さて、時をまた戻して今度は
場所は"黒"のマスターたちが集まる大広間。
「結局"赤"のバーサーカーの真名は分からず仕舞いで終わりましたね」
「多分どこかの奴隷だったのは間違いないんだけど‥‥‥もう過ぎたことだし調べるのは終わってからにすべきだ」
"赤"のバーサーカーの対処は容易だった。
以前からペルセウスの宝具に魔力C以下の対象を石化させるという破格の物があるのは知っていた。
正直言うとすべての相手サーヴァントに対してこれを使うことは考えていた。
そうして
魔眼によって見事"赤"のバーサーカーは沈黙した。
"赤"のバーサーカーをここで倒せたのはデカいと言えるだろう。
というのもバーサーカーはヘラクレスのような蘇生手段やダイレオスⅢ世のように兵を無限召喚してきたりと、ある意味厄介な宝具持ちが多い。
"赤"のバーサーカーも恐らくは厄介な能力があったのだろうが、その見せ場なく散っていったのはどこか儚げないと思ってしまう。
"赤"のバーサーカーの討伐が終わり今度は"赤"のライダーと"赤"のアーチャーとの戦いを使い魔越しで観戦していた。
「強いな‥‥‥」
「ああ、間違いなくライダーは大英雄クラスと見て良いだろう。相良、この2体についてどう思う?」
戦いを観戦しているとダーニックさんに声を掛けられた。
まぁもう1体の真名は確定しているから言っちゃっていいか。
「"赤"のライダーは不明ですが"赤"のアーチャーの真名は恐らく分かりました」
「!?」
これには皆一同驚いただろう。
それもそのはず、まだ戦いから数分しか経っていないのである。
「それで、"赤"のアーチャーの真名は何だ?」
「アルゴノーツの一員だったアタランテでしょう」
「アタランテ…カリュドーンの猪討伐の‥‥‥よく見ると神話で語られている特徴と確かに一致する」
アタランテ
ギリシャ神話に登場する、アルテミスの加護を授かって生まれた女狩人。
アルカディアの王女として生まれるが、男児が望まれていたために生後すぐ山中に捨てられてしまうのだが、この後一流の狩人になった彼女はアルゴー船に乗り、アルゴノーツとして大英雄達と旅をし、その後カリュドーンの猪の討伐にも貢献した。
恐らく射撃技術と敏捷性が高いアーチャーだろう。
「根拠というか確信に至ったのは彼女の姿を見た時でした。というのも"赤"のアーチャーはアタランテかヘラクレスのどちらかだろうという仮説を立てていたので」
「待て待て話が早い。順を追って説明してくれ」
「分かりました。まずその2択に絞ったのはギリシャで行われた亜種聖杯戦争の勝利したサーヴァントとそのマスターの素性です。ダーニックさんなら知ってますよね」
「優勝したのはアーチャーとして召喚されたヘラクレス、そしてそのマスターは時計塔の‥‥‥そうか!」
「皆さんも気づきましたね。噂によるとヘラクレスを召喚した触媒が『アルゴー号の残骸』だったようですが、参加したそのマスターはそれを時計塔で紛失しているという。もし、その紛失した触媒が時計塔が秘密裏に保管していたとしたら、これを触媒にしてヘラクレスを呼ぼうとするはずです」
「しかし、触媒には一定の条件として複数候補があるものだと召喚者の性格に近しいかその実力に見合ったサーヴァントが召喚される可能性が高いです。もし、アルゴノーツでヘラクレスの他にアーチャー候補として召喚される可能性があるのは‥‥‥」
「狩人として弓を使っていたアタランテがヘラクレスの代わりに召喚されるかもしれない、ということか。それなら姿を見ただけで真名を特定できるか」
納得してくれたゴルドのおっさん。
まぁfateの世界でここまで規模の大きい聖杯戦争だと間違いなくギリシャ系‥‥‥それもアルゴノーツの船員の誰かが召喚される可能性が高いと思って仮説を立てていたら案の定だった。
そういや俺の前世で一時期心理学に興味を持っていたのだが、あくまで使い魔越しに見えた彼女は‥‥‥危ういな。
妙に怒りっぽく、変な時に動きが鋭い。
あの手のタイプはいつか暴走するのが目に見える。
それで言ったらペルセウス君も危ういのだが‥‥‥
カウレス君とダーニックさんが念話で敵の情報を教える中、今度は"赤"のライダーを観察していた。
何かすげー速いな。
「速いな」
「速いですね」
とにかく速かった。
ライダーじゃなくて新手のエクストラクラスかと思うぐらい脚が速い。
常時発動型の宝具を使用しているのだろう。
「セイバーとキャスター、アサシンはあのライダーを補足できてるか?」
「いいや、全く」
「同じく」
「朧気ながらにしか捉えられていない」
三者三様の意見を述べるサーヴァントたち。
唯一補足できているのは"赤"のバーサーカー用に準備させていて結局使わなかった為朝ロボなのだが、バケモノすぎるだろあのライダー。
「相良、奴の真名は分かったか?」
「いや全くですね‥‥。多分ギリシャ系だとは思うんですがどこにでもありそうな剣と槍に俊足だけじゃ‥‥‥あ」
待てよ‥‥‥該当する大英雄が一名居るじゃん。
いや、でも露骨すぎるかぁ‥‥実際能力を偽装できる英霊はごまんといるんだし。
さすがにブラフだと思うけど‥‥‥まさかね。
「ダーニックさん、そちらのランサーに念話をつなげて欲しいです。最悪のパターンが目に浮かんだので今からそれを潰します」
「分かった繋ごう(最悪のパターン‥‥?)」
こういう時の対処は速い。
すぐさまダーニックさんが念話でランサーと繋げてくれた。
"聞こえるか、ランサー"
"! ‥‥‥アサシンのマスターですね。どうしました?"
"目の前の"赤"のライダーの足元に外してもいいから何か投擲してくれない?"
"投擲ですか‥‥‥私射撃はおろか投擲も苦手な部類ですけど、それでもいいのですか?"
"モーマンタイ、あくまで相手の動きを観察するためだけだから"
"分かりました。では━━"
『ほい』
『‥‥‥は?』
喋ってる途中だったが景虎がいきなり武器を投擲してきたことには"赤"のライダーも思わず口をぽかんとしてしまっている。
投擲されたのは青みがかかったシンプルな見た目の短刀、五虎退という短刀だったか。
足元を狙って投擲して投げたそれは
戦闘癖なのか咄嗟に踵を大きく上げるようにして、脚が
この瞬間俺は取り乱すと同時フィオレに声を張り上げるようにして叫んだ。
「フィオレ、今すぐ令呪込みでアーチャーに狙撃指示! 狙いは"赤"のライダー!!」
「さ、相良さん、急に声を張り上げてどうしたのですか?」
「今すぐ指示を! 場合によっては全滅するぞ!」
緊迫したような声で「全滅」のワードを出したことでフィオレは大急ぎで源為朝に念話を繋いで射撃指示を出した。
"アーチャー、今すぐ"赤"のライダーを狙撃する体制に入ってください。このままでは全滅する恐れがあると相良さんから"
"了解した、マスター。これより射撃体勢に入る"
"ちょっと待ってください、相良さんにつなげます。詳しい射撃指示は彼から"
「準備が終わりました。念話を繋げるので指示はそちらでお願いしたいのですが」
「オーケー、繋げて」
恐らくはこのタイミングしか狙うチャンスはない。
まだ警戒度がマックスではない今なら‥‥‥!
"暗殺者のマスター、"赤"のライダーの狙撃指示を"
"まず昇華・弓張月で狙いを補足して。終わったらフィオレが令呪を使うからフルチャージで"赤"のライダーの踵を宝具で射抜いて"
"踵? ‥‥‥成程、承知した。コード:アーチャー、開放"
~~~
『臘月収斂、形態変化。淡き月光を放ち、我が嚆矢は期限に至る。ツクヨミ式リボルビングキャノン━━
~~~
そうして念話を終えると、真名解放によって放たれた強力な一射が"赤"のライダーめがけては放たれるもそれを回避せしめてみせる"赤"のライダー‥‥いや、アキレウス。
わざわざペンテシレイアなんていう特大ヒントを言ってくれたことで確信に至った。
この段階でダーニックさんたちも俺が危惧していたことを理解したのだろう。
彼の宝具は恐らく何らかの条件を持っているサーヴァント以外の攻撃を完全に無効化するというもの。恐らく神性だろう。
今こちらに神性スキル及び宝具貫通を持っているのはランサー、アサシン、ライダーの
しかしそれと同時に絶好のタイミングだった。
恐らく彼は終盤の強敵として主人公の前に立ちはだかっていたのだろう、それも隙を一切見せることなく。
故にここでしか狙い時はないだろう、まだ真名がバレていないと思い込んでいる警戒が薄い今のタイミングが。
乱雑に投げた投擲と本命と見せかけて索敵用に撃ち出した矢。これが全てブラフだと予想できるのは直感スキルを持っている"赤"のセイバーぐらいだろう。
"ライダーさん、師匠から
"注文が多いね‥‥‥でもマスターの頼みならやってみせよう"
"ランサー、今からそちらにアーチャーの矢が飛んでくる。お前はアキレウスを不意打ちで攻撃を仕掛け、朱い光が見えたら即座に後退しろ"
"分かりました、マスター"
"バーサーカー、お前はランサーより一歩速く下がってくれ"
"分かった。宝具は使わなくていいよね?"
"ああ、ここではランサーとライダーの真名しか漏れないようにと相良さんから"
さぁ準備が整った。
後は‥‥‥
~~~
『鏡月収斂。形態変化』
為朝は弓を構えた。
それと同時、月から光が飛来し、姿が変化した。
元々白に青のラインが入ったような見た目から黒と赤の禍々しい見た目へと変貌していた。
『不撓不屈たる我が剛弓、これを以って全てを薙ぎ払う。『
自身の持つ特別製の弓「五人張りの弓」に矢を番え、弦を最大まで引き絞る。
その威力は水上戦に置いてイージス艦及び原子力潜水艦を一撃で仕留めるとまで言われている。
地上に置いてこの宝具は威力が少しダウンするのだが‥‥‥
"令呪を以て命じます。アーチャー、
"了解した。これより最大出力で発射しよう"
令呪によるブースト。
そして喜ばしくないことだが、ホムンクルス式魔力供給層によって水上と変わりない一撃を放つことができてしまっている。
『3‥‥2‥‥』
既に最大までチャージされたその一撃を━━
『━━1、発射!」
放った。
その矢の行先は緻密に計算され、木々の合間を通ることもあればそれを貫通し、アキレウスの踵を両方とも射抜いて見せた。
『任務完了。これより帰投し、休憩を開始』
~~~
「ダーニックさん、次に光が消えた時にランサーを令呪で"赤"のライダーの前に」
「加えて、同タイミングで桜はライダーにペガサスで突撃させるように指示」
~~~
光が消え、辺りが一瞬静かになった。
見事なまでの一撃、これがかの鎮西八郎の御業なのだろう。
"ランサー、今から令呪を使う"
おっと、ここでマスターから念話が。
人使い‥‥いえ、サーヴァント使いが荒いですね。
"令呪を以て命ずる。ランサーよ、
まさかのとどめはお前に任せる宣言。
ここで戦果を挙げておきましょう。さすがに戦果0何ていう結果は嫌ですし。
『承りました、マスター』
"ライダーさん、今度は
"マスターの師匠は随分無茶な指示を‥‥‥まぁ、ハルペーを真名解放なしでならいけるけど"
~~~
「よし! これで最悪のコラボレーションは防げた」
「やはりアキレウスだったか。しかし魔術協会もよくアキレウスの触媒を見つけたものだな」
「ええ、マジでどこで見つけたんだか‥‥‥」
アキレウスはあの後満足そうな顔をしながら消滅していった。
恐らく彼の願いは「戦闘」関連のものだったのだろう。
ある程度推測にはなるけど「戦士として戦いたい」とか「戦士として死にたい」とかそんな感じなのだろう。
カルナもそうだが、よくアキレウスの触媒を見つけたと思う。
魔術協会はどっから調達しているのとやら‥‥‥。
多分
ただ別にバレたところで明確な弱点はないから好きなようにさせているし構わない。
戦力差はこちらが有利だ。
このままワンサイドゲームを展開していこうか。
今回のまとめ:
転生相良君「アーチャーはアタランテ、ライダーは‥‥‥アキレウス!? まずい、早く仕留めないと!!」
もののふロボ「狙撃」(令呪あり)
お虎ちゃん「宝具」(令呪あり)
プロトライダー「宝具」(無茶)
転生相良君「何とか倒せた‥‥‥。念のためセイバーとバーサーカーもスタンバってたけどいらんかった」
というワケで相良視点での戦いでした。
恐らく"赤"の陣営が想定してたアーチャーってアチャクレスだと思うんですよね。
少しメタい視点ありきで真名を特定できる転生者がいればそりゃ対策はし放題ってことで。相良君の前世についてはあくまで心理学は素人に毛が生えた程度です。
ちなみに、後書きでも書かれているように、アキレウスが2騎の宝具を避け切るorそのまま戦い続けた場合、バーサーカー→アサシン→セイバーの順に令呪込みの宝具が踵めがけて飛んでくるので詰んでました。