リリカル!黄金十字! ──What a beautiful nostalgia── 作:るべおら
「…んぅ?」
目を、開く。
目蓋が少し重いけれど、窓から入る日差しが目を焼き、そのせいで覚醒せざるを得なくなる。
…うぅ…太陽も、私の目覚めが悪いの知ってるくせに……もう少し優しく起こしてくれてもいいじゃないか…
と、なんだかよくわからない寝ぼけた思考を働かせて。
伸びを、一回。
そうすれば、ほら。
うってかわって、良い朝だ。
……ちなみに言うと、太陽はフェイトの目覚めなど知ったことではない。
「…あれっ…?」
やっとそこで、違和感に気づく。
なんだろう…?
なんか…少し変だ。
寝る時は……もっと大きくて暖かいものに包まれていたような…?
…って!!!!!!
「父さんっ!!!????」
あたりを見渡すが、いない。
そもそも、ここはフェイトの部屋だ。
あれ?
…私…いつの間に自分の部屋に…?
確か、最後の記憶では父さんの腕の中で…
もしかして…
「ゆめ?」
父さんの事は、全部夢?
…なにそれ、そんなのやだ。
……でも、言われてみれば……
自分に父親ができるなど、少し幸せすぎる気がする。
え、やっぱり夢…?
ちょっと涙が出てきた。
「おはようフェイト〜。ちなみに、昨日の事は夢じゃないよ。寝ちまったフェイトをハルトが運んだんだ」
聞こえてきたのは、信用も信頼もしている使い魔の声。
「アルフ?…おはよう」
アルフは、フェイトの部屋のドアに寄りかかって朝ご飯なのであろうドックフードをかじっていた。
…やっぱり、夢じゃなかったんだ。
そうだ…
そうして…父さんに抱きしめてもらって…
…一緒に、暮らそうって…
「えへっ…えへへへへ…」
「…まぁ…あたしゃフェイトが幸せならいいんだけどさ…それでも、少し顔が崩れすぎだと思うんだけど」
そう、そうです。
私、フェイト・T・ハラオウンに…
父親が、できました。
* * * *
「おはようございます…リンディ母さん」
着替えて、アルフと共にリビングに入る。
「おはよう。今日は少し遅起きなのねぇ。クロノとエイミィは本局に言っちゃったわよ」
「あれ、2人とも今日仕事?」
自分の記憶とは少し違い、フェイトは首を傾げた。
「いえ、なんでもハルトさんの頼みとかで…三提督の所らしいわ」
─────さらっととんでもないことを言ったような……
……それは、そうだろう。三提督など、私用で会えるような人ではない。
クロノとハルトの会話を聞いていたリンディは、その時も内心呆然としていたものだ。
そう、それは朝のこと……
* * * *
『クロノ、君は今日は仕事か』
『いえ、今日は休暇ですが』
『そうか……ならばこれを頼まれてくれないか』
『これは……便書ですか?誰にです?』
『ミゼット・クローベル』
『─────は?』
『知らないか』
『いえ、知ってますよ!ミゼット・クローベル統幕議長を知らない局員はいません!僕が言いたいのは、何故ハルスタッドさんがクローベル統幕議長に便書など渡すのかということです!』
『必要だからだ。心配するな、ハルスタッドからと言えば受け取るだろう』
『……一体、どういう関係で……』
『あいつは友人だ』
『……はぁ……』
* * * *
といったことがあったのだ。
それを聞いたアルフは「はっ?」といった呆けた顔をしているが、フェイトは別段驚きもせず「へぇ」と返事をするだけ。
三提督に何の用なんだろう?
そんな純粋な疑問が沸き立つ。
「父さんは?」
「わからないけど、朝早くから街に出たみたい」
街に出た。
その情報だけで十分だ。
「いってきます!」
即、行動に移す。
閃光の名は伊達じゃないっ!!
「あ、そうそう。なのはさんから連絡来てたわよ。翠屋ではやてさん達といるって」
その言葉で更に加速する。
…それはそうだ。
なのは達をこれ以上待たせる訳にはいかない。
それに…
早く、みんなに父さんの事も話したいし。
フェイトの足取りは、自分でも驚くほど軽かった。
* * * *
「ふむ…」
海鳴の街にある空き家を見ていた男は、とある屋敷の前で立ち止まる。
それは、背の高い男だった。
かつて断罪を求めた男だった。
そして、幸せを享受した男だった。
名を、ハルスタッド・ローゼンクロイツという。
その服装はシンプルな黒のスラックスに、これまたシンプルな白のカッターシャツ。
ラフな格好ではあるがそこから一種のズボラな気配など存在せず、ノリの乗ったズボンと汚れひとつないシャツを完璧に着こなし長い脚も助け、さながらモデルのような雰囲気を纏っている。
「…Brilliant」
呟き一つ、頷いて。
そこにあるのは、古びた洋式風の屋敷。
不動産で確かめたため、空き家であることは間違いない。
二階建ての屋敷でリビングは一階と二階どちらにもある。
キッチンもトイレもついているし、なにより風呂が広い。
部屋の数も多い上、屋敷の後ろには海も広がっている。
…いい立地だ。
…普通そこまでの屋敷なら売れてそうなものだが、何故売れていないのか…それは単純に古すぎるためだろう。床などすぐ抜けそうになる廃屋の様な物で、取り壊されていないのが不思議なくらいだ。
「よし、ここに住むか」
クロノとエイミィにミゼットの所に行って貰ったのは、この世界の戸籍取得と、金銭のためだ。
ミゼットやレオーネにかかれば戸籍なども苦労なくできるし、金もなんとかなるだろう。最悪あいつらに借金すればいいと考えている。
元々ハルトはこの世界に住んでいたこともあったが、その時はヨーロッパ周辺で活動していたし、戸籍はドイツだった。なによりそれは40年前の話である。そのため、ハルトは早急に戸籍を取得しなければならなかった。
─────故に、この屋敷を購入するのは今日の午後だとして…
「屋敷の修繕…そして家具…ふむ。住めるのは約三日後位だな」
フェイトの家具は自分で選ばせるから、買いに行く必要がある。
「やることは多いな…」
だがまぁ…
愛しき輝きと暮らすのだ。
苦労でもなんでもないが…な。
人知れずそう呟くハルスタッドだった。
* * * *
「父親が出来たぁ!!??」
アリサの声が辺りに響く。
今五人がいるのは翠屋のテラス席。
フェイトは真っ赤な顔を俯かせてモジモジとしている…
アリサが大声を出したことにより、五人はかなりの視線を集めてしまっていた。
「ちょっ!それどういうことっ!?」
アリサは少し興奮気味にフェイトに詰め寄る。
「アリサちゃん!落ち着いて!」
そう諌めているのは、紫の髪を腰まで伸ばした美しい少女、月村すずかだ。
「そっか…フェイトちゃん…一緒に暮らすことになったんだ…良かったね…」
「うんうん…自分のことみたいに嬉しいわ。おめでとさん」
事情を知っている2人は祝福をしてくれる。
…はやてもなんだかんだ泣きそうで、なのはは既に泣いている。
「2人はフェイトの父親知ってるの?」
「にゃはは…うん♪すっごく背の高い男の人で、金髪で、瞳の色もフェイトちゃんと同んなじだったよ」
「その上、すっごいハンサムさんやで。この父にしてフェイトちゃんありかと思い知らされたわ」
2人が父親を褒めるごとにフェイトは「いやぁ…えへへ…っ」と照れまくっている。
…ちなみに周りの客はそんなフェイトに萌えまくっていたりするが。
「フェイトちゃん、父親が出来たって本当?」
そう言い五人の席に近づき話に加わったのは、なのはの母親である高町桃子その人だ。
「あっ、桃子さん」
「えっと…父親ってことは、リンディは再婚するの?」
「あ、違くて…えっと…私の実の父親が牢獄から出てきて…」
「「「牢獄!?」」」
なのは、はやて以外の三人が叫ぶ。
「ちょっ!フェイト!その人大丈夫なの!?」
「…フェイトちゃん?」
「フェイトちゃん…少しでも危ないと思ったら、すぐ私に言ってね!?いえ…むしろ今すぐ私の娘にして───!!」
三人が慌てるのも当然である。
フェイトが物心着いた時からもういなかったという父親が牢獄から出て来た、それは少なくとも十年以上は服役していたということ。
───それは、結構な犯罪者なのでは?
三人の頭がこの結論に行き着くのは必然である。
「あっ…っと違くてっ!!牢獄って言ってもそういうのじゃなくてっ!えっと…あぅあぅ…」
そのフェイトの慌てようを見て、笑っていたはやてとなのはが三人に事情を説明した。
* * * *
「ん…なんだか、気に入らないわね」
事情を聞いて、アリサが最初に言ったことがそれだった。
「アリサ?」
「…なんだか、今までフェイトを放ってたくせに、今更ー…っていうか…ね」
「アリサちゃん」
「わかってるわよすずか。でも…」
「うん。私もアリサちゃんの言いたい事はわかるわ」
「お母さん!?」
「アリサ…桃子さん…」
そう言った2人をみて、フェイトが更に言う。
「うん。言いたい事はわかるよ…父さんもずっと言ってた。自分なんかが今更だって。…でもね、アリサ…それに桃子さん」
「……」
2人は黙って聞いている。
勿論、他の三人も、だ。
「暖かかったんだ。父さんに頭を撫でて貰って…抱きしめてもらった時。それに、手を繋いで貰った時。その温もりが嬉しくて…ね。暮らしたいって、思ったんだ」
* * * *
その後翠家で昼食をし、少し話をして五人で店を出た。
出る時に桃子さんが「今度、お父さんを連れていらっしゃい」と言ってくれた。その時の笑顔を見るに、きっとお父さんと会ってみたいって思ってくれたんだと思う。
それが、嬉しい。
アリサも会ってみたいと言ってくれた。
だからだろうか。いつもみんなと別れるのは寂しかったけれど、今日はすごく気分よくお別れ出来た。
何気なくフェイトは空を見上げる。
そこには雲ひとつない空が広がっていて。
…うん。明日も、晴れそうだ。
* * * *
「貴方は、一体何者なんですっ!?」
家に帰ってきたら、リビングの方からクロノの叫び声が聞こえる。
…ここはマンションなのに。近所迷惑になっちゃうよ。
そう思いつつ、声の発生源のリビングに入る。そこには既にみんないるようだ。
クロノは何を叫んで……あっ
「父さんっ!」
ソファの方に腰掛けている父さんを見つけた。どうやら帰ってきてたらしい。
「ただいまっ!」
そう言って父さんの胸に飛び込む。
それを優しく受け止めて、すぐに頭を撫でて「あぁ…おかえり」と言ってくれる…えへへ
「フェイト、帰ってきたのか……じゃないっ!!ハルトさんっ!貴方は一体何者なんだ!?」
そう言ってまた叫ぶクロノ。
「クロノ、どうしたの?」
「どうしたのじゃない!ミゼット統幕議長にハルトさんの手紙を渡したら…これがっ!!」
そう言ってクロノが懐から出したのは書類…?
「えっと…戸籍?」
父さんの名前が書いてある…この国の戸籍かな。
「そうだ!でもそれだけじゃないっ!もっとやばいのはこっちだ!」
そう言って取り出したのは…
今度は通帳のような物。
「これをミゼット統幕議長に『これで勘弁して下さい』って泣いて頼まれたんだっ!僕とエイミィが、だ!」
その通帳を開いてみる。それは…お給料?
「えっと…一…千…万…十万………億…?」
そう、そこに書いてあるのは億。
しかも、日本円で三億円。
「えっ!?クロノ、これどうしたの!?」
「だから!ミゼット統幕議長にハルスタッドさんに渡してくれと頼まれたんだっ!!『残りはいずれ…何卒!』と!」
えっと…つまり…この三億円は…父さんに…?
「三億か。もう少し用意して欲しかったのだが…まぁいい。あの屋敷と家具を買うには十分だろう」
そう言って、さも当然と言わんばかりに通帳を懐にしまう父さん。
ミゼットさんと仲が良いのは知ってたけど…
「父さん?このお金は?」
「ん?…あぁ…40年と少し前位まで管理局に勤めていたとは言っただろう?その時に私は給料や謝礼金やらその他諸々を受け取って無かったんだ。だから、そういった金をミゼットから失敬した」
なるほどと私は納得したけど、納得しなかったのが…
私以外の全員だった。
その後、父さんが三提督の教導官であったと知るや否や、クロノとエイミィが父さんに対してさらにに畏まった態度になったのは別の話。
─────そういえば、父さんは戦ったらどれくらい強いのかな?
* * * *
その翌日。
その日は平日のため、フェイトは普通に学校があった。
……だが……
「…うぅ…」
授業中も休み時間も、全然集中することが出来ない。
というのも────昨日のことだ。
『フェイト、明日の放課後に予定は?』
『えっと…特に無い…と思う』
『…ん。では明日の放課後に買い物に繰り出すぞ』
『えっ!?』
『ん』
『2人で?』
『あぁ』
『…え、えへへ…』
『では明日の放課後だ。フェイトの学校が終わる頃に連絡する』
────そう。
今日の放課後は───
父さんと買い物だ。
うん、すごく家族っぽい
「それは家族じゃなくて恋人なのでは?」
という無粋なツッコミをする者など学校には…いるにはいるが、幸いにして近くにはいなかった。
* * * *
授業中も、休み時間もフェイトはボーッとしている。
普段ではあり得ないことだが、なのはの言葉でさえ反応しない時がある。
……これは、昨日言ってた父親関係?
……それにしたった頬を緩めすぎな気がするけど…
その証拠に、授業中フェイトの事を伺っているファンの子がチラホラと……
そりゃ、幸せオーラ全開のフェイトが、授業中だろうがなんだろうがずっとフニャフニャしているのだ。
恋人が出来たのではっ!?と邪推してしまうのも無理ないというもの。
…それにしても、まだ三時間目。
放課後までにはまだまだ時間があるんだけど…
大丈夫なの?あの子。
と、無駄にお節介を焼くアリサなのであった。
* * * *
昼休みに、フニャフニャしてボーッとしてるフェイトちゃんの席にみんなで近づく。
……フェイトちゃん、ちょっと頬を緩めすぎなの。
「フェイトちゃんどうしたの?顔が溶けちゃってるよ?」
大変可愛いフェイトちゃんですが、この顔は少し他の人に見せられません。
完全に18禁の顔です。いや、それは言い過ぎかな?
「え、そうかな…?」
どうやら無自覚の様です。
午前中、ずっとチラチラ時計見てたし…
まさか…
放課後…
誰かとデートっ!?
デートなのフェイトちゃん!!?
「で、フェイトちゃんは放課後デートなんか?」
と思ってたらはやてちゃんがいきなり単身突っ込んだ。
うん、こういう時のはやてちゃんはすごく便利。聞きづらいことをズバズバと言ってくれる。
「でーと?…デートっ!?」
あ、フェイトちゃんが真っ赤になった。
その可愛い反応にクラスが少しざわついたけど、それを目で制する。
途端にみんな目を逸らすから不思議。
「デートってそんな…あぅ…」
流石フェイトちゃん、何人にも犯されない女子力の持ち主。
すごく女の子してる。
……その後、フェイトちゃんが言うに放課後はハルトさんと買い物に行くらしい。
…それは…
─────デート、なのでしょうか?
グダグダな上にキャラ崩壊しているっ!!!そして短い。でも構わないっ!!
…うん。書きたかった日常編なのに…
筆が進まねえ!!!びっくり。
それと次の更新は遅くなりそうです。
面白い!と思っている方々がもしいらっしゃいましたら、本当に申し訳ありません。
次回、「ドキドキデート大作戦!」
オタオタオタオタオタお楽しみにっ!
イリヤ可愛いよっ!Foo!!!