して初めて、彼が動揺した。けれど、それは私も同じ。
明確に伝わる。
息遣い。
気配。
それ以上に動揺しているのは私だけれど……
だって…こんな所で…母さんの名前を聞くなんて。
この人は…一体?
「そう…か…ようやく…会えたな……」
聞こえてきたのは彼の声。
だけど…その声は震えていて…
まるで、泣いているようで。
「美しく育ってくれたな……アリシア」
……アリシア!?
……まさか!?
「アリシアを知っているんですかっ!?」
「何…?」
「どうしてアリシアを知っているんですか!?貴方は……一体何者何ですか!!」
やっぱり……
「プロジェクトFの…関係者ですか!だとしたら…時空管理局の執務官の名にかけて、貴方を捕縛します!」
言い切る。
感情の赴くままに。
迸るままに。
「待て、少し落ち着いて欲しい」
あ…
言われても我に返る。
感情に任せ過ぎた。
冷静さを欠くなんて執務官失格だ…
「落ち着いたか?執務官殿」
苦笑した様な声が聞こえる。
その笑い声に、私はどうしようもない恥ずかしさを感じた。
「あぅ……し、質問に答えて下さいっ!!」
「先程も言っただろう。私は敗者で、この牢獄の中で嘆くだけの存在だよ」
「そういう事を聞きたいんじゃありませんっ!!貴方は…!」
「フェイト」
名前。私の。
アリシアではない。私の。
「っ!!」
また、冷静さを失っていた。ダメだ、アリシアやプロジェクトFの話になるとどうも…
「フェイト。一つだけいいか?君は…テスタロッサなのか?」
テスタロッサ。
そう…私の元のファミリーネームだ。
「…はい」
そう、私は
どこまでも
いつまでも
テスタロッサだ。
この名を捨てるつもりなど無い。
例え、ハラオウンを名乗っていても。
そう言った瞬間、闇の向こうから息を吐く気配がした。
「君は……そうか」
こぼれ落ちる彼の言葉が、私の耳に届く。
「フェイト…美しく可憐な少女よ。そして…テスタロッサの末娘よ。君がこの擬似時間牢獄に囚われた意味がようやくわかった…」
「どういう…ことですか?」
意味もわからずそう答える。そんな事も気にせず、彼は続け様に言葉を紡ぐ。
「君は、私を救うために来たのか。……君は、私に輝きを届けてくれた」
「─────え?」
「よもや、≪ふるきもの≫である私を覚えている者が基底現実にいようとは。それが誰か……いや、おそらくは……」
彼の瞳が、暗闇の中で朧げに輝く。
「─────フェイト。…君は、今幸せだろうか?」
「…?」
「君には友人がいるか?君を愛する家族はいるのか?」
私には…
「……はい」
私は…
そうだ…
はやて…リンディ母さん…クロノ…エイミィ…アルフ…シグナム…ヴィータ…シャマル…すずか…アリサ…
……なのは
「……そうか」
「……」
「ならば、君をここから出そう」
「……え?」
出す?誰を?私を?
ここから……私は出られるの?さっきは……出られないと言ったのに?
「出られる」
「君が望むのなら、出られる」
私が……望むなら……
「言葉にしろ。その、気持ち。必ずその言葉は、輝きに届く」
本当に……それで。
出られるのならば。
「私は…みんなの世界に帰りたいです…!!」
私の帰りを待っている人がいるから。
「…」
「…私は!!!」
「ならば、願え。そして委ねよ…我が愛しき子よ」
「私を…助けてっ!!」
暗闇が晴れる。
当たりに「光」が溢れる。
そして…ようやく見えた、彼の顔…
見た瞬間、私は凍りついた。
だって…
そこにいたのは金の髪。
「その≪輝き≫、しかと受け取った…
なればこそ、我が光は照らし穿つ!」
私と同じ、紅の瞳───
次の瞬間光に包まれ、私は意識を手放した…
* * * *
「…まだ…話してくれないんですか?」
八神はやては静かに、だが確実に相手に怒りを見せている。
『…』
その相手はミゼット・クローベル統幕議長。
「知ってることを教えて下さいっ!!フェイトちゃんを任務に強引に就かせた事に関係あるんやろう!?」
『…はやてさん…』
「ミゼットばあちゃんっ!!教えてっ…友達が…友達が危ないんよ…」
知らずに、目の淵に涙が溜まる。
いかに成長しようと、強力な魔導師であろうと…
やはり彼女は14の少女に過ぎないのだ。
『…確かに、私はフェイトさんを利用したわ…』
「っ!!なぜ…っ」
はやてにとって、その言葉は何よりショックだった。
闇の書事件の後、後ろ指を指され続けたはやて達に優しくしてくれたこの人が、まさかフェイトを利用するなんて、と。
信用していた。
信頼していた。
『本当に申し訳ないわねぇ…でも、それがどうしても必要だった。彼女が、あの牢獄に囚われる事に意味があったの』
「どういう…ことですか?」
『あの牢獄に囚われているのは…私の知人。でもね…彼はあの牢獄から出てこようともしない。だから…出てくるきっかけが必要だったのよ』
そう、フェイトは「彼」が出てくるきっかけに過ぎない。
いや、彼女以外が彼を連れ出すのは不可能だ。
だから、ミゼットはフェイトを「わざと」ロストロギアに取り込まれるように仕向けた。
絶望した彼に、輝きを届けるために。
それこそ、はやてには意味がわからなかった。
何故…
「どうして、フェイトちゃんなん?」
それは純粋な疑問。
不可解な事実。
『…』
「教えて…ミゼットばあちゃん…」
『フェイトちゃん……彼女は……彼の……』
ビッーッッッッ!!!!!
突如、緊急アラームが辺りに響く。
それは、異常を知らせる鐘の音。
「なんやっ!?どうしたん!?」
『はやてちゃんっ!!!!ロストロギアから…!すごい魔力が!!!』
突然ウインドウが開き、なのはからの通信が入る。
「なんやてっ!?」
慌てて魔力サーチャーの数値を確認する。すると…
「な、なんや…これ…!?あかん!!!これは…っ!!!」
そのサーチャーの表す数値は、はっきり言って異常の一言。
「あかん…!!!なのはちゃん!!!退避や!!!」
『でも……フェイトちゃんが…!!!!』
フェイトが心配だ、と留まるなのは。
だが…
それは既に手遅れであった。
「そこにいたらなのはちゃんも巻き添え食う!!!」
『イヤっ!!!』
明確な拒絶。なのはが平静を欠いているのは明らかだ。
「っ!!…シグナム!!!」
『はっ!!』
命令を伝えていないが、長年ともにいてくれた騎士は正確にはやての言わんとすることを読み取った。
『高町!!』
『いやっ!!離して!!!』
シグナムがなのはを連れて退避する映像が映る。
(なのはちゃん…すまん…)
そして…
ロストロギアを中心に、荒れ狂った魔力の放流が始まった…
* * * *
『全く……心配をかけて……40年ぶりのご帰還かしらねぇ?おかえりなさい…≪輝光王≫閣下…』
最後に映った映像…
気絶しているフェイト・T・ハラオウン執務官を抱えた…
真紅の男の姿が映っていた。
第二話終了!
いや、話が進みませんなぁ…
そして出てきましたね≪輝光王≫!
彼は一体誰なんでしょう…
まあ、主人公なんですけども。
というか、なんだこの主人公。
下に少し用語説明です。
≪チクタクマン≫
時計人間。時計仕掛けの神。
本名はロード・アヴァン・エジソン。
超強くてメッチャ頭いいイケメン。
悪者です。
この小説では名前だけの出演でした。
登場作品「紫影のソナーニル」
≪電気王≫
オリ主の師匠で、すごく強い。
本名はニコラ・テスラ。
テスラコイルで有名ですね。
この人も名前だけ出演です。でも、師匠設定のため結構名前出てきます。
登場作品「黄雷のガクトゥーン」
≪万能王≫
本名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。
よくわからんがすごい。
登場作品「若干ネタバレを含むので割愛」
その他、この用語がわからない!
などがありましたらお気軽にどうぞ。わかる限りで…wikiを駆使して説明します。
…文章力が向上する兆しを見せない…