「分かった。が、良いのか? それで逆に襲撃されれば‥‥‥」
「襲撃される可能性は見越しています。ですが、ここで籠城戦をするよりかは賭けに出る方が得策ですので」
ある主従の会話
「その日は運が付いてなかった」
後に天草四郎はカルデアでこう語った。
~~~~
天草四郎は準備をしていた。
傍にいる
そのためにも下準備が大変だった。
まず同じ"赤"の参加者からの令呪の回収。
そうして、令呪を回収し終え、
こうして何とか基盤を固めた天草だが、"黒"の陣営には数的にも情報的にも一歩リードされている。
本来であればキャスターが"せめて"近代の魔術師なら後方支援の人員として割り振れたが、ここに居る彼は非戦闘員で能力もかみ合わない限り使い勝手が悪い。
幸いにもセミラミスがキャスターとしての能力を持っていたが故に成り立っていたが主戦力が2騎削られていることでその表情に余裕がない。
今現在彼らは宝具の準備をしている。
そう、3日間。
本来であれば既に儀式が終わり、宝具を起動できる状態だと考えるのが普通なのだが、天草たちは運が悪かった。
現実に存在する資材、その辺の土から始まり、レンガや大理石といった石系の資材が必要となる。
いざその資材を入手しようとする天草。
予め購入することも視野に入れていたが、その場合いくつかは魔術で隠せるとしても、量が量なため不自然に教会に資材がありまくっているということで敵陣営が調べれば怪しむこと間違いなしの状態にあるので諦めて当日にすることにしていた。
さすがにマインクラフターのように採掘で掘ったり、どこかのRPGゲームみたく簡単に入手できるわけが無く、ホームセンターなどの店で
しかしここでトラブルが発生した。
『お客様。大変お申し上げにくいのですが、大理石を始めとした石材は今現在こちらでは取り扱っていないため━━』
トゥリファス‥‥‥いや、ルーマニアに販売されている大理石を始めとする石材が無かった。
理由は天変地異だった。
去年の秋始め、9月にギリシャのアテネで起こった大地震。
パルニサ山付近を震源として発生した
この地震による被害をEU圏の近隣国は援助するのは当然のことでルーマニアも例外じゃなかった。
今ルーマニアはEUの加盟国ではない*1のだが、EUへの参加を促進しようとしているため他国への支援をするのも当然だろう。
ただルーマニア自体支援できる範囲は狭い。
ということでルーマニアがしたことは倒壊した建物・建造物の資材の提供をすることに決めていた。
ルーマニア政府は国内にある木材・石材専門店やホームセンターから資材をありったけ購入し、それをギリシャへの支援として宛てたのである。
これによって国内の資材の物価は軒並み上昇し、特に政府が買いまくっていた大理石を含む石材系が底をついていた。
実を言うとこの世界は史実と違って
これのせいで天草は
現状土は用意できたのだが、それ以外が足りていない。
資材を用意する方法として周りの建築物からありがたく頂戴する手段はあるが、それはただの泥棒と何ら変わりない。
人類救済を目指す聖職者が窃盗という行為をしたら笑われ者だろう。
幸いにも隣国のウクライナを経由してロシアのモスクワから資材を暗示とポケットマネーで何とか購入することが出来たのだが、ここまでの距離は約2000km、個人で動くならば約26時間、資材の運搬となると2~3倍の時間、最低でも二日以上かかるのである。*2
さすがにこれ以上待っていられるほど余裕はない天草は何としてでも1日半…いや、1日で資材を用意して儀式を始めるためにも大きな賭けに出た。
『アサシン、貴女はウクライナで儀式を開始してください。念のためランサーを護衛に付けます』
隣国ウクライナで儀式を開始してもらう。
これによって本来運搬かかる時間を半分に短縮することが出来る上、儀式も1日以内に開始できる可能性が高い。
懸念されるデメリットは協会とウクライナ、このどちらか片方が破綻するともう片方も破綻してしまう事だろう。
なので敏捷Aの
アキレウスがまだ脱落していなければ、彼を護衛又は運搬係としてウクライナまで行かせてこちらにはカルナが残るという盤石な態勢が敷けたのだが、もう脱落している以上ここはカルナを行かせるしかない。
幸いにもこちらには
本命の
そして今は教会で他のサーヴァントを含め最良の
急ごしらえの結界や隠匿のせいでバレるのも時間の問題だろうが、それでも構わない。
3日、3日さえ凌げば逆転のチャンスがやって来る。
今ここで神に祈ってはいるが、運はこちらに味方をしてくれるだろうか?
「
今の一節は彼の作品の台詞をそのまま使っているようで、これは遠回しに「落とし穴に嵌るか、嵌らないか見ものだ」とディスっているのだろう。
次のチャンスに生かそうという教訓的な意味合いではない。
自分が彼にとって面白い人間だからああいうセリフを飛ばしたのだろう。
このやり取りを聞いていた
下手に関わって色々言われるのを嫌がっているのだろう。
さて、このような状況の"赤"の陣営だが、一応警戒は高めていた。
いつ"黒"の陣営に場所がバレて襲撃されてもおかしくない状況であるからだ。
そのため━━
「む?」
「敵襲!」
「やはり、来ましたか」
結界内で他のサーヴァントの反応を即座に感知して一瞬で迎撃態勢に入った。
天草が自身の得物である黒鍵と
それと同時━━!
パリン
「後ろか!」
「そこだ!」
天草の後ろに位置していたステンドガラスの一つが破壊されると同時にエーテル体の塊がこちらに刃を向けてきた。
これはホムンクルスや蛇魔ではない、"黒"のサーヴァントだ。
完全な不意打ちで会ったその一撃だったが、天草の警戒心はMAXだったのもあってそれを防ぐことに成功した。
得物どうしがぶつかり合う中、全てのガラス片が地面に落ちると同時に、天草は下手人の素当をはっきりと捉えた。
赤と黒を基調とした服に褐色肌で白髪の女性。一見すると日に当たりやすいアフリカや赤道付近の国出身のサーヴァントかと思われたが、得物から察すると日本人。
天草は冷静に真名看破を行った。
今回も失敗するかと思われた真名看破であったがなぜか今回は成功した。
「成程‥‥‥幕府の亡霊すら私の邪魔をするというのですか━━新撰組一番隊隊長、沖田総司」
真名を看破した後、互いにバックステップを取り距離をとった。
両者互いに剣を構えなおした。
「正確には抑止の守護者としての
「そうだ。現世の聖職者の装いをしているとはいえこちらの全てを見通した力‥‥‥
恐らく今ので"黒"の陣営にも自身の正体がバレただろう。
でも構わない。遅かれ早かれ、どのみち調べればバレていただろう。
そして真名について、
沖田総司
幕末に江戸幕府の徴募により組織された浪士隊、『新撰組』の一番隊隊長を務めていた若き剣術家だ。
文久3年に初代局長の芹沢鴨を暗殺したことから始まり、その後池田屋事件で活躍した後に、体調が悪化、発症していた肺結核によって満26歳という若さで死亡した。
他の英霊と比べるとやや逸話が浅いが、その剣術はセイバーの中でも上澄みの部類に位置している。
女性だった、ということは過去の亜種聖杯戦争で天草は知っていたがために驚いていない。
(にしても、アルターエゴ…
今現在向こうが表に出していないのはバーサーカーとアサシン。
バーサーカーが仮にウラドⅢ世だと仮定するとアサシンクラスの代わりに彼女が選出されたか。
アルターエゴというクラス自体は亜種聖杯戦争でごくまれに召喚されるクラスであるので天草もそのクラスの役割は知っていた。
曰く、オリジナルからデザインされた生命が自我を獲得して本体とは異なる行動原理や目的意識を持つ、または本体から抽出された感情などの一部を受け継いでいるというその英霊のペルソナの一つが別個体として独立した別人の存在である。
能力としては本来の適性とは違うクラスのスキルを所有していたり、神霊の要素を持ってきたりと随分無法な性能をしているのである。
無論こんなクラスを狙って召喚できないので縁召喚か抑止力の本格介入で偶然にも引き当ててしまったというのが妥当だろう。
「私がここへ呼ばれた理由は恐らく貴様なのだろう。故に貴様を斬り伏せる、島原の者よ」
「おっと、真名は言ってませんが」
「日本人、キリスト教徒、「幕府」という発言で推測は容易だが」
これは少々失言だったか。
会話中でも冷静に敵を分析する。
通常の沖田総司であれば縮地による間合い詰めとその空間跳躍染みた技術と得意技を組み合わせた宝具級の剣術に一定のパラメータを上昇させる浅葱の羽織に一定範囲内に新選組隊士達を呼び出す宝具が亜種聖杯戦争で確認されているが、このオルタナティブの沖田総司はどうか?
剣術は恐らくオリジナルと同様かそれ以上として浅葱の羽織は今羽織っていない時点で持っていないと見て良い。旗に関しては不明だが警戒するに越したことは無い。
また、アルターエゴということでセイバークラスにないスキルを持ってこれている可能性が高い。ありえるとすれば気配遮断か単独行動か。
と、考えているとここで新たなチャレンジャーがやって来た。
それは先ほど同じ速さとまでは行かないが、アタランテに向かって剣を振り下ろす。
「それ!」
「っと!」
しかしギリギリで避けるアタランテ。
この様子を見た天草はそのチャレンジャーを補足し、真名を看破する。
「真名、ダンテ・アリギエーリ。クラスはプリテンダー‥‥‥またもエクストラクラスですか」
「おお、貴方がかの『神曲』の…!」
ダンテ・アリギエーリ
イタリア都市国家フィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。
叙事詩『神曲』の著者で、中世ヨーロッパ文学に多大な影響を与え、ルネサンスの基礎を築いた者。
特に彼を代表する作品は古代ローマの詩人ウェルギリウスと共に
召喚されるとしたらキャスターぐらいしか適性がないと思われる彼はなぜかエクストラクラス『プリテンダー』などという知らないエクストラクラスを引っ提げてやって来た。
こうなってくると恐らくウラドⅢ世の対策をしてくると見越してあえて召喚していないのだろう。
「フフ‥‥見た目から察するに、君も作家系の英霊だね」
「いかにも。ああ、残念ながら真名は伏せさせていただきましょう。
「良いよ。お互い作家ということで気が合いそうだけど今は聖杯大戦の真っ最中、語るなら戦の中で?」
「いえ、辞退させていただきましょう。吾輩は貴方とは違って非戦闘員ですので」
「そう‥‥‥フフ、なら私
不敵に笑うダンテ。
その近くでアタランテが接近戦の構えを取った。
さすがに狭い室内で弓を扱って教会を崩壊させたくないのだろう。
しかも今は昼間なので外に出たら一発アウトだ。
「いってらっしゃい、マレブランケ。それと、蛇魔たち」
自身の剣を振り上げるダンテ。
それと同時に彼の上から煙が発生し、その中から3体の聖書に出てくる
(まだプリテンダーの詳細は不明ですが、あの感じからするとオールラウンダータイプのキャスターと考えた方が良いですね)
天草は内心でそう分析した。
複数の使い魔召喚と宝具の剣による幅広い手札。
知名度が高い故にこのような能力が使えるのだろう。
それと、教会の入り口付近にもう一つサーヴァントの反応がある。
戦闘に介入してこない辺り、キャスターか。
しかしおよその位置は互いに把握できているので令呪によるブーストで襲い掛かられても初動は読める。
◇
真昼間の教会では激しい戦闘が繰り広げられていた。
「はっ!」
「セイッ!」
中央付近の空間で斬り合う天草と沖田オルタ。
沖田オルタの持つ大太刀『煉獄』を用いた神速の剣術に対して天草は片手に装備した黒鍵を巧みに操ってみせる。
「
「面倒な‥‥‥!」
黒鍵を3本投擲し、それの軌道を意図的にずらしてからの急な軌道変化。
舌打ちしながらもそれを叩き落す沖田オルタ。
「落としますか!」
「次はこちらの番だ」
それを言った瞬間、沖田オルタは一気に距離を詰めた。
空間跳躍かと思わせる特殊な移動、オリジナルの持っていた能力の一つだ。
キィン
再び彼らの得物同士がぶつかり合った。
互いの鋼から火花が飛び散る。
互角かと思われる斬り合いだが、天草は一聖職者で戦闘者ではないのに対し、沖田オルタはオリジナルが
「ぐぅ…!」
「ダメ押しに、魔人パンチ!」
「ガッ!」
天草が押し負けるのも当然だろう。
しかも厄介なことに沖田オルタは剣術だけでなく、炎の篭ったパンチや蹴りを入れる。
正々堂々? 自分のような抑止の守護者が出る仕事のほとんどはそんなことを言ってる余裕はないので搦め手でも何でも使う。
(やはり50年以上戦ってないせいもあってきついですね‥‥‥)
一方でダンテVSアタランテの方も激しさを極めていた。
「シャー!!」
「■■■■ーー!!」
次々と襲い掛かって来る使い魔の集団。
それに対処をするアタランテ。
「数が多いが、所詮有象無象の獲物だ」
冷徹に猫手と弓矢で対処をしている。
さすがに室内ということもあって引き絞りは弱くして壁にささりまくらないように努力を務めているが。
しかし、それでも数は減らない。*4
「隙あり」
「チッ!」
目を離しているとすぐに近寄って来たダンテが剣を片手にやってくる。
とっさに弓で剣の斬撃を防ぐが、少し押され気味である。
「作家のクセして剣術は一級品か!」
「フフ‥‥‥今の私には主人公補正が掛かってるからね」
「厄介な」
キャスター適性を持っている者だからこそ自身にそういうスキルを付与することも可能なのだろう。
史実のそこそこ大きな逸話を持ってるからこそできる荒業は目を見張るものがある。
しかしながらアタランテも負けじと押し返す。どうやら同じ筋力であるため剣術は優れていても技量は同程度だ。
そのままマレブランケ2体を一瞬で射抜く。
続けて蛇魔を5体、串刺しになるように射抜く。
あれは噛まれたら一発アウトだ。
さて、このような状況で天草四郎は考察する。
現状押され気味な状況で戦い続けても消耗戦にしかならない。
ならばここを捨てて拠点を変えるか。
幸いにも他の拠点は作ってあるのでどうとでもなる。
しかしながらこのまま撤退して、いざ最終決戦の際に"黒"の陣営が7騎すべてで襲い掛かってこられると勝ち目が低くなる。
ならばここは賭けに出よう。
「キャスター、令呪を以て命じます。宝具を使用してください」
「おっと、せっかくの観戦を楽しんでいたところでそれですか! さしずめ大きな賭けにでると?」
「ええ」
「ふむ、良いでしょう。どのみち吾輩がノーと言おうとも肉体はイエスと言いますので」
令呪をキャスターに使用する。
狙うはアルターエゴかプリテンダーか。
推定キャスターは真名を特定できない以上宝具の効果がない。
ちらっと見えた感じ日本の英霊かと思われるが、それ以上の事は分からなかった。
「いざ開演の時!」
令呪によってブーストされたキャスター━━シェイクスピアがその真名を以て宝具を放つ。
「
狙いはどちらか。
幸いにも真名が分かっているので何とか過去のトラウマを生み出すことは出来るだろう。
そうして真名を半分まで言えたその時━━!
「━━令呪を以て命じる」
「!?」
「"黒"のマスターによる令呪か!!」
突如と教会に響き渡った声に天草はいち早く察する。
敵方の令呪の使用。
恐らくはこの周囲にいる3体の誰かが令呪の対象となっている。
(瞬間移動か、宝具の威力上昇か、将又別の‥‥‥)
「"赤"のキャスターの霊核を破壊しろ━━
「承知した」
「何ッ!?」
教会の入り口にいる英霊は霊基の感覚的にもキャスタークラス。
周りにはアルターエゴとプリテンダー。この状況でアサシン!?
もしこの結界内に居たとしたら自身はもう気づいているはずだ。
というかいくら気配遮断のスキル、それもAかA+を使っていたとしても自分の拠点かつルーラーというクラスの特性上、わずかに感知することはできるはずだが‥‥‥いや待て、何かを見落としている。
マフラー型の魔術礼装がなぜ今回はなかった?
「まさか‥‥‥!」
天草は後ろを、シェイクスピアのいる方向を向いた。
するとそこには後ろからマフラーではなくマントがふらりと浮いており、その奥で忍者刀を突きあげている灰衣に身を包んだ
「が‥‥ぁ‥‥‥」
「その命、もらい受ける」
明確に、霊核をぐさりと破壊されたシェイクスピアはそのまま塵となって消滅していった。
呆気ない暗殺。
面白みも何もない、横やりによる最期。
「アサシン━━甲賀三郎。半神の
「‥‥‥‥‥‥。」
作戦は完璧だった。
敵拠点へ
今回の狙いははなっから最高戦力を落とすことが目的じゃなかった。
第一優先は威力偵察、次点で"赤"のアサシンことセミラミスか今の所表に出てきていない"赤"のキャスターの排除が目的である。
そもそもカルナというバケモノが居る時点で勝てるかどうか怪しい。
加えて面倒な毒を操るセミラミスも居るため勝てる可能性は低い。
故に威力偵察と"赤"のキャスターの真名を探る目的で強襲をやったのだが、
「
いざ蓋を開けてみるとセミラミスとカルナが居ないではないか。
なぜ最高戦力が居ないかは不明だがこの好機を逃がすほど馬鹿ではない。
「三郎さん、
「承知した。此れならば気配を完全に消せよう」
急遽作戦を変えて"赤"のキャスターを討伐する。
その場にいたアタランテは狙わない。
今の段階だと能力が割れているアーチャーよりも宝具と能力が不明なキャスターを潰しておく方が優先順位が高い。
しかしまぁ‥‥‥
『私がここへ呼ばれた理由は恐らく貴様なのだろう。故に貴様を斬り伏せる、島原の者よ』
沖田オルタの発言で理解したけど、あの代行者ルーラーのサーヴァントかよ。
いやまぁ、可能性として亜種聖杯戦争で協会が秘密裏に受肉したサーヴァントを切り札として投入してくることも考えてたけど、ルーラーか‥‥‥。
島原‥‥‥天草四郎か。ならシロウ・コトミネの名前にもある程度納得が行くか。
キリスト教教徒だから亜種でも冬木式でも召喚できる可能性はあるが、一番納得が行くのは日本の亜種聖杯戦争で聖堂教会がルーラーを召喚させて受肉させたか。
今度聖堂教会にお問い合わせしておこう。多分Ⅱ世もこの機に乗じて聖堂教会の一部を解体してくれるだろう、多分。
さて、"赤"のキャスターの様子を見るに彼は作家系で後方支援型。
作家系サーヴァントというのは面倒な性格を持つ者だらけなのだが、なぜあんな後方支援かつ非戦闘要員のキャスターを召喚しようと考えたのか。
何らかのサーヴァントとシナジーを生み出せるからか?
まあいい。もう三郎さんが完璧な位置取りしてくれている。
やはり魔術礼装と気配遮断A+による完全気配遮断はルーラーですら感知できていないだろう。
「令呪を以て命じる。"赤"のキャスターの霊核を破壊しろアサシン!」
令呪による力で三郎さんの狙いは敵キャスターの霊核に絞り込められた。
マントを投げ捨てるかのように脱いだと同時に三郎さんの持つ忍者刀がキャスターの霊核を見事貫いて見せた。
「アサシン━━甲賀三郎。半神の
「‥‥‥‥‥‥。」
せっかくだ、少し煽って情報吐いてもらお。
てことで俺は正面玄関から堂々と入場した。
「━━やぁどうもシロウ・コトミネ。いや、天草四郎」
天草は声がした方を見据えた。
その姿は聖杯大戦以前から確認していた。
「相良豹馬‥‥‥!」
今回の下手人である相良豹馬。
亜種聖杯戦争に参加経験はないが、時計塔の資料で冬木の聖杯戦争を含め亜種聖杯戦争の知識をほとんど記憶している情報方面で今回の要注意人物として挙げていた人物だ。
友人を亜種聖杯戦争で勝たせる、死徒討伐任務でかすり傷で帰ってきたりといくつもの噂話が存在している。
「先ほどの令呪から察するにあなたがアサシンのマスターでしたか。まさか(こちらのアサシンのように)キャスターのようなスキルを持っていましたか、となればキャスターは別の能力を持‥‥た‥‥‥ん?」
相良の持つアサシンの能力が先ほどの蛇魔を呼び寄せて使役するというキャスター染みたことができるのは納得が行く。
となればキャスターは未だに隠れ続けていることになる。
ここまでは良い、が‥‥‥
"赤"の陣営の想定はこうだ。
判明
ランサー:長尾景虎
ライダー:ペルセウス
アサシン:甲賀三郎
アルターエゴ:沖田総司(オルタナティブ)
プリテンダー:ダンテ・アリギエーリ
不確定
セイバー:二刀流の女性剣士
アーチャー:神代または凄まじい逸話の持ち主
キャスター?:不明(現在教会前に居る)
(おかしい、数が合わない!?)
天草は気が付いた。
"黒"のサーヴァントの数がオーバーしている。
仮に召喚されたクラスがエクストラクラスに置き換わっていたとしても数が一つ多い。
自分の見間違えか、いやありえない。
教会前に居るのは間違いなくサーヴァントだ。ルーラーである自分が間違えるはずがない。
自身と同じ受肉したサーヴァントも‥‥‥ありえない。受肉しているのであれば協会がその情報を掴んでいるし、ユグドミレニア関係者で亜種聖杯戦争に参加している者は確認されていない。
となるとまさか━━!!
「まさかとは思いますが、ユグドミレニア
「半分正解。正確には亜種聖杯戦争を開催してそこで召喚されたサーヴァントを"黒"の陣営に組み込むって荒業をしただけだけどね」
これには天草も驚くほかなかった。
まさか相手が場外からルールの穴を突いてこようとは。
本来であれば亜種聖杯戦争を開催するための準備は数カ月かかるのだが、あちらには大聖杯と小聖杯の欠片、それに聖杯に詳しい者たちがいる。やろうと思えば数日で亜種聖杯を完成まで持ってこれるだろう。
加えて現界させておくのに必要な魔力もあちらの独自のシステムで解決されている。
勝つためならルール違反を犯す"黒"の陣営に天草は様々な感情が渦巻いていた。
「
「そっちもそうだろ、
もう互いにルール違反をしている以上、これでイーブンだよねと言わんばかりに言う相良。
戦力過多で全くイーブンではないので、少々天草は今まで出さなかった静かな怒りが見えてきている。
しかし、そこは聖職者。一線をわきまえているので下手に煽られて情報を吐露しないように口を押える。
「煽っても無駄ですよ。これでも口は堅い方なので」
「ふーん」
周囲では戦闘が一旦ストップし、得物を握って警戒している状態がずっと続いていた。
逃げるなら今だ。
「というわけで、この拠点とはおさらばしましょうか」
「?」
天草が懐から何かを落とす。
それが地面に衝突すると辺り一面に煙が充満した。
煙幕だ。しかも対サーヴァント用に煙越しにサーヴァントを感知できないタイプの。
煙がより濃くなっていく中、思い出したかのように天草は呟いた。
「ああ、そうだ。そこの部屋で幻覚を見ている"赤"のマスターの皆さんはどうぞお好きなようにしてください。魔術協会への牽制として用意しようかと考えていましたが、ほとんどが
これを聞いた相良はというと困惑していた。
ほぼ間違いなく参加者は殺されていると考えていたが、協会への人質として用意していたとは。
まぁあの外道の巣窟が助けるにしても打算ありきだろうし。
煙が晴れるとその場には静寂があった。
まるでさっきまでの戦いがなかったかのよう‥‥‥とまではいかなくあちこちに物が散乱していた。
着実に決戦が近づいていた。
今回のまとめ:
セミラミス:宝具を実体化させるのに必要な土はあるが大理石などの石材がギリシャに流れてしまっているのでロシアからお取り寄せをしたが、時間が掛るのでウクライナに向かった。何としても宝具の庭園が"赤"の陣営に必要なので付き添いにカルナを向かわせた。
シェイクスピア:案の定暗殺される。エミュがむずすぎる。
転生相良君:カルナとセミラミスがいるから誰も倒せないかなと思ってたら両方とも不在で危険視していたキャスターを討伐出来ちゃった。ついでに"赤"の魔術師も回収してウハウハ。
というワケでまたも"赤"の陣営が減りました。
セミラミスの宝具を実体化させるための素材が土しか明言されてませんが、さすがに石材も必要だろということでこんな展開に‥‥‥。
この作品は2000年5月下旬として描いていますので‥‥‥。
ちなみに、あの時なぜ北斎ちゃんを動かさなかった理由ですが、転生相良君の思考は、
複数体サーヴァントがかたまってる→北斎ちゃんの宝具で奇襲
敵が散らばっていて複数体狙えない→三郎さんの暗殺を仕掛ける
ということになてたからです。
今回は後者になったためああなりましたが、前者の場合はそこから宝具の打ち合い合戦になります。