リリカル!黄金十字! ──What a beautiful nostalgia── 作:るべおら
次も…なるべく早めに…
「はい、コーヒーです〜」
ここは西亨……いや、地球のハラオウン家。
ここの家主の部下であり、その息子の恋人でもあるエイミィが二人分のコーヒーを淹れリビングに入る。
そのリビングにいるのは四人。
リンディ・ハラオウン。
クロノ・ハラオウン。
養娘であるフェイト・T・ハラオウン。
そして…
「馳走になる、レディ」
─────ハルスタッド・ローゼンクロイツと名乗る男の人。
金糸の髪に、紅い瞳。
それは、まるで…
…時は、少し遡る。
* * * *
昔話をしていいかしら?
そう言ったミゼットさんの顔は優しくて…
そして、何かを決意したような顔だった。
何かに区切りをつけた顔。
そしてその表情の隅から感じたのだ…
この話は、私……フェイトは聞いておかなければならない…と。
だから、私はそれに頷いた。なのはもはやても聞く気だったらしく、自分らも聞いていいかとミゼットさんに尋ねていた。
結局三人で話を聞くことになり、私たちが少し緊張してきた手前、ミゼットさんは静かに語り始めた…
小さな子に御伽噺を紡ぐように。
小さな子に歌を唄うように…
* * * *
これは、御伽噺です。
昔々、一人の男がいました。
とても優しい男でした。
とても強い男でした。
とても勇猛な男でした。
そのあまりの強さ、異質さに孤独を強いられる、とても寂しい男でした。
周りの人々は彼の優しさに縋り、彼の強さを頼り、彼の勇猛さを讃えていました。
ですが、男の隣に立つものは決して現れなかったのです。
なぜならば、男が「光」そのものであったから。
男に救われた人は、時間が経つにつれ男のことを忘れていきます。
それは彼が一つの「光」に過ぎず、思い出を重ねる「人間」ではないためでした。
男を理解できる人間など存在しないのです。
ですが彼はそれでも立ち止まらず
曲がらず
真っ直ぐ前に向かい続けました。
まるで一筋の光のように。
いくら畏怖されようと、男にとってそれは関係のない事。
男にとっての幸福は、無垢な人間が戦場に立たない事なのですから。
それゆえに、男が戦場を離れることは許されない事だったのです。
男はまさしく、戦場の「光」でした。
…そんなある日、男は一人の少女を拾いました。
とても幼い女の子でした。
光の失った少女でした。
全てに絶望した少女でした。
男はその少女を救おうとしましたが、少女はたった一言
「私を殺してくれ」
…男は尋ねます。
「何故」
と。
少女は答えます。
「私は全てを失いました。私に生きる意味などありません。名前もない、生きる理由もない。光を失った瞳では何も見つけられない。だから、私は目の眩む様な「光」である貴方に私の全てを終わらせて欲しいのです」
その言葉を受けた彼は酷く心を打たれました。
そして彼が使ったのは…
この世ならざる力でした。
御伽の力
魔法の力
少女に「光」を与え
生きる「名前」をつけ
さらに、少女に「三つの我儘」を与えました。
少女はその光に驚き、その与えられし名前に涙したといいます。
そして少女は男に無垢な感謝と、無償の愛を誓ったのです。
男は感謝されるためにやったのではなく、自己を満たす為にやったことだと断りましたが、少女はそれでも光に寄り添うことを決意しました。
それが、少女の第一の我儘です。
…やがて、少女の無垢で無償なりし愛を男は拒まないようになりました。
周りの人々は二人を見て思い思いに語ります。
少女の愛はやがて歪み、男に依存するようになりましたが、それでもやはり二人は幸せであったのだと思います。
しかし忘れてはならないのが、彼が「光」であり、戦場を離れられないということ。
男が戦場に立つ度に、少女は神経をすり減らしました。
彼を思い
焦がれ
欲す。
その日々に限界を迎えた少女は、彼に言いました。
「貴方と共にありたい。故に、戦場には行かないで欲しい」
少女の、二つ目の我儘です。
拒めない男は少女を見て、怒るでもなく諌めるでもなく、ただ涙を流しました。
その我儘を呈した少女の心が、あまりに悲惨であったためです。
少女に生きる意味を与えた男は、少女の中では無くてはならない存在になり、依存にとどまらず少女の世界そのものになっていたのです。
その危うさに、彼は涙を流しました。
そして、男は言うのです。
「承知した。優しく、美しく、そして悲しい少女よ。君の心を救えなかったのは他の誰であろうこの私。君の命尽きるまで、私が君を守り続けよう」
その後、男を戦場で見たものはいません。
そうして、戦場から光が無くなったのです。
時が過ぎ、男とその少女…
いえ、女は子宝に恵まれました。
男と女は誓いこそしていませんでしたが、それでも二人には強い繋がりがありました。
女にとって、宿った命は何より愛しい存在でした。
こうして、胎内の命を含めた三人はゆっくりとした時を歩み始めます。
…いえ、歩む筈だったのです。
突然のことでした。
必然のことでした。
最恐にして最悪の災厄でした。
…歩み続ける三人の前に
とある巨大な「鱗」が現れたのです。
その鱗の力は強大で、多くの人の命が散りました。
その鱗が定めた「失うべくして失う命」。
そこにはあろうことか二人の子供も在ったのです。
こうして、子供の命は失われてしまいましたか?
──いえいえ、そうはなりません。
──光の王が、そうはさせません。
男は女の元を離れ、立った一人で鱗の前に立ちはだかりました。
そこには、強い意思がありました。
揺るぎない信念がありました。
光と鱗はぶつかり合い───
そして────
光は敗北しました。
鱗は形のない虚数に帰り
光は時のない牢獄に囚われました。
それは、罪です。
守ると誓ったのに護れなかった、彼の罪。
女の心を壊した、男の罪。
当然、女は狂います。
彼女にとって、彼は世界だったのですから。
だから、女は決意します。
全てを失うことを。
もう、何もいらないと。
もう、生きる意味はないと。
自らの手で、命を絶とうと。
…生きる意味がない?
本当に、彼女は全てを失ってしまったのでしょうか?
いえ、そんなことはありません。
女には、残っているものがあるのですから。
それは命です。
自らに宿った小さな命こそ、彼女の生きる意味だったのです。
「女」は死のうとしましたが───
彼女の中にある「母」がそれを許しませんでした。
そう…
男がいないと嘆くなら
「男の事を忘れたい」
そうすれば────
苦しむこともないのだから。
…「少女」の三つ目の我儘でした。
* * * *
……そして女は子供を尽きるほど愛し続けました。
そして男は……闇に染まる牢獄で、いつまでも罪を懺悔するのです…」
昔話を終えたミゼットは、静かにコーヒーカップを傾けた。
それを聴き続けた三人の反応は様々。
一人は難しい顔をして考え
一人は涙を流し
一人は瞳を見開き震えていた。
「あの…それって…もしかして」
震えていた少女…
フェイトが戸惑うようにそう呟く。
「…」
ミゼットはカップを見つめ、その問いに「いえ、私は何も知りませんし」という様な顔を見せる。
…トボけていることは明白だが。
「フェイトちゃん…」
隣のなのはが、フェイトの肩を抱く様に寄り添った。
「…フェイトさん」
「…ミゼットさん…」
「私の話は以上よ。これが本当の話なのか、作り話なのか。そして誰の話なのか…私の口からはこれ以上は言わないわ…」
「…」
「フェイトちゃん…貴方は、どうするのかしらねぇ」
ミゼットがそう問いかければ、フェイトは迷うように揺らしていた瞳を一層揺らす。
「「フェイトちゃん…」」
「私…は…」
* * * *
─────ハルトは、割り当てられた部屋のベッドに仰向けに倒れ込んでいた。
簡素な部屋。
簡素なベッド。
一応監視カメラは作動しているようだった。それもそうだろう、艦は外部からの攻撃には強いが内部からの攻撃にはとことん弱い。
敵の多い管理局だ、信用のおけない客人に破壊工作などされてはたまらないのだろう。監視をつけるのは当然だった。
─────まあ、そんなことはハルトには関係なかったが。
どうせ、監視カメラに自分の姿は映っていない。他人に弱さは見せられない、が人の目がないのなら、ベッドに倒れ込んでも構わないだろう、と一つ頷いて。
ハルスタッドはベッドに、実に200年振りに倒れ込んだのだった。
─────あの牢獄から脱出する際、ハルトは随分と力を使ってしまった。
元々枯渇寸前だった彼の力を、あの少女の輝きがあったにしろ限界まで使ってしまったのだ。
脆弱な彼の身は一時の休息を必要としていた。
なにしろ、あの時間牢獄を砕く程の力だ。疲れるのも当然だった。
倒れ込んだハルトは、眠らずにあることを考える。
それは勿論、あの少女のこと。
牢獄で出会った少女。
あれに似て美しい顔立ち。
自らの髪と瞳の色。
まさしく、思い描いた通りに育っていた少女。
かつて、彼が護れなかった輝きだった。
幸せそうなその顔が、彼女が交友に恵まれている事を教えてくれた。
───自らは牢獄から出るつもりなどなかった。
だが、彼女を友人の元に帰らせることができただけでも、自分の存在価値はあった、と。ハルトはそう思い直して。
それで、それだけでもう十分だった。
決して自分は彼女の側にいることは出来ない。光の身体以前に、その身は罪に塗れているから。
─────もしも、この罪深い我が身が望むことを許されるのなら…
せめて彼女の人生に幸福が輝かんことを。
そう、呟いてから。
瞼を下ろして─────
コンコン…
「───ん…?」
部屋のドアを控えめに叩く、音。
リズム、雰囲気から察するにドアを叩いたのは女性だと容易に推測できた。
普段のハルトならば、ドアの向こうにいるのが誰なのかわかっただろう。
だが、睡眠状態に入ろうとしていたハルトは、幸か不幸か、ドアの向こうの相手がわからなかった。
だから、だろうか。
『あの…ハルトさん。…フェイトです。少し時間をよろしいでしょうか?』
彼女の来訪に、少しばかり動揺したのは。
─────正直に言って、ハルトはフェイトが来ることを予想しなかった訳では無い。
が…
それでも。
彼女の声を聞くと、震える。
罪に、震える。
歓喜に、震える。
「……」
言葉にならない。
…が一つだけ理解できる。
ハルトは彼女を……部屋に入れてはならない。
彼女の顔を見てしまったら、自分は彼女の輝きに飲まれてしまう、と。
拒絶しろ。
彼女を、拒めばいい。
だが…それは出来ない。
そんなこと、ハルトに出来はしない。
『…言いたい事があってきました。…開けてくれないのなら、せめてこのまま聞いて下さい』
震えていた、フェイトの声。
その次に、零れ落ちる言葉…
『父さん』
それは─────ハルトにとって。
─────最も酷な言葉だった。
* * * *
「…ハルト先輩は、彼女の心をわかっているようで全くわかっていないからねぇ…」
ため息吐きつつ、ミゼットは呟く。
その手には淹れたてのコーヒーを持ち、呆れたような面持ちでソファに腰掛けていた。
「なんだか、そんな感じがしますね」
フェイトちゃんみたいだな
と、なのはは思う。
自分を卑下するところ、とか。
相手のことを考えてくれているようでいて、自分を追い詰めていってしまうところ、とか。
「罪深い自分なんかが。……まず先にそれがきてしまう人だから。人の我儘は全て許す癖に、自分はとことん許さないのよねぇ」
「なるほど…全く。フェイトちゃんのネガティブ思考は遺伝やね」
「にゃはは…そっくりさんなんだね。あの2人」
本当に…ね。
なのはの呟きに、二人は苦笑する様にうなづいた。
* * * *
「あの…突然すみません」
「いや、構わん」
あの後、ハルトさんは私を部屋に入れてくれた。
部屋に入れてくれないかもしれないと不安だったけれど……
…まずは、良かったかな、なんて。
「…それで、話とは」
…それは、そうだよね。
もう少し心の準備が……欲しかった気がしないでもないような気もしなかったけれど。
…何を言ってるんだ私。
落ち着こう。
冷静に。
沈着に。
ほら、私は執務官(成り立て)だし。
「…それは…」
…覚悟を決めろ。
「…貴方は、私の……父さん、何ですか?」
そう。
単純にこれだけだ。
ただただ聞きたかった事。
それ以外は何も考えてなどいなかった。
─────あまりにも、直球すぎる質問ではあったけれど。
「違う……
とは言わない。君が特殊な産まれ方をしたとしても、君の遺伝子学上の父親は紛れもなくこの私だ」
「…!」
返されたのは、肯定の言葉。
「だが」
そして、彼は息を吐く。
「遺伝子学上では。…それだけで、子供の親に足る訳では無いだろう。…私はそうだ。私には、君の父親を名乗る価値など無いのだから」
冷静……に、話そうと思っていたのだけど。
その言葉についカッとしてしまう!
─────落ち着いてなど、いられない!
「っ!価値だとか!そんなの関係無いんです!…私は…私は…」
─────悔しい。
─────悲しい。
言葉に、出来ない。
この心を、どうやったら相手に伝えられる?
この人に、どうやったら伝えられる?
「…悲しむな、愛しい子よ。君が悲しむ必要などは無い」
「…どうして、ですか?」
何故彼がそんな事を言うのかわからない。
全然、見当も。
「…君には今の家族がいるのだろう?ハラオウンの娘よ」
「…それは」
「君は決して一人などではない」
そう言う彼。憎らしいくらいの断定口調で。
「今更、私などが出しゃばって何とする?君の今の家族の絆を荒らすのか。それこそ、私にも出来なければ君にも出来はしない」
そう、そうだ。
私には家族がいる。
暖かい家族が。もう。
─────でも、そうじゃない。
「…それでもっ!私にとっては…貴方は…唯一の血の繋がった家族なんでしょう!?」
紡ぎ出された言葉は…それ。
なんて、ありきたりな言葉。
自分でも悲しくなってくるくらい、口下手で。
やっぱり、なのはの様にはいかない────
「…そうだな。だがそもそも、だ。君の家族を死に追いやり、君を孤独にしてしまったのは誰だと思う。……そう、脆弱なりしこの私だ」
「─────っ! それは違います!」
「違わないさ。私だ。この私があれを…プレシアの心を殺してしまった。護ると誓った癖に、だ…その私がどうして君の家族だといえるだろう」
「…そんな…そんなこと…」
「その末に、私は─────アリシアでさえ、見殺しにした。あの子の顔も見ていない。この腕に抱いてさえ、いない」
違う。そうじゃない、そうじゃないんだ!私は…ただ…
父親が─────欲しいだけなんだ。
…あっ…
「……」
─────言ってから、自分で気付く。
我儘、だ。
これは。
私の…我儘。
─────どうして、こうも私は気持ちが先行してしまったのだろう。
相手の意見も聞かずに、耳を塞いで自分の言葉を叩きつけるだけ。
これでは、初めてなのはと会った時と同じだ。
「あ…」
…確かに、私は家族が欲しかった。
けど…
相手は、そうじゃないんだ。
もし、ハルトさんが私なんかと家族になりたくないなら?
拒むのも当然じゃないか。
─────意見も聞かず、我儘ばかりを言う私となんて家族になりたいなどと思うはずがない。
「…っ!!」
だから、私は駆ける。
─────部屋から今すぐにでも出たい。
─────ここから逃げ出したい。
─────恥ずかしい。
我儘を言って、困らせているんだ、私は。
他の誰でもない、私が。
我儘なんて、リンディ母さんにもクロノにも…
なのはにさえ、言ったことなかったのに。
駆ける。
だから、駆ける。
部屋を、飛び出す。
…ハルトさんは…
父さんは…
出て行く私を…
─────引きとめようとはしなかった。
* * * *
「フェイトちゃん…大丈夫かな?」
隣にいるはやてちゃんにそう尋ねる。
私たちは今はもうミゼットさんの部屋を出て、フェイトちゃんが向かったであろうハルトさんの部屋に向かって廊下を歩いていた。
「…わからん。なんとも言えんなぁ…人の家の問題やし」
返されたのは、そんな答え。
そう答えるはやてちゃんの顔は、何かを危惧しているような感じだった。
「…いざとなったら、私たちがフェイトちゃんの力になってあげないとね!」
その私の言葉に
「そりゃ勿論や。惜しみはせえへんよ〜」
と、快活に答えてくれた。
─────そこで…
向こうから誰かが走ってくる音がした。
廊下の先を見てみれば……フェイトちゃん!!?
そう、走ってきたのは他の誰であろうフェイトちゃんだった。
ついさっき、ハルトさんの部屋に向かったのに!
「ちょっと!フェイトちゃん!?」
慌てて腕を掴んで引き留める。
「一体どうしたんよ!?」
走り去ろうとするフェイトちゃんの顔は…
涙で、グシャグシャに濡れていた。
* * * *
あの後、レイジングハートを持ってハルトさんの部屋に突入しようとしていた私ははやてちゃんに止められ、「まずは三人でミゼットばあちゃんのところに戻ろ」という提案に従いとんぼ返り。
今はミゼットさんがフェイトちゃんをなだめている最中だ。
「それで、どうしたの?フェイトちゃん。ハルト先輩に何か言われた?」
その言葉に、フェイトちゃんは力なく首を振る。
違うと言っても、ハルトさん関連であることは決定なの。
「わた…私が…っ…悪いんだっ…」
つっかえつっかえにフェイトちゃんが説明してくれる。
要するに。
「えっと…フェイトちゃんの親にはなれない…って言われたってこと?」
要約すると、どうやらそういうことらしい。
「成る程…」
ミゼットはそれを聞き、思わず苦虫を噛み潰した様な顔をして息を吐いてしまった。
─────予想していたが、ハルト先輩が本当にフェイトちゃんを拒絶するとは。
「私が悪いんです。私が、相手の気持ちも考えずに自分の我儘だけを言い張って…それで嫌われてしまって…だから…」
─────この子は、本当にハルト先輩に似ている。
とミゼットは思う。こう、何でもかんでもネガティブに捉えていってしまう所とか、もうそっくりである。嫌になる程。
ただ、ミゼットに言わせてみれば
(絶対にフェイトちゃんの事を嫌いになったわけじゃないと思うんだけど…)
という風になる。
というか、彼もフェイトと同じなのだ。
常に悪い方に考えていっている。
本当に、似過ぎだ。
やっぱり親子なのねぇ…と、ミゼットは今更に思った。
彼とフェイトちゃんは、重なるところが多すぎる。
70年以上前、自分を一人前にしてくれた彼と。
なによりも尊敬した彼と。
誰よりも敬愛した彼と。
誰よりも、愛していた彼と。
若かりし頃の思いは結局、実りなどしなかったけれど。
それでも、あの日々のことは覚えている。
ミゼットは、決して彼を忘れなかった。
─────これは、フェイトちゃんの方を一歩進ませるしかないわねぇ…
「フェイトちゃん」
そうと決まれば後は早い。
「フェイトちゃんは…彼と、ハルト先輩とどうなりたいの?」
* * * *
─────どうなりたいのか?
ハルトさんと、私はどうなりたいのか。
そんなこと…
「…私は…ただ…」
父さんに…
「そう、認められたいのよね?私が言っているのは、その後」
「後…?」
そんなこと、考えていなかった。
ただ、ハルトさんが本当に父さんなのか…
それが、知りたかっただけ。
「そう、貴方は…父親になったハルトに何を求めるの?」
父親になった…ハルトさん…?
私は、ただ父親が欲しくて.
─────それで…私は…?
「…わかった。フェイトちゃん…あなたの枷を外してあげましょう」
えっ…?
そう言って、ミゼットさんは私の瞳を覗き込む。
それが、なんだか……心まで見透かされているような気がして。
「フェイトちゃん…ハラオウン家の事を忘れなさい。貴方は、ただのフェイト」
ハラオウン…フェイト…
「もう一度聞くわね。フェイトちゃん。貴方は…父親であるハルト先輩と、どうなりたいの?」
父親…父さんと…?
…っ!
「私は…」
─────そう…か……
そういうことだったんだ。
ずっと、胸に痞えていたものが取れた気分になった。
そうだ。
私が…ずっと、考えていたこと。
母さんとしたかったこと。
(ジュエルシードを集め終わったら……母さんとまた─────)
あの時、私が一途に望んでいたことは。
「私は─────」
どうしよう。
自覚した瞬間から、涙が止まらない。
そうだ……私は─────
「私は…父さんと…一緒に暮らしたいです……」
* * * *
そのあと、ミゼットさんはニコリと笑うと「少し待ってて」と部屋を出て行った。
なのはとはやては…
何故か、涙を流してこっちを見てきたし。
もう…恥ずかしい。
でも、ミゼットさんが帰ってきた時の一言で、他のことがどうでも良くなってしまった。
ミゼットさんは輝かんばかりの笑顔で……
「フェイトちゃん。…今から地球に帰るでしょう?その時、ハラオウン家にハルト先輩を連れて行ってあげなさい」
…え?
…どういうことなのでしょうか。
そして冒頭へ。
ミゼットさん。今までありがとう!あなたの出番は終了です!
…まぁ、ちょくちょく出てくると思うけど。
それにしても、長くなってきたなぁ…
…フェイトちゃんを泣かせたハルトさん、許せません。
読んでくださり、ありがとうございます!では、また次話で!
≪輝き≫
ちょくちょく出てくるであろう単語。
単純にそのまま。「人の輝き」まぁ、純粋さとか、思いの綺麗さとか、そんなん?人間の真価的なもの。
≪光の王≫
別名、輝光王。「きこうおう」と読みます。
ハルトさんの渾名ですね。
スチパンネタの裏設定ですが、≪黒の王≫と対になる存在として現界しました。
だからメチャ強いです。
The.Mとは酒を飲む仲で、殺し合う仲。